説明

圧電アクチュエータの製造方法、液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】高密度に配置された配線部材の配線電極と圧電部材の電極とをはんだ接合することが難しい。
【解決手段】FPC4の個別配線電極42にメッキされたはんだ51Aを溶融して圧電部材3の外部電極23とを接合する前に、FPC4の個別配線電極42にメッキされたはんだ51Aの端部を一旦溶融させ(第1ステップ)、溶融されたはんだ51Bの端部と圧電部材3の外部電極23とを接触させ、はんだ51Bを再溶融することで、FPC4の配線電極42と前記圧電部材3の外部電極23とを接合する(第2ステップ)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータの製造方法、液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば液室内の液体であるインクを加圧し圧力を発生するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を使用し、圧電素子の変位で液室に壁面を形成する弾性変形可能な振動板部材を変形させ、液室内容積、圧力を変化させて液滴を吐出させるいわゆる圧電型ヘッドが知られている。
【0004】
この圧電素子を使用した液体吐出ヘッドにおいては、所定のピッチで配列された圧電素子の個別電極にFPCなどの配線部材の配線パターン(配線電極)をはんだによって接合している。
【0005】
従来、圧電素子と配線部材との接合に関しては、例えば、FPCにおける電極バンプを、ノズルから液滴を吐出する領域である有効吐出領域に配設された有効バンプと、吐出領域以外の非有効吐出領域に配設された、圧電素子との電気的接続に直接的には寄与しない非有効バンプとから構成し、かつ、非有効バンプは、電気的に接続する前に、有効バンプよりも高い高さを有するとともに、非有効バンプの振動板側との接触によって妨げられていた有効バンプの電極との接触が、非有効バンプ自らの熱溶融による高さの減少によって可能となる高さを有するように構成することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−332369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液体吐出ヘッドにあっては、高画質化を図るために、多数のノズルを高密度に配置する必要があり、一つのヘッド内で配線部材の配線電極と接合する圧電素子の数も増大し、接合不良が発生するおそれが高まっている。
【0008】
上記特許文献1に開示の構成にあっては、バンプ上にはんだをペースト印刷やはんだボールによって形成しており、ミクロンオーダーのばらつきを低減することは困難であることから、高密度配置された圧電素子と配線部材の配線電極との接合に適用することは困難である。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高密度配置された圧電素子と配線電極とを接合不良を生じることなく安定して接合することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、
複数の圧電素子の電極と配線部材の複数の配線電極とをそれぞれはんだで接合して圧電アクチュエータを製造する方法であって、
前記配線部材の各配線電極にメッキされたはんだの端部を一旦溶融させる第1ステップと、
前記溶融されたはんだの端部と前記圧電素子の電極とを接触させ、前記はんだを再溶融して前記配線電極と前記圧電素子の電極とを接合する第2ステップと、を行う
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高密度配置された圧電素子と配線電極とを接合不良を生じることなく安定して接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で製造する圧電アクチュエータの一例の平面説明図である。
【図2】同じく正面説明図である。
【図3】図1のA−A線に沿う側面説明図である。
【図4】図2の要部拡大説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法の説明に供するFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図及び側面説明図である。
【図6】同じく第1ステップ後のFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図及び側面説明図である。
【図7】同じく第2ステップ後のFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図及び側面説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法の説明に供するFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法の第1例におけるFPCの配線電極配列方向の異なる位置での第1ステップによる溶融後のはんだの状態を説明する説明図である。
【図10】同実施形態の第2例におけるFPCの配線電極配列方向の異なる位置での第1ステップによる溶融後のはんだの状態を説明する説明図である。
【図11】同実施形態の第3例におけるFPCの配線電極配列方向の異なる位置での第1ステップによる溶融後のはんだの状態を説明する説明図である。
【図12】各実施形態におけるはんだを再溶融させる方法の説明に供する説明図である。
【図13】液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【図14】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部の側面説明図である。
【図15】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で製造する圧電アクチュエータの一例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同圧電アクチュエータの平面説明図、図2は同じく正面説明図、図3は図1のA−A線に沿う側面説明図、図4は図2の要部拡大説明図である。なお、図2でFPCは透過状態で示している。
【0014】
この圧電アクチュエータ1は、ベース部材2上に接着剤接合した複数(ここでは2つとする)の積層型圧電部材3を有し、圧電部材3にはフレキシブル配線部材としてのFPC4が接続されている。
【0015】
