説明

地下空間の構築方法及びこの方法にて構築される地下空間、並びにこの方法にて構築される地下構造物

【課題】広い地下空間のイメージを創出することができ、かつ、短期間で施工することが可能な地下空間の構築方法及びこの方法にて構築された地下空間を提供する。
【解決手段】地下空間1の構築予定位置の上部に、地上に向かって凸状に湾曲した鋼管7aを地盤2内に挿入して曲線パイプルーフ25を設置し、曲線パイプルーフ25の下方の地盤2内にタイロッド37を挿入し、曲線パイプルーフ25の両端部をそれぞれ支持するための支持体41を形成し、タイロッド37の両端部にねじ部を設け、このねじ部にナット51を螺合してナット51を締め付けて、タイロッド37に緊張力を付与し、パイプルーフ25から支持体41に作用する水平力に抵抗させた状態で、曲線パイプルーフ25の下側を掘削して地下空間1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプルーフ工法を用いた地下空間の構築方法及びこの方法にて構築された地下空間、並びにこの方法にて構築される地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地下空間の構築工法として、地下空間の構築予定位置の外周部分に鋼管を挿入して地下空間の断面形状に合わせたパイプルーフを設置し、このパイプルーフの下側を掘削するとともに、パイプルーフを支持して地下空間を構築するパイプルーフ工法が一般的に用いられている。そして、パイプルーフの下側を掘削する際にパイプルーフを支持する方法として、以下に示すような方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パイプルーフの下側の地盤を掘削するとともに、トラス構造体を組み立ててパイプルーフを支持する方法が開示されている。この方法は、まず、パイプルーフの下側の地盤を掘削して形成した空間にトラス構造体を組み立てて作業用空間を作り、次に、この作業用空間内の地表面から地盤内に柱の役割も兼ねた支持杭を打設してパイプルーフを支持し、それから地盤を下方へ掘削して、地下空間を構築するものである。
【0004】
また、特許文献2には、コンクリート函体をパイプルーフの下側に挿入し、このコンクリート函体でパイプルーフを支持する方法が開示されている。この方法は、地下空間内に構築される地下構造物の外殻となるコンクリート函体を発進立坑内で形成し、このコンクリート函体をパイプルーフの下側にジャッキで圧入するとともに、コンクリート函体自体でパイプルーフを支持し、新たなコンクリート函体を順次接続し、所定の長さの地下構造物を構築するものである。
【0005】
さらに、特許文献3には、パイプルーフの鋼管内に緊張材を配置し、この緊張材の両端をそれぞれ鋼管の端部に固定して緊張力を導入し、パイプルーフを保持する方法が開示されている。この方法では、パイプルーフの鋼管の両端を柱にて支持するとともに、鋼管内に下に凸となるように緊張材を配置し、この緊張材の両端をそれぞれ定着板にて鋼管の端部に固定して緊張力を導入し、下方の地盤を掘削する際にパイプルーフに作用する土砂等の載荷荷重を柱に伝達しつつ、地下空間を構築するものである。
【特許文献1】特開平7−259108号公報
【特許文献2】特公平7−26407号公報
【特許文献3】特開2000−291030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のパイプルーフを支持杭で支持する方法では、支持杭を設置するための作業が手間及び時間を要するために、全体工程が長くなって工事費が高くなるという問題点があった。また、支持杭の設置された地盤を掘削して地下空間を構築するために、支持杭を傷つけないように慎重に掘削しなければならず、作業効率が悪いという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のパイプルーフをコンクリート函体で支持する方法では、コンクリート函体を圧入するために使用するジャッキ、駆動装置等の挿入設備が大掛かりになるために、工事費が高くなるという問題点があった。
【0008】
さらに、特許文献3に記載のパイプルーフの鋼管内に緊張材を配置する方法では、鋼管内に緊張材を下に凸となるように設置するための作業は手間及び時間を要するために、全体工程が長くなって工事費が高くなるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、短期間で安価に地下空間を構築することが可能な地下空間の構築方法及びこの方法にて構築された地下空間、並びにこの方法にて構築される地下構造物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の地下空間の構築方法は、地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、地下空間の構築予定位置の上部の地盤内に地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に緊張材を挿入する工程と、前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を形成する工程と、前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、前記緊張材に緊張力を付与する工程と、前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0011】
