説明

地下ガス体の流動検知方法

【課題】地盤内を伝播する地下ガス体の流動を正確且つ早期に検知することができる地下ガス体の流動検知方法を提供することにある。
【解決手段】地盤2内を伝播するガス体の流動状況を検知する、地下ガス体Cの流動検知方法であって、前記地盤2内に、内部が地下水6で満たされる穴部3を設け、前記穴部3の長手方向に、温度分解能が0.01度以上0.1度以下で、距離分解能が0.05m以上0.25m以下の分布型温度計を用いた計測部11を延在させ、前記計測部11を用いて、前記地下水6の温度分布を同時計測し、前記地下水6の温度分布の位置変化及び時間変化から、前記地下ガス体Cの流動状況を把握することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内を伝播するガス体の流動状況を、高分解能の地下水温度分布同時計測によって検知する地下ガス体の流動検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤内に埋設し貯蔵を目的とする施設として、天然ガス、LPガス等の高圧ガスを貯蔵するガス貯蔵施設が知られている。
【0003】
これらの貯蔵施設に貯蔵されるガスは、万一その貯蔵施設から漏洩があった場合に、その漏洩を可及的速やかに検知して対応する必要がある。
【0004】
従来、これら貯蔵施設からの漏洩を検知するために、熱電対や測温抵抗体などの複数の温度プローブを貯蔵施設の構造物に直接または近傍に設けて、漏洩による温度変化を計測する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−145424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、漏洩の検知のために熱電対や測温抵抗体などの複数の温度プローブを用いた場合、これら温度プローブの各計測点における計測は零次元的な点計測であって、所謂、点計測型温度計測である。そのためこれら各計測点同士の間隙においては計測ができず、これらの間隙で漏洩があった場合には、その間隙の両端に配置される計測点の温度変化として表れないため、貯蔵施設からの漏洩を検知することは難しかった。
【0007】
また、これら各計測点における計測結果は、電気抵抗を利用した計測であることに起因してその計測に時間差が生じるため、計測の同時性を確保することができない。従って、各計測点における計測結果から漏洩を検知・発見したり漏洩箇所の推定をしたりすることは難しかった。
【0008】
また一方、上記問題を解決するために、前記温度プローブとして光ファイバを用いて、該光ファイバの延在される全ての箇所において温度を同時計測するという、所謂、分布型温度計測と呼ばれる手法が提案されている。これによれば、点計測型温度計測のように零次元的な点計測によらず、その配置によって計測を一次元的、二次元的、或いは三次元的に行うことが可能であり、各計測点同士の間隙が極力低減されるので、点計測型温度計測と比較し漏洩を精度よく検知することができる。
【0009】
しかしながら、前述の貯蔵施設からのガスの漏洩に起因した温度変化が極僅かであった場合には、従来の光ファイバ温度計の分解能(温度分解能1度以上、距離分解能1m以上)では、その温度変化から漏洩を認知することは難しいという問題があった。そして、漏洩したガス体が地盤内を伝播し、我々の目につく地表に出現して初めて貯蔵施設からの漏洩が認知されるという虞があった。
【0010】
またこの場合、貯蔵施設のどの部分から漏洩が起きているかを推定することは難しく、漏洩が認知されてからその対応がなされるまでの間に多大な労力・時間が必要とされるとともに、その対応の間にも漏洩が続くという問題があった。そのため、いかにしてこれら漏洩を正確且つ早期に認知し、漏洩箇所を推定できるかということが課題とされていた。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、地盤内を伝播する地下ガス体の流動を正確且つ早期に検知することができる地下ガス体の流動検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、地盤内を伝播するガス体の流動状況を検知する、地下ガス体の流動検知方法であって、前記地盤内に、内部が地下水で満たされる穴部を設け、前記穴部の長手方向に、温度分解能が0.01度以上0.1度以下で、距離分解能が0.05m以上0.25m以下の分布型温度計を用いた計測部を延在させ、前記計測部を用いて、前記地下水の温度分布を同時計測し、前記地下水の温度分布の位置変化及び時間変化から、前記地下ガス体の流動状況を把握することを特徴とする。
