説明

圧電トランス高圧電源装置

【課題】圧電トランスを用いた高圧電源装置において、出力精度を悪化させることなく、小型化を実現させるための回路構成を提供する。
【解決手段】圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、出力電圧設定手段、出力検出手段、及び出力検出手段からの信号ならびに出力電圧設定手段からの信号により出力電圧を制御する出力制御手段、圧電トランス駆動手段から成り、圧電トランス駆動周波数の発生手段を構成するコンパレータICを出力ごとに異なるICとする構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置に用いる高圧電源装置に関するものであり、特に圧電トランスを用いる圧電トランス高圧電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている電子写真方式の画像形成装置において、感光体に転写部材を当接させて転写を行う直接転写方式を採る場合、転写部材には導電体の軸を持つローラ状の導電性ゴムを用い、感光体のプロセススピードに合わせ回転駆動させている。そして、転写部材に印加する電圧として、直流バイアス電圧を用いている。この時、直流バイアス電圧の極性は、通常のコロナ放電式の転写電圧と同じ極性である。しかし、こういった転写ローラを用いて良好な転写を行うためには、通常3kV以上の電圧(所要電流は数μA)を転写ローラに印加する必要があった。
【0003】
上述したような画像形成処理に必要とされる高電圧を生成するために、従来は巻線式の電磁トランスを使用していた。しかし、電磁トランスは、銅線,ボビン,磁芯で構成されており、上記のような仕様に用いる場合は、出力電流値が数μAという微小な電流のために各部に於いて漏れ電流を最大限少なくしなければならなかった。そのため、トランスの巻線を絶縁物によりモールドする必要が有り、しかも供給電力に比較して大きなトランスを必要としたため、高圧電源装置の小型化・軽量化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、これらの欠点を補うために、薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いて高電圧を発生させることが検討されている。すなわち、セラミックを素材とした圧電トランスを用いることにより、電磁トランス以上の効率で高電圧を生成する事が可能となり、しかも、一次側および二次側間の結合に関係なく一次側と二次側の電極間の距離を離す事が可能となるので特別に絶縁の為にモールド加工する必要がないため、高圧発生装置を小型・軽量にできるという優れた特性が得られている。
【0005】
圧電トランス高圧電源の従来例を図6に基づき説明する。ここに示す回路は高圧電源であり、101Yは高圧電源の圧電トランス(圧電セラミックトランス)である。圧電トランス101Yの出力はダイオード102Y、103Y及び高圧コンデンサ104Yによって正電圧に整流平滑され負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。出力電圧は抵抗105Y、106Y、107Yによって分圧され、保護用抵抗108Yを介してオペアンプ109Yの非反転入力端子(+端子)に入力される。他方オペアンプの反転入力端子(−端子)には抵抗114Yを介してDCコントローラ201からアナログ信号である高圧電源の制御信号(Vcont)が入力される。オペアンプ109Yと抵抗114Yとコンデンサ113Yにて積分回路を構成することにより、抵抗とコンデンサの部品定数によって決まる積分時定数で平滑された制御信号Vcontがオペアンプ109Yに入力される。オペアンプ109Yの出力端は電圧制御発振器(VCO)110Yに接続され、その出力端がインダクタ112Yに接続された電界効果トランジスタ111Yを駆動することで、圧電トランスの一次側に電源を供給する。
【0006】
また、圧電トランスの特性は一般的に図7に示すような共振周波数fにおいて出力電圧が最大となるような裾広がりな形状をしており、周波数による出力電圧の制御が可能である。圧電トランスの出力電圧を増加させる場合は、駆動周波数を高い方から低い方へ変化させることで可能となる。
【0007】
電子写真方式の画像形成装置の高圧電源ユニットでは、図6に示す高圧電源回路を複数有し、帯電、現像、転写等のバイアスを出力し画像形成を行っている。
