説明

地下構造物用デザイン鉄蓋

【課題】従来の製品と比較して、格段にデザイン効果を高めるとともに衆人の目を引き付けることができるスリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋を提供する。
【解決手段】スリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋として、鉄蓋本体11の表面に凹凸構造より成るスリップ防止手段を具備し、上記凹凸構造の一部又は全部を取り囲み、かつ、取り囲まれた凹凸構造を構成している凸部12′の上面よりも高い位置に上端面が位置する縁取り部15を鉄蓋本体の表面に形成し、その内側に沿って上記凹凸構造を構成している凸部の上面と同じ高さの段部17を設け、縁取り部で囲まれた領域をデザインシールの貼り付け面18とし、上記デザインシール20は、これを上記凸部の上面及び段部に貼り付けて固定したときに、デザインシールの表面が縁取り部の上端よりも低い位置に止まる厚さを有し、かつ、表面に滑り止め手段21を有しているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンホール蓋などの地下構造物用鉄蓋は、水に濡れた場合、表面の摩擦係数がアスファルト路面に対して相対的に低下した状態となり、二輪車や歩行者が転倒する原因になることがある。そのため、鉄蓋表面にスリップ防止手段として凹凸構造から成る滑り止め模様を設けており、さらに効果を高めるために凹凸自体の構造や柄模様等を工夫したり、滑り止め塗装を施したりといった対策が講じられ、或いはセラミックを混合したカラー樹脂を鉄蓋表面に溶射しカラー鉄蓋のデザイン性とスリップ防止効果の両立を図ることなども行われている。後者の対策には、地下構造物用鉄蓋にデザイン性を追求しようという方向性を見出すことができるが、実際にデザイン化の促進を図ろうとすると、セラミックを混合したカラー樹脂の溶射や着色樹脂充填後の滑り止め塗装などでは、表現できる内容に限界があることが分かる。
【0003】
これに対して、特開平6‐158674号では蓋本体に支持され、表面が所要の図画で化粧された表層部を着脱可能に設け、表層部を交換可能としたマンホール等の化粧蓋を開示している。しかし、蓋本体そのものの表面に凹凸構造など滑り止め手段は何も設けられておらず、表層部の表面にセラミックまたは適当な樹脂層を形成して耐スリップ性を付与すると記載されているけれども、表層部が剥がれて露出した場合には濡れれば勿論のこと濡れなくても滑る危険がある。また、特開2002‐188169号は広告機能を備えたマンホール蓋を開示し、外面(表面)に設けた所定サイズの凹部に広告媒体を脱着自在に嵌め込み固定するという構成を提案している。これは広告媒体であるネオン管装置、ホログラム画像、液晶画像、LED発光装置、ブラウン管装置の何れかまたはそれらの組み合わせ装置を、凹部に嵌め込むことを特徴とするものであるが、駆動電源が必要である上に高価であり、電気的なメンテナンスを必要とする特殊設備と判断される。特開2009‐24385号は上面に滑り止め用の凹凸構造が形成される桝又はマンホール用の蓋において、その上面にカラー印刷層を形成したことを特徴とするもので、カラー印刷層はインクジェットプリンターによって蓋上面に直接印刷される。しかし、蓋上面には滑り止め用の凹凸構造が形成されており、蓋の上面に直接印刷された画像が凹凸構造によって乱されたり歪んだりするため、デザイン性が損なわれるほか、使用後に摩耗したときには鉄蓋を取り外して作業所まで運び、再度印刷する必要があり手間が掛かる。
【0004】
上記3件の従来の技術の中では、最後に挙げた直接印刷するタイプが最も実用に適するように見えるが、しかし、蓋上面のカラー印刷層が凹凸構造に及ぶことが問題になるものと考えられる。例えば、インクジェットプリンターは凹凸構造の全てに対してインクを吹き付けることになるが、実際に見える模様は凸部の上面が主である。そうであるにも拘らず、凸部上面以外の見えない部分にも印刷がされてしまうとすれば、インクの使用量も余分に必要になることを指摘しなければならない。しかも、摩耗するのは凸部の上面だけでそれ以外の部分は摩耗しないから、蓋上面の印刷は摩耗するところとしないところに分かれ、経時的には模様のまだら化が進行して非常に見難くなる点も推測することができる。また、凹凸構造は滑り止め機能を持つとはいっても、凹凸構造の上面がカラー印刷層で覆われた場合には、当然インクの性質によって滑りにくさが左右されることになる。しかしながら、この問題については何ら論じられておらず、安全上の対策が十分であるとはいえない面がある。
