説明

地下構造物の施工方法及びこの施工方法により得られた地下構造物

【課題】下枠フレームの立設板部が垂直面であることによる地下構造物用周壁の地中圧入及び沈設が、土壌壁面との摩擦や粘着などによって円滑に行なわれない不具合を解消することと、下枠フレームが有していた強度不足による不具合を解消すること、地下構造物用周壁の防水性、断熱性などを向上させることにある。
【解決手段】下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを地下に沈下させる地下構造物用周壁の施工方法であり、下枠フレームには、鉄筋コンクリートで内部補強され、外周側板部と底板部とにより形成される刃口の下端部が、若干外側に突出する方向に傾斜したものが用いられ、地上で地下構造物用周壁の外周面に防水パネルが取り付けられる。
又、本発明に係る地下構造物においては、本発明に係る地下構造物の施工方法により得られた地下構造物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上で構築された地下構造物用周壁を、地下構造物用周壁で囲また地面を堀削して地下に沈設させる地下構造物の施工方法及びこの施工方法により得られた地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地下室,地下貯水槽などからなる地下構造物を地下に構築する施工に、いわゆる潜函工法と称される工法がある。潜函工法は、地上で構築した地下構造物用周壁を地下に沈設する工法であり、水中に地下構造物を沈めて行なう工法と、地下構造物用周壁で囲まれた内側の地面を掘削しながら地下構造物用周壁を徐々に地下までに沈下させて行なう工法とがある。後者の施工においては、下部に刃口が設けられた躯体構造(内側に底を有していない周枠形状)のオープン型のケーソンによって行なわれる。
【0003】
多くのオープン型のケーソンは、下枠フレームの上に地下構造物用周壁設けられたもので構成されている。このタイプのケーソンの施工では、最初に下枠フレームが施工現場で製作され、その後、ケーソンを地下に沈設させる、いわゆる潜函工法による施工が行なわれる。このため、地下構造物の基盤は、地下構造物用周壁を地下に沈設させた後に、施工される。
【0004】
オープン型のケーソンを潜函工法によって地下に沈設させる施工では、該ケーソンの製作が地面上で行なわれるため、地下で地下構造物用周壁を構築する場合と比較して、土壌壁面の崩壊が無く、施工中に地下水が流出してもケーソンで囲まれた内側の作業場に流入することが殆ど無いために施工作業の負担と危険性が大幅に軽減され、施工期間が短縮され、施工コストが抑えられるなど、様々な利点がある。
【0005】
オープン型のケーソンに関し、例えば、特許文献1により開示されるプレキャストコンクリート製地下室の壁パネルは、特許文献1の図1に示すように、H形鋼の梁16の下部に中空形状の刃口梁17が取り付けられ、該H形鋼の梁16の上に壁パネル1(2)が構築される。特許文献1の段落「0012」の記載の一部において、「(16)は、壁パネル(1)(2)の下端間を連結するH形鋼の梁、(17)は、その梁(16)の下面に取り付けた刃口梁であって、地中への圧入を容易にするためのものである。」という記載がある。そして、特許文献1の図1を群ると、この梁(16)と刃口梁(17)とが一体になった中空形状を有している。
【0006】
オープン型のケーソンに関し、特許文献2により開示される地下構造物の構築方法においては、コンクリート周壁の下端部に設けられている刃先部は、特許文献2の段落「0022」によると、「刃先部10は、鋼材をプレス成形して作成されており、構築する地下構造物の外形状に沿って上端が開口した周枠形状をなしている。」と記載されている。特許文献2の図2〜図7を見ると、コンクリート周壁を構築する際に打設するコンクリートが刃先部の先端内まで達しており、このため、刃先部はコンクリートで内部補強されていることになる。
【0007】
特許文献1に記載の周枠形状を有する刃口梁は、特許文献1の図1に示すように、外周側になる立設板部が垂直面で形成されている。特許文献2の段落「0022」には、「刃先部10の断面形状において、下端にはクサビ状に尖った刃先枠12を有し、刃先枠の外面側は垂直辺、内面側は傾斜辺になっており、」と記載されている。
【0008】
オープン型のケーソンにおける地下構造物用周壁の防水に関して、特許文献2の段落「0017」には、「コンクリート周壁の外面に防水処理を行うことができる。防水処理として、塗工防水剤を塗工して塗工防水層を形成しておくことができる。」と記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−163740号公報
【特許文献2】特開2001−323485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1において記載の刃口梁17は、特許文献1の図1に示すように、H形鋼の梁16の下方に一体となって設けられた中空形状を有しているため、壁パネル1(2)の地中に向けた圧入において、地盤が硬い地盤や地盤内に岩がある場合、刃口梁17が変形するおそれがある。又、壁パネル1(2)の地中に向けた圧入中に壁パネル1(2)の姿勢が傾いたり、刃口梁17の下方の地盤の一部における排土が顕著にあらわれて、刃口梁17の一部に壁パネル1(2)による荷重が片寄って加わると、刃口梁17が変形するおそれがある。
【0011】
特許文献2において記載の刃先部は、コンクリートで補強されているため、比較的丈夫な刃先部となっているが、刃先部内のコンクリートは、コンクリート壁面を形成するコンクリートと同時に打設されているため、コンクリート打設時に、打設したコンクリートによる上方から加わる荷重によって、刃先部が撓む方向に変形し易い。又、特許文献2の図6に示すように、板面である刃先部10である刃先枠12の上部の周囲を覆う形で固定されているため、コンクリート打設時に、打設したコンクリートによる上方から加わる荷重によって、刃先部10が広がる方向に変形して、刃先部10と刃先枠12との間に隙間が生じるおそれがあり、この状態で壁面の地下に向けた沈下を行なうと、刃先部10に土壌壁面による大きな抵抗を受けて、沈下を遅らせたり、刃先部10が破壊されるおそれがある。
【0012】
潜函工法による地下工事の最重要ポイントは、下枠フレームの強度性能にあり、下枠フレームの強度不足は、下枠フレームと壁面とが一体になったオープン型のケーソンを地中に圧入させる障害になり、しかも、オープン型のケーソンを地中に圧入する際に壁面に亀裂が生じて、施工時及び施工後の壁面で囲まれた内側空間内に地下水を浸入させる原因になる。
【0013】
この結果、コンクリート壁を地下に沈下させる途中で、刃先の撓みが原因でコンクリート周壁に亀裂が生じることがある。特許文献2において、請求項6の記載の一部に、「前記コンクリート周壁の外面に塗布防水層を施工する」という記載があるが、塗布防水層は、コンクリート周壁に生じた亀裂を埋めるものではなく、塗布防水層とともに亀裂が生じることがある。
【0014】
又、特許文献1に記載の刃口梁の外周側板部は、特許文献1の図1に示すように、刃口梁17の外周面が垂直に形成されていると、コンクリート周壁を地中に沈下させる際に、刃口梁17によってせん断された土壌壁面と刃口梁17の外周面とが密着して、双方の間に、コンクリート周壁の沈下の抵抗になる大きな摩擦力が生じる。このため、コンクリート周壁の地中に向けた沈下が円滑に行なわれないという不具合が生じ易い。特に、刃口梁17によってせん断された土壌壁面が粘土室である場合には、刃口梁17の外周面に粘土が密着して、コンクリート周壁の地中に向けた沈下を更に遅らせたり、コンクリート周壁が傾いた沈下をするおそれがある。
【0015】
特許文献2の段落「0018」に、「刃先部の外形がコンクリート周壁の外面よりも外側に張り出していれば、刃先部の沈下によって掘り下げられた地盤の内面とコンクリート周壁との接触が少なくなったり摩擦抵抗が小さくなったりするので、刃先部とコンクリート周壁の沈下がスムーズに行なわれる。」と記載されている個所があるが、刃先部の外形全体がコンクリート周壁の外周面よりも外側に張り出した状態であると、刃先部の外周面と刃先部の沈下によって掘り下げられた地盤の内面とは密着した状態になるため、前の段落に記載の不具合は解消されない。
【0016】
コンクリート周壁と比較すると刃先部の外周面は相当に狭い面であるが、刃先部の外周面に土壌壁面(地盤の内面)の土による外圧が加わったり、土壌壁面が粘土質である場合には、刃先部による地盤のせん断作用を大きく低下させる。これは、例えば、鋏の刃先に糊や接着剤が付着していると、薄い紙でも切れないことと同じ理屈である。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、
(1)従来の下枠フレーム(特許文献1に記載の刃口梁、特許文献2に記載の刃先部、がこれに相当する。)が有していた強度不足による不具合を解消すること、
(2)従来の下枠フレームの外周面が垂直面であることによる、土壌壁面と下枠フレームとの間で生じるケーソンの沈下に悪影響を及ぼす不具合を解消すること、
(3)地下構造物用周壁の地中圧入及び沈設が、従来の地下構造物用周壁よりも、防水性、又は断熱性を向上させることにある。
【0018】
又、鉄筋コンクリート製以外の地下構造物用周壁を、潜函工法により地下に沈設させることを可能にし、大型の地下構造物用周壁においては、一旦、その下段部分を途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を組み立てて、残りの沈下を行なうようにすることも含める。
【0019】
更には、本発明に係る地下構造物においては、本発明に係る地下構造物の施工方法により得られた地下構造物である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に係る地下構造物の施工方法は、下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記下枠フレームの製作は、鋼板製の下枠フレーム本体の製作後、該下枠レーム本体の内部空間に複数本の鉄筋を配筋し、かつ該内部空間の少なくとも大部分が埋まる程度にまでコンクリートを打設し、該コンクリートを養生硬化させることにより行なわれ、該下枠フレームの製作後、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁を設ける施工が行なわれるところに特徴がある。
【0021】
オープン型のケーソン(オープンケーソン)は、下方に向けた刃口を下部に有するケーソンのことであり、本発明においては、地下構造物用周壁の大きさ及び形状に略合わせた周枠形状を有する下枠フレーム上に地下構造物用周壁が構築されたケーソンを指している。
【0022】
