説明

地理属性変化検出方法、地理属性変化検出装置及び地理属性変化検出プログラム

【課題】更新が必要な地理属性を検出し、地理属性を低コストで最新に保つ。
【解決手段】変化検出部11が地理属性項目の値の変化を検出し、関連変化検出部12が、変化が検出された地理属性項目を含む地理属性項目間の関係を項目関係蓄積部13から検索し、変化が予測される地理属性項目を検出する。これにより、調査が必要な難更新群に属する地理属性項目を把握することができ、効率的に地理属性を最新に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗や駅、あるいは街などの屋外の場所に関する周辺の地理的な特徴を効率的に更新する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルサイネージ向け広告配信ソリューションや、位置情報を利用して近い店舗を紹介する検索サイトなど、屋外空間向けICTサービスが拡充している。屋外空間向けICTサービスにおいて、位置情報、周辺の店舗リスト等のみならず、その場所に集まる人々(以下、「ユーザ」と称する)の属性の傾向も把握できれば、よりユーザに適合した情報を提示することができ、効果的である。例えば、仕事が終わって帰ろうとしているユーザが多い場所であれば、仕事帰りに消費が高まるアルコール飲料の広告を提示したり、友人と遊びに来るユーザが多い場所であれば、友人と立ち寄ることの多い喫茶や軽食、レストランの広告を提示することで、よりユーザの状況に適合した情報提示が可能となる。
【0003】
ユーザの属性の傾向を把握するためには、例えば非特許文献1で用いられているような、傾向を知りたい場所に調査員を派遣してユーザに対しアンケートやインタビュー調査を行ったり、ある場所を訪れたことがあるユーザにWebや郵送調査を実施してデータを取得する方法がある。しかしながら、屋外空間向けICTサービスの対象となる、数十〜数百箇所以上の多くの場所についてユーザの属性の傾向を把握するために、上記の調査を行う方法では、多大な費用や手間がかかるという問題がある。
【0004】
ユーザの属性を把握するために、ユーザの属性と関係する、その場所周辺の地理的な特徴を利用することができる。非特許文献1では、場所として市街地の劇場、および目抜き通りを対象とし、ユーザの属性として訪れた人の買いまわり行動の特徴を対象として、場所の違いによるユーザの属性の違いについて検証した。非特許文献1の検証では、場所の違いが買いまわり行動パタンの違いをもたらすことが示された。非特許文献1の研究はケーススタディであったが、ある場所の地理的な特徴(劇場、目抜き通りなどエリアの特性)とユーザの属性(買いまわり行動パタン)の間の一般的関係を発見し利用することによって、容易に取得可能な地理的な特徴により、取得コストの高いユーザの属性が推定できると考える。
【0005】
以下、ユーザの属性を「ユーザ属性」、地理的な特徴を「地理属性」と呼ぶ。
【0006】
ユーザ属性と地理属性、および両者の関係の例を挙げる。例えば、オフィスが数多く集まったビジネス街(地理属性)であれば、夕方から夜には仕事を終えて帰宅するビジネスパーソンが多い(ユーザ属性)ことが推測される。別の例では、レストランや居酒屋が多い場所(地理属性)には、友人と遊びに来る人が多い(ユーザ属性)ことが推測される。このように、地理属性からユーザ属性を推定することで、ユーザ属性を直接調査するコストを最小限に抑えることができる。
【0007】
図9に、ある場所のユーザ属性と地理属性の例を示す。
【0008】
「場所」とは、大手町、丸の内、有楽町など、例えば駅を中心に半径数百mの範囲で、人がその場所名を聞いたときにイメージする大まかな範囲を指すものとする。
【0009】
「ユーザ属性」とは、その場所への情報発信に役立てることを目的としたユーザの行動や属性についての情報である。性別・年代、職業に加えて、来訪目的、気分等の傾向を想定する。
【0010】
「地理属性」とは、客観的な指標でその場所について記述したものであり、レストランなどの商業施設の数、不動産物件数、大学等の高等教育施設数、映画館等の娯楽施設数、あるいは会社・住宅の数などの周辺施設の数と、昼間人口、1世帯あたり人員、世帯数などの静的・定常的な人口・経済指標を指す。
【0011】
図9に示す地理属性のうち、レストラン数、不動産物件数、ホテル数などの周辺施設の数は、インターネット上のサービス等で利用可能な、高頻度に更新される店舗データベースを参照して容易に数を知ることができる。例えば、店舗情報も含んだ代表的な住宅地図提供サービスには、3,4ヶ月に1回定期的に最新化されるものがある。
【0012】
