説明

圧電部材を用いたイオン導入器

【課題】この発明は、圧電モバイル素子を利用した携帯可能なイオン導入器を提供せんとするものである。
【解決手段】 少なくとも1つ以上の圧電素子を、通電性を有する振動板の片面又は両面に取り付けることで圧電部材1を形成し、前記圧電素子に手と接触する第1電極7を接続するとともに、前記振動板には皮膚の所望位置に接触させる第2電極8を接続し、前記第1電極7と第2電極8の回路5a、5b間に整流器6を配置し、前記圧電部材1の応力変形に伴って生じた起電力を前記第2電極8を介して皮膚に印加させるイオン導入器2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の薬剤を経皮投与するイオン導入器の電源として、圧電部材の応力変形によって生じる起電力を利用するイオン導入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン導入或いはイオントフォレシスと呼ばれる肌に微弱な電流を流すことで薬剤の浸透を促進する方法が従来より知られている。
【0003】
その方法としては、化粧品、医薬品などを皮膚表面に塗布した後、該塗布部に電極を貼付し、電流を流しながら薬剤を浸透させる方法で、例えば、陰イオン性の薬剤を浸透させる場合は、化粧品などを塗布した部位に陰極を当接させ、他の部位に陽極を当接させることによって閉回路を形成し、該閉回路に電流が流れることによって薬剤を浸透させというものである。
【0004】
化粧品、医薬品などにおいては、美白、育毛などのための薬剤が含有されており、美白用の薬剤では、L−アスコルビン酸、グルタチオン、トラネキサム酸、アルブチン、コウジ酸等の塩及び誘導体が用いられており、これら薬剤の効果をより発揮させるために、イオン導入の方法が提案されている。
【0005】
特に、シミ、ソバカスなどの部分的な色素沈着の場合は、このような部分的な色素沈着の部位に、美白薬剤を含む化粧品、医薬品などを塗布し、該塗布部にイオン導入を行い、効果的に色素沈着の改善を図る試みが行われている。
【0006】
また、育毛剤においては、特開平10−265349号公報に示されるような各種植物抽出液を含有する育毛剤を頭皮に塗布し、塗布後、イオン導入を行い、育毛効果を高める試みも行われている。
【0007】
これら美白、育毛などの効果をイオン導入器を用いて高めるためには、頻繁に化粧品又は医薬品を塗布し、塗布後、イオン導入を行わなければならないが、従来からあるイオン導入の装置は、大型で装置が複雑なため、いつでも手軽にできるものではなかった。
【0008】
また、イオン導入の装置は、電極の極性を一定に保つことが要求され、このため電源は直流とされる。更に、通電時には、通電による皮膚の分極に起因する薬剤透過率が低下することが知られているため、これを防止するために間欠的に電圧の印加を行うということが必要とされ、これをなすためには回路内に所定のプロセッサを組み込む必要が生じ、この場合、装置が複雑化、大型化するという問題があった。また直流電源として電池を用いる構成とする場合には、電池交換等の煩わしさがあった。そのようなイオン導入器の代表的な例として特開平8−266328号公報に開示されているような技術を挙げることができる。また、電源を交流とする場合は、ダイオード等の整流素子を組み込めばよいため、装置は簡単であるが、電源への接続回路が必要となる煩わしさがあった。
【0009】
他方、特開2004−87662号公報に開示されているように、従来より応力を加えることでピエゾ電流が生じる圧電素子を表裏に貼り合わせ、それぞれの素子に応力を付与することで、応力変形時に起電力を得られるようにした所謂圧電部材が知られている。
【0010】
しかしながら、イオン導入を圧電部材の応力変形によって生じる起電力を電源として構成されたものは存在しなかった。
【特許文献1】特開平10−265349号公報
【特許文献2】特開平8−266328号公報
【特許文献3】特開2004−87662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上記の如くの従来の問題点に鑑みてなされたものであり、複雑な回路を必要とせず、簡単且つ低コストな構造にして、電極の極性を一定に保ちつつ、電池や電池交換或いは、外部電源への接続が不要で、持ち運びでき、家庭内においても手軽にイオン導入が可能なイオン導入器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
少なくとも1つ以上の圧電素子を、通電性を有する振動板の片面又は両面に取り付けて圧電部材を形成し、前記圧電素子に手と接触する第1電極を接続するとともに、前記振動板には皮膚の所望位置に接触させる第2電極を接続し、前記第1電極と第2電極の回路間に整流器を配置し、前記圧電部材の応力変形に伴って生じた起電力を前記第2電極を介して皮膚に印加させることを特徴とする。