下枠フレームは、潜函工法により地下構造物用周壁を地下に沈下させる際に、地下構造物用周壁による荷重が加わることによって、地下構造物用周壁の沈下を可能にさせ、地下構造物用周壁を地下に沈下させる過程、及び地下に沈設後などにおいて、地下構造物用周壁を下支えして、地下構造物用周壁の姿勢を安定させ、地下構造物用周壁にクラックなどを生じ難くさせる。
【0023】
請求項1に係る地下構造物用周壁の施工方法において用いられる下枠フレームは、鋼板製の下枠フレーム本体の内部が、鉄筋コンクリートで補強されているために、鋼板製の中空構造を有する下枠フレーム、及びコンクリートで内部補強された下枠フレームと比較して、格段に強度が向上し、地下構造物用周壁の重量による上方からの荷重が加わっても、撓んだり変形する不具合は、格段に改善されている。このため、地下構造物用周壁を地下に沈下させる途中で、コンクリート製の地下構造物用周壁にクラック(クラーク)が生じることも、格段に改善されている。
【0024】
又、下枠フレームが鉄筋コンクリートで内部補強されていると、硬い地盤でも変形することなく地盤をせん断して、地下構造物用周壁を地下に沈下させる。
【0025】
従来型のコンクリートで内部補強された下枠フレームは、その上に地下構造物用周壁を施工するためのコンクリートを下枠フレーム内まで充填させることにより出来上がったものである。即ち、下枠フレーム内のコンクリートと地下構造物用周壁を形成するためのコンクリートとは同時に打設され、養生硬化も同時に進行する。このため、コンクリートの養生硬化前に、コンクリートの過大な荷重が加わることによって、下枠フレームが撓んだり、膨らむ方向に変形する可能性があった。
【0026】
これに対して、請求項1に係る地下構造物の施工方法においては、下枠フレーム本体を鉄筋コンクリートで内部補強する施工が先に行なわれ、このコンクリートが養生硬化した後の下枠フレームは極めて頑強であり、下枠フレーム上に地下構造物用周壁を設ける際にコンクリート製の地下構造物用周壁による荷重が加わっても、下枠フレームが撓んだり変形する事態には殆ど至らない。
【0027】
請求項1に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、このような極めて頑強な下枠フレームの上の地下構造物用周壁を地上で施工し、その後、下枠フレームと地下構造物用周壁とが一体となったオープン型のケーソンを、地下構造物用周壁で囲まれた内側の土壌を堀削することによって、該ケーソンの自重によって、下枠フレーム下部の刃口で地盤をせん断しながら、地下まで沈下させる。
【0028】
極めて頑強な下枠フレームは、硬い土壌でも変形することなくせん断し、ケーソンを円滑に沈下させる。
【0029】
請求項2に係る地下構造物の施工方法は、上記の施工方法において、下枠フレームには、該下枠フレームの内部から上方に向けて、所定間隔を設けて前記鉄筋の一部又は長尺ボルトの一部を長く突出させた構造を有する下枠フレームが用いられる。
【0030】
下枠フレームの内部から上方に向けて長く突出させた鉄筋の一部又は長尺ボルトは、下枠フレームの上に地下構造物用周壁を設ける際に、地下構造物用周壁内に埋め込まれ、或いは、地下構造物用周壁に締結される。これらの鉄筋や長尺ボルトは、地下構造物用周壁の姿勢を安定させ、地下構造物用周壁と下枠フレームとを頑強に一体化させるために用いられ、これらの鉄筋や長尺ボルトの基部は、下枠フレーム内のコンクリート内に頑強に固定されている。
【0031】
請求項3に係る地下構造物の施工方法は、上記いずれかの施工方法において、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、該下枠フレームの枠方向に沿った外周面を形成する外周側板部と、該外周側板部の下縁に沿った個所から該外周側板部に対して遠ざかる斜め上方の中段位置に向けて設けられた傾斜板部と、該傾斜板部の内側縁に沿った個所から更に内側横方向に向けて設けられた中段底板部と、該中段底板部の内側周縁に沿った個所から上方に向けて設けられた内周側板部とにより概略形状が形成されて、前記外周側板部と前記傾斜板部とによる刃口が形成され、かつ上端を大きく開口させた形状を有する下枠フレーム本体が用いられる。
【0032】
請求項3に係る地下構造物の施工方法において用いられる下枠フレームは、その外形を形成する下枠フレーム本体の上端が大きく開口されており、ここから下枠フレーム本体の内部空間に鉄筋が入れられ、コンクリートが打設される。打設された後のコンクリート面は平坦であり、後に行なわれる地下構造物用周壁を形成するために打設されたコンクリートと一体になる。しかしながら、後に設けられる地下構造物用周壁は、コンクリートの打設によって形成される鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を限定するものではなく、例えば、プレキャストコンクリート製の地下構造物用周壁、鋼板製の地下構造物用周壁などであっても構わない。
【0033】
請求項4に係る地下構造物の施工方法は、上記いずれかの施工方法において、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の外周面を形成する外周側板部が、該外周側板部の上端縁又は途中高さの個所から下縁に向けて、1〜5°の傾斜角を持って外側に傾斜した形状を有する下枠フレーム本体が用いられる。
【0034】
下枠フレームは、鋼板製の下枠フレーム本体が鉄筋コンクリートで内部補強されて出来ており、このため、下枠フレーム本体の外周側板部が傾斜していることは、下枠フレームの外周側の面が傾斜していることにもなる。
【0035】
外周側板部の上端又は途中高さの個所から下縁に向けて、1〜5°の傾斜角を持って外側に傾斜していると、下枠フレームの下端である刃口の先端部は、この先端部上方の面よりも最も外側に位置していることになる。このため、下枠フレーム下部の刃口で地盤をせん断した後に形成される土壌壁面と外周側板部の面との間には若干の隙間が生じ、この隙間があることにより、沈下の際に、土壌壁面と外周側板部の面との間で生じる滑りの抵抗になる摩擦は大幅に抑えられる。
【0036】
特に、下枠フレーム下方の土質が粘土質である場合、従来では、粘土が外周側板部に付着してこれが沈下を妨げる大きな抵抗になっていたが、土壌壁面と外周側板部の面との間には若干の隙間が生じていると、外周側板部に粘土が強く押し付けられて付着する機会が少なくなり、土壌壁面と外周側板部の面との間で生じる滑りの抵抗になる摩擦は大幅に抑えられる。
【0037】
請求項5に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、上記いずれかの施工方法において、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の一部面を構成する外周側板部と外周側板部の各上端縁に又は中段個所に、互いに対向する横方向に向けられた狭幅の水平板部が夫々一体形成された構造を有する下枠フレームが用いられる。
【0038】
この水平板部は、下枠フレームの上に鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を施工する際に、コンクリート打設用の型枠を支持したり、地下構造物用周壁のパネルを支持するため、又、下枠フレーム内の鉄筋コンクリートと鋼板製の下枠フレーム本体とを頑強に固定させるためにある。しかも、水平板部は下枠フレーム本体、延いては、下枠フレームを補強する。
【0039】
この水平板部は、外周側板部に一体となった外側の水平板部と、外周側板部に一体となった内側の水平板部とにより構成され、外側と内側の各水平板部との間に、開口部となる間隔が設けられている。外側と内側の各水平板部は、下枠フレーム本体の上端面を構成する位置、又は上端近傍に高さの位置に設けられている。
【0040】
請求項6に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、上記いずれかの施工方法において、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、周枠方向を区切る長さの複数個の分割フレームが周枠方向に接合され、かつ各分割フレームの両側端部に、下枠フレーム本体の内部空間を遮る方向に向けた接合用板部が形成された形状を有する下枠フレームが用いられる。
【0041】
鋼板製の下枠フレーム本体は、構築予定の地下構造物用周壁に合わせた大きな形状であるため、施工現場で製作される。この製作においては、予め工場で製作した分割フレームを組み合わせて一体化させることにより行なわれる。
【0042】
従来では、分割フレームの接合が溶接で行なわれていたが、分割フレームの両側縁どうしを突き合わせた姿勢を維持させながら溶接する作業は容易でなく、熟練を要する。鋼板製の下枠フレーム本体の両側端にフランジ面を設けて、フランジ面同どうしを突き合わせてボルト・ナットで締結する方法もあるが、フランジ面は、後に行なわれる沈下を遅らせる抵抗になる。
【0043】
本発明では、分割フレームどうしを突き合わせて接合する面となる接合用板部が下枠フレーム本体の内側に向けられているため、分割フレームどうしを突き合わせて組み立てた後は、接合用板部は外側から見えない位置にあり、後に行われる沈下の抵抗にはならない。又、溶接の場合とは違って、分割フレームを組み立てた後に、下枠フレーム本体の形状に狂いが発見された場合には、ボルト・ナットを一旦緩めてこの狂いを修正することが可能である。
【0044】
請求項7に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、上記いずれかの施工方法において、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、該下枠フレーム本体の傾斜板部又は中段板部の内側途中面から該下枠フレーム本体の内部空間に向けて上方に立設する補強板部が形成された形状を有する下枠フレーム本体が用いられる。
【0045】
下枠フレームは、鋼板製の下枠フレーム本体が鉄筋コンクリートで内部補強されて出来ており、下枠フレームの長尺方向に向けた棒筋による鉄筋は、下枠フレームの撓みを防止するために用いられる。本発明では、更に、棒筋よりも丈夫な補強板部を下枠フレーム本体内部に設けて、下枠フレームの撓み方向の耐応力を更に向上させるようにした。縦板である補強板部は、棒筋よりも上下方向からの耐応力が格段に強く、下枠フレームの剛性を向上させる。
【0046】
請求項8に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、上記いずれかの施工方法において、地下構造物用周壁の外周面に防水パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なわれる。
【0047】
地下構造物用周壁の周囲を防水パネルで覆うと、地下構造物を地下に構築後、地下構造物の室内に、地下水や雨水が浸入することがない。地下構造物用周壁を地下に沈設した後に防水パネルを設けることは極めて困難であり、地下構造物用周壁の周囲を防水塗料を塗布した場合には、長期間に経過により防水塗料が劣化して防水機能が低下する。このため、本発明では、地下構造物用周壁の周囲に防水パネルを固定させた後、オープン型のケーソンを地下に沈設させるようにした。