一方、昼間人口、1世帯あたり人員などの静的・定常的な人口・経済指標は、例えば、総務省が発行している「国勢調査」や「事業所・企業統計」、経済産業省が発行している「商業統計」「工業統計」により取得できる。これらの調査は簡易調査も含めて5年に1度しか行われないため、地理属性を更新するのに最大で5年もかかることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−015796号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】三阪朋彦、兼田敏之、”都心域における劇場来訪者の回遊行動の特徴に関する調査分析”、日本建築学会技術報告集、2005年6月、第21号、p.303-307
【非特許文献2】菊井玄一郎、外4名、”リッチアノテーション:固有表現に焦点をあてた知識抽出の試み”、電子情報通信学会技術研究報告,NLC、2008年7月、第108巻、第141号、p.73-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、人口・経済指標は、静的・定常的とはいっても、数ヶ月から数年程度と幅はあるものの、ある程度の時間が経つと変化するものである。地理属性が変化すると、ユーザ属性に大きな影響を与える場合も多い。例えば、ある場所が再開発され、たくさんのテナントを持つシネマ・コンプレックスが営業を開始すると、週末には遊びにくる人が増えてユーザ属性が変化し、また、多くの世帯が居住可能なタワーマンションが建設されると、居住者の数が増え、近隣の場所の年齢等のユーザ属性に変化が生じる可能性もある。
【0016】
以上のように、地理属性には数ヶ月から5年程度のスパンで、様々な更新頻度をもった項目が含まれている。地理属性は短期間で頻繁に変わることは少ないが、一旦変化するとユーザ属性に大きな影響を与えるため、適切な時に地理属性を最新のものに更新することは、適切なユーザ属性の把握にとって重要なことである。逐一人手で地理属性を取得することも可能であるが、特に地理属性が多岐にわたる場合、非常に手間とコストのかかる作業になってしまうという問題があった。
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、更新が必要な地理属性を検出し、地理属性を低コストで最新に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の本発明に係る地理属性変化検出方法は、変化検出手段による、場所に関する所定の属性を示す第1の地理属性項目を格納したデータベースを参照し、当該第1の地理属性項目の値の変化を検出するステップと、関連変化検出手段による、前記第1の地理属性項目と、当該第1の地理属性項目に対して相関性を有し、前記第1の地理属性項目の属性とは異なる属性を示す第2の地理属性項目とを関係付けて蓄積した関係蓄積手段を参照して、前記変化を検出するステップにおいて検出した前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
上記地理属性変化検出方法において、記事入力手段による、テキスト記事を入力するステップと、記事選定手段による、前記第1、第2の地理属性項目の値の変化を検出する場所名を蓄積した場所名蓄積手段に蓄積された前記場所名を含むテキスト記事を選定するステップと、キーワード抽出手段による、前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目に変化が検出された場所名を含むテキスト記事から当該テキスト記事のトピックを表すキーワードを抽出するステップと、更新手段による、前記第2の地理属性項目を検索するステップで検索された前記第2の地理属性項目と前記キーワードを抽出するステップで抽出された前記キーワードとを対応付けて要更新地理情報蓄積手段に格納するステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
上記地理属性変化検出方法において、関係抽出手段による、第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を蓄積した過去地理属性蓄積手段から第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を読み出し、前記第1の地理属性項目と前記第2の地理属性項目との相関性を求めるステップと、前記関係抽出手段による、前記第1の地理属性項目と当該第1の地理属性項目に対して相関性を有する第2の地理属性項目との関係を抽出し、前記関係蓄積手段に格納するステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
