地下構造物の構築方法及び地下構造物、並びにそのためのプレキャストコンクリート側壁又は中間壁/柱
【課題】工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化し、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制する。また、施工時占用幅を小さくするとともに、施工の省力化等を図る。
【解決手段】両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁2,2を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁2,2間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版4を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート頂版4によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部5の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁2との結合及び一体化を図る第3工程とからなる。
【解決手段】両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁2,2を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁2,2間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版4を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート頂版4によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部5の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁2との結合及び一体化を図る第3工程とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半地下道路トンネル、地下駐車場、駐輪場、共同溝、地下鉄、地下道などの地下構造物の構築方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市再生の一環の事業として、立体道路、駅前地下駐車場・駐輪場などが計画される事例が増えている。この場合、地上とのアクセス性を考慮して深度を浅くした浅層地下構造物となり、施工は経済性等を考慮し開削工法にて構築されることが多い。この開削工法は、図27及び図28に示されるように、掘削エリアの側部に土留め壁50,50を設けた後、これら土留め壁50,50の間に中間杭51,51を設け、掘削を開始し、掘削に伴って腹起し52,52…及び切梁53、53…等の支保部材を設けるとともに、土留め壁50,中間杭51に覆工受桁54を渡し、覆工板55を敷設し地上交通を確保するようにした後、順次深部方向に向かって掘削を行い、所定の掘削を終えた後、掘削空間内に地下構造物の構築を行う工法である。
しかしながら、前記開削工法を採用して地下構造物を構築する場合、地上部に道路交通、ロータリーや歩行者動線がある場合には、切り廻しをかけながら、極力、地上利用を維持しながら工事を進めることとなる。そのため、覆工板の敷設状態を工事完了まで維持しなければならず、当初に作業用地内に埋設されていたライフラインの埋設管の復旧が遅れることになっていた。また、地下構造物の構築後に、覆工板の撤去等地上部の復旧を行わなければならず、地上占用期間が長期に亘り、周辺環境に与える影響が大きいとともに、工事が長期化するなどの問題があった。
【0003】
そこで下記特許文献1では、図29(A)に示されるように、地下構造物60の構築予定地の両側に土留め壁61,61を埋め込み、これらの土留め壁61,61間の地盤を所定の深さまで掘削して土留め壁61,61の上部側を露出させ、この両側の土留め壁61、61における露出された部分にプレキャストコンクリート桁部材62を架設して地下構造物の頂版部を形成し、次いで図29(B)に示されるように、この頂版部の下を掘削して所定深さの掘削穴63を形成した後、図29(C)に示されるように、掘削穴63の底部及び側部に地下構造物の底版部64及び側壁部65を形成し、側壁部65と頂版部62とを結合することにより地下構造物60を構築する地下構造物の構築方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−193495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1記載の地下構造物の構築方法の場合は、下記のような問題点があった。
(1)土留め壁61は通常、仮設材として取り扱われるが、地下構造物本体60の外側に構築しなければならず、施工時占用幅が増大する。
(2)H形鋼や鋼矢板からなる土留め壁61を支持部材として、これら土留め壁61、61間にプレキャストコンクリート桁部材62を架設し支持させるようにしているが、H形鋼や鋼矢板からなる土留め壁61は、基本的には仮設材としての設計であるため、前記プレキャストコンクリート桁部材62の自重を支持させるには、断面寸法が大型化する、或いはアンカーなどの補強工法を併用しなければならないなどの問題が生ずるようになる。
(3)すべての掘削を終えた後に、側壁部分65を現場施工によって構築しなければならないため、施工に多くの手間と時間が掛かるようになる。
(4)前記土留め壁61は仮設材としての取り扱いであるため、工事完了後は撤去することが望ましいが、土留め壁61によって前記プレキャストコンクリート桁部材62を支持させ、この支持させた状態のままで、側壁65の施工を行わなければならないため、躯体完了後に前記土留め壁61を撤去することは困難であり、埋め殺しとなってしまう。
【0005】
そこで本発明の主たる課題は、工事の最初の段階で地下構造物の頂版部分を形成することにより、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化し、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制するとともに、上記問題点を一挙に解決し得る地下構造物の構築方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも両側壁部、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
少なくとも前記両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法が提供される。
上記請求項1記載の本発明においては、工事の最初の段階で、プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させるため、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化でき、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制することが可能となる。
【0007】
また、側壁構築部材として、プレキャストコンクリート側壁を最初に地盤に立て込み、工事中はこれを土留め壁とし、工事完成後は本体構造として利用する。従って、施工時占用幅が増大することがなく、本体構造内の占用で施工が完了する。また、プレキャストコンクリート構造であるため、プレキャストコンクリート頂版を支持するだけの耐力を十分に有することができる。さらに、施工を簡略化でき、施工手間、工費を大幅に削減できるとともに、工期も短縮することができる。側壁部外側に仮設の土留め壁を構築しないため、工事完成後に仮設材が地盤中に残置されることも無くなる。
【0008】
請求項2に係る本発明として、両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
前記両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、側壁の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込むとともに、中間壁又は中間柱の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を地中に建込み、これらスパン間の浅層地盤を掘削除去した後、本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法が提供される。
【0009】
上記請求項2記載の発明は、側壁間に中間壁又は中間柱を有する地下構造物の場合の構築方法である。側壁間に中間壁又は中間柱を有する場合には、側壁間の浅層地盤をすべて掘削した後、プレキャストコンクリート頂版を架設することも可能であるが、この場合は、掘削規模が大きくなり、地上占用期間が長期化することになる。従って、両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、プレキャストコンクリート部材の建込み、浅層地盤の掘削、プレキャストコンクリート頂版の架設、埋戻しによる頂版以浅部分の先行的完成の手順で施工することにより、地上占用期間を短縮化できるようになる。
【0010】
請求項3に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
上記請求項3記載の本発明においては、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱に対して、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を設けるようにしたものである。全根入れ長をプレキャストコンクリート部材とすることも可能であるが、この場合は建込み溝の掘削深さが深くなるばかりでなく、プレキャスト部材費が増し、工期の長期化と施工手間、工費が増す原因となる。従って、下端に複数本の鋼杭を設けることにより、建込み溝を浅くでき、かつこれら鋼杭によって十分な鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗力を確保することができる。
【0011】