【0048】
即ち、地下構造物用周壁の周囲を防水パネルで覆うと、地下構造物を地下に構築後、地下水や雨水が地下構造物用周壁に浸透して、地下構造物の室内に流れ込んだり、地下構造物の室内に水滴や湿気で濡れることがない。
【0049】
防水パネルは、例えば、例えば、塩化ビニル系樹脂,ポリプロピレン,ABS,エポキシ樹脂などの何れかを材料とする1層構造のもの、又は、アルミニウム板、塗装鋼板などの1枚金属板、若しくは、これらの材料が複数積層された多層板などで形成された、板厚50mm程度の市販の防水パネルなどが挙げられる。
【0050】
請求項9に係る地下構造物用周壁の施工方法においては、上記施工方法において、地下構造物用周壁の外周面に設ける防水パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用する。
【0051】
鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を施工する場合、周壁の外側と内側になる位置にコンクリート打設用の型枠が使用される。本発明においては、防水パネルを外側の型枠として兼用することにより、捨て枠である従来タイプの外枠(外側パネル)を不要にした。
【0052】
防水パネルは、外周側型枠として使用した後、撤去されることなく、鉄筋コンクリート製の周壁用の防水パネルとして、地下構造物用周壁及び下枠フレームともに、地下に沈下される。
【0053】
請求項10に係る地下構造物用周壁の施工方法は、上記いずれかの施工方法において、地下構造物用周壁の外周面に断熱パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なわれる。
【0054】
地下構造物用周壁の周囲を断熱パネルで覆うと、地下構造物を地下に構築後、冬場や寒冷地において、地下構造物の室内に土壌の冷気で室内が冷え難くなる。このため、室内の暖房を控えめにしても快適な室温にする。地下構造物用周壁を地下に沈設した後に断熱パネルを設けることは極めて困難である。このため、本発明では、地下構造物用周壁の外周面に断熱パネルを設けた後、オープン型のケーソンを地下に沈設させるようにした。断熱パネルは、例えば、プラスチック板又は金属板に発泡プラスチックや不織布が固定された断熱パネルが挙げられる。
【0055】
請求項11に係る地下構造物用周壁の施工方法は、上記いずれかの施工方法において、地下構造物用周壁の外周面に設ける断熱パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用する。
【0056】
鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を施工する場合、周壁の外側と内側になる位置にコンクリート打設用の型枠が使用される。本発明においては、断熱パネルを外側の型枠として兼用することにより、捨て枠である従来タイプの外枠(外側パネル)を不要にした。
【0057】
請求項12に係る地下構造物用周壁の施工方法は、下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、上段部分と下段部分とにより構成され、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なうところに特徴がある。
【0058】
地下構造物用周壁(オープン型のケーソン)が大型である場合、特に、上下高さが高い地下構造物用周壁は、潜函工事が大掛かりになり、施工コストが増加し、作業がし難く危険性も高くなる。このため、本発明においては、先に下段部分を地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上方に上段部分を構築して、地下に沈設させるようにした。
【0059】
請求項13に係る地下構造物用周壁の施工方法は、下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、壁面が鋼板で形成され、該壁面の内壁面に沿って補強リブが形成され、最下段に位置する水平方向に向けられた補強リブが、他の補強リブよりも幅狭く形成された構造を有するケーソンが用いられるところに特徴がある。
【0060】
鋼板製の地下構造物用周壁であるオープン型のケーソンの強度向上させるためには、内壁に補強リブを多段に形成する必要があるが、最下段の補強リブは沈下の大きな抵抗になる。このため、本発明においては、水平方向に向けられた補強リブのうち、最下段に位置する水平方向に向けられた横リブが、上段に位置する補強リブよりも幅狭く形成した地下構造物用周壁(オープン型のケーソン)を用いるようにした。
【0061】
請求項14に係る地下構造物用周壁の施工方法は、下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、鋼板製の上段部分と鋼板製の下段部分とにより構成され、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なうところに特徴がある。
【0062】
ケーソン(地下構造物用周壁)が大型である場合、特に、上下高さが高いケーソンは、潜函工事が大掛かりになり、施工コストが増加し、作業がし難く危険性も高くなる。このため、本発明においては、先に下段部分のケーソンを地下途中まで沈下させ、その後、下段部分ケーソンの上方に上段部分のケーソンを組み立てて、地下に沈設させるようにした。
【0063】
本発明に係る地下構造物においては、前述のいずれかの地下構造物の施工方法により得られた地下構造物である。
【発明の効果】
【0064】
請求項1に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、鋼板製の下枠フレーム本体の内部が鉄筋コンクリートで補強された下枠フレームを用いて行なうため、重量物である地下構造物用周壁を頑強に下支えした際、及び潜函工法により地下構造物用周壁を地下に沈下させる途中、更には、地下構造物用周壁を地下に沈設させた後などにおいて、下枠フレームが変形したり撓んだりするような不具合を大幅に改善することが出来るようになった。
【0065】
請求項2に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、下枠フレームには、該下枠フレームの内部から上方に向けて、所定間隔を設けて前記鉄筋の一部又は長尺ボルトの一部を長く突出させた構造を有する下枠フレームを用いた施工が行なえるようにした結果、下枠フレームの上に地下構造物用周壁を設ける際に、この鉄筋の一部や長尺ボルトの先端部を地下構造物用周壁内に埋め込んで、或いは、地下構造物用周壁に締結して、地下構造物用周壁の姿勢を安定させ、地下構造物用周壁と下枠フレームとを頑強に一体化させることが出来るようになった。
【0066】
請求項3に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、上端を大きく開口させた形状を有する下枠フレーム本体によって外形が形成された下枠フレームを用いた施工が行なえるようにした結果、下枠フレーム本体の上端の大きな開口から、下枠フレームの内部補強に必要な鉄筋を入れたり、コンクリートを打設することが出来るようになった。しかも、後に行なわれる地下構造物用周壁を安定した姿勢で、頑強に、下枠フレームに固定一体化させることが出来るようになった。
【0067】
請求項4に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の外周面を形成する外周側板部が、該外周側板部の上端縁又は途中高さの個所から下縁に向けて、1〜5°の傾斜角を持って外側に傾斜した形状を有する下枠フレーム本体によって外形が形成された下枠フレームを用いた施工が行なえるようにした結果、ケーソンの沈下によって、刃口によってせん断されて出来た土壌壁面と外周側板部との間に隙間が形成されるようになり、この隙間があることによって、土壌壁面と外周側板部との間に生じる滑りを妨げる摩擦を大幅に少なくすることが出来、円滑な沈下が実施されるようになった。
【0068】
請求項5に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の一部面を構成する外周側板部と外周側板部の各上端縁に又は中段個所に、互いに対向する横方向に向けられた狭幅の水平板部が夫々一体形成された構造を有する下枠フレームを用いた施工が行なえるようにした結果、下枠フレームの上に鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を施工する際には、水平板部によってコンクリート打設用の型枠や地下構造物用周壁のパネルを安定した姿勢で支持させることが出来るようになる。
又、下枠フレーム内の鉄筋コンクリートと鋼板製の下枠フレーム本体とを頑強に固定させることが出来るようになった。
【0069】
請求項6に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、周枠方向を区切る長さの複数個の分割フレームが周枠方向に接合され、かつ各分割フレームの両側端部に、下枠フレーム本体の内部空間を遮る方向に向けた接合用板部が形成された形状を有する下枠フレーム用いた施工が行なえるようにした結果、分割フレームの両側縁どうしを突き合わせた姿勢で行なう接合を、容易かつ頑強に行なうことが出来るようになった。この結果、形状安定性に優れた頑強な下枠フレームを製作することが出来るようになった。
【0070】
請求項7に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、該下枠フレーム本体の傾斜板部又は中段板部の内側途中面から該下枠フレーム本体の内部空間に向けて上方に立設する補強板部が形成された形状を有する下枠フレーム本体によって外形が形成された下枠フレームを用いた施工が行なえるようにした結果、下枠フレームの撓み方向の耐応力を一層向上させることが出来るようになった。
【0071】
請求項8に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、地下構造物用周壁の外周面に防水パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なえるようにした結果、地下構造物の室内に、地下水や雨水が地下構造物用周壁に浸透して、地下構造物の室内に流れ出ることが無く、地下構造物の室内に水滴や湿気で濡れることが無い、快適な室内にすることが出来るようになった。
【0072】
