地山補強工用管体の余剰部撤去方法
【課題】地山補強工において、トンネル断面からトンネル内に突出する地山補強工用管体の余剰部を、容易に切除して撤去でき、しかも費用の掛からない廃棄物となして廃棄可能な地山補強工用管体の余剰部撤去方法を提供する。
【解決手段】 削孔ビット20が装着された内管ロッド22と、この内管ロッド22を内部に収容する管体24とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビット20で掘削した切羽前方の削孔内に前記管体24を順次継ぎ足しながら挿入し、前記削孔ビット20の一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体24の内外周に固化剤を注入固化させた後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山補強工用管体の撤去方法であって、前記管体24の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管に、紙管あるいは生分解性樹脂管を用いる。
【解決手段】 削孔ビット20が装着された内管ロッド22と、この内管ロッド22を内部に収容する管体24とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビット20で掘削した切羽前方の削孔内に前記管体24を順次継ぎ足しながら挿入し、前記削孔ビット20の一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体24の内外周に固化剤を注入固化させた後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山補強工用管体の撤去方法であって、前記管体24の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管に、紙管あるいは生分解性樹脂管を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル断面の掘削に先立って、地山補強用の先受け工として切羽の上方に打設される長尺な管体の余剰部の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亀裂,すべり面の多い地山や、土砂地山、強度の小さい軟岩、膨張性地山、又は土被りの少ない地山などでトンネルを形成する場合、例えば、切羽の掘削に先立って、切羽の上方、略120゜の範囲に複数の鋼管を打設し、各鋼管を通じて地山に固化剤を注入硬化することによって、地山中に地盤沈下などを防止するためのフォアパイリングと呼ばれる補強体を形成する注入式長尺鋼管先受け工注が用いられている。
【0003】
図14、15は、従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。一般に、AGF工法(All Ground Fasten)とも呼ばれるこの工法では、掘削を終了すると、まず、図14(A)に示すように、吹き付けロボット2を用いて切羽面1に鏡面吹き付けコンクリート層aを形成し、次に、図14(B)に示すように、高所作業車3による足場を組み立て、続いて、鋼管を打設するための掘孔のマーキングを行う。マーキングと掘孔の形成には、通常、ジャンボ4を用い、ジャンボ4のガイドブーム5に、打設しようとする鋼管6や地山を削孔するための削孔ビット、内管ロッドなどの穿孔手段を保持する。
【0004】
ジャンボ4のガイドブーム5を、マーキング個所に位置決めし、前記鋼管を打設するための掘孔を形成した後は、図14(C)に示すように、掘孔に鋼管6を打設する。鋼管の打設範囲は、地山の性状等によって変化するが、前記したように、切羽面1の上部側の所定の角度範囲、例えば、120°程度の範囲とし、周方向に所定間隔を隔てて打設する。また、鉛直面内においては、鋼管6は、4ないしは6°の範囲内のほぼ一定の角度で上方に向けて傾斜した状態に、水平方向においては、中心から外側に向かって、放射状に広がるように打設する。
【0005】
全ての鋼管6の打設を終了すると、次は、図15(A),(B)に示すように、鋼管6から掘削ビットおよび内管ロッドを回収し、代わりに注入管を挿入して鋼管6に固化剤を注入する。なお、注入管は注入ポンプ7に接続されている。
固化剤は注入時の圧力により鋼管6の外周にも拡散するので、固化剤が硬化すると図15(C)に示すように前記補強体が地山中に形成される。
【0006】
従って、切羽の掘削、支保工の設置等トンネル構築のための工事の前後に、補強体を形成すれば、安全で信頼性の高いトンネルを形成できるが、補強体の設置後、トンネルの拡幅工事を行わない場合、すなわち、無拡幅工法とする場合には、最後の継ぎ足しを行った各鋼管6の端末側がトンネル断面に突出してこれが支保工に干渉してしまうので、当該トンネル断面に突出する余剰部を切除して撤去するようにしている。
【0007】
ここで、上記余剰部の撤去を行うにあたっては、従来では、特開平8−121073号公報に示されるように、端末の鋼管とその前方の鋼管との接続部を離脱可能な特殊構造となして、当該突出部分、すなわち、余剰部分となる端末の鋼管を撤去するか、又は、特開2000−297592号公報に示されるように、鋼管の外周部に折損をし易くするV字状の溝を設け、溝から折損させることによって撤去するという工法が用いられている。なお、上記鋼管に代えて塩ビ管を用いることも周知になっている。
【特許文献1】特開平8−121073号公報
【特許文献2】特開2000−297592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の撤去方法では、鋼管や塩ビ管からなる管体の端末側を切除して廃棄するにあたっては、鋼管や塩ビ管の端末側は固化剤と一体となっているため、鋼管や塩ビ管と固化剤とを分離することが困難であり、これ故、複合廃棄物として廃棄せざるを得ず、そのために処分に多額の費用がかかるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山補強工において、余剰部の切除を容易にし、且つ当該切除した余剰部を費用の掛からない廃棄物として廃棄処分し得るか、若しくは廃棄不要となし得る地山補強工用管体の余剰部撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、削孔ビットが装着された内管ロッドと、この内管ロッドを内部に収容する管体とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビットで掘削した切羽前方の削孔内に前記管体を順次継ぎ足しながら挿入した後に、前記削孔ビットの一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体の内外周に固化剤を注入固化させ、しかる後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去するに際して、前記管体の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管にのみに紙管を用い、該端末管より前方の管体には鋼管を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記紙管が防水又は撥水処理を施されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記固化剤の注入は、前記管体内に固化剤注入管を挿通して行い、該固化剤注入管を該管体内に挿入する際に、前記固化剤注入管に付帯させて前記余剰部側への固化剤の進入を阻むためのパッカーを前記余剰部の前方に注入形成するパッカー形成手段を設けるとともに、該パッカー形成部位の管体部に、該管体部外側の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を設け、前記固化剤の注入に先立って、前記パッカー形成手段によりパッカーを注入形成して、前記管体の内外に前記余剰部側への固化剤の流出を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記掘孔の入口において、前記紙管の外面と掘孔との間に充填材を充填して前記紙管外に前記余剰部側への固化剤の供給を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管と紙管との連結に、これらの連結端部に嵌合する金属又は樹脂製の管継手を用い、該管継手と前記鋼管とをねじにより、前記管継手と前記紙管とを接着剤により連結するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、前記鋼管の連結端部と前記円筒形部材とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、前記鋼管の連結端部と金属製被覆筒とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、前記鋼管と紙管との連結端部同士をこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、該円筒形部材の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項10にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、該金属製被覆筒の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項11にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、該雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項12にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、請求項1〜11における紙管を生分解性樹脂管に置換したことを特徴とする。
