説明

地中に埋設されたコンクリート構造物の補強方法及び補強されたコンクリート構造物

【課題】短時間に効率良くマンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物を補強することのできる補強方法、及び補強されたコンクリート構造物を提供する。
【解決手段】躯体部分101と、躯体部分101の頂版111に接続され躯体部分101の内部空間に連通する開口部121を具備する円筒状の首部102と、を有する地中に埋設されたコンクリート構造物の補強法は、開口部121の周りの頂版111の内部空間側の面111aに、躯体部分101の長手方向に沿い開口部121の中心を通る長手方向中心線Aに対して両側30°以上の範囲にわたる繊維強化プラスチック製の円弧形補強材1を、接着樹脂2を用いて接着する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物の補強方法及び補強されたコンクリート構造物に関するものであり、特に、簡単な方法で短時間でマンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物を補強するための補強方法、及び道路上を通行する車両からの輪荷重などに対する耐力が向上した補強されたコンクリート構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地中に埋設されている通信ケーブルの分岐、接続部の収容のための空間、及び作業者が入坑してケーブルの建設、保守作業を行う空間を確保するために、マンホール(人孔)が地中に埋設されている。
【0003】
マンホールの容量、形状は、ルート上の管路の条数、収容するケーブルの条数、或いは分岐方向などによって決定される。通常、マンホールは、標準規格の中から選定されるが、必要に応じて特別に形状、構造が設計される。マンホールの標準規格としては、直線形、分岐L形、分岐T形、分岐十字形のものがある。又、それぞれの形について、適用管路条数に応じて容量の異なる複数種類が規格されている。いずれのマンホールも、次のような基本的な構成を有する。
【0004】
図14に示すように、マンホール100は、矩形の躯体部分(コンクリートボックス)101、躯体部分101に連通する開口部121を有する円筒状の首部102、及び蓋103を有する。又、躯体部分101の側部には、ダクト104が形成され、管路200が接続されている。そして、管路200内を通して通信ケーブルなどが敷設される。マンホール100は、鉄筋コンクリート(セメントコンクリート、レジンコンクリートなど)で構成され、当初、側方土圧、路面荷重などに耐え得る強度設計になっている。又、マンホール100は、現場で鉄筋コンクリートを打設する現場打ち方式、或いはプレキャスト製品を現場に運搬、据え付けるブロック方式で地中に配設される。
【0005】
上述のような従来のマンホール100においては、次のような問題があった。つまり、マンホール100は、通常、道路300の下に土かぶりhが50cm〜1m程度の位置に埋設されているため、道路300上の車両400の通行による輪荷重による劣化が起こる。又、経年による劣化が、多くのマンホール100で見られる。実際にマンホール100の内部から観察すると、コンクリートのひびわれ(亀裂)、鉄筋の露出(爆裂)が観察される。このため、マンホール100の補修・補強が必要である。
【0006】
従来、マンホール100の補修としては、鉄筋が腐食して膨張し、かぶりコンクリート部分が剥落した箇所などの劣化部分をはつり落とし、防錆処理した後に断面修復することしか行われていなかった。しかしながら、斯かる補修方法は、施工に時間がかかり、又、補強効果は限定的なものである。
【0007】
一方、近年、炭素繊維やアラミド繊維などから成る強化繊維シートに樹脂材料を含浸させて、これを接着することで、コンクリート構造物を補強する工法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、斯かる補強工法においては、下地ケレン処理、プライマー処理、不陸修正処理、繊維シート接着処理(樹脂含浸、硬化)などのいくつもの工程を要するため、施工に時間がかかる。又、強化繊維シートは、補強繊維が直線であり、マンホール100の首部102の周りを効率的に補強することは難しい。更に、詳しくは後述するが、斯かる工法では、躯体部分101の頂版111の上面端部に発生する引張力に対しては、補強することができない。
【0008】
そして、上述のように施工に時間がかかると、マンホール100は、道路の下の地中に埋設されているため、交通規制が長時間におよび、補修・補強工事が難しいという問題がある。
【0009】
このように、従来、短時間に効率良くマンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物を補強する方法が求められている。本発明者の知る限りにおいて、このような目的に適う方法は未だ提案されていない。
【0010】
又、道路上を通行する車両からの輪荷重などに対する耐力が向上した、補強されたコンクリート構造物が求められている。