請求項9に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、地下構造物用周壁の外周面に設ける防水パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用出来るようにした結果、捨て枠である従来タイプの外枠(外側パネル)の設置と撤去に要するコストと材料コストを抑え、施工期間を短縮させることが出来るようになった。
【0073】
請求項10に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、地下構造物用周壁の外周面に断熱パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なえるようにした結果、地下構造物を地下に構築後の室内を、冬場や寒冷地における土壌の冷気の影響を抑えた快適な室温にすることが出来るようになった。
【0074】
請求項11に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、地下構造物用周壁の外周面に設ける断熱パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用出来るようにした結果、捨て枠である従来タイプの外枠(外側パネル)の設置と撤去に要するコストと材料コストを抑え、施工期間を短縮させることが出来るようになった。
【0075】
請求項12に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、ケーソンには、上段部分と下段部分とにより構成され、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なうことが出来るようにした結果、大規模な潜函工事を容易にさせ、施工コストを抑え、安全に作業が出来るようになった。
【0076】
請求項13に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、壁面が鋼板で形成され、該壁面の内壁面に沿って補強リブが形成され、最下段に位置する水平方向に向けられた補強リブが、他の補強リブよりも幅狭く形成された構造を有するケーソンが用いられたケーソンを用いた施工が行なえるようにした結果、該ケーソンを円滑に地下に沈下させることが出来るようになった。
【0077】
請求項14に係る地下構造物用周壁の施工方法によれば、鋼板製の上段部分と鋼板製の下段部分とによってケーソンを構成し、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なう施工が行なえるようにした結果、大規模な潜函工事を容易にさせ、施工コストを抑え、安全に作業が出来るようになった。
【0078】
本発明に係る地下構造物においては、本発明のいずれかの地下構造物の施工方法により得られた地下構造物であり、したがって、本発明の各施工方法により得られる効果を発現するのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
本発明を実施するための最良の形態は、次の実施例1による地下構造物用周壁の施工方法である。
【実施例1】
【0080】
図1は本発明の第1実施形態に係る地下構造物用周壁を地下に沈下させる前に行なわれる下枠フレーム本体の設置例を示す斜視図、図2は下枠フレームを設置する低段地面の1例を示した斜視図である。
【0081】
図1に示すように、本発明の1実施例に係る地下構造物用周壁の施工は、地下構造物を構築予定の地面Gを浅く先行掘削して平坦に均した低段地面G1の上で、下枠フレーム本体1を地下構造物用周壁(図2においては図示せず)の大きさに合わせた躯体構造に組み立てて、低段地面G1の上に水平に設置することから始まる。
低段地面G1は、後に行なわれる地下構造物用周壁の施工とケーソン(図2においては図示せず)の沈下作業を楽にさせ、ケーソンの沈下を容易かつ円滑にさせ、地下に沈設したケーソンの上部周りの土壌面をコンクリートで基礎固めするために設けられるが、必ずしも設けられるものではなく、周辺環境、土質、施工計画に応じて決められる。
【0082】
図2に示すように、低段地面G1は、構築予定の地下構造物の外周に沿う大きさを有する周枠形状よりも広い面になるように、ミニショベル、ブルドーザなどの建設機械(図示せず)を利用して、地面Gを凹状に浅く掘削し、地表面を平坦に均すことにより造成され、低段地面G1の周囲の土壌壁面は、崩壊しないように矢板Yで補強される。低段地面G1の深さは施工計画によって決められるため、必ずしも限定されるものではないが、例えば、30cm〜100cmの深さである。尚、低段地面G1の周囲の全周に土壌壁面を形成しないで、後の作業においてミニショベル(ミニユンボ)やブルドーザなどの建設土木機械(図示せず)や資材の搬入を容易にするために、低段地面G1の周囲の一部を作業の障害にならない程度に崩した状態にして残し、後に行なわれる最初のコンクリート打設前に矢板Yで土止めされた土壌壁面に修復しても構わない。
【0083】
図3は下枠フレーム本体1の全体形状の1例を示した平面図、図4は下枠フレーム本体1の一部分の示した正面断面図、図5は下枠フレーム本体1における外周側板部2に傾斜角があることを示す部分正面断面図である。
【0084】
図3に示すように、下枠フレーム本体1は、複数個の分割フレーム1A,1A・・・、1B,1B・・・が周枠方向に組み立てられて一体化された躯体構造を有する。図3に示す下枠フレーム本体1は、平面視において方形状のものであるが、この形状に限らず、例えば、楕円形状、円形状、方形状以外の多角形状を有する下枠フレーム本体1であっても良い。平面視における下枠フレーム本体1の形状及び大きさは、構築予定の地下構造物用周壁の形状及び大きさにより決められる。
【0085】
図4に示す実施形態の下枠フレーム本体1は、地下構造物用周壁の下縁に略沿う大きさを有する外周側板部2と、外周側板部2の下縁に沿った個所から斜め内側上方における外周側板部2の途中高さまで設けられた傾斜板部3とによる下方に向けた刃口4が形成され、傾斜板部3の上端縁に沿った個所から内側横方向に向けて中段底板部6が形成され、中段底板部6の内側周縁に沿った個所から上方に向けて外周側板部7が形成され、外周側板部2と外周側板部7の各上端縁に沿った個所から、夫々対向する横方向に向けた幅狭い水平板部8,9が形成され、水平板部8,9の間に開口部10が形成された、鋼板製ものであり、下枠フレーム本体1を、上方から開口部10を通して見ると、その内部に空間Sが形成されている。
【0086】
下枠フレーム本体1を構成する各分割フレーム1A(1B)の横幅W1は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、37cmである。各分割フレーム1A(1B)の高さH1は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、32cmである。水平面に対する傾斜板部3の傾斜角R 図1に示すように、本発明の1実施例に係る地下構造物用周壁の施工は、地下構造物を構築予定の地面Gを浅く先行掘削して平坦に均した低段地面G1の上で、下枠フレーム本体1を地下構造物用周壁(図2においては図示せず)の大きさに合わせた躯体構造に組み立てて、低段地面G1の上に水平に設置することから始まる。
【0087】
図2に示すように、低段地面G1は、構築予定の地下構造物の外周に沿う大きさを有する周枠形状よりも広い面になるように、ミニショベル、ブルドーザなどの建設機械(図示せず)を利用して、地面Gを凹状に浅く掘削し、地表面を平坦に均すことにより造成され、低段地面G1の周囲の土壌壁面は、崩壊しないように矢板Yで補強される。
低段地面G1の深さは施工計画によって決められるため、必ずしも限定されるものではないが、例えば、30cm〜100cmの深さである。低段地面G1の周囲の全周に土壌壁面を形成しないで、後の作業においてミニショベル(ミニユンボ)やブルドーザなどの建設土木機械(図示せず)や資材の搬入を容易にするために、低段地面G1の周囲の一部を作業の障害にならない程度に崩した状態にして残し、後に行なわれる最初のコンクリート打設前に矢板Yで土止めされた土壌壁面に修復しても構わない。
【0088】
図3は下枠フレーム本体1の全体形状の1例を示した平面図、図4は下枠フレーム本体1の一部分の示した正面断面図、図5は下枠フレーム本体1における外周側板部2に傾斜角があることを示す部分正面断面図である。
【0089】
図3に示すように、下枠フレーム本体1は、複数個の分割フレーム1A,1A・・・、1B,1B・・・が周枠方向に組み立てられて一体化された躯体構造を有する。図3に示す下枠フレーム本体1は、平面視において方形状のものであるが、この形状に限らず、例えば、楕円形状、円形状、方形状以外の多角形状を有する下枠フレーム本体1であっても良い。平面視における下枠フレーム本体1の形状及び大きさは、構築予定の地下構造物用周壁の形状及び大きさにより決められる。
【0090】
図4に示す実施形態の下枠フレーム本体1は、地下構造物用周壁の下縁に略沿う大きさを有する外周側板部2と、外周側板部2の下縁に沿った個所から斜め内側上方における外周側板部2の途中高さまで設けられた傾斜板部3とによる下方に向けた刃口4が形成され、傾斜板部3の上端縁に沿った個所から内側横方向に向けて中段底板部6が形成され、中段底板部6の内側周縁に沿った個所から上方に向けて外周側板部7が形成され、外周側板部2と外周側板部7の各上端縁に沿った個所から、夫々対向する横方向に向けた幅狭い水平板部8,9が形成され、水平板部8,9の間に開口部10が形成された、鋼板製ものであり、開口部10から見た内部には空間Sが形成されている。
【0091】
下枠フレーム本体1を構成する各分割フレーム1A(1B)の横幅W1は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、37cmである。各分割フレーム1A(1B)の高さH1は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、32cmである。水平面に対する傾斜板部3の傾斜角Rは、必ずしも限定されるものではないが、例えば、硬い地盤用のものでは30°の傾斜角があり、中位の硬さの地盤用では45°の傾斜角があり、軟弱な地盤用のものでは更に小さな傾斜角にして地盤から受ける受圧面積と抵抗を大きくして、過大な沈下が生じないようにしてある。又、どのような形状及び大きさの下枠フレーム本体1を選択するかは、地下構造物用周壁の重量によっても異なる。
【0092】
図5に示すように、下枠フレーム本体1の外周側板部2は、その下縁が若干外方向に向くように、その上端から下縁に向けて傾斜している。鉛直に対する外側枠板部2の傾斜角R1は、例えば、1〜5°の傾斜角であり、更に好ましくは、1〜3°の傾斜角であり、発明者による試験によれば、外側枠板部2が、1.2°の傾斜角を持つ下枠フレーム本体を具備したケーソン(図5においては図示せず)を地下に沈下させた時に、地盤を効率良くせん断し、しかも、せん断されて出来た土壌壁面と外周側板部2とによる摩擦が少なくなることによる良好な沈下が見られるという結果が得られた。