【0022】
上記構成にかかる本発明の地山補強工用管体の余剰部撤去方法によれば、余剰部は紙管あるいは生分解性樹脂管で形成されていて、切除や固化剤の剥離が容易なので、従来のように複合廃棄物とせずに廃棄することができる。なお、紙管を用いる場合には、好ましくは、内外周の表面に防水又撥水処理を施して紙管の吸水を防止すると共に、紙管内面に対する固化剤の付着を防止すると、固化剤からの剥離が一層容易になる。
【0023】
そして、補強体を地山に打設する際に、掘孔の入口と、管体に挿入する固化剤注入管との間にコーキング材を充填するか、又は、固化剤注入管の外周面に、膨張形成可能なパッカーを配置して固化剤の漏れ出しを防止すると、固化剤の無駄を無くすことができる。例えば、パッカーで固化剤の漏れ出しを防止する場合は、注入管の挿入完了状態で前記注入口と前記余剰部との間で且つ前記管体の内面と前記注入管外面との間にパッカーが配置されるよう、注入管に付帯させてパッカー形成手段を取り付けておき、紙管のパッカー形成部位には管外周部の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を形成しておく。注入管を挿入し、パッカー形成手段によりパッカー形成部位に発泡材例えばウレタンなどを供給すれば、パッカーが紙管の内面と掘孔内面とに密着して防壁を形成するので余剰部側への固化剤の進入が防止され、余剰部は、空洞のままとなる。このため切除が容易で余剰部から固化剤を剥離する必要もないので、切除、廃棄処分に関する費用が低減される。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したことから明らかなように本発明によれば、トンネル断面に対して管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山の補強方法において、余剰部の切除が容易になると共に、廃棄処分に関する費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、長尺鋼管先受け工法に適用した本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1〜図10は、本発明にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法の一実施例を示すものであり、図1は前述した従来例の長尺鋼管先受け工法おける図14(C)の鋼管打設工程に相当する。
【0027】
本実施例の地山補強工用管体の余剰部撤去方法では、切羽に掘孔を形成するための削孔ビット20が先端に装着された内管ロッド22と、この内管ロッド22を内部に収納し、地山中に残置される鋼管製の外管24とが用いられる。
【0028】
前記削孔ビット20の後端部には延長ロッド26が螺着連結され、延長ロッド26の後端側に内管ロッド22がウイングカップリング28を介して螺着連結される。ウイングカップリング28は、その軸芯に内管ロッド22が挿通され、外周縁が外管24の内周面に摺接することによって内管ロッド22を外管24の中心軸上に位置決めする。
【0029】
図2の分解説明図に示すように、前記内管ロッド22は、両端にネジが刻設された管状のロッドであって、掘削の進行に伴って順次中継用カップリング30を介して螺着連結される。内管ロッド22が連結されると、内管ロッド22内は、削孔ビット20に削孔水やエアなどの冷却媒体Aを供給するための媒体供給通路32となる。なお、詳細には図示されていないが媒体供給通路32は削孔ビット20の先端に開口している。また、外管24は、先頭管24aと、複数の中間管24bと、端末管24c、ショートヘッド管24fと、ディスチャージャヘッド管24gとを備えている。
【0030】
先頭管24aおよび中間管24bには、その両端部の一方に雄ねじ部240が、他方に雌ねじ部241が刻設され、外周面に多数の貫通孔242が穿設された中空円筒状の管体が用いられる。先頭管24aの後端に螺着連結された中間管24bには、掘削の進行に伴って、複数の中間管24bが順次螺着結される。
【0031】
ところで、上記端末管24cには紙管が使用される。端末管24cに用いる紙管には、吸水を防止するための防水乃至は揮発処理が施される。そして、端末管24cは、掘削の進行に伴って、最後尾の中間管24bの後端に、後述する管継手を介して連結され、ショートヘッド管24fは、先頭管24aの先端に螺着連結され、そしてディスチャージャヘッド管24gは、端末管24cの後端に螺着連結される。
【0032】
このように構成された外管24は、内部に挿通された内管ロッド22の外周面との間が、掘削に伴って発生する掘削スライムBの排出通路34となっている。そして、外管24の先端側には、図3に示すように、両端が開口した円筒状のケーシングシュー36が、ショートヘッド管24fに螺着連結されている。ディスチャージャヘッド管24gには、周方向に沿って複数の排出孔24jが穿設されている。削孔ロッド20に推力と回転および打撃とを伝達するドリフタ42は、スリーブ44を介して、内管ロッド22の後端側と結合されている。
【0033】
図4〜図7は、前記端末管24cと最後部の中間管24bとの種々の接続構造を示す断面図であり、図4は第1の接続構造を、図5は第2の接続構造を、図6は第3の接続構造を、図7は第4の接続構造をそれぞれ示している。なお、図4の第1の接続構造にあっては、地山に打設された状態で示してあるが、図5〜図7では接続部のみを示している。
【0034】
図4に示す接続構造では、最後尾の中間管24bに管継手60を介して端末管24cを接続する。すなわち、中間管24bの端末管24cとの接続端部である後端部外周面には段差を付けて縮径した雄ネジ24b1を刻設すると共に、管継手60の一端部内周面に前記中間管24bの雄ネジ24b1に螺合する雌ネジ60aを、他端部内周面に端末管24cの先端部を嵌合する嵌合部60bを形成し、管継手60の雌ネジ60aに中間管24bの雄ネジ24b1に螺着して連結した後、この管継手60の後端部の筒状の嵌合部60bに端末管24cの前端部を挿入して両者の接合面を接着剤で接合するようにしたものである。このようにすると、端末管24cは紙管でありながら接着剤にせん断破壊が生じにくくなるので、接続の強度及び信頼性が向上する。また、管継手60が端末管24cの補強材となるので端末管24c強度も増加する。さらに、管継手60の外径は中間管24bの外径に一致させて面一となるようにして、地山への嵌入の際の抵抗とならないようにする。
【0035】
図5に示す第2の接続構造は、端末管24cの紙管の先端部に金属製の円筒形部材61を嵌合止着して補強し、この金属製円筒形部材61を中間管24bに管継手62を介して連結する。前記金属製円筒形部材61の外周面には端末管24cを管継手62に接続するための雄ネジ61aと、当該端末管24cの紙管を止着するためのリベット61cを挿入するための貫通孔61bとを形成し、端末管24cの紙管先端部外周部には、前記貫通孔61bに対応してリベット61cを挿入するための貫通孔24c2を形成する。
【0036】
金属製円筒部材61に端末管24cの紙管先端部を挿入し、金属製円筒形部材61の貫通孔61bと、端末管24cの紙管に形成した貫通孔24c2とにリベット61cを挿入してカシメ処理を施すと、金属製円筒形部材61が端末管24cの紙管先端部に一体化され、端末管24cの紙管先端部が金属製円筒形部材61によって補強される。次に、中間管24bの後端部の雄ネジ24b1を管継手62の一端部内周面の雌ネジ62aに螺入し、さらに、金属製円筒形部材61外周面の雄ネジ61dを管継手62の他端部内周面の雌ネジ62bに螺入すると、中間管24bと端末管24cとの連結が完了する。
【0037】
このようにすると端末管24cの接続側端部が金属製円筒形部材61で補強され、端末管24cの紙管が金属製円筒形部材61と管継手62とを介して中間管24cに連結されるので、連結に係る強度及び信頼性が向上する。
