説明

地下構造物用蓋

【課題】必要にして十分なスリップ防止効果と、視覚的な興趣に富んだ美観を備えた地下構造物用蓋を提供する。
【解決手段】蓋本体の表面を通行するタイヤの接地部又は靴類の底との間の摩擦抵抗を増大し、スリップを防止するために、凹凸構造を蓋本体の表面に形成した地下構造物用蓋について、凹凸構造14として多数の独立小突起15を蓋本体11の表面に形成するとともに、視覚を通じて美観を起こさせる図柄を有するデザイン突起部16を、蓋本体11の上記独立小突起の群れの中に1個又は2個以上配置し、上記デザイン突起部は、1個分の直径又は対角線の長さL1が約50〜100mmであるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋本体の表面を通行するタイヤの接地部又は靴類の底との間の摩擦抵抗を増大し、スリップを防止するために、凹凸構造を蓋本体の表面に形成した地下構造物用蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるマンホールの蓋などとして知られている地下構造物用蓋には鋳鉄製のものが多いが、降雨などによって濡れた場合摩擦係数が低下し、周囲のアスファルト舗装面、コンクリート舗装面と比較してより滑り易い状態となり、2輪車などの転倒事故が発生し易い傾向となる。そのため、鉄蓋表面に幾何学的模様から成る独立した小突起を多数形成してアスファルトなどの舗装面とほぼ同等の摩擦係数を確保し、スリップ防止を図ることが行われている。この趣旨の発明には、特許第3094008号、同第3356694号、同第2878663号、同第2796087号、同第3564005号などがあり、夫々独立小突起の形状、構造及び配置に独自の改良を施して、アスファルトなどの舗装面とほぼ同等の摩擦係数を確保しようとしているものである。
【0003】
上記の独立小突起を設けた鉄蓋はスリップ防止の意味でほぼ所期の目的を達しており、問題はないのであるが、幾何学的模様のみから成るため、表面の模様が視覚的に単調で興趣に乏しいという意見がある。鉄蓋表面に対する摩擦係数の確保と相前後して、鉄蓋の表面に図柄を設けたデザイン鉄蓋などと通称されるものが普及して来た。この趣旨の発明には特許第4167619号がある。デザイン鉄蓋は、主として鉄蓋の存在を市民にPRするために、その都市を代表する花や植物、動物、祭事、風景などをモチーフとしてデザインされたものがほとんどである。しかし、デザイン鉄蓋は、一般にデザインが優先されるためスリップ防止効果が高いとはいえない。例えば、特開2006−16895号や特許第3343102号はデザイン鉄蓋に属するが、これらの発明はデザイン鉄蓋における滑り止めの改良が現在も引き続いて行われていることを示す。
【0004】
このように、デザインを優先するとスリップ防止効果の低下を来たし、スリップ防止効果を追求すれば視覚的に単調となるという状況は依然として続いており、このため、スリップ防止効果が優先する状況では、視覚的に単調な幾何学的模様から成る滑り止めを採用するほかないのが実情である。換言すれば、スリップ防止効果の優先する場所では、デザイン鉄蓋を採用することができないということになる。このような状況を背景として、本件の発明者はスリップ防止と美観の問題を両立させるために鋭意研究を行い、その結果、本発明に到達した。
【0005】
【特許文献1】特許第3094008号
【特許文献2】特許第3356694号
【特許文献3】特許第4167619号
【特許文献4】特開2006−16895号
【特許文献5】特許第2878663号
【特許文献6】特許第2796087号
【特許文献7】特許第3564005号
【特許文献8】特許第3343102号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、必要にして十分なスリップ防止効果と、視覚的な興趣に富んだ美観を備えた地下構造物用蓋を提供することである。また、本発明の他の課題は、蓋本体の表面にデザイン突起部を設けても、スリップ防止効果を実質的に損なわない、デザイン突起部の配置方法を明らかにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、通行するタイヤの接地部又は靴類の底との間の摩擦抵抗を増大し、スリップを防止するために、凹凸構造を蓋本体の表面に形成した地下構造物用蓋について、凹凸構造として多数の独立小突起を蓋本体の表面に形成するとともに、視覚を通じて美観を起こさせる図柄を有するデザイン突起部を、蓋本体の上記独立小突起の群れの中に1個又は2個以上配置し、上記デザイン突起部は、1個分の直径又は対角線の長さL1が約50〜100mmであるものとするという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の地下構造物用蓋は、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄から成るいわゆるマンホール鉄蓋に属するものである。