請求項4に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、前記第3工程における底版部のコンクリート打設において、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能で、かつ前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続して配筋可能としてある請求項2、3いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0012】
上記請求項4記載の発明においては、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能となるように、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置とするものである。すなわち、各スパンが完全に仕切られていると、底版部のコンクリート打設は各スパン毎に行わなければならず施工が効率化しない。従って、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能とすることにより、底版部を一気にコンクリート打設できるようになる。また、前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続した配筋が可能となり構造の一体化が図れるようになる。
【0013】
請求項5に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備える請求項1〜4いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0014】
上記請求項5記載の本発明においては、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の上面に、上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を設けるようにするものである。浅層地盤の掘削に当たり、土留めを図る必要があるが、予め前記プレキャストコンクリート部材の上面に複数本の仮設鋼材を設けておき、これを土留め壁の支保として活用することにより、撤去時の手間を省力化でき、施工を簡略化できるようになる。
【0015】
請求項6に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設又は剥離剤を塗布してある請求項1〜5いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0016】
上記請求項6記載の発明においては、プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設したり、或いは剥離剤を塗布しておくものである。施工時に前記プレキャストコンクリート部材の表面には、泥水やソイルセメントが付着し汚れるため、工事完成後に前記フィルムを剥がすことにより、或いは剥離材を塗布しておき簡単に洗い流しできるようにしておくことにより、内壁面側を簡単に綺麗に仕上げできるようになる。
【0017】
請求項7に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁同士の接合面及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱同士の接合面において、両者を繋ぐ雄・雌継手を有するとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプを設けておく請求項1〜6いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0018】
上記請求項7記載の本発明においては、プレキャストコンクリート部材の接合面に雄・雌継手を設けておくとともに、前記パイプを建込みガイドとすることにより、プレキャストコンクリート部材を精度良く地盤中に建て込むことが可能になる。また、建込み完了後は、前記パイプを引抜いて止水性を向上させるためのグラウト注入孔として利用することができる。
【0019】
請求項8に係る本発明として、前記両側壁間にプレキャストコンクリート中間柱が配置される場合において、前記プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設した後、これら土留め杭を両側から挟み込むように、前記プレキャストコンクリート中間柱間に2分割構造のプレキャストコンクリート梁を横架し、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する請求項2〜7いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0020】
上記請求項8記載の本発明においては、プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設し、これをプレキャストコンクリート中間柱間に横架された2分割構造のプレキャストコンクリート梁で挟むようにし、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する。従って、掘削時には前記土留め杭は土留め支保材として機能させた後、それ以降の状態においては、前記プレキャストコンクリート梁の上に載荷されるプレキャストコンクリート頂版の荷重を前記土留め杭によって支持することが可能となる。なお、前記土留め杭は底版の打設を完了した後は切断によって撤去される。
【0021】
請求項9に係る本発明として、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるプレキャストコンクリート側壁と、プレキャストコンクリート側壁間の上部に設けられたプレキャストコンクリート頂版と、プレキャストコンクリート側壁間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版とからなることを特徴とする地下構造物が提供される。
【0022】
請求項10に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁間に、1又は複数のプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を有するとともに、該プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項9記載の地下構造物が提供される。
【0023】
請求項11に係る本発明として、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート側壁又はプレキャストコンクリート中間壁/柱が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、工事の最初の段階で地下構造物の頂版以浅部分を完成させることにより、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化でき、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制することができるようになる。
また、従来法のように、側壁にプレキャストコンクリート部材を使用するため施工時占用幅が増大することがなく、かつプレキャストコンクリート構造であるため、プレキャストコンクリート頂版を支持するだけの耐力を十分に有することができる。また、施工を簡略化できるため、施工手間、工費を大幅に削減できるとともに、工期も短縮することができる。さらに、工事完成後に仮設材が側壁外側の地盤中に残置されることも無くなる、などの利点を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔第1形態例〕
図1は地下構造物1Aの横断面図及び平面図、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。
【0026】
図1において、地下構造物1Aは、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるプレキャストコンクリート側壁2,2と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭3Aを備える1又は複数の、図示例では2つのプレキャストコンクリート中間柱3,3…と、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3との間、及びプレキャストコンクリート中間柱3,3間の上部に架け渡されたプレキャストコンクリート頂版4(4A〜4C)と、プレキャストコンクリート側壁2,2間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版5とからなるものである。なお、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部には、路線方向に沿って所定の間隙を空けて、左右一対のプレキャストコンクリート梁7,7が横架され、このプレキャストコンクリート梁7,7を支承台座として前記プレキャストコンクリート頂版4が設置されている。このプレキャストコンクリート梁7の機能については、更に後述する。また、前記プレキャストコンクリート梁7,7の間の空間には、現場打設によって間詰めコンクリート6が充填されている。
以下、具体的に前記地下構造物1Aについて施工順序に従いながら詳述する。
【0027】
(第1工程)
第1工程は、プレキャストコンクリート側壁2,2間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版4を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる工程である。この第1工程について、図4〜図17に基づき詳述する。
先ず、図4に示されるように、側壁構築部位及び中間柱構築部位に、プレキャストコンクリート側壁2、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みのための掘削を行う。掘削は、同図に示されるように、浅層地盤範囲のみとし、鋼矢板10,10と、これら鋼矢板10,10間に横架した切梁11、11…を使用しながら掘削重機12を用いて行う。
【0028】