【0038】
なお、この接続方法において、締結要素の一例としてリベット61cを使用したが、リベット61cの代わりに止めねじ等を用い、ネジの先端にカシメ処理を施すようにしてもよい。
【0039】
図6に示す第3の接続構造は、端末管24cの先端部を金属製被覆筒63で補強し、この金属製被覆筒63を中間管24bに管継手62を介して接続するものである。前記金属製被覆筒63は、端末管24cの先端部の端面部を覆う端面被覆部63aの一側に、端末管24cの内周面を覆う内周面被覆部63bを連接し、他側に、端末管24cの外周面を覆う外周被覆部63cを連接し、さらに、外周面被覆部63cに、エンボス加工等によって端末管24cの外周面に食い込む爪63dを形成したものである。
【0040】
金属製被覆筒63を取付ける際は、端面被覆部63aに対して外面被覆部63cを外開きの状態とする。次に、外面被覆部63c、内面被覆部63b及び端面被覆部63aによって略コ字形に形成された金属製被覆筒63の嵌込部63eを、端末管24cの先端部に嵌め込む。次に、端面被覆部63aが端末管24cの端面に当接した状態で外周面被覆部63cの内側への折り曲げによって爪63dを端末管24cの外周部に食い込ませると、端末管24cの先端部に金属製被覆筒63が一体化する。
【0041】
次に、中間管24bの外周面の雄ネジ24b1に管継手62の一端部内周面の雌ネジ62aを螺入し、管継手62の他端部内周面の雌ネジ62bに前記金属製被覆筒63の外周面の雄ネジ63fを螺入して、中間管24bに対する端末管24cの連結を完了する。
【0042】
この第3の接続構造によれば紙管との接合部において、金属製被覆筒63の断面係数が前記金属製円筒形部材61の断面係数よりも高くなるので、連結に係る強度及び信頼性は、図5の第2の接続構造の金属製円筒形部材61の場合よりも高くなる。なお、この第3の接続構造において、金属製被覆筒63の外周面被覆部63cと内周面被覆部63bとの外開きをなくすために最終的にリベット(図示せず)で固定してもよい。また、金属製被覆筒63の肉厚を厚くして強度を上げる場合は、内側被覆部63b及び端面被覆部63aを廃止してもよい。
【0043】
図7に示す第4の接続構造は、端末管24cの先端部を樹脂化によって端末管24cの先端部を補強し、この先端部に形成された雄ネジ24c1に管継手62を介して接続するようにしたものである。端末管24cの先端部の樹脂化は、少なくとも先端部外周に樹脂を含浸させた後、成形を施すことによって行い、雄ネジ24c1は、成形と同時又は、その後の刻設によって形成する。端末管24cの先端部の雄ネジ24c1を中間管24bの後端部内周面の雌ネジ24b2に螺入し、管継手62に第1端末管24を連結すると、中間管24bに対する連結が終了する。
【0044】
なお、樹脂を端末管24cの先端部だけでなく端末管24c全体に含浸させ、全体の強度を向上してもよい。また、セルロース(短繊維、長繊維を含む)と樹脂とを混合した樹脂で端末管24cを形成してもよく、さらにセルロースを含んだ生分解可能な生分解性樹脂、又はセルロースを含まない生分解性樹脂で端末管24cを構成してもよい。
【0045】
ここで、上記生分解性樹脂とは、例えばトウモロコシ等の植物から取り出したポリ乳酸等を原料として、これに特殊な界面活性材を使用して粘土の微粒子をちりばめる等して作成される熱や水に強い樹脂のことであり、主成分として澱粉成分が60〜80%を占めている。
【0046】
このような生分解性樹脂を用いると、土中の微生物が生分解性樹脂を分解するので、後述するように端末管24cの余剰部を切除して廃棄する場合に、特定の環境下で処理する必要が無く、掘削ズリと一緒に廃棄できるので廃棄処分費用が大幅に削減される。
【0047】
削孔ヘッド20の周辺を拡大して示した図3を参照すると、削孔ヘッド20は、リングロストビット20aと、インナービット20bとから構成されていて、リングロストビット20aに嵌合されたインナービット20bが、ケーシングシュー36の内部に挿入されている。インナービット20bの外周面には、軸方向に沿って分断された凹溝20cが設けられていて、この凹溝20cの先端側は、インナービット20bの先端縁に開口し、後端側は、スライムBの排出通路34と連通している。そして、インナービット20bとケーシングシュー36との間には、ドリフタ42から加えられる推力および打撃の動力伝達部分46が設けられている。本実施例の動力伝達部分46は、ケーシングシュー36の内周面に設けられた段部48と、この段部48に当接する凸部50とから構成されていて、凸部50は、インナービット20bの外周面に設けられていて、外管24の先端側に配置されている。なお、段部48と凸部50との当接関係は、その全周に渡るものではなく、インナービット20bの外周に設けられた凹溝20cの部分で分断されている。
【0048】
外管24を地山に設置する際は、図1に示すように、ドリフタ42を駆動する。ドリフタ42から推力と回転および打撃とが、内管ロッド22を介して削孔ビット20に伝達され、これにより地山Dが掘削され、図3に示すように、削孔Cが形成される。このとき、媒体供給通路32から削孔水やエアおよび気泡などの冷却媒体Aが削孔ビット20に供給され、削孔ビット20で掘削されたスライムBは、排出通路34を介して外部に排出される。
【0049】
一方、外管24には、ドリフタ42の推力と打撃とが、外管24の先端側に設けられた動力伝達部分46を介して、その先端側に伝達され、これにより外管24は、削孔ビット20により掘削形成された削孔C内に、前引き方式により挿入されるので、端末管24cを紙管あるいは生分解性樹脂管としても打設中に管が破損することはない。このようにして、外管24の先端側に推力および打撃の動力伝達部分46を設け、外管24を前引き方式で削孔C内に挿入すると、外管24の後端側にスライム排出通路34を閉塞する打設治具を設ける必要がなくなる。これにより、外管24の後端側を開放した掘削スライムBの排出口とすることができ、外管24の後端を開放することで、掘削スライムBを内部に溜めることなく円滑に排出することができる。なお、外管24は、詳細は図示していないが、適宜個所に設置されるセントライザーにより、内管ロッド22と同心状に位置決め支持される。
【0050】
所定長さの外管24を地山D中に打設すると、図12で同様に、削孔ビット20のインナービット20bと内管ロッド22とを回収し、その代わりに、図8に示すように、固縛等によりパッカー形成手段Pを取り付けて付帯させた固化剤注入管66を挿入する。この場合、固化剤注入管66には外管24に対する挿入完了の状態で、先端の注入口66aが端末管24cの余剰部よりも掘削方向前方に存在し得る長さのものを用い、パッカー形成手段Pは、端末管24cの余剰部の先端と前記注入口66aとの間に配置する。ここで、本図示例では、パッカーP0は端末管24cの接続部に近接させて中間管24bの後端部に形成するようになっており、中間管24bのパッカー形成部位には発泡ウレタン等のパッカー形成材料を管体外周部の掘孔内に導出させるための開口部67が形成される。
【0051】
パッカー形成手段Pはパッカー形成材料の発泡ウレタン等を供給する形成材供給管P1と、中間管24b内部の所定部位にパッカー形成空間を画成するための膨張拡縮可能な袋体P2とを有する。袋体P2は上記開口部67の前後に位置されて2つが一対で設けられており、この袋体P2にはこれを膨張させて中間管24bの内周面に密着させるためのエアーを供給するエアー供給管P3が接続されていて、上記形成材供給管P1の先端は両袋体P2に挟まれたパッカー形成空間まで延びている。
【0052】
即ち、袋体P2内にエアーを供給して膨らませ、上記開口部67の前後を当該袋体P2で閉塞することでパッカー形成空間を画成する。そして、当該パッカー画成空間に形成材供給管P1から例えば発泡ウレタンなどのパッカー形成材を供給充填すると、パッカー形成材は中間管24bの開口部67から外周部にも漏れだして、中間管24bと掘孔との内外のパッカー形成部位に、これらに密着したパッカーP0が形成されて、当該パッカーP0が端末管24c側への固化剤の進入を防止するための防壁W1,W2を形成することになる。
【0053】
このため、この後に固化剤注入管66より外管24内に固化剤を注入しても防壁W1,W2が端末管24cの余剰部への固化剤の進入を防止するので、余剰部内は空洞のままとなり、固化剤注入管66を通じて外管24に注入した固化剤は中間管24bの貫通孔242と先頭管24a先端の開口から地山の掘孔内に充填供給された後、固化して地盤沈下などを防止する補強体となる。
【0054】
図9は補強体設置後のトンネル断面を示す説明図である。同図においてH形形状で示した部材が、掘削されるトンネル断面に沿って設置されるアーチ型の支保工501である。この支保工501は外管24を打設される前に現在の切羽521の直前に設置する。
【0055】
