地下構造物の施工方法
【課題】周辺への影響を低減しつつ、工期短縮を図ることができ、さらに、照明設備や換気設備を削減或いは省略することができる地下構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、既存地下構造物の周りに山留め100を築造した後、残存する既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口30,40,50,60が形成された外周リング3,4,5,6を築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、既存地下構造物を上層階から順次解体しながら新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、既存地下構造物の解体終了後、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60の内側に新規地下構造物の中央部分を築造する。
【解決手段】既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、既存地下構造物の周りに山留め100を築造した後、残存する既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口30,40,50,60が形成された外周リング3,4,5,6を築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、既存地下構造物を上層階から順次解体しながら新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、既存地下構造物の解体終了後、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60の内側に新規地下構造物の中央部分を築造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存地下構造物の解体工事を伴う地下構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床面積が広くて大深度の大規模地下構造を持った既存建物を解体し、その場所に、同じく大深度で床面積が広い大規模地下構造を持った新規建物を新築する建設工事がある。このような建設工事では、周辺のインフラや建物等への影響を防止するために、既存地下構造物の周りに山留めを構築しつつ、その山留めの土圧による変形(倒れ)を抑制する必要がある。
上記した建設工事の施工方法としては、従来、例えば下記の2つの方法が考えられる。
【0003】
(1)全面切梁工法
この工法は、まず、既存建物の上部構造を解体した後、既存建物の地下構造の周りに山留めを築造し、その後、既存地下構造物を上層階から順次解体しながら、山留めの内側の全面に切梁を水平方向に架設していく。この切梁によって、既存地下構造物の解体による山留めの変形を抑制することができる。そして、既存地下構造物の解体終了後、根切り及び床付けをそれぞれ行って耐圧盤を形成する。次に、耐圧盤から地下部分の鉄骨建て方を行ってから1階スラブを先行打設し、その後、地下部分を最下階から順次施工(順打ち工法)し、また、それに並行して地上部分の鉄骨建て方を行って地上工事を進める。これにより、地下工事と地上工事とを同時進行させることができるので、工期の短縮を図ることができる。
【0004】
(2)全面逆打工法
この工法は、既存建物の上部構造を解体した後、既存建物の地下構造の周りに山留めを築造し、その後、既存地下構造物を上層階から順次解体するごとに、その解体によって形成された空間に新規地下構造物のスラブを上層階から順次築造していく(例えば下記特許文献1参照。)。すなわち、まず、既存地下構造物の地下1階部分(1階梁スラブ及び地下1階柱壁)を解体し、その後、新規構造物の1階スラブを全面に亘って築造する。続いて、既存地下構造物の地下2階部分(地下1階梁スラブ及び地下2階柱壁)を解体し、その後、新規構造物の地下1階スラブを全面に亘って築造する。このように既存地下構造物の解体と新規構造物の築造を繰り返すことで、既存地下構造物が上層階から順次解体されながら新規構造物が上層階から順次築造される。この工法によれば、順次築造される新規構造物のスラブが山留めを支持する支保工となり、しかも、上記した切梁よりも信頼性が高いため、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留めの変形を確実に抑制することができ、周辺インフラ等への影響を低減することができる。また、新規構造物の1階スラブを築造した後、地下工事と並行して地上部分の鉄骨建て方を行って地上工事を進める。これにより、地下工事と地上工事とを同時進行させることができるので、工期の短縮を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−61213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大規模工事において上記した全面切梁工法を行うと、山留めの変形を十分に抑制することが難しい。また、全面切梁工法では、相当数の切梁が必要であるため、切梁の設置や解体に相当な時間を要することになり、地下工事の工期が長くなるという問題がある。また、既存地下構造物を解体時に山留めの内側に切梁が架設されており、大型重機を使用することが難しいため、小型重機によって解体作業を行うことになり、解体作業の工期が長くなるという問題がある。特に、既存地下構造物が比較的新しい場合、躯体の高強度であって小型重機での解体が困難な場合がある。
【0007】
また、上記した全面逆打工法では、先行して築造される新規構造物のスラブが全面に亘って形成されるので、そのスラブの下で行われる解体作業の作業空間は、大型重機を使用できるほどの十分な高さはない。そのため、小型重機で既存地下構造物の解体を行うことになるので、解体作業の工期が長くなるという問題がある。また、新規構造物の1階スラブが築造されることで地下部分が閉塞され、地下工事の作業場は日中であっても暗くなるため、多数の照明設備が必要である。また、上記したように地下部分が閉塞された後も、重機よる解体作業を行うため、この重機の排気ガスが地下工事の作業場に溜まりやすい。このため、地下工事の作業場の換気を行う換気設備を多数設置する必要があり、また、排気ガスの発生量を抑えるために重機の運転台数を制限すると工期が長くなる。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、周辺への影響を低減しつつ、工期短縮を図ることができ、さらに、照明設備や換気設備を削減或いは省略することができる地下構造物の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る地下構造物の施工方法は、既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、前記既存地下構造物の周りに山留めを築造した後、残存する前記既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、該解体工程によって形成された空間内に、前記新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口が形成された外周リングを築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、前記既存地下構造物を上層階から順次解体しながら前記新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、前記既存地下構造物の解体終了後、前記外周リングの開口の内側に前記新規地下構造物の中央部分を築造することを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、新規地下構造物の外周部である外周リングが先行して築造されるので、この外周リングによって山留めの変形が抑制され、切梁が省略或いは削減される。また、新規に築造される構造物の中央部分は、先行して築造された外周リングの開口によって吹き抜け状に形成されるので、その外周リングの開口から、既存地下構造物の解体作業に使用する重機や機材、並びに新規地下構造物の資材等が搬入される。また、外周リングの開口によって地下工事の作業場の中央部は、大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保される。また、地下工事の作業場には外周リングの開口から太陽光が照射され、また、その外周リングの開口から地下工事の作業場の換気が行われる。
【0011】
また、本発明に係る地下構造物の施工方法は、前記リング構築工程の前に、前記既存地下構造物を貫通すると共に該既存地下構造物の下方の地盤に支持される構真柱を建て込み、該構真柱によって前記外周リングを支持することが好ましい。
これにより、構真柱によって外周リングが支持されるので、外周リングを仮支持する支保工が省略或いは削減される。
