説明

圧電セラミック変換器およびその製造方法

【課題】圧電セラミック変換器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】PZT変換器1には、圧電セラミック基板11および電極ユニット12が含まれる。圧電セラミック基板11は、第1の表面111、および第1の表111の反対側の第2の表面112を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有する。電極ユニット12は、第1の電極121および第2の電極を122有する。第1の電極121は、第1の表面111上に配置され、第1の直径を有する。第2の電極122は、第2の表面112を被覆し、かつ第1の表面111の周辺における表面の一部を被覆するために延び、第2の表面112を被覆する第2の電極122の部分は、第2の直径を有する。第2の直径に対する第1の直径の比率は、0.498〜0.502である。PZT変換器1は、大きな霧量および長い耐用年数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電セラミック装置およびその製造方法に関し、特に、圧電セラミック変換器(PZT変換器)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、PZT変換器は、噴霧式加湿器に適用可能であり、かつ水柱を上昇させるために水中で超音波を発生することができ、その結果、表面弾性波のレイリー波液滴が、水柱および空気の界面で噴霧され、ファンによって空気中へ吹き飛ばされ、それによって、霧状液滴を周囲の環境へ運び、環境の湿度を増加させる目的を達成する。液滴のサイズは、超音波周波数に依存する。周波数が高ければ高いほど、それだけ液滴は小さく、液滴搬送装置における霧量は、それだけ少なくなる。
【0003】
従来のいくつかの噴霧式加湿器は、(喘息などの)疾病を治療するために、鼻を通して肺に吸入される薬の小さな液滴を超音波で噴霧する。従来のいくつかの噴霧式加湿器は、洗剤の液滴を超音波で噴霧し、これらの液滴が、皿の上に広がり、かつ分散されて、小量の水で油脂を除去するようにし、それによって、皿洗い機の節水機能を達成する。水滴の生成に加えて、従来のいくつかの噴霧式加湿器は、高電圧先端放電を介してオゾンを発生する。オゾンは、水滴と共に空気を浮遊し、次に、人体によって吸入され、抗酸化の健康増進効果を達成する。
【0004】
噴霧式加湿器の先行技術設計は、低い電気エネルギ入力で多量の水滴(霧量と呼ばれる)を発生する方法に焦点を当て、設計の重点は、液滴搬送装置、電源および振動回路に置かれる。噴霧水容器における水量が徐々に減少しても、変換器は、やはり、超音波振動を実行する。水なしでは超音波エネルギを伝達することができないので、変換器は、エネルギ蓄積ゆえに過度に熱くなり、温度がキュリー温度を超過すると、動作不良を起こす。かかる状況を防ぐために、設計は、変換器の振動面と液面との間に、ある一定の距離を維持すること、液面に対して変換器の傾斜角を制御すること、または大きな液滴を除去するためにダクトを加えることによって、貯水レベルを検出し、かつ大きな水容器から噴霧水容器への水投入量を自動制御して、多量のまたは安定した噴霧量を得ることに焦点を当てる。
【0005】
近年、軽くて薄く、小さくて携帯型の噴霧式加湿器の需要が増加し、低電力の噴霧装置が、次第にトレンドになった。設計では、圧電セラミック板を用いて振動を発生させ、液体を押し出して、小さな穴を備えた金属シートを通過させ、霧滴を発生する。噴霧式加湿器構成の設計は、ほとんどの場合に受け入れられるが、しかし大きな噴霧量および長い耐用年数を有するPZT変換器を製造する方法に関する議論は、文献にも特許にもほとんど存在しない。
【0006】
噴霧式加湿器変換器に関するいくつかの先行技術文献を以下に列挙し、簡潔に説明する。
【0007】
先行技術文献1:"Ultrasonic Transducer" by Takahashi Minoru; "Application of Piezoceramics" edited by Okazaki Kiyoi, Ichinose Noboru, Igarashi Syuji, Ono Ryuji, and Yamamoto Hirotaka, and published by Gakkensya, pp.184-191(1988).