スリップを防止する凹凸構造として、本発明では多数の独立小突起を蓋本体の表面に形成するとともに、視覚を通じて美観を起こさせる図柄を有するデザイン突起部を、蓋本体の上記独立小突起の群れの中に1個又は2個以上配置している。独立小突起は、例えば前記特許文献1又は2に記載されている突起のように下部が大きく上部が小さい錐状を呈し、かつ凸多角形の平面形状を持つ角錐台形状を基本形状としており、各突起の傾斜した側面の下部から上部に及ぶ凹部又は凸部を有するようなものが適しており、このような独立小突起は、摩耗により、突起状面の平面形が相似形を維持し、或いは変化しつつ徐々に大型化するという特徴を備えており、舗装路面と同等の摩擦抵抗を得ることができる。
【0009】
上記デザイン突起部は、1個分の直径又は対角線の長さL1を約50〜100mmとするものとする。直径又は対角線の長さL1を約50〜100mmとしたのは、従来から行われている市町村等の紋章は直径50mm程度のものであるが、これでは目立ちにくく、約50mmは最小との判断からこれを下限としたものである。また、上限については研究の結果スリップ事故を起こし易いことが判明した、原付自転車の小径タイヤの接地面形状の長さ約125mm×幅約55mmを基準に決定している。本発明に至る研究の過程において、各種のタイヤ等の接地部を検討したが、小径タイヤの接地面形状は平均値で、長さ約125mm×幅約55mmという数値が得られている。デザイン突起部の範囲にタイヤが乗ったときにもタイヤの一部は独立小突起にかかる必要があり、独立小突起にかかる長さとして少なくとも20%(上記の約125mmという数値に基づいた場合約25mm)はスリップ防止に必要と判断されるので、差し引き約100mmがデザイン突起部の最大値となる。
【0010】
デザイン突起部1個分の直径又は対角線の長さL1に関する約50〜100mmという数値は、約80〜100mmのデザイン突起部を複数個設けるのがデザイン効果を発揮するために最適である、という研究結果とも重なるものである。よって、1個の直径又は対角線の長さL1が50〜100mmの大きさの平面形状のデザイン突起部であれば、独立小突起によるスリップ防止効果を損なわず、しかも視覚を通じて美観を起こさせる大きさを確保し得ると判断できるものである。スリップ事故を起こし易い点について説明を補足すると、この種のタイヤを使用する原付自転車の台数が多いこと、使用者の年齢層や運転技術にばらつきが大きいこと、通勤、通学等天候に関わらず使用する機会が多いことなどが原因となり、事故率が高まるものと推測されるものである。
【0011】
本発明におけるデザイン突起部の配置方法は、上記のように原付自転車の小径タイヤなどを基準として決定することができるもので、より普遍的には以下のように記載することができる。即ち、通行するタイヤの接地部の長さをL3、デザイン突起部の直径又は対角線の長さをL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離をL2としたとき、デザイン突起部の直径又は対角線の長さはタイヤ接地部の長さよりも短く(L1<L3)、かつ、デザイン突起部同士の最短距離はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にあることが望まれる。デザイン突起部の直径又は対角線の長さをタイヤ接地部の長さよりも短く(L1<L3)することで、タイヤがデザイン突起部に乗っても必要最小限度の摩擦抵抗が独立小突起によって確保され、デザイン突起部同士の最短距離をタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きく(L2>0.5L3)することで、隣接デザイン突起部間にはタイヤの接地部の長さL3の2分の1以上の独立小突起による滑り止め部分があることになる。上記デザイン突起部の関与する条件は最小限度であるので、独立小突起によるスリップ防止効果は実質的に損なわれない。より具体的な数値について述べれば、複数のデザイン突起部同士の最短距離L2として、タイヤの接地部の長さL3が125mmのとき、約2分の1の63mm以上にすることが望ましい。
【0012】
上記の配置方法は、φ600の円形の地下構造物用蓋については問題なく当て嵌まるものである。しかしながら、また、地下構造物用蓋には親子蓋と通称されるφ900の円形の蓋等もあり、その場合には親蓋の偏心位置に小蓋が配置され、十分なデザイン突起部を設けるスペースを親蓋に確保できない場合がある(図8参照)。このような場合にも、スリップ防止を図る必要のあることは当然であり、そこで本発明では、デザイン突起部と蓋本体の周縁部との最短距離をL4としたとき、デザイン突起部と蓋本体の周縁部との最短距離L4をタイヤ接地部の長さL3の4分の1よりも大きくすることで(L4>0.25L3)、最小限度のスリップ防止が得られるように図るものである。スリップ防止のためにタイヤの一部が独立小突起にかかる必要がある長さは、前記のとおり小径タイヤの接地面形状の長さの約20%、約25mmであることが分かっているから、デザイン突起部と蓋本体の周縁部の間に確保すべき間隔の具体的な数値としては少なくとも約25mm、望ましくは約30mm以上の間隔を設けるべきである。
