説明

地下収納庫

【課題】飲食物や備品を収納するために一般住宅の床下に設けられる収納庫に関し、土圧に耐える強度を得るために重量が増大したり構造が複雑になって高価になる問題を解決すると共に、人が作業する空間と棚を設ける空間とを無駄な空間を生じることなく適切に配置することが可能で、かつ出し入れの作業性にも優れた地下収納庫を得る。
【解決手段】中に人が入って立った姿勢で作業をすることが可能な程度の直径を備えた横置き円筒形の地下収納庫を提供する。地下に埋設した横置き円筒形の収納庫1と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた収納スペース22と、当該収納庫の頂部に設けられたハッチ14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般住宅の飲食物や備品を収納するために一般住宅の床下やガレージの地下に設けられる収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅の厨房の床下に飲食物を貯蔵するための収納庫を設けることは、周知である。この従来の収納庫は、上面の開口から手を差し入れて物品の収容及び取り出しを行うようになっており、比較的収容量の小さいものである。一方、建物に地下室を設けて、当該地下室を収納庫として利用することも従来から行われている。
【0003】
我が国の一般住宅は木造が多く、地下室を設けることは比較的少ない。また、作業場として利用できるような地下室を設けようとすると、建築コストが大幅に増加する。一方、広い宅地を入手することが困難な都市部においては、地下に容量の大きな収納庫を設けることにより、地上の空間をより有効に利用することができる。
【0004】
そこで、簡易に設置できる地下室とでも言うべき構造の地下収納庫が提案されている。この種の地下収納庫は、地上の物置をそのまま地下に設けたような六面体の空間で、上面に出入のための開口(ハッチ)を有しており、建物1階の床面に設けた出入り口から梯子を伝って出入するようになっている。
【0005】
一方、床下の円筒形の収納庫として縦型円筒形のもので、その中心の縦軸回りに収納棚を回転して、収納量の増大と出し入れの便宜を図ったものが下記特許文献等に提案されている。
【特許文献1】特開平1‐33361号公報
【特許文献2】実開昭61‐170657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地下収納庫は、鋼板やFRP(繊維強化プラスチックス)で製作されるが、六面体形状の収納庫は、容積の大きなものは一体構造にできないために、継目が多くなって漏水等の問題が起りやすいこと、容積を大きくすると、それに伴って増大する土圧に耐えるために壁や床の強度を上げる必要があり、その強度は、壁や床の厚さ方向の寸法を大きくしなければ、土圧により生ずる曲げ応力に抵抗できないので、壁厚さが厚くなって重量が増大したり、補強梁や補強柱のために、構造が複雑になって高価になったりする問題がある。
【0007】
一方、縦円筒形の構造は、人が入らない回転棚式の構造としては便利であるが、内部に人が入って収納品を出し入れするような大きさのものにしようとすると、人が作業する空間と棚を設ける空間との配置を人間工学的に適切な配置とするのが困難で、作業が窮屈になったり、収納空間に無駄が生ずるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、中に人が入って立った姿勢で作業をすることが可能な程度の直径を備えた横置き円筒形の地下収納庫を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
すなわち、この出願の請求項1の発明に係る地下収納庫は、地下に埋設した横置き円筒形の収納庫1と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた収納スペース22と、当該収納庫の頂部に設けられたハッチ14とを備えていることを特徴とするものである。収納庫1を建物の床下に設けるときは、その頂部13が地表に現れるように半没状態で埋設されるが、ガレージや駐車スペースの地下に設けるときは、収納庫1全体が地下に隠れるように全没状態で設置し、ハッチ14の開口が地表に現れるようにする。後者の場合には、ハッチ14の開口には、マンホール蓋のような蓋を設け、吸排気口は地中のダクトを経て建物の床下に開口させるようにする。
【0010】
