在庫管理方法
【課題】在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことを支援する。
【解決手段】品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置において、在庫管理装置の記憶部は、品目の販売数の履歴を示すデータと、品目の在庫数の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶している。入力部からの入力により、散布図にプロットされる品目の販売数および在庫数を決定する日である表示日と、表示日とは異なる日である比較日とを特定する。記憶部から、表示日における販売数と、比較日における販売数と、表示日における在庫数と、比較日における在庫数を取得し、当該品目について比較日と表示日との間に生じた販売数の変化度および在庫数の変化度を算出する。表示部は、算出した販売数の変化度および在庫数の変化度を、矢印や特殊記号などの表示態様で散布図に表示する。
【解決手段】品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置において、在庫管理装置の記憶部は、品目の販売数の履歴を示すデータと、品目の在庫数の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶している。入力部からの入力により、散布図にプロットされる品目の販売数および在庫数を決定する日である表示日と、表示日とは異なる日である比較日とを特定する。記憶部から、表示日における販売数と、比較日における販売数と、表示日における在庫数と、比較日における在庫数を取得し、当該品目について比較日と表示日との間に生じた販売数の変化度および在庫数の変化度を算出する。表示部は、算出した販売数の変化度および在庫数の変化度を、矢印や特殊記号などの表示態様で散布図に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の在庫管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品(例:非耐久消費財)を扱う企業は、一般的に、SKU(Stock Keeping Unit:在庫保管単位)により、例えば、数千に及ぶ品目として扱うことで製品の在庫管理を行っている。Tシャツを例にとると、そのサイズ別(Sサイズ、Mサイズ、Lサイズなど)や色別(白、赤、青など)に在庫管理が行われる。なお、在庫管理は、SKUを用いたものに限定しない。
【0003】
在庫管理では、過剰や欠品といった在庫管理上の問題が起こっていたり、起こり得たりする品目をいち早く見つけ出し、重点的に管理するための意思決定が求められている。特許文献1では、2つの品目判定指標を軸とし、品目ごとにプロットした散布図を用いて品目分布状況を表示部に表示するとき、ユーザが定めた指標に基づく指標値にしたがってプロットの形を変更し、任意の分割線を引いて散布図を分割し、分割された各領域でプロットの形状が同じものをグループ化する旨が開示されている。これにより、問題のある品目を強調表示し、ユーザに容易に理解させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−309390号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、散布図という性質上、プロットとして表示されている品目について、その指標値の経時変化を表示部に表示することはない。このため、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことは容易でない。
【0006】
本発明では、このような事情を鑑みて、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すなどし、より適切な在庫管理の意思決定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、
品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置による在庫管理方法において、
前記在庫管理装置の記憶部は、
品目の在庫管理状態を表す第1の評価指標の値の履歴を示すデータと、品目の在庫管理状態を表す第2の評価指標の値の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶しており、
前記在庫管理装置の制御部は、
入力部からの入力により、前記散布図にプロットされる品目の在庫管理状態を決定する日である表示日と、前記表示日とは異なる日である比較日とを特定するステップと、
前記記憶部から、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値を取得し、前記取得した、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値に基づいて、当該品目について前記比較日と前記表示日との間に生じた前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を算出するステップと、
前記表示部に、前記算出した前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、所定の表示態様で前記散布図に表示させるステップと、を実行する
ことを特徴とする。
詳細は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すなどし、より適切な在庫管理の意思決定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の在庫管理装置の構成図である。
【図2】履歴データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】変化度記号対応テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】散布図生成手順を示すフローチャートである。
【図5】プロットがなされた散布図の表示の一例である。
【図6】変化度描画手順を示すフローチャートである。
【図7】方法1による変化度の描画の手順の一例を示す図である。
【図8】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の表示例である。
【図9】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bを用いたときの散布図の表示例である。
【図10】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の表示例である。
【図11】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bかつ方法Cを用いたときの散布図の表示例である。
【図12】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の別の表示例である。
【図13】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の別の表示例である。
【図14】変化度表示方法として方法2を用いたときの散布図の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0011】
≪構成≫
図1は、本実施形態の在庫管理装置のソフトウェア構成図である。この在庫管理装置Sは、X/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4、履歴データM、変化度記号対応テーブルT、および散布図生成手段5といったソフトウェアを備えている。
【0012】
なお、在庫管理装置Sは、入力部(例:ポインティングデバイス、タッチパネル)、表示部(例:ディスプレイ、タッチパネル)、制御部(例:CPU(Central Processing Unit))および記憶部(例:メモリ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive))をハードウェアとして備えるコンピュータである。在庫管理装置Sは、記憶部に前記ソフトウェアとなる在庫管理用のプログラム(在庫管理プログラムを含む)を記憶する。制御部がこのプログラムを実行することにより、在庫管理に要する処理(在庫管理方法による処理を含む)が実行される。
【0013】
X/Y軸表示日指定手段1は、例えば入力部からの入力により、ある日付における品目の在庫管理状態を、表示部に表示される散布図のプロットとして表示するときの、その日付を表示日として指定する。散布図は、横軸となるX軸および縦軸となるY軸に、品目の在庫管理状態を表現する2つの評価指標(第1の評価指標、第2の評価指標)が設定されている。評価指標については、後記する。
【0014】
X/Y軸比較日指定手段2は、例えば入力部からの入力により、ある日付における品目の在庫管理状態を、散布図のプロットとして表示するときの、その日付よりも前の日付を比較日として指定する。基本的には、比較日における品目の在庫管理状態は散布図には表示しないが、そのような表示を行うようにソフトウェアを設計することは可能である。
【0015】
X/Y軸変化度算出方法指定手段3は、例えば入力部からの入力により、表示日における品目の在庫管理状態と、比較日におけるそれとの差異を示す変化度を算出するための方法(変化度算出方法)を指定する。この方法は1以上存在し、アルゴリズムとして記憶部に記憶されており、例えば以下に示す方法A、方法B、方法Cが存在する。
【0016】