【0013】
上記のようなデザイン突起部は、それ自体の周囲が突状の縁取りによって囲まれている場合、突状の縁取りに縁取り部分の内外を通じる排水溝を形成する構成は望ましいものである。全てのデザイン突起部が縁取りによって囲まれていなければならないということではないが、縁取りで囲まれたデザインを有するデザイン突起部の場合には、排水の処理が問題になるので排水溝を突条の縁取り部分に設けておく必要があるということである。なお、デザイン突起部が突条の縁取りを有する場合でも、突条の縁取りが円形リングのように閉じているとは限らないのであって、そのような縁取りに排水溝を設けることも自由である。
【0014】
また、独立小突起とデザイン突起部の深さ(或いは高さ)について検討すると、独立小突起はその表面からその付け根が位置している独立小突起間の空所の面までの深さが約6mmであり、デザイン突起部の表面は独立小突起の表面と同一面にあり、かつ、デザイン突起部の表面から付け根までの深さが約3mm以上かつ独立小突起の深さ以下であるというように設定することができる。約6mmという数値は、いわゆるマンホール鉄蓋の表面に設けられるスリップ防止のための凹凸構造の深さ、高さの標準が6mmであることに基づいており、そこで独立小突起には約6mmの高さが必要になるという判断である。デザイン突起部については独立小突起の約2分の1以上の深さ(高さ)になっているが、その理由は、以下に説明するデザイン突起部の耐用年数(摩耗)とデザイン性による。
【0015】
即ち、車道部に設置されたマンホール鉄蓋の耐用年数は国土交通省の通達(国都下事第77号、平成15年6月19日)では15年以上とされている。また、マンホール鉄蓋の表面摩耗速度は、(社)日本下水道協会発行の『下水道用マンホール蓋の維持管理マニュアル(案)』には0.1mm〜0.3mm/年と記載され、中央値の0.2mm/年で計算すると15年で3mm摩耗することになる。従って、国土交通省の定める耐用年数を達成するには3mm以上の模様深さ(高さ)が必要である。当然、独立小突起の付け根が位置している独立小突起間の空所の面までの深さ約6mmと同じでも良い。しかし、現在行われている製造方法の主流である砂型鋳物法では、鋳鉄を溶かした湯を砂型に流し込んでマンホール鉄蓋を製造する。その砂型は、模様を彫った木型を砂に押し付け、木型の模様を砂に転写した後、転写した砂型の模様を崩さず砂から木型を抜くため、木型の模様外周に深さ(高さ)方向におよそ20度の抜け勾配がある。抜け勾配20度で深さ(高さ)6mmの模様を彫ると、6×tan20°=2.1mmの抜け勾配が必要となり、鉄蓋表面の模様と模様の間隔は2.1mm×勾配2箇所=4.2mm以上必要である。そのため、精細な模様をデザインしようとしても、模様と模様の間隔が離れ過ぎデザインが制限されることになる。そこで、デザイン突起部のみの模様深さ(高さ)を3mmとすることで、模様間のピッチを、3×tan20°×2箇所=1.1×2=2.2mmと小さくし、精細なデザインを可能にしているのである。
【0016】
本発明においては、マンホール鉄蓋の上を通行する機会がより多いと考えられる小径タイヤに関する滑り止めを主として説明をしているが、ここでもう一つの重要な対象である靴類の底との比較検討をすると以下のとおりである。まず、小径タイヤの接地部は長さ約125mm×幅約55mmとしたのに対し、靴類の底は成人用として長さが250〜
300mm、幅が60〜100mmを想定するとその平均は275×80mmとなる。重量は、原付自転車の場合車体重量と運転者の体重の合計となり、人の体重のほぼ2倍となるが、しかし、マンホール鉄蓋上には原付バイクは前後輪のどちらかの1輪しか乗らないので、全重量の半分が鉄蓋に掛かる。一方、人は片足ずつ接地しながら歩行するので体重全体が鉄蓋に掛かる。以上を考慮して計算を行うと以下の表のとおりとなり、単位面積当たりの圧力は小径タイヤで1.09kg/cm、靴底で0.32kg/cmである。靴類の底の方が小径タイヤの約3分の1と小さいが、小径タイヤは接地部全体が常に接地状態にあると考えて良いのに対して、靴類の底は意図的に片足で立っている場合を除き全面で接地することはなく、靴底の接地部分にマンホール鉄蓋の突起が食い込むことで、摩擦力が発生するので、面圧の差に見られる程の相違はなく、小径タイヤに対する滑り止めが有効であれば、靴類の滑り止めとしても有効であると考えられる。