【特許文献1】特開平7−97460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、短時間に効率良くマンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物を補強することのできる補強方法、及び補強されたコンクリート構造物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、マンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物に対する施工が容易な補強方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に他の目的は、道路を通行する車両からの輪荷重などに対する耐力が向上した、補強されたコンクリート構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る地中に埋設されたマンホールの補強方法及び補強されたマンホールにて達成される。要約すれば、本発明は、躯体部分と、前記躯体部分の頂版に接続され前記躯体部分の内部空間に連通する開口部を具備する円筒状の首部と、を有する地中に埋設されたコンクリート構造物の補強法であって、前記開口部の周りの前記頂版の前記内部空間側の面に、前記躯体部分の長手方向に沿い前記開口部の中心を通る長手方向中心線に対して両側30°以上の範囲にわたる繊維強化プラスチック製の円弧形補強材を、接着樹脂を用いて接着することを特徴とする地中に埋設されたマンホールの補強方法である。
【0015】
本発明の一実施態様によると、地中に埋設されたマンホールの補強方法は更に、前記躯体部分の長手方向側版と前記頂版とで成す前記内部空間側の隅角部の、前記躯体部分の長手方向と直交する短手方向に沿い前記開口部の中心を通る短手方向中心線を中心として前記開口部の径の1.5倍の範囲に、前記頂版から30°以上60°以下の角度で前記頂板と前記長手方向側版との間に斜材をアンカーボルトを用いて固定する。好ましい一実施態様によると、前記円弧形補強材は、少なくともその円弧形状に沿って一方向に配列された強化繊維を有する。又、前記斜材は、前記アンカーボルトに加えて若しくは替えてパテ状の接着剤を用いて固定することができる。本発明の一実施態様によると、前記円弧形補強材としては、中心部に強化繊維として炭素繊維を含む繊維強化プラスチック層を配置し、その外側に電気絶縁性を有する強化繊維を含む繊維強化プラスチック層又は電気絶縁性を有する樹脂層を配置した断面構造を有するものを使用することができる。前記絶縁性を有する強化繊維としては、ガラス繊維を用いることができる。本発明の好ましい一実施態様によると、前記接着樹脂は、速硬化型のラジカル重合樹脂である。
【0016】
本発明の他の態様によると、躯体部分と、前記躯体部分の頂版に接続され前記躯体部分の内部空間に連通する開口部を具備する円筒状の首部と、を有し、前記開口部の周りの前記頂版の前記内部空間側の面に、前記躯体部分の長手方向に沿い前記開口部の中心を通る長手方向中心線に対して両側30°以上の範囲にわたる繊維強化プラスチック製の円弧形補強材が、接着樹脂を用いて接着されていることを特徴とする補強されたコンクリート構造物が提供される。本発明の一実施態様によると、補強されたコンクリート構造物は更に、前記躯体部分の長手方向側版と前記頂版とで成す前記内部空間側の隅角部の、前記躯体部分の長手方向と直交する短手方向に沿い前記開口部の中心を通る短手方向中心線を中心として前記開口部の径の1.5倍の範囲に、前記頂版から30°以上60°以下の角度で前記頂板と前記長手方向側版との間に斜材がアンカーボルトを用いて固定されている。好ましい一実施態様によると、前記円弧形補強材は、少なくともその円弧形状に沿って一方向に配列された強化繊維を有する。本発明の一実施態様によると、前記斜材は、前記アンカーボルトに加えて若しくは替えてパテ状の接着剤を用いて固定されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、短時間に効率良くマンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物を補強することができる。又、本発明の地中に埋設されたコンクリート構造物の補強方法は、マンホール等の地中に埋設されたコンクリート構造物に対して容易に施工することができる。更に、本発明によれば、道路を通行する車両からの輪荷重などに対する耐力が向上した、補強されたコンクリート構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る地中に埋設されたコンクリート構造物の補強方法及び補強されたコンクリート構造物を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
実施例1
本発明者は、上述のような従来の問題点に鑑み、地中に埋設されたコンクリート構造物であるマンホールの内部で見られる破損(コンクリートの亀裂、鉄筋の露出)の状況と、マンホールにかかる力について鋭意検討した。
【0020】
先ず、図1を参照して、本実施例にて本発明を適用するコンクリート構造物としてのマンホール100について説明する。マンホール100は、矩形の躯体部分(コンクリートボックス)101、円筒状の首部102、及び蓋103を有する。躯体部分101は、頂版111と、躯体部分101の長手方向に沿う側版(長手方向側版)112と、底版113と、躯体部分101の短手方向(長手方向に直交する方向)に沿う側版(短手方向側版)114とで矩形の内部空間を形成する。首部102は、頂版111に接続され、躯体部分101の内部空間に連通する開口部121を有する。又、躯体部分101の短手方向側版114には、ダクト104が形成され、管路200が接続される。
【0021】
道路を通行する車両などから地中に埋設されたマンホール100への輪荷重の主要なものとして、蓋103、首部102を経て頂版101に伝達されるものが挙げられる。そこで、本発明者は、地中に埋設されたマンホール100に車両の輪荷重がかかった場合の頂版111の応力を、FEM(finite element method:有限要素法)を用いて頂版111の下面(内部空間側)111a、上面(道路側)111bについて解析した。
【0022】
ここでは、一例として、直線形の3号マンホール(標準規格)の頂版111をモデル化して解析を行った。3号マンホールの寸法は次の通りである。
長手方向長さ(長さ)L(内法寸法):2.3m
