説明

圧電振動素子の周波数調整方法、および圧電振動素子の周波数調整装置

【課題】 正確な周波数測定を行うことのできる圧電振動素子の周波数調整方法および圧電振動素子の周波数調整装置を提供する。
【解決手段】 真空室内には周波数調整部が設けられており、キャリアC1に搭載されたワークが順次パーシャル蒸着により周波数調整される。調整の完了したワークを搭載したキャリアは順次真空室内を搬送され、周波数測定領域に送られる。周波数測定部においては発振器により励振したワーク3Bの周波数を周波数カウンタ24にて測定する。また温度測定部28により、前記周波数測定時点あるいはその近傍時点の環境温度を測定する。周波数データおよび温度データにより補正データを生成し、最終的に制御部から補正された新たな周波数データを制御データとして周波数コントローラに送信され、フィードバック制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音叉型水晶振動子等の圧電振動素子の周波数調整方法および圧電振動素子の周波数調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音叉型水晶振動子あるいはATカット水晶振動子等の圧電振動子は各種電子機器の信号源等に汎用されている。これら圧電振動子は、所定の振動モードで励振させるように圧電体である水晶振動素子の表面に励振電極や調整用電極が形成されており、この励振電極や調整電極に対し調整を行うことにより、周波数の調整を行っていた。すなわち、水晶振動素子表面に形成された励振電極や調整用電極は付加質量となり、水晶振動素子の周波数決定要因の一つとなるが、この励振電極等の重みを調整することにより周波数の調整を行っていた。励振電極の重みを付加する方法例としてはパーシャル蒸着法がある。このパーシャル蒸着法は、蒸着物質を励振電極の所定位置に局所的に形成する手法であり、励振電極の形成された水晶振動素子を励振させ、調整を進めることにより、周波数をモニタリングしながら調整を進めることができる。また励振電極の重みを減少させる方法例としてはイオンミリング法がある。このイオンミリング法はイオンエッチングの一種であり、励振電極や調整用電極の所定の領域をエッチングすることにより質量軽減をはかるもので、パーシャル蒸着法と同等、励振電極の形成された水晶振動素子を励振させ、調整を進めることにより、周波数をモニタリングしながら調整を進めることができる。
【0003】
ところで、このようなパーシャル蒸着法やイオンミリング法は複数個の水晶振動素子に対して調整を進めて行くにつれ、その治工具や周囲雰囲気の温度、すなわち環境温度が上昇する。例えばパーシャル蒸着法は加熱による蒸発金属を用いるために水晶振動素子の温度が上昇するとともに、治工具やその周囲雰囲気の温度も上昇する。これにより漸次調整領域の温度が上昇する。イオンミリングにおいても電極をエッチングする際のエネルギーが熱変換すること等により治工具や周囲雰囲気の温度が上昇する。
【0004】
このような環境温度上昇は、調整を開始した調整の初期段階において大きく、ある程度の温度に達するとほぼ定温状態になる傾向であるが、調整対象の水晶振動素子の周波数温度特性に影響を与える。周知のとおり、水晶振動子等の圧電振動子は周波数温度特性を有しており、例えば屈曲振動を用いる音叉型水晶振動子は常温付近を頂点とする負の2次曲線で示される温度特性を有している。従って、温度が高くなると負の周波数偏差が生じ、調整した周波数は常温においては周波数が高くなり、正確な周波数調整ができないという問題を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、特開平9−107258号(特許文献1)においては、周波数調整前の常温における水晶振動子の振動周波数F0と蒸着時の温度における水晶振動子の振動周波数F1の振動周波数差ΔFを測定演算し、振動周波数調整後の常温における水晶振動子の振動周波数狙い値F2に対しΔFだけずらして振動周波数を調整することで振動周波数調整後の常温の振動周波数がF2になるようにする調整方法を提案している。
【0006】
しかしながら特許文献1においては、周波数調整により水晶振動子の温度が上昇することに対する解決策が示されているのみで、水晶振動子を取り巻く環境温度の変化による特性への影響について、これを補正する点について開示されていない。
【特許文献1】特開平9−107258号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、周波数調整時における環境温度が変化したとしても正確な周波数測定を行うことのできる圧電振動素子の周波数調整方法および圧電振動素子の周波数調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続して複数個の圧電振動素子を周波数調整するにあたり、調整後の温度安定状態で調整後の周波数実測値を基に、補正周波数データを作成し、これを参照することにより連続した周波数調整をより適切に行うものであり、次のような周波数調整方法および周波数調整装置により解決することができる。
