説明

地下構造物の転落防止用梯子および地下構造物用蓋の受枠

【課題】 着脱が容易で、梯子の起立時に安定した状態で支持固定でき、梯子の係合部が内圧等により容易に外れることのないロック機能を備えた地下構造物の転落防止用梯子およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠を提供する。
【解決手段】 転落防止用梯子1は、一対の支杆6と、この一対の支杆の間に架設された複数本の踏桟7とからなる梯子本体3と、受枠2の内周に形成されているハンドグリップ14を跨いで固定し、梯子本体3の基端部を枢支する梯子固定部4と、受枠2の内周に形成されている梯子係り座13に係止され、梯子固定部4の他方の端部に備えられる係合部5とからなり、この係合部5はばね29の付勢力により常時受枠2内周に係合し、またこの付勢力に抗することで上記係合を離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下構造物の転落防止用梯子およびこの転落防止用梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール蓋などの地下構造物用蓋が、破損や暗渠内の内圧の上昇により飛散することがある。このような破損や飛散等に気づかず、マンホールから暗渠へ転落する事故や、豪雨などの災害時に、冠水した路上のマンホールの蓋が外れ、マンホール下の暗渠へ吸い込まれる危険がある。このような危険防止のための安全対策の必要がある。
また、マンホール内部の点検や清掃等の作業をする際、しばらくの間マンホール蓋を開放した状態にしておく場合がある。この場合、地上にいる人がマンホール蓋が開いていることに気づかず、マンホール内に転落する危険があり、また、マンホール内部で作業する側にも、開放した入り口からの物の落下による事故を防ぐ必要がある。
【0003】
このような問題に対処するため、マンホール蓋を支持するマンホール蓋用受枠に転落防止用梯子が装着される。しかし、この転落防止梯子を既設の受枠に使用する場合、常設型のものは取り外しができないため幅広く用途が望めず、また着脱可能なものは、携帯型の梯子で容易に着脱が可能であるが、梯子を装着したままでは蓋体を閉じることができず、蓋体を閉じる前に必ず梯子を撤去する必要があった。
そこで、マンホール蓋用受枠に着脱可能であり、倒伏時には受枠内に転落防止用の設備として収容できる梯子を得るために、例えばネジやボルト等を用いることなく梯子本体を受枠の一部へ嵌めこんで、ワンタッチで着脱可能とした地下構造物用補助梯子が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、転落防止用梯子を設置した状態でマンホール内に内圧が発生した場合、内圧により梯子自体が押し上げられ、その結果梯子がマンホール蓋を飛散させてしまうことがある。このような内圧による梯子の係合の離脱を防ぐために、梯子と受枠の係合部にロック機能を備えることが望ましい。
このようなロック機能を備えた転落防止用梯子として、例えば、梯子本体の先端側に係合部を設け、梯子本体を水平移動させることで受枠側の凸部に係止および離脱させるもの(特許文献2)や、梯子の固定部側にロック部分にコイルばねを用い、梯子倒伏状態においてロック基部を押圧するのに抗して梯子本体が先端側に押され、該梯子本体の先端が支持部上方の上壁に係合する構成のもの(特許文献3)が開示されている。
【0005】
従来のワンタッチで着脱可能である梯子は設置の手間を省くことはできるが、上記梯子を起立させて昇降のための持ち手として使用する際、梯子を安定して固定支持することが困難である。
また、上記のようなロック機能を備えた梯子では、マンホール内に発生した鉛直上方向への内圧に対しては対応できるが、それ以外の向きの力が梯子にかかると梯子の受枠への係合が自然に離脱するという問題が考えられる。また梯子を支持する固定部側のばねの付勢により他端の支持部で受枠と係合するものでは、梯子を起立させて昇降用の持ち手として使用する際、このばねに鉛直方向の過大な応力がかかりばねが収縮する。このため、長期にわたるばね強度の維持が困難であり、ばねの劣化により係合が自然に離脱するという問題も考えられる。