上記地理属性変化検出方法において、前記関連変化検出手段による、前記関係蓄積手段を参照し、前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目の変化が検出された場所に関連付けられた別の場所における、前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索するステップを有することを特徴とする。
【0022】
第2の本発明に係る地理属性変化検出装置は、場所に関する所定の属性を示す第1の地理属性項目と、当該第1の地理属性項目に対して相関性を有し、前記第1の地理属性項目の属性とは異なる属性を示す第2の地理属性項目とを関係付けて蓄積した関係蓄積手段と、前記第1の地理属性項目を格納したデータベースを参照し、当該第1の地理属性項目の値の変化を検出する変化検出手段と、前記関係蓄積手段を参照して、前記変化検出手段が検出した前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索する関連変化検出手段と、を有することを特徴とする。
【0023】
上記地理属性変化検出装置において、前記第1、第2の地理属性項目の値の変化を検出する場所名を蓄積した場所名蓄積手段と、テキスト記事を入力する記事入力手段と、前記場所名蓄積手段に蓄積された場所名を含むテキスト記事を選定する記事選定手段と、前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目に変化が検出された場所名を含むテキスト記事から当該テキスト記事のトピックを表すキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、前記関連変化検出手段が検索した前記第2の地理属性項目と前記キーワード抽出手段が抽出した前記キーワードとを対応付けて要更新地理情報蓄積手段に格納する更新手段と、を有することを特徴とする。
【0024】
上記地理属性変化検出装置において、第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を蓄積した過去地理属性蓄積手段と、前記過去地理属性蓄積手段から第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を読み出し、前記第1の地理属性項目と前記第2の地理属性項目との相関性を求め、前記第1の地理属性項目と当該第1の地理属性項目に対して相関性を有する第2の地理属性項目との関係を抽出し、前記関係蓄積手段に格納する関係抽出手段と、を有することを特徴とする。
【0025】
上記地理属性変化検出装置において、前記関連変化検出手段は、前記関係蓄積手段を参照し、前記第1の地理属性項目の変化が検出された場所に関連付けられた別の場所における、前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索することを特徴とする。
【0026】
第3の本発明に係る地理属性変化検出プログラムは、上記地理属性変化検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、更新が必要な地理属性を検出し、地理属性を低コストで最新に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態における地理属性変化検出装置を含むシステムの全体構成図である。
【図2】本実施の形態における地理属性変化検出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】地理属性項目間の関係の例を示す図である。
【図4】場所名蓄積部が蓄積する場所の例を示す図である。
【図5】要更新地理属性蓄積部が蓄積した要更新地理属性情報の例を示す図である。
【図6】更新が必要な地理属性項目を検出する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】キーワードを抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】地理属性項目間の関係を抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】ある場所のユーザ属性と地理属性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態における地理属性変化検出装置を含むシステムの全体構成図である。地理属性変化検出装置1は、ネットワーク100、およびユーザ属性推定装置200に接続可能である。ユーザ属性推定装置200は、地理属性変化検出装置1に蓄積された地理属性を利用してユーザ属性を推定する装置である。
【0031】
地理属性変化検出装置1は、ネットワーク100上に配置された店舗データベース301、不動産物件データベース302などから地理属性項目の値を取得して変化を検出し、地理属性項目間の関係を利用して、更新すべき別の地理属性項目を検出する。