短手方向長さ(幅)W(内法寸法):1.3m
高さH(内法寸法):1.5m
版厚:150mm
開口部の径d:900mm
【0023】
そして、図2に示すように、このマンホール100の頂版111に輪荷重が直接作用するものとしてFEM解析を行った。図2は、躯体部分101の長手方向に沿い開口部121の中心を通る軸線(以下「長手方向中心線」という。)A、及び、躯体部分101の短手方向に沿い開口部121の中心を通る軸線(以下「短手方向中心線」という。)Bで切り取った4分の1サイズの頂版111を示す。
【0024】
図中矢印が付された円弧状部分が首部102の接続部であり、この部分に矢印方向の輪荷重がかかる。FEM解析は、次の条件で行った。つまり、コンクリートは等方性材料として、3次元ソリッド要素でモデル化した。周辺2辺(図2及び図3中の長手方向・短手方向の各中心線の反対側の辺)は完全拘束し、長手方向・短手方向の各中心線は対称境界条件とした。又、解析は、弾性解析とした。
【0025】
結果を図3及び図4に示す。図3は、躯体部分101の内部空間側の頂版111の面(以下「頂版下面」という。)111aに作用する応力の分布を示す。又、図4は、躯体部分101の外側の頂版111の面(以下「頂版上面」という。)111bに作用する応力の分布を示す。尚、図3及び図4は、長手方向中心線A及び短手方向中心線Bで切り取った4分の1サイズの頂版111についての結果を示す。但し、解析結果は、他の4分の1サイズ部分についても同様である。即ち、頂版111の応力は、長手方向中心線A、短手方向中心線Bに対し略対称に現れた。
【0026】
図3及び図4に示すパターン凡例に併記した応力値(単位:N/mm2)が負であれば圧縮応力、正であれば引張応力が作用していることを示す。又、図3及び図4中に示す矢印は、応力の作用方向を示している。
【0027】
[繊維強化プラスチック製円弧形補強材の取り付け]
図3示す結果から、頂版111に首部102からの輪荷重がかかると、頂版下面111aの開口部121の周りには引張応力が作用していることが分かる。コンクリートは、圧縮力には強く、引張力には弱い。
【0028】
図5をも参照して更に説明する。本発明者の検討によれば、頂版下面111aには、開口部121の周辺で、長手方向中心線Aを基準(0°)として±60°の範囲、より詳細には±45°の範囲、特に、±30°の範囲に強い引張応力が発生している。
【0029】
そこで、本発明の一実施態様によれば、地中に埋設されたマンホール100の補強方法は、図5に示すように、開口部121の周りの頂板下面111aに、円弧形の繊維強化プラスチック(FRP)製の補強材(以下「円弧形補強材」という。)1を、接着樹脂を用いて接着することを含む。
【0030】
円弧形補強材1は、開口部121を通るマンホール100の長手方向中心線Aを基準(0°)として±30°以上(即ち、長手方向中心線Aに対し両側30°以上)の範囲、より好ましくは±45°以上(即ち、長手方向中心線Aに対し両側45°以上)の範囲にわたる連続した円弧形とする。
【0031】
円弧形補強材1は、所定幅を有するように作成され、上記の如く開口部121の周りに配置されることから、当然、その幅方向の最内周の曲率半径は、開口部121の曲率半径以上である。円弧形補強材1は、開口部121の周により近接して取り付けることが好ましい。しかし、頂版下面111aのコンクリート面の状態などに応じて、開口部121の周から所定距離g隔てて円弧形補強材1を取り付けることができる。開口部121の周りに作用する引張応力に対する補強効果などの点から、距離gは、100mm以下とするのが好ましい。より好ましくは50mm以下とする。一方、通常、距離gは、5mm以上とされる。
【0032】
尚、マンホール100が直線形ではない場合、例えば、分岐L形、分岐T形、分岐十字形である場合にも、首部102が設けられた、分岐部を除いた基本となる躯体を矩形と擬制して上記同様に考えればよい。
【0033】
頂版下面111aに作用する引張応力に対する補強の観点からは、円弧形補強材1は、長手方向中心線Aに対し両側30°以上の範囲で、どの程度の角度まで連続させるかは、特に制限されるものではない。但し、マンホール100の首部102の高さhは、通常、50cm〜1mであり、又、開口部121の内径は60〜90cmである。そして、既に硬化された、所定幅を有する円弧形補強材1を、この首部102の開口部121を通して躯体部分101内に運び入れる。これらのことを考慮すると、円弧形補強材1は、通常、長手方向中心線Aを基準(0°)として±90°(即ち、長手方向中心線Aに対し両側90°以内)の範囲にわたり連続するものとする。又、図3に示す結果から分かるように、長手方向中心線Aを基準(0°)として±60°(即ち、長手方向中心線Aに対し両側60°以内)の範囲にわたり連続する円弧形補強材1を使用すれば、実用上十分の補強効果を得ることができ、又、この場合作業性も良好である。よって、好ましくは、長手方向中心線Aを基準(0°)として±30°〜±60°、より好ましくは±45°〜±60°にわたる2つの円弧形補強材1を、図5に示すように、開口部121の周りに対称に設ける。
【0034】
図6は、本発明で使用し得る円弧形補強材1の一実施例を示す。円弧形補強材1は、少なくとも、当該円弧形補強材1の円弧形状に沿って一方向に引き揃えられた(即ち、円弧形補強材1の円周方向に配列された)連続繊維である強化繊維f1の層(以下「円弧状一方向繊維層」という。)F1を有することが好ましい。そして、強化繊維f1にマトリクス樹脂が含浸され、硬化されることで円弧形補強材1が形成される。
【0035】
一方向に配列される強化繊維f1は、多数本のフィラメントを平行に或いは緩く撚りを掛けて集束して作製されるストランド、或いはこのストランドを更に複数本平行に或いは緩く撚りを掛けて集束したもの(ロービング、ヤーン)とされる。これにより、円弧形補強材1の円弧状一方向繊維層F1は、フィラメントが複数層に積層され一方向に配向された状態でマトリクス樹脂により接着された一方向配列繊維組織を有することになる。