【0006】
上記のように梯子の受枠への係合は確実であることが必要であるが、一方でマンホール内で作業をする際等、内部の人が作業を終えて地上に出るために梯子のロック機能を解除する場合には、上記の係合の離脱は容易にかつ確実に行なえる必要がある。
【特許文献1】特開2003−336275号公報
【特許文献2】特開2002−38504号公報
【特許文献3】特開2004−293185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、地下構造物用蓋の受枠に着脱可能で設置が容易であり、起立時の梯子が安定性を持って固定され、また受枠との係合部にマンホール内の内圧等により容易に外れることのないロック機能を備えた地下構造物の転落防止用梯子およびこの転落防止用梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地下構造物の転落防止用梯子は、マンホール等の地下構造物用蓋の受枠内に起伏可能に装着できる転落防止用梯子であって、該梯子は、一対の支杆と、この一対の支杆間に架設された踏桟を有する梯子本体と、上記受枠内周に設けられているハンドグリップに対して上記梯子本体の基端部が枢支できる梯子固定部と、この梯子固定部に対向する受枠内周に上記梯子本体の先端部が係合できる係合部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記梯子固定部は、上記ハンドグリップに着脱自在に固定できる固定部本体と、この固定部本体に枢支されるとともに上記踏桟に固定されて上記梯子本体を起立して上下させることにより上記梯子を固定および回転できる梯子本体留め具とを備え、上記固定部本体は該本体を上記ハンドグリップに跨って固定するためのハンドグリップ固定部品と、梯子を取り外す時に上記ハンドグリップ固定部品を受枠内部方向に案内するスライド溝と、上記固定部本体と上記ハンドグリップ固定部品とを固定するガイドボルトと、このガイドボルトを挿入するガイドボルト挿入孔が上記固定部本体の上部から鉛直下方向ならびに受枠内部方向に傾斜を持って設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記係合部は、上記支杆先端部に設けられ、切り欠き孔を支杆の長さ方向に形成してなる爪部材に、スライド部品が前進後退自在に遊嵌して、該爪部材および該スライド部材が上記受枠内周の突出部を挟んで係合するものであり、該爪部材の切り欠き孔およびスライド部品を連結踏桟がばねを介して貫通し、該連結踏桟は上記ばねの付勢力によりスライド部材先端部を爪部材より常時突出させて上記受枠内周に係合し、該付勢力に抗して上記爪部材の切り欠き孔に沿って上記スライド部材を水平移動させて該スライド部材を該爪部材内部に収納して上記係合を離脱させることを特徴とする。
【0011】
本発明の地下構造物用蓋の受枠は、地下構造物用蓋を支持すると共に、上記の転落防止用梯子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の転落防止用梯子は、梯子本体の一端に設けた梯子固定部のため、転落防止用梯子を収容できる地下構造物用蓋の受枠に特別な工具を用いることなく容易に着脱が可能である。
本発明の転落防止用梯子は、梯子を受枠に着脱する際、梯子本体の一端に設けた梯子固定部において、固定部本体上部から挿入されるネジ式のガイドボルトと同じく固定部本体に設けられるハンドグリップ固定部品が、固定部本体内部で螺合し、ガイドボルトを回すことで固定部本体側面に設けられた受枠内部方向に案内するスライド溝に沿って移動し、上記ガイドボルトを緩めることで支持部固定部品を下方向へ押し下げることで上記固定部本体が跨って把持する受枠の支持部を解放し、またガイドボルトを締めることで支持固定部品を上方向へ持ち上げるため、転落防止用梯子が梯子固定部において受枠の支持部を強固に把持し、固定することができる。
また上記ガイドボルトの頭部には持ち手を有するため、特別な工具を用いることなく梯子を受枠に着脱することができる。