【0005】
【特許文献1】特開平6‐158674号
【特許文献2】特開2002‐188169号
【特許文献3】特開2009‐24385号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題はセラミックを混合したカラー樹脂等を充填していた従来の製品と比較して、格段にデザイン効果を高めるとともに衆人の目を引き付けることができるスリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋を提供することである。また、本発明の他の課題は地下構造物用デザイン鉄蓋において、表面が水に濡れたり、デザインシールが剥がれたりした場合でも、二輪車や歩行者の転倒原因を作らないようにすることである。また、本発明の他の課題はデザインシールの交換によって、劣化によるスリップ防止やデザイン変更などの要求に応じられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、スリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋について、鉄蓋本体の表面に凹凸構造より成るスリップ防止手段を具備し、上記凹凸構造の一部又は全部を取り囲み、かつ、取り囲まれた凹凸構造を構成している凸部の上面よりも高い位置に上端面が位置する縁取り部を鉄蓋本体の表面に形成し、上記縁取り部に沿った内側に上記凹凸構造を構成している凸部の上面と同じ高さの段部を設けるとともに、縁取り部で囲まれた領域をデザインシールの貼り付け面とし、上記デザインシールは、これを上記凸部の上面及び段部に貼り付けて固定したときに、デザインシールの表面が縁取り部の上端よりも低い位置に止まる厚さを有し、かつ、表面に滑り止め手段を有するものとするという手段を講じたものである。
【0008】
本発明はスリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋を前提とし、スリップ防止のために凹凸構造を鉄蓋表面に形成し、これを以って基本的なスリップ防止手段としている。従って、表面に凹凸構造による模様のあることが本発明の鉄蓋の対象であり、それ以外のものは対象外である。凹凸構造には従来から工夫改良が施され様々な種類や形態があるものの、これまでの凹凸構造は滑り止めを目的とする場合と図案による視覚効果を目的とする場合のどちらか又はそれらの組み合わせである。これに対して本発明では、後述するように接着面積を確保してデザインシールを固定するために必要な性能を満足するという新たな目的が加わる。
【0009】
本発明においては、凹凸構造を鉄蓋本体の表面のほぼ全面に設けるものである。上記凹凸構造の一部又は全部を取り囲み、かつ、その上端面が上記凹凸構造を構成している凸部の上面よりも高い位置に位置する縁取り部を鉄蓋本体の表面に形成し、取り囲まれた凹凸構造を構成している凸部の上面を平坦な接着面とする。ここにおいて、凹凸構造の一部を取り囲む縁取り部とは、縁取り部によって囲まれる領域が鉄蓋本体の表面の一部である場合であり、また、凹凸構造の全部を取り囲む縁取り部とは、縁取り部の囲む領域が鉄蓋本体の表面全面である場合である。
【0010】
上記縁取り部に沿った内側に、凹凸構造を構成している凸部の上面と同じ高さの段部を設けるとともに、縁取り部で囲まれた領域に存在する凸部の上面をデザインシールの貼り付け面とする。貼り付けたデザインシールは周縁から剥がれ易いものであるけれども、縁取り部で囲まれた領域にデザインシールを貼り付けることによって、周縁を囲む上記縁取り部によって外力から周縁部を保護することができる。その際、縁取り部の上端面が上記凹凸構造を構成している凸部の上面よりも高い位置に位置するので、デザインシール周縁部分に対する保護効果をより高めることができる。