【0008】
噴霧式加湿器変換器製造のいくつかの質的および理論的な説明が述べられているが、しかし霧量に関して、変換器の電極設計および接着プロセスの影響が開示されていない。
【0009】
先行技術文献2:米国特許第4257989A号(TDK噴霧式加湿器)
【0010】
噴霧式加湿器の構造的組み合わせ、および変換器の電極配置が開示されているが、しかし変換器の関連製造方法および性能は開示されていない。
【0011】
先行技術文献3:米国特許第5021701A号(TDK変換器を組み立てる変換器)
【0012】
変換器の電極配置は開示されているが、しかし変換器の関連製造方法および性能は示されていない。
【0013】
先行技術文献4:米国特許第4976259号(医療用超音波噴霧器)
【0014】
同じ電極配置を備えた変換器を用いる噴霧器が開示されているが、しかし大きな霧量を得る方法は示されていない。
【0015】
先行技術文献5:米国特許第5757104号(変換器および回路の最適マッチング法)
【0016】
変換器および回路の最適マッチング法が、開示され、この場合に、同じ電極配置または異なる電極配置を備えた変換器は、最大振動を得るために光振動回路をマッチングさせることができるが、しかしセラミックス板の直径に対する変換器の電極直径の比率を介して最大振動(霧量)を得る方法は、示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、革新的で発明的なPZT変換器およびその製造方法を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、PZT変換器を提供するが、このPZT変換器には、圧電セラミック基板および電極ユニットが含まれる。圧電セラミック基板は、第1の表面、および第1の表面の反対側の第2の表面を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有する。電極ユニットは、第1の電極および第2の電極を有する。第1の電極は、第1の表面上に配置され、第1の直径を有する。第2の電極は、第2の表面を被覆し、かつ第1の表面の周辺における表面の一部を被覆するために延び、第2の表面を被覆する第2の電極の部分は、第2の直径を有する。第2の直径に対する第1の直径の比率は、0.498〜0.502である。
【0019】
本発明はまた、PZT変換器の製造方法を提供するが、この方法には、(a)圧電セラミック基板を用意するステップであって、圧電セラミック基板が、第1の表面、および第1の表面の反対側の第2の表面を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有するステップと、(b)圧電セラミック基板上に電極ユニットを形成するステップであって、電極ユニットが、第1の電極および第2の電極を有し、第1の電極が、第1の表面上に配置され、かつ第1の直径を有し、第2の電極が、第2の表面を被覆し、かつ第1の表面の周辺における表面の一部を被覆するために延び、第2の表面を被覆する第2の電極の部分が、第2の直径を有し、第2の直径に対する第1の直径の比率が、0.498〜0.502であるステップと、が含まれる。
【0020】
高い機械的品質係数Q(Q>1400)を有する圧電セラミック材料が選択されるので、圧電セラミック材料の2つの反対側において第2の電極の直径に対する第1の電極の直径の比率は、適切な範囲に設定され、箔を配置するための接合材料の厚さは、適切な範囲に制御されて、大きな霧量および長い耐用年数を有するPZT変換器を製造するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるPZT変換器の断面図である。
【図2】本発明によるPZT変換器の上面図である。
【図3】本発明に従ってPZT変換器を製造するための方法の流れ図である。
【図4】2.4MHzのPZT変換器によって発生される霧量と直径比率(OD1/OD2)との間の対応関係を示す。
【図5】本発明によるPZT変換器の霧量と接着剤厚さとの間の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明によるPZT変換器の断面図であり、図2は、本発明によるPZT変換器の上面図である。図1および2に示すように、この実施形態において、PZT変換器は、限定するわけではないが、噴霧式加湿器において用いられるPZT変換器である。PZT変換器1には、圧電セラミック基板11、電極ユニット12、箔13および接合材料14が含まれる。圧電セラミック基板11は、第1の表面111、および第1の表面111の反対側の第2の表面112を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有する。
【0023】