【0013】
本発明の転落防止用梯子は、梯子本体の端部に備えられた梯子固定部とは他方の端部に備えられた係合部において、爪部材およびばねを介した連結踏桟により受枠方向へ付勢されたスライド部材が受枠内周を挟んで係合するため、梯子の倒伏時は梯子の受枠内周への係合が確実に行なわれ、地下構造物内に内圧が発生した場合などでも容易に係合が解除されることがない。しかし一方で、簡単な操作により上記の係合を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の転落防止用梯子(以下、梯子ともいう)およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の構造および各部の作動する様態の一例を、図1および図2に基づいて説明する。なお、以下、上記梯子において、「受枠方向」とは、支杆長さ方向の受枠内部から受枠外部への向きを表し、「受枠内部方向」とは上記受枠方向と逆の向きを表す。
【0015】
図1は、本発明の転落防止用梯子およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の平面図を、図2は、転落防止用梯子およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の斜視図をそれぞれ示す。
本発明の転落防止用梯子は、マンホール蓋をはじめとする地下構造物用蓋の受枠に起伏可能および着脱自在に取り付けられるものであり、図1および図2はこの梯子を受枠に設置した状態を示している。
梯子1は、一対の支杆6と、この一対の支杆の間に架設された複数本の踏桟7とからなる梯子本体3と、受枠2の内周に形成されているハンドグリップ14を跨いで固定され、梯子本体3の基端部を枢支する梯子固定部4と、この梯子固定部4に対向する受枠2内周に形成されている梯子係り座13に梯子本体3の先端部が係合できる係合部5とを備えている。
【0016】
図1および図2に示すように梯子本体3は、間隔をあけて配置された一対の支杆6間に竿状の踏桟7が設けられている。踏桟7の本数は特に限定しないが、この踏桟7は梯子本体3を支持し、また梯子が地上にいる人や物の転落を防止するため、3本ないし4本であることが好ましい。また梯子本体3は、地下構造物への昇降の際に持ち手となる部分であるため、支杆6と踏桟7の係止部分は容易に外れることのないよう固定される。
【0017】
梯子1を地下構造物用蓋の受枠2のハンドグリップ14に着脱可能に固定し、また梯子起立時には、ロックをかけて安定した起立状態を保持する、梯子固定部4について説明する。
梯子固定部の構造の一例について、図3、図4および図5に示す。図3は梯子固定部の組立て説明図であり、図4は梯子固定部の斜視図であり、図5は梯子固定部における梯子の着脱の様態を説明する図であり、特に梯子固定部の側面から見た図である。
【0018】
梯子固定部4は、一体成形された固定部本体15を中心として構成される。倒伏状態および起立状態の両方において梯子を安定して支持するためにも、梯子固定部4は一対をなしてハンドグリップ14を跨いで固定することが好ましい。
【0019】
図3に示すように、梯子固定部4の固定部本体15の側面に設けられたスライド溝15cを有する空洞にハンドグリップ固定部品16を受枠側から挿入し、固定部本体側面部のスライド溝15cから固定ネジ17で係止する。続いて、固定部本体上部より固定部本体内部の上記スライド溝15cを有する空洞に通ずるガイドボルト挿入孔15dに、ガイドボルト20を挿入し、ガイドボルト20先端部を上述の固定部本体15に取り付けられたハンドグリップ固定部品16の上部のネジ孔16aに螺合により固定する。上記の構造により、ガイドボルト20を回すことで、ハンドグリップ固定部品16を固定部本体側面のスライド溝15cに沿って鉛直方向および梯子支杆長さ方向に案内することができる。図4に示すように、固定部本体15とハンドグリップ固定部品16の間に受枠2のハンドグリップ14を挟み込んで支持する。
【0020】
梯子1の梯子固定部4を受枠2のハンドグリップ14に装着・固定する方法について説明する。