次に、図5に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2、プレキャストコンクリート中間柱3をそれぞれの部位に建て込む。前記プレキャストコンクリート側壁2は、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材2Bを備えるものを使用し、かつ前記プレキャストコンクリート中間柱3についても同様に、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭3Aを備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材3Bを備えるものを使用する。また、前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設するか、剥離剤を塗布しておくことが望ましい。
【0029】
建込みに当たり、前記プレキャストコンクリート側壁2,2同士の接合面においては、図6に示されるように、両者を繋ぐ雄・雌継手14を設けるようにするとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプ15を設けておくのが望ましい。前記雄・雌継手14及びパイプ15を建込み用ガイドとして使用することにより、精度良く各プレキャストコンクリート側壁2を建込みできるとともに、建込み後に前記パイプ15を引き抜いて、該孔部からグラウト注入を行うことにより接合面の止水を図ることができる。
【0030】
前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3の建込みを終えたならば、切梁11を取り外し、前記仮設鋼材2B、3Bを支保する切梁13に受け替えるようにする。また、プレキャストコンクリート中間柱3,3間には、図7(B)に示されるように、所定の間隔で土留め杭16,16…を設置し鋼矢板10の支保材とする。なお、この土留め杭16は、底版打設完了までは、後述するように、プレキャストコンクリート頂版4の支持杭としても利用されるものである。
【0031】
以上の工程までを終えたならば、図7に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の間の浅層地盤を掘削除去する。掘削深さは、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の頂部を露出させ、次工程のプレキャストコンクリート頂版4を架設可能な程度とする。
【0032】
掘削を終えたならば、図8に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の間にプレキャストコンクリート頂版4Aを架設する。この際、プレキャストコンクリート側壁2との結合部は、例えば図9(A)に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2の上部にアンカーロッド17を埋設しておくとともに、その上部にネジ式カップラー18を設けておき、前記プレキャストコンクリート頂版4Aを設置した後、前記ネジ式カップラー18の対応位置に予め埋設してあるスリーブ19を通してロッド20を挿入し、ネジ式カップラー18に連結した後、上部を締結するロッド結合方式や、図9(B)に示されるように、施工誤差を吸収するためにプレキャストコンクリート頂版4Aに埋設されたスリーブ21,21内に、プレキャストコンクリート側壁2の上面から突出させた鉄筋22,22を挿入した後、スリーブ21内にモルタルを注入し接合するスリーブ方式等を採用するのが望ましい。前記スリーブ21の内径は、前記鉄筋22の外径よりも若干大きく製作されており、頂版4Aの施工誤差をこの部分で吸収することができる。また、プレキャストコンクリート中間柱3側においては、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部に路線方向に沿ってプレキャストコンクリート梁7を横架し、これを台座として前記プレキャストコンクリート頂版4Aを設置する。プレキャストコンクリート頂版4Aをプレキャストコンクリート側壁2と、プレキャストコンクリート中間柱3の上に載置しながら構造の一体化ができることにより、施工性の向上を図れるようになる。
【0033】
以上、プレキャストコンクリート頂版4Aを設置したならば、図10に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2において、プレキャストコンクリート頂版4よりも上方に突出した仮設鋼材2B部分をガス切断等により撤去した後、プレキャストコンクリート頂版4Aの右側寄り位置に仮設土留め壁30を設置し、埋戻し(道路の場合は路盤含む。)を行い、左側スパン部分の地上占用を開放する。図示例では、地上は車両用道路として使用されている。
【0034】
以上、左側スパン部分の施工を終えたならば、隣接する中間スパン部分の施工に移る。図10に示されるように、隣接する中間柱構築部位を、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みのために掘削し、図11に示されるように、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みを終えたならば、切梁11を取り外し、前記仮設鋼材3Bを支保材として、切梁13に受け替えるようにした後、浅層地盤の掘削を行い(図12)、図13に示されるように、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部に路線方向に沿ってプレキャストコンクリート梁7を横架し、これを台座として、プレキャストコンクリート中間柱3間にプレキャストコンクリート頂版4Bを架設する。そして、図14に示されるように、左側プレキャストコンクリート中間柱3において、プレキャストコンクリート頂版4よりも上方に突出した仮設鋼材3B部分と、土留め杭16の突出部分をガス切断等により撤去した後、プレキャストコンクリート頂版4Bの右側寄り位置に仮設土留め壁31を設置し、埋戻し(道路の場合は路盤含む。)を行い、中間スパン部分の地上占用を開放する。
【0035】
この際、前記プレキャストコンクリート頂版4A、4Bとの接合部では、図15に示されるように、プレキャストコンクリート頂版4A、4Bのそれぞれからループ継手21が延出され、プレキャストコンクリート梁7,7の間隙部分に現場打設による間詰めコンクリート6が充填されることにより一体化が図られるようになっている。また、図16に示されるように、左右一対のプレキャストコンクリート梁7,7が、プレキャストコンクリート中間柱3,3間に設置された土留め杭16,16…を挟み込み可能に2分割構造となっており、前記プレキャストコンクリート梁7,7の間隙部分にコンクリート23が充填され、前記土留め杭16,16…との一体化が図られるようになっている。従って、底版部5のコンクリートが打設され、土留め杭16の露出部分(底版よりも上側部分)が撤去されるまでの間は、前記プレキャストコンクリート頂版4A、4Bの荷重が前記土留め杭16,16…によって分担支持されるようになっている。
さらに前述した要領によって、右側スパン部分の頂版部以浅の構造部分を完成させることにより(説明は省略)、図17に示されるように、すべての地上占用が開放されることになる。
【0036】
(第2工程)
上記第1工程により、頂版以浅部分を先行的に完成させたならば、図18に示されるように、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート頂版4によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う。掘削は必要に応じて切梁32、32…によって支保を行い、掘削土砂の排出は、例えば前記プレキャストコンクリート頂版4の一部を開口としておき、バケット(クレーン)により地上まで揚上し、ダンプトラック等により搬出するようにする。
【0037】
(第3工程)
所定深さ(底版部5の構築深さ)までの掘削を終えたならば、図19に示されるように、底版部構築部位にコンクリート24を打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート中間柱3,3との結合及び一体化を図るようにする。例えば、底版部5とプレキャストコンクリート側壁2との結合は、図20に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2の下部より底版部側に向けて鉄筋やロッド等の定着筋24、24…を延出しておき、底版部5に配筋される鉄筋33、33…と構造的に接続するようにする。
【0038】
また、底版部5のコンクリート打設に当たっては、プレキャストコンクリート中間柱3の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、打設したコンクリート24がプレキャストコンクリート中間柱3を越えて他のスパンへ流動可能で、かつプレキャストコンクリート中間柱3部でとぎれることなく連続して配筋可能とするのが望ましい。
前記底版部5のコンクリート打設を完了し、底版コンクリートがプレキャストコンクリート側部2及びプレキャストコンクリート中間柱3と完全に結合したならば、図3に示されるように、土留め杭16、16…の露出部分をガス等によって切断して撤去する。
【0039】
後は、最終仕上げとして、前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3の内壁面側に対して、予めフィルムを貼設している場合には、これを剥がして綺麗なコンクリート面を露出させる。また、剥離剤が塗布されている場合にはジェットウォーターの噴射やブラシ清掃により泥水やソイルセメント等の汚れを落とすようにする。
【0040】
〔第2形態例〕
上記第1形態例では、中間の仕切り構造部材として、プレキャストコンクリート中間柱3、3を用いた構造としたが、完全にスパン毎に仕切るプレキャストコンクリート中間壁8、8とすることも可能である。図21〜図23はその完成状態を示したもので、図21は地下構造物1Bの横断面図及び平面図、図22は図21のXXII−XXII線矢視図、図23は図21のXXIII−XXIII線矢視図である。
構築手順は前述した第1形態例と基本的には同様であるが、中間仕切り構造部材として、プレキャストコンクリート中間壁8を採用した場合には、土留め杭16,16…が不要になるとともに、プレキャストコンクリート梁7,7が不要になる。従って、同図に示されるように、プレキャストコンクリート中間壁8、8の上面に直接、プレキャストコンクリート頂版4を設置すれば足りる。
