地山補強用パイプの連結構造
【課題】十分な強度をもって、容易かつ迅速にパイプを連結することができる地山補強用パイプの連結構造を提供する。
【解決手段】2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成され、パイプ1の端部1aには、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒している。
【解決手段】2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成され、パイプ1の端部1aには、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの断面の掘削に先立って、地山補強用の先受け工として切羽の上方に打設する際に使用される補強用パイプを順次連結する際の地山補強用パイプの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの掘削に先立って打設されるパイプ(鋼管や有孔管等)を延設する際に、パイプの端面を突き合わせ溶接にてー体状に連結していた。
また、特許文献1記載のようにパイプの端部に雄ネジ部を形成し、雌ネジ部を有する継手部材で連結する連結構造があった。
【特許文献1】特開2006−97272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、溶接にて連結する作業は、溶接に必要な電力の確保や、溶接機の設置、2本の長く重いパイプを突き合わせる等の段取り作業に、多大な時間と労力を必要する問題があった。また、溶接作業者の技術によって溶接強度等にばらつきが発生する問題があった。さらに、火災の虞れもあった。
また、ネジ継手による連結構造(例えば、上記特許文献1参照)は、パイプ端部にネジ部を形成するため、肉厚が薄くなり、強度に不安があった。また、パイプに螺着する際に、長いパイプや継手を何度も回転させる必要があった。
【0004】
そこで、本発明は、十分な強度をもって、容易かつ迅速にパイプを連結することができる地山補強用パイプの連結構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る地山補強用パイプの連結構造は、2本の円管状の地山補強用パイプの端部を、円筒状のジョイントにて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイントは、上記2本のパイプの端部に各々挿入される挿入部を両端側に有し、該挿入部の外周面に突起部が形成され、上記パイプの上記端部には、端面から上記突起部が差込まれるL字状スリットが切欠形成され、上記L字状スリットは、端面に開口する長手方向の差込部と、該差込部の内端に連設された周方向の係合部を備え、上記係合部は、連結状態で上記突起部が圧接する勾配内側縁を具備し、上記勾配内側縁は、円周方向より所定角度だけ上記パイプの中間部方向へ傾倒しているものである。
【0006】
また、本発明に係る地山補強用パイプの連結構造は、2本の円管状の地山補強用パイプの端部を、円筒状のジョイントにて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイントは、上記2本のパイプの端部に各々挿入される挿入部を両端側に有し、該挿入部の外周面に突起部が形成されると共に中間部に外鍔部が形成され、上記パイプの上記端部に、端面から上記突起部が差込まれるL字状スリットが切欠形成され、上記L字状スリットは、端面に開口する長手方向の差込部と、該差込部の内端に連設された周方向の係合部を備え、上記係合部は、連結状態で上記突起部が圧接する勾配内側縁を具備し、上記勾配内側縁は、円周方向より所定角度だけ上記パイプの中間部方向へ傾倒しているものである。
【0007】
また、上記ジョイントの上記外鍔部に、上記突起部が上記係合部から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構を設けているものである。
【0008】
また、円筒状の上記ジョイントの内周端縁に外方拡径状のテーパー面が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地山補強用パイプの連結構造によれば、2本(一対)のパイプをジョイントを介して容易に連結することができ、パイプ同士を溶接する必要がなくなる。つまり、溶接に必要な電力や設備を用意する必要はなく、パイプの連結作業を簡素化して作業時間を大幅に短縮することができる。また、溶接による火災の虞れもなくなる。また、端部の外周面にネジ部を形成しないので、パイプ及びジョイントの肉厚を十分に確保でき、又は、ねじ切り継手に比べて、パイプ肉厚を十分に薄くできる。パイプやジョイントを何度も回転させずに迅速に連結できる。さらに、削孔時や、注入材と地山との定着に支障を生じない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明の使用状況を示す実施の一形態の断面側面説明図である。
図1は、トンネル6を掘削していく際に、切羽から切羽前方までの地山7を補強(改良)するため注入材を矢印Z方向に注入している状態である。地山7に向かって掘削孔9を斜め上方に掘削すると共に、掘削孔9内に円管状の地山補強用パイプ(注入用有孔管)1を挿入する。
パイプ1は、定尺の鋼管等であって、ジョイント3によって、順次継ぎ足され(順次連結され)、長さを延長して、地山7に打ち込まれるものである。また、内部に、注入用パッカー8を設置している。
パッカー8と掘削孔9の孔底9aとの間に注入材を注入することで、地山7を改良(補強)している。つまり、図1は、いわゆる注入材の浸透注入工法の一例を示している。
なお、本発明は、図1に示したようなトンネル掘削時の切羽から切羽前方までの地山を改良する工法に限られず、図示省略するが、地山を改良(補強)する工事にも広く適用可能なものである。また、図1のように斜め上方向に限らず、水平方向や垂直(上下)方向として地山7へ打ち込むことも自由である。
【0011】
図2〜図7に於て、本発明の第1の実施の形態を示す。
本発明の地山補強用パイプの連結構造の第1の実施の形態は、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造である。
【0012】
図2は、ジョイント3の側面図であり、図3はその正面図である。
ジョイント3は、短円筒形状であって、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有している。各々の挿入部3aの外周面には、円柱状の突起部30が1つずつ設けられている。合計で2つの突起部30,30は、図3に示すように軸心方向から見て、円周方向に180°の間隔で設けられている。また、ジョイント3の軸心からの突起部30の頭頂部までの半径方向の寸法は、パイプ1の半径の寸法よりも小さく形成されている。つまり、後述する連結状態で、パイプ1の外周面から突起部30は突出しないように形成されている。また、ジョイント3の外径は、中間部から口部(両端部)にいくにつれ縮径テーパー状とするも望ましい。
【0013】
また、円筒形のジョイント3は、両端の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されている。テーパー面3cは、パイプ1の内部に注入される(内部を流れる)注入材をジョイント3の内部に導くものである。つまり、テーパー面3cは誘導面である。
【0014】
パイプ1は、図4に於て、一端から長手方向に所定の範囲にわたり、貫孔19が貫設されている。この所定の範囲を越すと他端にまで逆止弁付き孔18が配設される。この逆止弁付き孔18は、地山補強用パイプ1の内部から所定の圧力以上の圧力が作用すると開放し、かつ、地山側からの圧力(外圧)に対しては、閉鎖するように弁体が付設されている。
【0015】
また、図5に示すパイプ1の端部1aの要部斜視図、及び、図6に示す端部1aの展開図に於て、パイプ1は、端面1bからL字状スリット60が切欠形成されている。L字状スリット60は、ジョイント3の突起部30が差し込まれるものである。L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向に長い細長状の差込部61を有している(備えている)。そして、差込部61の内端61a(端面1bに開口している側を外端とした際に、その反対側の端部)にパイプ1が地山7に打ち込みされる(又は嵌入される)際に回転する回転方向Nとは反対方向の周方向に連設される係合部62を有している(備えている)。
【0016】
係合部62は、自らが形成されている端部1aの端面1b側に近い側縁を、周方向に形成されるにつれて、円周方向よりも所定の角度θだけ(軸心に直交する平面に対して平行な周方向よりも所定の角度θだけ)パイプ1の中間部方向(自らが形成されている端部1aとは反対側の端部1aの方向)へ、傾倒している勾配内側縁62aを有している(具備している)。言い換えると、係合部62は、自らが切欠形成されている端面1b側に近い側面が、その端面1bに対して所定の角度θだけ傾斜した傾斜面を有している。さらに、言い換えると、軸心に直交する平面に対して所定の角度θだけ傾斜した勾配内側縁62aを有している。
