説明

地下構造物用蓋

【課題】突起を全て同一高さに形成した場合、および、突起をその高さがランダムに異ならせて形成した場合に比べて高いスリップ防止効果が得られる。
【解決手段】蓋本体1と、蓋本体1の基準面(S)上に形成された複数個の突起2とを備えた地下構造物用蓋において、突起2は、蓋本体1の中央部分に形成された中央部突起群3と、中央部突起群3の外側に形成され、中央部突起群3よりも突起高さが低い中間部突起群4と、中間部突起群4の外側に形成され、中間部突起群4よりも突起高さが高い外周部突起群5とから構成され、中間部突起群4および外周部突起群5は、中央部突起群3に対して同心円状に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下構造物用蓋、特に、歩道に埋設されるスリップ防止効果が高い地下構造物用蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、上下水道における地下構造物としての埋設管路への連絡口を開閉するために、地下構造物用蓋は、歩道部分に埋設された受枠内に嵌め込まれている。
【0003】
このような地下構造物用蓋は、その表面が歩道に露出することから、特に、雨天時において蓋上を通行する歩行者や自転車等がスリップして転倒事故を招くおそれがあった。このために、スリップ防止を目的として、複数個の突起を蓋本体上に形成した地下構造物用蓋が知られている。
【0004】
しかしながら、突起の高さは、全て同一高さであったので、あまり高いスリップ防止効果が得られなかった。なお、突起の高さとは、蓋本体の基準面からの高さである。
【0005】
そこで、さらに高いスリップ防止効果を得るために、突起の高さを異ならせた地下構造物用蓋の一例が特許文献1(登録実用新案第3061440号公報)に開示されている。以下、この蓋を従来地下構造物用蓋といい、図面を参照しながら説明する。
【0006】
図5は、従来地下構造物用蓋を示す平面図、図6は、図5の部分拡大図、図7は、図5のA−A断面図である。
【0007】
図5から図7に示すように、従来地下構造物用蓋は、蓋本体10と、蓋本体10に形成された複数個の突起11とを備え、突起11の高さを異ならせたものからなっている。なお、突起11の高さとは、蓋本体10の基準面(S)からの高さである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3061440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来地下構造物用蓋によれば、突起11の高さを異ならせることにより、突起11の高さが同一の地下構造物用蓋より高いスリップ防止効果が得られるが、さらに高いスリップ防止効果を有する地下構造物用蓋の開発が望まれている。
【0010】
すなわち、例えば、突起11間の間隔が狭い場合は、靴底の硬い革靴等で蓋上面を歩行する時に突起高さの低い箇所に靴底が十分にめり込まず、高低差をつけたことの効果が得られない場合があった。これは雨水等により表面が濡れた状態の場合、なおさら靴底が高さの高い突起表面をなぞるだけになってしまい、滑りやすくなるという問題点が発生する。また、突起高さの低い箇所に靴底を十分にめり込ませようとして突起11間の間隔を広くした場合は、つえの先端やハイヒールのかかとの先端が突起の間に挟まりやすくという問題が発生する。
【0011】
従って、この発明の目的は、高いスリップ防止効果が得られる地下構造物用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、蓋本体と、前記蓋本体の基準面上に形成された複数個の突起とを備えた地下構造物用蓋において、前記突起は、前記蓋本体の中央部分に形成された中央部突起群と、前記中央部突起群の外側に形成され、前記中央部突起群よりも突起高さが低い中間部突起群と、前記中間部突起群の外側に形成され、前記中間部突起群よりも突起高さが高い外周部突起群とから構成され、前記中間部突起群および前記外周部突起群は、前記中央部突起群に対して同心状に配されていることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、蓋本体と、前記蓋本体の基準面上に形成された複数個の突起とを備えた地下構造物用蓋において、前記突起の高さは、前記蓋本体の中心部から前記蓋本体の中間部に向って連続的に低く、前記中間部から前記蓋本体の外縁部に向って連続的に高く、前記突起の高さは、前記蓋本体の中