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例では、高圧電源ユニット内に圧電トランス並びに制御回路を複数個配置することにより、複数バイアスを出力し画像形成を行っている。特にタンデムカラー機に搭載される高圧電源ユニットにおいては、帯電、現像、転写等のバイアス出力回路をシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックのそれぞれ4個必要となり、それぞれシアン、マゼンダ、イエロー、ブラック(以下C,M,Y,K)の各色ともほぼ同一バイアス出力電圧に制御される。このとき高圧電源ユニットに搭載されている圧電トランスは帯電、現像、転写等のバイアス出力回路毎C、M、Y、Kともにほぼ同一周波数で駆動される。
【0009】
このように、複数の圧電トランスを近接する周波数にて駆動し同一バイアス電圧出力を行う場合に、隣接配置された圧電トランスにおいて、電源ラインおよびGNDライン経由或いは静電容量結合などによって相互干渉を起こし、高圧バイアス電圧の出力精度向上が困難になる、或いは干渉周波数に依る高圧バイアス電圧の揺らぎ等の発生等を原因とする画像品質低下を招く恐れがある。
【0010】
従来は、このような高圧バイアス電圧精度を原因とする画像に対する影響を避けるために、圧電トランスの配置間隔を充分に広げたり、電源ラインを通じての干渉を抑えるために電源ラインのパターン設計の際に、パターン長を伸ばしたり、デカップリングコンデンサ容量を増やすなどの対策を講じていた。
【0011】
しかし、このような対策の場合には、理論的な計算によって求めることが困難であり、多くの実験によって対策を決定することが多く、製品開発の期間が長くなってしまう可能性がある。
【0012】
さらに高圧電源ユニットの小型化と高画質化を両立することが困難であるという課題が挙げられる。特に、図9のように、VCO回路のコンパレータICを同一のICで使用するときには、コンパレータの電源およびGNDは共通のものになるために、相互干渉を避けられない。
【0013】
そこで、本出願の目的は、圧電トランス相互の干渉を抑え、小型化と高画質化を両立するとともに実験による対策を必要としない圧電トランス高圧電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、その一部或いは全てが同時に駆動される構成の圧電トランス高圧電源装置において、圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータICをそれぞれ異なるICで構成することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置である。
【0015】
上記目的を達成するため、本出願に係る、第2の発明は、圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、圧電トランス駆動手段から圧電トランスに供給する電圧を異なるものとして、それぞれの圧電トランスを異なる周波数で駆動することが可能な圧電トランス高圧電源装置において、圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータを同一のパッケージのコンパレータICで構成する圧電トランス高圧電源装置の圧電トランス周波数を異なる周波数で駆動することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置である。
【0016】
上記目的を達成するため、本出願に係る、第3の発明は、圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、圧電トランス駆動手段から圧電トランスに共有する電圧を異なるものとして、制御時において、それぞれの圧電トランスを異なる周波数で駆動することが可能な圧電トランス高圧電源装置において、圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータをそれぞれ異なるパッケージのコンパレータICで構成する圧電トランス高圧電源装置であって、圧電トランスを異なる周波数で駆動することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本出願に係る発明によれば、安価で簡単な回路構成により、印刷動作中の圧電トランス相互の干渉を回避することが可能となり、圧電トランスを近接配置することが可能となり圧電トランスを用いた高圧電源装置の高精度化と小型化を両立することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図2は本実施例のカラーレーザプリンタの構成図である。