【0032】
地理属性項目とは、例えばレストラン数、オフィスの数、昼間人口、地価などの場所に関する所定の属性を示す情報であり、地理属性項目は場所それぞれにおける値を有する。実際の地理属性項目の値は、時間とともに変化するが、地理属性変化検出装置1に蓄積される地理属性項目の値は、店舗データベース301、不動産物件データベース302などから取得して更新、あるいは、実際の調査により更新される。更新頻度が高く容易に取得できる地理属性項目を易更新群、更新頻度が低い地理属性項目を難更新群と呼ぶ。図9に示した地理属性の例では、周辺施設の数の各地理属性項目は易更新群に属し、静的・定常的な人口・経済指標の各地理属性項目は難更新群に属する。
【0033】
地理属性項目間の関係とは、地理属性項目の間に存在する相関性を示す情報である。特に、易更新群に属する地理属性項目と難更新群に属する地理属性項目との関係を指す。
【0034】
また、地理属性変化検出装置1は、ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402などからテキスト記事を取得し、取得した記事をテキスト解析し、地理属性の更新に関係するキーワードを取得する。
【0035】
さらに、地理属性変化検出装置1は、複数場所、複数時点の地理属性項目とその値を用いて地理属性項目間の関係を求める。以下、地理属性変化検出装置1について説明する。
【0036】
図2は、本実施の形態における地理属性変化検出装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す地理属性変化検出装置1は、変化検出部11、関連変化検出部12、項目関係蓄積部13、更新部14、要更新地理属性蓄積部15、キーワード抽出モジュール16、および関係抽出モジュール17を備える。地理属性変化検出装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは地理属性変化検出装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部の詳細について説明する。
【0037】
変化検出部11は、店舗データベース301、不動産物件データベース302などを参照し、店舗数や物件数などの易更新群に属する地理属性項目の値に変化がある場合、変化が生じた地理属性項目とその新しい値、および変化が生じた場所名を取得して、関連変化検出部12に送出する。
【0038】
関連変化検出部12は、変化検出部11が変化を検出した地理属性項目を含む地理属性項目間の関係を項目関係蓄積部13から検索し、変化が予測される地理属性項目を検出して更新部14に送出するとともに、地理属性項目の変化が予測される場所名をキーワード抽出モジュール16に送出する。
【0039】
項目関係蓄積部13は、地理属性項目間の関係を蓄積する。図3に、地理属性項目間の関係の例を示す。同図に示す例では、地理属性項目の一つである「レストラン数」と地理属性項目の一つである「昼間人口」が関係あるとして、関係の強さ、解釈とともに蓄積されている。一つの地理属性項目に対して複数の地理属性項目が関係してもよく、図3に示す例では、「レストラン数」には、別の地理属性項目である「事業所数」との関係も蓄積されている。
【0040】
キーワード抽出モジュール16は、ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402などから取得した記事から、地理属性項目の変化が予測される場所に関連するキーワードを抽出する。キーワード抽出モジュール16は、記事入力部161、記事選定部162、場所名蓄積部163、及びキーワード抽出部164を備える。
【0041】
記事入力部161は、ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402などから記事を取得する。
【0042】
記事選定部162は、場所名蓄積部163に蓄積された場所に関する記事を記事入力部161が取得した記事から選定する。
【0043】
場所名蓄積部163は、地理属性の変化を検出する場所名を蓄積する。図4に、場所名蓄積部163が蓄積する場所の例を示す。同図に示す例では、丸の内、八重洲、新橋等が地理属性の変化を検出する場所として蓄積されている。
【0044】
キーワード抽出部164は、関連変化検出部12が検出した地理属性項目の変化が予測される場所について書かれた記事を記事選定部162から受け取り、その記事のトピックを表すキーワードを抽出して更新部14に送出する。
【0045】