表示日および比較日におけるX軸の評価指標の値をそれぞれx1、x2とし、表示日および比較日におけるY軸の評価指標の値をそれぞれy1、y2とし、X軸およびY軸における変化度をそれぞれRx、Ryとする。このとき、方法A、方法B、方法Cは、以下に示すような計算式で表現される。
【0017】
(方法A)
Rx = x1−x2
Ry = y1−y2
【0018】
(方法B)
Rx = (x1−x2)/x2
Ry = (y1−y2)/y2
【0019】
(方法C)
Rx = r (x1−x2>0のとき)
0 (x1−x2=0のとき)
−r (x1−x2<0のとき)
Ry = r (y1−y2>0のとき)
0 (y1−y2=0のとき)
−r (y1−y2<0のとき)
但し、r = {(x1−x2)^2+(y1−y2)^2}^(1/2)
【0020】
方法Aは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値そのものを変化度として表現する。
方法Bは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を比較日の評価指標の値で除算することで、その差分値の大きさを正規化し、正規化した差分値を変化度として表現する。
方法Cは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を、正値、零値、負値のみに分類することで、その差分値の向き(角度)を正規化し、正規化した差分値を変化度として表現する。
【0021】
変化度表示方法選択手段4は、例えば入力部からの入力により、算出された変化度を散布図に表示するときの表示態様を定める方法(変化度表示方法)を指定する。この方法は1以上存在し、アルゴリズムとして記憶部に記憶されており、例えば以下に示す方法1、方法2が存在する。
【0022】
(方法1)
例えば方法A、方法B、方法Cにより求められた変化度を散布図に矢印で描画する。
(方法2)
変化度記号対応テーブルTを参照して、例えば方法A、方法B、方法Cにより求められた変化度を散布図に特殊記号で描画する。
【0023】
履歴データMは、記憶部に記憶され、品目の在庫管理状態を、品目ごとに登録するデータベースである。
図2は、履歴データのデータ構造の一例を示す図である。履歴データMは、「品番」、「日付」、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といったフィールドを備えている。
【0024】
「品番」は、在庫管理の対象となる品目の識別番号であり、例えばSKUコードである。
「日付」は、品目の在庫管理状態を決定する日であり、品目の在庫推移を日単位で追跡することができる。製品の種類などに応じて週、月、年を決定するようにし、週単位、月単位、年単位などで追跡してもよい。説明の便宜上、履歴データMは日単位の品目に関するレコードを備えているものとする。
【0025】
「販売数」は、該当する品目がその日において、市場で販売されたときの実際の販売量を数量として示したものである。説明の便宜上、数量として示すが、基本的には、品目の単価は決定されているので、品目の金額として示してもよい。
「累計販売数」は、該当する品目が起算日からその日までの間に、市場で販売されたときの実際の販売量の合計を数量として示したものである。起算日は、例えば入力部からの入力により設定することができる。
「在庫数」は、該当する品目がその日において、所定のスペースに在庫されているときの実際の在庫量を数量として示したものである。
【0026】
「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」は、品目の在庫管理状態を表現する評価指標となる。評価指標としては他には、生産リードタイム、調達リードタイム、販売リードタイムなどを採り上げることもできる。この場合、これらを履歴データMのフィールドに設定する。
【0027】
変化度記号対応テーブルTは、記憶部に記憶され、変化度表示方法選択手段4により方法2が選択されたときに、変化度を特殊記号で描画するときの規則を定めるテーブルである。
図3は、変化度記号対応テーブルのデータ構造の一例を示す図である。変化度記号対応テーブルTは、「X変化度」、「Y変化度」、「記号」といったフィールドを備えている。
【0028】
「X変化度」は、散布図のX軸における変化度Rxがとり得る値の範囲を示したものである。図3中では、このフィールドには、「0以上」および「0未満」が登録される。
「Y変化度」は、散布図のY軸における変化度Ryがとり得る値の範囲を示したものである。図3中では、このフィールドには、「0以上」および「0未満」が登録される。
「記号」は、X軸における変化度Rx、Y軸における変化度Ryの値に対応する特殊記号を示したものである。例えば、Rx、Ryがともに0以上であれば、散布図中には、プロットされる箇所に「☆」が描画される。
【0029】
散布図生成手段5は、X/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4から所定の情報が入力されると、履歴データM、必要に応じて変化度記号対応テーブルTを参照して、在庫管理対象となる品目ごとにプロットした散布図を生成し、表示部に表示する。また、変化度についても、品目ごとに所定の表示態様で表示する。
【0030】
≪処理≫
次に、本実施形態の在庫管理装置の処理内容について詳細に説明する。以下に説明する処理の主体は、在庫管理装置Sの制御部である。
【0031】
図4は、散布図生成手順を示すフローチャートである。この散布図生成手順は、散布図生成手段5により実現されるものであり、散布図の生成において、変化度の描画に関する処理は行わない。
【0032】
まず、ステップS401において、制御部は、履歴データMおよび表示日d1を入力する。つまり、制御部は、記憶部から履歴データMを読み出すとともに、入力部から表示日を取得し、取得した表示日を変数d1に代入する。入力した後、ステップS402に進む。
【0033】
ステップS402において、制御部は、履歴データMから、全ての製品コードを抽出し、重複の無い製品コードのリストCを作成する。製品コードとは、履歴データMの「品番」を意味する。“全ての製品コードを抽出”するときは、履歴データMの「日付」の値が、表示日d1と一致する製品コードが全て抽出されることを意味する。重複が無いため、リストCに登録される製品コードの個数は、基本的には、表示日d1において在庫管理の対象となっている品目の種類の個数に等しい。作成した後、ステップS403に進む。
【0034】
ステップS403において、制御部は、リストCから1件の製品コードCPを取得する。製品コードCPの取得は、例えばリストCの先頭から順に行うようにしてもよい。取得した後、ステップS404に進む。
【0035】
ステップS404において、制御部は、履歴データMから製品コードCPに対応する製品pの情報を抽出する。つまり、制御部は、製品コードCPを検索キーとして、履歴データMの「品番」の値が一致するレコードを、製品(品目)pの情報として抽出する。抽出した後、ステップS405に進む。
【0036】
ステップS405において、制御部は、製品pの表示日d1における販売数をX軸の値とし、在庫数をY軸の値として散布図にプロットbを描画する。つまり、制御部は、製品pに係る履歴データMのレコードから「販売数」の値および「在庫数」の値を取得し、その値を散布図上にプロットする。散布図のX軸およびY軸を構成する評価指標は、例えば入力部から設定でき、この場合では、X軸に「販売数」をとり、Y軸に「在庫数」を設定した。描画した後、ステップS406に進む。
【0037】
ステップS406において、制御部は、リストCに未処理のデータがあるか否か判定する。そのようなデータがあれば(ステップS405でYes)、まだ、散布図にプロットとして描画していない製品が存在していることを意味し、ステップS403に戻る。そのようなデータがなければ(ステップS405でNo)、すべての製品について、散布図にプロットしたことを意味し、処理全体を終了する。
【0038】
図5は、プロットがなされた散布図の表示の一例である。図4の処理により、2つの評価指標をX軸(横軸)およびY軸(縦軸)に設定した散布図において、評価指標の値に相当する位置にプロットbが描画される。これにより、表示日における品目の在庫管理状態を一見して把握することができる。
【0039】
図6は、変化度描画手順を示すフローチャートである。この変化度描画手順は、散布図生成手段5により実現されるものであり、散布図の生成において、図4に示した散布図生成手順を踏まえつつ、変化度の描画に関する処理も行う。
【0040】
まず、ステップS601において、制御部は、履歴データM、表示日d1、比較日d2、変化度算出方法F、変化度表示方法Lおよび変化度記号対応テーブルTを入力する。つまり、制御部は、記憶部から履歴データMを読み出すとともに、入力部から表示日、比較日、変化度算出方法および変化度表示方法を取得し、取得した表示日、比較日、変化度算出方法および変化度表示方法をそれぞれ変数d1、d2、F、Lに代入する。変化度記号対応テーブルTは、基本的には、記憶部から読み出されることになるが、入力された変化度表示方法Lが方法1である場合には、その読み出しを省略できる。入力した後、ステップS602に進む。
【0041】
ステップS602、ステップS602の後に行われるステップS603、ステップS603の後に行われるステップS604の処理は、それぞれ図4のステップS402、ステップS403、ステップS404の処理に準拠するため、それらの詳細な説明は省略する。ステップS604の処理の後、ステップS605に進む。
【0042】