電極ユニット12は、第1の電極121および第2の電極122を有する。第1の電極121は、第1の表面111上に配置され、かつ第1の直径OD1を有する。第2の電極122は、第2の表面112を被覆し、かつ第1の表面111の周辺における表面の一部を被覆するために延び、第2の表面112を被覆する第2の電極122の部分は、第2の直径OD2を有する。この実施形態において、第1の電極121および第2の電極122は、銀電極である。第2の直径OD2に対する第1の直径OD1の比率は、0.498〜0.502である。
【0024】
箔13は、圧電セラミック基板11の片側に、第2の表面112に対向して配置される。この実施形態において、箔13は、金属材料である。好ましくは、箔13は、ステンレス鋼(例えば、304または316ステンレス鋼)箔またはチタン箔であり、箔13の厚さは、好ましくは20マイクロメートル(μm)〜30μmである。この実施形態において、接合材料14は、エポキシ樹脂であり、第2の電極122と箔13との間に配置される。接合材料14の厚さは、12μmより薄いのが好ましい。
【0025】
本発明によるPZT変換器が、箔および接合材料を有していなくてもよく、それでも動作して振動効果を生成し得ることが理解できる。
【0026】
図3は、本発明によるPZT変換器を製造する方法の流れ図である。図1〜3に示すように、第1に、ステップS31において、圧電セラミック基板11が用意されるが、圧電セラミック基板11は、第1の表面111、および第1の表面111の反対側の第2の表面112を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有する。
【0027】
この実施形態において、ステップS31には、以下のステップが含まれる。ステップS311において、圧電セラミック材料調合粉末が焼成され、微細に粉砕され、スラリーにされ、次にスラリーが、噴霧および粒状化されて、圧電セラミック材料細粒を形成する。ステップS312において、圧電セラミック材料細粒は、圧縮圧電セラミック材料を成形するために圧縮される。ステップS313において、圧縮圧電セラミック材料は、焼結される。ステップS314において、焼結された圧電セラミック材料は、平行にラップされ、圧電セラミック基板11を形成する。
【0028】
ステップS32において、電極ユニット12が、圧電セラミック基板11上に形成される。この実施形態において、ステップS32では、電極基板が、圧電セラミック基板11の表面上にコーティングされるが、電極基板は、第1の表面111上に配置され、第2の表面112を被覆し、かつ第1の表面111の周辺における表面の一部を被覆するように延びる。電極基板は、焼成されて電極ユニット12を形成する。コーティングされた電極基板の厚さは、0.01mm〜0.002mmであるのが好ましい。電極ユニット12は、第1の電極121および第2の電極122を有する。第1の電極121は、第1の表面111上に配置され、第1の直径OD1を有する。第2の電極122は、第2の表面112を被覆し、かつ第1の表面111の周辺における表面の一部を被覆するために延び、第2の表面112を被覆する第2の電極122の部分は、第2の直径OD1を有する。第2の直径に対する第1の直径の比率は、0.498〜0.502であるのが好ましい。
【0029】
この実施形態において、電極ユニット12が形成された後で、方法には、さらに、圧電セラミック基板11を分極するステップS33が含まれる。この実施形態において、圧電セラミック基板11は、高電圧で分極される。さらに、圧電セラミック基板11が分極された後で、方法には、さらに、圧電セラミック基板を洗浄するステップS34が含まれる。
【0030】
ステップS35において、箔13が、圧電セラミック基板11の片側に、第2の表面112に対向して配置される。この実施形態において、箔13は金属材料(金属箔)であり、接合材料14が、第2の電極122と箔13との間に配置される。
【0031】
超音波噴霧式加湿器の適用において、本発明によるPZT変換器1は、導電性リングでワイヤまたはコンタクトと溶接され、次に、防水ゴムスリーブまたは特に設計されたプラスチックシートシェルに配置される。最後に、PZT変換器1の霧量は、固定振動回路および入力電力を用いて評価してもよい。
【0032】
PZT変換器の材料の選択
PZT変換器1は、厚さ方向における振動を介して超音波を発生する。例えば、市販されている噴霧式加湿器に用いられているPZT変換器1は、約1〜3MHzの周波数fを有するが、そこで振動周波数は、圧電セラミック基板11の厚さを変更することによって変更することが可能である。一般に用いられる周波数には、1.65MHz、2.4MHzおよび2.8MHzが含まれ、圧電セラミック基板11の対応する厚さは、徐々に減少させる必要がある。噴霧式加湿器におけるPZT変換器1は、水の底に配置され、振動振幅ξは、印加電圧E、圧電歪み定数d33、および水中における機械的品質係数Qに関係し、かつ以下の式によって表現される。
ξ=d33・E・Q (1)
【0033】