更新部14は、場所名、変化が検出された地理属性項目、更新が必要な地理属性項目、及び抽出されたキーワードを対応付けて要更新地理属性情報として要更新地理属性蓄積部15に蓄積する。図5に、要更新地理属性蓄積部15が蓄積した要更新地理属性情報の例を示す。同図では、丸の内のレストラン数が変化し、昼間人口の上昇が予測される例が示されている。丸の内のレストラン数の変化に関連するキーワードとして、「映画館」、「オープン」が対応付けられている。
【0046】
関係抽出モジュール17は、分析部171、過去地理属性蓄積部172を備える。分析部171は、過去地理属性蓄積部172に蓄積された地理属性を用いて地理属性項目間の関係を抽出し、項目関係蓄積部13に蓄積する。地理属性項目間の関係の抽出方法については後述する。
【0047】
次に、更新が必要な地理属性項目を検出する処理について説明する。図6は、更新が必要な地理属性項目を検出する処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
まず、変化検出部11が、店舗データベース301、不動産物件データベース302などを参照して、店舗数や物件数などの地理属性項目の値の変化を検出する(ステップS11)。地理属性項目の値の変化を検出すると、変化が起きた場所名と地理属性項目、および新しい地理属性項目の値を関連変化検出部12へ送出する。
【0049】
続いて、関連変化検出部12が、変化が予測される地理属性項目を検索する(ステップS12)。関連変化検出部12は、変化検出部11から場所名、地理属性項目、および新しい地理属性項目の値を受け取り、受け取った地理属性項目を含む地理属性項目間の関係を項目関係蓄積部13から検索する。そして、検索結果である、変化が予測される地理属性項目、およびその他の情報を更新部14へ送出する。例えば、図3に示す地理属性項目間の関係が項目関係蓄積部13に蓄積されていたときに、変化検出部11が地理属性項目「レストラン数」の増加を検出した場合、関連変化検出部12は、項目関係蓄積部13を参照し、「レストラン数」に関係がある「昼間人口」を得る。関連変化検出部12は、更新が必要な地理属性項目として「昼間人口」と関連の強さの指標の値「0.8」を更新部14へ送出する。
【0050】
関連変化検出部12は、さらに、変化が起きた場所と関連が強い場所について、変化が予測される地理属性項目を検索する(ステップS13)。変化が起きた場所に関連が強い場所が登録されているときは、その関連が強い場所についても、ステップS12と同様に、変化が予測される地理属性項目を検索する。関連が強い場所とは、例えば公共交通機関が発達し、相互移動が多いと考えられる場所である。関連が強い場所の情報は、関係抽出モジュール17が求め、項目関係蓄積部13に蓄積されている。関連が強い場所の抽出方法については後述する。
【0051】
そして、関連変化検出部12が、変化が起きた場所名をキーワード抽出部164に送出すると(ステップS14)、キーワード抽出部164は、受信した場所名に関連する記事を受け取り、その記事のトピックを表すキーワードを抽出して更新部14に送出する(ステップS15)。キーワード抽出処理の詳細については後述する。
【0052】
更新部14は、受信した場所名、変化が予測される地理属性項目、およびキーワードを対応つけて要更新地理属性蓄積部15に蓄積する(ステップS16)。
【0053】
このようにして、変化が予測される地理属性項目、つまり、更新を要する地理属性項目が抽出されて、要更新地理属性蓄積部15に蓄積されるので、地理属性を更新する管理者は要更新地理属性蓄積部15に蓄積された要更新地理属性情報を参照し、更新が必要な場所、地理属性項目のみ追加調査を行うことで、効率的に地理属性を最新に保つことができる。地理属性変化検出装置1に蓄積される地理属性を最新に保つことで、ユーザ属性推定装置200が推定するユーザ属性の有効性を高めることができ、その場所に適した情報配信が可能となる。なお、管理者は、要更新地理属性情報に含まれるキーワードを参照することで、地理属性が変化した原因となった要因を推定することができ、追加調査の要否、どのような追加調査を行えばよいかなど判断することができる。
【0054】
次に、キーワードを抽出する処理について説明する。図7は、キーワードを抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402は、ネットワーク100上に公開されているニュースサイト、ブログサイトから、ニュース記事やブログ記事などのテキスト記事を取得して一時的に記憶しておく。
【0056】
まず、記事入力部161が、ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402から、蓄積された記事を取得する(ステップS21)。
【0057】