【0013】
また、電極の少なくとも一方が前記圧電部材と連動して振動するように構成されることを特徴とする。
【0014】
また、回路が整流器の正極端子に接続される回路と整流器の負極端子に接続される回路からなり、それぞれの回路間に、抵抗素子又は電子制限素子を取り付けたことを特徴とする。
【0015】
また、圧電部材を支持するように連結される柄をグリップして圧電部材を振動させると共に、圧電部材と共にパッティング部を振動させて、該パッティング部に配設された第2電極を被薬剤浸透部である皮膚にパッティングして該皮膚に微弱電流を導通させるように構成されることを特徴とする。
【0016】
また、パッティング時において、所定の通り電流が導通しているかを確認し得るように、イオン導入器内の回路中に出力モニターを配置し、導通時には該出力モニターが発光するように構成されることを特徴とする。
【0017】
また、圧電素子の表面上に押圧体を固設して押圧体が周辺部材に衝突したときに生じる撃力によって圧電素子に起電力を生じさせるように構成されることを特徴とする。
【0018】
また、イオン性の薬剤を含浸させた吸湿体を第2電極上に敷設して、該吸湿体を皮膚にパッティングするように構成されることを特徴とする。
【0019】
また、圧電部材の一端を外装体内に止着し、他端が外装体内で自由に揺動するとともに、前記外装体の外周面に第1電極と第2電極をそれぞれ配置し、前記外装体の揺動にともなって前記圧電部材に生じた起電力を第2電極を介して皮膚に印加させることを特徴とする。
【0020】
また、圧電部材の一端を外装体内に止着し、該圧電部材の他端の先端部近辺に錘を配置し、前記外装体を揺動させたとき、前記錘の加重によって前記圧電部材の揺動が拡大され、圧電部材に電気を発生させることを特徴とし、圧電素子の回路と振動板の回路間に電子制限素子を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、複雑な回路を必要とせず、簡単且つ低コストな構造にして、電極の極性を一定に保ちつつ、電池や電池交換或いは、外部電源への接続が不要で、持ち運びでき、家庭内においても手軽に、かつ、半永久的にイオン導入が可能で、より美白、育毛などの薬剤の効果を高めるイオン導入器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
請求項1から7に係る発明は、柄体(10)を握りながら、イオン導入器の先端部を振ることで、該先端部と連結している圧電部材に起電力を発生させるもので、ここでは、強制振動モデルのイオン導入器と呼ぶ。また、請求項8から11に係る発明は、外装体(18)内に配置した圧電部材の一端を固定して、他端が自由に動く構造で、人が外装体(18)を揺動することによって、圧電部材に起電力を発生させるもので自由振動モデルのイオン導入器と呼ぶ。ここで、圧電部材と呼ぶものは、圧電素子に加えられた力を電圧に変換する、或いは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子の一つで、モノモルフ型、バイモルフ型、積層型が存在するが、本発明では、これら全ての型を利用することができる。
【0023】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。図1は、本発明の請求項1から7に係る強制振動モデルのイオン導入器の主要な構成を示す概念図であり、図2は、バイモルフ型の圧電部材(1)の応力変形と起電力発生の様子を示す模式図である。
【0024】
図1及び2に示すように、本発明を適用したイオン導入器(2)の主要な構成は、振動板(13)の両面に二つの圧電素子(4a)(4b)が貼り合わせてなるバイモルフ型の圧電部材(1)を備え、前記二つの圧電素子(4a)(4b)にそれぞれ接続される回路(5a)(5b)と、該回路(5a)(5b)同士を連絡するように接続される整流器(6)とを有し、前記該回路(5a)(5b)の先端には、それぞれ第1電極(7)と第2電極(8)を備え、これらの電極(7)(8)のうちマイナス極側の第2電極(8)を前記圧電部材(1)に連動して振動するように連動体(9)を介して該圧電部材(1)を連結し、前記連動体(9)と圧電部材(1)を支持する柄体(10)にプラス極側の第1電極(7)を配置して構成され、また前記整流器(6)のアノード端子に接続される回路(5a)に、該整流器(6)の整流方向に合わせて出力モニター(11)が配設されている。図1においては、整流器(6)のアノード端子側に回路(5a)が繋がり、第2電極(8)がマイナス極となっている。また、整流器(6)のカソード端子側は、回路(5b)が繋がっていて第1電極(7)がプラス極となっている。薬剤水溶液の種類に応じて、整流器(6)への回路(5a)(5b)の接続を変えることで、第1電極(7)をマイナス極に第2電極(8)をプラス極に変更してイオン導入を行うことができる。