【0012】
また、本発明に係る地下構造物の施工方法は、前記外周リングの開口は、平面視において、矩形の角部にハンチが形成された多角形状、又は、円形状に形成されていることが好ましい。
これにより、山留めから外周リングに外力が作用したときに、その応力が一箇所に集中しにくく分散されやすくなるので、外周リングの開口を大きく形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地下構造物の施工方法によれば、山留めの変形を抑制する外周リングは切梁に比べて信頼性が高いので、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留めの変形を確実に抑制することができる。また、切梁を省略或いは削減することができるので、切梁の設置解体の工程が短縮或いは省略され、工期短縮を図ることができる。
【0014】
また、先行して築造される外周リングは中央に開口が形成され、地下工事の作業場の中央部には大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保されるので、解体作業に大型重機を投入することができる。これにより、解体作業の工期短縮を図ることができる。また、既存地下構造物が比較的に新しく高強度である場合でも、大型重機を使用することで容易に解体することができる。
また、外周リングの開口から地下工事の作業場に太陽光が照射されるので、地下工事の作業場が非常に明るい。したがって、照明設備を削減或いは省略することができる。
また、外周リングの開口によって地下工事の作業場の換気が行われるので、地下工事の作業場に重機の排気ガスが溜まりにくい。したがって、換気設備を削減或いは省略することができる。また、地下工事の作業場の換気を十分に行うことができるので、排気量の大きい大型の重機を多数同時に運転することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための施工中の新規地下構造物の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(一次解体工程・山留め工程・構真柱建込工程)を表した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(一次リング築造工程)を表した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(二次解体工程)を表した断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(二次リング築造工程)を表した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(三次解体工程)を表した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(三次リング築造工程)を表した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(四次解体工程)を表した断面図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(四次リング築造工程)を表した断面図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(最終根切工程)を表した断面図である。
【図11】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(基礎床築造工程)を表した断面図である。
【図12】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(地下中央部築造工程)を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る地下構造物の施工方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0017】
以下に説明する解体・建設工事は、床面積が広くて大深度の大規模地下構造を持った既存建物を解体して、その場所に同じく大規模地下構造を持った新規建物を新築する工事であり、本実施の形態では、主に地下構造物の施工方法について説明する。
【0018】
本実施の形態における地下構造物の施工方法は、既存地下構造物10を上層階から順次解体しながら新規地下構造物1の外周部を上層階から順次築造(逆打工法)して図1に示すように平面視中央部分に大開口30,40,50,60が形成された新規地下構造物1´を築造した後、その開口30,40,50,60に新規地下構造物1の中央部を下層階から順次築造(順打工法)して新規地下構造物1を構築する方法である。
【0019】
詳しく説明すると、まず、既存建物の図示せぬ上部構造を解体した後、図2に示すように、既存地下構造物10の最上階部分を解体し、且つ、既存地下構造物10の周りに山留め100を築造し、さらに、新規地下構造物1のスラブを支持するための構真柱2を建て込む。
【0020】
具体的に説明すると、まず、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下1階部分11を解体する解体工程(一次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の1階梁スラブ11a及び地下1階柱壁11bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。そして、解体完了後、その解体によって形成された空間に、後述する山留め工程や構真柱建込工程の際に、図示せぬ山留め機や構真柱2の建て込みを行うためのケーシング回転掘削機等を据えるための図示せぬ構台を架設する。
【0021】
次に、山留め100を築造する山留め工程を行う。この山留め工程は、公知の山留め工事で行うことが可能であり、山留め100としては、例えばSMW(Soil Mixing Wall)壁などがある。
【0022】
次に、上記した構真柱2を建て込む構真柱建込工程を行う。この構真柱2は、鋼管や形鋼などの鋼材からなる柱部材であり、既存地下構造物10の下方の地盤G内に定着されて支持され、後述する新規地下構造物1の耐圧版の上面から立設されている。そして、構真柱2は、既存地下構造物10を貫通し、新規地下構造物1の1階床の位置の上方まで突出している。このような構真柱2を建て込む方法としては、まず、図示せぬケーシング回転掘削機によって図示せぬケーシングを回転させて既存地下構造物10に貫通させ、既存地下構造物10の下方の地盤Gの所定深さまで削孔する。続いて、その地盤Gに形成された孔の中に構真柱2の下端部を挿入すると共にコンクリートを打設して仮設杭20を形成する。これにより、構真柱2の下端部が仮設杭20で固定され、既存地下構造物10を貫通する構真柱2が立設される。なお、この構真柱2を建て込む位置に、既存地下構造物10の柱がある場合には、まず、その既存柱の周りに図示せぬ補強PC壁を築造し、その後、既存柱やそれに接合された既存梁などをワイヤソーなどで切断して揚重することで解体し、その後、図示せぬケーシング回転掘削機による削孔を行う。
【0023】
次に、図3に示すように、上記した図示せぬ構台を解体・撤去した後、上述した地下1階部分11を解体する解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の1階床部分の外周部を構成する環状の外周リング3を築造するリング築造工程(一次リング築造工程)を行う。この外周リング3は、新規地下構造物1の1階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング3の中央部分には開口30が形成されている。なお、この外周リング3はグランドラインと略同じ高さ位置に配設されるので、山留め100から外周リング3にかかる外力(土圧)は小さい。そのため、外周リング3の開口30は、図1に示すように、種々の施工性を考慮して平面視矩形状に形成されている。
【0024】
上記した外周リング3の構造としては、例えば、鉄骨梁とデッキスラブからなる構造や、鉄筋コンクリート造のスラブと梁が一体に形成されたプレキャストコンクリートからなる構造、鉄骨梁或いは鉄骨鉄筋コンクリート梁と鉄筋コンクリート造のスラブとを在来工法で一体に形成した構造などがある。
また、図3に示すように、上記した外周リング3の梁部分を上記した構真柱2に接合することで、構真柱2によって外周リング3を支持させる。このとき、山留め100と外周リング3との間に斜めに架けられた図示せぬ斜梁や切梁を部分的或いは一時的に設置してもよい。これにより、外周リング3の変形を抑制することができる。
【0025】