水中における機械的品質係数Qは、PZT変換器1が振動するときに、圧電セラミック基板11によって熱エネルギの形態で消費される運動エネルギを表し、圧電セラミック基板11の材料の機械的品質係数Qに関連する。圧電セラミック基板11の機械的品質係数Qが大きければ大きいほど、消費される熱エネルギは、それだけ少ない。同様に、Qが大きければ大きいほど、熱エネルギの形態で消費される入力電力エネルギはそれだけ少なく、振動振幅は、それだけ大きい。さらに、一般的に言えば、材料の圧電歪み定数d33が大きければ大きいほど、機械的品質係数Qは、それだけ小さい。低d33および高Qを備えた圧電セラミック材料などの新しい圧電セラミック材料の開発と共に、この圧電セラミック材料が噴霧式加湿器に適用された場合に、大きな霧量を発生することができるかどうかは未知である。
【0034】
表1は、3つのPZT変換器(これらの中で、PZT−3が、本発明の発明例である)の圧電特性の比較結果、および24Wおよび28Wの電気エネルギを入力することによって駆動されたときの1.65MHz超音波変換器の霧量の比較結果を示す。これらの結果は、高Q値を備えたPZT変換器(1400を超えるQを備えた発明例PZT−3)が、明らかに大きな霧量を有し、一方で高d33を備えたPZT変換器(比較例PZT−1およびPZT−2)が、小さな霧量を有することを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、PZT−1の圧電特性は、d33−450およびQ−500を含み、かつQ値が1400を超える場合には、1.65MHzのPZT変換器は、28Wの電気エネルギを入力することによって駆動されたときに約350c.c./hの霧量を有することができるが、これは、市販されている高い霧量用の最低必要条件を満たす。Q>2000を備えた圧電セラミック板で作製されたPZT変換器を備えた噴霧式加湿器の霧量は、(TDKまたはFukokuによって製造された超音波変換器などの)市販されている他の噴霧式加湿器の霧量より優れていることが力説される。高Qを備えたPZT変換器が水中に配置された場合には、後で水によって熱が取り去られるが、PZT変換器の品質係数Qは、やはり材料の本質的特性Qを完全に反映し、それによって、PZT変換器の振動振幅に対して決定的な影響を有する。
【0037】
PZT変換器の電極設計
本発明において、噴霧式加湿器に適用されるPZT変換器1の電極ユニット12は、圧電セラミック基板11の第1の表面111上に、OD1の直径を有する中央円形銀電極(第1の電極121)をコーティングすること、ならびに圧電セラミック基板11の第2の表面112の表面全体、圧電セラミック基板11の側面、および第1の表面111の周辺における表面の一部に、背面銀電極(第2の電極122)をコーティングすることによって配置され、第2の表面112を被覆する銀電極の部分は、第2の直径OD2を有する。
【0038】
例えば、直径が20mmの圧電セラミック基板11において、第1の表面111の中央円形銀電極は、約10mmの直径OD1を有し、第2の表面112から第1の表面111へ延びる電極の部分は、導電性リング用に入力電気エネルギを供給する。噴霧式加湿器に適用可能なPZT変換器1は、厚さ方向に振動し、厚み振動は、中央円形銀電極の下に制限される。(第2の表面112の側に位置する)PZT変換器1の背面は、水と接触し、超音波を出力するための端面である。しかしながら、中央円形銀電極のエリア(すなわち、外部高電圧分極化を介してきちんと配置された、圧電セラミック基板11における電気双極子の領域)が、超音波を出力できる範囲であり、したがって、単位面積当たりの超音波の出力エネルギおよび出力強度は、中央円形銀電極のエリアと関連していることが注目される。
【0039】
PZT変換器1は、厚み振動において超音波を出力するが、平面振動もまた存在する。PZT変換器1における背面銀電極のエリアと中央円形銀電極のエリアとの間の差ゆえに、平面振動の振動境界条件が変更され、同時にPZT変換器1の電気機械結合係数を変更し、その結果、機械エネルギに変換される電気エネルギの割合が変更される。
【0040】
【表2】

【0041】
表2は、2つの振動周波数(1.65MHzおよび2.4MHz)の下で霧量に関して、表1におけるPZT−3 PZT変換器の背面銀電極の直径OD2に対する中央円形銀電極の直径OD1の比率の影響を示す。1.65MHzおよび2.4MHzのPZT変換器は、24Wおよび12Wの電気エネルギを入力することによってそれぞれ駆動される。
【0042】
表1および2から分かるように、20mmの直径OD2を有する背面銀電極を備えた、かつ1.65MHzおよび2.4MHzの周波数をそれぞれ有するPZT変換器は、PZT−3圧電セラミック基板で製造されるが、この圧電セラミック基板において、厚さtは、それぞれ1.23〜1.25mmおよび0.84〜0.86mmであり、中央円形銀電極の直径OD1は、それぞれ12.9〜13.3mmおよび10.93〜11.05mmまで変更され、24Wおよび12Wの電気エネルギが、それぞれ入力されて、霧量の差を比較および評価する。