図5に示すように、固定部本体15を側面側から見ると受枠2のハンドグリップ14に固定される部分の下部は末広がりに開放している。固定部本体15の側面部のスライド溝15cは、下部へいくほど受枠内部方向に、上部へいくほど受枠方向に、それぞれハンドグリップ固定部品16を案内する逆S字溝形状となっている。なお図5において図面上右側が梯子1を受枠2に設置した際の受枠側である。
梯子固定部4の固定部本体15をハンドグリップ14に固定するためには、まず梯子固定部4の固定部本体15上部よりガイドボルト挿入孔15dへ挿入されているガイドボルト20を緩め、このガイドボルト20の先端部に螺嵌されているハンドグリップ固定部品16を、スライド溝15cに沿って最下部まで下ろす。ガイドボルト挿入孔15dは固定部本体15の上部から鉛直下方向ならびに受枠内部方向に傾斜を持って設けられているため、ガイドボルト20はその先端部に固定されているハンドグリップ固定部品16をスライド溝15cの逆S字溝形状に沿って案内することができる。続いて、図5(a)に示すように、固定部本体15下部とハンドグリップ固定部品16の間からハンドグリップ14を挿入し、ガイドボルト20を締めてハンドグリップ固定部品16をスライド溝15cに沿って鉛直上方向へ引き上げることによりハンドグリップ14も引き上げ、ハンドグリップ14上面と固定部本体15を密接して固定する(図5(b)〜(e))。このようにして固定部本体15は受枠2のハンドグリップ14に強固に固定支持される。
反対に、受枠2のハンドグリップ14から梯子1を取り外す場合は、上記のガイドボルト20を緩め、ハンドグリップ固定部品16をスライド溝15cに沿って受枠内部方向に案内して最下部まで下ろし、ハンドグリップ14を開放する。
【0021】
また図4に示すように、固定部本体15の受枠側の面15aは緩い曲面を形成し、受枠2の内周面28に接触することからも、梯子1は受枠2により支持されている。
【0022】
次に、梯子固定部4の、梯子の起立時にロックのかかる部分について説明する。
図3に示すように、固定部本体15の側面に設けられている連結部品固定部21のボス形状凸部に、板状の連結部品22を嵌合させる。連結部品22はふたつの切り欠き孔22a、22bを有し、切り欠き孔22aは踏桟7aを貫通して固定させるためのものであり、切り欠き孔22bは連結部品固定部21のボス形状凸部が嵌合するボス形状の凹部に相当する。梯子固定部4は、連結部品固定部21のボス形状凸部が連結部品の切り欠き孔22bと嵌合し、連結部品22の切り欠き孔22aにおいて踏桟7aが貫通して固定されることで、梯子本体3を支持している。
【0023】
また、固定部本体15の連結部品22を嵌合した側の反対の側面に、梯子本体留め具19を、受枠内部方向に付勢するばね18を介し、支持踏桟23を貫通して固定する。支持踏桟23は、一対の梯子固定部4同士を連結するものである。梯子本体留め具19は先端部に鈎状部19aを有する。ばね18は図3および図4に示すように、一方の端部を梯子本体留め具19の鈎状部19a上面に係止し、支持踏桟23を貫通させて、他方の端部を固定部本体15の上面に掛止する。梯子本体3が倒伏状態にあるときの梯子本体留め具19は、ばね18により受枠内部方向へ付勢された状態で、鉤状部19aを固定部本体15の先端部15bに係止している(図4矢印)。
【0024】
梯子1が倒伏状態から起立状態へ移行する様態の一例を図4および図6に基づいて説明する。図6は、梯子が起立する時の梯子固定部4の作動様態を説明する図である。
倒伏状態の梯子本体3を持ち上げると、固定部本体の連結部品固定部21のボス形状凸部とボス形状凹部である連結部品22の切り欠き孔22bが嵌合している部分を軸にして回転する。同時に踏桟7aが、梯子本体留め具19の鈎状部19aの先端前面部を押し上げる(図6(a))。