本実施例で打設された鋼管製の外管24は、支保工501の下方側から上方側に向けて所定の傾斜角度で地山D中に打設される。外管24は、切羽521から後端側が少し突出するように端末管24cが設置される。現在の切羽521 から前方側に向けて掘削する前に、切羽521から突出している端末管24cの端部に、ブレーカなどによりそれぞれ振動,衝撃を加えて余剰部を折損させることにより撤去する。この後、掘削することにより掘削前の切羽521を掘削後の切羽522にまで前進させ、支保工502を設置し、次いで、端末管24cの余剰部を同様に折損させて撤去する。さらに、掘削することにより切羽522を切羽523にまで前進させて支保工503を設置し、次いで、端末管24cの余剰部を折損によって撤去する。この工程以降は、外管24が支保工505の設置に障害とならないので、撤去されることはない。
【0056】
以上、説明したように、本発明にあっては、端末管24cを紙管あるいは生分解性樹脂管で形成し、その余剰部側への固化剤の進入をパッカーP0が形成する防壁W1,W2によって防止し中空な余剰部とすることによって固化剤の無駄な消費を省き、折損を容易にする。折損した余剰部は中空であり、固化剤が充填されていないので、単独の一般廃棄物として廃棄処分が可能となり、廃棄処分費用が減少する。
【0057】
図10は掘孔の入口にコーキング材を充填することにより、固化剤の使用量を削減するようにしたものである。すなわち、前記固化剤注入管66を、中間管24b、端末管24c等から外管24に挿入した後、掘孔の入口にコーキング材を充填して固化剤の漏れ出しを防止する防壁W3を形成する。掘孔の入口が防壁W3によって閉鎖されていると、注入管66により固化剤を注入しても固化剤が外部に漏れ出さず、前記掘削ビットの開口及び中間管24bの前記貫通孔242等から地山側に固化剤が供給されるので補強体を無駄なく形成することができる。 この場合、前記したようにパッカーP0を設けていないので端末管24cにも固化剤が充填されることになるが、紙管あるいは生分解性樹脂管は固化剤からの剥離や切除が容易であり、余剰部の切除後に固化剤と分離して廃棄することができるので、コーキング材を用いた場合でも廃棄処分費用の削減が可能となる。
【0058】
図11〜図13は中間管24bと端末管24cとの接続構造の変形例を示すものである。これらの変形例は図示するように、中間管24bである鋼管の接続端部には、その内周面に雌ねじ24b2を形成しておき、この雌ねじ部24b2に紙管からなる端末管24cの接続端の外周面に形成した雄ねじ部61d,63f,24c1を螺合させて、管継手を介さずに両者を直接に連結するようにしてある。ここで、端末管24cである紙管の雄ねじ部61d,63f,24c1の構成は前述した図5〜図7の場合と全く同様であり、よって同一部分には同一の符号を付してその説明は省略するが、図11は図5の変形例であり、図12は図6の変形例、図13は図7の変形例である。
【0059】
なお、前記した各実施形態の説明は、本発明を長尺鋼管先受け工に適用した場合を説明したが、本発明は、これに限定されることはなく、鋼管を用いて地山を補強した後に、鋼管を撤去する必要がある場合に適用することができる。また、端末管24cを除く他の管体24、つまり先端管24aと中間管24bには鋼管に代えて繊維強化樹脂管等を採用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る地山補強工用管体の余剰部撤去方法を説明するための鋼管を打設する際の施工説明図である。
【図2】図1の要部分解図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】中間管と端末管との第1の接続構造を示す説明図である。
【図5】同じく中間管と端末管との第2の接続構造を示す説明図である。
【図6】同じく中間管と端末管との第3の接続構造を示す説明図である。
【図7】同じく中間管と端末管との第4の接続構造を示す説明図である。
【図8】パッカー形成手段を設置した状態を示す説明図である。
【図9】補強体設置後のトンネル断面を示す説明図である。
【図10】コーキング材により防壁を設置した状態を示す説明図である。
【図11】図5に示す中間管と端末管との第2の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図12】図6に示す中間管と端末管との第3の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図13】図7に示す中間管と端末管との第4の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図14】従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。
【図15】図14の説明図の手順に続く、従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
20 削孔ビット
22 内管ロッド
24 外管
24a 先頭管
24b 中間管
24c 端末管
A 冷却媒体
B 掘削スライム
C 削孔
D 地山
P パッカー形成手段
P0 パッカー
P1 形成材供給管
P2 袋体
P3 エアー供給管
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル断面の掘削に先立って、地山補強用の先受け工として切羽の上方に打設される長尺な管体の余剰部の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亀裂,すべり面の多い地山や、土砂地山、強度の小さい軟岩、膨張性地山、又は土被りの少ない地山などでトンネルを形成する場合、例えば、切羽の掘削に先立って、切羽の上方、略120゜の範囲に複数の鋼管を打設し、各鋼管を通じて地山に固化剤を注入硬化することによって、地山中に地盤沈下などを防止するためのフォアパイリングと呼ばれる補強体を形成する注入式長尺鋼管先受け工注が用いられている。
【0003】
図14、15は、従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。一般に、AGF工法(All Ground Fasten)とも呼ばれるこの工法では、掘削を終了すると、まず、図14(A)に示すように、吹き付けロボット2を用いて切羽面1に鏡面吹き付けコンクリート層aを形成し、次に、図14(B)に示すように、高所作業車3による足場を組み立て、続いて、鋼管を打設するための掘孔のマーキングを行う。マーキングと掘孔の形成には、通常、ジャンボ4を用い、ジャンボ4のガイドブーム5に、打設しようとする鋼管6や地山を削孔するための削孔ビット、内管ロッドなどの穿孔手段を保持する。
【0004】
ジャンボ4のガイドブーム5を、マーキング個所に位置決めし、前記鋼管を打設するための掘孔を形成した後は、図14(C)に示すように、掘孔に鋼管6を打設する。鋼管の打設範囲は、地山の性状等によって変化するが、前記したように、切羽面1の上部側の所定の角度範囲、例えば、120°程度の範囲とし、周方向に所定間隔を隔てて打設する。また、鉛直面内においては、鋼管6は、4ないしは6°の範囲内のほぼ一定の角度で上方に向けて傾斜した状態に、水平方向においては、中心から外側に向かって、放射状に広がるように打設する。
【0005】
全ての鋼管6の打設を終了すると、次は、図15(A),(B)に示すように、鋼管6から掘削ビットおよび内管ロッドを回収し、代わりに注入管を挿入して鋼管6に固化剤を注入する。なお、注入管は注入ポンプ7に接続されている。
固化剤は注入時の圧力により鋼管6の外周にも拡散するので、固化剤が硬化すると図15(C)に示すように前記補強体が地山中に形成される。
【0006】
従って、切羽の掘削、支保工の設置等トンネル構築のための工事の前後に、補強体を形成すれば、安全で信頼性の高いトンネルを形成できるが、補強体の設置後、トンネルの拡幅工事を行わない場合、すなわち、無拡幅工法とする場合には、最後の継ぎ足しを行った各鋼管6の端末側がトンネル断面に突出してこれが支保工に干渉してしまうので、当該トンネル断面に突出する余剰部を切除して撤去するようにしている。
【0007】
ここで、上記余剰部の撤去を行うにあたっては、従来では、特開平8−121073号公報に示されるように、端末の鋼管とその前方の鋼管との接続部を離脱可能な特殊構造となして、当該突出部分、すなわち、余剰部分となる端末の鋼管を撤去するか、又は、特開2000−297592号公報に示されるように、鋼管の外周部に折損をし易くするV字状の溝を設け、溝から折損させることによって撤去するという工法が用いられている。なお、上記鋼管に代えて塩ビ管を用いることも周知になっている。
【特許文献1】特開平8−121073号公報