【0036】
強化繊維f1としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ボロン繊維を含む無機繊維;チタン、スチールを含む金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、高強度ポリプロビレンを含む有機繊維;から選択されるいずれかの繊維、或いは、これらの繊維を複数種類混入したハイブリッドタイプの繊維を使用することができる。
【0037】
強化繊維f1としては、所望の補強強度などに応じて上記の如き繊維から選択して使用することができるが、典型的には、炭素繊維を好適に使用することができる。炭素繊維は、PAN系、ピッチ系、その他、いずれのタイプの炭素繊維であっても構わない。好ましくは、引張強度が100Kgf/mm2(980N/mm2)以上、又引張弾性率が10Tonf/mm2(98,000N/mm2)以上の高強度、高弾性率のものを使用する。
【0038】
円弧形補強材1を構成する円弧状一方向繊維層F1としては、強化繊維f1を略均一に互いに密に一方向に配置した一方向配列強化繊維シートを用いてもよい。尚、円弧形補強材1は、同種若しくは異種の強化繊維f1から成る実質的に複数層の円弧状一方向繊維層F1を有していてよい。
【0039】
又、円弧状一方向繊維層F1の他に、円弧状一方向繊維層F1の第1面(表面)及び/又は第2面(裏面)に、補助層を設けることができる。
【0040】
例えば、補助層として、円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維f1と同種又は異種の強化繊維から成るマット、クロス或いはニットの層(以下「補助層」という。)を、円弧状一方向繊維層F1の第1面(表面)及び/又は第2面(裏面)に、単層若しくは複数層積み重ねることができる。これにより、所望に応じて円弧形補強材1の断面剛性を向上させたり、所望の表面性状を与えることができる。
【0041】
或いは、補助層として、円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維f1と同種又は異種の強化繊維から成る、円弧状一方向繊維層F1の強化繊維f1と交差する方向に引き揃えられた強化繊維の層(典型的には、円弧形の半径方向に引き揃えられた強化繊維の層)を、円弧状一方向繊維層F1の第1面(表面)及び/又は第2面(裏面)に、単層若しくは複数層積み重ねることができる。これにより、円弧形補強材1に対し、円弧形状の周方向の引張強度に加えて、それに交差する方向(例えば、直交方向)の強度を付与することができる。
【0042】
補助層を構成する強化繊維は、円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維f1と同様に上述の群より選択されるものを使用することができる。円弧形補強材1は、円弧状一方向繊維層F1と補助層とが交互に複数層積層された構成を有していてもよい。又、円弧形補強材1は、円弧状一方向繊維層F1に対し、同種又は異種の補助層を複数組み合わせて設けてもよい。
【0043】
ここで、マットは、製織によらずに作製される不織布状の任意のものであってよく、例えば、切断されたストランドを無方向に略均一な厚さに積み結合剤で固めたチョッブドストランドマット、連続ストランドを無方向に略均一な厚さに積み結合剤で固めたコンティニュアスストランドマットなどが挙げられる。クロスは、平織、朱子織など任意の織物組織を有する製織により作製される織物であり、ロービングクロスであってもよい。ニットは、縦編み、横編みいずれの編み物組織を有するものであってもよい。
【0044】
又、補助層として、円弧状一方向繊維層F1の強化繊維f1と交差する方向に引き揃えられた強化繊維の層(交差繊維層)を設ける場合、円弧状一方向繊維層F1の強化繊維f1と組み合わせて2方向、若しくは交差繊維層を多層設けることで更に多方向に強化繊維を配置することができる。
【0045】
図7は、円弧状一方向繊維層F1の他に補助層を設けた円弧形補強材1の一実施例の断面構成を示す。図7に示す円弧形補強材1は、断面中心部に円弧状一方向繊維層F1として導電性を有する強化繊維f1の層を有する。更に、この円弧形補強材1は、この円弧状一方向繊維層F1の外側、ここでは、円弧状一方向繊維層F1の第1面(表面)及び第2面(裏面)に、電気絶縁性を有する強化繊維f2の層(補助層)F2を積層した断面構造(サンドイッチ構造)を有する。
【0046】
好ましくは、円弧状一方向繊維層F1の強化繊維f1として導電性を有する繊維である炭素繊維を用いる場合に、補助層F2の電気絶縁性を有する強化繊維f2としてガラス繊維を好適に用いることができる。又、ガラス繊維f2から成る補助層F2の組織としては、マットを好適に採用し得る。
【0047】
このように、円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維f1が導電性繊維である場合に、その少なくとも一面(マンホールに適用した際に躯体部分101の内部空間に面する側)に電気絶縁性を有する強化繊維f2を配置することによって、マンホール100内での万一の漏電などに対する安全性を高める効果がある。
【0048】
尚、円弧状一方向繊維層F1として炭素繊維などの導電性を有する繊維を用いる際に、円弧形補強材1の表面に絶縁層を設ける目的のためには、補助層として、補強繊維を含有しない電気絶縁性の樹脂層を円弧形補強材1を設けてもよい。
【0049】