続いて、記事選定部162が、取得した記事中の地名を選出し、場所名蓄積部163に蓄積された場所に関する記事を選定する(ステップS22)。記事中から地名を選出する方法として、非特許文献2で用いられている方法を用いてもよい。
【0058】
続いて、キーワード抽出部164が、選定された記事中で重要な意味を持つキーワードを抽出する(ステップS23)。キーワードとして、同一記事内に規定の回数以上出現する一般名詞・動詞を抽出するが、特に表題等の記事内の重要な位置に含まれていた場合、あるいは、場所名と同一文内に出現する場合に、評価値を大きくする等の重み付けを加えてもよい。抽出されるキーワードとしては、例えば「スパ」「開店」、「オフィスビル」「オープン」、あるいは「タワー型マンション」「販売開始」などのキーワードが考えられる。なお、特許文献1に記載の方法を応用してもよい。
【0059】
抽出されたキーワードは、更新部14へ送出され、場所名、変化が予測される地理属性項目に対応付けられて要更新地理属性蓄積部15に蓄積される。
【0060】
次に、項目関係蓄積部13に蓄積される地理属性項目間の関係を抽出する処理について説明する。地理属性項目間の関係は、過去地理属性蓄積部172に蓄積した地理属性項目とその値の履歴を利用して求める。図8は、地理属性項目間の関係を抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
まず、分析部171が、過去地理属性蓄積部172から複数場所、複数時点での地理属性項目とその値を読み出す(ステップS31)。過去地理属性蓄積部172に蓄積された地理属性項目のうち、レストラン数や不動産物件数などの易更新群に属する地理属性項目の値は、店舗データベース301、不動産物件データベース302から取得して自動的に更新可能である。
【0062】
続いて、分析部171は、ステップS31で取得した複数場所、複数時点の地理属性項目の値を利用して、易更新群に属する地理属性項目と難更新群に属する地理属性項目との間の関係を求める(ステップS32)。地理属性項目間の関係の求め方の詳細については後述する。
【0063】
地理属性項目間の関係が求まると、その関係を項目関係蓄積部13に蓄積する(ステップS33)。
【0064】
ここで、地理属性項目間の関係の求め方について説明する。
【0065】
第1として、相関係数を用いる方法を説明する。
【0066】
過去地理属性蓄積部172から地理属性項目とその値を読み出し、地理属性項目のうち2項目間のピアソンの積率相関係数を算出し、易更新群に属する地理属性項目と難更新群に属する地理属性項目との間で、相関係数の絶対値が大きい組み合わせを見つけて、その地理属性項目の組み合わせを地理属性項目間の関係として項目関係蓄積部13に蓄積する。易更新群に属する地理属性項目の値に変化が見られると、難更新群に属する地理属性項目の値も、相関係数が正であれば正の方向に、負であれば負の方向に変化する可能性が高いとみなす。図3に示した地理属性項目間の関係の例は、相関係数を用いて地理属性項目間の関係を求めたものである。
【0067】
第2として、場所間の影響を考慮する方法を説明する。
【0068】
ある場所の地理属性項目が変化した場合に、他の場所の地理属性項目が変化する場合もある。ここでは、ある場所 A の影響を受ける別の場所 B の抽出を行う。場所 A におけるある地理属性項目に変化が起きた場合に、該当地理属性項目と関係の深い地理属性項目だけでなく、場所 B の地理属性項目も変化が生じると考えられる。
【0069】
場所間の関係は、相互に移動する人の多さと関係していると考えられる。公共交通機関が発達している地域において、ある場所からある場所に移動する人の多さは、その場所間の移動しやすさ(移動コスト)に大きく依存していると考えられる。例えば、新宿−町田間は、渋谷−町田間よりも相互移動が多いと予測されるが、それは、新宿−町田間は乗換えなしで行き来でき、頻繁に急行が運行しているが、渋谷−町田間は乗換えが必要で、より手間がかかることが大きな原因であろう。移動コストは、移動にかかる手間、交通機関の運行頻度、かかる時間、最寄り交通機関の駅・バス亭などへの距離に依存すると考えられる。
【0070】
そこで、例えば次式(2)により移動コストを算出する。
【0071】
(移動コスト)=f{a:移動時間,b:運賃,c:交通手段の使いにくさ,d:最寄公共交通機関の乗降者数} ・・・(2)