梯子本体3が起立位置まで上がると、踏桟7aにより押し上げられた梯子本体留め具19の鈎状部19aが踏桟7aに掛止して固定される(図6(c))。また、ボス形状同士21、22bが嵌合している部分において連結部品固定部21のボス形状凸部の鈎状部分がボス形状凹部である連結部材22の切り欠き孔22bの鈎状部分と咬合して回転が止まる。続いて、踏桟7aに掛止した梯子本体留め具19のばね18による受枠内部方向への付勢力と、梯子1にかかる重力により、切り欠き孔22bの長さを持った部分に沿って連結部品固定部21のボス形状凸部が滑り(図6(b))、連結部品固定部21のボス形状凸部がボス形状凹部である連結部品22の切り欠き孔22bに再度咬合し、梯子本体3の起立は完了する(図6(c))。
梯子起立の完了時に連結部品固定部21のボス形状凸部がボス形状凹部である連結部品22の切り欠き孔22bに咬合していることと、梯子本体留め具19の鉤状部19aが踏桟7aに確実に掛かり支持固定するため、梯子本体3は確実に起立状態で梯子固定部4に固定され、ぐらつきがなく安定な状態で支持される。
【0025】
反対に梯子本体3を起立状態から倒伏状態にする場合は、起立した梯子本体3を鉛直上方向へ持ち上げ、梯子本体留め具19の鈎状部19aを踏桟7aから外し、連結部品固定部21のボス形状凸部の鈎状になった部分を、ボス形状凹部である連結部材22の切り欠き孔22bの鈎状になった部分に咬合させ、固定部本体15の連結部品固定部21のボス形状凸部と連結部品22の切り欠き孔22bが嵌合する部分を軸にして回転させ、梯子本体3を倒伏させる。
【0026】
本発明の転落防止用梯子1が地下構造物用蓋の受枠に係合される部分である係合部5について説明する。係合部5の構造の一例を図7、図8および図9に示す。図7は係合部の組立て説明図であり、図8は係合部の斜視図であり、図9は係合部の実施形態を示す断面図である。
係合部5は、梯子本体3の一対の支杆6の上記梯子固定部4が設けられた一端に対向する先端部に各々設けられる。係合部5は、一対の支杆6のどちらにも左右対称で備えられることが好ましい。
図7に示すように、梯子本体3の支杆6と係合部5の間に連結部材となるS字状に折られた板状の支杆先端部材11を介して爪部材8を有する。支杆6と支杆先端部材11とは各々に設けられた孔に踏桟7cを貫通することで係止し、支杆先端部材11の先端には、爪部材8を受枠側から容易に外れることのないよう固定する。
【0027】
爪部材8は、上部に支杆の長さ方向に突出した爪状の突起を有し、下部にはその側面を貫通して、支杆の長さ方向に長さを持つ切り欠き孔10を形成している。また切り欠き孔10を形成した爪部材8の内部には、支杆の長さ方向に溝を有する空洞部を形成している。この空洞部に、スライド部品9を前進後退自在に遊嵌する。スライド部品9は前端部上面をやや切り欠いた板状の部材で、その側面に切り欠き孔9aを貫通して形成している。連結踏桟12がその両端部を一対の係合部5の上記爪部材8の切り欠き孔10とスライド部材9の切り欠き孔9aを、それぞればね29を介して貫通する。図7および図8に示すように、ばね29はその一端が爪部材8の側面に固定され、かつ他端は連結踏桟12に掛止しており、連結踏桟12を常に受枠方向に付勢する。連結踏桟12は切り欠き孔10に沿って水平移動することで、爪部材8の空洞部の溝に沿ってスライド部材9を水平移動させ、爪部材8の空洞部の入り口よりスライド部材9の先端部を出し入れさせる。
【0028】
ばね29としては、コイルばね、トーションばねなどが使用できる。また、ばね29の設置位置は、上述した爪部材8の外側で連結踏桟12に係る構造でも、爪部材8内部に組み込む構造としてもよい。
【0029】
上記連結踏桟12はばね29により常に受枠方向への付勢力を受けているため、この連結踏桟12は、スライド部材9先端部を爪部材8の空洞部より受枠方向へ常時突出させた状態である。図9に示すように、梯子1を受枠2内で倒伏状態にしておく場合は、爪部材8の爪状の突起とスライド部材9の先端部が、受枠2内周面に突出した梯子係り座13をその上下から挟み込んだ状態で係合させる。したがって、梯子1が地下構造物用蓋の受枠2に設置され倒伏状態にして係合部5を梯子係り座13に係合すれば、たとえ地下構造物内に内圧などの力が発生しても、上記の係合は容易に離脱せず、梯子1が押し上げられることはない。