ステップS605において、制御部は、製品pの表示日d1における販売数、製品pの比較日d2における販売数、製品pの表示日d1における在庫数、および製品pの比較日d2における在庫数をそれぞれ変数sales1、sales2、stock1、stock2に代入する。代入した後、ステップS606に進む。
【0043】
ステップS606において、制御部は、sales1をX軸の値とし、stock1をY軸の値として散布図にプロットbを描画する。つまり、制御部は、製品pに係る履歴データMのレコードから表示日d1における「販売数」の値および「在庫数」の値を取得し、その値を散布図上にプロットする。散布図のX軸およびY軸を構成する評価指標は、例えば入力部から設定でき、この場合では、X軸に「販売数」をとり、Y軸に「在庫数」を設定した。描画した後、ステップS607に進む。
【0044】
ステップS607において、制御部は、sales1、sales2、FからX変化度Rxを算出する。つまり、制御部は、変化度算出方法Fの計算式を用いて表示日d1と比較日d2との販売数の変化度を求める。算出した後、ステップS608に進む。
【0045】
ステップS608において、制御部は、stock1、stock2、FからY変化度Ryを算出する。つまり、制御部は、変化度算出方法Fの計算式を用いて表示日d1と比較日d2との在庫数の変化度を求める。算出した後、ステップS609に進む。
【0046】
ステップS609において、制御部は、Rx、Ry、L、Tから、プロットbの位置に変化度を描画する。つまり、制御部は、変化度表示方法Lが方法1であれば、変化度を矢印で描画し、変化度表示方法Lが方法2であれば、変化度記号対応テーブルTを参照して変化度を特殊記号で描画する。これらの描画の詳細は、後記する。描画した後、ステップS610に進む。
【0047】
ステップS610において、制御部は、リストCに未処理のデータがあるか否か判定する。そのようなデータがあれば(ステップS610でYes)、まだ、散布図に変化度も表現したプロットとして描画していない製品が存在していることを意味し、ステップS603に戻る。そのようなデータがなければ(ステップS610でNo)、すべての製品について、散布図に変化度も表現したプロットしたことを意味し、処理全体を終了する。
【0048】
≪具体例≫
ここで、変化度の描画の詳細について具体的に説明する。
図7は、方法1による変化度の描画の手順の一例を示す図である。図7(a)は、サンプルとなる品目(品番:I001)に関する履歴データMのデータ構造を示す図である。図7(b−1)〜(b−4)は、変化度を表現する矢印の作成手順を示す概念図である。表示日は1/11と指定し、比較日は1/1と指定する。散布図の評価指標は、X軸(横軸)に販売数を設定し、Y軸(縦軸)に在庫数を設定する。図7(b−1)〜(b−4)に示す概念図は、表示部に表示する散布図そのものではないが、X軸(横軸)に評価指標としての販売数をとり、Y軸(縦軸)に評価指標としての在庫数をとるグラフにプロットを行う、いわば擬似散布図である。
【0049】
図7(a)において、「日付」が表示日1/11に該当するレコードを「A」とし、「日付」が比較日1/1に該当するレコードを「B」とする。図7(b−1)に示すグラフでは、表示日1/11のレコードに相当するプロットは、「A」と付された箇所に位置し(実線の丸印で表示)、比較日1/1のレコードに相当する仮想的なプロットは、「B」と付された箇所に位置する(破線の丸印で表示)。
【0050】
ここで、例えば方法Aにより変化度を求め、方法1によりその変化度を矢印で表示する。すると、図7(b−2)に示すように、「B」と付されたプロットから「A」と付されたプロットに向かう矢印が形成される。図7(a)によれば、販売数は減少し、在庫数は増加しているため、左上向きの矢印が形成される。
【0051】
次に、図7(b−3)に示すように、形成された矢印の始点を「A」と付されたプロットの位置に合わせるように、矢印を平行移動する。平行移動した結果は図7(b−4)に示したようになり、散布図に描画される矢印は、プロットを始点として伸びるように描画される。このような描画を行うことにより、ユーザに対し、当該品目の在庫管理状態の推移の予測を与えることができる。
【0052】
次に、種々の変化度算出方法および変化度表示方法を用いたときに、表示部に表示される散布図の表示態様について説明する。
【0053】
図8は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値そのものである。このため、図8に表示されている矢印は、長さも向きも様々であり、品目ごとの在庫管理状態の推移が精度良く表現されている。
【0054】
ちなみに、散布図のX軸に評価指標として販売数を設定し、Y軸に評価指標として在庫数を設定した場合、矢印が略右下を向いているプロットに係る品目は、例えば売れ行きが好調であるために在庫数が小さくなり欠品状態に陥り易いことを示唆している。このため、散布図を見たユーザは、その品目を多めに生産したほうがよいことがよいことが一見してわかる。また、矢印が略左上を向いているプロットに係る品目は、例えば売れ行きが低迷しているにもかかわらず、大量に生産して在庫数が大きくなってしまい過剰状態に陥り易いことを示唆している。このため、散布図を見たユーザは、その品目の生産量を抑えたほうがよいことがよいことが一見してわかる。
【0055】
図9は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を比較日の評価指標の値で除算することで、その差分値の大きさを正規化したものである。このため、図9に表示されている矢印は、向きは様々であるが、長さのばらつきは小さい。よって、いずれの品目についても適切な長さで矢印を表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0056】
例えば、図8の場合であれば、ある品目の変化度が相対的に極端に大きいため、その品目の矢印を極端に長くし、他の品目の矢印を極端に短くしなければならない場合がある。しかし、これでは極端に短い矢印の向きがよく見えず、その品目の在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができない。しかし、図9の場合であれば、比較日の評価指標の値で除算するため、いずれの品目についても、変化度を程良く表現することができる。
【0057】
図10は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、評価指標の値の差分値を、正値、零値、負値のみに分類することで、その差分値の向き(角度)を正規化したものである。このため、図10に表示されている矢印は、長さは様々であるが、向きは、上、斜め45度右上、右、斜め45度右下、下、斜め45度左下、左、斜め45度左上、向き無し(Rx=0、Ry=0の場合)の9種類に限定される。よって、いずれの品目についても各評価指標の変化を簡易に表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0058】
図11は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bかつ方法Cを用いたときの散布図の表示例である。X/Y軸変化度算出方法指定手段3は、変化度算出方法を複数指定することができる。また、方法Bの処理内容と、方法Cの処理内容とを組み合わせた処理内容を実行する方法を別に生成し、その方法を指定するようにしてもよい。
【0059】
算出された変化度は、評価指標の値の差分値を長さについて正規化するとともに、向きについても正規化したものである。このため、図11に表示されている矢印は、長さのばらつきは小さく、かつ向きは前記した9種類に限定される。よって、いずれの品目についても適切な長さで矢印を表現できるとともに各評価指標の変化を簡易に表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0060】
図12は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の別の表示例である。図8と異なる点は、表示される矢印の長さを1に統一した点である。1という長さはXY軸平面上の相対的な距離であり、実際の長さは任意に定めればよい。このように長さを統一し、変化度の大きさを捨象して、各評価指標の変化の向きを見せることにより、返って品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。このような描画は、ユーザが在庫管理状態の推移を大まかに把握できればよいと考えたときには有効である。
なお、矢印の長さを統一する処理は、散布図生成手段5により実現することができる。
【0061】
図13は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の別の表示例である。図10と異なる点は、表示される矢印の長さを1に統一した点である。1という長さはXY軸平面上の相対的な距離であり、実際の長さは任意に定めればよい。このように長さを統一し、変化度の大きさを捨象して、各評価指標の変化の向きを見せることにより、返って品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。さらに、図13では、矢印の向きも正規化されているため在庫管理状態の推移はより明瞭に表現される。このような描画は、ユーザが在庫管理状態の推移を大まかに把握できればよいと考えたときには有効である。
なお、矢印の長さを統一する処理は、散布図生成手段5により実現することができる。
【0062】