【0043】
表2は、1.65MHzおよび24MHzのPZT変換器にとって、最大の霧量を得るために、背面銀電極の直径OD2に対する中央円形銀電極の直径OD1の比率(OD1/OD2)が、最適な比率値であることが必要であることを示す。直径比率(OD1/OD2)値が変化すると、霧量は、急激に変化する。したがって、噴霧式加湿器が最大の霧量を得たい場合には、直径比率(OD1/OD2)は、厳格に制御する必要がある。
【0044】
図4は、2.4MHzのPZT変換器によって発生される霧量と、直径比率(OD1/OD2)との間の対応関係を示す。12Wの電気エネルギを入力した場合に2.5c.c./分より大きな霧量を得るために、比率(OD1/OD2)は、0.498〜0.502の範囲であることが好ましい。
【0045】
金属箔をPZT変換器に接着するための接着剤厚さの最適化
PZT変換器1が噴霧式加湿器に適用される場合には、PZT変換器1の背面は、水または洗剤液と直接接触する。背面銀電極が、液体と直接接触する場合には、腐食が容易に生じ、これが、PZT変換器1の耐用年数を短縮するので、したがって、好ましい耐食性能を備えた金属箔(箔13)をPZT変換器1に接着するのが好ましい。金属箔は、304または316ステンレス鋼箔およびチタン箔を含み、約20〜30μmの厚さを有する。金属箔は、液体に直接面して耐食性能を向上させ、PZT変換器1の耐用年数を延長する。
【0046】
接着剤(接合材料14)が、金属箔を背面銀電極に接着するために用いられることが注目される。好ましい接着性能を備えたエポキシ樹脂接着剤が用いられるが、エポキシ樹脂接着剤は、水素結合を介して2つの金属表面(背面銀電極および金属箔)を接合する。しかしながら、接着剤の厚さは、適切に制御する必要がある。なぜなら、過度に厚い接着剤は、振動エネルギを吸収し、かつ超音波の強度に影響を及ぼすからである。しかしながら、接着剤が薄すぎる場合には、接着強度が弱すぎて、金属箔の容易な剥離に帰着し、したがって、PZT変換器の耐用年数を短縮する可能性がある。
【0047】
表3において、表1のPZT−3 PZT変換器は、M200、M250およびM420の3つのメッシュを介してエポキシ樹脂接着剤でスクリーン印刷され、30μmの厚さを備えた金属箔が、適温で100Kgおよび200Kgの力を加えることによって接着される。エポキシ樹脂接着剤は、温度および圧力が制御された後で硬化され、次に、接着剤厚さが、観察および解析され、霧量が評価される。
【0048】
【表3】

【0049】
接着剤は、メッシュ開口部が次第に小さくなっていくM200、M250およびM420のメッシュを介してスクリーン印刷される。それに応じてコーティングされる接着剤の量が低減され、接着用に用いられる力は、接着剤厚さを操作するように制御される。PZT変換器は、100Kgおよび200Kgの力をそれぞれ加えることによって、M200、M250およびM420のメッシュを介して接着剤で印刷され、次に、接着剤は、接着剤厚さを10〜15μmの範囲で制御するように、同じ条件下で硬化される。メッシュM420が用いられる場合には、接着剤のコーティング量はより少なく、金属箔と背面銀電極との間の接着剤厚さは、より薄い。異なる接着剤厚さを備えたPZT変換器の霧量の評価結果が、表3に示されている。
【0050】
図5は、PZT変換器の霧量と接着剤(接合材料)厚さとの間の関係を示す。図5に示すように、接着剤厚さが小さければ小さいほど、霧量はそれだけ多く、12μm未満の接着剤厚さを備えたPZT変換器の霧量は、25c.c./分より大きくなり得る。約10μmの接着剤厚さを備えたPZT変換器は、3kgを超える接合強度を有し、長期(1000hを超える)の連続的な噴霧寿命試験に合格する。
【0051】
上記を考慮して、高い機械的品質係数Q(Q>1400)を備えた圧電セラミック材料11を選択すること、圧電セラミック材料11の2つの反対側において第2の電極122の直径に対する第1の電極121の直径の比率(OD1/OD2)を適切な範囲(OD1/OD2=0.498〜0.502)に設定すること、および箔13を接着するための接合材料14の厚さを適切な範囲(<12μm)に設定することによって、大きな霧量および長い耐用年数を備えたPZT変換器1を製造することができる。
【0052】
本発明の実施形態を図示し説明したが、様々な修正および改善を、当業者は行うことができる。したがって、本発明の実施形態は、限定的な意味ではなく、実例的な意味で説明されている。本発明が、図示の特定の形態に限定されないこと、および本発明の趣旨および範囲を保持する全ての修正が、添付の特許請求の範囲に定義される範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0053】
1 PZT変換器
11 圧電セラミック基板
12 電極ユニット
13 箔