【0025】
図2A及びBに示すように、本実施の形態における圧電部材(1)は、二つの圧電素子(4a)(4b)を有し、これらの圧電素子(4a)(4b)が振動板(13)を挟んで貼り合わせられ、それぞれの圧電素子(4a)(4b)に接続される回路(5a)(5b)を有して構成され、それぞれの圧電素子(4a)(4b)に応力を付与して表裏方向に変形させて起電力を得ることができるようになっている。
【0026】
図2Aに示すように、この圧電部材(1)が上方に向かって反って、圧電素子(4a)が収縮し圧電素子(4b)が伸張するときには圧電素子(4a)が陰極、圧電素子(4b)が陽極となって起電力を生じ、逆に図2Bに示すように、該圧電部材(1)が下方に向かって反って、圧電素子(4a)が伸張し圧電素子(4b)が収縮するときには圧電素子(4a)が陽極、圧電素子(4b)が陰極となって起電力を生じる。従って、この圧電部材(1)を表裏方向に振動させるとき、その往復時にはそれぞれ起電力の向きが交番して逆向きの電流が発生する交流となる。
【0027】
しかし、交流電流を肌に導通させると、導通する微弱電流による薬剤の浸透効率が低下するので、肌をパッティングする第2電極(8)は極性を一定に保つことが要求され、これを達するために当該発明においてはイオン導入器(2)の回路中に整流器(6)を配置して、一定方向だけ電流が流れるようにしている。
【0028】
整流器(6)は、水銀整流器、亜酸化銅整流器、セレン整流器、シリコン整流器などが知られているが小型化、携帯性を考慮するとダイオードのシリコン整流器が好ましい。
【0029】
以上のように構成されるイオン導入器(2)を使用するときは、柄体(10)に配置された陽第1電極(7)に手が当接するように該柄体(10)をグリップし、該柄体(10)を上下若しくは左右等に振りながら圧電部材(1)と共にパッティング部(12)を振動させ、起電力を生じさせつつパッティング部(12)に配置された第2電極(8)を陰極化させて、これを薬剤の浸透対象である部分の皮膚にパッティングして、このパッティングに際して、イオン導入器(2)と一連となった皮膚とが閉回路を形成し、パッティングの度に微弱電流を肌に導通させる。電流の導通時にはイオン導入器(2)内に配設された出力モニター(11)が発光し、導通の有無を視認することができるようになっている。
【0030】
図3には、このように構成されるイオン導入器(2)の概念図を示してある。また、図4では図3の概念図を具体化したパッティング部(12)を有する強制振動モデルのイオン導入器を示している。更に図5では、柄体(10)に連動体(9)を取り付け、該連動体(9)の上面に圧電部材(1)を、更に圧電部材(1)の上に連動体(9)が上下に動いたときに柄体(10)の内面に衝突して圧電部材(1)を起電する押圧体(14)を組み込んだ例を示している。また、図6では、育毛剤などのイオン導入に適した形状のイオン導入器の例を示している。これらの詳細については、後に実施例1、2として記載する。
【0031】
図7は、本発明の請求項8から12に係る自由振動モデルのイオン導入器(2)の主要な回路構成を示す図である。図7に示されるように、二つの圧電素子(4a)(4b)を通電性を有する振動板(13)の両面に取り付けることで圧電部材(1)を形成し、この圧電部材(1)の一端を外装体(18)内に止着させ、他端を外装体(18)内で自由に揺動するタイプのイオン導入器である。二つの圧電素子(4a)(4b)には、それぞれ回路(5a)を接続し、通電性を有する振動板(13)には、回路(5b)が接続されている。更に、回路(5a)と回路(5b)を連絡するように接続される整流器(6)と電圧制限素子(3)とを有し、前記回路(5a)(5b)のそれぞれの先端には第1電極(7)と第2電極(8)を接続してある。また、回路(5a)の電圧制限素子(3)と第1電極(7)の間には出力を確認できるように出力モニター(11)が配置されている。
【0032】