図14は、変化度表示方法として方法2を用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、方法A、方法B、方法Cのいずれにより算出されたものでよい。変化度記号対応テーブルTに基づいて、品目ごとにプロットの代わりに特殊記号が用いられ散布図に描画されている。
【0063】
変化度を矢印で表現すると、矢印が散布図上に相応の領域を占めて描画されることになる。このため、その矢印が他のプロットと重なったり、他の矢印と重なったりして在庫管理状態の推移を明瞭に表現しきれない事態が生じることがある。しかし、特殊記号そのものの大きさはプロットのそれと同等または略同等であるため、このような事態は回避でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0064】
≪まとめ≫
本実施形態によれば、品目の在庫管理状態を散布図のプロットとして表示するだけでなく、過去のある時点との変化度も表示するため、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことを支援することができる。
【0065】
≪その他≫
なお、前記した実施形態は、本発明を実施するための好適なものであるが、その実施形式はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形することが可能である。
【0066】
例えば、本実施形態のX/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4は、表示部の画面上のGUI操作による指定、または外部ファイルによる指定によって実現される。
【0067】
また、本実施形態では、変化度を矢印で描画する場合、矢印の始点側をプロットの位置に合わせるように平行移動した(図7(b−3)参照)。しかし、そのような平行移動をせず、矢印の終点側がプロットの位置と合うようにして矢印を描画してもよい。始点側がプロットの位置と合う矢印は、在庫管理状態の推移の予測を示唆させることができるのに対し、このような終点側がプロットの位置と合う矢印は、在庫管理状態の推移の履歴を表示部に明示させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、X/Y軸比較日指定手段2による比較日の指定は、入力部から日付そのものを入力することで実現した。しかし、比較日の指定は他にも、例えば表示日と比較日との差分を示す期間(例:7日間)を入力部から入力することで実現してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、比較日を表示日よりも前の日になるように1つだけ指定するようにした。この比較日は、表示日よりも前の日になるように2つ以上指定してもよい。例えば、比較日を2つ指定し、表示日に近いほうを第1の比較日、そうでないほうを第2の比較日とする。すると、表示日と第1の比較日とから第1の変化度を求めることができるとともに、第1の比較日と第2の比較日とから第2の変化度を求めることができる。したがって、第1の変化度および第2の変化度に基づいて、表示日以降の日における在庫管理状態の推移をより精度良く予測することができる。散布図上には、該当するプロットからその予測を反映させた矢印または特殊記号を表示する。これにより、ユーザに対し、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことをより一層支援することができる。比較日を3つ以上指定した場合にも基本的には同様である。
【0070】
また、本実施形態では、比較日を表示日よりも前の日になるように指定した。しかし、X/Y軸比較日指定手段2により、表示日とは異なる日を比較日として指定してもよい。つまり、例えば比較日を表示日よりも後の日になるように指定してもよい。これにより、評価指標の値の変化度を、未来から遡った変化度としてユーザに表示することができ、在庫管理を行うユーザに対し有用な情報を与えることができる。
【0071】
また、本実施形態は、品目ごとに散布図のプロットを表示することにより、在庫管理上で問題のある製品を品目レベルで抽出することができるものである。この抽出を製品カテゴリ、ブランド、事業部、といった複数品目の集合となる上位レベルで実行することができる。
【0072】
製品カテゴリとは、製品の主な用途が共通する範囲であり、例えば、Tシャツだけでなく、ズボンや靴なども含めた衣料品という範囲を製品カテゴリとして定める。
ブランドとは、ある財やサービスを、他の同カテゴリの財やサービスと区別するためのあらゆる概念である。
事業部とは、在庫管理の対象となる1以上の製品に関する事業を運営する組織である。
【0073】
在庫管理上で問題のある製品を上位レベルで抽出する場合、散布図上のプロットは、例えば、製品カテゴリ、ブランド、または事業部ごとに描画される。履歴データMには、「品番」、「日付」、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といった既に説明したフィールドだけでなく、「製品カテゴリ」、「ブランド」、「事業部」といった上位レベルを意味するフィールドも一部または全部設け、レコードごとに定められる品目が、どの製品カテゴリ、ブランド、または事業部に属するか、ということも登録する。
【0074】
「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といった評価指標を「製品カテゴリ」、「ブランド」、「事業部」といった上位レベルで求めるときには、その上位レベルに属する品目をすべて抽出し、抽出した品目について、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」の例えば合計値を求める。そして、この合計値に応じて散布図上のプロットを行うとよい。
【0075】
また、本実施形態の在庫管理装置Sが備えるハードウェアの全部または一部をソフトウェアにしてもよいし、在庫管理装置Sが備えるソフトウェアの全部または一部をハードウェアにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
【0077】
その他ハードウェア、ソフトウェア、フローチャート、データベース等の具体的な構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
S 在庫管理装置
1 X/Y軸表示日指定手段
2 X/Y軸比較日指定手段
3 X/Y軸変化度算出方法指定手段
4 変化度表示方法選択手段
5 散布図生成手段
M 履歴データ(第1の評価指標の値の履歴を示すデータ、第2の評価指標の値の履歴を示すデータ)
T 変化度記号対応テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の在庫管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品(例:非耐久消費財)を扱う企業は、一般的に、SKU(Stock Keeping Unit:在庫保管単位)により、例えば、数千に及ぶ品目として扱うことで製品の在庫管理を行っている。Tシャツを例にとると、そのサイズ別(Sサイズ、Mサイズ、Lサイズなど)や色別(白、赤、青など)に在庫管理が行われる。なお、在庫管理は、SKUを用いたものに限定しない。
【0003】
在庫管理では、過剰や欠品といった在庫管理上の問題が起こっていたり、起こり得たりする品目をいち早く見つけ出し、重点的に管理するための意思決定が求められている。特許文献1では、2つの品目判定指標を軸とし、品目ごとにプロットした散布図を用いて品目分布状況を表示部に表示するとき、ユーザが定めた指標に基づく指標値にしたがってプロットの形を変更し、任意の分割線を引いて散布図を分割し、分割された各領域でプロットの形状が同じものをグループ化する旨が開示されている。これにより、問題のある品目を強調表示し、ユーザに容易に理解させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−309390号公報(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、散布図という性質上、プロットとして表示されている品目について、その指標値の経時変化を表示部に表示することはない。このため、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことは容易でない。
【0006】
本発明では、このような事情を鑑みて、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すなどし、より適切な在庫管理の意思決定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、
品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置による在庫管理方法において、
前記在庫管理装置の記憶部は、
品目の在庫管理状態を表す第1の評価指標の値の履歴を示すデータと、品目の在庫管理状態を表す第2の評価指標の値の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶しており、
前記在庫管理装置の制御部は、
入力部からの入力により、前記散布図にプロットされる品目の在庫管理状態を決定する日である表示日と、前記表示日とは異なる日である比較日とを特定するステップと、
前記記憶部から、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値を取得し、前記取得した、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値に基づいて、当該品目について前記比較日と前記表示日との間に生じた前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を算出するステップと、