この出願の請求項2の発明に係る地下収納庫は、上記手段を備えた地下収納庫において、通気ダクト5を介して前記建物の床下中央部に開口する通気口16を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、この出願の請求項3の発明に係る地下収納庫は、上記請求項1記載の手段を備えた地下収納庫において、前記収納庫1の円筒底面を支える高さ調整具36を備えた仮支持枠31と、当該底面と地盤面との間に流入固化された現場打コンクリートの支持版32とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この出願の請求項4の発明にる地下収納庫は、上記請求項1記載の手段を備えた地下収納庫において、前記収納庫1の下半部を収容した箱形容器40と、この箱形容器を当該収納庫に締着している締着具42と、前記箱形容器と収納庫との間に流入固化された現場打コンクリートの支持版32とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
収納庫の周壁及び鏡板は、鉄板の外側にFRPの吹付層を設けた構造とするのが強度及び耐腐食性の点で好適であるが、FRPを強度部材とした構造とすることも可能である。もちろんこの周壁や鏡板は、内外面に塗装層を設けたり、断熱層や地震等により継目に亀裂が入ったときの漏水を防止する漏水防止層を設けた多層構造とすることができる。
【0014】
両円筒壁の内側に棚を設けることにより、収納庫の中央に円筒軸方向の作業スペースが形成される。このように形成される作業スペースは、出入のための梯子24を設けるのに都合がよく、また両側の棚が円弧壁面の内側に設けられるため、下方や上方の棚の奥行きが小さく、中間高さの棚の奥行きが深くなり、立ち姿勢又はしゃがんだ姿勢での人の手が届く範囲との関係で、人間工学的に優れた、出し入れ時の作業性が良い収納スペースを、内部空間を無駄にすることなく形成することができる。
【0015】
建物の床下及び地下は、地上の空間に比べて温度変化が小さく、特に夏季の温度上昇が小さいため、物品の収納環境として好適である。この好適な環境を維持するため、収納庫内と外気とを連通する通気口16、17は、建物の床下に、好ましくは建物中央部の床下に開口させる。収納庫を設けた部分の建物の床面には、床板の一部を取り外しないし開閉する出入り口を設ける必要があり、そのため、収納庫の設置位置が厨房の下方や廊下の下方に制限され、通気口16を建物中央に開口させることができないことが起る。この場合には、ダクト5を介して通気口16を建物中央部の床下に開口させればよく、更にこのダクト5を地中を通して配置することにより、地下の温度環境をより有効に利用することができる。
【0016】
この発明の収納庫の設置は、建物の床下となる地面の一部を掘削し、その底面に基礎を設けて工場生産した収納庫を吊り下ろして設置し、周囲に土を埋め戻して、要すればコンクリートのべた基礎を施工した後、建物を建てる。収納庫を基礎上に設置するとき、そのハッチ14の周壁の上縁が建物の床板の下面に僅かな(たとえば1cm程度の)間隙を空けて位置するように収納庫の設置高さを設定しておき、建物を建てた後、ハッチ14の周壁上縁と建物の床版下面との間の隙間に柔軟性ないし弾力性のあるシール材8を埋める。
【発明の効果】
【0017】
円筒形の地下収納庫は、1枚の板を曲げて胴を形成することができるので、継目が少なくて済み、漏水の防止に有利であるばかりでなく、周方向の圧縮力で土圧に抵抗することができるので、六面体構造のものに比べて製作が容易かつ軽量にできる。
【0018】
そして、収納庫を横置き円筒形とすることにより、上記効果に加えて、収納及び取り出し時の作業性がよく、かつ内部空間の利用効率に優れた地下収納庫を提供できるという効果がある。更に通気口16をダクト5を介して建物中央部の床下に開口させることによって、床下や地下の環境を有利に利用することができる。
【0019】
また、収納庫を支持する仮支持枠31や収納庫の下半部を収容する箱形容器40と現場打ちコンクリートの支持版32とからなる基礎構造を採用することにより、設置時の施工性に優れ、かつ経年変化によって収納庫のハッチと建物の床との繋ぎ目に隙間を生ずることのない地下収納庫を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1はこの発明の地下収納庫を建物の床の一部と共に示す断面側面図、図2は同断面正面図、図3は通気ダクトの配置を模式的に示す平面図、図4は基礎の一例を示す正面図、図5は同側面図、図6は基礎の他の例を示す正面図、図7は基礎の更に他の例を示す正面図である。図において、1は収納庫、2は建物の床板、3a、3b、3c、3dは収納庫の基礎、4は建築物の地盤面、図3の5は通気ダクト、一点鎖線で示す6は建物の輪郭線である。