次に、図4に示すように、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下2階部分12を解体する解体工程(二次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下1階梁スラブ12a及び地下2階柱壁12bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3の開口30から既存地下構造物10の地下1階梁スラブ12a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3の開口30から揚重して搬出する。
【0026】
次に、図5に示すように、上述した地下2階部分12の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下1階床部分の外周部を構成する環状の外周リング4を築造するリング築造工程(二次リング築造工程)を行う。この外周リング4は、新規地下構造物1の地下1階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング4の中央部分には開口40が形成されている。この開口40は、上記した1階部分の外周リング3の開口30と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング4はグランドラインよりも下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング4にある程度の外力(土圧)がかかる。そのため、外周リング4の開口40は、図1に示すように、概ね平面視矩形状に形成されていると共にその矩形状の角部にハンチ41が形成されており、平面視多角形状(八角形状)に形成されている。
【0027】
なお、上記した地下1階部分の外周リング4は、上記した1階部分の外周リング3と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下1階部分の外周リング4は、図5に示すように、上記した1階部分の外周リング3と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下1階部分の外周リング4を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3の開口30から既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a上に降ろす。
また、地下1階部分の外周リング4を築造した後、新規地下構造物1の地下1階部分の柱壁32を築造する。このとき、構真柱2の地下1階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート21を打設して構真柱2の地下1階部分を仕上げる。
【0028】
次に、図6に示すように、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下3階部分13を解体する解体工程(三次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a及び地下3階柱壁13bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4の開口30,40から既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3,4の開口30,40から揚重して搬出する。
【0029】
次に、図7に示すように、上述した地下3階部分13の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下2階床部分の外周部を構成する環状の外周リング5を築造するリング築造工程(三次リング築造工程)を行う。この外周リング5は、新規地下構造物1の地下2階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング5の中央部分には開口50が形成されている。この開口50は、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4の開口30,40と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング5は地下1階部分の外周リング4よりも更に下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング5にかかる外力(土圧)は地下1階部分の外周リング4よりも大きい。そのため、外周リング5の開口50は、図1に示すように、概ね平面視矩形状に形成されていると共にその矩形状の角部に、地下1階部分の外周リング4のハンチ41よりも大きいハンチ51が形成されており、平面視多角形状(八角形状)に形成されている。
【0030】
なお、上記した地下2階部分の外周リング5は、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下2階部分の外周リング5は、図7に示すように、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下2階部分の外周リング5を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4の開口30,40から既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a上に降ろす。
また、地下2階部分の外周リング5を築造した後、新規地下構造物1の地下2階部分の柱壁42を築造する。このとき、構真柱2の地下2階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート22を打設して構真柱2の地下2階部分を仕上げる。
【0031】
次に、図8に示すように、残存する既存地下構造物10の最下階の地下4階部分14を解体する解体工程(四次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a及び地下4階柱壁14bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から揚重して搬出する。
【0032】
次に、図9に示すように、上述した地下4階部分14の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下3階床部分の外周部を構成する環状の外周リング6を築造するリング築造工程(四次リング築造工程)を行う。この外周リング6は、新規地下構造物1の地下3階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング6の中央部分には開口60が形成されている。この開口60は、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5の開口30,40,50と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング6は地下2階部分の外周リング5よりも更に下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング6にかかる外力(土圧)は地下2階部分の外周リング5よりも大きい。そのため、外周リング6の開口60は、図1に示すように、平面視略円形状に形成されている。
【0033】
なお、上記した地下3階部分の外周リング6は、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下3階部分の外周リング6は、図9に示すように、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下3階部分の外周リング6を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15上に降ろす。
また、地下3階部分の外周リング6を築造した後、新規地下構造物1の地下3階部分の柱壁52を築造する。このとき、構真柱2の地下3階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート23を打設して構真柱2の地下3階部分を仕上げる。
【0034】
次に、図10に示すように、既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15を解体すると共に最終根切りを行って床付けを行う最終根切工程を行う。このとき、解体作業や根切り作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラ、及び、根切りで発生した土砂を上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から揚重して搬出する。
【0035】
次に、図11に示すように、上述した最終根切工程で形成された床付け面上に新規地下構造物1の地下4階の基礎床7を全面に亘って築造する基礎床築造工程を行う。この基礎床7を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から床付け面上に降ろす。