この自由振動モデルのイオン導入器(2)に於いても、前述したように回路(5a)(5b)の整流器(6)への接続を変えることで、第1電極(7)と第2電極(8)のプラス極とマイナス極を変えることができる。また、外装体の形状によっては、後述する実施例4に見られるように外装体(18)の上下に反転させ、第2電極(8)側に指をあて、第1電極(7)からイオン導入を行うこともできる。この自由振動モデルのイオン導入器は、発生する電流が外装体(18)の揺動に伴い、振動周波で生じてくるため、皮膚に電流を流す場合に角質のインピーダンスが低くなり、継続的に注入することができるという特徴がある。尚、ここで圧電部材(1)は、バイモルフ型の圧電部材を電源として使用しているが、前述したようにモノモルフ型、積層型の圧電部材を利用できることは言うまでもない。
【0033】
また、回路(5a)(5b)間に配置されている整流器(6)は、前述した整流器(6)と同様に一般的なダイオードを用いることができる。また、回路(5a)(5b)間に配置されている電圧制限素子(3)は、皮膚に大容量の電流が流れることを防止するための素子であり、出力保護用のツェナーダイオード又は一般的な電気抵抗を利用することが出来る。それぞれの回路(5a)(5b)の先端にある第1電極(7)と第2電極(8)は、金属などの電気通電体で作られている。自由振動モデルのイオン導入器の場合は、外装体(18)の表面と裏面にそれぞれ第1電極(7)と第2電極(8)が配置され、第1電極に手をあてがいながら外装体(18)を持ち、皮膚に第2電極をパッテイングさせることで美白剤、育毛剤などのイオン導入を行うことができる。
【実施例1】
【0034】
以下に、請求項1から8に係る強制振動モデルのイオン導入器(2)の一実施例について、図3乃至5を参照しながら説明する。ただし、以下では図1及び2と同様の構成についての詳細は省略する。
【0035】
図3は、図1に示すイオン導入器(2)の概念図であり、図4は図3の概念図を具体化したパッティング部(12)を有するイオン導入器(2)の斜視図であり、図5は本実施例におけるイオン導入器(2)の柄体(10)周辺を拡大し、圧電部材(1)の振動の様子を示す模式図である。
【0036】
図3乃至5に示すように、本実施例におけるイオン導入器(2)は、弾性を有する長手板状の連動体(9)の下端部近傍に、上述と同様の圧電部材(1)と、該圧電部材(1)を押圧するための押圧体(14)と、整流器(6)が固定され、前記連動体(9)の下端を固定しつつ、先端方向に掛けて拡開するように開口した中空の柄体(10)を有し、この柄体(10)の内部においてその下端が固定されて支持されながら前記連動体(9)が振動し得るように構成されている。また、柄体(10)の表面上には圧電部材(1)に接続された第1電極(7)が配置されている。そして、連動体(9)の先端にはパッティング部(12)が固定され、該パッティング部(12)の表面上に圧電部材(1)に接続された第2電極(8)が配置されている。
【0037】
以上のように構成されるイオン導入器(2)の場合、柄体(10)を手でグリップしながら、上下等に振ると、その下端のみが柄体(10)に連結されて固定されている連動体(9)が上下に振動し、その際、圧電部材(1)の上部に配置された押圧体(14)が、柄体(10)の内壁面に衝突することによって、振動による圧電部材(1)の応力変形に加えてさらに衝撃力が該圧電部材(1)に負荷されるので、より一層確実に起電力を得ることができる。
【実施例2】
【0038】
次に、強制振動モデルのイオン導入器(2)の一変形例について、図6を参照しながら説明する。図6に示すイオン導入器(2)は、弾性を有する中空で長手板状の連動体(9)の内部に整流器(6)を備えた圧電部材(1)を有し、該圧電部材(1)の下端には、円柱状の柄体(10)が連動体(9)を振動し得るようにして支持するように配置され、該柄体(10)の表面上には圧電部材(1)に接続された第1電極(7)が配置され、前記連動体(9)の先端にはパッティング部(12)が固設され、該パッティング部(12)の片側表面上には剣山様に形成された第2電極(8)が配置されて構成されている。
【実施例3】
【0039】
次いで、請求項8から12に係る自由振動モデルのイオン導入器(2)の実施例について、図8乃至12を参照しながら説明する。図8及び9に示される本実施例におけるイオン導入器(2)は、箱状の外装体(18)内に、通電性を有する振動板(13)の両面に圧電素子(4a)(4b)を取り付けてなるバイモルフ型の圧電部材(1)の一端を固定して、外装体(18)を所定の方向でパッティングしたとき、外装体(18)に加わるパッティングの振動に連動して
圧電部材(1)が該外装体(18)内において振動し、起電力が得られるように配置されている。そして、圧電部材(1)に回路(5a)(5b)を介して接続された第1電極(7)が、前記外装体(18)の下端の裏面に配置されている。また外装体(18)の下端の裏面には、手を通してイオン導入器(2)を保持しやすくするための装着帯(20)が設けられている。
【0040】