【0011】
従って、上記デザインシールは、これを上記凸部の上面及び段部に貼り付けて固定したときに、デザインシールの表面が縁取り部の上端よりも低い位置に止まる厚さを有している。シール自体は、その上面が二輪車などのタイヤや靴底等で擦られるものであるから、簡単には疲弊しない強度と耐久性を持ち、かつ、剥がれないように接着されていること、さらには汚れや粘着性物質の付着し難いことが求められ、環境に悪影響を及ぼさないことなども必要である。このようなデザインシールのシール材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルミ箔などが適している。また、デザインシールは、接着面相互の接着に適した、例えば合成ゴムより成る接着剤を用いて鉄蓋表面に固定する。
【0012】
デザインシールに施されるデザインは、印刷によって形成された写真や繊細な描写、図柄、文字、数字などから成るものであることが望ましい。写真、図柄、標識、名所や道筋などの案内、広告或いはPRなどが、デザインのモチーフとして想定されるが、何をどのように表示するかは設置者とスポンサーなどが相談によって自由に取り決めるべき事項である。デザインシールは、その表面に付着させたセラミック骨材、デザインシールにエンボス加工したエンボスの何れか一方又は両方を備えた微小凹凸構造を滑り止め手段として備えていることも、また、望ましい要件である。セラミック骨材は砂状のものをシール表面に付着させて形成することができ、エンボスはシール製造時または印刷時に形成することができる。
【0013】
縁取り部で囲まれた貼り付け面に固定されているデザインシールの表面に溜まった水分を排水するために、溝底がデザインシールとほぼ同じ高さとなる排水溝を縁取り部に設けることが有効である。前記縁取り部の排水溝は溝部の凹みによってできる角がスリップ防止効果を同時に奏するという利点も兼ね備えている。また、スリップ防止手段を構成している凹凸構造の凸部は、凹部からの凸部の上面までの高さに対して著しく広い平坦面と方向性を有する模様要素を有し、この模様要素はその方向が交叉する配置を取ることは、デザインシールの接着面積を確保しつつスリップ防止効果を維持するために望ましい構成である。模様要素の1個の形態として、後述する実施形態の如く平面形状がまゆ型或いは長円形、楕円形のような曲線の形態を取ることは、方向性を持つので交叉配置によってスリップ防止効果を高めるものであり、かつ、外力を集中させないため耐久性を向上する上で有効である。
【0014】
縁取り部について、これが鉄蓋表面における凹凸構造の一部を取り囲んでおり、上記凹凸構造は模様要素によって構成され、かつ、縁取り部の内側のデザインシールの貼り付け面における模様要素の分布密度の方が縁取り部の外側よりも密に配置され、縁取り部の内側の凹部が外側よりも浅く設定されている構成は凸部上面の面積が増すものであり、デザインシールの固定力強化のために有効である。模様要素の分布に疎密の差を設けたのは接着面積増大と、凸部間の間隔を狭めるためであって、摩擦係数は相対的に疎である縁取り部の外側の密度で十分に達成されている。また、前述した縁取り部によって囲まれる領域が鉄蓋本体の表面の一部である場合には、凸部間の間隔を狭めるとともに、縁取り部の内側における凹凸構造の凹部は浅く、つまり、縁取り部の外側における凹凸構造の凹部の高さよりも高い位置に設定されているので、砂利や傘の石突等によってデザインシールが突き破られる恐れを減少させることができる。鉄蓋表面に設ける凹凸構造として、以上のデザインシールの貼り付け面となる上面を有するものについて説明したが、これに止まらず例えばデザインシールの接着にはほとんど寄与しないが滑り止め効果を向上させるピン状の凸部を併せ設けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように印刷によって形成されたデザインシールを縁取り部の内側に貼り付けて固定するという構成を有するものであるから、従来のセラミックを混合したカラー樹脂等を充填していた製品と比較して、格段にデザイン性能を高めるとともに衆人の目を引き付けることができるスリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、鉄蓋本体の表面に凹凸構造より成るスリップ防止手段を具備しているため、水に濡れたり、デザインシールが剥がれたりした場合でも、取り囲まれた凹凸構造による摩擦力が得られ、鉄蓋本体表面全体としてのスリップ防止効果が維持されるので、二輪車や歩行者の転倒原因を作らないようにすることができる。