【0020】
レーザプリンタ401は記録紙32を収納するデッキ402を有し、デッキ402内の記録紙32の有無を検知するデッキ紙有無センサ403、デッキ401から記録紙32を繰り出すピックアップローラ404、前記ピックアップローラ404によって繰り出された記録紙32を搬送するデッキ給紙ローラ405、前記デッキ給紙ローラ405と対をなし、記録紙32の重送を防止するためのリタードローラ406が設けられている。
【0021】
そして、デッキ給紙ローラ405の下流には記録紙32を同期搬送するレジストローラ対407、前記レジストローラ対への記録紙32の搬送状態を検知するレジ前センサ408が配設されている。またレジストローラ対407の下流には静電吸着搬送転写ベルト(以下ETBと記す)409が配設されており、前記ETB上には後述する4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)分のプロセスカートリッジ410Y、410M、410C、410Kとスキャナーユニット420Y、420M、420C、420Kからなる画像形成部によって形成された画像が転写ローラ430Y、430M、430C、430Kによって順次重ね合わされてゆくことによりカラー画像が形成され記録紙32上に転写搬送される。
【0022】
さらに下流には記録紙32上に転写されたトナー像を熱定着するために内部に加熱用のヒータ432を備えた定着ローラ433と加圧ローラ434対、定着ローラからの記録紙32を搬送するための、定着排紙ローラ対435、定着部からの搬送状態を検知する定着排紙センサ436が配設されている。
【0023】
また、前記各スキャナ部420には、後述するビデオコントローラ440から送出される各画像信号に基づいて変調されたレーザ光を発光するレーザユニット421、各レーザユニット421からのレーザ光を各感光ドラム305上に走査するためのポリゴンミラー422とスキャナモータ423、結像レンズ群424より構成されている。
【0024】
そして、前記各プロセスカートリッジ410には公知の電子写真プロセスに必要な感光ドラム305、帯電ローラ303と現像ローラ302、トナー格納容器411を具備しており、レーザプリンタ401に対して着脱可能に構成されている。
【0025】
さらに、前記ビデオコントローラ440はパーソナルコンピュータ等の外部装置441から送出される画像データを受け取ると前記画像データをビットマップデータに展開し、画像形成用の画像信号を生成する。
【0026】
また、201はレーザプリンタの制御部であるDCコントローラであり、RAM207a、ROM207b、タイマ207c、デジタル入出力ポート207d、D/Aポート207eを具備したMPU(マイクロコンピュータ)207、及び各種入出力制御回路(不図示)等で構成されている。
【0027】
さらに、202は高圧電源部であり、各プロセスカートリッジに対応した帯電高圧電源(不図示)、現像高圧電源(不図示)と、各転写ローラ430に対応した高圧を出力可能な圧電トランスを使用した転写高圧電源とで構成されている。
【0028】
次に本実施例の圧電トランス高圧電源構成を図1に基づいて説明する。
【0029】
なお、本発明に係わる高圧電源構成は、正電圧、負電圧どちらの出力回路に対しても有効である。ここでは代表的に正電圧を必要とする転写高圧電源について説明を行う。
【0030】
また、転写高圧電源は各転写ローラ430Y、430M、430C、430Kに対応し、4回路設けられているが、回路構成は各回路とも同じであるため、図1ではY、Mの2回路のみのを表し本発明の主旨に関連した説明のみを行うこととする(符号末尾のY、Mで区別)。
【0031】
図1の回路は高圧電源であり、101Yは高圧電源の圧電トランス(圧電セラミックストランス)である。圧電トランス101Yの出力はダイオード102Y、103Y及び高圧コンデンサ104Yによって正電圧に整流平滑され出力端子116Yから負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。出力電圧は抵抗105Y、106Y、107Yによって分圧され、保護用抵抗108Yを介してオペアンプ109Yの非反転入力端子(+端子)に入力される。他方オペアンプの反転入力端子(−端子)には直列抵抗114Yを介してDCコントローラ201からアナログ信号である高圧電源の制御信号(Vcont)が接続端子118Yより入力される。