前記表示部に、前記算出した前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、所定の表示態様で前記散布図に表示させるステップと、を実行する
ことを特徴とする。
詳細は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すなどし、より適切な在庫管理の意思決定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の在庫管理装置の構成図である。
【図2】履歴データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】変化度記号対応テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】散布図生成手順を示すフローチャートである。
【図5】プロットがなされた散布図の表示の一例である。
【図6】変化度描画手順を示すフローチャートである。
【図7】方法1による変化度の描画の手順の一例を示す図である。
【図8】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の表示例である。
【図9】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bを用いたときの散布図の表示例である。
【図10】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の表示例である。
【図11】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bかつ方法Cを用いたときの散布図の表示例である。
【図12】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の別の表示例である。
【図13】変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の別の表示例である。
【図14】変化度表示方法として方法2を用いたときの散布図の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0011】
≪構成≫
図1は、本実施形態の在庫管理装置のソフトウェア構成図である。この在庫管理装置Sは、X/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4、履歴データM、変化度記号対応テーブルT、および散布図生成手段5といったソフトウェアを備えている。
【0012】
なお、在庫管理装置Sは、入力部(例:ポインティングデバイス、タッチパネル)、表示部(例:ディスプレイ、タッチパネル)、制御部(例:CPU(Central Processing Unit))および記憶部(例:メモリ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive))をハードウェアとして備えるコンピュータである。在庫管理装置Sは、記憶部に前記ソフトウェアとなる在庫管理用のプログラム(在庫管理プログラムを含む)を記憶する。制御部がこのプログラムを実行することにより、在庫管理に要する処理(在庫管理方法による処理を含む)が実行される。
【0013】
X/Y軸表示日指定手段1は、例えば入力部からの入力により、ある日付における品目の在庫管理状態を、表示部に表示される散布図のプロットとして表示するときの、その日付を表示日として指定する。散布図は、横軸となるX軸および縦軸となるY軸に、品目の在庫管理状態を表現する2つの評価指標(第1の評価指標、第2の評価指標)が設定されている。評価指標については、後記する。
【0014】
X/Y軸比較日指定手段2は、例えば入力部からの入力により、ある日付における品目の在庫管理状態を、散布図のプロットとして表示するときの、その日付よりも前の日付を比較日として指定する。基本的には、比較日における品目の在庫管理状態は散布図には表示しないが、そのような表示を行うようにソフトウェアを設計することは可能である。
【0015】
X/Y軸変化度算出方法指定手段3は、例えば入力部からの入力により、表示日における品目の在庫管理状態と、比較日におけるそれとの差異を示す変化度を算出するための方法(変化度算出方法)を指定する。この方法は1以上存在し、アルゴリズムとして記憶部に記憶されており、例えば以下に示す方法A、方法B、方法Cが存在する。
【0016】
表示日および比較日におけるX軸の評価指標の値をそれぞれx1、x2とし、表示日および比較日におけるY軸の評価指標の値をそれぞれy1、y2とし、X軸およびY軸における変化度をそれぞれRx、Ryとする。このとき、方法A、方法B、方法Cは、以下に示すような計算式で表現される。
【0017】
(方法A)
Rx = x1−x2
Ry = y1−y2
【0018】
(方法B)
Rx = (x1−x2)/x2
Ry = (y1−y2)/y2
【0019】
(方法C)
Rx = r (x1−x2>0のとき)
0 (x1−x2=0のとき)
−r (x1−x2<0のとき)
Ry = r (y1−y2>0のとき)
0 (y1−y2=0のとき)
−r (y1−y2<0のとき)
但し、r = {(x1−x2)^2+(y1−y2)^2}^(1/2)
【0020】
方法Aは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値そのものを変化度として表現する。
方法Bは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を比較日の評価指標の値で除算することで、その差分値の大きさを正規化し、正規化した差分値を変化度として表現する。
方法Cは、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を、正値、零値、負値のみに分類することで、その差分値の向き(角度)を正規化し、正規化した差分値を変化度として表現する。
【0021】
変化度表示方法選択手段4は、例えば入力部からの入力により、算出された変化度を散布図に表示するときの表示態様を定める方法(変化度表示方法)を指定する。この方法は1以上存在し、アルゴリズムとして記憶部に記憶されており、例えば以下に示す方法1、方法2が存在する。
【0022】
(方法1)
例えば方法A、方法B、方法Cにより求められた変化度を散布図に矢印で描画する。
(方法2)
変化度記号対応テーブルTを参照して、例えば方法A、方法B、方法Cにより求められた変化度を散布図に特殊記号で描画する。
【0023】
履歴データMは、記憶部に記憶され、品目の在庫管理状態を、品目ごとに登録するデータベースである。
図2は、履歴データのデータ構造の一例を示す図である。履歴データMは、「品番」、「日付」、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といったフィールドを備えている。
【0024】
「品番」は、在庫管理の対象となる品目の識別番号であり、例えばSKUコードである。
「日付」は、品目の在庫管理状態を決定する日であり、品目の在庫推移を日単位で追跡することができる。製品の種類などに応じて週、月、年を決定するようにし、週単位、月単位、年単位などで追跡してもよい。説明の便宜上、履歴データMは日単位の品目に関するレコードを備えているものとする。
【0025】
「販売数」は、該当する品目がその日において、市場で販売されたときの実際の販売量を数量として示したものである。説明の便宜上、数量として示すが、基本的には、品目の単価は決定されているので、品目の金額として示してもよい。
「累計販売数」は、該当する品目が起算日からその日までの間に、市場で販売されたときの実際の販売量の合計を数量として示したものである。起算日は、例えば入力部からの入力により設定することができる。
「在庫数」は、該当する品目がその日において、所定のスペースに在庫されているときの実際の在庫量を数量として示したものである。
【0026】
「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」は、品目の在庫管理状態を表現する評価指標となる。評価指標としては他には、生産リードタイム、調達リードタイム、販売リードタイムなどを採り上げることもできる。この場合、これらを履歴データMのフィールドに設定する。
【0027】
変化度記号対応テーブルTは、記憶部に記憶され、変化度表示方法選択手段4により方法2が選択されたときに、変化度を特殊記号で描画するときの規則を定めるテーブルである。
図3は、変化度記号対応テーブルのデータ構造の一例を示す図である。変化度記号対応テーブルTは、「X変化度」、「Y変化度」、「記号」といったフィールドを備えている。
【0028】
「X変化度」は、散布図のX軸における変化度Rxがとり得る値の範囲を示したものである。図3中では、このフィールドには、「0以上」および「0未満」が登録される。
「Y変化度」は、散布図のY軸における変化度Ryがとり得る値の範囲を示したものである。図3中では、このフィールドには、「0以上」および「0未満」が登録される。
「記号」は、X軸における変化度Rx、Y軸における変化度Ryの値に対応する特殊記号を示したものである。例えば、Rx、Ryがともに0以上であれば、散布図中には、プロットされる箇所に「☆」が描画される。
【0029】