【0013】
この発明に係る地下ガス体の流動検知方法によれば、前記穴部を満たす地下水中に高分解能(温度分解能0.01度以上0.1度以下、距離分解能0.05m以上0.25m以下)の分布型温度計を用いた計測部が設けられており、この計測部で計測の同時性を確保しつつ地下水の温度分布を計測する。この地下水は、地下ガス体が地盤内を伝播して該地下水の満たされる穴部に達すると、その圧力によりゆらぐため、このゆらぎに起因して極僅かな温度分布の位置変化及び時間変化を起こす。
【0014】
そして、この地下水中の温度分布を予め前記計測部を用いて計測(基準温度計測)しておき、地下ガス体が地盤内を伝播しこの穴部に達して該地下水に極僅かな温度分布の位置変化及び時間変化(以下「温度変化」とする)をもたらした際に、前記基準温度計測の結果とこの温度変化とを比較することにより地下ガス体の流動状況が検知される。これにより、例えば、地盤内の貯蔵施設から漏洩するガス体の流動を正確且つ早期に認知することができる。
【0015】
また、地下ガス体の流動に起因する温度変化は、地下水中に延在される計測部の、該地下ガス体の流動箇所に近い位置から遠い位置へと向かって経時的に伝播されていくため、各計測点における温度分布の経時的変化から、地下ガス体の流動箇所を容易且つ正確に推定することができる。
【0016】
また本発明に係る地下ガス体の流動検知方法は、前記計測部として光ファイバを用いることとしてもよい。これによれば、高分解能(温度分解能0.01度以上0.1度以下、距離分解能0.05m以上0.25m以下)の光ファイバ温度計を用いて計測を行うため、計測を精度よく行え、地下ガス体の流動を正確且つ早期に検知することができる。また従来の熱電対や測温抵抗体などによる温度プローブに比べて、その設備投資及び維持管理費を低減することができるとともに、メンテナンスを簡便に行うことができる。
【0017】
また本発明に係る地下ガス体の流動検知方法は、前記穴部が水平方向に延在されていることとしてもよい。これにより、例えば穴部の下側に埋設された貯蔵施設からのガス体の漏洩を、より広範囲に検知することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る地下ガス体の流動検知方法によれば、地盤内を伝播する地下ガス体の流動を正確且つ早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る地下ガス体流動検知システムの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の地下ガス体流動検知システムで計測した地下水温度の経時的変化を示すグラフである。
【図3】本発明の地下ガス体流動検知システムで計測した地下水温度の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る地下ガス体流動検知システムの概略構成を示す縦断面図、図2、図3は本発明の地下ガス体流動検知システムで計測した地下水温度の経時的変化を示すグラフである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る地下ガス体流動検知システム1は、地山2の地盤内に埋設される天然ガス、LPガス等の高圧ガスを貯蔵するための貯槽である貯蔵施設Aの上方近傍に、貯蔵施設Aに沿うようにして水平方向に延在されるボーリング穴3を有している。このボーリング穴3は極力貯蔵施設Aの近傍に設けられるのが好ましく、例えば貯蔵施設Aから鉛直方向4m程度の距離を設けて配置される。ボーリング穴3の長手方向の長さは貯蔵施設Aの幅よりも若干長く設定されるのが好ましく、例えば、80m程度の長さで直径がφ106mm程度とされる。
【0022】
また、このボーリング穴3の掘削は地山2の崖部4から水平方向に行われており、崖部4のボーリング穴3以外の箇所はコンクリート壁5によって覆工されている。またボーリング穴3の内部は、このボーリング穴3に滲出する地下水6によって満たされている。
【0023】
ボーリング穴3の内部には、このボーリング穴3の長手方向に延在する管状の有孔管7が配設されている。そして有孔管7の貯蔵施設A近傍の外周上には、この有孔管7を径方向に貫通する複数の貫通孔7aが設けられている。有孔管7の長手方向の一方側(崖部4の側、図1において右側)には、有孔管7の外周面とボーリング穴3の内周面とで形成される円筒穴状の間隙を埋めるように円筒状の閉塞モルタル8が設けられており、この閉塞モルタル8の長手方向の他方側(図1において左側)には吸水膨張性を有するリング状の遮水材9が設けられ、この間隙を液密に封止している。
【0024】