【0017】
また、係合部62の勾配内側縁62aは、図7に示すように、2本のパイプ1,1の各々の係合部62に、ジョイント3の突起部30,30を係合させた連結状態で、ジョイント3の突起部30が圧接する箇所である。即ち、勾配内側縁62aは、ジョイント3の突起部30を係合部62へ差し込むと、2本のパイプ1,1の向かい合う端面1b,1bを相互に引き寄せるようにガイドし、お互いの端面1b,1b同士を当接させるものである。また、勾配内側縁62aは、突起部30を(自らが形成されている側の)端面1bから遠ざかるように誘導するものである。また、勾配内側縁62aは、突起部30が沿うようにジョイント3を回転させると、パイプ1の内部にジョイント3を軸心方向に突入させるものである。
【0018】
また、勾配内側縁62aは、所定の角度θを1°〜20°の範囲内として形成するのが望ましい。特に2°で形成するのが好ましい。
所定の角度θが、20°より大きければ、差込が困難となる。
所定の角度θが、1°より小さければ、差込は容易となるが、突起部30が係合部62の勾配内側縁62aに圧接する力が弱くなる。つまり、係合力が弱く回転方向Nとは反対方向に回転した際に外れやすくなる。
【0019】
なお、係合部62の勾配内側縁62aに対面状となる内側縁(自らが形成されている端部1aの端面1b側から遠い側面)は、勾配内側縁62aに平行でも良い。また、端面1bに対して平行でも良い。
【0020】
上述した本発明の地山補強用パイプの連結構造の第1の実施の形態の使用方法(作用)について説明する。
連結すべき2本のパイプ1,1を各々の端面1b,1bが対面状となるように配設し、各々のL字状スリット60の差込部61にジョイント3の突起部30を各々差込む。すると、ジョイント3の挿入部3aの大部分がパイプ1内に挿入される。ジョイント3は、パイプ1の軸心に同一軸心状に内装される。また、突起部30は、パイプ1の外周面から突出しない。なお、外周面を両端方向に縮径テーパー状に形成すればパイプ1内によりスムーズに挿入される。
【0021】
そして、突起部30が係合部62に差し込まれるようにパイプ1を回転させる。パイプ1の勾配内側縁62aが突起部30が沿う(ガイドされる)ことで、各々のパイプ1,1は、ジョイント3の中間部の方向(つまり、連結する相手側のパイプ1の方向)へ移動する。2本のパイプ1,1の端面1b,1bが面接触すると共に、突起部30は、勾配内側縁62aに圧接する。2本のパイプ1,1は、ジョイント3を介して連結される。
【0022】
つまり、連結状態に於て、2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、面接触する。2本のパイプ1,1同士が、お互いに押圧する力を受ける。各々の端面1b,1bが面接触することで、連結部(面接触部)で(軸心が折れ曲がるような)屈曲変形するのを防止する。打ち込み時(又は掘削時)に、軸心方向(打ち込み又は掘削方向)への力を確実に伝達する。
【0023】
また、突起部30が勾配内側縁62aに係止するだけでなく圧接して係合することで、パイプ1に大きな回転力を加えることが可能になる。打ち込みや掘削の際に伝達される回転力を突起部30と係合部62との接触部で確実に受ける。また、ジョイント3は、パイプ1に内装状態になり、突起部30もパイプ1の外周面から突出しないので、地中(地山7)への打ち込みの際に、ジョイント3による摩擦抵抗は発生しない。
【0024】
また、連結されたパイプ1,1には、図1に示すように、掘削後、注入材が注入される。パイプ1,1の内部には、ジョイント3が内装された状態となっているが、ジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cを形成しているので、注入材は、ジョイント部材3が内装されていても、連結された一方のパイプ1から他方のパイプ1へスムーズに流れる(注入される)。
【0025】
次に、図面に基づき本発明の第2の実施の形態について詳説する。
図8は、第2の実施の形態を示す側面図である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造である。
【0026】
第2の実施の形態に用いられるジョイント3は、第1の実施の形態と同様に、短円筒形状であって、パイプ1に挿入される挿入部3aを両端側に有している。各々の挿入部3a,3aには、円柱状の突起部30が1つずつ設けられている。合計で2つの突起部30,30は、軸心方向から見て、円周方向に180°の間隔で設けられている。また、両端の内周短縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されている。また、外周面を、中間部から両端方向へ縮径テーパー状に形成するのも望ましい。
【0027】
そして、第2の実施の形態で使用するジョイント部材3は、中間部に外鍔部31を有している。外鍔部31の外径寸法は、パイプ1の外径寸法以下に形成されている。
【0028】
第2の実施の形態に用いられるパイプ1は、第1の実施の形態と同様に、端面1bからジョイント3の突起部30が差し込まれるL字状スリット60が切欠形成されている。L字状スリット60は、差込部61と、差込部61の内端61aに周方向に連設された係合部62を有している。また、(図4参照)貫孔19と逆止弁付き孔18とが設けられている。
【0029】
係合部62は、第1の実施の形態と同様に、自らが形成されている端部1aの端面1b側に近い側縁を、周方向に形成されるにつれて、円周方向よりも所定の角度θ(1°〜20°)だけ自らが形成されている端部1aとは反対側の端部1aの方向へ、傾倒している勾配内側縁62aを有している。
【0030】
また、係合部62の勾配内側縁62aは、図8に示すように、2本のパイプ1,1の各々の係合部62に、ジョイント3の突起部30,30が係合した連結状態で、ジョイント3の突起部30が圧接する箇所である。また、勾配内側縁62aは、ジョイント3の突起部30を係合部62へ差し込むと、2本のパイプ1,1の向かい合う端面1b,1bを相互に引き寄せ、外鍔部31の両側面31b,31bに接触するようにガイドするものである。なお、係合部62の勾配内端縁62aに対面状となる内端縁は、勾配内側縁62aに平行でも良い。また、端面1bに対して平行でも良い。
【0031】
また、ジョイント部材3の外鍔部31には、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)する抜け止め機構35を設けている。
【0032】
図9に、抜け止め機構35の実施の一例を示す。
実施の一例の抜け止め機構35は、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに、連結状態で接触しているパイプ1のL字状スリット60の差込部61に開口状となる孔部31dを有し、孔部31dに、差込部61方向に常時弾発付勢する弾発部材52に取着された係止片51を具備している。つまり、連結状態で、外鍔部31の側面31bから、差込部61に突入する係止片51を設けている。
即ち、実施の一例の抜け止め機構35は、差込部61に開口状となる外鍔部31の側面31bに形成された孔部31dと、孔部31dに内装され差込部61方向に常時弾発付勢する弾発部材52に取着された係止片51と、から成るものである。また、抜け止め機構35は、図8に破線で示した他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0033】
また、図10及び図11に、抜け止め機構35の別の実施の一例を示す。
別の実施の一例の抜け止め機構35は、図10に示す要部側面図に於て、ジョイント3の外鍔部31の側面31bの近傍に、ラジアル外方向に開口状となる差込孔部53を形成しているものである。差込孔部53は、連結状態で、パイプ1のL字状スリット60の差込部61の近傍に形成されるものである。また、円周方向に長い細長状である。
そして、図11に示す作用説明要部側面図に於て、連結状態で、差込孔部53は、平板状の工具(マイナスドライバー等)を差し込んで工具を操作することで、差込部61方向に、側面31bの一部を膨出させることが可能なものである。つまり、連結状態で、差込孔部53近傍の側面31bを塑性変形させ、差込部61に突入する膨出係止部31eを形成して、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)するものである。
即ち、別の実施の一例の抜け止め機構35は、連結状態で、外鍔部31の側面31bの一部を塑性変形させ、差込部61に突入して係合する膨出係止部31eを形成可能な差込孔部53から成るものである。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0034】
また、図12〜図15に、抜け止め機構35のさらに別の実施の一例を示す。
さらに別の実施の一例の抜け止め機構35は、図12に示す要部側面図、及び、図13に示す要部断面図に於て、連結状態で、L字状スリット60の差込部61の近傍の外鍔部31に、長手方向に開口し差込部61と連通可能な凹溝部31fを形成している。そして、凹溝部31fには、コの字状の係止部材54が取着(固着)されている。また、係止部材54は、外鍔部31よりもラジアル外方向に突出しない大きさが望ましい。