また、この場合も、底版部5のコンクリート打設に当たっては、プレキャストコンクリート中間壁8の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、打設したコンクリート24がプレキャストコンクリート中間壁8を越えて他のスパンへ流動可能で、かつプレキャストコンクリート中間壁8部でとぎれることなく連続して配筋可能とするのが望ましい。
【0041】
〔第3形態例〕
上記第1形態例では、プレキャストコンクリート頂版はスラブ構造とし、その上面を埋戻すことにより外部と遮断された地下構造物としたが、図24〜図26に示されるように、頂版部分の一部に外部と連通させたスリット型地下構造物1Cとすることも可能である。
【0042】
図24は本第2形態例に係る地下構造物1Cの横断面図及び平面図、図25は図24のXXV−XXV線矢視図、図26は図24のXXVI−XXVI線矢視図である。
図24において、スリット半地下構造物1Cは、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるプレキャストコンクリート側壁2,2と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭8Aを備えるプレキャストコンクリート中間壁8と、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間壁8との間の上部に架け渡されたプレキャストコンクリート頂版9と、プレキャストコンクリート側壁2,2間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版5とからなるものである。前記プレキャストコンクリート頂版9は、多数の開口9a、9a…を有する頂版梁9Aと、この頂版梁9Aの上面に設置される頂版スラブ9Bとから構成されることにより、中央部分に頂版梁9Aの開口9a、9a…部分が外部に開放されたスリット部が形成されるようになっている。
【0043】
構築方法は、前述した第1形態例と基本的に同様であるが、この場合も、プレキャストコンクリート中間壁8としているため、土留め杭16,16…が不要になるとともに、プレキャストコンクリート梁7,7が不要になる。従って、同図に示されるように、プレキャストコンクリート中間壁8、8の上面に直接、プレキャストコンクリート頂版4を設置すれば足りる。
前記プレキャストコンクリート頂版4の設置は、先ず頂版梁9Aを設置した後、その上側に、断面L字形状とし起立部を土留め壁とした頂版スラブ9Bを載置し、埋戻しを行い、頂版以浅部分を先行的に完成させるようにする。
【0044】
〔他の形態例〕
(1)上記第1〜第3形態例では、プレキャストコンクリート側壁2,2の間に、プレキャストコンクリート中間柱3や中間壁8を有する地下構造物1A〜1Cとしたが、地下構造物の幅寸法が小さいため、プレキャストコンクリート中間柱3,3…や中間壁8等の中間仕切り構造材を有さず、単にプレキャストコンクリート側壁2,2が対峙する構造の地下構造物としてもよく、かつこの場合も同様の施工手順によって構築することが可能である。
(2)上記形態例では、浅層地盤の掘削を行った後、プレキャストコンクリート頂版4を設置するようにしたが、掘削部の開放が長期に亘る場合には、一旦、覆工版を設置して掘削部を塞ぎ、この覆工版と順次交換しながら、プレキャストコンクリート頂版4を設置するようにしてもよい。
(3)上記形態例においては、プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3共に、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2A(3A)を備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材2B(3B)を備えるものを使用したが、前記鋼杭2A(3A)及び仮設鋼材2B(3B)のどちらか一方のみを備えるプレキャスト部材としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る地下構造物1Aを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】地下構造物1Aの構築手順(その1)である。
【図5】地下構造物1Aの構築手順(その2)である。
【図6】プレキャストコンクリート側壁2、2の接合部を示す要部横断面図である。
【図7】地下構造物1Aの構築手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図8】地下構造物1Aの構築手順(その4)である。
【図9】プレキャストコンクリート側壁2と、プレキャストコンクリート頂版4Aとの接合部を示す要部断面図である。
【図10】地下構造物1Aの構築手順(その5)である。
【図11】地下構造物1Aの構築手順(その6)である。
【図12】地下構造物1Aの構築手順(その7)である。
【図13】地下構造物1Aの構築手順(その8)である。
【図14】地下構造物1Aの構築手順(その9)である。
【図15】プレキャストコンクリート頂版4A、4Bの接合部を示す横断面図である。
【図16】プレキャストコンクリート梁7,7の平面図である。
【図17】地下構造物1Aの構築手順(その10)である。
【図18】地下構造物1Aの構築手順(その11)である。
【図19】地下構造物1Aの構築手順(完成状態)である。
【図20】プレキャストコンクリート側壁2の下部と、底版部5との結合部を示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図21】第2形態例に係る地下構造物1Bを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図22】図21のXXII-XXII線矢視図である。
【図23】図21のXXIII-XXIII線矢視図である。
【図24】第3形態例に係る地下構造物1Cを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図25】図24のXXV-XXV線矢視図である。
【図26】図24のXXVI-XXVI線矢視図である。
【図27】従来の開削工法を示す全体横断面図である。
【図28】その土留め支保及び覆工状態を示す斜視図である。
【図29】特許文献1による地下構造物の構築方法を示す手順図である。
【符号の説明】
【0046】
1A・1B・1C…地下構造物、2…プレキャストコンクリート側壁、3…プレキャストコンクリート中間柱、2A・3A…鋼杭、2B・3B…仮設鋼材、4(4A〜4C)…プレキャストコンクリート頂版、5…底版、6…間詰めコンクリート、7…プレキャストコンクリート梁、8…プレキャストコンクリート中間壁、16…土留め杭
【技術分野】
【0001】
本発明は、半地下道路トンネル、地下駐車場、駐輪場、共同溝、地下鉄、地下道などの地下構造物の構築方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市再生の一環の事業として、立体道路、駅前地下駐車場・駐輪場などが計画される事例が増えている。この場合、地上とのアクセス性を考慮して深度を浅くした浅層地下構造物となり、施工は経済性等を考慮し開削工法にて構築されることが多い。この開削工法は、図27及び図28に示されるように、掘削エリアの側部に土留め壁50,50を設けた後、これら土留め壁50,50の間に中間杭51,51を設け、掘削を開始し、掘削に伴って腹起し52,52…及び切梁53、53…等の支保部材を設けるとともに、土留め壁50,中間杭51に覆工受桁54を渡し、覆工板55を敷設し地上交通を確保するようにした後、順次深部方向に向かって掘削を行い、所定の掘削を終えた後、掘削空間内に地下構造物の構築を行う工法である。
しかしながら、前記開削工法を採用して地下構造物を構築する場合、地上部に道路交通、ロータリーや歩行者動線がある場合には、切り廻しをかけながら、極力、地上利用を維持しながら工事を進めることとなる。そのため、覆工板の敷設状態を工事完了まで維持しなければならず、当初に作業用地内に埋設されていたライフラインの埋設管の復旧が遅れることになっていた。また、地下構造物の構築後に、覆工板の撤去等地上部の復旧を行わなければならず、地上占用期間が長期に亘り、周辺環境に与える影響が大きいとともに、工事が長期化するなどの問題があった。
【0003】
そこで下記特許文献1では、図29(A)に示されるように、地下構造物60の構築予定地の両側に土留め壁61,61を埋め込み、これらの土留め壁61,61間の地盤を所定の深さまで掘削して土留め壁61,61の上部側を露出させ、この両側の土留め壁61、61における露出された部分にプレキャストコンクリート桁部材62を架設して地下構造物の頂版部を形成し、次いで図29(B)に示されるように、この頂版部の下を掘削して所定深さの掘削穴63を形成した後、図29(C)に示されるように、掘削穴63の底部及び側部に地下構造物の底版部64及び側壁部65を形成し、側壁部65と頂版部62とを結合することにより地下構造物60を構築する地下構造物の構築方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−193495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1記載の地下構造物の構築方法の場合は、下記のような問題点があった。
(1)土留め壁61は通常、仮設材として取り扱われるが、地下構造物本体60の外側に構築しなければならず、施工時占用幅が増大する。
(2)H形鋼や鋼矢板からなる土留め壁61を支持部材として、これら土留め壁61、61間にプレキャストコンクリート桁部材62を架設し支持させるようにしているが、H形鋼や鋼矢板からなる土留め壁61は、基本的には仮設材としての設計であるため、前記プレキャストコンクリート桁部材62の自重を支持させるには、断面寸法が大型化する、或いはアンカーなどの補強工法を併用しなければならないなどの問題が生ずるようになる。
(3)すべての掘削を終えた後に、側壁部分65を現場施工によって構築しなければならないため、施工に多くの手間と時間が掛かるようになる。
(4)前記土留め壁61は仮設材としての取り扱いであるため、工事完了後は撤去することが望ましいが、土留め壁61によって前記プレキャストコンクリート桁部材62を支持させ、この支持させた状態のままで、側壁65の施工を行わなければならないため、躯体完了後に前記土留め壁61を撤去することは困難であり、埋め殺しとなってしまう。