心部から同心状に変化していることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地下構造物用蓋において、前記中央部突起群および前記外周部突起群の突起は、多角柱形状をなしていることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の地下構造物用蓋において、前記突起の最大高低差は、5mmであることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、蓋本体の基準面上に同心状に形成された複数個の突起の、蓋本体中心部から蓋本体外周部に向かう高さ分布を、蓋本体中心部および蓋本体外周部の突起高さに比べて蓋本体中間部の突起高さが低くなるように形成することによって、突起が全て同一高さの場合、および、突起高さがランダムに異なる場合に比べて、歩行者等の進入方向によらず高いスリップ防止効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の地下構造物用蓋を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面における突起高さを示す分布図である。
【図3】この発明の別の地下構造物用蓋における突起高さの分布図である。
【図4】この発明のさらに別の地下構造物用蓋における突起高さの分布図である。
【図5】従来地下構造物用蓋を示す平面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の地下構造物用蓋の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、この発明の地下構造物用蓋を示す平面図、図2は、図1のA−A線断面図である。なお、図2において、突起の高さは、誇張して図示し、鈎孔部分は、省略してある。
【0020】
図1および図2に示すように、この発明の地下構造物用蓋は、円形状の蓋本体1と、蓋本体1の基準面(S)上に形成された複数個の突起2とからなっている。なお、蓋本体1の形状は、円形状以外に角形状であっても良い。
【0021】
突起2は、蓋本体1の中央部分に形成された中央部突起群3と、中央部突起群3の外側に形成され、中央部突起群3よりも突起高さが低い中間部突起群4と、中間部突起群4の外側に形成され、中間部突起群4よりも突起高さが高い外周部突起群5とから構成されている。中間部突起群4および外周部突起群5は、それぞれ中央部突起群3に対して同心円状に配されている。
【0022】
中央部突起群3の突起は、角柱状に形成され、基準面(S)上からの高さは、例えば、4.0mmである。図1中、中央部突起群3を白抜きで示す。
【0023】
中間部突起群4は、それぞれ同心円状に配された内側突起群4A、中間突起群4Bおよび外側突起群4Cとから構成されている。内側突起群4Aおよび外側突起群4Cの突起は、円柱状に形成され、中間突起群4Bは、角柱状に形成されている。中間部突起群4の突起高さは、中央部突起群3の突起高さより低い。すなわち、内側突起群4Aの基準面(S)上からの突起高さは、例えば、3.5mm、中間突起群4Bの基準面(S)上からの突起高さは、例えば、3.0mm、外側突起群4Cの基準面(S)上からの突起高さは、例えば、3.5mmである。図1中、内側突起群4Aをクロスハッチングで示し、中間突起群4Bを一方向ハッチングで示し、外側突起群4Cをクロスハッチングで示す。
【0024】
外周部突起群5の突起は、角柱状に形成され、基準面(S)上からの高さは、例えば、4.0mmである。図1中、外周部突起群5を白抜きで示す。
【0025】
図2に示すように、この発明の地下構造物用蓋の突起高さは、蓋本体1の中間部の突起高さが蓋本体1の中央部および蓋本体1の外周部の突起高さに比べて低く形成されている。このような高さ分布となるように突起2を形成することによって、突起2を全て同一高さに形成した場合、および、突起をその高さをランダムに異ならせて形成した場合に比べて高いスリップ防止効果が得られる。
【0026】
例えば、靴底の硬い革靴等で蓋上面を歩行する際に、突起高さの高い中央部突起群3、あるいは外周部突起群5を通過することになるので、必ず突起2の高低差のある部分でスリップ防止効果を得ることができる。すなわち、蓋本体1の中間部の高さが蓋本体1の中央部および蓋本体1の外周部の突起高さに比べて同心円状に低く形成されているので、例えば、歩行者の靴底の進入方向にかかわらず、靴底が突起高さの高い中央部突起群3、あるいは外周部突起群5に当る。この結果、滑ろうとする力が弱まるので、突起2を全て同一高さに形成した場合、および、突起をその高さをランダムに異ならせて形成した場合に比べて、高いスリップ防止効果が得られる。