【特許文献2】特開2000−297592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の撤去方法では、鋼管や塩ビ管からなる管体の端末側を切除して廃棄するにあたっては、鋼管や塩ビ管の端末側は固化剤と一体となっているため、鋼管や塩ビ管と固化剤とを分離することが困難であり、これ故、複合廃棄物として廃棄せざるを得ず、そのために処分に多額の費用がかかるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山補強工において、余剰部の切除を容易にし、且つ当該切除した余剰部を費用の掛からない廃棄物として廃棄処分し得るか、若しくは廃棄不要となし得る地山補強工用管体の余剰部撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、削孔ビットが装着された内管ロッドと、この内管ロッドを内部に収容する管体とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビットで掘削した切羽前方の削孔内に前記管体を順次継ぎ足しながら挿入した後に、前記削孔ビットの一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体の内外周に固化剤を注入固化させ、しかる後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去するに際して、前記管体の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管にのみに紙管を用い、該端末管より前方の管体には鋼管を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記紙管が防水又は撥水処理を施されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記固化剤の注入は、前記管体内に固化剤注入管を挿通して行い、該固化剤注入管を該管体内に挿入する際に、前記固化剤注入管に付帯させて前記余剰部側への固化剤の進入を阻むためのパッカーを前記余剰部の前方に注入形成するパッカー形成手段を設けるとともに、該パッカー形成部位の管体部に、該管体部外側の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を設け、前記固化剤の注入に先立って、前記パッカー形成手段によりパッカーを注入形成して、前記管体の内外に前記余剰部側への固化剤の流出を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記掘孔の入口において、前記紙管の外面と掘孔との間に充填材を充填して前記紙管外に前記余剰部側への固化剤の供給を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管と紙管との連結に、これらの連結端部に嵌合する金属又は樹脂製の管継手を用い、該管継手と前記鋼管とをねじにより、前記管継手と前記紙管とを接着剤により連結するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、前記鋼管の連結端部と前記円筒形部材とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、前記鋼管の連結端部と金属製被覆筒とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、前記鋼管と紙管との連結端部同士をこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、該円筒形部材の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項10にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、該金属製被覆筒の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項11にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、該雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項12にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法にあっては、請求項1〜11における紙管を生分解性樹脂管に置換したことを特徴とする。
【0022】
上記構成にかかる本発明の地山補強工用管体の余剰部撤去方法によれば、余剰部は紙管あるいは生分解性樹脂管で形成されていて、切除や固化剤の剥離が容易なので、従来のように複合廃棄物とせずに廃棄することができる。なお、紙管を用いる場合には、好ましくは、内外周の表面に防水又撥水処理を施して紙管の吸水を防止すると共に、紙管内面に対する固化剤の付着を防止すると、固化剤からの剥離が一層容易になる。
【0023】
そして、補強体を地山に打設する際に、掘孔の入口と、管体に挿入する固化剤注入管との間にコーキング材を充填するか、又は、固化剤注入管の外周面に、膨張形成可能なパッカーを配置して固化剤の漏れ出しを防止すると、固化剤の無駄を無くすことができる。例えば、パッカーで固化剤の漏れ出しを防止する場合は、注入管の挿入完了状態で前記注入口と前記余剰部との間で且つ前記管体の内面と前記注入管外面との間にパッカーが配置されるよう、注入管に付帯させてパッカー形成手段を取り付けておき、紙管のパッカー形成部位には管外周部の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を形成しておく。注入管を挿入し、パッカー形成手段によりパッカー形成部位に発泡材例えばウレタンなどを供給すれば、パッカーが紙管の内面と掘孔内面とに密着して防壁を形成するので余剰部側への固化剤の進入が防止され、余剰部は、空洞のままとなる。このため切除が容易で余剰部から固化剤を剥離する必要もないので、切除、廃棄処分に関する費用が低減される。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したことから明らかなように本発明によれば、トンネル断面に対して管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去する地山の補強方法において、余剰部の切除が容易になると共に、廃棄処分に関する費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、長尺鋼管先受け工法に適用した本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1〜図10は、本発明にかかる地山補強工用管体の余剰部撤去方法の一実施例を示すものであり、図1は前述した従来例の長尺鋼管先受け工法おける図14(C)の鋼管打設工程に相当する。
【0027】
本実施例の地山補強工用管体の余剰部撤去方法では、切羽に掘孔を形成するための削孔ビット20が先端に装着された内管ロッド22と、この内管ロッド22を内部に収納し、地山中に残置される鋼管製の外管24とが用いられる。
【0028】
前記削孔ビット20の後端部には延長ロッド26が螺着連結され、延長ロッド26の後端側に内管ロッド22がウイングカップリング28を介して螺着連結される。ウイングカップリング28は、その軸芯に内管ロッド22が挿通され、外周縁が外管24の内周面に摺接することによって内管ロッド22を外管24の中心軸上に位置決めする。
【0029】
図2の分解説明図に示すように、前記内管ロッド22は、両端にネジが刻設された管状のロッドであって、掘削の進行に伴って順次中継用カップリング30を介して螺着連結される。内管ロッド22が連結されると、内管ロッド22内は、削孔ビット20に削孔水やエアなどの冷却媒体Aを供給するための媒体供給通路32となる。なお、詳細には図示されていないが媒体供給通路32は削孔ビット20の先端に開口している。また、外管24は、先頭管24aと、複数の中間管24bと、端末管24c、ショートヘッド管24fと、ディスチャージャヘッド管24gとを備えている。
【0030】
先頭管24aおよび中間管24bには、その両端部の一方に雄ねじ部240が、他方に雌ねじ部241が刻設され、外周面に多数の貫通孔242が穿設された中空円筒状の管体が用いられる。先頭管24aの後端に螺着連結された中間管24bには、掘削の進行に伴って、複数の中間管24bが順次螺着結される。
【0031】
ところで、上記端末管24cには紙管が使用される。端末管24cに用いる紙管には、吸水を防止するための防水乃至は揮発処理が施される。そして、端末管24cは、掘削の進行に伴って、最後尾の中間管24bの後端に、後述する管継手を介して連結され、ショートヘッド管24fは、先頭管24aの先端に螺着連結され、そしてディスチャージャヘッド管24gは、端末管24cの後端に螺着連結される。
【0032】