外装体(18)の上端の表面には、圧電部材(1)に接続された第2電極(8)が配置されている。また、一端が外装体(18)の上端の端部に軸支されて開閉し得るように取り付けられる該外装体(18)とほぼ同等の平面積及び形状を有し、その周辺を枠状に残して内側が表裏に貫通して開口した枠体(21)を備えて構成され、本イオン導入器(2)の外形が、全体として所謂パフ様に形成されている。
【0041】
以上のように構成されるパフ様のイオン導入器(2)を使用する場合には、例えば、水溶液中で負に帯電するビタミンC誘導体を水に溶かし、第2電極(8)の面積及び形状よりも大きな面積及び形状を有する前記水溶液を含浸させた紙様の吸湿体(23)を本例におけるイオン導入器(2)の第2電極(8)上に敷設し、枠体(21)を閉めて固定する。この状態において、ビタミンC誘導体水溶液を含浸させた紙様の吸湿体(23)は、枠体(21)に形成された開口部(24)から上部に若干突出して露出した状態となっている。そこで、この吸湿体(23)を表面に露出したパフ様のイオン導入器(2)をパフを使用するようにして頬等にパッティングして使用する。このようにして、実際に、ビタミンC誘導体の浸透効果を測定したところ、イオン導入器(2)を使用しないノーマルのパフで行った場合と比較して約2倍の浸透促進効果があることが発明者等の実験によって示されている。
【実施例4】
【0042】
更に、自由振動モデルのイオン導入器(2)の実施例について、図10乃至12を参照しながら説明する。本実施例におけるイオン導入器(2)は、持ち運びに便利なようにコンパクトに設計したイオン導入器(2)である。図10及び11に示されるイオン導入器(2)は、指先で掴み振動させる大きさのもので、上蓋(16)と下蓋(17)からなる外装体(18)内に一端を固定し他端が揺動する圧電部材(1)が配置されている。圧電部材(1)の揺動する側の先端近辺には、イオン導入器(2)でパッティングした際に、パッティングで生じる振動で圧電部材(1)を効率よく振動させるための錘(19)が取り付けられている。上蓋(16)の天面と下蓋(17)の底面には、それぞれ金属製の第1電極(7)と第2電極(8)が配置され、これらの電極は回路(5a)(5b)を介して圧電部材(1)と繋がっている。更に、下蓋(17)の底部には、吸湿体(23)を保持するためのリング部材(22)を設けてある。このように構成されるイオン導入器(2)は、次のように使用される。まず、導入したい薬剤水溶液を含浸させた吸湿体(23)を第2電極(8)とリング部材(22)の間に配置する。続いて、イオン導入器(2)の第1電極(7)に人さし指を添えて、親指と中指を上蓋(16)と下蓋(17)の側面にあてがい、吸湿体(23)が肌にあたるようにパッティングさせることで第2電極(8)からイオン導入を行う。この自由振動モデルのイオン導入器(2)においては、薬剤水溶液の種類に応じて整流器(6)への回路(5a)(5b)の接続を変える必要はなく、外装体(18)の上下を反転させ、第2電極(8)側に指をあて、第1電極(7)からイオン導入を行うこともできる。また、起電力の状態は、圧電部材(1)と第1電極(7)との間に配置された出力モニター(11)で確認することができ、該出力モニター(11)の起電力は、外装体(18)前方に設けられた窓孔(15)によって確認することができる。
【実施例5】
【0043】
次いで、化粧用のコンパクト様容器とした、自由振動モデルのイオン導入器(2)の実施例について説明する。図12は、化粧用コンパクト様容器を開いた状態の斜視図で、実施例4と同様に上蓋(16)の外面と下蓋(17)の外面には、金属製の第1電極(7)と第2電極(8)が配置されている(図示せず)。化粧用のコンパクト様容器の内部には、実施例4と同様に一端を固定し他端が揺動する圧電部材(1)が配置されている。圧電部材(1)は、前述しているように振動板(13)の両面に圧電素子(4a)(4b)が取り付けられている。また、圧電部材(1)と第1電極(7)と第2電極(8)は回路(5a)(5b)を介して、通電するようになっており、圧電部材(1)と第1電極(7)との間には出力モニター(11)が配置されている。該出力モニター(11)は、化粧用のコンパクト様容器を閉めた状態において、出力モニター(11)の一部が前記容器から飛び出るように配置され、起電力を確認できるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】強制振動モデルのイオン導入器の主要な構成を示す概念図
【図2】図1に示す圧電部材の応力変形と起電力発生の様子を示す模式図
【図3】図1に示すイオン導入器の主要な構成を応用してなる概念図
【図4】図3に示す構成を備えた実施例1に係るイオン導入器の斜視図
【図5】実施例1に係るイオン導入器の柄体周辺を拡大し、圧電部材の振動の様子を示す模式図