【0032】
オペアンプ109Yの出力端は電圧制御発振器(VCO)110Yに接続され、この電圧制御発振器110Yの出力端は電界効果トランジスタ111Yのゲートに接続される。電界効果トランジスタ111Yのドレインはインダクタ112Yを介して電源(+24V:Vcc)に接続される。また、電界効果トランジスタ111Yのソースも接地される。
【0033】
次に本実施例の圧電トランス式高圧電源のVCOの構成を図8に基づいて説明する。
【0034】
図8中110はVCOである。本実施例のVCO110は、比較素子であるコンパレータ131と、コンパレータ131の反転入力端子(−端子)に接続された充放電動作をコンデンサ130、抵抗素子136と、コンパレータ131の非反転入力端子(+端子)に接続された充放電の切換えとなる充電閾値電圧及び放電閾値電圧を生成するための抵抗素子132、133、ダイオード137と、からなるCR発振回路を基本構成としている。そしてトランジスタ138、抵抗素子139、140、141からなるエミッタフォロア回路を前記抵抗素子136と並列に接続し、コンデンサ130への充電電流を可変にすることで、オペアンプ109からの出力電圧に応じて発振周波数が制御可能となっている。
【0035】
なお図8中、トランジスタ135と抵抗142はコンパレータ131の出力端子の立ち上がり時間を速めるものである。さらに、ダイオード134はトランジスタ138の保護ダイオードであり。以上の構成要素は本実施例の主旨から外れるため詳細説明を省略する。
【0036】
図7は圧電トランスに印加する電圧を一定とした場合の圧電トランス101Yの駆動周波数に対する出力電圧の特性を表した図である。同図に示すように、共振周波数fにおいて出力電圧が最大となり、周波数による出力電圧の制御が可能であることが判る。規定出力電圧Edc出力時の駆動周波数をfxとする。また、電圧制御発振器(VCO)110Yは入力電圧が上がると出力周波数を上げ、入力電圧が下がると出力周波数は下げるような動作を行うものとする。この条件において、出力電圧Edcが上がると、抵抗105Yを介してオペアンプ109Yの非反転入力端子(+端子)の入力電圧Vsnsも上がり、オペアンプ109の出力端子の電圧は上がる。つまり、電圧制御発振器110Yの入力電圧が上がるので、圧電トランス101Yの駆動周波数も上がる。従って、駆動周波数fxより高い周波数で圧電トランス101Yは駆動し、駆動周波数が上がると出力電圧は下がるため、出力電圧を下げる方向に制御を行う。すなわち、負帰還制御回路を構成している。
【0037】
また、出力電圧Edcが下がると、オペアンプ109Yの入力電圧Vsnsも下がり、オペアンプ109Yの出力端子電圧は下がるので、電圧制御発振器110Yの出力周波数は下がり、出力電圧を上げる方向に制御を行う。
【0038】
このように、オペアンプ109Yの反転入力端子(−端子)に入力されるDCコントローラ201からの制御信号(Vcont)の電圧で決定される電圧に等しくなるよう、出力電圧が定電圧制御される。
【0039】
通常の印刷動作においては、Y,M,C,Kの4つの高圧回路即ち圧電トランスが同時に動作している。ここで本実施例の特徴を説明するためにY及びMの2つの回路について説明を進める。
【0040】
以下、本発明の第1実施例を図面に基づいて説明する。
【0041】
図1は、これまで説明を進めてきた圧電高圧電源装置の基本動作に加え、本実施例の要点である圧電トランスの制御周波数を制御しているVCOを構成するコンパレータをそれぞれ異なるICで構成したものである。VCO110とVCO210を構成するコンパレータを別々にすることにより、電源/GNDのパターンをそれぞれ分離して1点(115)で接続することが可能になる。コンパレータを同一のICで構成するかぎりは、ICの内部で電源およびGNDが接続されてしまうために、IC内部の電源およびGNDを通じて制御周波数の干渉がおこりやすくなる。
【0042】
本実施例の構成にすることにより、コンパレータIC内部の電源/GND経由での制御周波数の干渉による出力バイアスの精度を悪化させることなく圧電トランスを近接配置させることが可能となり、高圧電源ユニットを高精度かつ小型化することが可能となる。また、説明図においては本実施例の主旨に反しない範囲においてコンデンサ等の素子の記述を省略している。
【実施例2】
【0043】
本実施系の構成を説明するにあたり、圧電トランス101の実効入力電圧に対する出力電圧特性を図3に示す。
【0044】