また、本発明によれば、劣化によるスリップ防止やデザイン変更などの要求に対してデザインシールの交換によって応じることができ、保守や貼り変えを大変容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明のスリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋10の例1を示しており、鉄蓋本体11の平面形状は円形であり、その表面のほぼ全面にスリップ防止手段として、凸部12と凹部14ら成る凹凸構造を有している。図1乃至図7に示した例は縁取り部15によって囲まれる領域が鉄蓋本体11の表面の一部である場合であり、縁取り部15の外側と内側において凸部12の形態を変えているので、縁取り部15の内側の凸部12については符号にダッシュ「′」を付けて区別する。そして、上記凸部12′は、接着面積を十分に確保してデザインシール20を固定するために必要な性能を満足する形態として、まゆ型の平面形状を有しているものである。
【0017】
上記凸部12′は、デザインシール20の接着面積を確保するために凹凸構造の凹部
14′の底から凸部12′の上面までの高さに対して著しく広い平坦面と方向性を有する模様要素として、何れもまゆ型の平面形状を有している(図2、図3参照)。まゆ型の平面形状は、長円形、楕円形のような曲線の形態と同様に方向性を持つため、交叉配置によってスリップ防止効果を高めることができるものであり、かつまた、外力を集中させないため、デザインシール20に対する耐久性の向上にも寄与する。図示の凸部12、12′は、まゆ型の平面形状を横断する方向に設けられた細溝13、13′を有しており、凸部12、12′の面積をほとんど減少させることなく、滑り止め効果を増すように図っている(図4参照)。
【0018】
上記縁取り部15の内側のデザインシール20の貼り付け面においては、模様要素であるまゆ型の凸部12′の分布密度が縁取り部15の外側の凸部12よりも密に配置され、かつまた、縁取り部15の内側の凹部14′の方が外側の凹部14よりも浅く設定されている(図2乃至図5)。凸部12、12′の分布に疎密の差を設けたのは、デザインシール20に対する接着面積増大と、凸部間の間隔を狭めて凹部14′、14′・・・に異物が介在する可能性を低下させるためである。なお、摩擦係数は相対的に分布密度が疎である縁取り部15の外側の密度で十分に達成できるように設定されている。前述した如く凸部12′、12′・・・の間の間隔を狭め、かつまた、縁取り部15の内側における凹凸構造の凹部14′は外側における凹部14よりも浅く形成したので、砂利や傘の石突等によってデザインシール20が突き破られる恐れを著しく減少させることができる。
【0019】
鉄蓋表面に設ける凹凸構造として、デザインシール20の貼り付け面18となる上面を有する上記の凸部12′、12′・・・の他にも、デザインシール20の接着のためというよりも滑り止め効果を向上させるためにピン状の凸部16、16′を、縁取り部15の内外両部分に併せ設けている。図示の例におけるピン状の凸部16、16′は、何れも凸部12、12′を交叉配置することによって生じたスペースに位置している。これを、ピン状の凸部16、16′を中心に見た場合には、凸部16、16′の周りに4個の凸部
12、12、12′、12′が回転対称に配置された形態になる。なお、縁取り部15の内側の領域では凹凸構造の凹部14′が縁取り部15の外側における凹部14よりも浅く形成されているため、縁取り部15の内側の領域におけるピン状の凸部16′は、縁取り部15の外側におけるピン状の凸部16よりも低くなるが、これは上記凸部12、12、12′、12′についても同様である。
