説明

地中挿込装置

【課題】作業者の作業負担を軽減しながら導水管を安定した状態で地中へ挿し込むことができ、狭小地においても比較的容易にウェルポイント工法を用いることができる導水管の地中挿込装置を提供する。
【解決手段】ウェルポイント工法に用いる導水管30を地中に差し込む地中挿込装置10は、ライザーパイプ31を地表面に対して垂直方向に保持するパイプバイス22と、地表面に対して垂直方向に延びる支持柱15に沿ってパイプバイス22を昇降させるウインチ19とを備えている。パイプバイス22は、導水管30を受ける受け部23aを有する固定フレーム23と、同導水管30を押し付ける押圧片26を有する可動フレーム24とで構成されている。パイプバイス22は、旋回軸21を介して油圧ブレーカ17に回転自在に固着されている。油圧ブレーカ17は、ウインチ19によって支持柱15に固着されたレール16に沿って上下動するとともに、パイプバイス22に振動を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライザーパイプの先端部に水を噴出および吸引可能なウェルポイントを有する導水管をウェルポイントから水流を噴出させながら地中に挿し込んだ後、ウェルポイントおよびライザーパイプを通して地下水を汲み上げて地下水位を低下させるウェルポイント工法に用いられる導水管の地中挿込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中内への構造物の構築に際しては、地下水位の低下および軟弱地盤の改良を目的としてウェルポイント工法が用いられている。ウェルポイント工法は、管状に形成されたライザーパイプの先端部に水を噴出および吸引可能なウェルポイントを設けた導水管を地中に挿し込み、ライザーパイプ内に負圧を生じさせることによりウェルポイントから地下水を汲み上げて地中内の地下水位を低下させる地盤改良法の一つである。このウェルポイント工法においては、一般に、地上から約6mの深さの範囲で地下水を汲み上げて地下水位を低下させることができる。
【0003】
従来、ウェルポイント工法における導水管を地中に挿し込む作業は、概ね2〜4人の作業員の手作業によって行われていた。具体的には、地盤改良を行う地表面に約70〜80cmの深さの下穴を掘削した後、同掘削した下穴に作業員の手作業によって約6mの鋼製の導水管を挿し込み、導水管の先端部に設けたウェルポイントから水流を噴出させる。そして、ウェルポイントから水流を噴出させた導水管を2人以上の作業員で支えながら上下動させるとともに、ときには体重を掛けながら導水管を目的の深さまで挿入する。このような手作業による導水管の挿し込み作業は、例えば、下記特許文献1にも記載されている。
【特許文献1】特開平05−320960号公報
【0004】
しかしながら、上記した手作業による導水管の挿し込み作業は、負担の大きい作業であり、一般に多数本の導水管を地中に設置する必要があるウェルポイント工法においては極めて作業効率が低いという問題があった。このため、例えば、下記特許文献2には、吊り下げた状態の導水管に振動を与えながら地中へ挿し込むウェルポイント打設装置が開示されている。
【特許文献2】実公平06−24414号公報
【0005】
しかし、導水管を吊り下げた状態で地中に挿し込む作業は、吊り下げられた導水管が安定せず作業性および作業の安全性が低いという問題がある。また、導水管の設置にクレーンを用いるため、クレーンの搬入や設置のための空間、および導水管の長さ以上の上部作業空間の確保が必要となり狭小地での導水管の設置が極めて困難でありウェルポイント工法の適用範囲が限定されるという問題があった。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、作業者の作業負担を軽減しながら導水管を安定した状態で地中へ挿し込むことができ、狭小地においても比較的容易にウェルポイント工法を用いることができる導水管の地中挿込装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、ライザーパイプの先端部に水を噴出および吸引可能なウェルポイントを設けた導水管を前記ウェルポイントから水流を噴出させながら地中に挿し込んだ後、ウェルポイントおよびライザーパイプを通して地下水を汲み上げて地下水位を低下させるウェルポイント工法に用いられる導水管の地中挿込装置であって、ライザーパイプを地表面に対して垂直方向に保持するライザーパイプ保持手段と、地表面に対して垂直方向に延びる支持柱を有し、ライザーパイプ保持手段を支持柱に沿って昇降自在に支持する昇降自在支持手段とを備えることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、ウェルポイント工法に用いられる導水管を地中に差し込む地中挿込装置は、ライザーパイプを地表面に対して垂直方向に保持するライザーパイプ保持手段と、地表面に対して垂直方向に延びる支持柱に沿ってライザーパイプ保持手段を昇降させる昇降自在手段とを備えている。