マトリクス樹脂としては、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、又は、アクリル樹脂(MMA(メチルメタクリレート)樹脂等)、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などのラジカル反応系樹脂(ラジカル重合樹脂)を少なくとも1種類以上含むものを使用することができる。
【0050】
又、円弧形補強材1の強化繊維の体積含有率は、所望の引張強度が得られ、又樹脂含浸性も良好であるように、通常、20〜70体積%とされる。
【0051】
円弧形補強材1の作製方法は、特に制限されるものではなく、利用可能な任意の成形方法を採用することができる。生産性や、製品の寸法精度の安定性の点から、引き抜き成形法が好適である。引き抜き成形法は当業者には周知の通りのものであり、円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維f1(場合によっては更にマット、クロス、ニットなどの補助層F2を構成する強化繊維f2)の供給、マトリクス樹脂の含浸、金型による賦形・硬化、引っ張り、切断などを含む一連の工程を連続して行うことができる。
【0052】
円弧形補強材1の断面構成は、要求性能に応じて適宜変更可能である。通常、引張強度が1,900〜5,000N/mm2、引張弾性率が0.6×105〜6.5×105N/mm2のものが好ましく使用される。
【0053】
円弧形補強材1の設計厚さt、円弧形補強材1の幅(強化繊維f1の配向方向に略直交する方向の長さ)wは、補強されるマンホール100の寸法、強化繊維f1の種類などに応じて適宜決定する。通常、円弧形補強材1の厚さtは2〜5mm、幅wは20〜100mmとされる。
【0054】
例えば、円弧形補強材1の円弧状一方向繊維層F1を構成する強化繊維fとして炭素繊維を用いる場合、7μmφのモノフィラメントを、例えば、約24,000本集束したストランドを50本集束したロービング、即ち、強化繊維f1を使用することができる。この強化繊維f1を、繊維目付300〜5,000g/m2にて、均一に引き揃え、互いに密に一方向に配列することができる。これにより、例えば、図6に示すように円弧形補強材1が円弧状一方向繊維層F1のみから成る場合、マトリクス樹脂を含浸して硬化させた後の厚さtは、0.5〜15mmとされる。
【0055】
又、例えば、図7に示すように、円弧形補強材1の外側にガラス繊維マットから成る補助層F2を設ける場合、ガラス繊維マットの繊維目付は300〜2,000g/m2とすることができる。これにより、マトリクス樹脂を含浸して硬化させた後の円弧形補強材1(円弧状一方向繊維層F1及び補助層F2を含む)の厚さtは、1〜20mmとされる。
【0056】
次に、円弧形補強材1を頂版下面111aに貼り付ける工程について更に説明する。本発明に従う円弧形補強材1の貼り付け工程は、次の各工程の全て或いはいずれかの組み合わせを有する。図8(a)〜(d)は、円弧形補強材1を張り付ける部分の頂版下面111aの概略断面を示す。
【0057】
(1)ケレン処理工程
図8(a)に示すように、頂板下面111aにおける円弧形補強材1を貼り付ける部分の下地コンクリートをケレン処理する。ケレン処理は、ディスクサンダー、サンドブラストなどの任意の手段により行うことができる。
【0058】
(2)プライマー塗布工程
次に、図8(b)に示すように、ケレン処理した頂板下面111aにプライマー3を塗布して下地処理する。プライマー3は、次に接着樹脂にて接着する円弧形補強材1とコンクリート面との馴染み馴染みを向上させる。プライマー3としては、次に塗布する接着樹脂2との親和性が良く、又円弧形補強材1と共に使用することが許容される任意のものを用いることができる。プライマー3としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの室温硬化樹脂、又は、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカル反応系樹脂(ラジカル重合樹脂)を用いることができる。又、プライマー3としては、特に、硬化の早い速硬化型のラジカル反応系樹脂、例えばアクリル樹脂が好ましい。より具体的には、速硬化型のアクリル樹脂としては、日鉄コンポジット(株)製FP−Mを好適に用いることができる。プライマー3の塗布量は、好ましくは、円弧形補強材1の表面積当たり0.1〜0.4kg/m2である。
【0059】
(3)接着樹脂塗布工程
次に、図8(c)に示すように、接着樹脂2を頂板下面111aのコンクリート面(プライマー3を適用する場合はプライマー塗布面)に塗布する。接着樹脂2としては、円弧形補強材1と共に使用することが許容される任意のものを用いることができる。接着樹脂2としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの室温硬化樹脂、又は、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などのラジカル反応系樹脂(ラジカル重合樹脂)を用いることができる。特に、硬化の早い速硬化型のラジカル反応系樹脂、例えばアクリル樹脂が好ましい。より具体的には、速硬化型のアクリル樹脂としては、日鉄コンポジット(株)製FR−MIPを好適に用いることができる。接着樹脂2の塗布量は、好ましくは、円弧形補強材1の表面積当たり0.5〜5.0kg/m2である。
【0060】
(4)円弧形補強材貼着工程
次に、図8(d)に示すように、円弧形補強材1を、接着樹脂2(プライマー3を適用する場合は更にプライマー3)を介して頂板下面111aに付着させる。その後、接着樹脂2が硬化することにより、円弧形補強材1のマンホール100への適用は終了する。
【0061】