【図6】実施例2に係るイオン導入器を示す斜視図
【図7】自由振動モデルのイオン導入器の主要な構成を示す概念図
【図8】実施例3に係るイオン導入器の斜視図
【図9】図8に示すイオン導入器の断面図
【図10】実施例4に係るイオン導入器の斜視図
【図11】図10に示すイオン導入器の断面図
【図12】実施例5に係るイオン導入器の斜視図
【符号の説明】
【0045】
1 圧電部材
2 イオン導入器
3 電圧制限素子
4a 圧電素子
4b 圧電素子
5a 回路
5b 回路
6 整流器
7 第1電極
8 第2電極
9 連動体
10 柄体
11 出力モニター
12 パッティング部
13 振動板
14 押圧体
15 窓孔
16 上蓋
17 下蓋
18 外装体
19 錘
20 装着帯
21 枠体
22 リング部材
23 吸湿体
24 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の圧電素子を、通電性を有する振動板の片面又は両面に取り付けて圧電部材を形成し、前記圧電素子に手と接触する第1電極を接続するとともに、前記振動板には皮膚の所望位置に接触させる第2電極を接続し、前記第1電極と第2電極の回路間に整流器を配置し、前記圧電部材の応力変形に伴って生じた起電力を前記第2電極を介して皮膚に印加させることを特徴とするイオン導入器。
【請求項2】
電極の少なくとも一方が前記圧電部材と連動して振動するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のイオン導入器。
【請求項3】
第1電極と第2電極の回路が、それぞれ整流器の正極端子に接続される回路と整流器の負極端子に接続される回路からなり、それぞれの回路間に、抵抗素子又は電圧制限素子を取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン導入器。
【請求項4】
圧電部材に連結される柄を有し、この柄に、第1電極が接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のイオン導入器。
【請求項5】
圧電部材に連結されるパッティング部を有し、このパッティング部に、第2電極が接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のイオン導入器。
【請求項6】
整流器と第2電極の間の回路に、出力モニターが配設されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のイオン導入器。
【請求項7】
圧電素子の表面上に押圧体を固設して押圧体が周辺部材に衝突したときに生じる衝撃力によって圧電素子に起電力を生じさせるように構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のイオン導入器。
【請求項8】
圧電部材の一端を外装体内に止着し、他端が外装体内で自由に揺動するとともに、前記外装体の外周面に第1電極と第2電極をそれぞれ配置し、前記外装体の揺動にともなって前記圧電部材に生じた起電力を第2電極を介して皮膚に印加させることを特徴とする請求項1に記載のイオン導入器。
【請求項9】
圧電部材の一端を外装体内に止着し、該圧電部材の他端の先端部近辺に錘を配置し、前記外装体を揺動させたとき、前記錘の加重によって前記圧電部材の揺動が拡大され、圧電部材に電気を発生させることを特徴とする請求項8に記載のイオン導入器。
【請求項10】
第1電極と第2電極の回路が、それぞれ整流器の正極端子に接続される回路と整流器の負極端子に接続される回路からなり、それぞれの回路間に、抵抗素子又は電圧制限素子を取り付けたことを特徴とする請求項8又は9に記載のイオン導入器。
【請求項11】
イオン性の薬剤を含浸させた吸湿体を第2電極上に敷設して、該吸湿体を皮膚にパッティングするように構成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のイオン導入器。
【請求項12】
整流器と第2電極の間の回路に、出力モニターが配設されることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のイオン導入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−87914(P2006−87914A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245078(P2005−245078)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】