本発明による地下空間の構築方法によれば、地下空間の構築予定位置の上部に曲線パイプルーフを設置し、この曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持する支持体を形成し、両支持体を緊張材で接続し、この緊張材に緊張力を付与するために、曲線パイプルーフの下側を掘削した後に曲線パイプルーフに作用する土砂等の載荷荷重は曲線パイプルーフのアーチ効果により曲線パイプルーフの端部に作用する水平力と鉛直力に分解され、このうちの水平力は緊張材で保持し、鉛直力は支持体にて支持することが可能となる。
【0012】
また、曲線パイプルーフはアーチ効果により曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられるために、構築する地下空間が小さい場合は、曲線パイプルーフを支持するための中柱、支持杭を設置しなくてもよい場合がある。この場合は、中柱等が地下空間内に無いので広い地下空間のイメージを創出することが可能となる。
また、曲線パイプルーフはアーチ効果により曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられるために、地下空間を内装する際に使用する覆工材を薄肉化することが可能となる。
さらに、曲線パイプルーフによる曲面形状は美観的に優れており、地下空間内から天井を見たときに高級感を演出することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記曲線パイプルーフの下側を掘削するとともに、前記掘削により生じる地下空間内に前記曲線パイプルーフを支持するための中柱を設置する工程とを更に備えることを特徴とする。
本発明による地下空間の構築方法によれば、地下空間内に中柱を設置するので、より広大な地下空間を構築することが可能となる。
また、曲線パイプルーフはアーチ効果により曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられるために、従来のパイプルーフ工法にて構築する地下空間と比べて、中柱の設置本数を減らすことが可能となる。したがって、中柱が空間内に少ないために、広い地下空間のイメージを創出することが可能となる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、前記曲線パイプルーフの下側を掘削するとともに、前記掘削により生じる地下空間内の地表面から地盤内に中杭を打設する工程と、前記曲線パイプルーフを支持するための中柱を前記中杭の上に設置する工程とを更に備えることを特徴とする。
本発明による地下空間の構築方法によれば、地下空間内に中柱及び中杭を設置するので、より広大な地下空間を構築することが可能となる。
また、曲線パイプルーフはアーチ効果により曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられるために、従来のパイプルーフ工法にて構築する地下空間と比べて、中柱及び中杭の設置本数を減らすことが可能となる。したがって、中柱が空間内に少ないために、広い地下空間のイメージを創出することが可能となる。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、前記支持体は、地盤内に打設される支持杭と、前記曲線パイプルーフの端部同士を連結して固定するための連結部と、前記支持杭の上部に設置され、前記連結部を支持するための支持柱とから構成されることを特徴とする。
本発明による地下空間の構築方法によれば、支持体は、地盤内に打設される支持杭と、曲線パイプルーフの端部同士を連結して固定するための連結部と、支持杭の上部に設置され、連結部を支持するための支持柱とから構成されるために、曲線パイプルーフの下側を掘削した後に土砂等の荷重が曲線パイプルーフに載荷して曲線パイプルーフのアーチ効果により曲線パイプルーフの端部に鉛直力が生じても、この鉛直力を確実に支持することが可能となる。
また、連結部と支持杭との間に支持柱を設けることにより、連結部と支持杭との間で、かつ隣接する支持柱との間に隙間を設けることができ、この隙間を、例えば、地下空間への出入り口として利用することが可能となる。
【0016】
第5の発明の地下空間の構築方法は、地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、地下空間の構築予定位置の両側にそれぞれ立坑を設け、前記構築予定位置の上部の地盤内に、前記立坑間に亘って地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に、前記立坑間に亘って緊張材を挿入する工程と、前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を前記立坑内に形成する工程と、前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、前記緊張材に緊張力を付与する工程と、前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする。
本発明による地下空間の構築方法によれば、構築予定位置の両側に立坑を設け、この立坑の壁面を利用して支持体を形成することができるので、支持体の形成作業を容易に、かつ、安全に行うことが可能となる。
【0017】