【0009】
請求項1は、圧電振動素子の周波数調整領域に形成された電極膜に対して、当該電極膜の形状を変更することにより周波数を調整する、複数個の圧電振動素子の周波数調整方法であって、所定雰囲気中で、圧電振動素子の周波数調整部において当該電極膜の形状を変更することにより、設定された周波数に調整する工程と、当該調整工程のあと所定時間経過後に当該周波数調整部と同じ雰囲気において当該圧電振動素子の周波数を測定する工程と、当該測定時点の圧電振動素子近傍の温度を測定する工程と、当該測定された温度と前記測定された周波数から補正周波数データを得る工程と、当該補正周波数データに基づき前記設定された周波数の調整を行うことを特徴としている。
【0010】
請求項2は、真空環境中で行う音叉型圧電素子の周波数調整方法に関するものであり、音叉型圧電振動素子の周波数調整領域に形成された電極膜に対して、当該電極膜の膜厚を増減することにより周波数を調整する、複数個の音叉型圧電振動素子の周波数調整方法であって、真空室内で、音叉型圧電振動素子の周波数調整部において当該電極膜の膜厚を増加または減少させることにより、設定された周波数に調整する工程と、当該調整工程のあと所定時間経過後に当該周波数調整部と同じ真空室内において当該音叉型圧電振動素子の周波数を測定する工程と、当該測定時点の音叉型圧電振動素子近傍の温度を測定する工程と、当該測定された温度と前記測定された周波数から補正周波数データを得る工程と、当該補正周波数データに基づき前記設定された周波数の調整を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1と2において、周波数測定部における周波数測定は、周波数調整工程の後冷却安定のための所定時間経過後で各圧電振動素子自体の温度バラツキが安定した時点が好ましい。この周波数測定時の温度は常温であることが好ましいが、必ずしも常温で行う必要はなく、温度に従った周波数偏差を考慮することにより、ほぼ正確な補正周波数データを得ることができる。なお、周波数測定時の温度を常温あるいは予め定めた温度環境下で測定するために、周波数調整後の圧電振動素子を強制冷却する等の工夫を行ってもよい。
【0012】
また周波数調整部と周波数測定部は同じ雰囲気に設定する必要があるが、両者を同一の室内に配置してもよいし、雰囲気を同じにした個別の室内に配置してもよい。個別に室内に配置する場合は、ゲートバルブ等で開閉する構成を用いてもよい。室内を個別に設けることにより、温度環境が遮断され、前述の周波数測定時の温度環境を安定させ、正確な周波数を測定することができる。
【0013】
請求項3は複数のベースに接合された圧電振動素子の周波数を調整するを周波数調整装置に関するものであり、所定雰囲気室と、当該所定雰囲気室内を走行する搬送機構と、当該搬送機構により間欠的に移動が行われる、圧電振動素子が接合されたベースを搭載するキャリアと、搬送機構の最初の領域においてキャリアに搭載された圧電振動素子に対して設定周波数にパーシャル真空蒸着を行う周波数調整部と、搬送機構の最後の領域においてキャリアに搭載された圧電振動素子に対して周波数を測定する周波数測定部と、当該最後の領域における圧電振動素子または圧電振動素子近傍の温度を測定する温度測定部と、前記周波数測定部と前記温度測定部の各データから補正周波数データを求める補正周波数データ生成部と、前記補正周波数データに基づき前記周波数調整部に対して新たな設定周波数を与える制御部とからなる構成について開示している。
【0014】
周波数調整や周波数測定を行う雰囲気は、圧電振動素子によって決定すればよく、例えば音叉型水晶振動素子であれば真空雰囲気を適用し、ATカット水晶振動子は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気や真空雰囲気を用いればよい。
【0015】
キャリアにはベースに搭載された圧電振動素子が単数または複数搭載され、搬送機構によりこのキャリアが移動することになり、これにより圧電振動素子が周波数調整部から周波数測定部へと搬送される。周波数調整部と周波数測定部は可能な限り離隔させることが好ましい。これは周波数調整部において圧電振動素子が蒸着物質により加熱され、調整直後の圧電振動素子は個別に調整量が異なることから、各々の温度はばらついている可能性が高いが、周波数測定部が離れていることにより、搬送過程を経ることにより圧電振動素子は冷却されるとともに、圧電振動素子間の温度バラツキも小さくなる。これにより搬送機構により順次周波数測定部に移動してきた時点においては、本来の周波数あるいはこれに近い周波数を測定することができる。