【0093】
図6及び図7はいずれも下枠フレーム本体1における外周側板部2の傾斜構造についての他の実施形態を示した正面断面図である。
【0094】
図6に示す下枠フレーム本体101の外周側板部2は、上段の垂直板部分2aと下段の傾斜板部分2bとにより形成され、下段の傾斜板部分2b全体が外方向に突出した形状を有している。図7に示す下枠フレーム本体102の外周側板部2は、上段の垂直板部分2aと下段の傾斜板部分2cとを有している。図6及び図7に示す外周側板部2においても、図5に示す外周側板部2と同様の作用効果が発揮される。
【0095】
図8における(a)図は下枠フレーム本体1の一部を構成するコーナー部分の分割レーム103の1例を示した斜視図、図8における(b)図は隣り合う分割フレーム103,104の接合例を示した部分側面断面図である。
【0096】
図8における(a)図及び(b)図に示す実施形態の分割フレーム103,104の両端面には、隣り合う分割フレーム103,104の各一方の端面を揃えて接合する際に、接合ズレが生じなく強力に接合されるようにするための、ボルト挿入孔11a,11bが上下に開設された接合用板部11,11が、外側枠板部2の各端面から空間S方向に向けて、溶接されて形成されている。各接合用板部11,11の各上端は外周方向に位置する一方の水平板部8の縁部に沿った内側面に溶接され、各接合用板部11,11の各下端は傾斜板部3の縁部に沿った内側面に溶接されて、外側枠板部2と水平板部8と傾斜板部3の各端部が変形しないようにするための補強を兼ねている。
【0097】
図8における(b)図に示すように、隣り合う分割フレーム103,14は、対応する端面を揃えて重ね合わせた後、重ね合わせた接合用板部11,11どうしを、ボルトB,BとナットN,Nによる締結により、連結されて一体化すぁれている。尚、ボルトB,BとナットN,Nによる締結ではなく、隣り合う分割フレーム103,14の各端面を重ね合わせた後、隣り合う分割フレーム103,14の各端面を溶接して、双方を一体化させるようにしても良い。
【0098】
図9は他の実施形態による分割フレーム105を示した正面断面図、図9における(b)図と図10は、いずれも更に他の実施形態による分割フレーム106,107を示した正面断面図である。
【0099】
図9における(a)図に示す実施形態の分割フレーム105は、両側の水平板部8,9の対向する各片側に沿った縁部から更に上方に折曲げ加工されて、対向するガイド板部11,12が上方に向けて形成されている。ガイド板部11,12は、後に行なわれる地下構造物用周壁をコンクリート打設により施工する際の、地下構造物用周壁における下部の打ち継ぎを強固にするために設けられている。又、ガイド板部11,12は、地下構造物用周壁がプレキャストコンクリート板(図示せず)である場合には、その下部を両側から保持して、姿勢を強固にすることが可能になる。
【0100】
図9における(b)図に示す実施形態の下枠フレーム本体106は、両側の水平板部8,9の対向する各片側に沿った縁部から更に上方に折曲げ加工されて、対向するリブ13,14が形成されており、各リブ13,14には、地下構造物用周壁下部の打ち継ぎ面を強固にするためのガイド板部15,16が、対向した向きで上方に向けて形成されている。このガイド板部15,16も、図9に示すガイド板部11,12と同様の作用効果を有する。
【0101】
図10に示す実施形態の分割フレーム107は、傾斜板部3と中段底板部6とによって形成されている折曲げ部分近傍に沿った近傍における中段底板部6の上面に、分割フレーム107の内部空間Sを外側と内側に仕切り、かつ下枠フレーム本体1の撓みを防止するための補強板17が一体形成されている。この補強板17の上端縁は、更に横方向に折曲げ加工されて水平板部17bが、内側に位置する一方の水平板部9と高さが揃えられて、形成されている。
【0102】
図11における(a)図は、躯体構造に組み立てて一体化されて下枠フレーム本体1を低段地面G1に設置した状態を示した部分斜視図、図11における(b)図は同じくこれを示した正面断面図である。
【0103】
図11における(a)図及び(b)図に示すように、下枠フレーム本体1を低段地面G1に設置する位置は、例えば、低段地面G1の周囲の土壌壁面と下枠フレーム本体1の最外周端部との間の間隔W2が、例えば、30cm〜100cmになる位置であり、この間隔が確保されるように、下枠フレーム本体1が低段地面G1に設置される。
【0104】
下枠フレーム本体1は、下部4が刃先になっているため、何らかの支持が無ければ不安定な状態で設置されることになる。このため、下枠フレーム本体1を低段地面G1に設置する際には、下枠フレーム本体1の両側から、夫々周枠形状に沿った間隔を設けて、高さ調整自在な構造を有する支持部材20,21で支えるようにする。
【0105】
本実施例では、図11における(b)図に示すように、下枠フレーム本体1を外側から支持する支持部材20は、直立させたネジ棒20aにL形形状を有する支持板20bの一端部が高さ調整自在に支持された構造のものが用いられる。支持部材20は、該支持板20bの他端部をボルト20c(又は、ボルトとナット)を利用して、下枠フレーム本体1の外周側板部2に装着した状態で、下枠フレーム本体1を支持する。
【0106】
下枠フレーム本体1を内側から支持する支持部材21は、直立させたネジ棒21aに平板形状を有する支持板21bの一端部が高さ調整自在に支持された構造のものが用いられる。支持部材21は、該支持板21bの他端部で下枠フレーム本体1の中段板部6を下支えすることにより、下枠フレーム本体1の片側を支持する。尚、支持板21bと中段板部6とを、ボルト、又はボルトとナットを利用して装着すると、尚良い。
【0107】
このように下枠フレーム本体1を両側から支持部材20,21で支持させると、各辺が長尺である下枠フレーム本体1を、水平姿勢で安定した姿勢で低段地面G1の上に設置される。尚、支持部材はこれらの構造のものに限定されるものではなく、例えば、ジャッキ、枕木などを利用して下枠フレーム本体1を支持させても良い。
【0108】
下枠フレーム本体1の水平板部8,9のうち、内側になる一方の水平板部9の上には、該水平板部9より幅が狭い角形形状の角形スペーサ25が、周枠方向に渡り固定される。角形スペーサ2は、後に行なわれる地下構造物用周壁を施工する際の周枠内横方向に向けられる鉄筋と、コンクリート打設用の内板枠とを下支えするために設けられ、例えば、金属製角形パイプ、木製角材、コンクリート打設などのいずれかで構成される。
【0109】
図12における(a)図は、下枠フレーム本体1内に鉄筋を配筋する1例を示した部分斜視図、図12における(b)図は同じくその正面断面図である。
【0110】
図12における(a)図、及び(b)図に示すように、下枠フレーム本体1の内部空間Sには、下枠フレーム本体1が有する周枠形状に沿った複数本の下枠フレーム補強筋(鉄筋)31,32と、下枠フレーム本体1の内部から上方に数10センチ突出する多数本のU形鉄筋(縦筋)33とが、適宜間隔を設けて、配筋される。下枠フレーム補強筋31,32は、下枠フレーム本体1を鉄筋コンクリートで内部補強して、下枠フレーム本体1が撓んだり、撓む方向に変形したり、折れたりしないようにするために設けられる。U形鉄筋33は、長尺形状を有し、その下端部が座板34上に所定間隔を設けて固定される。U形鉄筋33は、下枠フレーム本体1を鉄筋コンクリートで内部補強した後、下枠フレーム本体1の上方にコンクリートを打設して地下構造物用周壁を形成する際に、打設したコンクリート内にU形鉄筋33の上部を埋め込んで、下枠フレーム本体1と地下構造物用周壁とが一体となるようにするために設けられる。座板34は、U形鉄筋33の位置と向きを決め、下枠フレーム本体1内に打設したコンクリートK内に、U形鉄筋33の下部を強固に固定するために設けられる。
【0111】
図12における(b)図に示すように、下枠フレーム本体1の中段底板部6の幅は然程広くないため、下枠フレーム補強筋31,32と、下枠フレーム本体1の内部空間S内にU形鉄筋33を固定した座板34とを、安定した姿勢で配置させることは容易でない。このため、座板34と下枠フレーム本体1の中段底板部6とを、溶接により一体化させ、又は、ボルトとナット(図示せず)を用いて装着させ、或いは、座板34を載置する高さの位置Fまでコンクリートを先行打設して、座板34の姿勢を安定させるようにすることが好ましい。
【0112】
配筋作業の後、図12における(a)図に示すスペーサ金具24が、下枠フレーム本体1の上端に形成されている両側の水平板部8,9間に渡り、適宜間隔を置いて装着される。スペーサ金具24は、後の工程で下枠フレーム本体1内にコンクリートを打設した際に、コンクリートによる下枠フレーム本体1を押し広げる方向に加わる外圧によって、下枠フレーム本体1が押し広げられる方向に変形するのを防ぐためにある。このため、スペーサ金具24は、下枠フレーム本体1内に打設したコンクリートが養生硬化した後、下枠フレーム本体1から取り外される。
【0113】
低段地面G1に下枠フレーム本体1を設置する作業が終了すると、下枠フレーム本体1の内部空間S内にコンクリートが打設される。
【0114】
図13における(a)図は、下枠フレーム本体1内にコンクリートKを打設した後の状態を示した部分斜視図、図13における(b)図は同じくその正面断面図である。
【0115】
図13における(a)図、及び(b)図に示すように、コンクリートKは、下枠フレーム本体1の内部空間Sが埋まるまで打設される。このようにすると、下枠フレーム本体1は、鉄筋コンクリートで内部補強された下枠フレーム1Xになる。このようにして出来上がった下枠フレーム1Xの上部には、多数本のU形鉄筋33,33・・・が、所定間隔を設けて、30cm〜50cm程度上方に向けて突出している。
【0116】
下枠フレーム1Xの外側を囲む低段地面G1の部分にも、コンクリートK1が打設される。このコンクリートK1の打設時には、下枠フレーム1Xを外周方向から支持している支持部材20を撤去することなく、支持部材20の下部がコンクリートK1で埋まるようにする。コンクリートK1の打設する厚さは、例えば、15cm以上の厚さであり、この厚さがあると、コンクリートK1によって下枠フレーム1Xを外周側から支持する。このコンクリートK2の養生硬化後には、下枠フレーム本体1を外周方向から支持部材20で支持させなくても、下枠フレーム1Xの姿勢が安定する。このため、図13における(b)図に示すように、下枠フレーム1Xの片側を支持させていた支持板20bは、撤去される。
【0117】
図14は他の内部構造を有する下枠フレーム本体1Yを他の支持構造とともに示した正面部分断面図である。
【0118】
図14に示す下枠フレーム本体1Yの内部の配筋構造は、図13における(b)図に示す下枠フレーム本体1Aにおける背筋構造と異なる。図14に示す下枠フレーム本体1Yにおいては、U形鉄筋に代えて、L形状に折曲されたL形鉄筋36と、短尺棒形状の棒状鉄筋37とが用いられている。L形鉄筋36の一端側は、下枠フレーム本体1Yの上方に長く突出しており、他端側は、下枠フレーム本体1Yの内周側立設面7に形成されている開孔から内側外方向に長く突出している。