14 接合材料
111 第1の表面
112 第2の表面
121 第1の電極
122 第2の電極
OD1 第1の直径
OD2 第2の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面、および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有する圧電セラミック基板と、
第1の電極および第2の電極を有する電極ユニットであって、前記第1の電極が、前記第1の表面上に配置され、かつ第1の直径を有し、前記第2の電極が、前記第2の表面を被覆し、かつ前記第1の表面の周辺における前記表面の一部を被覆するために延び、前記第2の表面を被覆する前記第2の電極の部分が、第2の直径を有し、前記第2の直径に対する前記第1の直径の比率が、0.498〜0.502である電極ユニットと、
を含む圧電セラミック変換器(PZT変換器)。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極が銀電極である、請求項1に記載のPZT変換器。
【請求項3】
前記圧電セラミック基板の片側に、前記第2の表面に対向して配置された箔をさらに含む、請求項1に記載のPZT変換器。
【請求項4】
前記箔が金属材料である、請求項3に記載のPZT変換器。
【請求項5】
前記箔が、ステンレス鋼箔またはチタン箔である、請求項4に記載のPZT変換器。
【請求項6】
前記箔が、20マイクロメートル(μm)〜30μmの厚さを有する、請求項3に記載のPZT変換器。
【請求項7】
前記第2の電極と前記箔との間に配置された接合材料をさらに含む、請求項3に記載のPZT変換器。
【請求項8】
前記接合材料が12μm未満の厚さを有する、請求項7に記載のPZT変換器。
【請求項9】
圧電セラミック変換器(PZT変換器)の製造方法であって、
(a)圧電セラミック基板を用意するステップであって、前記圧電セラミック基板が、第1の表面、および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有し、かつ1400を超える機械的品質係数(Q)を有するステップと、
(b)前記圧電セラミック基板上に電極ユニットを形成するステップであって、前記電極ユニットが、第1の電極および第2の電極を有し、前記第1の電極が、前記第1の表面上に配置され、かつ第1の直径を有し、前記第2の電極が、前記第2の表面を被覆し、かつ前記第1の表面の周辺における前記表面の一部を被覆するために延び、前記第2の表面を被覆する前記第2の電極の部分が、第2の直径を有し、前記第2の直径に対する前記第1の直径の比率が、0.498〜0.502であるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、
(a1)圧電セラミック材料調合粉末を焼成し、次に、前記圧電セラミック材料調合粉末を細かく粉砕しスラリーにして、前記スラリーを噴霧および粒状化し、圧電セラミック材料細粒を形成するステップと、
(a2)圧縮圧電セラミック材料を成形するために前記圧電セラミック材料細粒を圧縮するステップと、
(a3)前記圧縮圧電セラミック材料を焼結するステップと、
(a4)前記焼結された圧電セラミック材料を平行にラップして前記圧電セラミック基板を形成するステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)が、
(b1)電極基板を前記圧電セラミック基板の表面上にコーティングするステップであって、前記電極基板が、前記第1の表面上に配置され、前記第2の表面を被覆し、かつ前記第1の表面の周辺における前記表面の一部を被覆するために延びるステップと、
(b2)前記電極基板を焼成して、前記電極ユニットを形成するステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b2)後で、前記圧電セラミック基板を分極するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
箔を配置するステップであって、前記箔が、前記圧電セラミック基板の片側に、前記第2の表面に対向して配置されるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の電極と前記箔との間に接合材料を配置するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−69899(P2012−69899A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−1589(P2011−1589)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(507162256)チャイナ スティール コーポレーション (9)
【氏名又は名称原語表記】CHINA STEEL CORPORATION