a:移動時間、b:運賃は、乗換案内サービスを用いて求めることができる。最も推奨される乗換方法の移動時間や運賃を用いても良い。c:交通手段の使いにくさは、最寄り駅までの距離、電車やバスの運行間隔などを用いて定義してもよい。最寄り駅までの距離は、乗換案内サービスや地図情報サービスを用いて求めることができる。aからcをランク分けし、その和を移動コスト得点と定義してもよい。例えば、「品川」「秋葉原」間について移動コストを算出するとする。ある乗換案内サービスによると、a : 移動時間は 15 分であるのでランク 3 、b : 運賃は 160 円であるのでランク 1、c : 交通手段の使いにくさについて、早朝・深夜以外については 5 分未満であるのでランク 1 とし、移動コスト得点は 5 となる。d:最寄公共交通機関の乗降者数は、交通機関運営会社が発表しているデータをデータベースから取得することで得られる。
【0072】
分析部171は、場所名蓄積部163を参照し、場所名蓄積部163に登録された場所間で、式(2)を利用して移動コストを計算し、相互移動の多い場所を求める。このとき、d:最寄公共交通機関の乗降者数を考慮し、相互移動が多いと設定する場所数を変えてもよい。例えば、dの値が場所名蓄積部163に登録されている全場所中上位10件に入る場所については、移動コストが低い下位10件に含まれる場所を相互移動が多い場所とする。dの値が少ない場所については、移動コストが低い下位3件に含まれる場所を相互移動が多い場所とする。
【0073】
そして、分析部171は、求めた相互移動が多い場所の関係を項目関係蓄積部13に蓄積する。項目関係蓄積部13に蓄積された場所間の関係は、前述の図6のステップS13において利用される。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、変化検出部11が地理属性項目の値の変化を検出し、関連変化検出部12が、変化が検出された地理属性項目を含む地理属性項目間の関係を項目関係蓄積部13から検索し、変化が予測される地理属性項目を検出することで、調査が必要な、難更新群に属する地理属性項目を把握することができ、効率的に地理属性を最新に保つことができる。
【0075】
本実施の形態によれば、キーワード抽出モジュール16が、ブログ記事蓄積装置401、ニュース記事蓄積装置402などから取得した記事から、地理属性項目の変化が予測される場所に関連するキーワードを抽出し、更新部14が、場所名、変化が検出された地理属性項目、更新が必要な地理属性項目、及び抽出されたキーワードを対応付けて要更新地理属性情報として要更新地理属性蓄積部15に蓄積することにより、地理属性を更新する管理者は、要更新地理属性情報に含まれるキーワードを参照し、地理属性が変化した原因となった要因を推定することができ、追加調査の要否、どのような追加調査を行えばよいかなど判断することができる。
【0076】
本実施の形態によれば、分析部171が過去地理属性蓄積部172に蓄積された地理属性を用いて地理属性項目間の関係を抽出し、項目関係蓄積部13に蓄積することにより、変化が検出された地理属性項目から変化が予測される地理属性項目を検出することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…地理属性変化検出装置
11…変化検出部
12…関連変化検出部
13…項目関係蓄積部
14…更新部
15…要更新地理属性蓄積部
16…キーワード抽出モジュール
161…記事入力部
162…記事選定部
163…場所名蓄積部
164…キーワード抽出部
17…関係抽出モジュール
171…分析部
172…過去地理属性蓄積部
100…ネットワーク
200…ユーザ属性推定装置
301…店舗データベース
302…不動産物件データベース
401…ブログ記事蓄積装置
402…ニュース記事蓄積装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化検出手段による、場所に関する所定の属性を示す第1の地理属性項目を格納したデータベースを参照し、当該第1の地理属性項目の値の変化を検出するステップと、
関連変化検出手段による、前記第1の地理属性項目と、当該第1の地理属性項目に対して相関性を有し、前記第1の地理属性項目の属性とは異なる属性を示す第2の地理属性項目とを関係付けて蓄積した関係蓄積手段を参照して、前記変化を検出するステップにおいて検出した前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索するステップと、を有すること
を特徴とする地理属性変化検出方法。
【請求項2】
記事入力手段による、テキスト記事を入力するステップと、
記事選定手段による、前記第1、第2の地理属性項目の値の変化を検出する場所名を蓄積した場所名蓄積手段に蓄積された前記場所名を含むテキスト記事を選定するステップと、
キーワード抽出手段による、前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目に変化が検出された場所名を含むテキスト記事から当該テキスト記事のトピックを表すキーワードを抽出するステップと、