尚、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた円弧形補強材1を用いる場合は、エポキシ樹脂接着剤で接着することが好ましい。又、マトリクス樹脂としてアクリル樹脂を用いた円弧形補強材1を用いる場合は、アクリル樹脂接着剤で接着することが好ましい。
【0062】
本発明の好ましい実施例によれば、円弧形補強材1を頂板下面111aに貼り付ける工程は、上記工程(1)〜(4)の全てを有する。但し、上記工程(2)のプライマー塗布工程、更には上記工程(1)のケレン処理工程は、場合によっては省くことができる。又、上記工程(3)の接着樹脂塗布工程においては、接着樹脂2を円弧形補強材1の面に塗布してもよい。又、上記工程(1)〜(4)の他、公知のコンクリートのひび割れ補修工程など、任意の工程を適宜追加してもよいことを、当業者は容易に理解されよう。
【0063】
尚、図9に示すように、必要に応じて、例えば、直線形の一方向繊維強化プラスチック製の補強材4を頂板下面111aの任意の箇所に、任意の配向にて貼り付けることができる。この追加の補強材4は、特に一方向強化繊維が円弧状に配列されていないことを除けば、上述の円弧形補強材1と同様の構成とすることができる。又、その頂板下面111aへの貼り付け工程も、上記円弧形補強材1と同様とすることができる。好ましくは、この追加の補強材4は、頂板下面111aにおいて引張応力が作用している箇所に、その引張応力の作用方向に沿って一方向連続強化繊維が配向するように貼り付ける。
【0064】
上述のように、円弧形補強材1を頂板下面111aに貼り付けることによって、開口部121の周りの頂版下面111aに作用する引張応力(図3)に対して、円弧形補強材1が応力を分担することができ、マンホール100の構造を補強することができる。又、既に硬化された円弧形補強材1をマンホール100内に運び入れ、これを所定箇所に貼り付けるといった極めて簡単な作業にて、作業性良くマンホール100を補強することができる。従って、短時間に高率良くマンホール100の補強工事を施工することができる。特に、プライマー3、接着樹脂2として速硬化型の接着樹脂を使用することで、極めて短時間に補強工事を完了することができる。これにより、地中に埋設されたマンホール100の補強工事のための交通規制時間を短縮することができる。
【0065】
[斜材の取り付け]
上述のように、頂版下面111aの開口部121の周りに作用する引張応力に対しては、躯体部分101の内部空間から円弧形補強材1を貼り付けることで補強することができる。
【0066】
更に、マンホール100においては、図3及び図4に示す結果から分かるように、頂版111に首部102からの輪荷重がかかると、首部102付近の長手方向側版112と頂板111との接合部において、頂板上面111bに引張応力が作用している。コンクリートは、圧縮力には強く、引張力には弱い。又、マンホール100の補強工事を短時間で高率的に行うためには、この頂板上面111bに対する補強を躯体部分101の内部空間から補強することが求められる。
【0067】
図10をも参照して更に説明すれば、短手方向中心線Bを中心として、開口部121の径の約1.5倍の範囲において、長手方向側版112と頂板111との接合部の頂板上面111bに強い引張応力が発生している。
【0068】
そこで、本発明の他の実施態様によれば、地中に埋設されたマンホール10の補強方法は更に、図11に示すように、頂板下面111aと長手方向側版112とで成す躯体部分101の内部空間側の隅角部の、短手方向中心線Bを中心として開口部121の径dの1.5倍の範囲Rに、頂版下面111aと長手方向側版の躯体部分101の内部空間側の面(以下「長手方向側版内面」という。)112aとに固定された斜材(ストラット、支え部材)5を設けることを含む。換言すれば、地中に埋設されたマンホール10の補強方法は、長手方向側版112と頂板111とで成す隅角部の軸線上への開口部121の投影部分の両端側に対称に延びる、当該投影部分の長さの1.5倍の範囲に、頂板下面111aと長手方向側版内面112aとに固定された斜材(ストラット、支え部材)5を設けることを含む。
【0069】
斜材5は、頂版111(頂板下面111a)から30°以上60°以下の角度θにて設ける。斜材5の軸線が頂板下面111aと成す角度θが、30°未満であるか、或いは60°を超えると、曲げ応力が発生した時の力の伝達が非効率となる。最も好ましくは、斜材5の軸線が頂板下面111aと成す角度θは45°である。尚、図11には、頂板下面111aと長手方向側版112とで成す一方の隅角部のみ示すが、通常、反対側の隅角部にも同様にして斜材5を設ける。
【0070】
斜材5としては、図12(a)、(b)に示すように、棒材、板材を好適に使用することができる。又、斜材5の材料は、圧縮強度や圧縮剛性の観点から、ステンレススチール、鋼など金属が好ましい。
【0071】
更に説明すると、斜材5は、頂板下面111aと長手方向側版内面112aとの間に斜めに配置される斜材部53と、この斜材部53の軸線(長さ)方向両端部に設けられ、頂板下面111a、長手方向側版内面112aに斜材5を固定するための固定部51と、を有する。固定部51には、ボルト孔(アンカー孔)52が設けられている。これにより、斜材5は、このボルト孔52を利用してアンカーボルト6により頂板下面111a、長手方向側版内面112aに固定することができる。
【0072】
斜材5として、図12(a)に示すような棒材を用いる場合、要求される補強強度に応じて、典型的には、上記所定の範囲R内に所定間隔(通常、等間隔)で複数個取り付ける。斜材5の構成は、全体として要求される補強強度、取り付ける棒材の数(即ち、1個の斜材5に要求される補強強度)などに応じて適宜設定可能である。又、斜材5として、図12(b)に示すような板材を用いる場合、典型的には、上記所定の範囲R内で連続した1個の板材を用いる。上記範囲内に所定間隔(通常、等間隔)に分割された複数枚の板材を取り付けてもよい。