反対に連結踏桟12をばね29の付勢力に抗して爪部材8の切り欠き孔10に沿って受枠内面側へ水平移動させると、スライド部材9が爪部材8の内部へ後退し、スライド部材9の先端部が爪部材8内へ収納されて、上記ロックは解除され、梯子1を起立状態にすることができる。
【0030】
本発明の転落防止用梯子1の、係合部の別の実施形態の例について説明する。図10は係合部の別の実施形態を示す断面図である。例えば図10(a)に示すように、上記爪部材8の側面の切り欠き孔10の形状は、爪部材8の受枠2側下部に切り欠かれた係止部10aを有するものとしてもよい。また、図10(b)に示すように、切り欠き孔10は断面略h状としてもよい。断面略h状を説明すると、hの形状の鉛直方向に長い方の辺を爪部材8の受枠側とした向きとした形状である。この場合、爪部材8内部に遊嵌されるスライド部材9の切り欠き孔9aは、上記爪部材8のh状の切り欠き孔10の鉛直方向に長い方の辺の溝と略同型であり、上記爪部材8の切り欠き孔10と前記スライド部品9の切り欠き孔9aを貫通してなる連結踏桟12が両切り欠き孔に沿って移動することによりスライド部品9が支杆の長さ方向に水平移動する。どちらの場合においても、係止部10aが設けられることにより、連結踏桟12は、ばね29により切り欠き孔10を受枠側へ付勢されるだけでなく、係止部10aに係止されるため、梯子1の受枠2への係合の不慮の解除がより起こりにくくなる。
【0031】
また、上述の実施形態は、特にトーションばねを使用する例に係るものであるが、例えば爪部材8内部にコイルばねを用いてスライド部材9を受枠方向へ付勢した状態で挿入するような構造などであってもよい。
【0032】
転落防止用梯子1を備えた地下構造物用蓋の受枠2について図1および図2に基づき説明する。
地下構造物用蓋の受枠2は、筒状体である枠24に、マンホール蓋等の地下構造物用蓋を嵌合により支持する内周面28と、その上縁外側より鉛直下方向に有する外周面25と、この外周面25の下部に受枠外方向に向けて形成されたフランジ26とを備えている。
枠24の内周面28は、地下構造物用蓋を嵌合するために受枠直径内側方向にリブを有する。蓋の嵌合を容易にするために、枠24の上縁部より受枠内部下方向にややテーパ状に傾斜をつけてもよい。
枠24の内周面28には、梯子1の上記梯子固定部4を取り付けるための一対のハンドグリップ14が備えられる。梯子1を受枠2に設置する際、上記梯子固定部4の固定部本体15がハンドグリップ固定部品16を把持して受枠2に梯子1が固定される。安定して固定されるために、ハンドグリップ14の上面の形状は、固定部本体15のハンドグリップ14と接合する部分と同じ形状であることが好ましい。
【0033】
また枠24の内周面28の、ハンドグリップ14が形成されている側の向かいの面に、梯子1の上記係合部5を取り付けるための、一対の梯子掛り座13が備えられる。梯子掛り座13は、係合部5の爪部材8の爪部分とスライド部品9の先端部が上下から枠24の内周面28より枠内側に突出したリブの一部で厚みを持った部分を挟み込むような形で、かつその挟み込む部分に側面部を備えたものである。この梯子掛り座13の側面部は、爪部材8およびスライド部品9が水平方向にずれることで梯子係り座13より離脱することを防ぐためのものである。図8に梯子掛り座13の構造の一例を示す。
【0034】
枠24の外周部下部に形成されるフランジ26には、受枠2を固定するためのボルト孔27が設けられている。ボルト孔27は受枠2の円中心より放射状に、フランジ26の周縁部より内側に複数個設けられる。受枠2は上記ボルト孔26にボルトを用いて地下構造物の入り口に設置する。
また、本発明の転落防止用梯子1を備えた地下構造物用蓋の受枠2は、特に作業者が出入りできる大きさのマンホール蓋を支持する受枠に好適に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
工具を用いることなく地下構造物用蓋の受枠に着脱可能な転落防止用梯子であるため、特に落下物の回収が困難である深い地下構造物に好適に架設することができる。また、梯子固定部が強固に受枠のハンドグリップを把持固定し、梯子を起立状態にしたときに確実にロックがかかるため、安定して支持された梯子を昇降に使用できる。
