説明

地中アンカ

【課題】耐摩耗性に優れた地中アンカを提供する
【解決手段】軸棒の先端側に螺旋状の掘削刃を有する鋳鉄製の地中アンカであって、前記鋳鉄は、球状黒鉛鋳鉄からなり、FCD600以上の強度の材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線や電話線等の電柱の支線あるいは建築構造物等の所定の構造物を地中において支持する地中アンカに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、地中に埋設される鋳鉄製の軸棒の先端側に間欠的に螺旋状の掘削刃を一体的に有した、全体形状が棒状を呈する地中アンカを提案している(特許文献1〜4参照)。すなわち、この提案に係る地中アンカは、鋳鉄製の軸棒の先端側に所定の間隔を保って、かつ、先端側(地中に埋設される側)よりも上部ほど直径が大きくなる螺旋状の掘削刃を一体的に有して構成されている。そして、この地中アンカは、電柱を立設するときの穴掘建柱車の回転部(オーガ)を用いて地中の任意の深さに簡単に埋設できる特長を有している。
【0003】
図4は、上記従来の地中アンカAを用いて地中Gに立設されている電柱イを支持している例を示している。この地中アンカAは、電柱イの近くに穴掘建柱車のオーガを用いて埋設され、その埋設された地中アンカAの上端部と電柱イの上端部とが支線棒ロ及び支線ハを用いて接続されて電柱イの支持が行われるように構成されている。
【0004】
この地中アンカAは、従来の地中アンカのように、地中アンカの埋設する場所を大きく掘削した後、地中アンカを設置し、さらに埋め戻しを行う必要がなく、しかもコンクリートを打設することがないので養生時間を必要とせず、このため、地中アンカの設置費用を大幅に削減できるという特長を有している。
【特許文献1】特開2000−1850号公報
【特許文献2】特開2001−59221号公報
【特許文献3】特開2001−182058号公報
【特許文献4】特開2001−271345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地中アンカの埋設される地盤の性質は千差万別であり、軟弱な地盤から硬質な地盤まで存在している。しかし、いずれにしても全く砂利や小石等の礫を含まない地盤は希であり、砂利や小石等のこのような硬い固形物を含む地盤に地中アンカをねじ込みにより埋設することは、研摩材の中に地中アンカをねじ込むことと同じであり、地中アンカの摩滅(摩耗と同意義で使用している。)を避けることは不可能である。しかし、地中アンカが摩滅することは、地中アンカの体積の減少となり、地中アンカの支持力(耐張力)を減少させることにつながるので、摩滅に強い地中アンカの出現が待たれていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に応えるためになされたものであって、その目的は、地中アンカが地中にねじ込みにより埋設されるときの摩滅量を少なくすることのできる地中アンカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地中アンカは、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸棒の先端側に螺旋状の掘削刃を有する鋳鉄製の地中アンカであって、前記鋳鉄は、球状黒鉛鋳鉄であることを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の地中アンカは、鋳鉄は、FCD600以上の強度を有することを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の地中アンカは、鋳鉄は、FCD600からなることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載の地中アンカは、螺旋状の掘削刃は、軸棒の軸心方向に沿って所定の間隔を保って複数個設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項5に記載の地中アンカは、軸棒の先端側には、切込刃が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の地中アンカにおいて、鋳鉄は、球状黒鉛鋳鉄からなるので、耐食性,耐摩耗性に優れたものとすることができる。
本発明の請求項2に記載の地中アンカにおいて、鋳鉄は、FCD600以上の強度を有するので、耐摩耗性に優れ、地中アンカを地中にねじ込みにより埋設したときの地中アンカの摩耗量を小さくすることができる。
本発明の請求項3に記載の地中アンカにおいて、鋳鉄は、FCD600からなるので、耐摩耗性に優れ、地中アンカを地中にねじ込みにより埋設したときの地中アンカの摩滅量を少なくすることができ、しかも安価に製造することができる。
本発明の請求項4に記載の地中アンカにおいて、螺旋状の掘削刃は、軸棒の軸心方向に沿って所定の間隔を保って複数個設けられているので、耐摩耗性に優れた地中アンカを効果的に埋設することができる。
本発明の請求項5に記載の地中アンカにおいて、軸棒の先端側には、切込刃が設けられているので、切込刃も耐摩耗性に優れ、地中アンカの埋設を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、一実施の形態に係る地中アンカAの正面図、同図(b)はその背面図、同図(c)は同図(a)の上部部分の右側面図である。