また、基礎床7を築造した後、新規地下構造物1の地下4階部分の柱壁62を築造する。このとき、構真柱2の地下4階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート24を打設して構真柱2の地下4階部分を仕上げる。
以上により、図1に示すように、平面視中央部分に大開口30,40,50,60が形成された新規地下構造物1´が築造される。
【0036】
次に、図12に示すように、各階の外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60の内側に新規地下構造物1の中央部分を下層階から順次築造する地下中央部築造工程を行う。具体的には、まず、新規地下構造物1の中央部分の図示せぬ柱梁鉄骨の建て方を行う。このとき、新規地下構造物1の図示せぬ地上部分の第一節の鉄骨建て方を同時に行うことが可能である。続いて、地下3階の外周リング6の開口60の内側に新規地下構造物1の地下3階の中央部の梁スラブ63を築造すると共に、地下4階の中央部の柱壁64を築造する。その後、地下2階の外周リング5の開口50の内側に新規地下構造物1の地下2階の中央部の梁スラブ53を築造すると共に、地下3階の中央部の柱壁54を築造する。その後、地下1階の外周リング4の開口40の内側に新規地下構造物1の地下1階の中央部の梁スラブ43を築造すると共に、地下2階の中央部の柱壁44を築造する。その後、1階の外周リング3の開口30の内側に新規地下構造物1の1階の中央部の梁スラブ33を築造すると共に、地下1階の中央部の柱壁34を築造する。
【0037】
以上により、新規地下構造物1が完成する。なお、上述した地下中央部築造工程と並行して、新規地下構造物1の図示せぬ地上部分の鉄骨建て方等の躯体工事を行うことが可能である。
【0038】
上記した地下構造物の施工方法によれば、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、その解体工程によって形成された空間内に外周リング3,4,5,6を築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、既存地下構造物10が上層階から順次解体されるごとに、新規地下構造物1の外周部である外周リング3,4,5,6が先行して築造されるので、これらの外周リング3〜6によって山留め100の変形が抑制される。外周リング3,4,5,6は切梁に比べて信頼性が高いので、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留め100の変形を確実に抑制することができる。また、切梁を省略或いは削減することができるので、切梁の設置解体の工程が短縮或いは省略され、工期短縮を図ることができる。
【0039】
また、新規に築造される構造物の中央部分は、先行して築造された外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60によって吹き抜け状に形成されており、地下工事の作業場の中央部は、大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保される。これにより、解体作業に大型重機を投入することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。また、既存地下構造物10が比較的に新しく高強度である場合でも、大型重機を使用することで容易に解体することができる。
【0040】
また、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から地下工事の作業場に太陽光が照射されるので、地下工事の作業場が非常に明るい。したがって、照明設備を削減或いは省略することができる。
【0041】
また、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60によって地下工事の作業場の換気が行われるので、地下工事の作業場に重機の排気ガスが溜まりにくい。したがって、換気設備を削減或いは省略することができる。また、地下工事の作業場の換気を十分に行うことができるので、排気量の大きい大型の重機を多数同時に運転することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。
【0042】
また、構真柱2によって外周リング3,4,5,6が支持されるので、外周リング3,4,5,6を仮支持する支保工が省略或いは削減される。これにより、仮設費を低減させることができると共に工期短縮を図ることができる。
【0043】
また、複数段の外周リング3,4,5,6のうち、地下1階部分の外周リング4及び地下2階部分の外周リング5の開口40,50は、平面視において矩形の角部にハンチ41,51が形成された多角形状に形成されており、また、地下3階部分の外周リング6の開口60は、平面視円形状に形成されているので、山留め100からそれらの外周リング4,5,6に外力が作用したときに、その応力が一箇所に集中しにくく分散されやすくなる。これにより、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60を大きく形成することができ、地下作業場に多数の大型重機を配置することができるので、解体作業の工期を短縮することができる。
なお、土圧は深度が深いほど大きくなるので、複数段の外周リング3,4,5,6のうち下層階のものほど山留め100からかかる外力が大きくなる。したがって、上記した実施の形態では、外周リング4,5のハンチ41,51が下層階にいくに従い大きくなり、ハンチ41,51を有する外周リング4,5の下方に、平面視円形の開口60が形成された外周リング6が配設されている。これにより、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60を大きく形成しつつ山留め100の変形を効果的に抑制することができる。
【0044】
以上、本発明に係る地下構造物の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、地下4階の既存地下構造物10を解体して同じく地下4階の新規地下構造物1を新築する場合の施工方法について説明しているが、本発明は、既存地下構造物や新規地下構造物の階数は適宜変更可能である。
【0045】
また、上記した実施の形態では、地下工事と並行して地上工事を進める施工方法であるが、本発明は、地下工事が完了した後、地上工事を開始する施工方法であってもよく、また、地上工事を行わない場合であってもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、新規地下構造物1の最上階部分(1階部分)の外周リング3の開口30が平面視矩形に形成され、新規地下構造物1の中間層階部分(地下1階部分及び地下2階部分)の外周リング4,5の開口40,50がハンチ41,51を有する平面視多角形状に形成され、新規地下構造物1の最下階部分(地下3階部分)の外周リング6の開口60が平面視円形に形成されているが、本発明は、外周リングの開口の形状を適宜変更することが可能である。例えば、複数段の外周リングの開口が全段に亘って平面視円形状又はハンチを有する平面視多角形状に形成されていてもよく、或いは、許容応力が高い外周リングであれば矩形状の開口にすることも可能である。
【0047】
また、上記した実施の形態では、外周リング3を形成する前に構真柱2を建てて、その構真柱2によって外周リング3,4,5,6を支持しているが、本発明は、他の方法で外周リング3,4,5,6を支持することも可能である。例えば、山留め100の内面と外周リング3,4,5,6との間に斜めに架設された斜材や切梁によって外周リング3,4,5,6を支持してもよく、或いは、山留め100の鋼材に突設されて外周リング3,4,5,6に定着されたスタッドコネクタによって外周リング3,4,5,6を支持してもよい。
【0048】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 新規地下構造物
2 構真柱
3,4,5,6 外周リング
10 既存地下構造物
30,40,50,60 開口
41,51 ハンチ
100 山留め
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存地下構造物の解体工事を伴う地下構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床面積が広くて大深度の大規模地下構造を持った既存建物を解体し、その場所に、同じく大深度で床面積が広い大規模地下構造を持った新規建物を新築する建設工事がある。このような建設工事では、周辺のインフラや建物等への影響を防止するために、既存地下構造物の周りに山留めを構築しつつ、その山留めの土圧による変形(倒れ)を抑制する必要がある。
上記した建設工事の施工方法としては、従来、例えば下記の2つの方法が考えられる。
【0003】
(1)全面切梁工法