【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、多数の独立小突起による必要にして十分なスリップ防止効果と、デザイン突起部による視覚的な興趣に富んだ美観を備えた地下構造物用蓋を提供することができる。また、本発明によれば、蓋本体の表面にデザイン突起部を設けた場合において、スリップ防止効果を実質的に損なわないデザイン突起部の配置方法が明らかにされているので、スリップ防止と美観の問題を両立させ、スリップ防止効果の優先するケースでも、デザイン鉄蓋を採用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る地下構造物用蓋10の例1を示しており、例1における地下構造物用蓋10は、ダクタイル鋳鉄より成るφ600の円形蓋である。この蓋本体11の表面には、通行するタイヤの接地部12との間の摩擦抵抗を増大し、スリップを防止するために、蓋本体周縁部13を除くほぼ全面に凹凸構造14が形成されている(図2、図3参照)。
【0019】
凹凸構造14は、蓋本体11の表面に形成されている多数の独立小突起15とともに、視覚を通じて美観を起こさせる図柄を有するデザイン突起部16とから成る。上記独立小突起15は、下部が大きく上部が小さい錘状を呈し、かつ凸多角形の平面形状を持つ角錐台形状を基本形状として有しており、摩耗が進行して突起の高さが低くなると、当初とは別の模様が上面に現れるように各突起の傾斜した側面に凹溝を有する。これは、前記特許文献2の特許第3356694号に開示されている発明における突起を本発明における独立小突起15に適用したもので、図3に現れている小さい三角形や四角形の部分は摩耗が進行するにつれて拡大し、かつ、側面に設けられている凹部(凹溝)や凸部(突条)に起因する凹凸が現れて来るので、三角形や四角形の原形状が変化する。
【0020】
図1の例において、デザイン突起部16は、視覚を通じて美観を起こさせるモチーフをいわゆる花鳥風月にとった図柄から成り、1個分の直径L1が約100mmの円形の突状の縁取り17がその図柄を囲んでいる。突状の縁取り17には、縁取り部分で水が堰き止められないように内外を通じる排水溝18が形成されている。このようなデザイン突起部16が蓋本体11の上記独立小突起の群れの中に4個、夫々が均等な間隔で同一円周上に配置されている。図1乃至図3に示したように、デザイン突起部16の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2であり、デザイン突起部16の直径はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。デザイン突起部16と外周の突状の縁取り13との間隔L4は、L4>0.25L3の条件に適合しており、この部分においてもスリップ防止に必要な間隔が保たれている。なお、wはタイヤ接地部12の幅を示しており、デザイン突起部16の直径L1よりも小である(w<L1)。
【0021】
独立小突起15はその表面から独立小突起間の空所の面までの深さ(高さ)D1が約6mm、デザイン突起部16の表面は独立小突起15の表面と同一面にあり、かつ、デザイン突起部の表面から付け根までの深さ(高さ)D2が約3mmに設定されている(図2参照)。約6mmという数値は、いわゆるマンホール鉄蓋の表面に設けられるスリップ防止のための凹凸構造の深さ(高さ)の標準が6mmであることによっており、デザイン突起部16の約3mmについては、耐用年数から約3mmに設定している。しかし、デザイン性との関係などの必要があれば、独立小突起15の深さ(高さ)D1と同じ約6mmまでの範囲で選択することができる。
【0022】
上記例1の構成は、図4以下に示した各例についても、同様に当て嵌まる。図4に示す例2は、例1と同じφ600の円形蓋本体21の中心部に、例1と同じくφ100の直径のデザイン突起部26を1個設けたもので、デザイン突起部26の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離L2は存在しないが必要な条件は満たし、かつ、デザイン突起部26の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短い(L1<L3)という関係を満たしており、独立小突起15による十分なスリップ防止効果が得られる。他の構成は例1と同様であるので、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0023】
図5に示す例3は、例1と同じφ600の円形蓋本体31の中心部に、例1と同じくφ100の直径のデザイン突起部36を3個横一列に配置したもので、デザイン突起部36の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2であり、デザイン突起部36の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。例3の凹凸構造34は、多数の独立小突起15と3個のデザイン突起部36とから成る。なお、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0024】