【0021】
収納庫1は筒状の胴11の両端を鏡板12で閉鎖した横円筒状で、その頂部13の一部に平面矩形の出入口となるハッチ14が設けられている。ハッチ14は低い周壁15を備え、その上縁15aは、建物の床板2の下面との間に僅かに間隔を隔てた水平面上に位置している。
【0022】
両側の鏡板12の頂部には、給気口16と排気ファン(図示せず)を備えた排気口17とが開口している。給気口16は図3に示すように、通気ダクト5を介して建物の中央部の床下に開口している。排気口17の開口部及び通気ダクト5の開口部には、虫などの侵入を防ぐフィルタ(図示せず)が装着されている。給気口16や排気口17を鏡板12に設けているのは、その外側に設けられるダクトやファンケースなどと建物の床板との干渉を避けるためである。
【0023】
胴11、鏡板12及びハッチの周壁15は、内側から鋼板、下塗り塗装層、断熱材層、プラスチックシート層、FRP層及び仕上塗装層からなる多層構造である。FRP層は、ガラス繊維を混入した不飽和ポリエステル樹脂を吹きつけて形成した層で、強度部材となっている鋼板の腐食、特に電食を防止するための層となっている。その下層のプラスチックシートは、FRPを吹付けたときに断熱材層の気泡が埋まって断熱性能が低下するのを防止するために設けたものである。
【0024】
収納庫1の内部は、胴の中央部に筒軸方向の作業スペース21が設けられ、その両側の円弧側壁の内側部分及び作業スペース21の両端部が収納スペース22となっている。作業スペース21には、廊下状に底板23が設けられ、ハッチ14の周壁に上端を着脱自在ないし揺動自在に係止した梯子24が巻架されている。収納スペース22には、棚枠25が設けられ、この棚枠に棚板26を架け渡すことによって収納棚27が形成されている。
【0025】
建物の床板2には収納庫のハッチ14と連なる出入口2aが設けられ、この出入口に床板の一部となる扉板2bが設けられている。床の出入口2a及び収納庫側の周壁15の上縁外側を囲むように、床板2の下面に補強桟7が固着されており、補強桟7の内側の周壁上縁15aと床板2の下面との間にゴム質の弾力性を有するシール材8が充填されている。このシール材8は、収納庫1を設置し、その上に建物を建て、床板2を張った後に充填されたものである。
【0026】
図4、5に示す基礎3aは、仮支持枠31と現場打ちコンクリートの支持版32とを備えている。仮支持枠31は、鏡板12の外側に近接して位置するコ形鋼の横桟33に縦桟34の両端を溶着して形成したもので、縦桟34は、内側に収納庫の胴11を支持する緩い傾斜の斜面が形成されるように、山形になる方向にして装架されている。横桟33の両端には、アジャストボルトとロックナットからなる高さ調整具36が設けられている。
【0027】
上記構造の基礎は、収納庫1を設置するために掘削した孔の底面に砕石35を敷き、高さ調整具36を設けた部分に鉄板37を敷いて仮支持枠31を載置し、その上に収納庫1をその周面が縦桟34で支持されるように吊り下ろして、ハッチの周壁上縁15aが建築しようとする建物の床板2の下面から所定の隙間寸法だけ下がった位置に水平となるように四隅の高さ調整具36を調整してレベル出しを行う。その後、仮支持枠31が埋設される高さの型枠38を設置し、必要であれば適宜鉄筋を配置して、型枠内にコンクリートを流し込んで固化させることにより、支持版32を成形する。その後、収納庫1の周囲に土砂を埋め戻し、建物の基礎をべた基礎とするときは、建物の基礎コンクリートを敷設する。排気口17及び給気口16は、建物の基礎の上方に位置するように設けておくことはもちろんである。
【0028】
収納庫1の設置位置は、台所や廊下の下など収納物の出し入れに便利で、かつ床に扉板2bを設けることができる場所に限定される。収納庫1の換気のための給気口16は、建物の中央部の床下に開口させるのが好ましい。そこで必要により図3に示すような通気ダクト5を配置して給気口16を建物の床下中央部に開口させる。
【0029】
図6、7は、好ましい基礎の第2例を示した図である。この基礎3bは、周壁上縁の直線部の内側に補強用の形鋼39a、39bをボルト止め又は溶着したFRP製又は鋼板製の箱形容器40と、その内側底部に納めた円弧台41を有する仮支持枠31と、両端を前記形鋼39に係止して箱形容器40と収納庫1とを締結している2本のベルト42と、箱形容器40と収納庫1との間に現場打されたコンクリートの支持版32とを備えたものである。