この工法は、まず、既存建物の上部構造を解体した後、既存建物の地下構造の周りに山留めを築造し、その後、既存地下構造物を上層階から順次解体しながら、山留めの内側の全面に切梁を水平方向に架設していく。この切梁によって、既存地下構造物の解体による山留めの変形を抑制することができる。そして、既存地下構造物の解体終了後、根切り及び床付けをそれぞれ行って耐圧盤を形成する。次に、耐圧盤から地下部分の鉄骨建て方を行ってから1階スラブを先行打設し、その後、地下部分を最下階から順次施工(順打ち工法)し、また、それに並行して地上部分の鉄骨建て方を行って地上工事を進める。これにより、地下工事と地上工事とを同時進行させることができるので、工期の短縮を図ることができる。
【0004】
(2)全面逆打工法
この工法は、既存建物の上部構造を解体した後、既存建物の地下構造の周りに山留めを築造し、その後、既存地下構造物を上層階から順次解体するごとに、その解体によって形成された空間に新規地下構造物のスラブを上層階から順次築造していく(例えば下記特許文献1参照。)。すなわち、まず、既存地下構造物の地下1階部分(1階梁スラブ及び地下1階柱壁)を解体し、その後、新規構造物の1階スラブを全面に亘って築造する。続いて、既存地下構造物の地下2階部分(地下1階梁スラブ及び地下2階柱壁)を解体し、その後、新規構造物の地下1階スラブを全面に亘って築造する。このように既存地下構造物の解体と新規構造物の築造を繰り返すことで、既存地下構造物が上層階から順次解体されながら新規構造物が上層階から順次築造される。この工法によれば、順次築造される新規構造物のスラブが山留めを支持する支保工となり、しかも、上記した切梁よりも信頼性が高いため、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留めの変形を確実に抑制することができ、周辺インフラ等への影響を低減することができる。また、新規構造物の1階スラブを築造した後、地下工事と並行して地上部分の鉄骨建て方を行って地上工事を進める。これにより、地下工事と地上工事とを同時進行させることができるので、工期の短縮を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−61213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大規模工事において上記した全面切梁工法を行うと、山留めの変形を十分に抑制することが難しい。また、全面切梁工法では、相当数の切梁が必要であるため、切梁の設置や解体に相当な時間を要することになり、地下工事の工期が長くなるという問題がある。また、既存地下構造物を解体時に山留めの内側に切梁が架設されており、大型重機を使用することが難しいため、小型重機によって解体作業を行うことになり、解体作業の工期が長くなるという問題がある。特に、既存地下構造物が比較的新しい場合、躯体の高強度であって小型重機での解体が困難な場合がある。
【0007】
また、上記した全面逆打工法では、先行して築造される新規構造物のスラブが全面に亘って形成されるので、そのスラブの下で行われる解体作業の作業空間は、大型重機を使用できるほどの十分な高さはない。そのため、小型重機で既存地下構造物の解体を行うことになるので、解体作業の工期が長くなるという問題がある。また、新規構造物の1階スラブが築造されることで地下部分が閉塞され、地下工事の作業場は日中であっても暗くなるため、多数の照明設備が必要である。また、上記したように地下部分が閉塞された後も、重機よる解体作業を行うため、この重機の排気ガスが地下工事の作業場に溜まりやすい。このため、地下工事の作業場の換気を行う換気設備を多数設置する必要があり、また、排気ガスの発生量を抑えるために重機の運転台数を制限すると工期が長くなる。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、周辺への影響を低減しつつ、工期短縮を図ることができ、さらに、照明設備や換気設備を削減或いは省略することができる地下構造物の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る地下構造物の施工方法は、既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、前記既存地下構造物の周りに山留めを築造した後、残存する前記既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、該解体工程によって形成された空間内に、前記新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口が形成された外周リングを築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、前記既存地下構造物を上層階から順次解体しながら前記新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、前記既存地下構造物の解体終了後、前記外周リングの開口の内側に前記新規地下構造物の中央部分を築造することを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、新規地下構造物の外周部である外周リングが先行して築造されるので、この外周リングによって山留めの変形が抑制され、切梁が省略或いは削減される。また、新規に築造される構造物の中央部分は、先行して築造された外周リングの開口によって吹き抜け状に形成されるので、その外周リングの開口から、既存地下構造物の解体作業に使用する重機や機材、並びに新規地下構造物の資材等が搬入される。また、外周リングの開口によって地下工事の作業場の中央部は、大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保される。また、地下工事の作業場には外周リングの開口から太陽光が照射され、また、その外周リングの開口から地下工事の作業場の換気が行われる。
【0011】
また、本発明に係る地下構造物の施工方法は、前記リング構築工程の前に、前記既存地下構造物を貫通すると共に該既存地下構造物の下方の地盤に支持される構真柱を建て込み、該構真柱によって前記外周リングを支持することが好ましい。
これにより、構真柱によって外周リングが支持されるので、外周リングを仮支持する支保工が省略或いは削減される。
【0012】
また、本発明に係る地下構造物の施工方法は、前記外周リングの開口は、平面視において、矩形の角部にハンチが形成された多角形状、又は、円形状に形成されていることが好ましい。
これにより、山留めから外周リングに外力が作用したときに、その応力が一箇所に集中しにくく分散されやすくなるので、外周リングの開口を大きく形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地下構造物の施工方法によれば、山留めの変形を抑制する外周リングは切梁に比べて信頼性が高いので、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留めの変形を確実に抑制することができる。また、切梁を省略或いは削減することができるので、切梁の設置解体の工程が短縮或いは省略され、工期短縮を図ることができる。
【0014】
また、先行して築造される外周リングは中央に開口が形成され、地下工事の作業場の中央部には大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保されるので、解体作業に大型重機を投入することができる。これにより、解体作業の工期短縮を図ることができる。また、既存地下構造物が比較的に新しく高強度である場合でも、大型重機を使用することで容易に解体することができる。
また、外周リングの開口から地下工事の作業場に太陽光が照射されるので、地下工事の作業場が非常に明るい。したがって、照明設備を削減或いは省略することができる。
また、外周リングの開口によって地下工事の作業場の換気が行われるので、地下工事の作業場に重機の排気ガスが溜まりにくい。したがって、換気設備を削減或いは省略することができる。また、地下工事の作業場の換気を十分に行うことができるので、排気量の大きい大型の重機を多数同時に運転することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための施工中の新規地下構造物の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(一次解体工程・山留め工程・構真柱建込工程)を表した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(一次リング築造工程)を表した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(二次解体工程)を表した断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(二次リング築造工程)を表した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(三次解体工程)を表した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(三次リング築造工程)を表した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(四次解体工程)を表した断面図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(四次リング築造工程)を表した断面図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(最終根切工程)を表した断面図である。