【0005】
そこで本発明の主たる課題は、工事の最初の段階で地下構造物の頂版部分を形成することにより、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化し、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制するとともに、上記問題点を一挙に解決し得る地下構造物の構築方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも両側壁部、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
少なくとも前記両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法が提供される。
上記請求項1記載の本発明においては、工事の最初の段階で、プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させるため、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化でき、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制することが可能となる。
【0007】
また、側壁構築部材として、プレキャストコンクリート側壁を最初に地盤に立て込み、工事中はこれを土留め壁とし、工事完成後は本体構造として利用する。従って、施工時占用幅が増大することがなく、本体構造内の占用で施工が完了する。また、プレキャストコンクリート構造であるため、プレキャストコンクリート頂版を支持するだけの耐力を十分に有することができる。さらに、施工を簡略化でき、施工手間、工費を大幅に削減できるとともに、工期も短縮することができる。側壁部外側に仮設の土留め壁を構築しないため、工事完成後に仮設材が地盤中に残置されることも無くなる。
【0008】
請求項2に係る本発明として、両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
前記両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、側壁の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込むとともに、中間壁又は中間柱の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を地中に建込み、これらスパン間の浅層地盤を掘削除去した後、本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法が提供される。
【0009】
上記請求項2記載の発明は、側壁間に中間壁又は中間柱を有する地下構造物の場合の構築方法である。側壁間に中間壁又は中間柱を有する場合には、側壁間の浅層地盤をすべて掘削した後、プレキャストコンクリート頂版を架設することも可能であるが、この場合は、掘削規模が大きくなり、地上占用期間が長期化することになる。従って、両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、プレキャストコンクリート部材の建込み、浅層地盤の掘削、プレキャストコンクリート頂版の架設、埋戻しによる頂版以浅部分の先行的完成の手順で施工することにより、地上占用期間を短縮化できるようになる。
【0010】
請求項3に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
上記請求項3記載の本発明においては、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱に対して、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を設けるようにしたものである。全根入れ長をプレキャストコンクリート部材とすることも可能であるが、この場合は建込み溝の掘削深さが深くなるばかりでなく、プレキャスト部材費が増し、工期の長期化と施工手間、工費が増す原因となる。従って、下端に複数本の鋼杭を設けることにより、建込み溝を浅くでき、かつこれら鋼杭によって十分な鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗力を確保することができる。
【0011】
請求項4に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、前記第3工程における底版部のコンクリート打設において、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能で、かつ前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続して配筋可能としてある請求項2、3いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0012】
上記請求項4記載の発明においては、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能となるように、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置とするものである。すなわち、各スパンが完全に仕切られていると、底版部のコンクリート打設は各スパン毎に行わなければならず施工が効率化しない。従って、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能とすることにより、底版部を一気にコンクリート打設できるようになる。また、前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続した配筋が可能となり構造の一体化が図れるようになる。
【0013】
請求項5に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備える請求項1〜4いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0014】
上記請求項5記載の本発明においては、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の上面に、上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を設けるようにするものである。浅層地盤の掘削に当たり、土留めを図る必要があるが、予め前記プレキャストコンクリート部材の上面に複数本の仮設鋼材を設けておき、これを土留め壁の支保として活用することにより、撤去時の手間を省力化でき、施工を簡略化できるようになる。
【0015】
請求項6に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設又は剥離剤を塗布してある請求項1〜5いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0016】
上記請求項6記載の発明においては、プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設したり、或いは剥離剤を塗布しておくものである。施工時に前記プレキャストコンクリート部材の表面には、泥水やソイルセメントが付着し汚れるため、工事完成後に前記フィルムを剥がすことにより、或いは剥離材を塗布しておき簡単に洗い流しできるようにしておくことにより、内壁面側を簡単に綺麗に仕上げできるようになる。
【0017】
請求項7に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁同士の接合面及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱同士の接合面において、両者を繋ぐ雄・雌継手を有するとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプを設けておく請求項1〜6いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0018】
上記請求項7記載の本発明においては、プレキャストコンクリート部材の接合面に雄・雌継手を設けておくとともに、前記パイプを建込みガイドとすることにより、プレキャストコンクリート部材を精度良く地盤中に建て込むことが可能になる。また、建込み完了後は、前記パイプを引抜いて止水性を向上させるためのグラウト注入孔として利用することができる。
【0019】
請求項8に係る本発明として、前記両側壁間にプレキャストコンクリート中間柱が配置される場合において、前記プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設した後、これら土留め杭を両側から挟み込むように、前記プレキャストコンクリート中間柱間に2分割構造のプレキャストコンクリート梁を横架し、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する請求項2〜7いずれかに記載の地下構造物の構築方法が提供される。
【0020】
上記請求項8記載の本発明においては、プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設し、これをプレキャストコンクリート中間柱間に横架された2分割構造のプレキャストコンクリート梁で挟むようにし、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する。従って、掘削時には前記土留め杭は土留め支保材として機能させた後、それ以降の状態においては、前記プレキャストコンクリート梁の上に載荷されるプレキャストコンクリート頂版の荷重を前記土留め杭によって支持することが可能となる。なお、前記土留め杭は底版の打設を完了した後は切断によって撤去される。
【0021】
請求項9に係る本発明として、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるプレキャストコンクリート側壁と、プレキャストコンクリート側壁間の上部に設けられたプレキャストコンクリート頂版と、プレキャストコンクリート側壁間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版とからなることを特徴とする地下構造物が提供される。