このように構成された外管24は、内部に挿通された内管ロッド22の外周面との間が、掘削に伴って発生する掘削スライムBの排出通路34となっている。そして、外管24の先端側には、図3に示すように、両端が開口した円筒状のケーシングシュー36が、ショートヘッド管24fに螺着連結されている。ディスチャージャヘッド管24gには、周方向に沿って複数の排出孔24jが穿設されている。削孔ロッド20に推力と回転および打撃とを伝達するドリフタ42は、スリーブ44を介して、内管ロッド22の後端側と結合されている。
【0033】
図4〜図7は、前記端末管24cと最後部の中間管24bとの種々の接続構造を示す断面図であり、図4は第1の接続構造を、図5は第2の接続構造を、図6は第3の接続構造を、図7は第4の接続構造をそれぞれ示している。なお、図4の第1の接続構造にあっては、地山に打設された状態で示してあるが、図5〜図7では接続部のみを示している。
【0034】
図4に示す接続構造では、最後尾の中間管24bに管継手60を介して端末管24cを接続する。すなわち、中間管24bの端末管24cとの接続端部である後端部外周面には段差を付けて縮径した雄ネジ24b1を刻設すると共に、管継手60の一端部内周面に前記中間管24bの雄ネジ24b1に螺合する雌ネジ60aを、他端部内周面に端末管24cの先端部を嵌合する嵌合部60bを形成し、管継手60の雌ネジ60aに中間管24bの雄ネジ24b1に螺着して連結した後、この管継手60の後端部の筒状の嵌合部60bに端末管24cの前端部を挿入して両者の接合面を接着剤で接合するようにしたものである。このようにすると、端末管24cは紙管でありながら接着剤にせん断破壊が生じにくくなるので、接続の強度及び信頼性が向上する。また、管継手60が端末管24cの補強材となるので端末管24c強度も増加する。さらに、管継手60の外径は中間管24bの外径に一致させて面一となるようにして、地山への嵌入の際の抵抗とならないようにする。
【0035】
図5に示す第2の接続構造は、端末管24cの紙管の先端部に金属製の円筒形部材61を嵌合止着して補強し、この金属製円筒形部材61を中間管24bに管継手62を介して連結する。前記金属製円筒形部材61の外周面には端末管24cを管継手62に接続するための雄ネジ61aと、当該端末管24cの紙管を止着するためのリベット61cを挿入するための貫通孔61bとを形成し、端末管24cの紙管先端部外周部には、前記貫通孔61bに対応してリベット61cを挿入するための貫通孔24c2を形成する。
【0036】
金属製円筒部材61に端末管24cの紙管先端部を挿入し、金属製円筒形部材61の貫通孔61bと、端末管24cの紙管に形成した貫通孔24c2とにリベット61cを挿入してカシメ処理を施すと、金属製円筒形部材61が端末管24cの紙管先端部に一体化され、端末管24cの紙管先端部が金属製円筒形部材61によって補強される。次に、中間管24bの後端部の雄ネジ24b1を管継手62の一端部内周面の雌ネジ62aに螺入し、さらに、金属製円筒形部材61外周面の雄ネジ61dを管継手62の他端部内周面の雌ネジ62bに螺入すると、中間管24bと端末管24cとの連結が完了する。
【0037】
このようにすると端末管24cの接続側端部が金属製円筒形部材61で補強され、端末管24cの紙管が金属製円筒形部材61と管継手62とを介して中間管24cに連結されるので、連結に係る強度及び信頼性が向上する。
【0038】
なお、この接続方法において、締結要素の一例としてリベット61cを使用したが、リベット61cの代わりに止めねじ等を用い、ネジの先端にカシメ処理を施すようにしてもよい。
【0039】
図6に示す第3の接続構造は、端末管24cの先端部を金属製被覆筒63で補強し、この金属製被覆筒63を中間管24bに管継手62を介して接続するものである。前記金属製被覆筒63は、端末管24cの先端部の端面部を覆う端面被覆部63aの一側に、端末管24cの内周面を覆う内周面被覆部63bを連接し、他側に、端末管24cの外周面を覆う外周被覆部63cを連接し、さらに、外周面被覆部63cに、エンボス加工等によって端末管24cの外周面に食い込む爪63dを形成したものである。
【0040】
金属製被覆筒63を取付ける際は、端面被覆部63aに対して外面被覆部63cを外開きの状態とする。次に、外面被覆部63c、内面被覆部63b及び端面被覆部63aによって略コ字形に形成された金属製被覆筒63の嵌込部63eを、端末管24cの先端部に嵌め込む。次に、端面被覆部63aが端末管24cの端面に当接した状態で外周面被覆部63cの内側への折り曲げによって爪63dを端末管24cの外周部に食い込ませると、端末管24cの先端部に金属製被覆筒63が一体化する。
【0041】
次に、中間管24bの外周面の雄ネジ24b1に管継手62の一端部内周面の雌ネジ62aを螺入し、管継手62の他端部内周面の雌ネジ62bに前記金属製被覆筒63の外周面の雄ネジ63fを螺入して、中間管24bに対する端末管24cの連結を完了する。
【0042】
この第3の接続構造によれば紙管との接合部において、金属製被覆筒63の断面係数が前記金属製円筒形部材61の断面係数よりも高くなるので、連結に係る強度及び信頼性は、図5の第2の接続構造の金属製円筒形部材61の場合よりも高くなる。なお、この第3の接続構造において、金属製被覆筒63の外周面被覆部63cと内周面被覆部63bとの外開きをなくすために最終的にリベット(図示せず)で固定してもよい。また、金属製被覆筒63の肉厚を厚くして強度を上げる場合は、内側被覆部63b及び端面被覆部63aを廃止してもよい。
【0043】
図7に示す第4の接続構造は、端末管24cの先端部を樹脂化によって端末管24cの先端部を補強し、この先端部に形成された雄ネジ24c1に管継手62を介して接続するようにしたものである。端末管24cの先端部の樹脂化は、少なくとも先端部外周に樹脂を含浸させた後、成形を施すことによって行い、雄ネジ24c1は、成形と同時又は、その後の刻設によって形成する。端末管24cの先端部の雄ネジ24c1を中間管24bの後端部内周面の雌ネジ24b2に螺入し、管継手62に第1端末管24を連結すると、中間管24bに対する連結が終了する。
【0044】
なお、樹脂を端末管24cの先端部だけでなく端末管24c全体に含浸させ、全体の強度を向上してもよい。また、セルロース(短繊維、長繊維を含む)と樹脂とを混合した樹脂で端末管24cを形成してもよく、さらにセルロースを含んだ生分解可能な生分解性樹脂、又はセルロースを含まない生分解性樹脂で端末管24cを構成してもよい。
【0045】
ここで、上記生分解性樹脂とは、例えばトウモロコシ等の植物から取り出したポリ乳酸等を原料として、これに特殊な界面活性材を使用して粘土の微粒子をちりばめる等して作成される熱や水に強い樹脂のことであり、主成分として澱粉成分が60〜80%を占めている。
【0046】
このような生分解性樹脂を用いると、土中の微生物が生分解性樹脂を分解するので、後述するように端末管24cの余剰部を切除して廃棄する場合に、特定の環境下で処理する必要が無く、掘削ズリと一緒に廃棄できるので廃棄処分費用が大幅に削減される。
【0047】
削孔ヘッド20の周辺を拡大して示した図3を参照すると、削孔ヘッド20は、リングロストビット20aと、インナービット20bとから構成されていて、リングロストビット20aに嵌合されたインナービット20bが、ケーシングシュー36の内部に挿入されている。インナービット20bの外周面には、軸方向に沿って分断された凹溝20cが設けられていて、この凹溝20cの先端側は、インナービット20bの先端縁に開口し、後端側は、スライムBの排出通路34と連通している。そして、インナービット20bとケーシングシュー36との間には、ドリフタ42から加えられる推力および打撃の動力伝達部分46が設けられている。本実施例の動力伝達部分46は、ケーシングシュー36の内周面に設けられた段部48と、この段部48に当接する凸部50とから構成されていて、凸部50は、インナービット20bの外周面に設けられていて、外管24の先端側に配置されている。なお、段部48と凸部50との当接関係は、その全周に渡るものではなく、インナービット20bの外周に設けられた凹溝20cの部分で分断されている。
【0048】
外管24を地山に設置する際は、図1に示すように、ドリフタ42を駆動する。ドリフタ42から推力と回転および打撃とが、内管ロッド22を介して削孔ビット20に伝達され、これにより地山Dが掘削され、図3に示すように、削孔Cが形成される。このとき、媒体供給通路32から削孔水やエアおよび気泡などの冷却媒体Aが削孔ビット20に供給され、削孔ビット20で掘削されたスライムBは、排出通路34を介して外部に排出される。
【0049】
一方、外管24には、ドリフタ42の推力と打撃とが、外管24の先端側に設けられた動力伝達部分46を介して、その先端側に伝達され、これにより外管24は、削孔ビット20により掘削形成された削孔C内に、前引き方式により挿入されるので、端末管24cを紙管あるいは生分解性樹脂管としても打設中に管が破損することはない。このようにして、外管24の先端側に推力および打撃の動力伝達部分46を設け、外管24を前引き方式で削孔C内に挿入すると、外管24の後端側にスライム排出通路34を閉塞する打設治具を設ける必要がなくなる。これにより、外管24の後端側を開放した掘削スライムBの排出口とすることができ、外管24の後端を開放することで、掘削スライムBを内部に溜めることなく円滑に排出することができる。なお、外管24は、詳細は図示していないが、適宜個所に設置されるセントライザーにより、内管ロッド22と同心状に位置決め支持される。