【0030】
この基礎3bは、収納庫1を設置するために掘削した孔の底面に砕石35を敷き、その上に収納庫1をベルト42で締着された箱形容器40と共に吊り下ろし、その後、箱形容器40と収納庫1との間に現場打コンクリートを流し込んで固化させることにより、構築される。すなわち、予め箱形容器40に仮支持枠31を納めてその上に収納庫1を載せ、ベルト42で箱形容器40を収納庫1に締着しておいて、現場の掘削孔に吊り下ろすのである。この基礎3bは、コンクリート支持版32の型枠となる箱形容器40を収納庫1と共に設置することができるので、掘削孔の面積が小さくて済み、現場打コンクリートを打込んだときの収納庫1の浮き上がりがベルト42で阻止されるという長所がある。
【0031】
図8に示した収納庫の基礎3cは、工場生産されたコンクリート二次製品からなる支持ブロック43で収納庫1を支持する構造であり、支持ブロック43の上面は、収納庫1の周面に対応する円弧面に成形されている。図9に示す基礎3dは、砕石35を敷いた基盤の上面を収納庫1の周面に対応する円弧面に現場で成形して、その上に敷きモルタル44を敷いて収納庫1を支持する構造である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】地下収納庫を建物の床の一部と共に示す断面側面図
【図2】同断面正面図
【図3】通気ダクトの配置を模式的に示す平面図
【図4】基礎の第1例を示す正面図
【図5】図4の基礎の側面図
【図6】基礎の第2例を示す正面図
【図7】図6の基礎の側面図
【図8】基礎の第3例を示す正面図
【図9】基礎の第4例を示す正面図
【符号の説明】
【0033】
1 収納庫
5 通気ダクト
8 シール材
13 頂部
14 ハッチ
15a 上縁
16 給気口
22 収納スペース
31 仮支持枠
32 支持版
36 高さ調整具
40 箱型容器
42 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設した横置き円筒形の収納庫(1)と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた収納スペース(22)と、当該収納庫の頂部に設けられたハッチ(14)とを備えた、地下収納庫。
【請求項2】
通気ダクト(5)を介して前記建物の床下中央部に開口する通気口(16)を備えている、請求項1記載の地下収納庫。
【請求項3】
前記収納庫(1)の円筒底面を支える高さ調整具(36)を備えた仮支持枠(31)と、当該底面と地盤面との間に流入固化された現場打コンクリートの支持版(32)とを備えている、請求項1記載の地下収納庫。
【請求項4】
前記収納庫(1)の下半部を収容した箱形容器(40)と、この箱形容器を当該収納庫に締着している締着具(42)と、前記箱形容器と収納庫との間に流入固化された現場打コンクリートの支持版(32)とを備えている、請求項1記載の地下収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56609(P2007−56609A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245396(P2005−245396)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年(2005年)5月11日 「燃料油脂新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年5月24日 「日本経済新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年(平成17年)5月29日 「北國新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年(平成17年)5月30日 「日本経済新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成17年5月19日から21日 財団法人石川県産業創出支援機構開催の「第18回 石川県中小企業技術交流展」に出品
【出願人】(593140956)玉田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】