【0022】
請求項10に係る本発明として、前記プレキャストコンクリート側壁間に、1又は複数のプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を有するとともに、該プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項9記載の地下構造物が提供される。
【0023】
請求項11に係る本発明として、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート側壁又はプレキャストコンクリート中間壁/柱が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、工事の最初の段階で地下構造物の頂版以浅部分を完成させることにより、工事に伴う地上占用規模及び期間を最小化でき、周辺環境への影響を必要最小限度に抑制することができるようになる。
また、従来法のように、側壁にプレキャストコンクリート部材を使用するため施工時占用幅が増大することがなく、かつプレキャストコンクリート構造であるため、プレキャストコンクリート頂版を支持するだけの耐力を十分に有することができる。また、施工を簡略化できるため、施工手間、工費を大幅に削減できるとともに、工期も短縮することができる。さらに、工事完成後に仮設材が側壁外側の地盤中に残置されることも無くなる、などの利点を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔第1形態例〕
図1は地下構造物1Aの横断面図及び平面図、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。
【0026】
図1において、地下構造物1Aは、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるプレキャストコンクリート側壁2,2と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭3Aを備える1又は複数の、図示例では2つのプレキャストコンクリート中間柱3,3…と、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3との間、及びプレキャストコンクリート中間柱3,3間の上部に架け渡されたプレキャストコンクリート頂版4(4A〜4C)と、プレキャストコンクリート側壁2,2間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版5とからなるものである。なお、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部には、路線方向に沿って所定の間隙を空けて、左右一対のプレキャストコンクリート梁7,7が横架され、このプレキャストコンクリート梁7,7を支承台座として前記プレキャストコンクリート頂版4が設置されている。このプレキャストコンクリート梁7の機能については、更に後述する。また、前記プレキャストコンクリート梁7,7の間の空間には、現場打設によって間詰めコンクリート6が充填されている。
以下、具体的に前記地下構造物1Aについて施工順序に従いながら詳述する。
【0027】
(第1工程)
第1工程は、プレキャストコンクリート側壁2,2間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版4を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる工程である。この第1工程について、図4〜図17に基づき詳述する。
先ず、図4に示されるように、側壁構築部位及び中間柱構築部位に、プレキャストコンクリート側壁2、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みのための掘削を行う。掘削は、同図に示されるように、浅層地盤範囲のみとし、鋼矢板10,10と、これら鋼矢板10,10間に横架した切梁11、11…を使用しながら掘削重機12を用いて行う。
【0028】
次に、図5に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2、プレキャストコンクリート中間柱3をそれぞれの部位に建て込む。前記プレキャストコンクリート側壁2は、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材2Bを備えるものを使用し、かつ前記プレキャストコンクリート中間柱3についても同様に、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭3Aを備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材3Bを備えるものを使用する。また、前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設するか、剥離剤を塗布しておくことが望ましい。
【0029】
建込みに当たり、前記プレキャストコンクリート側壁2,2同士の接合面においては、図6に示されるように、両者を繋ぐ雄・雌継手14を設けるようにするとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプ15を設けておくのが望ましい。前記雄・雌継手14及びパイプ15を建込み用ガイドとして使用することにより、精度良く各プレキャストコンクリート側壁2を建込みできるとともに、建込み後に前記パイプ15を引き抜いて、該孔部からグラウト注入を行うことにより接合面の止水を図ることができる。
【0030】
前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3の建込みを終えたならば、切梁11を取り外し、前記仮設鋼材2B、3Bを支保する切梁13に受け替えるようにする。また、プレキャストコンクリート中間柱3,3間には、図7(B)に示されるように、所定の間隔で土留め杭16,16…を設置し鋼矢板10の支保材とする。なお、この土留め杭16は、底版打設完了までは、後述するように、プレキャストコンクリート頂版4の支持杭としても利用されるものである。
【0031】
以上の工程までを終えたならば、図7に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の間の浅層地盤を掘削除去する。掘削深さは、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の頂部を露出させ、次工程のプレキャストコンクリート頂版4を架設可能な程度とする。
【0032】
掘削を終えたならば、図8に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間柱3の間にプレキャストコンクリート頂版4Aを架設する。この際、プレキャストコンクリート側壁2との結合部は、例えば図9(A)に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2の上部にアンカーロッド17を埋設しておくとともに、その上部にネジ式カップラー18を設けておき、前記プレキャストコンクリート頂版4Aを設置した後、前記ネジ式カップラー18の対応位置に予め埋設してあるスリーブ19を通してロッド20を挿入し、ネジ式カップラー18に連結した後、上部を締結するロッド結合方式や、図9(B)に示されるように、施工誤差を吸収するためにプレキャストコンクリート頂版4Aに埋設されたスリーブ21,21内に、プレキャストコンクリート側壁2の上面から突出させた鉄筋22,22を挿入した後、スリーブ21内にモルタルを注入し接合するスリーブ方式等を採用するのが望ましい。前記スリーブ21の内径は、前記鉄筋22の外径よりも若干大きく製作されており、頂版4Aの施工誤差をこの部分で吸収することができる。また、プレキャストコンクリート中間柱3側においては、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部に路線方向に沿ってプレキャストコンクリート梁7を横架し、これを台座として前記プレキャストコンクリート頂版4Aを設置する。プレキャストコンクリート頂版4Aをプレキャストコンクリート側壁2と、プレキャストコンクリート中間柱3の上に載置しながら構造の一体化ができることにより、施工性の向上を図れるようになる。
【0033】
以上、プレキャストコンクリート頂版4Aを設置したならば、図10に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2において、プレキャストコンクリート頂版4よりも上方に突出した仮設鋼材2B部分をガス切断等により撤去した後、プレキャストコンクリート頂版4Aの右側寄り位置に仮設土留め壁30を設置し、埋戻し(道路の場合は路盤含む。)を行い、左側スパン部分の地上占用を開放する。図示例では、地上は車両用道路として使用されている。
【0034】
以上、左側スパン部分の施工を終えたならば、隣接する中間スパン部分の施工に移る。図10に示されるように、隣接する中間柱構築部位を、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みのために掘削し、図11に示されるように、プレキャストコンクリート中間柱3の建込みを終えたならば、切梁11を取り外し、前記仮設鋼材3Bを支保材として、切梁13に受け替えるようにした後、浅層地盤の掘削を行い(図12)、図13に示されるように、前記プレキャストコンクリート中間柱3,3の頂部に路線方向に沿ってプレキャストコンクリート梁7を横架し、これを台座として、プレキャストコンクリート中間柱3間にプレキャストコンクリート頂版4Bを架設する。そして、図14に示されるように、左側プレキャストコンクリート中間柱3において、プレキャストコンクリート頂版4よりも上方に突出した仮設鋼材3B部分と、土留め杭16の突出部分をガス切断等により撤去した後、プレキャストコンクリート頂版4Bの右側寄り位置に仮設土留め壁31を設置し、埋戻し(道路の場合は路盤含む。)を行い、中間スパン部分の地上占用を開放する。
【0035】