これにより、導水管は、先端部に設けられたウェルポイントから水流を噴出した状態で支持柱に沿って上下動されながら地中に挿し込まれる。この場合、導水管は昇降自在手段により支持柱に沿って上下方向にのみ変位が許容されたライザーパイプ保持手段に保持されている。このため、作業者による手作業に頼ることなく安定した状態で導水管を地中に挿し込むことができる。また、導水管は、ライザーパイプの端部部分ではなく略中間部分がライザーパイプ保持手段によって保持されるため導水管を地中に挿し込む際に必要な上部作業空間は、従来技術に係るクレーンを用いた導水管の挿し込み作業に必要な上部作業空間より低くすることができる。これらの結果、作業者の作業負担を軽減しながら導水管を安定した状態で地中へ挿し込むことができ、狭小地においても比較的容易、かつ安全にウェルポイント工法を用いることができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記地中挿込装置において、ライザーパイプ保持手段は、ライザーパイプを水平方向に保持可能であるとともに、同水平方向に保持した前記ライザーパイプを垂直方向に回転変位可能であることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の特徴によれば、前記ライザーパイプ保持手段は、ライザーパイプ、すなわち、導水管を水平方向に保持することができるとともに、同水平方向に保持した導水管を垂直方向に回転させることができる。これにより、例えば、地表面上に置かれた導水管を容易にライザーパイプ保持手段に保持させることができるとともに、保持した導水管を容易に垂直方向に起立させることができる。この結果、作業者の作業負担を軽減しながら安全に作業を行うことができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記地中挿込装置において、さらに、昇降自在支持手段の地平面上での位置を移動可能な状態で支持する移動手段を備えることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の特徴によれば、地中挿込装置は、昇降自在支持手段の位置を移動させることができる移動手段を備えている。これにより、一般に多数本の導水管を地中に設置する必要があるウェルポイント工法において、地中に導水管を設置するごとに昇降自在支持手段の位置を移動させることができ、多数の導水管を効率的に地中に設置することができる。この結果、業者の作業負担を軽減することができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記地中挿込装置において、さらに、昇降自在支持手段を傾斜させるための傾斜手段を備えることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の特徴によれば、地中挿込装置は、昇降自在支持手段を傾斜させることができる傾斜手段を備えている。これにより、導水管を挿し込む地表面の傾斜状態に応じてライザーパイプ保持手段にて保持した導水管を適当な角度に傾斜させることができるとともに、導水管の挿し込み作業時または地中からの抜き取り作業時において導水管の角度を傾斜させることができ作業性が向上する。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記地中挿込装置において、さらに、ライザーパイプ保持手段に保持されたライザーパイプに振動または衝撃を与えるための外力付与手段を備えることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の特徴によれば、地中挿込装置は、ライザーパイプ保持手段に保持されたライザーパイプに振動または衝撃を与えるための外力付与手段を備えている。これにより、導水管の挿し込み作業時または地中からの抜き取り作業時においてライザーパイプ、すなわち、導水管に振動または衝撃を付与することができる。この結果、導水管の挿し込み作業および地中からの抜き取り作業の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る地中挿込装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る地中挿込装置10の全体構成を模式的に示す側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この地中挿込装置10は、ライザーパイプの先端部に水を噴出および吸引可能なウェルポイントを設けた導水管を地中に挿し込むことにより、地下水を汲み上げて地下水位を低下させる所謂ウェルポイント工法において前記導水管を地中に挿し込むためのものである。