そして、図14に示す作用説明要部側面図、及び、図15に示す作用説明要部断面図に於て、連結状態で、コの字状の係止部材54は、差込部61近傍にあるコの字を形成する一片54aを、差込部61に突入させるように傾倒可能なものである。つまり、一片54aは、塑性変形し、差込部61の円周方向の側面と接触することで、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)するものである。
即ち、さらに別の実施の一例の抜け止め機構35は、連結状態で、外鍔部31に形成され差込部61と連通する凹溝部31fと、凹溝部31fに内装されるコの字状の係止部材54と、から成る。また、図示省略するが、連結すべき2本のパイプ1,1各々の差込部61,61に係止可能に2箇所に設けられている。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0035】
また、図20〜図23に、抜け止め機構35の他の実施の一例を示す。
図20に於て、他の実施の一例の抜け止め機構35は、ジョイント3の外鍔部31の側面31b(の基端隅部)に、連結状態で接触しているパイプ1のL字状スリット60の差込部61に突入状となる係止突部55を設けたものである。ここで、L字状スリット60の開口端に於ける回転方向Nの先行する側の角部を先行角部60dとする。
係止突部55は、図21(a)や図21(b)又は図21(c)に示すように、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに直交すると共に、係合部62から突起部30が抜ける方向への回転を規制する当接面55aを有している。また、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに傾斜状になだらかに接すると共に、パイプ1が接近すると先行角部60dをジョイント3のラジアル外方向に押し広げるように誘導して弾性変形させる誘導勾配面55bを有している。
つまり、パイプ1を回転させながら係合部62にジョイント3の突起部30を差し込んで接続する際に、図20のA−A断面から見る図22に示す作用説明要部断面図のように、パイプ1の端面1bはジョイント3の外鍔部31の側面31bに接近する。先行角部60dは、係止突部55の誘導勾配面55bに摺動し(ガイドされて)ラジアル外方へ広がるように弾性変形する。その後、図23に示す作用説明要部断面図のように、パイプ1が回転することで先行角部60dが係止突部55を乗り越える。パイプ1が弾性変形状態から弾性変形前の状態に戻る。係止突部55は、ジョイント3と接続したパイプ1の差込部61内に配置される。パイプ1の端面1bがジョイント3の外鍔部31の側面31bに当接する。接続後に、係止突部55の当接面55aは、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する。傾斜状でない当接面55aによって係止突部55は戻り止めの役目をする。
即ち、図20〜図23に示した抜け止め機構35は、外鍔部31の基端隅部に形成され、パイプ1とジョイント3を接続する際に先行角部60dを押し広げるように外方へ誘導し弾性変形させる誘導勾配面55bと、接続後に突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する当接面55aと、を有する係止突部55から成るものである。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0036】
上述した本発明の第2の実施の形態の地山補強用パイプの連結構造の使用方法(作用)について説明する。
連結すベき2本のパイプ1,1を各々の端面1b,1bが対面状となるように配設し、各々のL字状スリット60の差込部61にジョイント3の突起部30を各々差込む。すると、ジョイント3の挿入部3aの大部分がパイプ1内に挿入される。また、突起部30は、パイプ1の外周面から突出しない。また、外鍔部31は、パイプ1の外周面から突出しない。なお、ジョイント3の外周面を縮径テーパー状に形成した際は、よりスムーズにパイプ1内に挿入される。
【0037】
そして、突起部30が係合部62に差し込まれるようにパイプ1を回転させる。勾配内側縁62aが突起部30に沿うことで、パイプ1は、ジョイント3の外鍔部31の方向へ移動する。パイプ1の端面1bが外鍔部31の側面31bに面接触すると共に、突起部30は、勾配内側縁62aに圧接する。2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、各々ジョイント3の外鍔部31の両側面31b,31bに当接する。2本のパイプ1,1は、ジョイント3を介して連結される。
【0038】
また、ジョイント3は、外鍔部31を有しているので、パイプ1の端面1bが、外鍔部31の側面31bに当接され、1本のパイプ1にジョイント3が接続した状態を保持する。つまり、1本のパイプ1にジョイント3の一方端を回転させながら接続し、その後、ジョイント3の他方端を別のパイプ1を回転させて連結させても良い。
【0039】
図8に示す連結状態に於て、2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、外鍔部31の両側面31b,31bに各々面接触し、パイプ1は、外鍔部31から反力(押圧力)を受ける。端面1bが外鍔部31に面接触することで、連結部で屈曲変形するのを防止する。打ち込み時に、軸心方向(打ち込み又は掘削方向)への力を確実に伝達する。
【0040】
また、突起部30が勾配内側縁62aに係止するだけでなく圧接して係合することで、パイプ1に大きな回転力を加えることが可能になる。掘削や打ち込みの際に伝達される回転力を突起部30と係合部62との接触部で確実に受ける。また、ジョイント3の突起部30及び外鍔部は、パイプ1の外周面から突出しないので、地中(図1に示す地山7)への嵌入の際に、ジョイント3による抵抗は発生しない。
【0041】
また、連結されたパイプ1,1には、図1に示すように、掘削後、注入材が注入される。パイプ1,1の内部には、ジョイント3が内装状となっているが、ジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cを形成しているので、注入材は、連結された一方のパイプ1から他方のパイプ1へ導かれるようにスムーズに流れる(注入される)。
【0042】
また、パイプ1を回転方向Nとは逆回転(突起部30が係合部62から抜ける方向へ回転)しても、上述した抜け止め機構35によって、逆回転は阻止(規制)される。2本のパイプ1,1の連結は外れることなく逆回転する。
【0043】
次に、上述した実施の形態以外に、第3の実施の形態として、図16に示す側面図のように、突起部30を、ジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に180°間隔で2箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計4つの突起部30を設けても良い。この際、パイプ1は、図17に示す展開図のように、端部1aに各々の突起部30が差し込まれる上述した(勾配内側縁62aを具備する係合部62と差込部61とを備えた)L字状スリット60を円周方向に180°間隔で形成する。
【0044】
また、他の実施の形態としては、図18に示す正面図のように、突起部30をジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に120°間隔で3箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計6つの突起部30を設けている。この際、パイプ1は、図示省略するが、各々の突起部30が差し込まれる上述したL字状スリット60を円周方向に120°間隔で3箇所形成する。
【0045】
また、別の実施の形態としては、図19に示す正面図のように、突起部30をジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に90°間隔で4箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計8つの突起部30を設けている。この際、パイプ1は、図示省略するが、パイプ1の端部1aは、各々の突起部30が差し込まれる上述したL字状スリット60を円周方向に90°間隔で4箇所形成する。
【0046】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、ジョイント3の一方の挿入部3aと他方の挿入部3aで、突起部30の円周方向の配設位置を異なる位置に配設しても良い。また、突起部30の数は自由である。また、地山補強用のパイプ1としては、注入用有孔管以外に、他の工法に用いられるパイプ(鋼管等)、あるいは、孔なしのパイプ(又は鋼管)とすることも可能である。また、パイプ1に複数の差込部61を設けた場合は、抜け止め機構35を、各々に係止可能に複数設けても良い。つまり、L字状スリット60が複数形成されている際は、各々に係止可能に複数設けても良い。
【0047】