【図11】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(基礎床築造工程)を表した断面図である。
【図12】本発明の実施の形態を説明するための地下工事の施工状況(地下中央部築造工程)を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る地下構造物の施工方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0017】
以下に説明する解体・建設工事は、床面積が広くて大深度の大規模地下構造を持った既存建物を解体して、その場所に同じく大規模地下構造を持った新規建物を新築する工事であり、本実施の形態では、主に地下構造物の施工方法について説明する。
【0018】
本実施の形態における地下構造物の施工方法は、既存地下構造物10を上層階から順次解体しながら新規地下構造物1の外周部を上層階から順次築造(逆打工法)して図1に示すように平面視中央部分に大開口30,40,50,60が形成された新規地下構造物1´を築造した後、その開口30,40,50,60に新規地下構造物1の中央部を下層階から順次築造(順打工法)して新規地下構造物1を構築する方法である。
【0019】
詳しく説明すると、まず、既存建物の図示せぬ上部構造を解体した後、図2に示すように、既存地下構造物10の最上階部分を解体し、且つ、既存地下構造物10の周りに山留め100を築造し、さらに、新規地下構造物1のスラブを支持するための構真柱2を建て込む。
【0020】
具体的に説明すると、まず、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下1階部分11を解体する解体工程(一次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の1階梁スラブ11a及び地下1階柱壁11bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。そして、解体完了後、その解体によって形成された空間に、後述する山留め工程や構真柱建込工程の際に、図示せぬ山留め機や構真柱2の建て込みを行うためのケーシング回転掘削機等を据えるための図示せぬ構台を架設する。
【0021】
次に、山留め100を築造する山留め工程を行う。この山留め工程は、公知の山留め工事で行うことが可能であり、山留め100としては、例えばSMW(Soil Mixing Wall)壁などがある。
【0022】
次に、上記した構真柱2を建て込む構真柱建込工程を行う。この構真柱2は、鋼管や形鋼などの鋼材からなる柱部材であり、既存地下構造物10の下方の地盤G内に定着されて支持され、後述する新規地下構造物1の耐圧版の上面から立設されている。そして、構真柱2は、既存地下構造物10を貫通し、新規地下構造物1の1階床の位置の上方まで突出している。このような構真柱2を建て込む方法としては、まず、図示せぬケーシング回転掘削機によって図示せぬケーシングを回転させて既存地下構造物10に貫通させ、既存地下構造物10の下方の地盤Gの所定深さまで削孔する。続いて、その地盤Gに形成された孔の中に構真柱2の下端部を挿入すると共にコンクリートを打設して仮設杭20を形成する。これにより、構真柱2の下端部が仮設杭20で固定され、既存地下構造物10を貫通する構真柱2が立設される。なお、この構真柱2を建て込む位置に、既存地下構造物10の柱がある場合には、まず、その既存柱の周りに図示せぬ補強PC壁を築造し、その後、既存柱やそれに接合された既存梁などをワイヤソーなどで切断して揚重することで解体し、その後、図示せぬケーシング回転掘削機による削孔を行う。
【0023】
次に、図3に示すように、上記した図示せぬ構台を解体・撤去した後、上述した地下1階部分11を解体する解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の1階床部分の外周部を構成する環状の外周リング3を築造するリング築造工程(一次リング築造工程)を行う。この外周リング3は、新規地下構造物1の1階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング3の中央部分には開口30が形成されている。なお、この外周リング3はグランドラインと略同じ高さ位置に配設されるので、山留め100から外周リング3にかかる外力(土圧)は小さい。そのため、外周リング3の開口30は、図1に示すように、種々の施工性を考慮して平面視矩形状に形成されている。
【0024】
上記した外周リング3の構造としては、例えば、鉄骨梁とデッキスラブからなる構造や、鉄筋コンクリート造のスラブと梁が一体に形成されたプレキャストコンクリートからなる構造、鉄骨梁或いは鉄骨鉄筋コンクリート梁と鉄筋コンクリート造のスラブとを在来工法で一体に形成した構造などがある。
また、図3に示すように、上記した外周リング3の梁部分を上記した構真柱2に接合することで、構真柱2によって外周リング3を支持させる。このとき、山留め100と外周リング3との間に斜めに架けられた図示せぬ斜梁や切梁を部分的或いは一時的に設置してもよい。これにより、外周リング3の変形を抑制することができる。
【0025】
次に、図4に示すように、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下2階部分12を解体する解体工程(二次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下1階梁スラブ12a及び地下2階柱壁12bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3の開口30から既存地下構造物10の地下1階梁スラブ12a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3の開口30から揚重して搬出する。
【0026】
次に、図5に示すように、上述した地下2階部分12の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下1階床部分の外周部を構成する環状の外周リング4を築造するリング築造工程(二次リング築造工程)を行う。この外周リング4は、新規地下構造物1の地下1階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング4の中央部分には開口40が形成されている。この開口40は、上記した1階部分の外周リング3の開口30と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング4はグランドラインよりも下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング4にある程度の外力(土圧)がかかる。そのため、外周リング4の開口40は、図1に示すように、概ね平面視矩形状に形成されていると共にその矩形状の角部にハンチ41が形成されており、平面視多角形状(八角形状)に形成されている。
【0027】
なお、上記した地下1階部分の外周リング4は、上記した1階部分の外周リング3と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下1階部分の外周リング4は、図5に示すように、上記した1階部分の外周リング3と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下1階部分の外周リング4を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3の開口30から既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a上に降ろす。
また、地下1階部分の外周リング4を築造した後、新規地下構造物1の地下1階部分の柱壁32を築造する。このとき、構真柱2の地下1階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート21を打設して構真柱2の地下1階部分を仕上げる。
【0028】