【0018】
(地中挿込装置10の構成)
地中挿込装置10は、油圧ショベル11を備えている。油圧ショベル11は、図示しないディーゼルエンジンの駆動力を変換した油圧力によって走行および旋回しながらアタッチメント部に装着した各種機械機具により作業を行う機械装置であり、主として本体部12およびクローラ13を備えている。本体部12は、駆動源となるディーゼルエンジンおよび同ディーゼルエンジンの駆動力を油圧力に変換する図示しない油圧ポンプなどを収容しており、側面視略L字状の箱状に形成されている。本体部12上には、油圧ショベル11を操縦する作業者が着座するためのシート12a、および同シート12aの前方(図示右側)に油圧ショベル11の操縦するための操縦部12bがそれぞれ設けられている。操縦部12bは、ハンドルや操作レバーなどからなる各種操作子および各種計器類などから構成されている。また、本体部12の前面(図示右側面)には、アタッチメント部12cが形成されている。
【0019】
本体部12の下方には、クローラ13が設けられている。クローラ13は、ディーゼルエンジンの駆動力によって本体部12を移動させるための装置であり、互いに平行に配置された2つの無限軌道(一方のみ図示)により構成されている。本体部12の前面(図示右側面)に形成されたアタッチメント部12cには、傾斜機構14を介して支持柱15が設けられている。傾斜機構14は、ディーゼルエンジンの駆動力によって支持柱15を傾斜させる装置であり、油圧シリンダを含むリンク機構によって構成されている。支持柱15は、断面形状が四角形状の鋼管材で構成された柱状体であり、図示上下方向に延びた起立姿勢で傾斜機構14によって支持されている。
【0020】
支持柱15の前面(図示右側面)には、ガイドレール16を介して油圧ブレーカ17が設けられている。ガイドレール16は、支持柱15の前面(図示右側面)にて長手方向(図示上下方向)に沿って延びる鋼製のレールであり、油圧ブレーカ17を図示上下方向に摺動自在な状態で支持する。油圧ブレーカ17は、ディーゼルエンジンの駆動力によって図示上下方向に振動して衝撃波を発生させる装置である。この油圧ブレーカ17は、ワイヤロープ18を介してウインチ19によって支持柱15の上端部から吊り下げられるとともに、前記ガイドレール16に嵌め込まれた状態で支持されている。
【0021】
ウインチ19は、支持柱15の背面(図示左側面)上部に設けられており、支持柱15の上端部に設けられた2つの滑車20を介して下垂するワイヤロープ18を巻き取りまたは送り出しすることにより同ワイヤロープ18の一端に連結された油圧ブレーカ17を昇降(図示上下方向)させる油圧式巻き上げ装置である。油圧ブレーカ17の前面(図示右側面)には、旋回軸21を介してパイプバイス22が設けられている。旋回軸21は、油圧ブレーカ17の前面に固着された固定軸21aと、同固定軸21aに対して図示しないベアリングを介して回動自在に組み付けられた回転軸21bとで構成されている。
【0022】
パイプバイス22は、ウェルポイント工法に用いる導水管30を保持するための保持具であり、詳しくは図2に示すように、主として固定フレーム23と可動フレーム24とで構成されている。固定フレーム23は、旋回軸21の回転軸21bに固着されており、中央部に導水管30が押し当てられる凹状の受け部23aが設けられている。可動フレーム24は、略U字状に形成されており、一方(図示下側)の端部が固定フレーム23の一方(図示下側)の端部にピン25によって回動自在に組み付けられている。一方、可動フレーム24の他方の端部には、固定フレーム23の端部に対して着脱自在に引っ掛けることができる略J字状のフック24aが回動自在な状態で設けられている。すなわち、パイプバイス22は、図2において二点鎖線で示すように、可動フレーム24が固定フレーム23に対してピン25を中心として図示矢印方向に回動するように構成されており、固定フレーム23および可動フレーム24の内部領域に導水管30が配置し易いようになっている。
【0023】
また、可動フレーム24の内側には、固定フレーム23に近づく方向および遠ざかる方向に変位可能な状態で押圧片26が設けられている。押圧片26の中央部には、パイプバイス22の内側に配置される導水管30を押し付けるための凹状の押圧部26aが設けられている。この押圧片26には、可動フレーム24の中央部に形成された図示しない雌ネジに噛み合う送りネジ27aが形成された略T字状のハンドル27の一方の端部が連結されている。ハンドル27は、作業者による回動操作によって押圧片26の位置を変位させるための操作子である。したがって、固定フレーム23および可動フレーム24の内部領域に配置された導水管30は、作業者によるハンドル27の回動操作によって押圧片26が固定フレーム23側に変位することにより、受け部23aと押圧部26aとに挟まれて保持される。
【0024】