【0073】
斜材5の断面構成は、要求性能に応じて適宜変更可能である。棒材の場合、例えば、次のようなものを好適に用いることができる。4.5mm(厚さ)×120mm(幅:断面長)×740mm(長さ)の鋼材(SS400)の、軸線方向(長さ方向)中央の500mm部分を断面(軸線方向に対し直交方向の断面)U字形に加工して斜材部53とする。そして、この斜材部53の軸線方向両端部の120mm部分を、斜材部53に対し45°の角度で曲げて固定部51を形成する。この場合、好ましくは、溶融亜鉛メッキを施すことで耐食性を向上させる。
【0074】
又、板材の場合、例えば、次のようなものを好適に用いることができる。4.5mm(厚さ)×500mm(幅)×740mm(長さ)のステンレスチール材(SUS304)の、長さ方向中央の500mm部分を斜材部53とする。この斜材部53の長さ方向両端部の120mm部分を、斜材部53に対し45°の角度で曲げ加工して固定部51を形成する。
【0075】
上述のように、斜材5は、固定部51においてアンカーボルト6で頂板下面111a、長手方向側版内面112aに固定することができる。この他に、図13(a)に示すように、固定部51と、頂板下面111a、長手方向側版内面112aのコンクリート面との間にパテ状の接着剤7を用いることで、斜材5を頂板下面111a、長手方向側版内面112aに固定することができる。この場合、ボルト孔52(図11)は必要ない。パテ状の接着剤7としては、エポキシ樹脂パテ材を用いることができる。より具体的には、パテ状の接着材7としては、日鉄コンポジット(株)製FE−Zを好適に用いることができる。又、図13(b)に示すように、パテ状の接着剤7とアンカーボルト6を併用してもよい。
【0076】
つまり、斜材5を取り付ける工程は、斜材5を躯体部分100の内部空間にて所定位置に適合させる工程、そしてこの斜材5をアンカーボルト6及び/又はパテ状7の接着剤を用いて固定する工程を含む。
【0077】
尚、斜材5の固定部51を固定する箇所のコンクリート面の下処理、アンカー固定孔の加工処理など、公知の任意の工程を適宜追加してもよいことは当業者には容易に理解されよう。
【0078】
上述のように、頂板上面111bの端部に作用する引張応力(図4)に対しては、上記所定の範囲Rにおいて頂板下面111aと長手方向側版内面112aとに固定された斜材5を設けることによって応力を緩和することができる。又、例えば金属製の棒材とされる斜材5をマンホール100内に運び入れ、これを所定箇所にアンカーボルトなどで固定するといった極めて簡単な作業にて、作業性良くマンホール100を補強することができる。従って、短時間に高率良く補強工事を施工することができる。これにより、地中に埋設されたマンホール100の補強工事のための交通規制時間を短縮することができる。
【0079】
以上説明したように、地中に埋設されたマンホール100は、最も好ましくは、円弧形補強材1と斜材5との双方を所定箇所に取り付ける。これによって、開口部121の周りの頂版下面111aに作用する引張応力(図3)、頂板上面111bの端部に作用する引張応力(図4)の両方、即ち、首部102を介して躯体部分101に作用する輪荷重によってマンホール100に発生する主要な引張応力に対して、マンホール100の内側から短時間に効率良く補強を施すことができる。
【0080】
又、本発明によれば、上述のような補強方法によって補強されたマンホール100が提供される。つまり、本発明に従う補強されたマンホール100は、一実施形態によれば、開口部121の周りの所定箇所に、円弧形補強材1が貼り付けられている。又、他の実施形態によれば、補強されたマンホール100は更に、頂板下面111aと長手方向側版112とで成す隅角部の所定箇所において、頂板下面111aと長手方向側版112とに固定された斜材5が設けられている。最も好ましくは、本発明に従う補強されたマンホール100は、円弧形補強材1と斜材5との両方を有する。これにより、開口部121の周りの頂版下面111aに作用する引張応力(図3)、頂板上面111bの端部に作用する引張応力(図4)の両方、即ち、首部102を介して躯体部分101に作用する輪荷重によってマンホール100に発生する主要な引張応力に対する耐力が向上したマンホール100を提供することができる。
【0081】
次に、本発明に従う一具体例について説明する。本例では、上記直線形3号マンホール(標準規格)に円弧形補強材1及び斜材5を適用する。
【0082】
・円弧形補強材
強化繊維:高強度炭素繊維
マトリクス樹脂:アクリル樹脂[日鉄コンポジット(株)製FR−MIP]
形状:
幅w 50mm
厚さt 5mm
内周の曲率半径 460mm
長手方向中心線に対し±60°にわたる円弧形状
使用強化繊維の機械的特性:
引張強度:4900N/mm2(炭素繊維断面積ベース)
引張弾性率:2.39×105N/mm2(炭素繊維断面積ベース)
この円弧形補強材1を、開口部121の周からの距離gが10mmとなる位置に、頂版下面111aをケレン処理した後、次のプライマー3、接着樹脂2を用いて接着した。
プライマー:速硬化型アクリル樹脂[日鉄コンポジット(株)製 FR−M]
接着樹脂:速硬化型アクリル樹脂[日鉄コンポジット(株)製 FR−MIP]
【0083】
・斜材
材料:鋼材(SS400に亜鉛メッキを施したもの)
形状:棒材(斜材部は断面U字形状)
寸法:斜材部長さ50cm/斜材部断面長12cm/固定部長さ12cm/
アンカー孔8.2mmφ×2カ所
数(間隔):7個(22.5cm間隔)
アンカーボルト:M8拡径式アンカー
接着剤:エポキシ樹脂パテ材
[日鉄コンポジット(株)製 FE−Z(4kg/m2)]
この斜材5を、アンカーボルトにて頂版下面111aと長手方向側版内面112aに固定した。尚、開口部121の径は900mmであり、斜材5取付範囲Rは、短手方向中心線Bを中心として1.35mの範囲であった。