【0119】
棒状鉄筋37は、下枠フレーム本体1Yの上下高さ程度の長さがあり、その一端側にネジ部37aが形成されている。棒状鉄筋37の中央部は、下枠フレーム本体1内に打設されたコンクリートKで固定され、そのネジ部37aは、下枠フレーム本体1の中段板部6に形成されている開孔から下方に突出している。そして、ネジ部37aに螺装したナットN,Nによって、棒状鉄筋37の抜け止めが強固に維持されて、下枠フレーム本体1の中段板部6と支持部材21に支持されている支持板21aとを装着させている。水平板部と支持板21aとの間の装着は、ボルトBとナットNによる締結によっても行なわれている。下枠フレーム本体1Yの場合にも、複数本の下枠フレーム補強筋(横筋)31,32が、下枠フレーム本体1Yに沿った方向に配筋されている。
【0120】
このようにして下枠フレーム1X(1Y)を製作した後は、下枠フレーム1X(1Y)の上方に地下構造物用周壁が施工される。
【0121】
図15は下枠フレーム1Xの上方に外側パネル板40と地下構造物用周壁に対応した鉄筋構造体50とを設ける施工例を示した正面部分断面図、図16は地下構造物用周壁に対応した鉄筋構造体50にするための配筋構造の1例を示した部分斜視図である。
【0122】
図15に示すように、外側パネル40は、下枠フレーム1Xの上方、より詳しくは、下枠フレーム本体1の水平板部8,9のうち、外周側になる一方の水平板部8の上に載せられた状態で、水平板部8に沿った周枠方向に組み立てられて、下枠フレーム1Xの上方に設けられる。
【0123】
本実施例においては、外側パネル40には防水パネルが使用され、この防水パネルは、後の工程において地下構造物用周壁を形成する際に行なわれるコンクリート打設用の片側の型枠材としても兼用されるが、このコンクリートが養生硬化した後も撤去されることは無く、地下構造物が地下に構築された後、地下構造物内に地下水や雨水が地下構造物用周壁を浸透して室内に浸入するのを防ぐために使用される。
【0124】
防水パネルは、例えば、塩化ビニル系樹脂,ポリプロピレン,ABS,エポキシ樹脂などの何れかを材料とする1層構造のもの、又は、アルミニウム板、塗装鋼板などの1枚金属板、若しくは、これらの材料が複数積層された多層板などで形成された、板厚50mm程度の市販の防水パネルが使用される。
【0125】
尚、図示していないが、外側パネル40には断熱パネルを使用しても良い。断熱パネルは、後の工程において地下構造物用周壁を形成する際に行なわれるコンクリート打設用の片側の型枠材としても兼用されるが、撤去されることは無く、地下構造物用周壁の一部となって、地下に沈設される。断熱パネルは、地下構造物が地下に構築された後、寒冷地や冬場に、土壌の冷温によって地下構造物内の室温低下を抑えるために使用される。
【0126】
断熱パネルは、例えば、発泡系樹脂を材料とする1層又は異種材料による複数層のもの、プラスチック板又はプラスチックシート或いは金属薄板に発泡系プラスチックが保持されたパネル、プラスチック板又はプラスチックシート或いは金属薄板に不織布が保持されたパネルなどからなる、板厚50mm程度の市販の断熱パネルが使用される。
【0127】
外側パネル40を下枠フレーム1Xの上方に設置した後は、外側パネル40で囲まれた内側における下枠フレーム1X上方に、鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁を施工するための、鉄筋構造体50を配筋する。
【0128】
図15及び図16に示すように、地下構造物用周壁に対応した鉄筋構造体50は、L形状に折曲された定着用L形鉄筋51と、U形状に折曲された長尺U形鉄筋52と、周壁方向に沿って水平に配置される横筋53と、横筋53を下支えする短尺棒筋54とからなり、これらの鉄筋51〜53が、各多数本用いられて、組み立てられる。
【0129】
このうち、定着用L形鉄筋51は、交互に高さを変えて配筋され、定着用L形鉄筋51の水平方向に向けられた一端側52aは、下枠フレーム1Xの上方からに組み立てられて配筋されて、下枠フレーム1Xで囲まれた内側に長く延出され、後の鉄筋コンクリート床を施工する際の床用鉄筋として使用される。横筋53は、平行に向けた2本ずつ、上下方向に所定間隔を置いて、多段に設けられる。
【0130】
外側パネル40と鉄筋構造体50を下枠フレーム1Xの上方に組み立てた後は、外側パネル40と反対側になる鉄筋構造型の内側に沿った個所となる下枠フレーム1X上方に、鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁をコンクリート打設により施工する際に必要な内側の枠板を組み立てる。
【0131】
図17は地下構造物用周壁に対応させた鉄筋構造体50の内側に沿う位置に内側枠板41を仮設した状態を示した一部に断面部分を含む部分斜視図、図18は外側パネル40と内側パネルの間の空間S1内にコンクリートKを打設し終えた直後の状態を示した一部に断面部分を含む部分斜視図である。
【0132】
図17に示すように、内側枠板41は、下枠フレーム本体1の水平板部8,9のうち、内側位置になる水平板部9に沿った上方位置に組み立てられて設置される。42,43,44,45は、内側枠板41を側面側から支える角材である。
【0133】
内側枠材41が設置されると、図18に示すように、外側パネルと内側枠板41と下枠フレーム1Xとによって囲まれた空間S1内にコンクリートKが打設される。そして、打設したコンクリートKが養生硬化した後に、内側枠板41は撤去される。本実施例においては、外側パネルはそのまま残される。これにより、地下構造物用周壁60が出来上がる。
【0134】
図19は下枠フレーム1Xの上方に鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁60が設けられたオープン型のケーソン61を示した一部に断面部分を含む部分斜視図、図20は同じくこれを沈下前の状態で示した斜視図である。
【0135】
図19に示すように、オープン型のケーソン61は、下枠フレーム1Xの上に地下構造物用周壁60が一体的に形成されたものである。オープン型のケーソン61で囲まれた内側の下部には、先程説明した多数本の定着用L形鉄筋51の各一端側51a,51a・・・が水平方向に長く突出しているために、これが、この後に行なわれるオープン型のケーソン61を地下に沈設させる堀削作業の邪魔になる。このため、定着用L形鉄筋51の水平方向に向けられた各一端側51a,51a・・・は、手作業で一時的に上方に曲げられる。
【0136】
この状態のケーソン61は、図19及び図20に示すように、未だ低段地面G1上にあり、この後、ケーソン61で囲まれた内側の低段地面G1の土壌を掘削して、ケーソン61を地下に沈設させる、いわゆる潜函工法によって、ケーソン61を地下に沈設させる。
【0137】
尚、潜函工事を開始する前に、図19に示す下枠付き地下構造物用周壁61を内側方向から支持している支持部材21は撤去される。ケーソン61が傾いて沈下するのを防ぎ、沈下が円滑に行なわれるようにするためには、図20に示すように、ケーソン61の外側面近傍の低段地面G1(実際にはコンクリート面K1がこれに相当する。)に、ガイドレールGR、GRを四方に立設させておくことが望ましい。
【0138】
図21はオープン型のケーソン61を潜函工法により地下に沈設させる施工の1例を示した正面断面図、図22は浮き子式水準器Pの原理を示した簡略図、図23はオープン型のケーソン61の傾きを視覚で確認するレーザ墨出し器LSの使用例を示した斜視図である。
【0139】
図21に示すように、オープン型のケーソン61で囲まれた内側の土壌の堀削においては、例えば、ミニショベル(ミニユンボ)である建設土木機械Mが使用される。建設土木機械Mは、クレーン車によってオープン型のケーソン61で囲まれた内側の低段地面G1まで、吊り下げられて運搬される。下枠フレーム本体(図21では図示せず)1の設置前に建設土木機械Mを低段地面G1内に移動させて、その後、下枠フレーム本体を低段地面G1に設置すると、建設機械Mはケーソン61で囲まれた内側の低段地面G1に置かれるが、前述したように、下枠フレーム本体の設置からケーソン61の完成まで、特に数度に渡って打設したコンクリートの養生硬化の日数を考慮すると、オープン型のケーソン61を地下に沈設させる工事の直前に建設機械Mを、クレーン車を利用してオープン型のケーソン61の内側まで吊り下げて移動させたほうが経済的である。
【0140】
図21に示すケーソン61で囲まれた内側の土壌を掘削する作業においては、オープン型のケーソン6の下方近くの土壌を内側に掻き出すようにして行ない、この作業をオープン型のケーソン61に沿って順に行なう。このように土壌を手前側に掻き寄せると、ケーソン61は、自身による荷重によって下方に押し下げられ、これに伴うケーソン61下部にある刃口4が下方の地盤をせん断して、徐々にケーソン61は徐々に沈下を始める。
【0141】
ケーソン61を沈下させる場合には、刃口4位置の地盤の緩みと、地盤の土壌のかく乱によるケーソン61の傾きを出来るだけ小さくするために、ケーソン61を下げてから、内側の土壌を掘削する。粘性土質中のケーソン61の沈下に伴う刃口4の外周面とせん断された土壌壁面との間には、粘土が刃口4の外周面に付着して、高い摩擦抵抗が生じてケーソン61の沈下を遅らせる原因になるのが通常であるが、本発明実施例のケーソン61においては、刃口4の先端が若干外方向に向く方向に刃口4が傾斜しているため、刃口4の外周面とせん断された土壌壁面とに間には、若干の隙間が形成されるため、刃口4の外周面と土壌壁面との間に生じる摩擦抵抗は、大幅に抑えられる。このため、オープン型のケーソン61の円滑な沈下が行なわれる。
【0142】
オープン型のケーソン61で囲まれた内側に掻き出した土は、しばらくの間、オープン型のケーソン61で囲まれた内側の地面に堆積させるようにして、刃口4周囲の地盤の土壌の緩みを防ぐようにして、刃口4下方の土壌が過大にかく乱することによるオープン型のケーソン61の不等沈下や傾斜を出来るだけ、生じさせないようにする。
【0143】
オープン型のケーソン61で囲まれた土壌をどのようにして堀削するのかについては、ケーソン61の大きさ、重量、形状、地理的条件、隣接する建物や壁などがあるかどうかなどの周辺環境、建設土木機械Mの都合など、様々な条件によって異なる。
例えば、ケーソン61の外側から大型ショベル(大型ユンボ)や底開きホッパ付トラッククレーン、廃土用ベルトコンベアなどの建設土木機械、エアドリル、水を噴射する装置(何れも図示せず)を利用して、土壌を堀削しても良い。ケーソン61が比較的小型である場合には人力で堀削することも可能であり、ケーソン61が大型である場合には、オープン型のケーソン61の下方の土壌にトンネルを形成しながら下枠付き地下構造物用周壁61を下方に沈下させる、いわゆるトンネル工法を採用するのも1つの方法である。