更新手段による、前記第2の地理属性項目を検索するステップで検索された前記第2の地理属性項目と前記キーワードを抽出するステップで抽出された前記キーワードとを対応付けて要更新地理情報蓄積手段に格納するステップと、を有すること
を特徴とする請求項1記載の地理属性変化検出方法。
【請求項3】
関係抽出手段による、第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を蓄積した過去地理属性蓄積手段から第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を読み出し、前記第1の地理属性項目と前記第2の地理属性項目との相関性を求めるステップと、
前記関係抽出手段による、前記第1の地理属性項目と当該第1の地理属性項目に対して相関性を有する第2の地理属性項目との関係を抽出し、前記関係蓄積手段に格納するステップと、を有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の地理属性変化検出方法。
【請求項4】
前記関連変化検出手段による、前記関係蓄積手段を参照し、前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目の変化が検出された場所に関連付けられた別の場所における、前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索するステップを有すること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地理属性変化検出方法。
【請求項5】
場所に関する所定の属性を示す第1の地理属性項目と、当該第1の地理属性項目に対して相関性を有し、前記第1の地理属性項目の属性とは異なる属性を示す第2の地理属性項目とを関係付けて蓄積した関係蓄積手段と、
前記第1の地理属性項目を格納したデータベースを参照し、当該第1の地理属性項目の値の変化を検出する変化検出手段と、
前記関係蓄積手段を参照して、前記変化検出手段が検出した前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索する関連変化検出手段と、を有すること
を特徴とする地理属性変化検出装置。
【請求項6】
前記第1、第2の地理属性項目の値の変化を検出する場所名を蓄積した場所名蓄積手段と、
テキスト記事を入力する記事入力手段と、
前記場所名蓄積手段に蓄積された場所名を含むテキスト記事を選定する記事選定手段と、
前記変化を検出するステップにおいて前記第1の地理属性項目に変化が検出された場所名を含むテキスト記事から当該テキスト記事のトピックを表すキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、
前記関連変化検出手段が検索した前記第2の地理属性項目と前記キーワード抽出手段が抽出した前記キーワードとを対応付けて要更新地理情報蓄積手段に格納する更新手段と、を有すること
を特徴とする請求項5記載の地理属性変化検出装置。
【請求項7】
第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を蓄積した過去地理属性蓄積手段と、
前記過去地理属性蓄積手段から第1、第2の地理属性項目とその値の履歴を読み出し、前記第1の地理属性項目と前記第2の地理属性項目との相関性を求め、前記第1の地理属性項目と当該第1の地理属性項目に対して相関性を有する第2の地理属性項目との関係を抽出し、前記関係蓄積手段に格納する関係抽出手段と、を有すること
を特徴とする請求項5又は6記載の地理属性変化検出装置。
【請求項8】
前記関連変化検出手段は、前記関係蓄積手段を参照し、前記第1の地理属性項目の変化が検出された場所に関連付けられた別の場所における、前記第1の地理属性項目と関係する前記第2の地理属性項目を検索すること
を特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の地理属性変化検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の地理属性変化検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする地理属性変化検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−221693(P2011−221693A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88490(P2010−88490)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】