圧電部材3にはハーフカットダイシングによって溝31を加工して1つの圧電部材3に対して所定数の柱状の圧電素子である圧電柱32を所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0016】
ここで、圧電部材3は、圧電層21と内部電極22A、22Bとを交互に積層したものであり、内部電極22A、22Bをそれぞれ圧電柱32の配列方向と直交する方向の端面に引き出して、この端面に形成された個別外部電極(端面電極)23、共通外部電極(端面電極)24に接続し、端面電極(外部電極)23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。
【0017】
また、圧電部材3には圧電柱32に駆動信号を与えるための撓むことが可能なフレキシブル配線基板であるFPC4が接続されている。FPC4には、図示しないが圧電柱32に駆動波形を与えるドライバIC(駆動回路)が搭載されている。
【0018】
FPC4はポリイミドなどの樹脂基材41にCuなどからなる個別配線電極42、共通配線電極43を形成し、はんだ51をメッキしたものである。なお、配線電極42、43は、接続部分以外はレジスト44で覆われている。
【0019】
そして、FPC4のはんだ51を溶融することで、FPC4の配線電極42と圧電部材3の個別外部電極23及び個別外部電極23側端面に引き回した取り出し用共通外部電極25に接合することで、FPC4の個別配線電極42、共通配線電極43と圧電部材3の個別外部電極23、取り出し用共通外部電極25をそれぞれはんだ51にて接合接続している。
【0020】
なお、ここでは、図4に示すように、圧電部材3の圧電柱32は1本毎に駆動波形を与える駆動柱32Aと、駆動波形を与えないで支柱として使用する非駆動柱32Bとして使用し、圧電部材3の圧電柱配列方向両端部の非駆動柱32Baは取り出し用共通外部電極25を形成するための幅広の圧電柱としている。
【0021】
次に、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法について図5ないし図8を参照して説明する。各図(a)はFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図、(b)は(a)の側面説明図である。なお、個別外部電極23のみを図示しているが取り出し用共通外部電極25も同様である。
【0022】
まず、図5に示すように、FPC4の個別配線電極42にメッキされたはんだ51Aを溶融して圧電部材3の外部電極23とを接合する前に、図6に示すように、FPC4の個別配線電極42にメッキされたはんだ51Aの端部を一旦溶融させる(第1ステップ)。
【0023】
これにより、溶融前のはんだ51Aの高さ(基材40の表面からの高さの意味)は高さH1であったものが、溶融されたはんだ51Bは表面張力によって円柱状になって高さH2(H2>H1)と高くなる。
【0024】
そこで、溶融されたはんだ51Bの端部と圧電部材3の外部電極23とを接触させ、図7に示すように、はんだ51Bを再溶融することで、FPC4の配線電極42と前記圧電部材3の外部電極23とをはんだ51で接合する(第2ステップ)。
【0025】
これにより、電極ピッチ(個別外部電極23及び個別配線電極42の圧電柱配列方向のピッチ)が微細で、メッキで付与できるはんだ51の量が少ない場合でも、良好な接合状態を得ることができ、アクチュエータの高密度化を図れる。
【0026】
つまり、図5に示すようにはんだ51がめっきされた状態(はんだ51Aの状態:均一な膜状にはんだが形成されている)のままであると、圧電部材3にFPC4を接合しようとした場合、はんだ51の高さが低いために、はんだ51と個別外部電極23との安定的なコンタクトが困難となる。また、これを解消しようとしてはんだ51のめっき膜厚を厚くすると、はんだ量が増えすぎ、高密度な配線においては、溶融した際に隣接する配線同士が連結してしまうという不具合が生じる。
【0027】
そこで、本発明では、接合前に、一度はんだ51を溶融させて(はんだ51Bにして)高さを高くすることで、はんだ51の総量を変えることなく、はんだ51と個別外部電極23との安定的なコンタクトが可能になって、電極ピッチが微細で、はんだ量が少なくせざるを得ない状態においても良好な接合状態が得ることができる。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法について図8を参照して説明する。図8は同製造方法で使用するFPCの圧電部材との接合部分の拡大説明図である。
【0029】
本実施形態では、図5のようにFPC4の個別配線電極42にめっきしたはんだ51Aを溶融し、図8のように先端部側部分51aの高さをそれ以外の部分よりも高くしている。
【0030】
つまり、個別配線電極42の先端部のみはんだ51を溶融させるので、先端部のみはんだ高さが高い状態となっている。
【0031】
このように、圧電部材3の個別外部電極23とコンタクトさせるのは先端部側のはんだ高さを積極的に高くすることによって、より安定したコンタクトが可能となる。
【0032】
また、溶融させる端部領域の長さを変更することにより、コンタクトの状態を制御することができる。例えば、比較的安定してコンタクトができる領域では溶融する領域の長さを短く、加圧が難しくコンタクトが取りにくい領域では溶融する領域を長く設定すればよい。このようにすることにより、部品や装置ばらつきを吸収することができるので、より安定したコンタクトを行うことができる。
【0033】
次に、本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法の異なる例について図9ないし図11を参照して説明する。図9ないし図11は同製造方法におけるFPCの配線電極配列方向の異なる位置での第1ステップによる溶融後のはんだの状態を説明する説明図である。なお、各図(a)は圧電部材及びFPCの平面説明図、(b)〜(d)は(a)の領域B〜Dの拡大説明図である。
【0034】
FPC4と圧電部材3とのコンタクト不良発生原因として、圧電部材3の反り、FPC4の反り・ゆがみ、部品とセットしたときの平行度ばらつきが考えられる。特に、部品の反り・ゆがみを矯正させることは困難である。そこで、部品の反りやゆがみに合わせて、はんだ51の高さを変化させることで、反りやゆがみが生じている場合でも良好なコンタクトを行うことができる。
【0035】
つまり、図9に示す第1例では、第1ステップで、溶融後のはんだ51Bの高さが、圧電部材3の一端部が最も高く、他端部側に向かうに従って低くなるように溶融している。例えば、FPC4と積層型圧電部材3を接合する接合装置において加圧に傾きがあり、ある一定方向にのみ接合不良が出るような場合には、そちら側(図9では左側)のはんだ51Bの高さを高く設定すればよい。
【0036】