【0050】
所定長さの外管24を地山D中に打設すると、図12で同様に、削孔ビット20のインナービット20bと内管ロッド22とを回収し、その代わりに、図8に示すように、固縛等によりパッカー形成手段Pを取り付けて付帯させた固化剤注入管66を挿入する。この場合、固化剤注入管66には外管24に対する挿入完了の状態で、先端の注入口66aが端末管24cの余剰部よりも掘削方向前方に存在し得る長さのものを用い、パッカー形成手段Pは、端末管24cの余剰部の先端と前記注入口66aとの間に配置する。ここで、本図示例では、パッカーP0は端末管24cの接続部に近接させて中間管24bの後端部に形成するようになっており、中間管24bのパッカー形成部位には発泡ウレタン等のパッカー形成材料を管体外周部の掘孔内に導出させるための開口部67が形成される。
【0051】
パッカー形成手段Pはパッカー形成材料の発泡ウレタン等を供給する形成材供給管P1と、中間管24b内部の所定部位にパッカー形成空間を画成するための膨張拡縮可能な袋体P2とを有する。袋体P2は上記開口部67の前後に位置されて2つが一対で設けられており、この袋体P2にはこれを膨張させて中間管24bの内周面に密着させるためのエアーを供給するエアー供給管P3が接続されていて、上記形成材供給管P1の先端は両袋体P2に挟まれたパッカー形成空間まで延びている。
【0052】
即ち、袋体P2内にエアーを供給して膨らませ、上記開口部67の前後を当該袋体P2で閉塞することでパッカー形成空間を画成する。そして、当該パッカー画成空間に形成材供給管P1から例えば発泡ウレタンなどのパッカー形成材を供給充填すると、パッカー形成材は中間管24bの開口部67から外周部にも漏れだして、中間管24bと掘孔との内外のパッカー形成部位に、これらに密着したパッカーP0が形成されて、当該パッカーP0が端末管24c側への固化剤の進入を防止するための防壁W1,W2を形成することになる。
【0053】
このため、この後に固化剤注入管66より外管24内に固化剤を注入しても防壁W1,W2が端末管24cの余剰部への固化剤の進入を防止するので、余剰部内は空洞のままとなり、固化剤注入管66を通じて外管24に注入した固化剤は中間管24bの貫通孔242と先頭管24a先端の開口から地山の掘孔内に充填供給された後、固化して地盤沈下などを防止する補強体となる。
【0054】
図9は補強体設置後のトンネル断面を示す説明図である。同図においてH形形状で示した部材が、掘削されるトンネル断面に沿って設置されるアーチ型の支保工501である。この支保工501は外管24を打設される前に現在の切羽521の直前に設置する。
【0055】
本実施例で打設された鋼管製の外管24は、支保工501の下方側から上方側に向けて所定の傾斜角度で地山D中に打設される。外管24は、切羽521から後端側が少し突出するように端末管24cが設置される。現在の切羽521 から前方側に向けて掘削する前に、切羽521から突出している端末管24cの端部に、ブレーカなどによりそれぞれ振動,衝撃を加えて余剰部を折損させることにより撤去する。この後、掘削することにより掘削前の切羽521を掘削後の切羽522にまで前進させ、支保工502を設置し、次いで、端末管24cの余剰部を同様に折損させて撤去する。さらに、掘削することにより切羽522を切羽523にまで前進させて支保工503を設置し、次いで、端末管24cの余剰部を折損によって撤去する。この工程以降は、外管24が支保工505の設置に障害とならないので、撤去されることはない。
【0056】
以上、説明したように、本発明にあっては、端末管24cを紙管あるいは生分解性樹脂管で形成し、その余剰部側への固化剤の進入をパッカーP0が形成する防壁W1,W2によって防止し中空な余剰部とすることによって固化剤の無駄な消費を省き、折損を容易にする。折損した余剰部は中空であり、固化剤が充填されていないので、単独の一般廃棄物として廃棄処分が可能となり、廃棄処分費用が減少する。
【0057】
図10は掘孔の入口にコーキング材を充填することにより、固化剤の使用量を削減するようにしたものである。すなわち、前記固化剤注入管66を、中間管24b、端末管24c等から外管24に挿入した後、掘孔の入口にコーキング材を充填して固化剤の漏れ出しを防止する防壁W3を形成する。掘孔の入口が防壁W3によって閉鎖されていると、注入管66により固化剤を注入しても固化剤が外部に漏れ出さず、前記掘削ビットの開口及び中間管24bの前記貫通孔242等から地山側に固化剤が供給されるので補強体を無駄なく形成することができる。 この場合、前記したようにパッカーP0を設けていないので端末管24cにも固化剤が充填されることになるが、紙管あるいは生分解性樹脂管は固化剤からの剥離や切除が容易であり、余剰部の切除後に固化剤と分離して廃棄することができるので、コーキング材を用いた場合でも廃棄処分費用の削減が可能となる。
【0058】
図11〜図13は中間管24bと端末管24cとの接続構造の変形例を示すものである。これらの変形例は図示するように、中間管24bである鋼管の接続端部には、その内周面に雌ねじ24b2を形成しておき、この雌ねじ部24b2に紙管からなる端末管24cの接続端の外周面に形成した雄ねじ部61d,63f,24c1を螺合させて、管継手を介さずに両者を直接に連結するようにしてある。ここで、端末管24cである紙管の雄ねじ部61d,63f,24c1の構成は前述した図5〜図7の場合と全く同様であり、よって同一部分には同一の符号を付してその説明は省略するが、図11は図5の変形例であり、図12は図6の変形例、図13は図7の変形例である。
【0059】
なお、前記した各実施形態の説明は、本発明を長尺鋼管先受け工に適用した場合を説明したが、本発明は、これに限定されることはなく、鋼管を用いて地山を補強した後に、鋼管を撤去する必要がある場合に適用することができる。また、端末管24cを除く他の管体24、つまり先端管24aと中間管24bには鋼管に代えて繊維強化樹脂管等を採用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る地山補強工用管体の余剰部撤去方法を説明するための鋼管を打設する際の施工説明図である。
【図2】図1の要部分解図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】中間管と端末管との第1の接続構造を示す説明図である。
【図5】同じく中間管と端末管との第2の接続構造を示す説明図である。
【図6】同じく中間管と端末管との第3の接続構造を示す説明図である。
【図7】同じく中間管と端末管との第4の接続構造を示す説明図である。
【図8】パッカー形成手段を設置した状態を示す説明図である。
【図9】補強体設置後のトンネル断面を示す説明図である。
【図10】コーキング材により防壁を設置した状態を示す説明図である。
【図11】図5に示す中間管と端末管との第2の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図12】図6に示す中間管と端末管との第3の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図13】図7に示す中間管と端末管との第4の接続構造の変形例を示す説明図である。
【図14】従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。
【図15】図14の説明図の手順に続く、従来の注入式長尺鋼管先受け工法の手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
20 削孔ビット
22 内管ロッド
24 外管
24a 先頭管
24b 中間管
24c 端末管
A 冷却媒体
B 掘削スライム
C 削孔
D 地山
P パッカー形成手段
P0 パッカー
P1 形成材供給管
P2 袋体
P3 エアー供給管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔ビットが装着された内管ロッドと、この内管ロッドを内部に収容する管体とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビットで掘削した切羽前方の削孔内に前記管体を順次継ぎ足しながら挿入した後に、前記削孔ビットの一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体の内外周に固化剤を注入固化させ、しかる後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去するに際して、前記管体の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管にのみに紙管を用い、該端末管より前方の管体には鋼管を用いることを特徴とする地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項2】