【0020】
上記縁取り部15に沿った内側の基部には、凸部12′の上面12a′と同じ高さの段部17を設け、かつまた、縁取り部15で囲まれた領域の全域をデザインシール20の貼り付け面18とする。縁取り部15で囲まれた領域にデザインシール20を周縁のほぼ全域で貼り付けることによって、貼り付けたデザインシール20が周縁から剥がれるのを防止するものである。さらに、デザインシール周縁部分に対する保護効果を高めるように、縁取り部15の上端面15aが凸部12′の上面12a′よりもやや高い位置に位置する
設定とする。さらに、上記貼り付け面18に固定されているデザインシール20の表面に溜まった水分を排水するために排水溝19を縁取り部15に設ける。排水溝19の溝底はデザインシール20とほぼ同じ高さで良いが、流出側が低くなるように傾斜させる。
【0021】
一例を挙げると、縁取り部15の外側における凹部14の深さd1は約6mmであり、この場合における縁取り部15の高さは外側の凸部12と同高で、縁取り部15の内側における凹部14′の深さd2は約3mm、同じく内側の凹部14′の底からの凸部12′の高さd3は約2mm、デザインシール20の厚さtは0.6mmである。故に、デザインシール20を上記凸部12′の上面12a′及び段部17に貼り付けて固定したときには、デザインシール20の表面が縁取り部の上端よりも低い位置に止まる(図6参照)。
【0022】
シール自体は、その上面を通過する二輪車などのタイヤや靴底で擦られたときに、容易に疲弊しない強度と耐久性を持つシール材によって形成し、かつまた、剥がれないように貼り付け面に接着する。図示の例では、デザインシール20のシール材として、ポリウレタン樹脂に、インクジェットプリンターを用いて直接印刷したものを使用しており、これによって汚れや粘着性物質の付着し難く、環境に悪影響を及ぼさないという利益を得ている。このような、デザインシール20は、接着面である鉄蓋本体11の表面とシール材の相互の接着に適した、合成ゴムより成る接着剤を用いて鉄蓋表面に固定する。
【0023】
デザインシール20には、印刷によって形成された写真や繊細な描写、図柄、文字、数字などから成るデザインを施すとより効果的である。図示の例は、バラの花の写真をカラー印刷したデザインシール20を貼り付け面18に接着した状態を示しており、これ以上のものを望むことができない精密描写が写真を印刷したデザインシール20によって可能になる。本発明においては、あらゆる種類の写真、図柄、標識、名所や道筋などの案内、広告或いはPRなどをデザインのモチーフとしたデザインシール20を製作し、それを鉄蓋本体11に取り付けた地下構造物用デザイン鉄蓋10を実用に供することができる。
【0024】
デザインシール20は、その表面に付着させたセラミック骨材や、或いはデザインシール20にエンボス加工して形成したエンボスの何れか一方又は両方を備えた微小凹凸構造21を滑り止め手段として有している(図6、図7参照)。セラミック骨材は砂状のものをシール表面に付着させて形成し、また、エンボスはシール製造時または印刷時に形成されている。
【0025】
このように構成されている例1の本発明の地下構造物用デザイン鉄蓋10は、例えば、図1に示した外観を有するものとなり、デザインシール20を半分だけ図示し、貼り付け面18を併せて図示したものが図3である。地下構造物用デザイン鉄蓋10の表面全面には、上記のようにスリップ防止手段として凹凸構造が設けられており、かつまた、縁取り部15で囲まれた領域にはデザインシール20が張り付けられ、また、その表面に滑り止め手段が設けられている。従って、本発明の地下構造物用デザイン鉄蓋10の表面を二輪車や靴などが通過した場合にも、適切な摩擦力が作用するのでタイヤが滑ったり足を取られたりすることはなく、水に濡れた場合でも、表面の摩擦係数がアスファルト路面に対して急激に低下した状態となることもない。
【0026】
即ち、靴22について見ると、通行人は靴底で鉄蓋本体11の表面の鋳造された凹凸構造であるスリップ防止手段と、そこに接着されたデザインシール20を踏んで抵抗力を得ながら通過する。その際に靴底は縁取り部15よりも外側の領域では凸部12と凹部14から成る凹凸構造を踏み、内側の領域ではデザインシール20の微小凹凸構造21を踏