図10に示す第2例では、第1ステップで、溶融後のはんだ51Bの高さが、圧電部材3の両端部が最も高く、中央部が低くなるように溶融している。例えば、積層型圧電部材3に反りがあり、反りの凸側とFPC4を接合するような場合は、このようにはんだ51Bの高さを設定することが好ましい。
【0037】
図11に示す第3例では、溶融後のはんだ51Bの高さが、圧電部材3の中央部が最も高く、両端部が低くなっている構成としている。例えば、図10とは逆に積層型圧電部材3に反りの凹側とFPC4を接合するような場合は、このようにはんだ51Bの高さを設定することが好ましい。
【0038】
これら第1例ないし第3例は、上記のように圧電部材やFPCの反り、ゆがみ、接合装置のばらつきに合わせて選択することができる。
【0039】
溶融後のはんだ51Bの高さは、はんだを溶融させる温度により制御が可能である。即ち、比較的低温で流動性が低い状態では、はんだめっきの状態に近い扁平な形状が形成されるのに対し、十分な加熱が行われ高い流動性がある場合には表面張力により電極延伸方向の断面形状が円形に近いはんだ51Bが形成される。(なお、図9から図11においては、高さの関係を誇張して表わすために断面形状を縦長の円で表現している。)
【0040】
このように、第1ステップによる溶融後のはんだの高さを電極配列方向(圧電柱配列方向)において、変化させることによって、部品や装置ばらつきを吸収することができるので、より安定したコンタクトを行うことができる。
【0041】
次に、上記各実施形態におけるはんだを再溶融させる方法について図12を参照して説明する。図12は同方法の説明に供する説明図である。
【0042】
ここでは、レーザーヘッド61からレーザー62を照射しながら、仮想線図示の位置から実線図示の位置まで、スキャンさせることによって、順次FPC15の各配線電極42、43のはんだ51(前記はんだ51B)を再溶融させることで、FPC4と圧電部材3とを接合している。
【0043】
このとき、FPC4の配線電極42、43の一旦溶融されたはんだ51Bと圧電柱32の外部電極23、25は接触状態に保つ必要がある。これは、例えば、エアーでFPC4を圧電柱32側に押し付ける方法、ガラス等のレーザーが透過する材料によってFPC4を圧電柱32側に押し付ける方法などを採用することができる。
【0044】
また、図12に示すように、レーザーを左から右にスキャンさせる場合、左から順次はんだ51Bが溶融していくことになる。このとき、レーザー照射直前の配線電極のはんだ51の高さが一番高くなっていることが好ましい。つまり、レーザー照射直前の配線電極のはんだ51Bよりも他の配線電極のはんだ51Bの高さが高いと、それが支えとなってレーザー照射直前の配線電極のはんだ51Bと圧電柱32の外部電極23との間に隙間が形成される可能性がある。したがって、図9で説明した構成とすることが好ましい。
【0045】
次に、本発明に係る製造方法で製造した圧電アクチュエータを備える液体吐出ヘッドの一例について図13を参照して説明する。図13は同液体吐出ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【0046】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板などで形成した流路板(流路部材、流路基板、液室基板)101と、この流路板101の下面に接合した振動板を形成する振動板部材102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを有している。
【0047】
これらの部材によって、液滴を吐出する複数のノズル104がそれぞれ通じる個別流路としての複数の個別液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)106、個別液室106にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部107、この流体抵抗部107を介して個別液室106に通じる液体導入部108を形成し、液体導入部108に振動板部材102に形成した供給口109を介して後述するフレーム部材117に形成した共通液室110からインクを供給する。
【0048】
流路板101は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、個別液室106、流体抵抗部107などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板101は、例えば単結晶シリコン基板をエッチングして形成することなどもできる。
【0049】
振動板部材102は、第1層102Aと第2層102Bとで形成されて、第1層102Aで薄肉部を形成し、第1層102A及び第2層102Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材102は、各液室106に対応してその壁面を形成する第1層102Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)102aを有し、この振動領域102aの中に、面外側(液室106と反対面側)に第1層102A及び第2層102Bの厚肉部で形成された島状凸部102bが設けられている。
【0050】
そして、この振動板部材102の液室106と反対側に振動領域102aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての本発明に係る圧電アクチュエータ1を配置している。
【0051】
ノズル板103は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板103には各液室106に対応して直径10〜35μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。そして、このノズル板103の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室106側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0052】