さらに、倒伏時は梯子の係合部において確実に受枠に係合しているため、梯子が内圧によりその上にある地下構造物用蓋を持ち上げて飛散させることがないため、特に内圧の発生しやすい地下構造物に好適に架設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の転落防止用梯子およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の平面図である。
【図2】転落防止用梯子およびこの梯子を備えた地下構造物用蓋の受枠の斜視図である。
【図3】梯子固定部の組立て説明図である。
【図4】梯子固定部の斜視図である。
【図5】梯子固定部における梯子の着脱の様態を説明する図である。
【図6】梯子が起立する時の梯子固定部の作動様態を説明する図である。
【図7】係合部の組立て説明図である。
【図8】係合部の斜視図である。
【図9】係合部の実施形態を示す断面図である。
【図10】係合部の別の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 転落防止用梯子
2 受枠
3 梯子本体
4 梯子固定部
5 係合部
6 支杆
7 踏桟
8 爪部材
9 スライド部品
10 切り欠き孔
11 支杆先端部材
12 連結踏桟
13 梯子係り座
14 ハンドグリップ
15 固定部本体
16 ハンドグリップ固定部品
17 ボルト
18 ばね
19 梯子本体留め具
20 ガイドボルト
21 連結部品固定部
22 連結部品
23 支持踏桟
24 枠
25 外周面
26 フランジ
27 ボルト孔
28 内周面
29 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物用蓋の受枠内に起伏可能に装着できる転落防止用梯子であって、
該梯子は、一対の支杆と、この一対の支杆間に架設された踏桟を有する梯子本体と、前記受枠内周に設けられているハンドグリップに対して前記梯子本体の基端部が枢支できる梯子固定部と、この梯子固定部に対向する受枠内周に前記梯子本体の先端部が係合できる係合部とを備え、
前記梯子固定部は、前記ハンドグリップに着脱自在に固定できる固定部本体と、この固定部本体に枢支されるとともに前記踏桟に固定されて前記梯子本体を起立して上下させることにより前記梯子を固定および回転できる梯子本体留め具とを備え、前記固定部本体は該本体を前記ハンドグリップに跨って固定するためのハンドグリップ固定部品と、梯子を取り外す時に前記ハンドグリップ固定部品を受枠内部方向に案内するスライド溝と、前記固定部本体と前記ハンドグリップ固定部品とを固定するガイドボルトと、このガイドボルトを挿入するガイドボルト挿入孔が前記固定部本体の上部から鉛直下方向ならびに受枠内部方向に傾斜を持って設けられており、
前記係合部は、前記支杆先端部に設けられ、切り欠き孔を支杆の長さ方向に形成してなる爪部材に、スライド部品が前進後退自在に遊嵌して、該爪部材および該スライド部材が前記受枠内周の突出部を挟んで係合するものであり、該爪部材の切り欠き孔およびスライド部品を連結踏桟がばねを介して貫通し、該連結踏桟は前記ばねの付勢力によりスライド部材先端部を爪部材より常時突出させて前記受枠内周に係合し、該付勢力に抗して前記爪部材の切り欠き孔に沿って前記スライド部材を水平移動させて該スライド部材を該爪部材内部に収納して前記係合を離脱させることを特徴とする転落防止用梯子。
【請求項2】
地下構造物用蓋を支持すると共に転落防止用梯子を備えた受枠であって、前記転落防止用梯子が請求項1記載の転落防止用梯子であることを特徴とする地下構造物用蓋の受枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−261136(P2008−261136A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104144(P2007−104144)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(591275850)株式会社ホクキャスト (3)
【Fターム(参考)】