散布図生成手段5は、X/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4から所定の情報が入力されると、履歴データM、必要に応じて変化度記号対応テーブルTを参照して、在庫管理対象となる品目ごとにプロットした散布図を生成し、表示部に表示する。また、変化度についても、品目ごとに所定の表示態様で表示する。
【0030】
≪処理≫
次に、本実施形態の在庫管理装置の処理内容について詳細に説明する。以下に説明する処理の主体は、在庫管理装置Sの制御部である。
【0031】
図4は、散布図生成手順を示すフローチャートである。この散布図生成手順は、散布図生成手段5により実現されるものであり、散布図の生成において、変化度の描画に関する処理は行わない。
【0032】
まず、ステップS401において、制御部は、履歴データMおよび表示日d1を入力する。つまり、制御部は、記憶部から履歴データMを読み出すとともに、入力部から表示日を取得し、取得した表示日を変数d1に代入する。入力した後、ステップS402に進む。
【0033】
ステップS402において、制御部は、履歴データMから、全ての製品コードを抽出し、重複の無い製品コードのリストCを作成する。製品コードとは、履歴データMの「品番」を意味する。“全ての製品コードを抽出”するときは、履歴データMの「日付」の値が、表示日d1と一致する製品コードが全て抽出されることを意味する。重複が無いため、リストCに登録される製品コードの個数は、基本的には、表示日d1において在庫管理の対象となっている品目の種類の個数に等しい。作成した後、ステップS403に進む。
【0034】
ステップS403において、制御部は、リストCから1件の製品コードCPを取得する。製品コードCPの取得は、例えばリストCの先頭から順に行うようにしてもよい。取得した後、ステップS404に進む。
【0035】
ステップS404において、制御部は、履歴データMから製品コードCPに対応する製品pの情報を抽出する。つまり、制御部は、製品コードCPを検索キーとして、履歴データMの「品番」の値が一致するレコードを、製品(品目)pの情報として抽出する。抽出した後、ステップS405に進む。
【0036】
ステップS405において、制御部は、製品pの表示日d1における販売数をX軸の値とし、在庫数をY軸の値として散布図にプロットbを描画する。つまり、制御部は、製品pに係る履歴データMのレコードから「販売数」の値および「在庫数」の値を取得し、その値を散布図上にプロットする。散布図のX軸およびY軸を構成する評価指標は、例えば入力部から設定でき、この場合では、X軸に「販売数」をとり、Y軸に「在庫数」を設定した。描画した後、ステップS406に進む。
【0037】
ステップS406において、制御部は、リストCに未処理のデータがあるか否か判定する。そのようなデータがあれば(ステップS405でYes)、まだ、散布図にプロットとして描画していない製品が存在していることを意味し、ステップS403に戻る。そのようなデータがなければ(ステップS405でNo)、すべての製品について、散布図にプロットしたことを意味し、処理全体を終了する。
【0038】
図5は、プロットがなされた散布図の表示の一例である。図4の処理により、2つの評価指標をX軸(横軸)およびY軸(縦軸)に設定した散布図において、評価指標の値に相当する位置にプロットbが描画される。これにより、表示日における品目の在庫管理状態を一見して把握することができる。
【0039】
図6は、変化度描画手順を示すフローチャートである。この変化度描画手順は、散布図生成手段5により実現されるものであり、散布図の生成において、図4に示した散布図生成手順を踏まえつつ、変化度の描画に関する処理も行う。
【0040】
まず、ステップS601において、制御部は、履歴データM、表示日d1、比較日d2、変化度算出方法F、変化度表示方法Lおよび変化度記号対応テーブルTを入力する。つまり、制御部は、記憶部から履歴データMを読み出すとともに、入力部から表示日、比較日、変化度算出方法および変化度表示方法を取得し、取得した表示日、比較日、変化度算出方法および変化度表示方法をそれぞれ変数d1、d2、F、Lに代入する。変化度記号対応テーブルTは、基本的には、記憶部から読み出されることになるが、入力された変化度表示方法Lが方法1である場合には、その読み出しを省略できる。入力した後、ステップS602に進む。
【0041】
ステップS602、ステップS602の後に行われるステップS603、ステップS603の後に行われるステップS604の処理は、それぞれ図4のステップS402、ステップS403、ステップS404の処理に準拠するため、それらの詳細な説明は省略する。ステップS604の処理の後、ステップS605に進む。
【0042】
ステップS605において、制御部は、製品pの表示日d1における販売数、製品pの比較日d2における販売数、製品pの表示日d1における在庫数、および製品pの比較日d2における在庫数をそれぞれ変数sales1、sales2、stock1、stock2に代入する。代入した後、ステップS606に進む。
【0043】
ステップS606において、制御部は、sales1をX軸の値とし、stock1をY軸の値として散布図にプロットbを描画する。つまり、制御部は、製品pに係る履歴データMのレコードから表示日d1における「販売数」の値および「在庫数」の値を取得し、その値を散布図上にプロットする。散布図のX軸およびY軸を構成する評価指標は、例えば入力部から設定でき、この場合では、X軸に「販売数」をとり、Y軸に「在庫数」を設定した。描画した後、ステップS607に進む。
【0044】
ステップS607において、制御部は、sales1、sales2、FからX変化度Rxを算出する。つまり、制御部は、変化度算出方法Fの計算式を用いて表示日d1と比較日d2との販売数の変化度を求める。算出した後、ステップS608に進む。
【0045】
ステップS608において、制御部は、stock1、stock2、FからY変化度Ryを算出する。つまり、制御部は、変化度算出方法Fの計算式を用いて表示日d1と比較日d2との在庫数の変化度を求める。算出した後、ステップS609に進む。
【0046】
ステップS609において、制御部は、Rx、Ry、L、Tから、プロットbの位置に変化度を描画する。つまり、制御部は、変化度表示方法Lが方法1であれば、変化度を矢印で描画し、変化度表示方法Lが方法2であれば、変化度記号対応テーブルTを参照して変化度を特殊記号で描画する。これらの描画の詳細は、後記する。描画した後、ステップS610に進む。
【0047】
ステップS610において、制御部は、リストCに未処理のデータがあるか否か判定する。そのようなデータがあれば(ステップS610でYes)、まだ、散布図に変化度も表現したプロットとして描画していない製品が存在していることを意味し、ステップS603に戻る。そのようなデータがなければ(ステップS610でNo)、すべての製品について、散布図に変化度も表現したプロットしたことを意味し、処理全体を終了する。
【0048】
≪具体例≫
ここで、変化度の描画の詳細について具体的に説明する。
図7は、方法1による変化度の描画の手順の一例を示す図である。図7(a)は、サンプルとなる品目(品番:I001)に関する履歴データMのデータ構造を示す図である。図7(b−1)〜(b−4)は、変化度を表現する矢印の作成手順を示す概念図である。表示日は1/11と指定し、比較日は1/1と指定する。散布図の評価指標は、X軸(横軸)に販売数を設定し、Y軸(縦軸)に在庫数を設定する。図7(b−1)〜(b−4)に示す概念図は、表示部に表示する散布図そのものではないが、X軸(横軸)に評価指標としての販売数をとり、Y軸(縦軸)に評価指標としての在庫数をとるグラフにプロットを行う、いわば擬似散布図である。
【0049】
図7(a)において、「日付」が表示日1/11に該当するレコードを「A」とし、「日付」が比較日1/1に該当するレコードを「B」とする。図7(b−1)に示すグラフでは、表示日1/11のレコードに相当するプロットは、「A」と付された箇所に位置し(実線の丸印で表示)、比較日1/1のレコードに相当する仮想的なプロットは、「B」と付された箇所に位置する(破線の丸印で表示)。
【0050】
ここで、例えば方法Aにより変化度を求め、方法1によりその変化度を矢印で表示する。すると、図7(b−2)に示すように、「B」と付されたプロットから「A」と付されたプロットに向かう矢印が形成される。図7(a)によれば、販売数は減少し、在庫数は増加しているため、左上向きの矢印が形成される。
【0051】
次に、図7(b−3)に示すように、形成された矢印の始点を「A」と付されたプロットの位置に合わせるように、矢印を平行移動する。平行移動した結果は図7(b−4)に示したようになり、散布図に描画される矢印は、プロットを始点として伸びるように描画される。このような描画を行うことにより、ユーザに対し、当該品目の在庫管理状態の推移の予測を与えることができる。
【0052】
次に、種々の変化度算出方法および変化度表示方法を用いたときに、表示部に表示される散布図の表示態様について説明する。
【0053】
図8は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値そのものである。このため、図8に表示されている矢印は、長さも向きも様々であり、品目ごとの在庫管理状態の推移が精度良く表現されている。
【0054】
ちなみに、散布図のX軸に評価指標として販売数を設定し、Y軸に評価指標として在庫数を設定した場合、矢印が略右下を向いているプロットに係る品目は、例えば売れ行きが好調であるために在庫数が小さくなり欠品状態に陥り易いことを示唆している。このため、散布図を見たユーザは、その品目を多めに生産したほうがよいことがよいことが一見してわかる。また、矢印が略左上を向いているプロットに係る品目は、例えば売れ行きが低迷しているにもかかわらず、大量に生産して在庫数が大きくなってしまい過剰状態に陥り易いことを示唆している。このため、散布図を見たユーザは、その品目の生産量を抑えたほうがよいことがよいことが一見してわかる。