また有孔管7の内部には、その長手方向に延在しこの有孔管7よりも若干短い長さで形成される管状の計測管10が設けられている。計測管10の一方側の端部はキャップ10aによって液密に封止されている。またこの一方側の端部には、計測管10の外周面と有孔管7の内周面とで形成される円筒穴状の間隙を埋めるようにリング状の閉塞モルタル12が設けられており、この閉塞モルタル12の他方側には吸水膨張性を有する円筒状の遮水材13が設けられて、この間隙を液密に封止している。
【0025】
そしてこれら閉塞モルタル8,12、遮水材9,13及びキャップ10aによって、このボーリング穴3はその内部に地下水6を液密に封止可能に構成されている。
【0026】
また、計測管10の外周面には、その長手方向に沿うようにしてケーブル状の光ファイバケーブル11が配設されている。この光ファイバケーブル11は、そのケーブル全体が温度分布計測用の計測部とされており、計測管10の外周面に沿って一方側から他方側へと延び、このボーリング穴3の最深部近傍でループ状に折り返されて、他方側から一方側へと延びて、その一方側に配置される二つの端部が、ボーリング穴3の外部に設けられる測定部(不図示)に夫々接続されている。そして光ファイバケーブル11と測定部とによって、光ファイバ温度計測システム(不図示)が形成されている。
【0027】
また、光ファイバケーブル11の一方側に配置されている閉塞モルタル12及び遮水材13は、この光ファイバケーブル11を液密に貫通させている。また有孔管7及び計測管10の他方側の端部は夫々地下水6中に開口されて形成されており、これらの管の内部は地下水6で満たされている。
【0028】
前記光ファイバ温度計測システムは、温度分解能が0.01度以上0.1度以下で、距離分解能が0.05m以上0.25m以下の分布型温度計(本実施形態では光ファイバ)を用いたものであり、地下水6の温度分布を広範囲に同時計測可能なものである。この光ファイバ温度計測システムとしては、例えば、GESO社(ドイツ)の、非特許文献「Distributed Fibre−optic Temperature Sensing Technique(DTS) for Surveying Underground Gas Storage Facilities,OIL GAS European Magazine 4/2001」、p.1−4に記載されたものを用いることができる。
【0029】
この非特許文献に係る光ファイバ温度計測システムは、計測部(光ファイバケーブル)の正確な配置を把握しながら、長時間にわたって数kmの長さまで温度を計測することが可能とされるものである。その距離分解能は0.25m、温度分解能は0.05度である。温度はストークス光とアンチストークス光との二つの強度比により求まることから、光ファイバの材齢の影響を無視することができる。この光ファイバ温度計測システムは、光ファイバ沿いに、電気回路を用いることなく操作が行われるので、長期計測に対するシステムの安定性が確保される。また一方、電磁場に対しても本質的に影響を受けず、厳しい防爆環境が要求されるような危険地域においても利用可能とされるものである。
【0030】
次に、本実施形態の地下ガス体流動検知システム1を用いて、地下ガス体の流動を検知する方法について説明する。
【0031】
貯蔵施設Aに貯蔵される高圧ガスが漏洩した場合、地下ガス体Cは、貯蔵施設Aの漏洩箇所Bから、地山2の地盤内に浸透し、上方へ向け伝播していく。貯蔵施設Aの上方近傍に設けられる地下ガス体流動検知システム1では、この地下ガス体Cが該地下ガス体流動検知システム1に達すると、その内部に蓄える地下水6がこの地下ガス体Cからの圧力を受けてゆらぐ。該地下水6がゆらぐことによって、地下水6中には極僅かな温度変化が起こる。
【0032】
光ファイバケーブル11上の温度分布計測は、前述した分解能で行われている。ここで、光ファイバケーブル11上に説明用の計測点として、貯蔵施設Aの漏洩箇所Bに比較的近い位置を計測点14a、漏洩箇所Bから比較的遠い位置を計測点16a、これら14a,16aの中間位置の計測点を15aとして、漏洩発生後の各計測点における温度分布の経時的変化を、図2のグラフとして示す。
【0033】
図2のグラフは、縦軸が温度の変化量を示しており、縦軸全体として1度未満程度の僅かな温度幅を表している。また横軸は時間の経過を示している。そして5分間毎に各計測点14a,15a,16aにおける温度分布の計測結果を求め、折れ線グラフでその経時的変化を表している。また貯蔵施設Aからの漏洩発生時点を、図2に矢印Lとして示す。漏洩発生以前に各計測点で計測される温度分布の計測結果は、各計測点における地下水6の基準温度とされる(基準温度計測)。