ケーソン61を、これらいずれか又は複数の工事によって、徐々に地下に沈下させる。
【0144】
ケーソン61の沈下が均等に行なわれているかどうかの確認は、例えば、図21に示すように、ケーソン61の各内壁の適当な高さに位置に浮き子式水準器LBを取り付けて、この水準器LBを目視することにより行なう。
図21において示す水準器LBは、ケーソン61の内側面の全周に渡り高さを揃えて水平方向に取り付けたパイプP1の所定間隔を設けた複数の個所から上方に向けて分岐させた透明パイプP2,P3,P4、P5を、ケーソン61の内壁の各面を採り付けるとともに、各透明パイプP2,P3,P4,P5及びパイプP1内に通じる空間内に透明パイプP2,P3,P4,P5内の半分程度の高さまで水が入れられ、各透明パイプP2,P3,P4,P5内に浮き子P6,P7,P8,P9が入れられ、各透明パイプP2,P3,P4,P5の上端を開放された構造のものである。各透明パイプP2,P3,P4,P5に目盛りを印したものであれば、尚、良い。
【0145】
図22に示すように、浮き子式水準器Pを傾けると、透明パイプP2,P4,P5に対する浮き子P6,P8,P9の位置が変化するため、地盤を堀削する作業を、各浮き子P6,P8,P9と透明パイプP2,P4,P5の目盛りなどを確認することによって、図21に示すオープン型のケーソン61の傾斜を矯正しながら、地盤を堀削することが出来るようになる。
【0146】
この他にも、例えば、図23に示すように、レーザ光による水平墨出しラインを照射するレーザ墨出し器LSを利用して、オープン型のケーソン61の内周壁面に照射した墨出しラインLRとケーソン61の内周壁の目印位置とを、目視で比較確認しながら行なう方法もある。レーザ墨出し器には、鉛直縦方向の墨出しライン(タチライン)を前方に向けて照射するタイプのものもあり、このタイプのレーザ墨出し器を使用してもよい。レーザ墨出し器は、例えば、株式会社タジマツール、株式会社日立工機などによる製品が、従来から市販されている。
【0147】
図24はオープン型のケーソン61を地下途中の位置まで沈下させた状態を示した斜視図、図25はオープン型のケーソン61を地下まで沈下し終えた状態を示した斜視図、図26は同じくその一部を拡大して示した部分正面断面図である。
【0148】
図24に示すように、ケーソン61は、極力、均等に徐々に地下に沈下させるようにして、図25及び図26に示す深さまで沈下させると、ケーソン61を沈下させる作業は終了する。
【0149】
ケーソン61を地下に沈設した後は、ケーソン61で囲まれた空間内の外回りの工事、地下室にするための、床工事、階段工事、天井工事、電気工事、内装工事などが、引き続き行なわれる。
【0150】
図26に示すように、ケーソン61の沈下により形成された土壌壁面と、地下構造物用周壁60の外周面との間には、下枠フレーム1Xが地下構造物用周壁60よりも若干外側に突出しているために隙間S3が生じているが、この隙間S3には、バラスト(砕石)V1が投入されて埋められる。
【0151】
沈下し終えたケーソン61の下には、ケーソン61の更なる沈下を防止する丈夫なプレートQを敷設することが望ましい。そして、該プレートQと強化下枠フレーム本体1Aの途中高さの位置にある中段板部6との間にジャッキJを介在させて、ケーソン61の水平姿勢を安定させるようにすることが好ましい。ケーソン61で囲まれた内側の地面は、平坦に均され、その後、刃口4先端近傍の下方の空間内にペンナイトの粉末PNを充填させる。
【0152】
そして、その後、ケーソン61で囲まれた内側の土壌面に、刃口4に沿った下方以外の部分を残して、バラスト(砕石)V2が敷設される。そしてその後、コンクリート底盤FLが施工される。
【0153】
コンクリート床FLの施工が行なわれる前に、上方に折り曲げられていた定着用L形鉄筋51の各一端部51aは、を元の横方向に折り戻される。この後、ケーソン61で囲まれた内側の地面に、コンクリートKが打設される。この打設では、コンクリートKをケーソン61下方の空間内まで至らせるようにする。
【0154】
その後、打設したコンクリート面の上に底盤用鉄筋55がマトリックス方向に敷設され、更に、横方向に向けられた先程の定着用L形鉄筋51の一端側と底盤用鉄筋55とがコンクリートKで埋まるまでコンクリートKが打設され、最後に、コンクリートKの上面が平坦に均され、コンクリートKが養生硬化すると、コンクリート底盤FLが完成する。
【0155】
この後において行なわれる階段工事、天井工事、電気工事、内装工事などの諸工事をどのようにして行なうのかについては、施工案件によって異なるが、基本的には、従来の地下構造物の工事と同様の施工方法で行われる。
【実施例2】
【0156】
図28は本発明に係る第2実施形態に係る地下構造物用周壁の施工方法の1工程を示す斜視図である。
【0157】
図28に示す施工において地下に構築される地下構造物は、外周面が塗料により塗装された鋼板製の大型の水槽であり、70はこの水槽の周壁であるオープン型のケーソンを示している。以下、ケーソン70を水槽用ケーソン70と称することにする。
【0158】
水槽用ケーソン70は、地上で組み立てられた後、潜函工法により、地下に沈設される。図28は、水槽用ケーソン70を地下に沈下させる前の状態を示しており、この施工においても、最初に、前述した方法と同様の方法で、地面Gに浅い低段地面G1を造成する。そして、その後、低段地面G1の上で水槽用ケーソン70を組み立てる。
【0159】
図29は水槽用ケーソン70を構成する上段部分71と下段部分72の一部を示した正面断面図である。
【0160】
図28及び図29に示すように、水槽用ケーソン70は、上段部分71と下段部分72とが上下に接合されて一定的に組み付けられたもので構成されている。 水槽用ケーソン70の上段部分71と下段部分72は、いずれも楕円形状の外周壁71a,72aを有しており、いずれの内壁にも水平方向に向けられた補強リブ71b〜71f,72b〜72eと、縦方向に向けられた補強リブ71g、72gが形成されている。
【0161】
下段部分72の最下段に位置する水平方向に向けられた補強リブ72eは、上方の補強リブ72b〜72dよりも幅狭く形成されて、水槽用ケーソン70を、前述した潜函工法によって地下に沈設する際に、水槽用ケーソン70の下部に向けて地盤土壌によって加わる抵抗が小さくなるようにしてある。このため、この水槽用オープン型のケーソン70においても、潜函時に、ケーソンの下端部による地盤のせん断が行なわれる。
【0162】
下段部分72の最下段に位置する補強リブ72fとその一段上方に位置する補強リブ72dとの間には、水槽用周壁70を潜函工法によって地下に沈設する際に、下方から土壌による抵抗が加わることによって水平方向に向けられた補強リブ72cが上方に変形しないようにする、縦方向の補強リブ72fが、所定間隔を設けて形成されている。
【0163】
図30は水槽用ケーソン70を潜函工法によって地下に沈設する前の状態を示した正面断面図である。
【0164】
図30に示すように、水槽用ケーソン70は、上段部分71と下段部分72とが組み付けられて一体化された状態で、低段地面G1上に設置される。水槽用ケーソン70が大型である場合には、低段地面G1の上に下段部分72を水平姿勢にして設置し、下段部分72を地下途中まで沈下させた後、下段部分72と上段部分71との端面どうしを、溶接又は、ボルト・ナットを利用して固定一体化させて、残りの沈下を引き続き行なうようにしても良い。
【0165】
上下2段に組み付けられて一体化された水槽用オープン型のケーソン70は、下段部分72の外周が、上段部分71の外周よりも大きく形成されて、水槽用ケーソン70を地下に沈下させる際に、上段部分71の外周壁71aと土壌壁面とが大きな摩擦力を持って擦れ合わないようにしてある。このようにすると、水槽用ケーソン70の地下に向けた沈下が円滑かつ容易に行なわれる。
【0166】
水槽用ケーソン70を地下に沈下させる施工である、いわゆる潜函工法は、前述の実施例の場合と同様、水槽用周壁70で囲まれた内側の土壌を掘削することにより行なわれる。堀削は、前述の実施例において記載された手法により行なわれる。
【0167】
水槽用ケーソン70が大型である場合には、下段部分22の大部分を地下に沈下させた後、この下段部分72の上に上段部分71を組み付けるようにしても良い。
【0168】
図31は水槽用周壁70を地下に沈設させた後の状態を示した部分正面断面図、図32は同じく斜め上方から見た斜視図である。
【0169】
図31及び図32に示す位置まで水槽用ケーソン70を地下に沈下させると、図21に示すように、上段部分71の外周壁71aと土壌側壁との間には、下段部分72の外周壁71aによる土壌の沈下によって出来た隙間V2が形成され、この隙間V2には、バラスト(砕石)又はコンクリートで埋められる。外周壁71aを気温の低下による水槽内の水の凍結、気温の上昇による水槽内の温度上昇などを抑制する断熱シート(図示せず)で外周壁71aを覆うようにしても良い。
【0170】
地下まで沈下させた水槽用ケーソン70の更なる沈下を無くすため、水槽用オープン型のケーソン70の下方に、前述した実施例の場合と同様に、コンクリートKが打設されて補強される。そして、その後、水槽用ケーソン70の上に蓋(図示せず)が被せられると、地下水槽が完成する。
【0171】
そして、本発明に係る地下構造物においては、前述の本発明に係る地下構造物の施工方法により得られた地下構造物である。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る地下構造物用周壁を地下に沈下させる前に行なわれる下枠フレーム本体の設置例を示す斜視図である。
【図2】図2は、下枠フレームを設置する低段地面の1例を示した斜視図である。
【図3】図3は、下枠フレーム本体の全体形状の1例を示した平面図である。
【図4】図4は、下枠フレーム本体の一部分の示した正面断面図である。
【図5】図5は、下枠フレーム本体における外周側板部に傾斜角があることを示す部分正面断面図である。
【図6】図6は、下枠フレーム本体における外周側板部の傾斜構造についての他の実施形態を示した正面断面図である。
【図7】図7は、下枠フレーム本体における外周側板部の傾斜構造についての他の実施形態を示した正面断面図である。
【図8】図8における(a)図は、下枠フレーム本体の一部を構成するコーナー部分の分割レームの1例を示した斜視図である。 図8における(b)図は、隣り合う分割フレームの接合例を示した部分側面断面図である。
【図9】図9における(a)図は、他の実施形態による分割フレームを示した正面断面図である。 図9における(b)図は、更に他の実施形態による分割フレームを示した正面断面図である。
【図10】図10は、更に他の実施形態による分割フレームを示した正面断面図である。
【図11】図11における(a)図は、躯体構造に組み立てて一体化されて下枠フレーム本体を低段地面に設置した状態を示した部分斜視図である。 図11における(b)図は、同じくこれを示した正面断面図である。