【0010】
この地中アンカAの形状から説明すると、この地中アンカAは、先端側(図示において下端側)がこの先端側と反対側の上端側よりも直径の小さい所定の長さの棒状を呈する軸棒1を有し、その軸棒1の先端部が周知のドリルと同様の切込刃2に形成されている。そして、その軸棒1の先端側にその軸棒1の軸心方向に沿って所定の間隔を保って複数個(図示の例では4個)の螺旋状の掘削刃3a〜3dが軸棒1と一体的に形成されている。
【0011】
上記螺旋状の掘削刃3a〜3dは、上方に行くほど大径になるように構成されている。すなわち、掘削刃3aより3b、3bより3cの方が大きくなるように構成されている。そして、これら螺旋状の掘削刃3a〜3dは、地中(上記図4のG参照)に進入する側及び外周は、それぞれ尖鋭に形成されている。
【0012】
上記軸棒1の先端部と反対側には、軸棒1の先端の直径よりも少し大きな直径を有し、かつ、所定の厚さを有するつば部4が軸棒1と一体的に設けられている。そして、このつば部4の上部側(軸棒1と反対側)には、断面形状が正方形で所定の高さを有する角柱部5が軸棒1と一体的に形成され、さらにその角柱部5の上部側(つば部4側と反対側)には、中心に孔6aを有するリング部6が軸棒1と一体的に形成されている。
【0013】
上記角柱部5は、穴掘建柱車のオーガ等の回転機械に接続される図示しない筒状の施工工具が装着されるときに使用されるもので、その施工工具を介して地中アンカAが回転されると、地中アンカAは、地中にねじ込みにより埋設される。また、角柱部5上のリング部6は、支線棒(上記図4のロ参照)が取付けられるときに使用される。
【0014】
さて、上記地中アンカAは、FCD600(「FCD600」は、鋳鉄製品の種類の記号(2001年4月20日改正のJISG5502)である。)からなる球状黒鉛鋳鉄品からなり、耐摩耗性及び耐食性が強化されている。図2の表は、最も大径である螺旋状の掘削刃3dの直径が140mmの標準型の地中アンカAを愛知県豊川市に存在する中硬岩からなる硬質の試験地盤でテストを行った結果が示されている。
【0015】
上記図2の表中、サンプル1〜3は、本発明に係るFCD600を材質とする地中アンカAであり、サンプル4〜6は、本発明に対する比較例としてのFCD450を材質とする地中アンカAである。また、表中の135cmは、地中アンカAの先端の位置から地表面(地面)までの距離、つまり、埋設深さを示し、埋設時間はその埋設深さに達するまでの穴掘建柱車のオーガでねじ込まれる所要時間を示している。そして、地中アンカの摩滅量は、地中アンカAが上述の埋設深さに埋設されたときの掘削刃3dの直径の減少(mm)を示している。なお、この摩滅量は、埋設された地中アンカAの側面側の地面を建設機械を用いて掘削して地中アンカAを取出して測定したものである。
【0016】
図3に示されるグラフは、上記図2に示される表中の地中アンカAの摩滅量の平均値を示したもので、このグラフから明らかなように、FCD600からなる材質の地中アンカAは、FCD450の材質からなる地中アンカAよりも優れた耐摩耗性を有していることが分かる。しかもこの地中アンカAは、球状黒鉛鋳鉄からなるので、耐食性にも優れているという特長を有している。なお、上述の例では、鋳鉄はFCD600としたが、FCD700又はFCD800等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る地中アンカの正面図、(b)は、その背面図、(c)は、(a)の上部部分の右側面図である。
【図2】実験結果を示す表である。
【図3】実験結果を示すグラフである。
【図4】地中アンカで電柱を支持している例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
A 地中アンカ
1 軸棒
2 切込刃
3a〜3d 螺旋状の掘削刃
4 つば部
5 角柱部
6 リング部
6a 孔
G 地中
イ 電柱
ロ 支線棒
ハ 支線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸棒の先端側に螺旋状の掘削刃を有する鋳鉄製の地中アンカであって、
前記鋳鉄は、球状黒鉛鋳鉄であることを特徴とする地中アンカ。
【請求項2】
請求項1に記載の地中アンカにおいて、鋳鉄は、FCD600以上の強度を有することを特徴とする地中アンカ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地中アンカにおいて、鋳鉄は、FCD600からなることを特徴とする地中アンカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の地中アンカにおいて、螺旋状の掘削刃は、軸棒の軸心方向に沿って所定の間隔を保って複数個設けられていることを特徴とする地中アンカ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の地中アンカにおいて、軸棒の先端側には、切込刃が設けられていることを特徴とする地中アンカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−336309(P2006−336309A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162571(P2005−162571)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)
【Fターム(参考)】