従って、補正周波数データ生成部によりつくり出される補正周波数データは誤差の少ないものとなり、この補正周波数データに基づいて新たに設定される設定周波数は現状の周波数調整部の環境温度を反映した、精度の高いものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周波数調整部における周波数調整工程の後、所定時間経過後に当該周波数調整部と同じ雰囲気において当該圧電振動素子の周波数を測定する工程とを有していることにより、周波数測定時には圧電振動素子の本来の周波数あるいはこれに近い周波数を測定することができる。この周波数データを基に補正周波数データをフィードバックさせ、周波数調整部における周波数調整量を制御しているので、周波数調整環境温度にリアルタイムに対応した精度の高い周波数設定をすることができ、正確な周波数調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態について、音叉型水晶振動素子の周波数調整方法を例にとり図面とともに説明する。図1は本実施の形態に係る製造装置の概略構成図であり、図2は調整に用いる水晶振動子の内部構成図、図3はパーシャル蒸着を示す図である。
【0018】
図1において1は真空室、11は周波数調整部、12は周波数測定部、28は温度測定部、20は制御部、25は補正周波数データ生成部である。
【0019】
真空室1内にはゲートバルブ1a,1bと、搬送機構と、搬送機構上を走行するキャリアC1,C2,C3が配置されている。ゲートバルブ1a,1bの開閉により真空室内へのキャリアの搬入、室外への搬出を行う。搬送機構は真空室入口から出口に向かって流れる構成であり、当該搬送機構により各キャリアが移動せしめられる。キャリアC1,C2,C3上にはワーク(被調整体)搭載部が設けられ、1つのキャリアに単数または複数個のワーク3が搭載されている。本実施の形態においてワーク3はリード端子付きのベース31に搭載された音叉型圧電振動素子35であり、図2に示すようにキャップ38を被覆することにより音叉型圧電振動子3となる。音叉型圧電振動素子35の表面には、励振電極35a,35aと調整電極35b、35bが形成されている。
【0020】
周波数調整部11は、パーシャル蒸着部10と、ワークを励振させる発振器21と、発振器からのデータに基づいてパーシャル蒸着部10を制御する周波数コントローラ22と、からなる。発振器21は発振器により音叉型圧電振動素子を発振させ、発振法により周波数を測定する。パーシャル蒸着部10は、音叉型圧電振動素子の振動腕先端部分に設けられた調整電極部分に対し、蒸発金属を付着させることにより、付加質量により周波数を調整する構成である。図3に示すようにパーシャル蒸着部10は、蒸着源Gと、蒸着源Gと調整電極35b間に配置されるシャッタSと、シャッタSの開閉(開閉方向は矢印Mで示す)を制御する制御部(図示せず)とからなる。周波数コントローラ22は発振器から送信される周波数データを監視し、設定周波数に達した時点でパーシャル蒸着部10の制御部に調整停止信号を送信する。温度測定部28は例えばサーミスタ等の温度センサ29とこれに基づき温度を算出する制御部20の一部とからなる。温度センサで検出した温度変動に対する電圧変動データを制御部20に送信し、当該制御部の一部にてAD変換処理並びに温度データへの変換処理を行い、ワーク3Bの環境温度を測定する。制御部20で求められた温度データは補正周波数データ生成部25に送信される。
【0021】
周波数測定部12は発振器23と発振器の周波数を測定する周波数カウンタ24とからなる。発振器21は音叉型圧電振動素子を発振させ、そのデータに基づき周波数カウンタにより周波数を測定する。当該測定された周波数データは補正周波数データ生成部25に例えばシリアルデータ送信される。
【0022】
補正データ生成部25はPC等の演算部、記憶部を有する構成であり、送信された前記周波数測定部で測定された周波数データと測定時点あるいはその近傍時点の温度データに基づき、常温時の周波数データを演算するとともに補正周波数データを制御部20にシリアルデータ送信する。
【0023】
制御部20は補正周波数データに基づき周波数コントローラ22に対し、新たに設定された設定周波数をシリアルデータ送信し、更正された周波数データをフィードバックすることができる。
【0024】
次に周波数調整を進め、周波数調整後の周波数測定データに基づいて周波数調整部の設定周波数を補正する手順について説明する。
【0025】
真空室のゲートバルブ1aが開けられ、図示しない真空前室から3つのワークの搭載されたキャリアC1が搬入される。真空室には既にキャリアC2,C3が格納されており、これらキャリアに搭載されたワークについては周波数調整が完了している。キャリアC1の搬入により、他のキャリアは周波数測定部12側に順次搬送機構により搬送される。搬送機構の最初の領域にて周波数調整部が設けられており、キャリアC1に搭載されたワークが順次パーシャル蒸着により周波数調整される。
【0026】