ところで、地山補強用パイプ1の端部1aに図5及び図6に示したようなL字状スリット60を加工するには、未加工パイプ材(有孔管等)の内部に受け金具を挿入し、油圧等のアクチュエータで直線作動する雄金型(又はポンチ等)で外周側から軸心直交方向に、押圧して、プレス加工やポンチ加工(塑性加工)等の打ち抜き形成するのが望ましい。
【0048】
以上のように本発明は、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成され、パイプ1の端部1aには、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒しているので、従来のように、パイプ1,1同士を溶接する必要がなくなる。このことによりパイプ1の連結作業を簡素化できる。つまり、作業時間を大幅に短縮できる。また、溶接に必要な電力や溶接機等の設備を準備する必要がなく、さらに、火災の虞れもない。また、パイプ1とジョイント3を螺合のように何回転もさせることなく迅速に連結できる。2本のパイプ1,1の各々の端面1b,1bを、当接させて段差部を形成せずに連結できる。突起部30を係合部62に圧接させて連結できる。つまり、突起部30と係合部62との摩擦力を高めて容易に外れないように連結できる。パイプ1及びジョイント3の肉厚が薄くなるような加工(ネジ加工)を必要とせず、十分な強度のパイプ1及びジョイント3で連結できる。また、従来のように、ネジ加工の為に強度が必要以上に高い肉厚の厚いパイプを必要とせず、適切な強度かつ肉厚の軽量なパイプ1やジョイント3で容易に連結できる。ジョイント3をパイプ1内に挿入するので、連結部がパイプ1の外径より大きくならない。つまり、掘削や打ち込み又は嵌入作業の際の回転方向や軸心方向の運動や移動をジョイント3が妨げず、スムーズに施工できる。
【0049】
また、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成されると共に中間部に外鍔部31が形成され、パイプ1の端部1aに、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒しているので、従来のように、パイプ1,1同士を溶接する必要がなくなる。このことによりパイプ1の連結作業を簡素化できる。つまり、作業時間を大幅に短縮できる。また、溶接に必要な電力や溶接機等の設備を準備する必要がなく、さらに、火災の虞れもない。また、パイプ1とジョイント3を螺合のように何回転もさせることなく迅速に連結できる。2本のパイプ1,1の各々の端面1b,1bを、外鍔部31に当接させて引っ掛かるような段差部を形成せずに連結できる。突起部30を係合部62に圧接させて連結できる。つまり、突起部30と係合部62との摩擦力を高めて容易に外れないように連結できる。また、従来のように、ネジ加工や溶接の為に強度が必要以上に高い肉厚の厚いパイプを必要とせず、適切な強度かつ薄い肉厚の軽量なパイプ1やジョイント3で容易に連結できる。例えば、ネジによる連結構造のパイプは、端部にネジ加工する必要があるため、強度的には肉厚は4mmで十分であったが、ネジ部での薄肉化による強度の低下を考慮して肉厚が6mmのパイプを用いていた。しかし、本発明は、パイプ1にネジ部を形成しないので、肉厚を4mmにすることができる。よって、強度が十分でありながら重量を30%以上軽量化でき、大幅なコストの削減ができる。また、ジョイント3をパイプ1内に挿入するので、連結部がパイプ1の外径より大きくならない。つまり、掘削や打ち込み又は嵌入作業の際の回転方向や軸心方向の運動や移動をジョイント3が妨げず、スムーズに施工できる。
【0050】
また、ジョイント3の外鍔部31に、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構35を設けているので、パイプ1が係合部62から抜ける方向の回転(逆回転)しても、ジョイント3がパイプ1から外れることなく作業できる。つまり、2本のパイプ1,1の連結が外れることなく確実に作業できる。パイプ1を逆回転(掘削や打ち込みの際の回転方向Nとは逆方向へ回転)できる。
【0051】
また、円筒状のジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されているので、注入材がジョイント3によって塞き止められることなくスムーズに注入できる。ジョイント3の肉厚を厚くしても、注入の流れに影響するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】使用状況を示す実施の一形態の断面側面図である。
【図2】第1の実施の形態に用いるジョイントの側面図である。
【図3】第1の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図4】第1の実施の形態に用いるパイプの要部斜視図である。
【図5】第1の実施の形態に用いるパイプの要部斜視図である。
【図6】第1の実施の形態に用いるパイプの要部展開図である。
【図7】第1の実施の形態の側面図である。
【図8】第2の実施の形態の側面図である。
【図9】抜け止め機構の実施の一例を示す要部側面図である。
【図10】抜け止め機構の別の実施の一例を示す要部側面図である。
【図11】抜け止め機構の別の実施の一例の作用を説明する要部側面図である。
【図12】抜け止め機構のさらに別の一例を示す要部側面図である。
【図13】抜け止め機構のさらに別の一例を示す要部断面図である。
【図14】抜け止め機構のさらに別の一例の作用を説明する要部側面図である。
【図15】抜け止め機構のさらに別の一例の作用を説明する要部断面図である。
【図16】第3の実施の形態に用いるジョイントの側面図である。
【図17】第3の実施の形態に用いるパイプの要部展開図である。
【図18】他の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図19】別の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図20】抜け止め機構の他の実施の一例を示す要部側面図である。
【図21】抜け止め機構の他の実施の一例を示す要部斜視図である。
【図22】抜け止め機構の他の実施の一例の作用を説明する要部断面図である。
【図23】抜け止め機構の他の実施の一例の作用を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 パイプ
1a 端部
1b 端面
3 ジョイント
3a 挿入部
3b 内周端縁
3c テーパー面
30 突起部
31 外鍔部
35 抜け止め機構
60 L字状スリット
61 差込部
61a 内端
62 係合部
62a 勾配内側縁
θ 所定角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの断面の掘削に先立って、地山補強用の先受け工として切羽の上方に打設する際に使用される補強用パイプを順次連結する際の地山補強用パイプの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの掘削に先立って打設されるパイプ(鋼管や有孔管等)を延設する際に、パイプの端面を突き合わせ溶接にてー体状に連結していた。
また、特許文献1記載のようにパイプの端部に雄ネジ部を形成し、雌ネジ部を有する継手部材で連結する連結構造があった。
【特許文献1】特開2006−97272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、溶接にて連結する作業は、溶接に必要な電力の確保や、溶接機の設置、2本の長く重いパイプを突き合わせる等の段取り作業に、多大な時間と労力を必要する問題があった。また、溶接作業者の技術によって溶接強度等にばらつきが発生する問題があった。さらに、火災の虞れもあった。
また、ネジ継手による連結構造(例えば、上記特許文献1参照)は、パイプ端部にネジ部を形成するため、肉厚が薄くなり、強度に不安があった。また、パイプに螺着する際に、長いパイプや継手を何度も回転させる必要があった。
【0004】
そこで、本発明は、十分な強度をもって、容易かつ迅速にパイプを連結することができる地山補強用パイプの連結構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る地山補強用パイプの連結構造は、2本の円管状の地山補強用パイプの端部を、円筒状のジョイントにて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイントは、上記2本のパイプの端部に各々挿入される挿入部を両端側に有し、該挿入部の外周面に突起部が形成され、上記パイプの上記端部には、端面から上記突起部が差込まれるL字状スリットが切欠形成され、上記L字状スリットは、端面に開口する長手方向の差込部と、該差込部の内端に連設された周方向の係合部を備え、上記係合部は、連結状態で上記突起部が圧接する勾配内側縁を具備し、上記勾配内側縁は、円周方向より所定角度だけ上記パイプの中間部方向へ傾倒しているものである。
【0006】
