説明

地中熱による空調構造

【課題】 一年中温度が安定的な地中熱を利用するとともに、同一室内の空気を循環させることによって高い熱効率で省エネルギーを実現することができる地中熱による空調構造を提供すること。
【解決手段】 建造物の室内に設置される空調構造であって、
中空の熱交換パイプ1における各端部の開口部2・2にはそれぞれ吸気口21と排気口22とを形成する一方、この熱交換パイプ1の胴部を所定深さの地中に埋設し、
前記開口部2における吸気口21と排気口22との少なくとも一方には、送風ファン3を配設して、前記熱交換パイプ1内に通気可能にして、
室内から吸い込んだ空気が前記熱交換パイプ1内を通過して、地中において熱交換され、再び同室内に排出されることによって循環し、室温を上昇または下降可能に構成するという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の空調装置の改良、更に詳しくは、一年中温度が安定的な地中熱を利用するとともに、同一室内の空気を循環させることによって高い熱効率で省エネルギーを実現することができる地中熱による空調構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、室内を快適に保つために空調設備が設置されており、この空調設備の熱源としては、電力や燃料を使用するものが多い。
【0003】
このように、空調設備は有限のエネルギー資源を消費するものであるため、省エネルギーの観点から、自然エネルギーであって、一年中を通じて温度が略一定に安定している地熱を利用する空調設備が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる従来の地熱式空調設備は、吸気口が室外に設置されていたため、外気温の影響を受けやすく熱損失が著しく多いという問題があった。
【0005】
また、吸気口が床下や屋外に設置されている場合、雨水や虫などが侵入するおそれもあり、パイプが腐食しやすかったり死骸が混入したりなどして不衛生な問題が生じることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−16856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の空調構造に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、一年中温度が安定的な地中熱を利用するとともに、同一室内の空気を循環させることによって高い熱効率で省エネルギーを実現することができる地中熱による空調構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、建造物の室内に設置される空調構造であって、
中空の熱交換パイプ1における各端部の開口部2・2にはそれぞれ吸気口21と排気口22とを形成する一方、この熱交換パイプ1の胴部を所定深さの地中に埋設し、
前記開口部2における吸気口21と排気口22との少なくとも一方には、送風ファン3を配設して、前記熱交換パイプ1内に通気可能にして、
室内から吸い込んだ空気が前記熱交換パイプ1内を通過して、地中において熱交換され、再び同室内に排出されることによって循環し、室温を上昇または下降可能に構成するという技術的手段を採用したことによって、地中熱による空調構造を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、パネル材4に開設された孔部41に、開口部2の吸気口21と排気口22とをそれぞれ露出するように固定して、かつ、これらの前面にガラリ42を着脱自在に固定するという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、パネル材4の上下にそれぞれ開設された孔部41に、吸気口21と排気口22とをそれぞれ露出するように固定して、かつ、このパネル材4を室内の隅角部に設置して、熱交換パイプ1の端部を、当該パネル材4の背面に収容可能にするという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、熱交換パイプ1内の底部に溜まった水を排出するための排出ポンプ5を配設するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、送風ファン3の送風方向を変更可能にして、吸気と排気との送風方向を逆転できるようにするという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、熱交換パイプ1の下端部を少なくとも地中5m以上に達するようにするという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、熱交換パイプ1の表面に亜鉛溶融メッキを施すという技術的手段を採用した。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、熱交換パイプ1の表面にフィンを形成するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、中空の熱交換パイプにおける各端部の開口部にはそれぞれ吸気口と排気口とを形成する一方、この熱交換パイプの胴部を所定深さの地中に埋設し、前記開口部における吸気口と排気口との少なくとも一方には、送風ファンを配設して、前記熱交換パイプ内に通気可能にしたことによって、
室内から吸い込んだ空気が前記熱交換パイプ内を通過して、地中において熱交換され、再び同室内に排出されることによって循環し、室温を上昇または下降することができる。
【0018】
したがって、本発明の地中熱による空調構造によれば、一年中温度が安定的な地中熱を利用するとともに、同一室内の空気を循環させることによって高い熱効率で省エネルギーを実現することができることから、実用的利用価値は頗る高いものがあると云える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の空調構造を表わす概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態の空調構造の使用状態を表わす説明図である。
【図3】本発明の実施形態の空調構造の変形例の使用状態を表わす説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0021】
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものは熱交換パイプであり、この熱交換パイプ1は、内部が中空のパイプ部材であって、本実施形態では、径が150〜200mm程度の塩化ビニル等の樹脂製または金属製の円筒状のものを採用し、胴部の折り返し部はU字またはコの字に成形されている。
【0022】
また、符号2で指示するものは開口部であり、この開口部2は前記熱交換パイプ1の両端部にそれぞれ設けられている。