み、夫々上記の摩擦力を得る。図7に示した状態である。デザインシール20は靴底によって常に擦る力が作用するが、本発明においてはデザインシール20の表面よりも縁取り部15がやや高い位置関係に置かれており、剥がれ易い周縁部分は縁取り部15の内側の段部17に接着されているため、万全の保護の下にあり周縁から剥がれる恐れはない。また、傘の石突等でデザインシール20が突かれた場合、縁取り部15の内側における凸部12′の間隔は約2〜3mmと狭く設定されているので、突き刺さる恐れは少ない。
【0027】
使用中の降雨等によってデザインシール表面に水に濡れる状態になると、水は縁取り部15に形成されている排水溝19から随時排水されるので、僅かな量は残るが水の溜まる状況となる恐れはない。また、使用後長期間を経れば、デザインシール20の印刷が摩損したり、部分的に剥がれたりすることも考えられるが、取り囲まれた凹凸構造によるスリップ防止効果が得られるので安全性が損なわれることはなく、また、そのようにして耐用時間を迎えたときには、デザインシール20を剥がして交換することになる。
【0028】
図1乃至図7に示した上記の例1は縁取り部15によって囲まれる領域が鉄蓋本体31の表面の一部である場合であるが、これに対して、本発明は縁取り部の囲む領域が鉄蓋本体の表面全面である場合を含む。そこで、地下構造物用デザイン鉄蓋30の例2を図8乃至図10に示す。図8以下に示した例2も鉄蓋本体31の平面形状は円形であり、その表面のほぼ全面にスリップ防止手段として凸部32と凹部34から成る凹凸構造及びピン状の凸部36を有している(図9)。上記凹凸構造などの全部を取り囲む縁取り部35は、円形の鉄蓋本体31の外周の縁部分を取り囲んでおり、図示のものは一定の幅を有するリング状のもので、その内側の基部には、凸部32の上面と同じ高さの段部37を設け(図4の段部17、貼り付け面18等を参照のこと)、縁取り部35で囲まれた領域の全域をデザインシール20の貼り付け面38としている。また、リング内部の円周方向と放射方向に夫々排水溝39a、39bが形成されている。排水溝39a、39bは相互に通じており、放射排水溝39bは外側が低く傾斜している。
【0029】
そして、縁取り部35の上端面はそれによって取り囲まれた凹凸構造の凸部32の上面よりも高い位置に位置すること、上記凸部32は、デザインシール40の接着面積を確保するために凹凸構造の凹部34の底から凸部32の上面までの高さに対して著しく広い平坦面と方向性を有するまゆ型の模様要素を有していること、この模様要素を交叉配置することによってスリップ防止効果を高めること、凸部32はまゆ型の平面形状を横断する方向に設けられた細溝33を有していて、凸部32の面積を損ずることなく、滑り止め効果を増すこと、などは前記の例1と同様である(例1に関する図2乃至図5参照のこと)。また、まゆ型の凸部32の分布密度は、縁取り部35の内側であるから例1における内側と同じく密に設定されている。デザインシール40についても、その表面に付着させたセラミック骨材や、或いはデザインシール40にエンボス加工して形成したエンボスの何れか一方又は両方を備えた微小凹凸構造を滑り止め手段として有するものとする(図6、図7参照)。
【0030】
このように構成されている本発明の例2において、地下構造物用デザイン鉄蓋30の表面を二輪車や靴などが通過した場合に、適切な摩擦力が作用するのでタイヤが滑ったり足を取られたりすることはなく、水に濡れた場合でも、表面の摩擦係数がアスファルト路面に対して急激に低下した状態となることもない。なお、デザインシール40を半分だけ図示し、貼り付け面38を併せて図示したものが図10であるが、仮にこのように表面の模様及び凹凸構造が急激に変わる状態を想定しても、本発明の場合、摩擦係数は急激に変化しないと考えて良い。
【0031】