さらに、圧電アクチュエータ1の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材117を接合している。そして、このフレーム部材117には前述した共通液室110を形成し、更に共通液室110に外部からインクを供給するための供給口119を形成し、この供給口119は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0053】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱32Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱32Aが収縮し、振動板部材102の液室壁面を形成する振動領域102aが下降して個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内にインクが流入し、その後駆動柱32Aに印加する電圧を上げて駆動柱32Aを積層方向に伸長させ、振動板部材102の振動領域102aをノズル104方向に変形させて液室106の容積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
【0054】
そして、駆動柱32Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材102の振動領域102aが初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0055】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0056】
本発明に係る液体吐出ヘッドは本発明に係る製造方法で製造される圧電アクチュエータを備えることで高密度化を図ることができ、高画質画像を形成できるようになる。また、液体吐出ヘッドにインクを供給するタンクを一体にしてインクタンク一体型ヘッドを構成することもできる。
【0057】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図14及び図15を参照して説明する。なお、図14は同装置の機構部の側面説明図、図15は同機構部の要部平面説明図である。
【0058】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0059】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0060】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0061】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0062】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0063】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0064】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0065】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0066】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0067】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0068】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0069】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0070】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0071】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0072】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0073】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0074】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0075】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0076】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0077】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 圧電アクチュエータ
2 ベース部材
3 圧電部材
4 FPC(配線部材)
32A、32B 圧電柱
23 個別外部電極
25 取り出し用共通外部電極
41 基材
42 個別配線電極
43 共通配線電極
51 はんだ
51A はんだ(メッキ状態)
51B はんだ(第1ステップ後の溶融状態)
101 流路板
102 振動板部材
103 ノズル板
104 ノズル
105 液室(個別液室、個別液室)
110 共通液室
117 フレーム部材
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子の電極と配線部材の複数の配線電極とをそれぞれはんだで接合して圧電アクチュエータを製造する方法であって、
前記配線部材の各配線電極にメッキされたはんだの端部を一旦溶融させる第1ステップと、
前記溶融されたはんだの端部と前記圧電素子の電極とを接触させ、前記はんだを再溶融して前記配線電極と前記圧電素子の電極とを接合する第2ステップと、を行う
ことを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおける前記配線部材の各配線電極のはんだ溶融後のはんだの高さを前記複数の圧電素子の配列方向で変化させることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記第2ステップではレーザースキャンによって前記はんだを再溶融させることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記配線部材の各配線電極にメッキされたはんだの電極面からの高さは、前記圧電素子の配列方向で両端部の配線電極のはんだが高く、両端部以外の配線電極のはんだが低いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電アクチュエータの製造方法で製造された圧電アクチュエータを備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−63575(P2013−63575A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203419(P2011−203419)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】