第6の発明の地下空間の構築方法は、地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、丘陵部に構築される地下空間の構築予定位置の両側のうち一方に丘陵部の斜面を利用した坑口を設けて、他方に前記丘陵部の反対側の斜面を利用した坑口又は立坑のいずれかを設け、前記構築予定位置の上部の地盤内に、前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑との間に亘って地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に、前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑との間に亘って緊張材を挿入する工程と、前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑内とに形成する工程と、前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、前記緊張材に緊張力を付与する工程と、前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする。
本発明による地下空間の構築方法によれば、構築予定位置の両側のうち少なくとも一方に丘陵部の斜面を利用した坑口を設けるために、両側に立坑を設ける場合と比べて、工事期間を短くすることが可能となる。
【0018】
第7の発明の地下空間は、第1〜第6の発明の地下空間の構築方法により構築され、天井が地上に向かって凸状の曲面形状を有することを特徴とする。
【0019】
第8の発明の地下構造物は、第1〜第6の発明の地下空間の構築方法により構築され、天井が地上に向かって凸状の曲面形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明の地下空間の構築方法によれば、地下空間を短期間で安価に構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る地下空間の構築方法の好ましい実施形態について施工手順に従い図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る曲線パイプルーフを地盤内に設置した状態を示す縦断面図で、図1(b)は、図1(a)のa−a’断面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、地下空間1の構築予定位置の両側にそれぞれ発進立坑3及び到達立坑5を設ける。例えば、発進立坑3は長さ(図面左右方向)10m、幅(図面奥行き方向)22m、深さ10mで、到達立坑5は長さ(図面左右方向)5m、幅(図面奥行き方向)22m、深さ10mである。
【0023】
最初に、地下空間1の構築予定位置の上部に地上に向かって凸状に湾曲した形状を有する曲線パイプルーフ25を発進立坑3と到達立坑5との間の地盤2内に挿入する。
【0024】
発進立坑3内から地下空間1の構築予定位置の外周部分に、曲線パイプルーフ25を構成する弧状の鋼管7aを挿入するための推進掘削装置9を発進立坑3内に設置する。推進掘削装置9は、地盤2を掘削するための掘削部11と、掘削部11を推進させるための推進部13とから構成される。
【0025】
掘削部11は、地盤2を掘削するためのドリルビット15と、ドリルビット15を回転駆動するためのモータ17と、このモータ17等の機器類を内包するアウターケーシング19とから構成される。曲線パイプルーフ25を設置する際は、アウターケーシング19として弧状の鋼管7aと同じ曲率半径の弧状のパイプを用いる。
【0026】
推進部13は、弧状の鋼管7aを地盤2内に挿入するためのジャッキ21を備え、弧状の鋼管7aを地盤2内に所定の傾きで挿入するための傾斜を有する架台23に載置される。
【0027】
推進掘削装置9を用いて鋼管挿入用孔24を掘削しながら、この鋼管挿入用孔24に弧状の鋼管7aを順次挿入し、到達立坑5まで掘削する。掘削部11の掘削とともに、弧状の鋼管7aを溶接して継ぎ足しながら推進させて、地上に向かって凸状に湾曲した形状を有する第1の曲線パイプ27を設置する。
【0028】
到達立坑5に到達した掘削部11は回収して発進立坑3内に設置し、第2の曲線パイプ29を設置するために、再び掘削を開始する。掘削部11の掘削とともに、第1の曲線パイプ27の水平方向横側に、第2の曲線パイプ29を形成するための弧状の鋼管7aを地盤2内に挿入する。挿入する際は、第1の曲線パイプ27の鋼管7aの継手と第2の曲線パイプ29の鋼管7aの継手とが係合するように地盤2内に挿入する。また、第1の曲線パイプ27を設置したときと同様に、複数の弧状の鋼管7aを溶接して継ぎ足しながら到達立坑5まで推進させ、第2の曲線パイプ29を設置する。
【0029】
上述した挿入作業を繰り返し行い、水平方向に複数の曲線パイプを設置し、複数の曲線パイプから構成される曲線パイプルーフ25を設置する。
【0030】
次に、地下空間1の構築予定位置の側部に土留め壁として使用するための壁状パイプルーフ31a、31bを設置する。壁状パイプルーフ31a、31bを設置する際は、アウターケーシング19として直線状のパイプを用い、推進部13が水平となるように架台23の傾斜を変更する。
【0031】
推進掘削装置9を用いて、曲線パイプルーフ25を設置するときと同様に、掘削部11で掘削しながら、直線状の鋼管7bを順次挿入し、到達立坑5まで掘削する。掘削部11の掘削とともに、直線状の鋼管7bを溶接して継ぎ足しながら推進させて、第1の直線パイプ33を設置する。