本発明は上記のように構成されており、これによって所期の効果を発揮するものであるが、鉄蓋本体表面における凹凸構造の一部又は全部にデザインシール20、40を設けることによる効果の差異として、一部に設ける場合は、鉄蓋の存在が分かり易いこと、デザインシール20、40の形状を円形、4角形その他の多角形、或いは不定形等自由に選択できること、そしてコストも抑制可能であることなどを挙げることができる。これに対して、全面に設ける場合には、例えばそこに鉄蓋があることすら認識させない意外性を期待することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る地下構造物用デザイン鉄蓋の例1に関する上面図である。
【図2】同上におけるデザインシール接着前の鉄蓋本体表面を示す上面図である。
【図3】同じくデザインシール接着前後の鉄蓋本体表面を比較した上面図である。
【図4】デザインシール接着前の凹凸構造の拡大図で、Aは平面図、Bは断面図である。
【図5】デザインシール接着後の凹凸構造の拡大図で、Aは平面図、Bは断面図である。
【図6】同じく凹凸構造の寸法関係を示す拡大図である。
【図7】同じく使用状態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る地下構造物用デザイン鉄蓋の例2に関する上面図である。
【図9】同上におけるデザインシール接着前の鉄蓋本体表面を示す上面図である。
【図10】同じくデザインシール接着前後の鉄蓋本体表面を比較した上面図である。
【符号の説明】
【0033】
10、30 地下構造物用デザイン鉄蓋
11、31 鉄蓋本体
12、12′、32 凸部
13、13′、33 細溝
14、14′、34 凹部
15、35 縁取り部
16、16′、36 ピン状の凸部
17、37 段部
18、38 貼り付け面
19、39a、39b 排水溝
20、40 デザインシール
21 微小凹凸構造
22 靴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリップ防止効果を有する地下構造物用デザイン鉄蓋であって、
鉄蓋本体の表面に凹凸構造より成るスリップ防止手段を具備し、
上記凹凸構造の一部又は全部を取り囲み、かつ、取り囲まれた凹凸構造を構成している凸部の上面よりも高い位置に上端面が位置する縁取り部を鉄蓋本体の表面に形成し、
上記縁取り部に沿った内側に上記凹凸構造を構成している凸部の上面と同じ高さの段部を設けるとともに、縁取り部で囲まれた領域をデザインシールの貼り付け面とし、
上記デザインシールは、これを上記凸部の上面及び段部に貼り付けて固定したときに、デザインシールの表面が縁取り部の上端よりも低い位置に止まる厚さを有し、かつ、表面に滑り止め手段を有している
地下構造物用デザイン鉄蓋。
【請求項2】
デザインシールは印刷によって形成された写真や繊細な描写を施した図柄、文字、数字などから成る請求項1記載の地下構造物用デザイン鉄蓋。
【請求項3】
デザインシールは表面に付着させたセラミック骨材、デザインシールにエンボス加工したエンボスの何れか一方又は両方を備えた微小凹凸構造を滑り止め手段として備えている請求項1又は2記載の地下構造物用デザイン鉄蓋。
【請求項4】
縁取り部で囲まれた貼り付け面に固定されているデザインシールの表面に溜まった水分を排水するために、溝底がデザインシールとほぼ同じ高さとなる排水溝を縁取り部に設けた請求項1記載の地下構造物用デザイン鉄蓋。
【請求項5】
スリップ防止手段を構成している凹凸構造の凸部は、凹部からの凸部の上面までの高さに対して著しく広い平坦面と方向性を備えた形態の模様要素を有し、この模様要素はその方向が交叉する配置を取る請求項1記載の地下構造物用デザイン鉄蓋。
【請求項6】
縁取り部は鉄蓋表面における凹凸構造の一部を取り囲んでおり、上記凹凸構造は模様要素によって構成され、かつ、縁取り部の内側のデザインシールの貼り付け面における模様要素の分布密度の方が縁取り部の外側よりも密に配置され、縁取り部の内側の凹部は外側よりも浅く設定されている請求項5記載の地下構造物用デザイン鉄蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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