また、本発明に係る地山補強用パイプの連結構造は、2本の円管状の地山補強用パイプの端部を、円筒状のジョイントにて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイントは、上記2本のパイプの端部に各々挿入される挿入部を両端側に有し、該挿入部の外周面に突起部が形成されると共に中間部に外鍔部が形成され、上記パイプの上記端部に、端面から上記突起部が差込まれるL字状スリットが切欠形成され、上記L字状スリットは、端面に開口する長手方向の差込部と、該差込部の内端に連設された周方向の係合部を備え、上記係合部は、連結状態で上記突起部が圧接する勾配内側縁を具備し、上記勾配内側縁は、円周方向より所定角度だけ上記パイプの中間部方向へ傾倒しているものである。
【0007】
また、上記ジョイントの上記外鍔部に、上記突起部が上記係合部から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構を設けているものである。
【0008】
また、円筒状の上記ジョイントの内周端縁に外方拡径状のテーパー面が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地山補強用パイプの連結構造によれば、2本(一対)のパイプをジョイントを介して容易に連結することができ、パイプ同士を溶接する必要がなくなる。つまり、溶接に必要な電力や設備を用意する必要はなく、パイプの連結作業を簡素化して作業時間を大幅に短縮することができる。また、溶接による火災の虞れもなくなる。また、端部の外周面にネジ部を形成しないので、パイプ及びジョイントの肉厚を十分に確保でき、又は、ねじ切り継手に比べて、パイプ肉厚を十分に薄くできる。パイプやジョイントを何度も回転させずに迅速に連結できる。さらに、削孔時や、注入材と地山との定着に支障を生じない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明の使用状況を示す実施の一形態の断面側面説明図である。
図1は、トンネル6を掘削していく際に、切羽から切羽前方までの地山7を補強(改良)するため注入材を矢印Z方向に注入している状態である。地山7に向かって掘削孔9を斜め上方に掘削すると共に、掘削孔9内に円管状の地山補強用パイプ(注入用有孔管)1を挿入する。
パイプ1は、定尺の鋼管等であって、ジョイント3によって、順次継ぎ足され(順次連結され)、長さを延長して、地山7に打ち込まれるものである。また、内部に、注入用パッカー8を設置している。
パッカー8と掘削孔9の孔底9aとの間に注入材を注入することで、地山7を改良(補強)している。つまり、図1は、いわゆる注入材の浸透注入工法の一例を示している。
なお、本発明は、図1に示したようなトンネル掘削時の切羽から切羽前方までの地山を改良する工法に限られず、図示省略するが、地山を改良(補強)する工事にも広く適用可能なものである。また、図1のように斜め上方向に限らず、水平方向や垂直(上下)方向として地山7へ打ち込むことも自由である。
【0011】
図2〜図7に於て、本発明の第1の実施の形態を示す。
本発明の地山補強用パイプの連結構造の第1の実施の形態は、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造である。
【0012】
図2は、ジョイント3の側面図であり、図3はその正面図である。
ジョイント3は、短円筒形状であって、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有している。各々の挿入部3aの外周面には、円柱状の突起部30が1つずつ設けられている。合計で2つの突起部30,30は、図3に示すように軸心方向から見て、円周方向に180°の間隔で設けられている。また、ジョイント3の軸心からの突起部30の頭頂部までの半径方向の寸法は、パイプ1の半径の寸法よりも小さく形成されている。つまり、後述する連結状態で、パイプ1の外周面から突起部30は突出しないように形成されている。また、ジョイント3の外径は、中間部から口部(両端部)にいくにつれ縮径テーパー状とするも望ましい。
【0013】
また、円筒形のジョイント3は、両端の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されている。テーパー面3cは、パイプ1の内部に注入される(内部を流れる)注入材をジョイント3の内部に導くものである。つまり、テーパー面3cは誘導面である。
【0014】
パイプ1は、図4に於て、一端から長手方向に所定の範囲にわたり、貫孔19が貫設されている。この所定の範囲を越すと他端にまで逆止弁付き孔18が配設される。この逆止弁付き孔18は、地山補強用パイプ1の内部から所定の圧力以上の圧力が作用すると開放し、かつ、地山側からの圧力(外圧)に対しては、閉鎖するように弁体が付設されている。
【0015】
また、図5に示すパイプ1の端部1aの要部斜視図、及び、図6に示す端部1aの展開図に於て、パイプ1は、端面1bからL字状スリット60が切欠形成されている。L字状スリット60は、ジョイント3の突起部30が差し込まれるものである。L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向に長い細長状の差込部61を有している(備えている)。そして、差込部61の内端61a(端面1bに開口している側を外端とした際に、その反対側の端部)にパイプ1が地山7に打ち込みされる(又は嵌入される)際に回転する回転方向Nとは反対方向の周方向に連設される係合部62を有している(備えている)。
【0016】
係合部62は、自らが形成されている端部1aの端面1b側に近い側縁を、周方向に形成されるにつれて、円周方向よりも所定の角度θだけ(軸心に直交する平面に対して平行な周方向よりも所定の角度θだけ)パイプ1の中間部方向(自らが形成されている端部1aとは反対側の端部1aの方向)へ、傾倒している勾配内側縁62aを有している(具備している)。言い換えると、係合部62は、自らが切欠形成されている端面1b側に近い側面が、その端面1bに対して所定の角度θだけ傾斜した傾斜面を有している。さらに、言い換えると、軸心に直交する平面に対して所定の角度θだけ傾斜した勾配内側縁62aを有している。
【0017】
また、係合部62の勾配内側縁62aは、図7に示すように、2本のパイプ1,1の各々の係合部62に、ジョイント3の突起部30,30を係合させた連結状態で、ジョイント3の突起部30が圧接する箇所である。即ち、勾配内側縁62aは、ジョイント3の突起部30を係合部62へ差し込むと、2本のパイプ1,1の向かい合う端面1b,1bを相互に引き寄せるようにガイドし、お互いの端面1b,1b同士を当接させるものである。また、勾配内側縁62aは、突起部30を(自らが形成されている側の)端面1bから遠ざかるように誘導するものである。また、勾配内側縁62aは、突起部30が沿うようにジョイント3を回転させると、パイプ1の内部にジョイント3を軸心方向に突入させるものである。
【0018】
また、勾配内側縁62aは、所定の角度θを1°〜20°の範囲内として形成するのが望ましい。特に2°で形成するのが好ましい。
所定の角度θが、20°より大きければ、差込が困難となる。
所定の角度θが、1°より小さければ、差込は容易となるが、突起部30が係合部62の勾配内側縁62aに圧接する力が弱くなる。つまり、係合力が弱く回転方向Nとは反対方向に回転した際に外れやすくなる。
【0019】
なお、係合部62の勾配内側縁62aに対面状となる内側縁(自らが形成されている端部1aの端面1b側から遠い側面)は、勾配内側縁62aに平行でも良い。また、端面1bに対して平行でも良い。
【0020】
上述した本発明の地山補強用パイプの連結構造の第1の実施の形態の使用方法(作用)について説明する。
連結すべき2本のパイプ1,1を各々の端面1b,1bが対面状となるように配設し、各々のL字状スリット60の差込部61にジョイント3の突起部30を各々差込む。すると、ジョイント3の挿入部3aの大部分がパイプ1内に挿入される。ジョイント3は、パイプ1の軸心に同一軸心状に内装される。また、突起部30は、パイプ1の外周面から突出しない。なお、外周面を両端方向に縮径テーパー状に形成すればパイプ1内によりスムーズに挿入される。
【0021】
そして、突起部30が係合部62に差し込まれるようにパイプ1を回転させる。パイプ1の勾配内側縁62aが突起部30が沿う(ガイドされる)ことで、各々のパイプ1,1は、ジョイント3の中間部の方向(つまり、連結する相手側のパイプ1の方向)へ移動する。2本のパイプ1,1の端面1b,1bが面接触すると共に、突起部30は、勾配内側縁62aに圧接する。2本のパイプ1,1は、ジョイント3を介して連結される。
【0022】
つまり、連結状態に於て、2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、面接触する。2本のパイプ1,1同士が、お互いに押圧する力を受ける。各々の端面1b,1bが面接触することで、連結部(面接触部)で(軸心が折れ曲がるような)屈曲変形するのを防止する。打ち込み時(又は掘削時)に、軸心方向(打ち込み又は掘削方向)への力を確実に伝達する。
【0023】
また、突起部30が勾配内側縁62aに係止するだけでなく圧接して係合することで、パイプ1に大きな回転力を加えることが可能になる。打ち込みや掘削の際に伝達される回転力を突起部30と係合部62との接触部で確実に受ける。また、ジョイント3は、パイプ1に内装状態になり、突起部30もパイプ1の外周面から突出しないので、地中(地山7)への打ち込みの際に、ジョイント3による摩擦抵抗は発生しない。