【0032】
到達立坑5に到達した掘削部11は回収して発進立坑3内に設置し、第2の直線パイプ35を設置するために、再び掘削を開始する。掘削部11の掘削とともに、第1の直線パイプ33の下に、第2の直線パイプ35を形成するための直線状の鋼管7bを地盤2内に挿入する。挿入する際は、第1の直線パイプ33の鋼管7bの継手と第2の直線パイプ35の鋼管7bの継手とが係合するように地盤2内に挿入する。また、第1の直線パイプ33を設置したときと同様に、複数の直線状の鋼管7bを溶接して継ぎ足しながら到達立坑5まで推進させ、第2の直線パイプ35を設置する。
【0033】
上述した挿入作業を繰り返し行い、鉛直方向に複数の直線パイプを設置し、曲線パイプルーフ25の両側にそれぞれ複数の直線パイプから構成される壁状パイプルーフ31a、31bを設置する。
【0034】
次に、発進立坑3と到達立坑5との間に亘って、曲線パイプルーフ25の下方に緊張材37を挿入する。緊張材37を挿入する際は、推進掘削装置9の掘削装置として、小口径用掘削部39を用い、推進部13を水平な架台23に載置する。
【0035】
図2(a)は、緊張材37を地盤2内に設置した状態を示す縦断面図で、図2(b)は、図2(a)のb−b’断面図である。
【0036】
図2(a)及び図2(b)に示すように、小口径用掘削部39を有する推進掘削装置9を用いて、曲線パイプルーフ25及び壁状パイプルーフ31a、31bを設置するときと同様に、緊張材挿入用孔40を掘削しながら、この緊張材挿入用孔40に緊張材37を順次挿入し、到達立坑5まで掘削する。小口径用掘削部39の掘削とともに、緊張材37を溶接して継ぎ足しながら推進させて、緊張材37を設置する。本実施形態においては、緊張材37としてタイロッドを用いた。
【0037】
到達立坑5に到達した小口径掘削部11は回収して再び発進立坑3内に設置し、上述した挿入作業を繰り返し行い、タイロッド37を水平方向に所定の間隔で複数本設置する。
【0038】
次に、曲線パイプルーフ25の両端部をそれぞれ支持するための支持体41を発進立坑3及び到達立坑5内に形成する。
【0039】
図3(a)は、支持体41を設置した状態を示す縦断面図で、図3(b)は、図3(a)のc−c’断面図である。
【0040】
図3(a)及び図3(b)に示すように、支持体41は、各立坑3、5内の下盤に打設される支持杭43と、曲線パイプルーフ25、壁状パイプルーフ31a、31bの端部をコンクリートで連結して固定するための連結部45と、支持杭43の上部に設置され、連結部45を支持するための支持柱47とから構成される。
【0041】
支持体41を構築する場合は、まず、発進立坑3及び到達立坑5の下盤にコンクリートからなる支持杭43をそれぞれ複数本(図3の例では、4本)ずつ所定の間隔で打設する。
【0042】
次に、曲線パイプルーフ25及び壁状パイプルーフ31a、31bの端部がコンクリートに埋め込まれるように断面形状が略H形の形状を有する連結部45を形成するとともに、連結部45の両端下部を両側の支持杭43に載置する。それから、連結部45を支持するための支持柱47を両側を除く中央部の支持杭43の上部に設置する。
【0043】
連結部45には、タイロッド37の径よりやや大きい径の貫通孔49を設け、タイロッド37の端部をこの貫通孔49を介して各立坑3、5内に突出させる。
【0044】
各立坑3、5内に突出したタイロッド37の両端部にねじ部を設け、このねじ部にナット51を螺合してナット51を締め付けて、タイロッド37に緊張力を付与することにより、パイプルーフ25から支持体41に作用する水平力に抵抗させる。
【0045】
図4(a)は、地下空間1内に中杭57、中柱55を設置した状態を示す縦断面図で、図4(b)は、図4(a)のB−B’断面図である。
【0046】
図4(a)及び図4(b)に示すように、曲線パイプルーフ25の下側をユンボ等の重機53で掘削するとともに、掘削により形成される地下空間1の地表面から地盤2内に中杭57を打設し、曲線パイプルーフ25を支持するための中柱55を中杭57の上に設置して地下空間1を構築する。それから、地下空間1内を覆工し、内装を施して地下構造物を構築する。
【0047】
なお、本実施形態において、タイロッド37を設置した後に支持体41を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、支持体41を形成した後にタイロッド37を設置することとしてもよい。
【0048】
また、本実施形態において、鋼管7aを溶接にて継ぎ足しながら地盤2内に挿入する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、埋め込みボルトにて鋼管7a同士を接続しながら地盤2内に挿入してもよい。
【0049】
以上説明した本実施形態における地下空間1の構築方法によれば、地下空間1の構築予定位置の上部に曲線パイプルーフ25を設置し、この曲線パイプルーフ25の両端部をそれぞれ支持する支持体41を形成し、両支持体41をタイロッド37で接続し、このタイロッド37に緊張力を付与するので、曲線パイプルーフ25の下側を掘削した後に曲線パイプルーフ25に作用する土砂等の載荷荷重は曲線パイプルーフ25のアーチ効果により曲線パイプルーフ25の端部に作用する水平力と鉛直力に分解され、このうちの水平力はタイロッド37で保持し、鉛直力は支持体41にて支持することが可能となる。
【0050】