【0023】
更にまた、符号3で指示するものは送風ファンであり、この送風ファン3は、電動モータにより羽根を回転して送風可能な装置であって、本実施形態では、25cm四方の枠に入る径のものを採用する。
【0024】
しかして、本実施形態は、建造物の室内に設置される空調構造であって、構成するにあっては、まず、中空の熱交換パイプ1における各端部の開口部2・2にはそれぞれ吸気口21と排気口22とを形成する。外気温の高い夏場の場合は、吸気口21を下側、排気口22を上側にすると熱効率が良く、また、循環も促進する。
【0025】
次いで、前記熱交換パイプ1の胴部を所定深さの地中に埋設する。本実施形態では、この熱交換パイプ1の下端部を少なくとも地中5m以上に達するようにする。地中5mの深さでは、温度が一年を通じて15度〜18度で安定しているからである。
【0026】
本実施形態では、熱交換パイプ1の表面に亜鉛溶融メッキを施すことによって熱伝導率を向上させたり、また、熱交換パイプ1の表面にフィンを形成することによって表面積を増加して熱交換効率を向上させることもできる。
【0027】
そして、前記開口部2における吸気口21と排気口22との少なくとも一方には、送風ファン3を配設して、前記熱交換パイプ1内に通気可能にする。このように強制的に吸気または排気することによって、循環を促進することができる。なお、この送風ファン3を吸気口21と排気口22との両方に配設することもできる。
【0028】
なお、この際、送風ファン3の送風方向を変更可能にして、スイッチ等で羽根の回転方向を変えたりファン自体を首振りさせることによって、吸気と排気との送風方向を反対にすることもでき、夏場と冬場とで吸気口と排気口の機能を逆転することができる。
【0029】
以上のようにして、室内から吸い込んだ空気が前記熱交換パイプ1内を通過して、地中において熱交換され、再び同室内に排出されることによって循環し、室温を上昇または下降させることができる。
【0030】
<施工例>
本実施形態では、パネル材4の上下にそれぞれ開設された孔部41に、吸気口21と排気口22とがそれぞれ露出するように固定して、かつ、このパネル材4が室内の隅角部に設置して、熱交換パイプ1の端部を、当該パネル材4の背面に収容することができる(図2参照)。
【0031】
この際、パネル材4に開設された孔部41に、開口部2の吸気口21と排気口22とをそれぞれ露出するように固定して、かつ、これらの前面にガラリ42(鎧戸)を着脱自在に固定することができ、風量を調整したり、誤って熱交換パイプ1内に物が入るのを防止することができる。
【0032】
このように施工することによって、部屋の隅角部のデッドスペースを有効に活用できるとともに、熱交換パイプ1の端部がパネル材4の背面に隠れているので、スッキリとした外観を得ることができてインテリア的な利用価値も高い。
【0033】
更にまた、本実施形態では、必要に応じて、熱交換パイプ1内の底部に溜まった水を排出するための排出ポンプ5を配設することができ、熱交換パイプ1内のカビの発生などを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態では、図3に示すように、床板に吸気口21と排気口22とを設けることもできる。
【0035】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、熱交換パイプ1の本数や取付位置は、部屋の大きさなどに合わせて変更することができ、本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0036】
1 熱交換パイプ
2 開口部
21 吸気口
22 排気口
3 送風ファン
4 パネル材
41 孔部
42 ガラリ
5 排水ポンプ
F 床板
S 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の室内に設置される空調構造であって、
中空の熱交換パイプ(1)における各端部の開口部(2・2)にはそれぞれ吸気口(21)と排気口(22)とが形成されている一方、この熱交換パイプ(1)の胴部が所定深さの地中に埋設されており、
前記開口部(2)における吸気口(21)と排気口(22)との少なくとも一方には、送風ファン(3)が配設されており、前記熱交換パイプ(1)内に通気可能であって、
室内から吸い込んだ空気が前記熱交換パイプ(1)内を通過して、地中において熱交換され、再び同室内に排出されることによって循環し、室温を上昇または下降可能に構成したことを特徴とする地中熱による空調構造。
【請求項2】
パネル材(4)に開設された孔部(41)に、開口部(2)の吸気口(21)と排気口(22)とがそれぞれ露出するように固定されており、かつ、これらの前面にガラリ(42)が着脱自在に固定されていることを特徴とする請求項1記載の地中熱による空調構造。
【請求項3】
パネル材(4)の上下にそれぞれ開設された孔部(41)に、吸気口(21)と排気口(22)とがそれぞれ露出するように固定されており、かつ、このパネル材(4)が室内の隅角部に設置されており、熱交換パイプ(1)の端部が、当該パネル材(4)の背面に収容可能であることを特徴とする請求項1または2記載の地中熱による空調構造。
【請求項4】
熱交換パイプ(1)内の底部に溜まった水を排出するための排出ポンプ(5)が配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の地中熱による空調構造。
【請求項5】
送風ファン(3)の送風方向が変更可能であって、吸気と排気との送風方向を逆転できることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の地中熱による空調構造。
【請求項6】
熱交換パイプ(1)の下端部が少なくとも地中5m以上に達していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の地中熱による空調構造。
【請求項7】
熱交換パイプ(1)の表面に亜鉛溶融メッキが施されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の地中熱による空調構造。
【請求項8】
熱交換パイプ(1)の表面にフィンが形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の地中熱による空調構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79767(P2013−79767A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220381(P2011−220381)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(511240450)
【Fターム(参考)】