この際、前記プレキャストコンクリート頂版4A、4Bとの接合部では、図15に示されるように、プレキャストコンクリート頂版4A、4Bのそれぞれからループ継手21が延出され、プレキャストコンクリート梁7,7の間隙部分に現場打設による間詰めコンクリート6が充填されることにより一体化が図られるようになっている。また、図16に示されるように、左右一対のプレキャストコンクリート梁7,7が、プレキャストコンクリート中間柱3,3間に設置された土留め杭16,16…を挟み込み可能に2分割構造となっており、前記プレキャストコンクリート梁7,7の間隙部分にコンクリート23が充填され、前記土留め杭16,16…との一体化が図られるようになっている。従って、底版部5のコンクリートが打設され、土留め杭16の露出部分(底版よりも上側部分)が撤去されるまでの間は、前記プレキャストコンクリート頂版4A、4Bの荷重が前記土留め杭16,16…によって分担支持されるようになっている。
さらに前述した要領によって、右側スパン部分の頂版部以浅の構造部分を完成させることにより(説明は省略)、図17に示されるように、すべての地上占用が開放されることになる。
【0036】
(第2工程)
上記第1工程により、頂版以浅部分を先行的に完成させたならば、図18に示されるように、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート頂版4によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う。掘削は必要に応じて切梁32、32…によって支保を行い、掘削土砂の排出は、例えば前記プレキャストコンクリート頂版4の一部を開口としておき、バケット(クレーン)により地上まで揚上し、ダンプトラック等により搬出するようにする。
【0037】
(第3工程)
所定深さ(底版部5の構築深さ)までの掘削を終えたならば、図19に示されるように、底版部構築部位にコンクリート24を打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁2,2及びプレキャストコンクリート中間柱3,3との結合及び一体化を図るようにする。例えば、底版部5とプレキャストコンクリート側壁2との結合は、図20に示されるように、プレキャストコンクリート側壁2の下部より底版部側に向けて鉄筋やロッド等の定着筋24、24…を延出しておき、底版部5に配筋される鉄筋33、33…と構造的に接続するようにする。
【0038】
また、底版部5のコンクリート打設に当たっては、プレキャストコンクリート中間柱3の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、打設したコンクリート24がプレキャストコンクリート中間柱3を越えて他のスパンへ流動可能で、かつプレキャストコンクリート中間柱3部でとぎれることなく連続して配筋可能とするのが望ましい。
前記底版部5のコンクリート打設を完了し、底版コンクリートがプレキャストコンクリート側部2及びプレキャストコンクリート中間柱3と完全に結合したならば、図3に示されるように、土留め杭16、16…の露出部分をガス等によって切断して撤去する。
【0039】
後は、最終仕上げとして、前記プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3の内壁面側に対して、予めフィルムを貼設している場合には、これを剥がして綺麗なコンクリート面を露出させる。また、剥離剤が塗布されている場合にはジェットウォーターの噴射やブラシ清掃により泥水やソイルセメント等の汚れを落とすようにする。
【0040】
〔第2形態例〕
上記第1形態例では、中間の仕切り構造部材として、プレキャストコンクリート中間柱3、3を用いた構造としたが、完全にスパン毎に仕切るプレキャストコンクリート中間壁8、8とすることも可能である。図21〜図23はその完成状態を示したもので、図21は地下構造物1Bの横断面図及び平面図、図22は図21のXXII−XXII線矢視図、図23は図21のXXIII−XXIII線矢視図である。
構築手順は前述した第1形態例と基本的には同様であるが、中間仕切り構造部材として、プレキャストコンクリート中間壁8を採用した場合には、土留め杭16,16…が不要になるとともに、プレキャストコンクリート梁7,7が不要になる。従って、同図に示されるように、プレキャストコンクリート中間壁8、8の上面に直接、プレキャストコンクリート頂版4を設置すれば足りる。
また、この場合も、底版部5のコンクリート打設に当たっては、プレキャストコンクリート中間壁8の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、打設したコンクリート24がプレキャストコンクリート中間壁8を越えて他のスパンへ流動可能で、かつプレキャストコンクリート中間壁8部でとぎれることなく連続して配筋可能とするのが望ましい。
【0041】
〔第3形態例〕
上記第1形態例では、プレキャストコンクリート頂版はスラブ構造とし、その上面を埋戻すことにより外部と遮断された地下構造物としたが、図24〜図26に示されるように、頂版部分の一部に外部と連通させたスリット型地下構造物1Cとすることも可能である。
【0042】
図24は本第2形態例に係る地下構造物1Cの横断面図及び平面図、図25は図24のXXV−XXV線矢視図、図26は図24のXXVI−XXVI線矢視図である。
図24において、スリット半地下構造物1Cは、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2Aを備えるプレキャストコンクリート側壁2,2と、前記プレキャストコンクリート側壁2,2間に、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭8Aを備えるプレキャストコンクリート中間壁8と、前記プレキャストコンクリート側壁2とプレキャストコンクリート中間壁8との間の上部に架け渡されたプレキャストコンクリート頂版9と、プレキャストコンクリート側壁2,2間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版5とからなるものである。前記プレキャストコンクリート頂版9は、多数の開口9a、9a…を有する頂版梁9Aと、この頂版梁9Aの上面に設置される頂版スラブ9Bとから構成されることにより、中央部分に頂版梁9Aの開口9a、9a…部分が外部に開放されたスリット部が形成されるようになっている。
【0043】
構築方法は、前述した第1形態例と基本的に同様であるが、この場合も、プレキャストコンクリート中間壁8としているため、土留め杭16,16…が不要になるとともに、プレキャストコンクリート梁7,7が不要になる。従って、同図に示されるように、プレキャストコンクリート中間壁8、8の上面に直接、プレキャストコンクリート頂版4を設置すれば足りる。
前記プレキャストコンクリート頂版4の設置は、先ず頂版梁9Aを設置した後、その上側に、断面L字形状とし起立部を土留め壁とした頂版スラブ9Bを載置し、埋戻しを行い、頂版以浅部分を先行的に完成させるようにする。
【0044】
〔他の形態例〕
(1)上記第1〜第3形態例では、プレキャストコンクリート側壁2,2の間に、プレキャストコンクリート中間柱3や中間壁8を有する地下構造物1A〜1Cとしたが、地下構造物の幅寸法が小さいため、プレキャストコンクリート中間柱3,3…や中間壁8等の中間仕切り構造材を有さず、単にプレキャストコンクリート側壁2,2が対峙する構造の地下構造物としてもよく、かつこの場合も同様の施工手順によって構築することが可能である。
(2)上記形態例では、浅層地盤の掘削を行った後、プレキャストコンクリート頂版4を設置するようにしたが、掘削部の開放が長期に亘る場合には、一旦、覆工版を設置して掘削部を塞ぎ、この覆工版と順次交換しながら、プレキャストコンクリート頂版4を設置するようにしてもよい。
(3)上記形態例においては、プレキャストコンクリート側壁2及びプレキャストコンクリート中間柱3共に、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭2A(3A)を備えるとともに、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材2B(3B)を備えるものを使用したが、前記鋼杭2A(3A)及び仮設鋼材2B(3B)のどちらか一方のみを備えるプレキャスト部材としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る地下構造物1Aを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】地下構造物1Aの構築手順(その1)である。
【図5】地下構造物1Aの構築手順(その2)である。
【図6】プレキャストコンクリート側壁2、2の接合部を示す要部横断面図である。
【図7】地下構造物1Aの構築手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図8】地下構造物1Aの構築手順(その4)である。
【図9】プレキャストコンクリート側壁2と、プレキャストコンクリート頂版4Aとの接合部を示す要部断面図である。
【図10】地下構造物1Aの構築手順(その5)である。
【図11】地下構造物1Aの構築手順(その6)である。
【図12】地下構造物1Aの構築手順(その7)である。
【図13】地下構造物1Aの構築手順(その8)である。
【図14】地下構造物1Aの構築手順(その9)である。
【図15】プレキャストコンクリート頂版4A、4Bの接合部を示す横断面図である。
【図16】プレキャストコンクリート梁7,7の平面図である。
【図17】地下構造物1Aの構築手順(その10)である。
【図18】地下構造物1Aの構築手順(その11)である。
【図19】地下構造物1Aの構築手順(完成状態)である。
【図20】プレキャストコンクリート側壁2の下部と、底版部5との結合部を示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図21】第2形態例に係る地下構造物1Bを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図22】図21のXXII-XXII線矢視図である。
【図23】図21のXXIII-XXIII線矢視図である。
【図24】第3形態例に係る地下構造物1Cを示す、(A)は横断面図、(B)は平面図である。
【図25】図24のXXV-XXV線矢視図である。
【図26】図24のXXVI-XXVI線矢視図である。
【図27】従来の開削工法を示す全体横断面図である。