【0084】
尚、上記実施例では、コンクリート構造物は、通信ケーブルの分岐スペース等として使用されるマンホールであるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、上記マンホールにて極めて有効に作用するものであるが、躯体部分と、この躯体部分の頂版に接続され前記躯体部分の内部空間に連通する開口部を具備する円筒状の首部と、を有し、地中に埋設されて使用される任意のコンクリート構造物に対して等しく適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を適用し得るマンホールの概略斜視図である。
【図2】FEM解析の荷重条件のコンピュータ出力を示す図である。
【図3】FEM解析による頂版下面の応力分布のコンピュータ出力を示す図である。
【図4】FEM解析による頂版上面の応力分布のコンピュータ出力を示す図である。
【図5】円弧形補強材の適用範囲を説明するための頂版下面の模式図である。
【図6】円弧形補強材の一実施例の斜視図である。
【図7】円弧形補強材の他の実施例の断面図である。
【図8】円弧形補強材の貼り付け工程を説明するための模式図である。
【図9】円弧形補強材の他の適用例を示す頂版下面の模式図である。
【図10】斜材の適用範囲を説明するための頂版下面の模式図である。
【図11】斜材の取り付け方法を説明するためのマンホールの部分断面図である。
【図12】(a)棒状の斜材、(b)板状の斜材の一実施例の斜視図である。
【図13】(a)、(b)斜材の取り付け他の取り付け方法を説明するためのマンホールの部分断面図である。
【図14】マンホールの一例の模式図である。
【符号の説明】
【0086】
1 円弧形補強材
2 接着樹脂
3 プライマー
5 斜材
100 マンホール
101 躯体部分
102 首部
111 頂版
111a 頂版下面
111b 頂版上面
112 長手方向側版
112a 長手方向側版内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体部分と、前記躯体部分の頂版に接続され前記躯体部分の内部空間に連通する開口部を具備する円筒状の首部と、を有する地中に埋設されたコンクリート構造物の補強法であって、前記開口部の周りの前記頂版の前記内部空間側の面に、前記躯体部分の長手方向に沿い前記開口部の中心を通る長手方向中心線に対して両側30°以上の範囲にわたる繊維強化プラスチック製の円弧形補強材を、接着樹脂を用いて接着することを特徴とする地中に埋設されたマンホールの補強方法。
【請求項2】
更に、前記躯体部分の長手方向側版と前記頂版とで成す前記内部空間側の隅角部の、前記躯体部分の長手方向と直交する短手方向に沿い前記開口部の中心を通る短手方向中心線を中心として前記開口部の径の1.5倍の範囲に、前記頂版から30°以上60°以下の角度で前記頂板と前記長手方向側版との間に斜材をアンカーボルトを用いて固定することを特徴とする請求項1のマンホールの補強方法。
【請求項3】
前記円弧形補強材は、少なくともその円弧形状に沿って一方向に配列された強化繊維を有することを特徴とする請求項1又は2のマンホールの補強方法。
【請求項4】
前記斜材は、前記アンカーボルトに加えて若しくは替えてパテ状の接着剤を用いて固定することを特徴とする請求項2又は3のマンホールの補強方法。
【請求項5】
前記円弧形補強材は、中心部に強化繊維として炭素繊維を含む繊維強化プラスチック層を配置し、その外側に電気絶縁性を有する強化繊維を含む繊維強化プラスチック層又は電気絶縁性を有する樹脂層を配置した断面構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のマンホールの補強方法。
【請求項6】
前記絶縁性を有する強化繊維はガラス繊維であることを特徴とする請求項5のマンホールの補強方法。
【請求項7】
前記接着樹脂は、速硬化型のラジカル重合樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載のマンホールの補強方法。
【請求項8】
躯体部分と、前記躯体部分の頂版に接続され前記躯体部分の内部空間に連通する開口部を具備する円筒状の首部と、を有し、前記開口部の周りの前記頂版の前記内部空間側の面に、前記躯体部分の長手方向に沿い前記開口部の中心を通る長手方向中心線に対して両側30°以上の範囲にわたる繊維強化プラスチック製の円弧形補強材が、接着樹脂を用いて接着されていることを特徴とする補強されたコンクリート構造物。
【請求項9】
更に、前記躯体部分の長手方向側版と前記頂版とで成す前記内部空間側の隅角部の、前記躯体部分の長手方向と直交する短手方向に沿い前記開口部の中心を通る短手方向中心線を中心として前記開口部の径の1.5倍の範囲に、前記頂版から30°以上60°以下の角度で前記頂板と前記長手方向側版との間に斜材がアンカーボルトを用いて固定されていることを特徴とする請求項8の補強されたコンクリート構造物。
【請求項10】
前記円弧形補強材は、少なくともその円弧形状に沿って一方向に配列された強化繊維を有することを特徴とする請求項8又は9のコンクリート構造物。
【請求項11】
前記斜材は、前記アンカーボルトに加えて若しくは替えてパテ状の接着剤を用いて固定されていることを特徴とする請求項9又は10のマンホールの補強方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−45917(P2006−45917A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228628(P2004−228628)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】