【0027】
特に、角柱状突起2は、歩行者の靴や自転車の車輪等と必ず線接触あるいは角部が接触するために、高いスリップ防止効果が得られる。しかも、このような角柱状突起2を蓋本体1の中央部および蓋本体1の外周部に配すれば、蓋本体1の中間部の突起高さを中央部および外周部の突起高さに比べて低く形成することとの相乗効果により一層、高いスリップ防止効果が得られる。
【0028】
なお、中間部突起群4および外周部突起群5を、それぞれ中央部突起群3に対して同心円状に配する以外に、同心多角形状に配しても良い。
【0029】
また、突起2の最大高低差を5mmとすると良い。この理由は、以下の通りである。
【0030】
一般的な地下構造物用蓋として広く知られている凹凸あるいは突起の高さは6mmである。突起の高さを最低でも1mmを確保出来るように設定した場合、得られる高低差は5mmとなる。高低差の数値を大きくすればスリップ防止効果も高くなるが、同時に歩行時のつまずき等の問題も発生してくる。従来からの凹凸あるいは突起の高さの実績より、この5mm以内であればつまずくことの危険性もなく、かつ、高いスリップ防止効果も得られる。
【0031】
以上の例は、突起2の高さが階段状に変化するように分布させた場合であるが、図3に示すように、突起2の高さを、蓋本体1の中心部から蓋本体1の中間部に向って連続的に低く、前記中間部から蓋本体1の外縁部に向って連続的に高くなるように、蓋本体1の中心部から同心円状に変化させても良い。
【0032】
また、突起2の高さを図4に示すように、連続的に傾斜面として変化させても良い。この場合、傾斜面により水平方向に滑ろうとする力を弱めることができる。
【0033】
以上のように、この発明によれば、蓋本体の基準面上に同心状に形成された複数個の突起の、蓋本体中心部から蓋本体外周部に向かう高さ分布を、蓋本体中心部および蓋本体外周部の突起高さに比べて蓋本体中間部の突起高さが低くなるように形成することによって、突起が全て同一高さの場合、および、突起高さがランダムに異なる場合に比べて高いスリップ防止効果が得られる。
【符号の説明】
【0034】
1:蓋本体
2:突起
3:中央部突起群
4:中間部突起群
4A:内側突起群
4B:中間突起群
4C:外側突起群
5:外周部突起群
10:蓋本体
11:突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体と、前記蓋本体の基準面上に形成された複数個の突起とを備えた地下構造物用蓋において、
前記突起は、前記蓋本体の中央部分に形成された中央部突起群と、前記中央部突起群の外側に形成され、前記中央部突起群よりも突起高さが低い中間部突起群と、前記中間部突起群の外側に形成され、前記中間部突起群よりも突起高さが高い外周部突起群とから構成され、前記中間部突起群および前記外周部突起群は、前記中央部突起群に対して同心状に配されていることを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項2】
蓋本体と、前記蓋本体の基準面上に形成された複数個の突起とを備えた地下構造物用蓋において、
前記突起の高さは、前記蓋本体の中心部から前記蓋本体の中間部に向って連続的に低く、前記中間部から前記蓋本体の外縁部に向って連続的に高く、前記突起の高さは、前記蓋本体の中心部から同心状に変化していることを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記中央部突起群および前記外周部突起群の突起は、多角柱形状をなしていることを特徴とする、請求項1または2に記載の地下構造物用蓋。
【請求項4】
前記突起の最大高低差は、5mmであることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の地下構造物用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17568(P2012−17568A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153962(P2010−153962)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】