【0024】
また、連結されたパイプ1,1には、図1に示すように、掘削後、注入材が注入される。パイプ1,1の内部には、ジョイント3が内装された状態となっているが、ジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cを形成しているので、注入材は、ジョイント部材3が内装されていても、連結された一方のパイプ1から他方のパイプ1へスムーズに流れる(注入される)。
【0025】
次に、図面に基づき本発明の第2の実施の形態について詳説する。
図8は、第2の実施の形態を示す側面図である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造である。
【0026】
第2の実施の形態に用いられるジョイント3は、第1の実施の形態と同様に、短円筒形状であって、パイプ1に挿入される挿入部3aを両端側に有している。各々の挿入部3a,3aには、円柱状の突起部30が1つずつ設けられている。合計で2つの突起部30,30は、軸心方向から見て、円周方向に180°の間隔で設けられている。また、両端の内周短縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されている。また、外周面を、中間部から両端方向へ縮径テーパー状に形成するのも望ましい。
【0027】
そして、第2の実施の形態で使用するジョイント部材3は、中間部に外鍔部31を有している。外鍔部31の外径寸法は、パイプ1の外径寸法以下に形成されている。
【0028】
第2の実施の形態に用いられるパイプ1は、第1の実施の形態と同様に、端面1bからジョイント3の突起部30が差し込まれるL字状スリット60が切欠形成されている。L字状スリット60は、差込部61と、差込部61の内端61aに周方向に連設された係合部62を有している。また、(図4参照)貫孔19と逆止弁付き孔18とが設けられている。
【0029】
係合部62は、第1の実施の形態と同様に、自らが形成されている端部1aの端面1b側に近い側縁を、周方向に形成されるにつれて、円周方向よりも所定の角度θ(1°〜20°)だけ自らが形成されている端部1aとは反対側の端部1aの方向へ、傾倒している勾配内側縁62aを有している。
【0030】
また、係合部62の勾配内側縁62aは、図8に示すように、2本のパイプ1,1の各々の係合部62に、ジョイント3の突起部30,30が係合した連結状態で、ジョイント3の突起部30が圧接する箇所である。また、勾配内側縁62aは、ジョイント3の突起部30を係合部62へ差し込むと、2本のパイプ1,1の向かい合う端面1b,1bを相互に引き寄せ、外鍔部31の両側面31b,31bに接触するようにガイドするものである。なお、係合部62の勾配内端縁62aに対面状となる内端縁は、勾配内側縁62aに平行でも良い。また、端面1bに対して平行でも良い。
【0031】
また、ジョイント部材3の外鍔部31には、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)する抜け止め機構35を設けている。
【0032】
図9に、抜け止め機構35の実施の一例を示す。
実施の一例の抜け止め機構35は、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに、連結状態で接触しているパイプ1のL字状スリット60の差込部61に開口状となる孔部31dを有し、孔部31dに、差込部61方向に常時弾発付勢する弾発部材52に取着された係止片51を具備している。つまり、連結状態で、外鍔部31の側面31bから、差込部61に突入する係止片51を設けている。
即ち、実施の一例の抜け止め機構35は、差込部61に開口状となる外鍔部31の側面31bに形成された孔部31dと、孔部31dに内装され差込部61方向に常時弾発付勢する弾発部材52に取着された係止片51と、から成るものである。また、抜け止め機構35は、図8に破線で示した他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0033】
また、図10及び図11に、抜け止め機構35の別の実施の一例を示す。
別の実施の一例の抜け止め機構35は、図10に示す要部側面図に於て、ジョイント3の外鍔部31の側面31bの近傍に、ラジアル外方向に開口状となる差込孔部53を形成しているものである。差込孔部53は、連結状態で、パイプ1のL字状スリット60の差込部61の近傍に形成されるものである。また、円周方向に長い細長状である。
そして、図11に示す作用説明要部側面図に於て、連結状態で、差込孔部53は、平板状の工具(マイナスドライバー等)を差し込んで工具を操作することで、差込部61方向に、側面31bの一部を膨出させることが可能なものである。つまり、連結状態で、差込孔部53近傍の側面31bを塑性変形させ、差込部61に突入する膨出係止部31eを形成して、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)するものである。
即ち、別の実施の一例の抜け止め機構35は、連結状態で、外鍔部31の側面31bの一部を塑性変形させ、差込部61に突入して係合する膨出係止部31eを形成可能な差込孔部53から成るものである。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0034】
また、図12〜図15に、抜け止め機構35のさらに別の実施の一例を示す。
さらに別の実施の一例の抜け止め機構35は、図12に示す要部側面図、及び、図13に示す要部断面図に於て、連結状態で、L字状スリット60の差込部61の近傍の外鍔部31に、長手方向に開口し差込部61と連通可能な凹溝部31fを形成している。そして、凹溝部31fには、コの字状の係止部材54が取着(固着)されている。また、係止部材54は、外鍔部31よりもラジアル外方向に突出しない大きさが望ましい。
そして、図14に示す作用説明要部側面図、及び、図15に示す作用説明要部断面図に於て、連結状態で、コの字状の係止部材54は、差込部61近傍にあるコの字を形成する一片54aを、差込部61に突入させるように傾倒可能なものである。つまり、一片54aは、塑性変形し、差込部61の円周方向の側面と接触することで、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制(阻止)するものである。
即ち、さらに別の実施の一例の抜け止め機構35は、連結状態で、外鍔部31に形成され差込部61と連通する凹溝部31fと、凹溝部31fに内装されるコの字状の係止部材54と、から成る。また、図示省略するが、連結すべき2本のパイプ1,1各々の差込部61,61に係止可能に2箇所に設けられている。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0035】
また、図20〜図23に、抜け止め機構35の他の実施の一例を示す。
図20に於て、他の実施の一例の抜け止め機構35は、ジョイント3の外鍔部31の側面31b(の基端隅部)に、連結状態で接触しているパイプ1のL字状スリット60の差込部61に突入状となる係止突部55を設けたものである。ここで、L字状スリット60の開口端に於ける回転方向Nの先行する側の角部を先行角部60dとする。
係止突部55は、図21(a)や図21(b)又は図21(c)に示すように、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに直交すると共に、係合部62から突起部30が抜ける方向への回転を規制する当接面55aを有している。また、ジョイント3の外鍔部31の側面31bに傾斜状になだらかに接すると共に、パイプ1が接近すると先行角部60dをジョイント3のラジアル外方向に押し広げるように誘導して弾性変形させる誘導勾配面55bを有している。
つまり、パイプ1を回転させながら係合部62にジョイント3の突起部30を差し込んで接続する際に、図20のA−A断面から見る図22に示す作用説明要部断面図のように、パイプ1の端面1bはジョイント3の外鍔部31の側面31bに接近する。先行角部60dは、係止突部55の誘導勾配面55bに摺動し(ガイドされて)ラジアル外方へ広がるように弾性変形する。その後、図23に示す作用説明要部断面図のように、パイプ1が回転することで先行角部60dが係止突部55を乗り越える。パイプ1が弾性変形状態から弾性変形前の状態に戻る。係止突部55は、ジョイント3と接続したパイプ1の差込部61内に配置される。パイプ1の端面1bがジョイント3の外鍔部31の側面31bに当接する。接続後に、係止突部55の当接面55aは、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する。傾斜状でない当接面55aによって係止突部55は戻り止めの役目をする。
即ち、図20〜図23に示した抜け止め機構35は、外鍔部31の基端隅部に形成され、パイプ1とジョイント3を接続する際に先行角部60dを押し広げるように外方へ誘導し弾性変形させる誘導勾配面55bと、接続後に突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する当接面55aと、を有する係止突部55から成るものである。また、抜け止め機構35は、接続の相手である他方側のパイプ1の差込部61に対しても設けられている。