次に、図6に示すように、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する地下3階部分13を解体する解体工程(三次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a及び地下3階柱壁13bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4の開口30,40から既存地下構造物10の地下2階梁スラブ13a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3,4の開口30,40から揚重して搬出する。
【0029】
次に、図7に示すように、上述した地下3階部分13の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下2階床部分の外周部を構成する環状の外周リング5を築造するリング築造工程(三次リング築造工程)を行う。この外周リング5は、新規地下構造物1の地下2階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング5の中央部分には開口50が形成されている。この開口50は、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4の開口30,40と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング5は地下1階部分の外周リング4よりも更に下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング5にかかる外力(土圧)は地下1階部分の外周リング4よりも大きい。そのため、外周リング5の開口50は、図1に示すように、概ね平面視矩形状に形成されていると共にその矩形状の角部に、地下1階部分の外周リング4のハンチ41よりも大きいハンチ51が形成されており、平面視多角形状(八角形状)に形成されている。
【0030】
なお、上記した地下2階部分の外周リング5は、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下2階部分の外周リング5は、図7に示すように、上記した1階部分及び地下1階部分の外周リング3,4と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下2階部分の外周リング5を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4の開口30,40から既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a上に降ろす。
また、地下2階部分の外周リング5を築造した後、新規地下構造物1の地下2階部分の柱壁42を築造する。このとき、構真柱2の地下2階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート22を打設して構真柱2の地下2階部分を仕上げる。
【0031】
次に、図8に示すように、残存する既存地下構造物10の最下階の地下4階部分14を解体する解体工程(四次解体工程)を行う。すなわち、既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a及び地下4階柱壁14bをそれぞれ公知の解体方法で解体する。このとき、解体作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から既存地下構造物10の地下3階梁スラブ14a上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラを上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から揚重して搬出する。
【0032】
次に、図9に示すように、上述した地下4階部分14の解体工程によって形成された空間内に、新規地下構造物1の地下3階床部分の外周部を構成する環状の外周リング6を築造するリング築造工程(四次リング築造工程)を行う。この外周リング6は、新規地下構造物1の地下3階部分のスラブ及び梁からなる床版部材であり、外周リング6の中央部分には開口60が形成されている。この開口60は、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5の開口30,40,50と略同じ大きさに形成されていると共に平面視において重なる位置に形成されている。また、この外周リング6は地下2階部分の外周リング5よりも更に下方の位置に配設されるので、山留め100から外周リング6にかかる外力(土圧)は地下2階部分の外周リング5よりも大きい。そのため、外周リング6の開口60は、図1に示すように、平面視略円形状に形成されている。
【0033】
なお、上記した地下3階部分の外周リング6は、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5と同様に種々の構造にすることが可能である。また、上記した地下3階部分の外周リング6は、図9に示すように、上記した1階部分、地下1階部分及び地下2階部分の外周リング3,4,5と同様に上記した構真柱2で支持される。
また、地下3階部分の外周リング6を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4,5の開口30,40,50から既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15上に降ろす。
また、地下3階部分の外周リング6を築造した後、新規地下構造物1の地下3階部分の柱壁52を築造する。このとき、構真柱2の地下3階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート23を打設して構真柱2の地下3階部分を仕上げる。
【0034】
次に、図10に示すように、既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15を解体すると共に最終根切りを行って床付けを行う最終根切工程を行う。このとき、解体作業や根切り作業を行う図示せぬ重機や機材を上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から既存地下構造物10の地下4階の基礎スラブ15上に降ろす。また、解体で発生した鉄くずやコンクリートガラ、及び、根切りで発生した土砂を上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から揚重して搬出する。
【0035】
次に、図11に示すように、上述した最終根切工程で形成された床付け面上に新規地下構造物1の地下4階の基礎床7を全面に亘って築造する基礎床築造工程を行う。この基礎床7を築造するための資材や機材等は上記した外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から床付け面上に降ろす。
また、基礎床7を築造した後、新規地下構造物1の地下4階部分の柱壁62を築造する。このとき、構真柱2の地下4階部分の周りに図示せぬ鉄筋を配筋すると共に外周コンクリート24を打設して構真柱2の地下4階部分を仕上げる。
以上により、図1に示すように、平面視中央部分に大開口30,40,50,60が形成された新規地下構造物1´が築造される。
【0036】
次に、図12に示すように、各階の外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60の内側に新規地下構造物1の中央部分を下層階から順次築造する地下中央部築造工程を行う。具体的には、まず、新規地下構造物1の中央部分の図示せぬ柱梁鉄骨の建て方を行う。このとき、新規地下構造物1の図示せぬ地上部分の第一節の鉄骨建て方を同時に行うことが可能である。続いて、地下3階の外周リング6の開口60の内側に新規地下構造物1の地下3階の中央部の梁スラブ63を築造すると共に、地下4階の中央部の柱壁64を築造する。その後、地下2階の外周リング5の開口50の内側に新規地下構造物1の地下2階の中央部の梁スラブ53を築造すると共に、地下3階の中央部の柱壁54を築造する。その後、地下1階の外周リング4の開口40の内側に新規地下構造物1の地下1階の中央部の梁スラブ43を築造すると共に、地下2階の中央部の柱壁44を築造する。その後、1階の外周リング3の開口30の内側に新規地下構造物1の1階の中央部の梁スラブ33を築造すると共に、地下1階の中央部の柱壁34を築造する。
【0037】
以上により、新規地下構造物1が完成する。なお、上述した地下中央部築造工程と並行して、新規地下構造物1の図示せぬ地上部分の鉄骨建て方等の躯体工事を行うことが可能である。
【0038】
上記した地下構造物の施工方法によれば、残存する既存地下構造物10のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、その解体工程によって形成された空間内に外周リング3,4,5,6を築造するリング築造工程と、を交互に行うことで、既存地下構造物10が上層階から順次解体されるごとに、新規地下構造物1の外周部である外周リング3,4,5,6が先行して築造されるので、これらの外周リング3〜6によって山留め100の変形が抑制される。外周リング3,4,5,6は切梁に比べて信頼性が高いので、大深度・大面積の大規模地下工事であっても山留め100の変形を確実に抑制することができる。また、切梁を省略或いは削減することができるので、切梁の設置解体の工程が短縮或いは省略され、工期短縮を図ることができる。