【0034】
図2において、計測点14aにおける温度分布の経時的変化を示すグラフ14A(実線)は、地下ガス体Cが、漏洩開始時点Lから地山2の地盤内に浸透して伝播し、この地下ガス体流動検知システム1に到達すると、その到達時点(図2の矢印R)から下降を始める。この温度分布の下降は、地下水6が地下ガス体Cから圧力を受けゆらぐことに起因するものであり、例えば0.1度〜0.2度程度の極僅かな温度変化量として検知される。
【0035】
この下降の後、地下水6がさらにゆらぐことによって、グラフ14Aは下降から一転して上昇を始める。グラフ14Aは、図2に示すように到達時点Rから下降した後、下降の下限から一転して上昇し始め、基準温度の値よりさらに上昇して、上に凸の形状を描く。この下降の下限から上昇の上限までの温度変化量は、例えば0.2度〜0.3度程度の極僅かな量であり、これらの下降から上昇に係る温度変化は、従来の分解能を有する光ファイバ温度計や、熱電対または測温抵抗体等では精度よく計測することは不可能であった。グラフ14Aは、上昇の上限を過ぎた後は、基準温度の値へと収束するようにして、安定する。
【0036】
このグラフ14Aの形状に表れる温度分布の経時的変化の傾向は、各計測点の漏洩箇所Bからの距離に比例するようにして、計測点14aから計測点15aへと、また計測点15aから計測点16aへと向かって同様の傾向で、時間的ずれを伴って伝播していく。図2において、グラフ15A(破線)は計測点15aにおける温度分布の経時的変化を示したものであり、グラフ16A(二点鎖線)は、計測点16aにおける温度分布の経時的変化を示したものである。そして、これらのグラフ14A,15A,16Aは、すべて到達時点Rから降下した後に、基準温度の値を超えて上昇し、また下降して基準温度の値に収束するという同様の傾向を有しており、その温度変化は、漏洩箇所Bからの距離に比例して、時間的ずれを伴って発生する。
【0037】
また図3に示すグラフは、貯蔵施設Aからガス体の漏洩がない場合の、降雨による地下水の温度分布を経時的変化として示すものである。図中、矢印Wは、この地山2に降雨し始めた降雨開始時点を示している。矢印Rは、降雨により地山2の地盤内に浸透し伝播した雨水が、地下ガス体流動検知システム1に到達した到達時点を示している。また各グラフは、前述の各計測点における温度分布を経時的変化として表したものである。
【0038】
雨水が地下ガス体流動検知システム1に到達すると、これらグラフ14A,15A,16Aは、すべてがその到達時点Rから同時に下降し始める。そして、これらのグラフは下降の下限を頂点とする下に凸の形状を描いた後、基準温度の値へ収束するようにして、安定する。
【0039】
すなわち、雨水等の自然現象に係る地下水6の温度変化は、前述の貯蔵施設Aからガス体が漏洩し伝播した場合とはその各計測点における時間的ずれを伴わない点で異なっており、またそのグラフ形状も大きく異なっている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る地下ガス体流動検知システム1によれば、貯蔵施設A近傍のボーリング穴3に満たされる地下水6中に、高分解能の光ファイバ温度計を用いた光ファイバケーブル11(計測部)が設けられており、この光ファイバケーブル11を用いた光ファイバ温度計測システムで計測の同時性を確保しつつ、地下水6の温度分布を計測する。
【0041】
この地下水6は、貯蔵施設Aから漏洩したガス等の地下ガス体Cが地盤内を伝播しこの地下ガス体流動検知システム1に達すると、その圧力によりゆらぐため、極僅かな温度変化を起こす。地下水6中の温度分布を、予め光ファイバケーブル11を用いて計測(基準温度計測)しておき、貯蔵施設Aから漏洩し伝播した地下ガス体Cがこの地下ガス体流動検知システム1に達して地下水6に極僅かな温度変化をもたらした際、これら基準温度計測の結果とこの温度変化とを比較することにより地下ガス体Cの流動を検知することができるので、貯蔵施設Aからのガス体の漏洩を正確且つ早期に認知することができるようになっている。
【0042】
また、計測部として光ファイバケーブル11を用いているので、従来の熱電対や測温抵抗体などの温度プローブに比べて、その設備投資費を極力低減することができるとともに、温度プローブの交換、再設置などに係るメンテナンス作業を簡便に行うことができる。また、その長期計測に対する安定性が確保される。
【0043】
また、地下ガス体Cの流動に起因する温度変化は、地下水6中に延在される光ファイバケーブル11上の漏洩箇所Bに近い位置から遠い位置に向かって経時的に伝播されるようにして検知されるため、その漏洩箇所Bの場所の推定を容易且つ正確に行うことができる。よって、漏洩が認知されてからその対応までの間にかかる労力・時間を必要最小限に抑えることができ、貯蔵施設Aの安全性を向上することができる。