そして、本実施形態における地下空間1の構築方法によれば、曲線パイプルーフ25はアーチ効果により曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられるために、従来のパイプルーフ工法と比べて、中柱55、中杭57の設置本数を減らすことが可能となる。したがって、空間内に中柱55が少ないので広い地下空間1のイメージを創出することが可能となる。さらに、地下空間1を内装する際に使用する覆工材を薄肉化することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態における地下空間1の構築方法によれば、連結部45と支持杭43との間に支持柱47を設けることにより、連結部45と支持杭43との間で、かつ隣接する支持柱との間に隙間を設けることができ、この隙間を地下空間1への出入り口として利用することが可能となる。
【0052】
さらに、曲線パイプルーフ25による曲面形状は美観的に優れており、地下空間1内から天井を見たときに高級感を演出することが可能となる。
【0053】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
第二実施形態における地下空間1の構築方法は、山腹中に、立坑を設けずに曲線パイプルーフ25を設置して地下空間1を構築する方法である。
【0054】
図5は、本発明の第二実施形態に係る地下空間1を山腹中に構築した状態を示す縦断面図である。
【0055】
図5に示すように、地下空間1の構築予定位置の両側となる山59の斜面にそれぞれ発進坑口61、到達坑口63を設ける。発進坑口61には、鋼管7aを所定の傾きで山59に挿入するための傾斜を有する架台23を設置し、架台23の上に推進部13を載置する。到達坑口63には、到達した掘削部11を受け取るための架台23を設置する。
【0056】
それから、第一実施形態と同様に、発進坑口61から掘削部11を推進させ、鋼管挿入用孔24を掘削しながら、この鋼管挿入用孔24に鋼管7aを順次挿入し、到達坑口63まで掘削して曲線パイプルーフ25を山59の地盤2内に設置し、次に、小口径用掘削部39で緊張材挿入用孔を掘削しながら、この緊張材挿入用孔にタイロッド37を順次押し込み、到達立坑5まで掘削してタイロッド37を山59の地盤2内に設置する。
【0057】
以上説明した本実施形態における地下空間1の構築方法によれば、曲線パイプルーフ25やタイロッド37等を挿入するための作業領域の確保は、架台23を仮設するだけでよく、短時間で設置できるために、立坑等を構築する場合に比べて、工事期間が短くなり工事費を削減することが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態においては、地下空間1の構築予定位置の両側に山59の斜面を利用して坑口61、63を2箇所設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地下空間1の構築予定位置の両側のうち一方は山59の斜面を利用して坑口とし、他方は山腹に立坑を設けることとしてもよい。
【0059】
なお、上述した各実施形態において、地下空間1に中柱55、中杭57を設置する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、地盤2が強固な場合には、図6に示すように、中杭57を省略することも可能であり、さらに、構築する地下空間1が小さく、土被りが浅い場合は、図7に示すように、中杭57及び中柱55を省略することも可能である。地下空間1内に中柱55が無い場合は、広い地下空間1のイメージを創出することが可能となる。中杭57、中柱55を設置する又は省略するかについては、設計時に地上構造物の重量、土被り深度、地質等を考慮して適宜決定する。
【0060】
なお、上述した各実施形態において、地下空間1を構築した後にタイロッド37の緊張力を解放し、タイロッド37を地下空間1から撤去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1(a)は本発明の第一実施形態に係る曲線パイプルーフを地盤内に設置した状態を示す縦断面図である。図1(b)は図1(a)のa−a’断面図である。
【図2】図2(a)は緊張材を地盤内に設置した状態を示す縦断面図である。図2(b)は図2(a)のb−b’断面図である。
【図3】図3(a)は支持体を設置した状態を示す縦断面図である。図3(b)は図3(a)のc−c’断面図である。
【図4】図4(a)は地下空間内に中杭、中柱を設置した状態を示す縦断面図である。図4(b)は図4(a)のB−B’断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る地下空間を山腹中に構築した状態を示す縦断面図である。
【図6】図6(a)は地下空間内の中杭を省略し、中柱のみを設置した状態を示す縦断面図である。図6(b)は図6(a)のA−A’断面図である。
【図7】地下空間内の中柱、中杭を省略した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 地下空間、2 地盤、3 発進立坑、5 到達立坑、7 鋼管、
7a 弧状の鋼管、7b 直線状の鋼管、9 掘進掘削装置、
11 掘削部、13 推進部、15 ドリルビット、17 モータ、
19 アウターケーシング、21 ジャッキ、23 架台、24 鋼管挿入用孔、
25 曲線パイプルーフ、27 第1の曲線パイプ、29 第2の曲線パイプ、