図6に示す例4は、例1と同じφ600の円形蓋本体41の中心部に、例1と同じくφ100に相当する対角線長さを有する正六角形のデザイン突起部46を4個、それぞれ均等な間隔で同一円周上に配置したもので、デザイン突起部46の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2、デザイン突起部46の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。例4の凹凸構造44は、多数の独立小突起15と4個のデザイン突起部46とから成る。
なお、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0025】
図7に示す例5は、例1と同じφ600の円形蓋本体51の中心部に、例1と同じくφ100に相当する対角線長さを有する正方形のデザイン突起部56を4個、それぞれ均等な間隔で同一円周上に配置したもので、デザイン突起部56の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2、デザイン突起部56の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。例5の凹凸構造54は、多数の独立小突起15と4個のデザイン突起部56とから成る。なお、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0026】
図8に示す例6は、φ900の大型の円形蓋本体61の中心からずれた部分に、φ600の円形かつ小型の蓋本体62を有するいわゆる親子蓋の例であり、大型の蓋本体61の中心からずれた位置にφ100の直径を有する円形のデザイン突起部66を4個均等な間隔で、円弧状に配置するとともに、小型の蓋本体62にもφ100の直径のデザイン突起部67を4個左右対称に配置したもので、デザイン突起部66の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2、デザイン突起部66の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にあり、さらに、デザイン突起部66と外周の突状の縁取り68、68′との間隔L4は、L4>0.25L3の関係にある。なお、68、68′、13は夫々縁取りを示す。例6の凹凸構造64は多数の独立小突起15と8個のデザイン突起部66、67とから成る。また、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0027】
図9に示す例7は、φ900の円形蓋本体71に、例1と同じくφ100の直径を有する円形のデザイン突起部76を内側に4個、それを取り囲む外側のデザイン突起部77を6個、それぞれ均等な間隔で同心円上に配置したもので、デザイン突起部76、77の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2であり、デザイン突起部76、77の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。例7の凹凸構造74、75は、多数の独立小突起15と10個のデザイン突起部76、77とから成る。なお、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0028】
図10に示す例8は、縦横500mm×650mmの長方形蓋本体81の中心部に、例1と同じくφ100の直径のデザイン突起部86を2個横一列に配置したもので、デザイン突起部86の直径はL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離はL2であり、デザイン突起部86の直径L1はタイヤ接地部12の長さL3よりも短く(L1<L3)、かつまた、デザイン突起部同士の最短距離L2はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係にある。例8の凹凸構造84は、多数の独立小突起15と2個のデザイン突起部86とから成る。なお、83は蓋本体の周縁部を示すが、例1と同様の構成については、符号を援用し詳細な説明は省略する。
【0029】
本発明の地下構造物用蓋はこのように構成されており、滑り止め効果について既に効果の確立している独立小突起15を蓋本体11・・・の表面のほぼ全体に形成し、それによって基本的な滑り止め効果を確保するとともに、視覚を通じて美観を起こさせるデザイン突起部16・・・を適切な間隔を保って1個又は2個以上配置しているものである。マンホール鉄蓋などの滑り止めを扱うこれまでの先行技術は、本発明における独立小突起などの突起の高さについて高低差を設け、滑り止め効果を得るものが基本であったけれども、本発明は上記独立小突起15の滑り止め効果を基礎として、許容される間隔でデザイン突起部16・・・を配置する方法を発見し、これを地下構造物用蓋に適用したものであり、この点例を見ない。