【0055】
図9は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、X軸、Y軸それぞれにおいて、評価指標の値の差分値を比較日の評価指標の値で除算することで、その差分値の大きさを正規化したものである。このため、図9に表示されている矢印は、向きは様々であるが、長さのばらつきは小さい。よって、いずれの品目についても適切な長さで矢印を表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0056】
例えば、図8の場合であれば、ある品目の変化度が相対的に極端に大きいため、その品目の矢印を極端に長くし、他の品目の矢印を極端に短くしなければならない場合がある。しかし、これでは極端に短い矢印の向きがよく見えず、その品目の在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができない。しかし、図9の場合であれば、比較日の評価指標の値で除算するため、いずれの品目についても、変化度を程良く表現することができる。
【0057】
図10は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、評価指標の値の差分値を、正値、零値、負値のみに分類することで、その差分値の向き(角度)を正規化したものである。このため、図10に表示されている矢印は、長さは様々であるが、向きは、上、斜め45度右上、右、斜め45度右下、下、斜め45度左下、左、斜め45度左上、向き無し(Rx=0、Ry=0の場合)の9種類に限定される。よって、いずれの品目についても各評価指標の変化を簡易に表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0058】
図11は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Bかつ方法Cを用いたときの散布図の表示例である。X/Y軸変化度算出方法指定手段3は、変化度算出方法を複数指定することができる。また、方法Bの処理内容と、方法Cの処理内容とを組み合わせた処理内容を実行する方法を別に生成し、その方法を指定するようにしてもよい。
【0059】
算出された変化度は、評価指標の値の差分値を長さについて正規化するとともに、向きについても正規化したものである。このため、図11に表示されている矢印は、長さのばらつきは小さく、かつ向きは前記した9種類に限定される。よって、いずれの品目についても適切な長さで矢印を表現できるとともに各評価指標の変化を簡易に表現でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0060】
図12は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Aを用いたときの散布図の別の表示例である。図8と異なる点は、表示される矢印の長さを1に統一した点である。1という長さはXY軸平面上の相対的な距離であり、実際の長さは任意に定めればよい。このように長さを統一し、変化度の大きさを捨象して、各評価指標の変化の向きを見せることにより、返って品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。このような描画は、ユーザが在庫管理状態の推移を大まかに把握できればよいと考えたときには有効である。
なお、矢印の長さを統一する処理は、散布図生成手段5により実現することができる。
【0061】
図13は、変化度表示方法として方法1を、変化度算出方法として方法Cを用いたときの散布図の別の表示例である。図10と異なる点は、表示される矢印の長さを1に統一した点である。1という長さはXY軸平面上の相対的な距離であり、実際の長さは任意に定めればよい。このように長さを統一し、変化度の大きさを捨象して、各評価指標の変化の向きを見せることにより、返って品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。さらに、図13では、矢印の向きも正規化されているため在庫管理状態の推移はより明瞭に表現される。このような描画は、ユーザが在庫管理状態の推移を大まかに把握できればよいと考えたときには有効である。
なお、矢印の長さを統一する処理は、散布図生成手段5により実現することができる。
【0062】
図14は、変化度表示方法として方法2を用いたときの散布図の表示例である。算出された変化度は、方法A、方法B、方法Cのいずれにより算出されたものでよい。変化度記号対応テーブルTに基づいて、品目ごとにプロットの代わりに特殊記号が用いられ散布図に描画されている。
【0063】
変化度を矢印で表現すると、矢印が散布図上に相応の領域を占めて描画されることになる。このため、その矢印が他のプロットと重なったり、他の矢印と重なったりして在庫管理状態の推移を明瞭に表現しきれない事態が生じることがある。しかし、特殊記号そのものの大きさはプロットのそれと同等または略同等であるため、このような事態は回避でき、品目ごとの在庫管理状態の推移を明瞭に表現することができる。
【0064】
≪まとめ≫
本実施形態によれば、品目の在庫管理状態を散布図のプロットとして表示するだけでなく、過去のある時点との変化度も表示するため、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことを支援することができる。
【0065】
≪その他≫
なお、前記した実施形態は、本発明を実施するための好適なものであるが、その実施形式はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形することが可能である。
【0066】
例えば、本実施形態のX/Y軸表示日指定手段1、X/Y軸比較日指定手段2、X/Y軸変化度算出方法指定手段3、変化度表示方法選択手段4は、表示部の画面上のGUI操作による指定、または外部ファイルによる指定によって実現される。
【0067】
また、本実施形態では、変化度を矢印で描画する場合、矢印の始点側をプロットの位置に合わせるように平行移動した(図7(b−3)参照)。しかし、そのような平行移動をせず、矢印の終点側がプロットの位置と合うようにして矢印を描画してもよい。始点側がプロットの位置と合う矢印は、在庫管理状態の推移の予測を示唆させることができるのに対し、このような終点側がプロットの位置と合う矢印は、在庫管理状態の推移の履歴を表示部に明示させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、X/Y軸比較日指定手段2による比較日の指定は、入力部から日付そのものを入力することで実現した。しかし、比較日の指定は他にも、例えば表示日と比較日との差分を示す期間(例:7日間)を入力部から入力することで実現してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、比較日を表示日よりも前の日になるように1つだけ指定するようにした。この比較日は、表示日よりも前の日になるように2つ以上指定してもよい。例えば、比較日を2つ指定し、表示日に近いほうを第1の比較日、そうでないほうを第2の比較日とする。すると、表示日と第1の比較日とから第1の変化度を求めることができるとともに、第1の比較日と第2の比較日とから第2の変化度を求めることができる。したがって、第1の変化度および第2の変化度に基づいて、表示日以降の日における在庫管理状態の推移をより精度良く予測することができる。散布図上には、該当するプロットからその予測を反映させた矢印または特殊記号を表示する。これにより、ユーザに対し、在庫管理上の問題を引き起こす可能性の高い品目を見つけ出すことをより一層支援することができる。比較日を3つ以上指定した場合にも基本的には同様である。
【0070】
また、本実施形態では、比較日を表示日よりも前の日になるように指定した。しかし、X/Y軸比較日指定手段2により、表示日とは異なる日を比較日として指定してもよい。つまり、例えば比較日を表示日よりも後の日になるように指定してもよい。これにより、評価指標の値の変化度を、未来から遡った変化度としてユーザに表示することができ、在庫管理を行うユーザに対し有用な情報を与えることができる。
【0071】
また、本実施形態は、品目ごとに散布図のプロットを表示することにより、在庫管理上で問題のある製品を品目レベルで抽出することができるものである。この抽出を製品カテゴリ、ブランド、事業部、といった複数品目の集合となる上位レベルで実行することができる。
【0072】
製品カテゴリとは、製品の主な用途が共通する範囲であり、例えば、Tシャツだけでなく、ズボンや靴なども含めた衣料品という範囲を製品カテゴリとして定める。
ブランドとは、ある財やサービスを、他の同カテゴリの財やサービスと区別するためのあらゆる概念である。
事業部とは、在庫管理の対象となる1以上の製品に関する事業を運営する組織である。
【0073】
在庫管理上で問題のある製品を上位レベルで抽出する場合、散布図上のプロットは、例えば、製品カテゴリ、ブランド、または事業部ごとに描画される。履歴データMには、「品番」、「日付」、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といった既に説明したフィールドだけでなく、「製品カテゴリ」、「ブランド」、「事業部」といった上位レベルを意味するフィールドも一部または全部設け、レコードごとに定められる品目が、どの製品カテゴリ、ブランド、または事業部に属するか、ということも登録する。
【0074】