図3に示すように、圧電トランスの出力は入力電圧Vinの大きさに依存する。入力電圧が小さい場合(Vina)と入力電圧が大きい場合(Vinb)とを比較した場合に最大出力周波数は同一であるものの、同一出力電圧Edcを出力する場合には、その駆動周波数は異なる値となる。入力電圧が小さい(Vina)の場合には出力電圧Edcを得る周波数はfx1となり、入力電圧の大きい(Vinb)の場合に出力電圧Edcを得る周波数はfx2となり、入力電圧の小さい時に比べて高い周波数となる。
【0045】
以下、本発明の第2実施例を図面に基づいて説明する。
【0046】
図4は、これまで説明を進めてきた圧電高圧電源装置の基本動作説明に加え、本実施例の要点である圧電トランス入力電圧を変えることにより、制御電圧での圧電トランス駆動周波数を異なるものとする構成について示したものである。
【0047】
圧電トランス101Yの駆動用電圧123Yは抵抗121Y、122Yにて電源電圧Vccを分圧して供給され、圧電トランス101Mの駆動用電圧123Mは、抵抗121M、122Mにて電源電圧Vccを分圧されて供給される。それぞれの駆動電圧123は、
駆動電圧123=Vcc(122/(121+122))(V)
で与えられる。
【0048】
次に図10を用いて本実施例の説明を行う。本実施例において、圧電トランス101Yの駆動用電圧123Yを圧電トランス101Mの駆動用電圧123Mよりも大きい値としている。圧電トランスの最大出力周波数に関しては、同一回路を用いているために同一周波数274となる。それぞれの圧電トランス(101Y、101M)の駆動電圧が異なるために、圧電トランス101Yの出力周波数特性は275−Yとなり、圧電トランス101Mの出力周波数特性は、275−Mとなる。制御出力電圧Edc(V)における駆動周波数は圧電トランス101Yにて276−Y、圧電トランス101Mにて276−Mとなる。このように圧電トランス駆動電圧を異なるものとした場合の制御出力電圧における圧電トランス駆動周波数の差|276−Y−226−M|は3KHz程度となっている。
【0049】
プロセス速度PS=100(mm/S)である本実施例では、発生しうる干渉起因の干渉画像周期は、0.03mmとなるために視覚認識できないピッチとなる。
【0050】
このように、本実施例では、圧電トランス高圧電源装置において、隣接する圧電トランスの駆動電圧を異なるものとすることにより、制御出力電圧における圧電トランス駆動周波数を異なるものにすることが可能となり、圧電トランスの電源パターンに依る相互干渉や、圧電トランスの容量性結合による相互干渉を少なくすることが可能となり、出力バイアスの精度を悪化させることなく圧電トランスをより近接配置することが可能となり、高圧電源ユニットを高精度かつ小型化することが可能となった。又、説明図においては本実施例の主旨に反しない範囲においてコンデンサ等の素子の記述を省略している。
【0051】
近接する圧電トランスが存在し、かつ、コンパレータICをそれぞれ個別にもつことができない場合には、上述した方法により、コンパレータを共通化することができる。近接しない場所にある圧電トランスのVCO回路のコンパレータは第1の実施例にて説明した方法により、VCO相互の干渉をなくすことができ、画像形成装置の大きさの制約により、出力バイアスの精度を保ちながら、小型の圧電トランス高圧電源装置を構成することができる。
【実施例3】
【0052】
以下、本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。
【0053】
図5は、第2実施例と同様、圧電トランス入力電圧を変えることにより、制御電圧での圧電トランス駆動周波数を異なるものとする構成について示したものである。また、圧電トランスの制御周波数を制御しているVCOを構成するコンパレータをそれぞれ異なるICで構成したものである。VCO110YとVCO110Mを構成するコンパレータを別々にすることにより、電源/GNDのパターンをそれぞれ分離して1点(115)で接続することが可能になる。
【0054】
圧電トランス101Yの駆動用電圧123Yは抵抗121Y、122Yにて電源電圧Vccを分圧して供給され、圧電トランス101Mの駆動用電圧123Mは、抵抗121M、122Mにて電源電圧Vccを分圧されて供給される。それぞれの駆動電圧123は、
駆動電圧123=Vcc(122/(121+122))(V)
で与えられる。
【0055】
第2実施例で説明したとおり、本実施例の構成にすることにより、圧電トランス駆動電圧を異なるものとした場合の制御出力電圧における圧電トランス駆動周波数の差は3KHz程度となっている。