31a、31b 壁状パイプルーフ、33 第1の直線パイプ、
35 第2の直線パイプ、37 緊張材(=タイロッド)、
39 小口径用掘削部、40 緊張材挿入用孔、41 支持体、
43 支持杭、45 連結部、47 支持柱、49 貫通孔、
51 ナット、53 重機、55 中柱、57 中杭、59 山、
61 発進坑口、63 到着坑口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、
地下空間の構築予定位置の上部の地盤内に地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、
前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に緊張材を挿入する工程と、
前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を形成する工程と、
前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、
前記緊張材に緊張力を付与する工程と、
前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする地下空間の構築方法。
【請求項2】
前記曲線パイプルーフの下側を掘削するとともに、前記掘削により生じる地下空間内に前記曲線パイプルーフを支持するための中柱を設置する工程とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の地下空間の構築方法。
【請求項3】
前記曲線パイプルーフの下側を掘削するとともに、前記掘削により生じる地下空間内の地表面から地盤内に中杭を打設する工程と、
前記曲線パイプルーフを支持するための中柱を前記中杭の上に設置する工程とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の地下空間の構築方法。
【請求項4】
前記支持体は、
地盤内に打設される支持杭と、
前記曲線パイプルーフの端部同士を連結して固定するための連結部と、
前記支持杭の上部に設置され、前記連結部を支持するための支持柱とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の地下空間の構築方法。
【請求項5】
地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、
地下空間の構築予定位置の両側にそれぞれ立坑を設け、
前記構築予定位置の上部の地盤内に、前記立坑間に亘って地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、
前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に、前記立坑間に亘って緊張材を挿入する工程と、
前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を前記立坑内に形成する工程と、
前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、
前記緊張材に緊張力を付与する工程と、
前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする地下空間の構築方法。
【請求項6】
地下空間の構築予定位置の上部に鋼管を挿入して地盤内にパイプルーフを設置し、前記パイプルーフの下側地盤を掘削して地下空間を構築する地下空間の構築方法において、
丘陵部に構築される地下空間の構築予定位置の両側のうち一方に丘陵部の斜面を利用した坑口を設けて、他方に前記丘陵部の反対側の斜面を利用した坑口又は立坑のいずれかを設け、
前記構築予定位置の上部の地盤内に、前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑との間に亘って地上に向かって凸状に湾曲した鋼管を挿入して、曲線パイプルーフを設置する工程と、
前記曲線パイプルーフの下方の地盤内に、前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑との間に亘って緊張材を挿入する工程と、
前記曲線パイプルーフの両端部をそれぞれ支持するための支持体を前記一方の坑口と前記他方の坑口又は立坑内とに形成する工程と、
前記緊張材の両端部をそれぞれ前記支持体に接続する工程と、
前記緊張材に緊張力を付与する工程と、
前記曲線パイプルーフの下側を掘削して地下空間を構築する工程とを備えることを特徴とする地下空間の構築方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載された地下空間の構築方法により構築され、天井が地上に向かって凸状の曲面形状を有することを特徴とする地下空間。
【請求項8】
請求項1〜6に記載された地下空間の構築方法により構築され、天井が地上に向かって凸状の曲面形状を有することを特徴とする地下構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−332638(P2007−332638A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164916(P2006−164916)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】