周波数調整部に移動したワーク3Aはコンタクト部26により発振器21と接続される。コンタクト部26は接触したワークのリード端子32,33がそれぞれ独立して発振器に電気的接続できる機構を有するもので、ワークに対して発振器から駆動電圧が供給される。発振法により確認できた周波数と設定周波数を比較し、両者に齟齬が有ればパーシャル蒸着を実行する。設定周波数は周波数コントローラに記憶されており、当該設定周波数になるまで前記パーシャル蒸着部のシャッタを開放し、付加質量による周波数調整を行う。設定周波数に達するとシャッタを閉じ周波数調整を完了し、搬送機構の間欠動作により次のワークをコンタクト部26に接触させ、周波数調整を行う。
【0027】
このようにキャリア上のすべてのワークに対し周波数調整を実行し、これが完了すると次のキャリアのワークに対し調整動作を実行する。調整の完了したワークを搭載したキャリアは順次真空室内を搬送され、搬送機構の最後の領域にある周波数測定領域に送られる。この周波数調整部から周波数測定部への搬送の際にワークの温度は低下するとともに、個々の温度バラツキも収束する。
【0028】
周波数測定部においては周波数調整部と同じくコンタクト部27にリード端子が接続され、発振器により励振したワーク3Bの周波数を周波数カウンタ24にて測定する。また周波数測定領域近傍に設けられた温度センサ29を有する温度測定部28により、前記周波数測定時点あるいはその近傍時点の環境温度を測定する。周波数データおよび温度データにより補正データを生成し、最終的に制御部から補正された新たな周波数データが制御データとして周波数コントローラに送信され、フィードバック制御が行われる。
【0029】
なお上記実施の形態においては、周波数調整部としてパーシャル蒸着を用いた付加質量による調整方法を適用したが、これに限定するものではなく、電極膜の厚さを減じる方法を採用してもよく、例えばイオンミリング法を用いてもよい。イオンミリング法は前述のとおりイオンエッチングの一種であり、励振電極や調整用電極の所定の領域をエッチングすることにより質量軽減をはかるものである。この場合、予め調整領域を決定しておき、当該調整領域の膜厚を厚く(周波数を高く)設定しておく。前述の周波数調整部においては当該調整領域に対しイオンミリングを実行し、周波数コントローラに設定された設定周波数になった時点でイオンミリングを停止する。イオンミリングの場合もシャッタ開閉により調整制御を行うことができる。イオンミリング法によっても、調整時の熱の影響で環境温度が上昇するが、本発明による周波数測定部の周波数データおよび温度データに基づく補正周波数データのフィードバックを行うことにより、精度の高い周波数調整を行うことができる。
【0030】
また、周波数調整部11と周波数測定部12間にワークを冷却する冷却ユニットを設けてもよい。この冷却は周波数調整および測定の雰囲気にもよるが、ワークやキャリア等に対して接触することにより冷却したり、冷却ガス等の気体媒体を用いることにより所定の温度(例えば25℃に設定された常温)に調整すればよい。これにより、より高精度な周波数測定を行うことができる。
【0031】
図4は図1のような構成において周波数調整部11と周波数測定部12間に冷却ユニットを配置した例を示すワーク冷却構成図である。冷却ユニット4は水冷式であり、冷却水40を循環させる循環管路42のなかに、ワーク3に接触する冷却部41と、冷却水を冷却する熱交換器43と、冷却水を循環させるポンプ44と、を有している。ワーク3は図1で示したようなキャリアC2に複数個搭載された水晶振動素子であり、各々音叉型水晶振動素子35が金属製のベース31に直立して搭載されている。冷却部41はこの各ベース31に接触することによりワークを冷却する構成であり、ベースに接触する冷却コンタクト部41aとベースに接しない断熱部41bとからなる。当該冷却コンタクト部内部には冷却水40が循環する循環管路42が長手方向に延在するように構成されている。冷却コンタクト部41aは熱伝導性の良好な銅等の金属材料が用いられ、冷却水40により冷却された冷却コンタクト部41aは効率よく熱を吸収し、ワーク3を冷却することができる。なお、断熱部41bは熱の遮断を行い、冷却コンタクト部41aへの無用な熱の伝搬を防止する。また冷却部41は矢印B方向に移動可能に構成されており、キャリアC2によって所定の冷却領域に搬送されたベース3に対し、接触または離隔させることができる。
【0032】
図5は図4のA−A断面図であるが、キャリアC2に搭載されたワーク3に冷却部41が接触した状態を示している。冷却部41の冷却コンタクト部41a内には循環管路42が形成され、この内部を冷却水40が循環している。冷却された冷却コンタクト部41aがワークのベース31に接触することにより、ワークの熱を吸収し強制冷却する。なお、この実施の形態においては、冷却部はワークの片側にしか接触しない構成であるが、冷却部を一対構成とし、ワークに対して両側から冷却する構成としてもよい。本構成によると冷却構造は複雑になるが、冷却効率を向上させることができる。