【0056】
プロセス速度PS=100(mm/S)である本実施例では、発生しうる干渉起因の干渉画像周期は、0.03mmとなるために視覚認識できないピッチとなる。
【0057】
それに加えて、本実施例の構成にすることにより、コンパレータIC内部の電源/GND経由での制御周波数の干渉による出力バイアスの精度を悪化させることなく圧電トランスを近接配置させることが可能となり、高圧電源ユニットを高精度かつ小型化することが可能となる。
【0058】
以上実施例1から3にて画像形成装置の説明を、タンデム方式のカラー画像形成装置に用いる転写高圧電源を例に説明したけれども、異なるバイアスを出力する隣接する圧電トランスに対しても本発明の適用範囲とし、更に高圧バイアスを用いた画像形成装置であればモノクロ画像形成装置であっても本発明の適用範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1に係る、圧電トランス高圧電源の説明図
【図2】本発明の実施例に係る、カラーレーザプリンタの構成図
【図3】圧電トランス入力電圧に対する出力電圧の特性を表した図
【図4】本発明の実施例2に係る、圧電トランス高圧電源の説明図
【図5】本発明の実施例3に係る、圧電トランス高圧電源の説明図
【図6】従来の圧電トランス高圧電源の圧電トランス高圧電源構成図
【図7】圧電トランス入力電圧に対する出力電圧の特性を表した図
【図8】本発明の実施例に係る、圧電トランス高圧電源の説明図
【図9】従来の圧電トランス高圧電源の圧電トランス高圧電源構成図
【図10】本発明の実施例2、3に係る、圧電トランス入力電圧に対する出力電圧の特性を表した図
【符号の説明】
【0060】
101 圧電トランス
110 電圧制御発振器(VCO)
201 DCコントローラ
202 高圧電源装置
401 カラーレーザプリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、その一部或いは全てが同時に駆動される構成の圧電トランス高圧電源装置において、
圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータICをそれぞれパッケージが異なるICで構成することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置。
【請求項2】
圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、その一部或いは全てが同時に駆動される構成の圧電トランス高圧電源装置において、
圧電トランス駆動手段から圧電トランスに供給する電圧を異なるものとして、それぞれの圧電トランスを異なる周波数で駆動することが可能であり、少なくとも二つの圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータICをそれぞれパッケージが異なるICで構成し、同一のパッケージのコンパレータICで構成する圧電トランス高圧電源装置の圧電トランス周波数は異なる周波数で駆動することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置。
【請求項3】
圧電セラミックス振動体に一次電極及び二次電極を形成した圧電トランス、圧電トランス駆動周波数の発生手段、圧電トランス駆動周波数制御手段、整流手段、出力設定手段、出力検出手段、圧電トランス駆動手段及び出力検出手段からの信号ならびに出力設定手段からの信号により出力を制御する出力制御手段を複数個有しており、その一部或いは全てが同時に駆動される構成の圧電トランス高圧電源装置において、
圧電トランス駆動手段から圧電トランスに共有する電圧を異なるものとして、それぞれの圧電トランスを異なる周波数で駆動することが可能であり、圧電トランス周波数の発生手段を構成するコンパレータをそれぞれ異なるパッケージのコンパレータICで構成し、それぞれの圧電トランスを異なる周波数で駆動することを特徴とする圧電トランス高圧電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−49802(P2007−49802A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230562(P2005−230562)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】