導水管30は、詳しくは図3に示すように、地中内に挿し込まれて同地中内から地下水を汲み上げるための通路を構成する管体であり、主として、ライザーパイプ31とウェルポイント32とで構成されている。ライザーパイプ31は、鋼製の管体であり、一方(図示上側)の端部にジェットポンプ(図示せず)および吸水ポンプ(図示せず)を選択的に連結するための接続部31aが形成されるとともに、他方(図示下側)の端部にウェルポイント32が固定的に連結されている。このライザーパイプ31は、地下水を汲み上げる量および深さに対応する外径および長さに形成されており、本実施形態においては、直径が約40mm、長さが約5mに形成さている。なお、図3においては、ライザーパイプ31の中央部を省略して示している。
【0025】
ウェルポイント32は、ライザーパイプ31の下端部に設けられる筒体であり、吐出口32aとストレーナ部32bとで構成されている。吐出口32aは、導水管30を地中に挿し込む際にライザーパイプ31を介して供給される水を吐出するための開口部であり、ウェルポイント32の先端部において互いに平行な向きで2つ形成されている(一方のみ図示)。一方、ストレーナ部32bは、導水管30を地中に挿し込んだ後地下水を汲み上げる際、地下水とともに吸引される土砂を濾過するためのフィルタであり、吐出口32aの上方において円筒状に形成されている。
【0026】
(地中挿込装置10の作動)
次に、このように構成された地中挿込装置10の作動について説明する。まず、作業者は、ウェルポイント工法により地下水を汲み上げる施工地にヘッダーパイプ41(一部のみ図示)、吸水ポンプ(図示せず)、ノッチタンク(図示せず)およびジェットポンプ(図示せず)をそれぞれ設置する。
【0027】
この場合、ヘッダーパイプ41は、多数本の導水管30を吸水ポンプにそれぞれ連結するための基幹となる配管であり、ウェルポイント工法の施工地に多数本挿し込まれる導水管30の配置位置に沿って地表面上に設置される。吸水ポンプは、ヘッダーパイプ41を介して連結される各導水管30内に負圧を発生させて地下水を汲み上げるための渦巻きポンプで構成される揚水用のポンプ装置である。また、ノッチタンクは、各導水管30から汲み上げられ吸水ポンプから吐出される地下水の中から土砂を取り除くとともに、汲み上げられた地下水の水量を計測するための容器である。また、ジェットポンプは、水を圧縮したジェット水流を導水管30内に供給するための送水用のポンプ装置である。
【0028】
次に、作業者は、地中挿込装置10を操縦してウェルポイント工法の施工地における導水管30を設置する位置に地中挿込装置10を位置決めする。次に、作業者は、図4に示すように、導水管30を設置する地表面に下穴穿孔パイプ42を用いて下穴H(二点鎖線で示す)を掘削する。この場合、下穴穿孔パイプ42は、一方(図示上側)の端部に形成された接続部42aから水流を導入するとともに、同導入した水流を他方(図示下側)の端部に形成された掘削部42bから噴射させることにより地表面上に穴を形成するための鋼製の管体である。本実施形態においては、直径が約40mm、長さが約1mに形成されている。作業者は、地中挿込装置10のパイプバイス22に下穴穿孔パイプ42を地表面に対して垂直方向(図示上下方向)に保持させるとともに、同下穴穿孔パイプ42の上端部における接続部42aに図示しないジェットポンプを連結する。
【0029】
作業者は、ジェットポンプを作動させることにより下穴穿孔パイプ42の先端部である掘削部42bから水流を噴出させた状態で地中挿込装置10を操縦してウインチ19を正逆転させることにより下穴穿孔パイプ42を上下させながら地表面に挿し込む。この場合、作業者は、地表面から約20〜30cmの深さの下穴Hを形成する。従来、導水管30の挿し込み作業においては、地表面から約70〜80cmの深さの下穴Hが必要であった。これは、長尺の導水管30を人手で挿し込むため、下穴Hの深さを深くして導水管30を安定させる必要があるためである。しかし、本発明においては、導水管30を地中挿込装置10によって挿し込むため下穴Hの深さは従来よりも浅くてよい。なお、導水管30を挿し込む地表面が軟弱の場合には、必ずしも下穴穿孔パイプ42により下穴Hを形成する必要はない。すなわち、下穴Hを形成せずに直接導水管30を地表面に挿し込むようにしてもよい。
【0030】
次に、作業者は、下穴穿孔パイプ42に換えて導水管30を地中挿込装置10のパイプバイス22に保持させる。この場合、作業者は、図5に示すように、地中挿込装置10におけるパイプバイス22の下方における地表面に導水管30を配置するとともに、地中挿込装置10を操縦してパイプバイス22を地表面近傍に位置決めする。次いで、作業者は、パイプバイス22を回動操作して旋回軸21の回転軸21bを回転させることによりパイプバイス22を地表面に対して垂直に起立させた状態、すなわち、パイプバイス22の軸線を地表面に配置した導水管30の軸線と平行にさせる。そして、作業者は、パイプバイス22の可動フレーム24を開いてパイプバイス22の内部に導水管30のライザーパイプ31を位置させた後、同可動フレーム24を閉じてハンドル27を回動操作することによりパイプバイス22に導水管30を保持させる。また、作業者は、導水管30の上端部における接続部31aに図示しないジェットポンプを連結する。