前記紙管が防水又は撥水処理を施されていることを特徴とする請求項1に記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項3】
前記固化剤の注入は、前記管体内に固化剤注入管を挿通して行い、該固化剤注入管を該管体内に挿入する際に、前記固化剤注入管に付帯させて前記余剰部側への固化剤の進入を阻むためのパッカーを前記余剰部の前方に注入形成するパッカー形成手段を設けるとともに、該パッカー形成部位の管体部に、該管体部外側の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を設け、前記固化剤の注入に先立って、前記パッカー形成手段によりパッカーを注入形成して、前記管体の内外に前記余剰部側への固化剤の流出を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項4】
前記掘孔の入口において、前記紙管の外面と掘孔との間に充填材を充填して前記紙管外に前記余剰部側への固化剤の供給を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項5】
前記鋼管と紙管との連結に、これらの連結端部に嵌合する金属又は樹脂製の管継手を用い、該管継手と前記鋼管とをねじにより、前記管継手と前記紙管とを接着剤により連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項6】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、前記鋼管の連結端部と前記円筒形部材とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項7】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、前記鋼管の連結端部と金属製被覆筒とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項8】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、前記鋼管と紙管との連結端部同士をこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項9】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、該円筒形部材の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項10】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、該金属製被覆筒の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項11】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、該雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項12】
前記紙管を生分解性樹脂管に置換したことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項1】
削孔ビットが装着された内管ロッドと、この内管ロッドを内部に収容する管体とを用い、トンネル断面の掘削に先立って前記削孔ビットで掘削した切羽前方の削孔内に前記管体を順次継ぎ足しながら挿入した後に、前記削孔ビットの一部と前記内管ロッドとを抜き出して、前記管体の内外周に固化剤を注入固化させ、しかる後に、前記トンネル断面に対して前記管体の突出部分となる余剰部を切除して撤去するに際して、前記管体の最後部に継ぎ足して前記余剰部を形成する端末管にのみに紙管を用い、該端末管より前方の管体には鋼管を用いることを特徴とする地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項2】
前記紙管が防水又は撥水処理を施されていることを特徴とする請求項1に記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項3】
前記固化剤の注入は、前記管体内に固化剤注入管を挿通して行い、該固化剤注入管を該管体内に挿入する際に、前記固化剤注入管に付帯させて前記余剰部側への固化剤の進入を阻むためのパッカーを前記余剰部の前方に注入形成するパッカー形成手段を設けるとともに、該パッカー形成部位の管体部に、該管体部外側の前記掘孔内へのパッカーの進入を可能とするための開口部を設け、前記固化剤の注入に先立って、前記パッカー形成手段によりパッカーを注入形成して、前記管体の内外に前記余剰部側への固化剤の流出を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項4】
前記掘孔の入口において、前記紙管の外面と掘孔との間に充填材を充填して前記紙管外に前記余剰部側への固化剤の供給を塞き止める防壁を形成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項5】
前記鋼管と紙管との連結に、これらの連結端部に嵌合する金属又は樹脂製の管継手を用い、該管継手と前記鋼管とをねじにより、前記管継手と前記紙管とを接着剤により連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項6】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、前記鋼管の連結端部と前記円筒形部材とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項7】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、前記鋼管の連結端部と金属製被覆筒とをこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項8】
前記鋼管の連結端部外周面に雄ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、前記鋼管と紙管との連結端部同士をこれらに螺合する金属又は樹脂製の管継手で連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項9】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部先端に外周面に雄ねじが形成された金属製の円筒形部材を止着し、該円筒形部材の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項10】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に、雄ねじが形成された金属製被覆筒を止着し、該金属製被覆筒の雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項11】
前記鋼管の連結端部内周面に雌ねじを形成するとともに、前記紙管の連結端部外周に樹脂を含浸固化させて雄ねじを形成し、該雄ねじを該鋼管の雌ねじに螺合させて連結するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【請求項12】
前記紙管を生分解性樹脂管に置換したことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の地山補強工用管体の余剰部撤去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−97272(P2006−97272A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282609(P2004−282609)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594078607)株式会社ティーエムシー (4)
【出願人】(000158910)株式会社亀山 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594078607)株式会社ティーエムシー (4)
【出願人】(000158910)株式会社亀山 (5)
【Fターム(参考)】
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