【0044】
また、地下水6中の温度変化が自然現象(降雨、降雪等)に起因するものであった場合には、その温度変化は貯蔵施設Aからのガス体の漏洩と比較すると、光ファイバケーブル11上の各計測点における時間的ずれを伴わず、またそのグラフ形状も大きく異なっている。よって、この温度変化が貯蔵施設Aからのガス体の漏洩によるものなのか、或いは自然現象によるものなのかが計測結果から判別可能であるので誤検知が防止され、検知の精度が向上する。
【0045】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では、光ファイバケーブル11を計測管10の外周面に長手方向に沿うようにループ状に折り返し、その一方側の両端部を夫々測定部に接続するとしたが、これに限らず、折り返さずに長手方向に延在させて、その片方の端部のみを測定部に接続することとしても構わない。また、光ファイバケーブル11の配置を一次元的なものに限らずに、複数の光ファイバケーブル11を用いて、例えば格子状に二次元的に配置したり、立方体状に三次元的に配置したりしてもよい。
【0046】
また本実施形態では、5分間毎に各計測点における温度分布の計測結果を求めるとして説明したが、これに限らず、例えばこの計測の間隔を短くとって、30秒間や1分間としても構わない。
【0047】
また本実施形態では、計測管10の外周面に設ける計測部として光ファイバケーブル11を用いたが、同様の分解能(温度分解能0.01度以上0.1度以下、距離分解能0.05m以上0.25m以下)を有する分布型温度計を用いた同時計測であればよく、これに限られるものではない。
【0048】
また本実施形態では、貯蔵施設Aは、天然ガス、LPガス等の高圧ガスを貯蔵するための貯槽である貯蔵施設Aとしたが、対象物が気体であればよく、その種類を限られるものではない。すなわち、気体すべての地下ガス体の流動を、それらが伝播される際の圧力に起因する地下水6の温度変化によって検知することができる。
【0049】
また本実施形態では、ボーリング穴3は、貯蔵施設A近傍の下方に、この貯蔵施設Aに沿うようにして水平方向に延在されるとしたが、地下ガス体の流動を検知可能に配置されていればよく、例えば、このボーリング穴を鉛直方向に延在させて配置したり、斜め方向に延在させて配置したりしてもよい。また、このボーリング穴の形状を貯蔵施設Aの形状に沿うようにして、緩やかに湾曲させて形成しても構わない。また、ボーリング穴の代わりとして、内部に地下水6を満たすことが可能なトンネルや地下空洞を用いても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 地下ガス体流動検知システム
2 地山
3 ボーリング穴(穴部)
6 地下水
11 光ファイバケーブル(計測部)
A 貯蔵施設
C 地下ガス体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内を伝播するガス体の流動状況を検知する、地下ガス体の流動検知方法であって、
前記地盤内に、内部が地下水で満たされる穴部を設け、
前記穴部の長手方向に、温度分解能が0.01度以上0.1度以下で、距離分解能が0.05m以上0.25m以下の分布型温度計を用いた計測部を延在させ、
前記計測部を用いて、前記地下水の温度分布を同時計測し、
前記地下水の温度分布の位置変化及び時間変化から、前記地下ガス体の流動状況を把握することを特徴とする地下ガス体の流動検知方法。
【請求項2】
前記計測部として光ファイバを用いることを特徴とする請求項1記載の地下ガス体の流動検知方法。
【請求項3】
前記穴部が水平方向に延在されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の地下ガス体の流動検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−164536(P2010−164536A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9269(P2009−9269)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(000221546)東電設計株式会社 (44)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000133397)株式会社ダイヤコンサルタント (11)