【0031】
次に、作業者は、地中挿込装置10を操縦してパイプバイス22に保持させた導水管30を上昇させる。この場合、パイプバイス22に保持させた導水管30は、図6に示すように、地中挿込装置10を操縦する作業者以外の他の作業者によって補助的に支えられながら上昇される。そして、パイプバイス22に保持された導水管30を補助的に支える他の作業者は、導水管30を回転させて旋回軸21の回転軸21bを回転させることにより導水管30を地表面に対して垂直に起立させる。次いで両作業者は、地中挿込装置10を操縦して起立させた導水管30の先端部(ウェルポイント32)を地表面に形成した下穴H内に挿入する。
【0032】
次に、作業者は、ジェットポンプを作動させることにより導水管30のウェルポイント32の吐出口32aから水流を噴出させた状態で地中挿込装置10を操縦してウインチ19を正逆転させることにより導水管30を上下させながら地表面に挿し込む。この場合、導水管30は、地中挿込装置10のパイプバイス22に保持された状態で地中に挿し込まれる。すなわち、導水管30の挿し込み作業は、地中挿込装置10を操縦する作業者のみで行うことができる。作業者は、導水管30のウェルポイント32が所定の深さ(地下水位を低下させたい深さ)に達するまで地中挿込装置10を操縦して導水管30の挿し込み作業を続行する。この間、作業者は、導水管30が地中に挿し込まれる深さに応じてライザーパイプ31におけるパイプバイス22の保持位置を上方に移しながら挿し込み作業を行う。また、作業者は、導水管30を地中に挿し込む過程において、適宜、油圧ブレーカ17を作動させて導水管30に振動および衝撃を与えることにより導水管30の挿し込み作業を行う。これにより、導水管30の挿し込みが困難な地盤に対しても円滑に導水管30を挿し込むことができる。
【0033】
そして、図7に示すように、導水管30を所定の深さまで挿し込んだ場合には、作業者は、ジェットポンプの作動を停止させるとともに、パイプバイス22による導水管30の保持を開放する。また、作業者は、導水管30の接続部31aにジェットポンプに換えてヘッダーパイプ41を連結する。これにより、地中に所定の深さで挿し込まれた導水管30に吸水ポンプが接続される。そして、作業者は、ウェルポイント工法に用いる他の導水管30も同様の手順にて挿し込み作業およびヘッダーパイプ41への連結作業をそれぞれ行う。これにより、導水管30の挿し込み作業が完了する。
【0034】
次に、作業者は、地中に挿し込まれた導水管30を用いて地下水の汲み上げ作業を行う。この地下水の汲み上げ作業は、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。一方、地下水の汲み上げ作業が終了した場合には、作業者は、地中に挿し込んだ導水管30の抜き取り作業を行う。この場合、作業者は、前記した導水管30の挿し込み作業とは逆の手順にて作業を行う。すなわち、作業者は、地中に挿し込まれた導水管30の接続部31aからヘッダーパイプ41を取り外すとともに、ライザーパイプ31を地中挿込装置10のパイプバイス22によって保持する。そして、作業者は、地中挿込装置10を操縦してウインチ19によってワイヤロープ18を巻き上げることにより導水管30を上昇させて地中から引き抜く。
【0035】
この場合、作業者は、傾斜機構14および/または油圧ブレーカ17を適宜作動させることにより、導水管30を傾斜させ、および/または同導水管30に振動および衝撃を加えながら引き抜き作業を行う。これにより、円滑に導水管30を引き抜くことができる。この導水管30の引き抜き作業においても地中挿込装置10を操縦する作業者のみで行うことができる。導水管30を地中から引き抜いた場合には、作業者は、引き抜いた導水管30を適当な地表面上に載置してパイプバイス22から開放する。作業者は、地中に挿し込まれた全ての導水管30を同様の手順にて引き抜く。これにより、導水管30の引き抜き作業が完了する。