【図28】その土留め支保及び覆工状態を示す斜視図である。
【図29】特許文献1による地下構造物の構築方法を示す手順図である。
【符号の説明】
【0046】
1A・1B・1C…地下構造物、2…プレキャストコンクリート側壁、3…プレキャストコンクリート中間柱、2A・3A…鋼杭、2B・3B…仮設鋼材、4(4A〜4C)…プレキャストコンクリート頂版、5…底版、6…間詰めコンクリート、7…プレキャストコンクリート梁、8…プレキャストコンクリート中間壁、16…土留め杭
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両側壁部、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
少なくとも前記両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
前記両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、側壁の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込むとともに、中間壁又は中間柱の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を地中に建込み、これらスパン間の浅層地盤を掘削除去した後、本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、前記第3工程における底版部のコンクリート打設において、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能で、かつ前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続して配筋可能としてある請求項2、3いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備える請求項1〜4いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設又は剥離剤を塗布してある請求項1〜5いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項7】
前記プレキャストコンクリート側壁同士の接合面及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱同士の接合面において、両者を繋ぐ雄・雌継手を有するとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプを設けておく請求項1〜6いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項8】
前記両側壁間にプレキャストコンクリート中間柱が配置される場合において、前記プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設した後、これら土留め杭を両側から挟み込むように、前記プレキャストコンクリート中間柱間に2分割構造のプレキャストコンクリート梁を横架し、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する請求項2〜7いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項9】
下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるプレキャストコンクリート側壁と、プレキャストコンクリート側壁間の上部に設けられたプレキャストコンクリート頂版と、プレキャストコンクリート側壁間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版とからなることを特徴とする地下構造物。
【請求項10】
前記プレキャストコンクリート側壁間に、1又は複数のプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を有するとともに、該プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項9記載の地下構造物。
【請求項11】
下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート側壁又はプレキャストコンクリート中間壁/柱。
【請求項1】
少なくとも両側壁部、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
少なくとも前記両側壁部の構築部位に、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込み、これらプレキャストコンクリート側壁間の浅層地盤を掘削除去した後、前記プレキャストコンクリート側壁間に本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱、頂版部及び底版部を有する地下構造物の構築方法であって、
前記両側壁部、両側壁間の中間壁又は中間柱によって仕切られる各スパンを順に、側壁の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート側壁を地中に建込むとともに、中間壁又は中間柱の構築部位には、本体構造となるプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を地中に建込み、これらスパン間の浅層地盤を掘削除去した後、本体構造となるプレキャストコンクリート頂版を架け渡し、埋め戻すことにより頂版以浅部分を先行的に完成させる第1工程と、
前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート頂版によって囲まれた頂版部以深の地盤を掘削し、最終的に底版部の構築深さまでの掘削を行う第2工程と、
底版部構築部位にコンクリートを打設するとともに、前記プレキャストコンクリート側壁及びプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱との結合及び一体化を図る第3工程と、からなることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱の下端面を底版部下面よりも上側位置としておき、前記第3工程における底版部のコンクリート打設において、打設したコンクリートがプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を越えて他のスパンへ流動可能で、かつ前記プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱部で連続して配筋可能としてある請求項2、3いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、頂版部よりも以浅の浅層地盤の土水圧などの側方抵抗のために、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備える請求項1〜4いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート側壁及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、少なくとも内壁面側に対して、フィルムを貼設又は剥離剤を塗布してある請求項1〜5いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項7】
前記プレキャストコンクリート側壁同士の接合面及び/又はプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱同士の接合面において、両者を繋ぐ雄・雌継手を有するとともに、隣接位置に建込み用ガイドを兼用する脱抜可能のパイプを設けておく請求項1〜6いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項8】
前記両側壁間にプレキャストコンクリート中間柱が配置される場合において、前記プレキャストコンクリート中間柱間に所定の間隔で土留め杭を打設した後、これら土留め杭を両側から挟み込むように、前記プレキャストコンクリート中間柱間に2分割構造のプレキャストコンクリート梁を横架し、前記土留め杭とプレキャストコンクリート梁とを結合する請求項2〜7いずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項9】
下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるプレキャストコンクリート側壁と、プレキャストコンクリート側壁間の上部に設けられたプレキャストコンクリート頂版と、プレキャストコンクリート側壁間の下部に設けられるとともに、現場打設コンクリートによって構築された底版とからなることを特徴とする地下構造物。
【請求項10】
前記プレキャストコンクリート側壁間に、1又は複数のプレキャストコンクリート中間壁又は中間柱を有するとともに、該プレキャストコンクリート中間壁又は中間柱は、鉛直支持力及び土水圧などの側方抵抗のために、下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備える請求項9記載の地下構造物。
【請求項11】
下端面より下方側に突出するように複数本の鋼杭を備えるとともに、上端面より上方側に突出するように複数本の仮設鋼材を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート側壁又はプレキャストコンクリート中間壁/柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
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【図28】
【図29】
【公開番号】特開2006−132219(P2006−132219A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323236(P2004−323236)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
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