【図12】図12における(a)図は、下枠フレーム本体内に鉄筋を配筋する1例を示した部分斜視図である。 図12における(b)図は同じくその正面断面図である。
【図13】図13における(a)図は、下枠フレーム本体内にコンクリートKを打設した後の状態を示した部分斜視図である。 図13における(b)図は同じくその正面断面図である。
【図14】図14は、他の内部構造を有する下枠フレームを他の支持構造とともに示した正面部分断面図である。
【図15】図15は、下枠フレームの上方に外側パネル板と地下構造物用周壁に対応した鉄筋構造体とを設ける施工例を示した正面部分断面図である。
【図16】図16は、地下構造物用周壁に対応した鉄筋構造体にするための配筋構造の1例を示した部分斜視図である。
【図17】図17は、地下構造物用周壁に対応させた鉄筋構造体の内側に沿う位置に内側枠板を仮設した状態を示した一部に断面部分を含む部分斜視図である。
【図18】図18は、外側パネルと内側パネルの間の空間内にコンクリートを打設し終えた直後の状態を示した一部に断面部分を含む部分斜視図である。
【図19】図19は、下枠フレームの上方に鉄筋コンクリート製の地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを示した一部に断面部分を含む部分斜視図である。
【図20】図20は、同じくこれを沈下前の状態で示した斜視図である。
【図21】図21は、オープン型のケーソンを潜函工法により地下に沈設させる施工の1例を示した正面断面図である。
【図22】図22は、浮き子式水準器の原理を示した簡略図である。
【図23】図23は、オープン型のケーソンの傾きを視覚で確認するレーザ墨出し器の使用例を示した斜視図である。
【図24】図24は、オープン型のケーソンを地下途中の位置まで沈下させた状態を示した斜視図である。
【図25】図25は、オープン型のケーソンを地下まで沈下し終えた状態を示した斜視図である。
【図26】図26は同じくその一部を拡大して示した部分正面断面図である。
【図27】図27は、本発明に係る第2実施形態に係る地下構造物用周壁の施工方法の1工程を示す斜視図である。
【図28】図28は、水槽用オープン型のケーソンを構成する上段部分と下段部分の一部を示した正面断面図である。
【図29】図29は、水槽用オープン型のケーソンを潜函工法によって地下に沈設する前の状態を示した正面断面図である。
【図30】図30は、水槽用ケーソンを地下に沈設させた後の状態を示した部分正面断面図である。
【図31】図31は、同じく斜め上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0173】
G 地面
G1 低段地面
D 深さ
F 高さ位置
FL コンクリート底盤
GR ガイドレール
H1 高さ
K コンクリート
K1 コンクリート面
K2 コンクリート面
LS レーザ墨出し器
M 建設土木機械
P 浮き子式水準器
Q プレート
R 傾斜角
R1 傾斜角
S 内部空間
S1 空間
S3 隙間
T バラスト
U プレート
V1 バラスト(砕石)
V2 バラスト(砕石)
W1 横幅
Y 矢板

1 下枠フレーム本体
1A 分割フレーム
1B 分割フレーム
1X 下枠フレーム
1Y 下枠フレーム
2 外周側板部
3 傾斜板部
4 刃口
6 中段底板部
7 板部
8 水平板部
9 水平板部
10 開口部
11 接合用板部
20 支持部材
21 支持部材
31 下枠フレーム補強筋(鉄筋)
32 下枠フレーム補強筋(鉄筋)
33 U形鉄筋
34 座板
36 L形鉄筋
37 棒状鉄筋

40 外側パネル
41 内側枠板
50 鉄筋構造体
51 定着用L形鉄筋
51a 一端側
52 長尺U形鉄筋
53 横筋
54 短尺棒筋

60 地下構造物用周壁
61 オープン型のケーソン
70 水槽用ケーソン
71 上段部分
72 下段部分
72b〜7e横リブ
72f 補強リブ

101 下枠フレーム本体
102 下枠フレーム本体
103 分割フレーム
104 分割フレーム
105 分割フレーム
106 分割フレーム
107 分割フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記下枠フレームの製作は、鋼板製の下枠フレーム本体の製作後、該下枠レーム本体の内部空間に複数本の鉄筋を配筋し、かつ該内部空間の少なくとも大部分が埋まる程度にまでコンクリートを打設し、該コンクリートを養生硬化させることにより行なわれ、該下枠フレームの製作後、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁を設ける施工が行なわれることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項2】
下枠フレームには、該下枠フレームの内部から上方に向けて、所定間隔を設けて前記鉄筋の一部又は長尺ボルトの一部を長く突出させた構造を有する下枠フレームが用いられる請求項1に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項3】
下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、該下枠フレームの枠方向に沿った外周面を形成する外周側板部と、該外周側板部の下縁に沿った個所から該外周側板部に対して遠ざかる斜め上方の中段位置に向けて設けられた傾斜板部と、該傾斜板部の内側縁に沿った個所から更に内側横方向に向けて設けられた中段底板部と、該中段底板部の内側周縁に沿った個所から上方に向けて設けられた内周側板部とにより概略形状が形成されて、前記外周側板部と前記傾斜板部とによる刃口が形成され、かつ上端を大きく開口させた形状を有する下枠フレーム本体が用いられる請求項1又は2に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項4】
下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の外周面を形成する外周側板部が、該外周側板部の上端縁又は途中高さの個所から下縁に向けて、1〜5°の傾斜角を持って外側に傾斜した形状を有する下枠フレーム本体が用いられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項5】
下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、下枠フレーム本体の一部面を構成する外周側板部と外周側板部の各上端縁に又は中段個所に、互いに対向する横方向に向けられた狭幅の水平板部が夫々一体形成された構造を有する下枠フレームが用いられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項6】
下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、周枠方向を区切る長さの複数個の分割フレームが周枠方向に接合され、かつ各分割フレームの両側端部に、下枠フレーム本体の内部空間を遮る方向に向けた接合用板部が形成された形状を有する下枠フレームが用いられる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項7】
下枠フレームの外形を形成する鋼板製の下枠フレーム本体には、該下枠フレーム本体の傾斜板部又は中段板部の内側途中面から該下枠フレーム本体の内部空間に向けて上方に立設する補強板部が形成された形状を有する下枠フレーム本体が用いられる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項8】
地下構造物用周壁の外周面に防水パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なわれる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項9】
地下構造物用周壁の外周面に設ける防水パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用する請求項8に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項10】
地下構造物用周壁の外周面に断熱パネルを設けた後、該地下構造物用周壁を地下に沈設させる施工が行なわれる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項11】
地下構造物用周壁の外周面に設ける断熱パネルを、前記鉄筋コンクリート製周壁の製造時にコンクリート打設用の外周側型枠として兼用する請求項10に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項12】
下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、上段部分と下段部分とにより構成され、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なうことを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項13】
下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、壁面が鋼板で形成され、該壁面の内壁面に沿って補強リブが形成され、最下段に位置する水平方向に向けられた補強リブが、他の補強リブよりも幅狭く形成された構造を有するケーソンが用いられることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項14】
下方に向けた刃口を有する下枠フレームの製作から始まって、該下枠フレーム上に地下構造物用周壁が設けられたオープン型のケーソンを製作し、該ケーソンで囲まれた内側の土壌を堀削して該ケーソンを地下に沈設させた後、前記地下構造物用周壁を有する地下構造物を地下に構築するための残りの施工が行なわれる地下構造物の施工方法において、
前記ケーソンには、鋼板製の上段部分と鋼板製の下段部分とにより構成され、先に下段部分を潜函工法により地下途中まで沈下させ、その後、下段部分の上に上段部分を構築して、残りの沈下を行なうことを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の地下構造物の施工方法により得られた地下構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−84918(P2009−84918A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257785(P2007−257785)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(596132112)
【Fターム(参考)】