【0036】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ウェルポイント工法に用いられる導水管30を地中に差し込む地中挿込装置10は、ライザーパイプ31を地表面に対して垂直方向に保持するパイプバイス22と、地表面に対して垂直方向に延びる支持柱15に沿ってパイプバイス22を昇降させるウインチ19とを備えている。これにより、導水管30は、先端部に設けられたウェルポイント32から水流を噴出した状態で支持柱15に沿って上下動されながら地中に挿し込まれる。この場合、導水管30はウインチ19により支持柱15に沿って上下方向にのみ変位が許容されたパイプバイス22に保持されている。このため、作業者による手作業に頼ることなく安定した状態で導水管30を地中に挿し込むことができる。また、導水管30は、ライザーパイプ31の端部部分ではなく略中間部分がパイプバイス22によって保持されるため導水管30を地中に挿し込む際に必要な上部作業空間は、従来技術に係るクレーンを用いた導水管30の挿し込み作業に必要な上部作業空間より低くすることができる。これらの結果、作業者の作業負担を軽減しながら導水管30を安定した状態で地中へ挿し込むことができ、狭小地においても比較的容易、かつ安全にウェルポイント工法を用いることができる。
【0037】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、パイプバイス22を旋回軸21を介して油圧ブレーカ17に設けることにより、パイプバイス22を回転可能に構成した。しかし、パイプバイス22は、導水管30のライザーパイプ31を地表面に対して垂直方向に保持することができれば、必ずしも回転可能に構成する必要はない。すなわち、パイプバイス22の軸線を地表面に対して垂直方向に固定した状態で油圧ブレーカ17の前面に設けるようにしてもよい。この場合、導水管30を地表面上に起立させた状態でパイプバイス22にセットすることになる。すなわち、上記実施形態においては、導水管30を地表面に寝かした状態でパイプバイス22にセットすることができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、ライザーパイプ保持手段としてパイプバイス22を用いた。しかし、ライザーパイプ保持手段は、導水管30のライザーパイプ31を地表面に対して垂直方向に保持することができる構成であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ライザーパイプ保持手段を2本または3本以上の爪でライザーパイプ31を掴む構成とすることもできる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施形態においては、パイプバイス22を支持する支持柱15は、傾斜機構14を介して油圧ショベル11のアタッチメント部12cに支持される構成とした。すなわち、支持柱15は、油圧ショベル11によって移動可能に構成されている。これにより、多数の導水管30を地中に設置する際、支持柱15の移動の負担を軽減させている。しかし、支持柱15は、必ずしも移動可能に構成される必要はない。すなわち、支持柱15が単独で自立するように構成されていてもよい。そして、支持柱15を移動させる際には、作業者により持ち上げて移動させるほか、クレーンなどの機械装置を用いて移動させることができる。これらよっても、作業者の作業負担を軽減しながら導水管30を安定した状態で地中へ挿し込むことができるとともに、油圧ショベル11が入り込むことが困難な狭小地においても導水管30を設置することができウェルポイント工法の適用の範囲を拡げることができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、昇降自在支持手段としてウインチ19を用いた。しかし、昇降自在支持手段は、地表面に対して垂直方向に延びる支持柱15を有し、パイプバイス22(ライザーパイプ保持手段)を支持柱15に沿って昇降自在に支持することができれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、ウインチ19以外の方式でパイプバイス22を昇降させてもよい。例えば、ウインチ19に換えて油圧シリンダによってパイプバイス22を昇降させてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0042】
また、上記実施形態においては、傾斜機構14によりパイプバイス22を支持する支持柱15を傾斜可能な構成とした。これにより、導水管30を地中に挿し込む際、および/または同導水管30を地中から抜き取る際、導水管30を傾斜させることができ作業性を向上させることができる。また、油圧ショベル11を移動させる際、支持柱15を傾斜させることにより支持柱15の底部を地表面から離隔させ支持柱15の移動をし易くすることもできる。しかし、支持柱15は、必ずしも傾斜可能に構成される必要はない。すなわち、支持柱15を油圧ショベル11のアタッチメント部12cに直接支持させる構成として傾斜機構14を省略して地中挿込装置10を構成することもできる。これによれば、地中挿込装置10の構成を簡単にすることができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、パイプバイス22を油圧ブレーカ17に設けることにより、パイプバイス22に保持した導水管30に振動および衝撃を加えることができるように構成した。