【0036】
上述した本発明の第2の実施の形態の地山補強用パイプの連結構造の使用方法(作用)について説明する。
連結すベき2本のパイプ1,1を各々の端面1b,1bが対面状となるように配設し、各々のL字状スリット60の差込部61にジョイント3の突起部30を各々差込む。すると、ジョイント3の挿入部3aの大部分がパイプ1内に挿入される。また、突起部30は、パイプ1の外周面から突出しない。また、外鍔部31は、パイプ1の外周面から突出しない。なお、ジョイント3の外周面を縮径テーパー状に形成した際は、よりスムーズにパイプ1内に挿入される。
【0037】
そして、突起部30が係合部62に差し込まれるようにパイプ1を回転させる。勾配内側縁62aが突起部30に沿うことで、パイプ1は、ジョイント3の外鍔部31の方向へ移動する。パイプ1の端面1bが外鍔部31の側面31bに面接触すると共に、突起部30は、勾配内側縁62aに圧接する。2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、各々ジョイント3の外鍔部31の両側面31b,31bに当接する。2本のパイプ1,1は、ジョイント3を介して連結される。
【0038】
また、ジョイント3は、外鍔部31を有しているので、パイプ1の端面1bが、外鍔部31の側面31bに当接され、1本のパイプ1にジョイント3が接続した状態を保持する。つまり、1本のパイプ1にジョイント3の一方端を回転させながら接続し、その後、ジョイント3の他方端を別のパイプ1を回転させて連結させても良い。
【0039】
図8に示す連結状態に於て、2本のパイプ1,1の端面1b,1bは、外鍔部31の両側面31b,31bに各々面接触し、パイプ1は、外鍔部31から反力(押圧力)を受ける。端面1bが外鍔部31に面接触することで、連結部で屈曲変形するのを防止する。打ち込み時に、軸心方向(打ち込み又は掘削方向)への力を確実に伝達する。
【0040】
また、突起部30が勾配内側縁62aに係止するだけでなく圧接して係合することで、パイプ1に大きな回転力を加えることが可能になる。掘削や打ち込みの際に伝達される回転力を突起部30と係合部62との接触部で確実に受ける。また、ジョイント3の突起部30及び外鍔部は、パイプ1の外周面から突出しないので、地中(図1に示す地山7)への嵌入の際に、ジョイント3による抵抗は発生しない。
【0041】
また、連結されたパイプ1,1には、図1に示すように、掘削後、注入材が注入される。パイプ1,1の内部には、ジョイント3が内装状となっているが、ジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cを形成しているので、注入材は、連結された一方のパイプ1から他方のパイプ1へ導かれるようにスムーズに流れる(注入される)。
【0042】
また、パイプ1を回転方向Nとは逆回転(突起部30が係合部62から抜ける方向へ回転)しても、上述した抜け止め機構35によって、逆回転は阻止(規制)される。2本のパイプ1,1の連結は外れることなく逆回転する。
【0043】
次に、上述した実施の形態以外に、第3の実施の形態として、図16に示す側面図のように、突起部30を、ジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に180°間隔で2箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計4つの突起部30を設けても良い。この際、パイプ1は、図17に示す展開図のように、端部1aに各々の突起部30が差し込まれる上述した(勾配内側縁62aを具備する係合部62と差込部61とを備えた)L字状スリット60を円周方向に180°間隔で形成する。
【0044】
また、他の実施の形態としては、図18に示す正面図のように、突起部30をジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に120°間隔で3箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計6つの突起部30を設けている。この際、パイプ1は、図示省略するが、各々の突起部30が差し込まれる上述したL字状スリット60を円周方向に120°間隔で3箇所形成する。
【0045】
また、別の実施の形態としては、図19に示す正面図のように、突起部30をジョイント3の一方の挿入部3aに円周方向に90°間隔で4箇所設けている。また、他方の挿入部3aにも同様に設けている。つまり、ジョイント3に合計8つの突起部30を設けている。この際、パイプ1は、図示省略するが、パイプ1の端部1aは、各々の突起部30が差し込まれる上述したL字状スリット60を円周方向に90°間隔で4箇所形成する。
【0046】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、ジョイント3の一方の挿入部3aと他方の挿入部3aで、突起部30の円周方向の配設位置を異なる位置に配設しても良い。また、突起部30の数は自由である。また、地山補強用のパイプ1としては、注入用有孔管以外に、他の工法に用いられるパイプ(鋼管等)、あるいは、孔なしのパイプ(又は鋼管)とすることも可能である。また、パイプ1に複数の差込部61を設けた場合は、抜け止め機構35を、各々に係止可能に複数設けても良い。つまり、L字状スリット60が複数形成されている際は、各々に係止可能に複数設けても良い。
【0047】
ところで、地山補強用パイプ1の端部1aに図5及び図6に示したようなL字状スリット60を加工するには、未加工パイプ材(有孔管等)の内部に受け金具を挿入し、油圧等のアクチュエータで直線作動する雄金型(又はポンチ等)で外周側から軸心直交方向に、押圧して、プレス加工やポンチ加工(塑性加工)等の打ち抜き形成するのが望ましい。
【0048】
以上のように本発明は、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、上記ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成され、パイプ1の端部1aには、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒しているので、従来のように、パイプ1,1同士を溶接する必要がなくなる。このことによりパイプ1の連結作業を簡素化できる。つまり、作業時間を大幅に短縮できる。また、溶接に必要な電力や溶接機等の設備を準備する必要がなく、さらに、火災の虞れもない。また、パイプ1とジョイント3を螺合のように何回転もさせることなく迅速に連結できる。2本のパイプ1,1の各々の端面1b,1bを、当接させて段差部を形成せずに連結できる。突起部30を係合部62に圧接させて連結できる。つまり、突起部30と係合部62との摩擦力を高めて容易に外れないように連結できる。パイプ1及びジョイント3の肉厚が薄くなるような加工(ネジ加工)を必要とせず、十分な強度のパイプ1及びジョイント3で連結できる。また、従来のように、ネジ加工の為に強度が必要以上に高い肉厚の厚いパイプを必要とせず、適切な強度かつ肉厚の軽量なパイプ1やジョイント3で容易に連結できる。ジョイント3をパイプ1内に挿入するので、連結部がパイプ1の外径より大きくならない。つまり、掘削や打ち込み又は嵌入作業の際の回転方向や軸心方向の運動や移動をジョイント3が妨げず、スムーズに施工できる。
【0049】
また、2本の円管状の地山補強用パイプ1の端部1aを、円筒状のジョイント3にて、相互に連結する連結構造であって、ジョイント3は、2本のパイプ1,1の端部1a,1aに各々挿入される挿入部3a,3aを両端側に有し、挿入部3aの外周面に突起部30が形成されると共に中間部に外鍔部31が形成され、パイプ1の端部1aに、端面1bから突起部30が差込まれるL字状スリット60が切欠形成され、L字状スリット60は、端面1bに開口する長手方向の差込部61と、差込部61の内端61aに連設された周方向の係合部62を備え、係合部62は、連結状態で突起部30が圧接する勾配内側縁62aを具備し、勾配内側縁62aは、円周方向より所定角度θだけパイプ1の中間部方向へ傾倒しているので、従来のように、パイプ1,1同士を溶接する必要がなくなる。このことによりパイプ1の連結作業を簡素化できる。つまり、作業時間を大幅に短縮できる。また、溶接に必要な電力や溶接機等の設備を準備する必要がなく、さらに、火災の虞れもない。また、パイプ1とジョイント3を螺合のように何回転もさせることなく迅速に連結できる。2本のパイプ1,1の各々の端面1b,1bを、外鍔部31に当接させて引っ掛かるような段差部を形成せずに連結できる。突起部30を係合部62に圧接させて連結できる。つまり、突起部30と係合部62との摩擦力を高めて容易に外れないように連結できる。また、従来のように、ネジ加工や溶接の為に強度が必要以上に高い肉厚の厚いパイプを必要とせず、適切な強度かつ薄い肉厚の軽量なパイプ1やジョイント3で容易に連結できる。例えば、ネジによる連結構造のパイプは、端部にネジ加工する必要があるため、強度的には肉厚は4mmで十分であったが、ネジ部での薄肉化による強度の低下を考慮して肉厚が6mmのパイプを用いていた。しかし、本発明は、パイプ1にネジ部を形成しないので、肉厚を4mmにすることができる。よって、強度が十分でありながら重量を30%以上軽量化でき、大幅なコストの削減ができる。また、ジョイント3をパイプ1内に挿入するので、連結部がパイプ1の外径より大きくならない。つまり、掘削や打ち込み又は嵌入作業の際の回転方向や軸心方向の運動や移動をジョイント3が妨げず、スムーズに施工できる。