【0039】
また、新規に築造される構造物の中央部分は、先行して築造された外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60によって吹き抜け状に形成されており、地下工事の作業場の中央部は、大型重機を使用できるだけの十分な高さ(大空間)が確保される。これにより、解体作業に大型重機を投入することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。また、既存地下構造物10が比較的に新しく高強度である場合でも、大型重機を使用することで容易に解体することができる。
【0040】
また、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60から地下工事の作業場に太陽光が照射されるので、地下工事の作業場が非常に明るい。したがって、照明設備を削減或いは省略することができる。
【0041】
また、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60によって地下工事の作業場の換気が行われるので、地下工事の作業場に重機の排気ガスが溜まりにくい。したがって、換気設備を削減或いは省略することができる。また、地下工事の作業場の換気を十分に行うことができるので、排気量の大きい大型の重機を多数同時に運転することができ、解体作業の工期短縮を図ることができる。
【0042】
また、構真柱2によって外周リング3,4,5,6が支持されるので、外周リング3,4,5,6を仮支持する支保工が省略或いは削減される。これにより、仮設費を低減させることができると共に工期短縮を図ることができる。
【0043】
また、複数段の外周リング3,4,5,6のうち、地下1階部分の外周リング4及び地下2階部分の外周リング5の開口40,50は、平面視において矩形の角部にハンチ41,51が形成された多角形状に形成されており、また、地下3階部分の外周リング6の開口60は、平面視円形状に形成されているので、山留め100からそれらの外周リング4,5,6に外力が作用したときに、その応力が一箇所に集中しにくく分散されやすくなる。これにより、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60を大きく形成することができ、地下作業場に多数の大型重機を配置することができるので、解体作業の工期を短縮することができる。
なお、土圧は深度が深いほど大きくなるので、複数段の外周リング3,4,5,6のうち下層階のものほど山留め100からかかる外力が大きくなる。したがって、上記した実施の形態では、外周リング4,5のハンチ41,51が下層階にいくに従い大きくなり、ハンチ41,51を有する外周リング4,5の下方に、平面視円形の開口60が形成された外周リング6が配設されている。これにより、外周リング3,4,5,6の開口30,40,50,60を大きく形成しつつ山留め100の変形を効果的に抑制することができる。
【0044】
以上、本発明に係る地下構造物の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、地下4階の既存地下構造物10を解体して同じく地下4階の新規地下構造物1を新築する場合の施工方法について説明しているが、本発明は、既存地下構造物や新規地下構造物の階数は適宜変更可能である。
【0045】
また、上記した実施の形態では、地下工事と並行して地上工事を進める施工方法であるが、本発明は、地下工事が完了した後、地上工事を開始する施工方法であってもよく、また、地上工事を行わない場合であってもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、新規地下構造物1の最上階部分(1階部分)の外周リング3の開口30が平面視矩形に形成され、新規地下構造物1の中間層階部分(地下1階部分及び地下2階部分)の外周リング4,5の開口40,50がハンチ41,51を有する平面視多角形状に形成され、新規地下構造物1の最下階部分(地下3階部分)の外周リング6の開口60が平面視円形に形成されているが、本発明は、外周リングの開口の形状を適宜変更することが可能である。例えば、複数段の外周リングの開口が全段に亘って平面視円形状又はハンチを有する平面視多角形状に形成されていてもよく、或いは、許容応力が高い外周リングであれば矩形状の開口にすることも可能である。
【0047】
また、上記した実施の形態では、外周リング3を形成する前に構真柱2を建てて、その構真柱2によって外周リング3,4,5,6を支持しているが、本発明は、他の方法で外周リング3,4,5,6を支持することも可能である。例えば、山留め100の内面と外周リング3,4,5,6との間に斜めに架設された斜材や切梁によって外周リング3,4,5,6を支持してもよく、或いは、山留め100の鋼材に突設されて外周リング3,4,5,6に定着されたスタッドコネクタによって外周リング3,4,5,6を支持してもよい。
【0048】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 新規地下構造物
2 構真柱
3,4,5,6 外周リング
10 既存地下構造物
30,40,50,60 開口
41,51 ハンチ
100 山留め
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、
前記既存地下構造物の周りに山留めを築造した後、
残存する前記既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、
該解体工程によって形成された空間内に、前記新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口が形成された外周リングを築造するリング築造工程と、
を交互に行うことで、前記既存地下構造物を上層階から順次解体しながら前記新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、
前記既存地下構造物の解体終了後、前記外周リングの開口の内側に前記新規地下構造物の中央部分を築造することを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地下構造物の施工方法において、
前記リング構築工程の前に、前記既存地下構造物を貫通すると共に該既存地下構造物の下方の地盤に支持される構真柱を建て込み、
該構真柱によって前記外周リングを支持することを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下構造物の施工方法において、
前記外周リングの開口は、平面視において、矩形の角部にハンチが形成された多角形状、又は、円形状に形成されていることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項1】
既存地下構造物を解体しつつ新規地下構造物を構築する地下構造物の施工方法であって、
前記既存地下構造物の周りに山留めを築造した後、
残存する前記既存地下構造物のうちで最も上層階に位置する部分を解体する解体工程と、
該解体工程によって形成された空間内に、前記新規地下構造物の外周部であって中央部分に開口が形成された外周リングを築造するリング築造工程と、
を交互に行うことで、前記既存地下構造物を上層階から順次解体しながら前記新規地下構造物の外周部を上層階から順次築造し、
前記既存地下構造物の解体終了後、前記外周リングの開口の内側に前記新規地下構造物の中央部分を築造することを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地下構造物の施工方法において、
前記リング構築工程の前に、前記既存地下構造物を貫通すると共に該既存地下構造物の下方の地盤に支持される構真柱を建て込み、
該構真柱によって前記外周リングを支持することを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地下構造物の施工方法において、
前記外周リングの開口は、平面視において、矩形の角部にハンチが形成された多角形状、又は、円形状に形成されていることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−107430(P2012−107430A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257158(P2010−257158)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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