これにより、導水管30を地中に挿し込む際、および/または同導水管30を地中から抜き取る際、導水管30に対して振動および衝撃を加えて作業性を向上させることができる。しかし、導水管30を地中に挿し込む際、必ずしも振動や衝撃を導水管30に加える必要はない。例えば、導水管30を挿し込む地盤が砂地などの軟弱な地盤である場合には、導水管30の先端部から水流を噴出させた状態で同導水管30を上下動させるのみで挿し込むことができる。したがって、油圧ブレーカ17を用いることなく地中挿込装置10を構成することも可能である。なお、導水管30を上下動させながら地中に挿し込む際、導水管30に重量を重くした方が地中に挿し込み易い。このため、油圧ブレーカ17に換えて重量物をワイヤロープ18に連結するとともに、同重量物にパイプバイス22を支持させるように構成するとよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る地中挿込装置の外観構成および使用状態を示す側面図である。
【図2】図1に示す地中挿込装置に用いられるパイプバイスの外観構成を示す平面図である。
【図3】図1に示す地中挿込装置によって地中に挿し込まれる導水管を示す正面図である。
【図4】図1に示す地中挿込装置に用いて下穴を掘削する様子を示す説明図である。
【図5】図1に示す地中挿込装置に導水管を保持させる様子を示す説明図である。
【図6】図1に示す地中挿込装置に用いて導水管を地中に差し込む様子を示す説明図である。
【図7】図1に示す地中挿込装置に用いて導水管が地中に挿し込まれた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
H…下穴、10…地中挿込装置、11…油圧ショベル、12…本体部、12a…シート、12b…操縦部、12c…アタッチメント部、13…クローラ、14…傾斜機構、15…支持柱、16…レール、17…油圧ブレーカ、18…ワイヤロープ、19…ウインチ、20…滑車、21…旋回軸、21a…固定軸、21b…回転軸、22…パイプバイス、23…固定フレーム、23a…受け部、24…可動フレーム、24a…フック、25…ピン、26…押圧片、26a…押圧部、27…ハンドル、27a…送りネジ、30…導水管、31…ライザーパイプ、31a…接続部、32…ウェルポイント、吐出口…32a、ストレーナ部32b、41…ヘッダーパイプ、42…下穴穿孔パイプ、42a…接続部、42b…掘削部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライザーパイプの先端部に水を噴出および吸引可能なウェルポイントを設けた導水管を前記ウェルポイントから水流を噴出させながら地中に挿し込んだ後、前記ウェルポイントおよび前記ライザーパイプを通して地下水を汲み上げて地下水位を低下させるウェルポイント工法に用いられる前記導水管の地中挿込装置であって、
前記ライザーパイプを地表面に対して垂直方向に保持するライザーパイプ保持手段と、
前記地表面に対して垂直方向に延びる支持柱を有し、前記ライザーパイプ保持手段を前記支持柱に沿って昇降自在に支持する昇降自在支持手段とを備えることを特徴とする地中挿込装置。
【請求項2】
請求項1に記載した地中挿込装置において、
前記ライザーパイプ保持手段は、前記ライザーパイプを水平方向に保持可能であるとともに、同水平方向に保持した前記ライザーパイプを前記垂直方向に回転変位可能であることを特徴とする地中挿込装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した地中挿込装置において、さらに、
前記昇降自在支持手段の地平面上での位置を移動可能な状態で支持する移動手段を備えることを特徴とする地中挿込装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した地中挿込装置において、さらに、
前記昇降自在支持手段を傾斜させるための傾斜手段を備えることを特徴とする地中挿込装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した地中挿込装置において、さらに、
前記ライザーパイプ保持手段に保持された前記ライザーパイプに振動または衝撃を与えるための外力付与手段を備えることを特徴とする地中挿込装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−112109(P2010−112109A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287247(P2008−287247)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(508334661)株式会社プランアンドテクニック (2)
【Fターム(参考)】