【0050】
また、ジョイント3の外鍔部31に、突起部30が係合部62から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構35を設けているので、パイプ1が係合部62から抜ける方向の回転(逆回転)しても、ジョイント3がパイプ1から外れることなく作業できる。つまり、2本のパイプ1,1の連結が外れることなく確実に作業できる。パイプ1を逆回転(掘削や打ち込みの際の回転方向Nとは逆方向へ回転)できる。
【0051】
また、円筒状のジョイント3の内周端縁3bに外方拡径状のテーパー面3cが形成されているので、注入材がジョイント3によって塞き止められることなくスムーズに注入できる。ジョイント3の肉厚を厚くしても、注入の流れに影響するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】使用状況を示す実施の一形態の断面側面図である。
【図2】第1の実施の形態に用いるジョイントの側面図である。
【図3】第1の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図4】第1の実施の形態に用いるパイプの要部斜視図である。
【図5】第1の実施の形態に用いるパイプの要部斜視図である。
【図6】第1の実施の形態に用いるパイプの要部展開図である。
【図7】第1の実施の形態の側面図である。
【図8】第2の実施の形態の側面図である。
【図9】抜け止め機構の実施の一例を示す要部側面図である。
【図10】抜け止め機構の別の実施の一例を示す要部側面図である。
【図11】抜け止め機構の別の実施の一例の作用を説明する要部側面図である。
【図12】抜け止め機構のさらに別の一例を示す要部側面図である。
【図13】抜け止め機構のさらに別の一例を示す要部断面図である。
【図14】抜け止め機構のさらに別の一例の作用を説明する要部側面図である。
【図15】抜け止め機構のさらに別の一例の作用を説明する要部断面図である。
【図16】第3の実施の形態に用いるジョイントの側面図である。
【図17】第3の実施の形態に用いるパイプの要部展開図である。
【図18】他の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図19】別の実施の形態に用いるジョイントの正面図である。
【図20】抜け止め機構の他の実施の一例を示す要部側面図である。
【図21】抜け止め機構の他の実施の一例を示す要部斜視図である。
【図22】抜け止め機構の他の実施の一例の作用を説明する要部断面図である。
【図23】抜け止め機構の他の実施の一例の作用を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 パイプ
1a 端部
1b 端面
3 ジョイント
3a 挿入部
3b 内周端縁
3c テーパー面
30 突起部
31 外鍔部
35 抜け止め機構
60 L字状スリット
61 差込部
61a 内端
62 係合部
62a 勾配内側縁
θ 所定角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の円管状の地山補強用パイプ(1)の端部(1a)を、円筒状のジョイント(3)にて、相互に連結する連結構造であって、
上記ジョイント(3)は、上記2本のパイプ(1)(1)の端部(1a)(1a)に各々挿入される挿入部(3a)(3a)を両端側に有し、該挿入部(3a)の外周面に突起部(30)が形成され、
上記パイプ(1)の上記端部(1a)には、端面(1b)から上記突起部(30)が差込まれるL字状スリット(60)が切欠形成され、
上記L字状スリット(60)は、端面(1b)に開口する長手方向の差込部(61)と、該差込部(61)の内端(61a)に連設された周方向の係合部(62)を備え、
上記係合部(62)は、連結状態で上記突起部(30)が圧接する勾配内側縁(62a)を具備し、
上記勾配内側縁(62a)は、円周方向より所定角度(θ)だけ上記パイプ(1)の中間部方向へ傾倒していることを特徴とする地山補強用パイプの連結構造。
【請求項2】
2本の円管状の地山補強用パイプ(1)の端部(1a)を、円筒状のジョイント(3)にて、相互に連結する連結構造であって、
上記ジョイント(3)は、上記2本のパイプ(1)(1)の端部(1a)(1a)に各々挿入される挿入部(3a)(3a)を両端側に有し、該挿入部(3a)の外周面に突起部(30)が形成されると共に中間部に外鍔部(31)が形成され、
上記パイプ(1)の上記端部(1a)に、端面(1b)から上記突起部(30)が差込まれるL字状スリット(60)が切欠形成され、
上記L字状スリット(60)は、端面(1b)に開口する長手方向の差込部(61)と、該差込部(61)の内端(61a)に連設された周方向の係合部(62)を備え、
上記係合部(62)は、連結状態で上記突起部(30)が圧接する勾配内側縁(62a)を具備し、
上記勾配内側縁(62a)は、円周方向より所定角度(θ)だけ上記パイプ(1)の中間部方向へ傾倒していることを特徴とする地山補強用パイプの連結構造。
【請求項3】
上記ジョイント(3)の上記外鍔部(31)に、上記突起部(30)が上記係合部(62)から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構(35)を設けている請求項2記載の地山補強用パイプの連結構造。
【請求項4】
円筒状の上記ジョイント(3)の内周端縁(3b)に外方拡径状のテーパー面(3c)が形成されている請求項1と2及び3記載の地山補強用パイプの連結構造。
【請求項1】
2本の円管状の地山補強用パイプ(1)の端部(1a)を、円筒状のジョイント(3)にて、相互に連結する連結構造であって、
上記ジョイント(3)は、上記2本のパイプ(1)(1)の端部(1a)(1a)に各々挿入される挿入部(3a)(3a)を両端側に有し、該挿入部(3a)の外周面に突起部(30)が形成され、
上記パイプ(1)の上記端部(1a)には、端面(1b)から上記突起部(30)が差込まれるL字状スリット(60)が切欠形成され、
上記L字状スリット(60)は、端面(1b)に開口する長手方向の差込部(61)と、該差込部(61)の内端(61a)に連設された周方向の係合部(62)を備え、
上記係合部(62)は、連結状態で上記突起部(30)が圧接する勾配内側縁(62a)を具備し、
上記勾配内側縁(62a)は、円周方向より所定角度(θ)だけ上記パイプ(1)の中間部方向へ傾倒していることを特徴とする地山補強用パイプの連結構造。
【請求項2】
2本の円管状の地山補強用パイプ(1)の端部(1a)を、円筒状のジョイント(3)にて、相互に連結する連結構造であって、
上記ジョイント(3)は、上記2本のパイプ(1)(1)の端部(1a)(1a)に各々挿入される挿入部(3a)(3a)を両端側に有し、該挿入部(3a)の外周面に突起部(30)が形成されると共に中間部に外鍔部(31)が形成され、
上記パイプ(1)の上記端部(1a)に、端面(1b)から上記突起部(30)が差込まれるL字状スリット(60)が切欠形成され、
上記L字状スリット(60)は、端面(1b)に開口する長手方向の差込部(61)と、該差込部(61)の内端(61a)に連設された周方向の係合部(62)を備え、
上記係合部(62)は、連結状態で上記突起部(30)が圧接する勾配内側縁(62a)を具備し、
上記勾配内側縁(62a)は、円周方向より所定角度(θ)だけ上記パイプ(1)の中間部方向へ傾倒していることを特徴とする地山補強用パイプの連結構造。
【請求項3】
上記ジョイント(3)の上記外鍔部(31)に、上記突起部(30)が上記係合部(62)から抜ける方向の回転を規制する抜け止め機構(35)を設けている請求項2記載の地山補強用パイプの連結構造。
【請求項4】
円筒状の上記ジョイント(3)の内周端縁(3b)に外方拡径状のテーパー面(3c)が形成されている請求項1と2及び3記載の地山補強用パイプの連結構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−293343(P2009−293343A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150391(P2008−150391)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594078607)株式会社ティーエムシー (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594078607)株式会社ティーエムシー (4)
【Fターム(参考)】
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