【0033】
熱交換器43は水冷式のチラーであり、循環管路の冷却水40を冷却し、ポンプ44により循環管路内の冷却水40を矢印C方向に循環させる。このような構成により、熱交換器43で冷却された冷却水40はポンプ44により循環管路42を循環し、冷却部41にてワーク3を冷却する。熱交換により加温された冷却水40は前記熱交換器43まで循環し、次の冷却動作が行われる。
【0034】
さらに、温度測定部28による温度測定はサーミスタ等による温度センサを例示したが、他の温度測定素子でもよく、また放射温度計により素子自体の温度を測定してもよい。この場合より正確にな温度測定を行うことができ、周波数測定の精度向上に寄与する。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に開示したシステム構成に限定されるものではなく、補正周波数データ生成部にPCを用いているが、このPCに制御部20等の機能を持たせてもよい。
【0036】
また本実施の形態においては、音叉型水晶振動素子の周波数調整例について説明したが、例えばATカット水晶振動素子や他の振動モードの圧電振動素子の周波数調整に適用してもよい。なお、上記実施の形態においては周波数調整を調整電極に対して行ったが、上記各種圧電振動素子に形成された励振電極に対して行ってもよい。
【0037】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
水晶振動子等の圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による実施の形態を示す図
【図2】本発明による実施の形態を示す図
【図3】本発明による実施の形態を示す図
【図4】ワーク冷却構成を示す図
【図5】図4のA−A断面図
【符号の説明】
【0040】
1 真空室
11 周波数調整部
12 周波数測定部
20 制御部
25 補正データ生成部
28 温度測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子の周波数調整領域に形成された電極膜に対して、当該電極膜の形状を変更することにより周波数を調整する、複数個の圧電振動素子の周波数調整方法であって、
所定雰囲気中で圧電振動素子の周波数調整部において当該電極膜の形状を変更することにより、設定された周波数に調整する工程と、当該調整工程のあと所定時間経過後に当該周波数調整部と同じ雰囲気において当該圧電振動素子の周波数を測定する工程と、当該測定時点の圧電振動素子近傍の温度を測定する工程と、当該測定された温度と前記測定された周波数から補正周波数データを得る工程と、当該補正周波数データに基づき前記設定された周波数の調整を行うことを特徴とする圧電振動素子の周波数調整方法。
【請求項2】
音叉型圧電振動素子の周波数調整領域に形成された電極膜に対して、当該電極膜の膜厚を増減することにより周波数を調整する、複数個の音叉型圧電振動素子の周波数調整方法であって、
真空室内で音叉型圧電振動素子の周波数調整部において当該電極膜の膜厚を増加または減少させることにより、設定された周波数に調整する工程と、当該調整工程のあと所定時間経過後に当該周波数調整部と同じ真空室内において当該音叉型圧電振動素子の周波数を測定する工程と、当該測定時点の音叉型圧電振動素子近傍の温度を測定する工程と、当該測定された温度と前記測定された周波数から補正周波数データを得る工程と、当該補正周波数データに基づき前記設定された周波数の調整を行うことを特徴とする音叉型圧電振動素子の周波数調整方法。
【請求項3】
ベースに接合された圧電振動素子の周波数調整装置であって、
所定雰囲気室と、当該所定雰囲気室内を走行する搬送機構と、当該搬送機構により間欠的に移動が行われる、圧電振動素子が接合されたベースを搭載するキャリアと、搬送機構の最初の領域においてキャリアに搭載された圧電振動素子に対して設定周波数にパーシャル真空蒸着を行う周波数調整部と、搬送機構の最後の領域においてキャリアに搭載された圧電振動素子に対して周波数を測定する周波数測定部と、当該最後の領域における圧電振動素子または圧電振動素子近傍の温度を測定する温度測定部と、前記周波数測定部と前記温度測定部の各データから補正周波数データを求める補正周波数データ生成部と、前記補正周波数データに基づき前記周波数調整部に対して新たな設定周波数を与える制御部とからなる圧電振動素子の周波数調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−43549(P2007−43549A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226723(P2005−226723)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】