「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」といった評価指標を「製品カテゴリ」、「ブランド」、「事業部」といった上位レベルで求めるときには、その上位レベルに属する品目をすべて抽出し、抽出した品目について、「販売数」、「累計販売数」、「在庫数」の例えば合計値を求める。そして、この合計値に応じて散布図上のプロットを行うとよい。
【0075】
また、本実施形態の在庫管理装置Sが備えるハードウェアの全部または一部をソフトウェアにしてもよいし、在庫管理装置Sが備えるソフトウェアの全部または一部をハードウェアにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
【0077】
その他ハードウェア、ソフトウェア、フローチャート、データベース等の具体的な構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
S 在庫管理装置
1 X/Y軸表示日指定手段
2 X/Y軸比較日指定手段
3 X/Y軸変化度算出方法指定手段
4 変化度表示方法選択手段
5 散布図生成手段
M 履歴データ(第1の評価指標の値の履歴を示すデータ、第2の評価指標の値の履歴を示すデータ)
T 変化度記号対応テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置による在庫管理方法において、
前記在庫管理装置の記憶部は、
品目の在庫管理状態を表す第1の評価指標の値の履歴を示すデータと、品目の在庫管理状態を表す第2の評価指標の値の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶しており、
前記在庫管理装置の制御部は、
入力部からの入力により、前記散布図にプロットされる品目の在庫管理状態を決定する日である表示日と、前記表示日とは異なる日である比較日とを特定するステップと、
前記記憶部から、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値を取得し、前記取得した、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値に基づいて、当該品目について前記比較日と前記表示日との間に生じた前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を算出するステップと、
前記表示部に、前記算出した前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、所定の表示態様で前記散布図に表示させるステップと、を実行する
ことを特徴とする在庫管理方法。
【請求項2】
前記制御部は、
前記入力部から、前記表示日と前記比較日との差分を示す期間が入力されると前記比較日を特定するステップを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項3】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項4】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分を、前記比較日における前記第1の評価指標の値で除算した値であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分を、前記比較日における前記第2の評価指標の値で除算した値である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項5】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分を正値、零値、負値に分類した値であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分を正値、零値、負値に分類した値である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項6】
前記表示部は、
前記散布図にて、前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、当該品目がプロットされた位置と略同位置にある矢印により表示すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の在庫管理方法。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度に対応した記号を記憶しており、
前記表示部は、
前記散布図にて、前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、当該品目がプロットされた位置と略同位置にある前記記号により表示すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の在庫管理方法。
【請求項1】
品目ごとにプロットすることで品目の在庫管理状態を示す散布図を表示する表示部を備え、品目の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置による在庫管理方法において、
前記在庫管理装置の記憶部は、
品目の在庫管理状態を表す第1の評価指標の値の履歴を示すデータと、品目の在庫管理状態を表す第2の評価指標の値の履歴を示すデータとを、品目ごとに記憶しており、
前記在庫管理装置の制御部は、
入力部からの入力により、前記散布図にプロットされる品目の在庫管理状態を決定する日である表示日と、前記表示日とは異なる日である比較日とを特定するステップと、
前記記憶部から、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値を取得し、前記取得した、前記表示日における前記第1の評価指標の値と、前記比較日における前記第1の評価指標の値と、前記表示日における前記第2の評価指標の値と、前記比較日における前記第2の評価指標の値に基づいて、当該品目について前記比較日と前記表示日との間に生じた前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を算出するステップと、
前記表示部に、前記算出した前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、所定の表示態様で前記散布図に表示させるステップと、を実行する
ことを特徴とする在庫管理方法。
【請求項2】
前記制御部は、
前記入力部から、前記表示日と前記比較日との差分を示す期間が入力されると前記比較日を特定するステップを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項3】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項4】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分を、前記比較日における前記第1の評価指標の値で除算した値であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分を、前記比較日における前記第2の評価指標の値で除算した値である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項5】
前記第1の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第1の評価指標の値と前記比較日における前記第1の評価指標の値との差分を正値、零値、負値に分類した値であり、
前記第2の評価指標の値の変化度は、前記表示日における前記第2の評価指標の値と前記比較日における前記第2の評価指標の値との差分を正値、零値、負値に分類した値である
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。
【請求項6】
前記表示部は、
前記散布図にて、前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、当該品目がプロットされた位置と略同位置にある矢印により表示すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の在庫管理方法。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度に対応した記号を記憶しており、
前記表示部は、
前記散布図にて、前記第1の評価指標の値の変化度および前記第2の評価指標の値の変化度を、当該品目がプロットされた位置と略同位置にある前記記号により表示すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の在庫管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−68737(P2012−68737A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211081(P2010−211081)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000233538)株式会社 日立東日本ソリューションズ (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000233538)株式会社 日立東日本ソリューションズ (53)
【Fターム(参考)】
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