【0030】
また、本発明においては原付自転車等の小径タイヤに対象を絞って研究を行い、理論を発展させてきたものであり、デザイン突起部16・・・1個分の直径又は対角線の長さL1約50〜100mmを原理、原則にしているのは、長さ約125mm×幅約55mmという小径タイヤの接地面形状との関係からである。しかし、デザイン突起部16・・・の直径又は対角線の長さをL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離をL2、蓋本体の表面を通行するタイヤの接地部の長さをL3として、デザイン突起部の直径又は対角線の長さはタイヤ接地部の長さよりも短く(L1<L3)、かつ、デザイン突起部同士の最短距離はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)という関係には普遍性があり、小径タイヤ以外の例えば自動2輪車のタイヤにも当て嵌まると考えて良い。デザイン突起部16・・・と外周の突状の縁取り13・・・との間隔L4に関する、L4>0.25L3という関係についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る地下構造物用蓋の例1を示す平面図である。
【図2】同上の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】同じく要部を拡大して示す平面図である。
【図4】本発明に係る地下構造物用蓋の例2を示す平面図である。
【図5】同じく例3を示す平面図である。
【図6】同じく例4を示す平面図である。
【図7】同じく例5を示す平面図である。
【図8】同じく例6を示すもので、Aは親蓋のみの平面図、Bは親子蓋としての平面図である。
【図9】同じく例7を示す平面図である。
【図10】同じく例8を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 地下構造物用蓋
11、21、31、41、51、61、62、71、81 蓋本体
12 タイヤの接地部
13、68、68′、83 蓋本体の周縁部
14、24、34、44、54、64、74、75、84 凹凸構造
15 独立小突起
16、26、36、46、56、66、67、76、77、86 デザイン突起部
17 突状の縁取り
18 排水溝
L1 デザイン突起部の直径又は対角線の長さ
L2 複数のデザイン突起部同士の最短距離
L3 タイヤの接地部の長さ
L4 デザイン突起部と蓋本体の周縁部との最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体の表面を通行するタイヤの接地部又は靴類の底との間の摩擦抵抗を増大し、スリップを防止するために、凹凸構造を蓋本体の表面に形成した地下構造物用蓋であって、
凹凸構造として多数の独立小突起を蓋本体の表面に形成するとともに、視覚を通じて美観を起こさせる図柄を有するデザイン突起部を、蓋本体の上記独立小突起の群れの中に1個又は2個以上配置し、
上記デザイン突起部は、1個分の直径又は対角線の長さL1が約50〜100mmであることを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項2】
デザイン突起部の直径又は対角線の長さをL1、複数のデザイン突起部同士の最短距離をL2、蓋本体の表面を通行するタイヤの接地部の長さをL3としたとき、デザイン突起部の直径又は対角線の長さはタイヤ接地部の長さよりも短く(L1<L3)、かつ、デザイン突起部同士の最短距離はタイヤ接地部の長さの2分の1よりも大きい(L2>0.5L3)関係にある請求項1記載の地下構造物用蓋。
【請求項3】
デザイン突起部と蓋本体の周縁部との最短距離をL4としたとき、デザイン突起部と蓋本体の周縁部との最短距離はタイヤ接地部の長さの4分の1よりも大きい(L4>0.25L3)関係にある請求項2記載の地下構造物用蓋。
【請求項4】
デザイン突起部は突状の縁取りによって周囲が囲まれており、突状の縁取りには縁取り部分の内外を通じる排水溝が形成されている請求項1記載の地下構造物用蓋。
【請求項5】
独立小突起の表面からその付け根が位置している独立小突起間の空所の面までの深さが約6mmであり、デザイン突起部の表面は独立小突起の表面と同一面にあり、かつ、デザイン突起部の表面から付け根までの深さが約3mm以上かつ独立小突起の深さ以下である請求項1記載の地下構造物用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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