地盤又は岩盤用の変位計測装置
【課題】防水性能を高めつつ、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる変位計測装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置1は、磁歪線である第1棒状部8上に生じる磁歪を利用して、地盤又は岩盤の計測孔に固定された計測ターゲット4の位置を計測するものである。磁歪を検出する情報取得手段であるプリアンプ21には可動部が存在しないため、プリアンプ21の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲット4は、流体圧力により膨張する固定袋6を有するため、固定袋6が計測孔を圧迫する力を流体圧力で自在に強め、計測ターゲット4を計測孔の内壁にしっかりと固定することができる。さらに、固定袋6は非磁性材料により構成されているため、永久磁石の磁場を乱すことがない。これにより、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【解決手段】本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置1は、磁歪線である第1棒状部8上に生じる磁歪を利用して、地盤又は岩盤の計測孔に固定された計測ターゲット4の位置を計測するものである。磁歪を検出する情報取得手段であるプリアンプ21には可動部が存在しないため、プリアンプ21の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲット4は、流体圧力により膨張する固定袋6を有するため、固定袋6が計測孔を圧迫する力を流体圧力で自在に強め、計測ターゲット4を計測孔の内壁にしっかりと固定することができる。さらに、固定袋6は非磁性材料により構成されているため、永久磁石の磁場を乱すことがない。これにより、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤又は岩盤に形成された計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野の変位計測装置としては、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備えたものが知られている。一般的な情報取得手段としては、計測ターゲットの位置を電気信号に変換する直動型ポテンショメータが挙げられる。直動型ポテンショメータは、計測ターゲットと連動する可動部分を有するため、この可動部分の防水性能を高めることが難しく、水の浸入により動作不良を生じるおそれがあった。
【0003】
上記可動部分を有さない変位計測装置としては、地盤用の変位計測装置であって、計測孔に挿入される保護管と、保護管内に挿入される磁歪線と、保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように保護管の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットに設けられた永久磁石と、磁歪線にパルス状の電流を加え、パルス状の電流及び永久磁石の影響で磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の地盤用の変位計測装置では、計測ターゲットは、外周に設けられた爪部によって計測孔の内壁に固定される。爪部は、計測ターゲットを計測孔に挿入する際に、内側に向かって押し付けられており、計測ターゲットを固定位置まで挿入した際に解放される。解放された爪部は、外側へ広がろうとする反発力によって計測孔の内壁に突き刺さり、計測ターゲットが計測孔の内壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3702461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の地盤用の変位計測装置では、情報取得手段が上記可動部分を有さないため、情報取得手段の防水性能を高めることができる。しかしながら、特許文献1の変位計測装置が硬い岩盤で用いられる場合には、計測孔の内壁が硬く、計測ターゲットの爪部が計測孔の内壁に突き刺さり難い。このため、計測ターゲットの固定が不完全となり、地盤又は岩盤の変位を正確に計測できないおそれがあった。
【0007】
これに対し、反発力が強い鉄鋼材料により爪部を構成することが考えられる。しかしながら、磁性材料である鉄鋼材料により爪部を構成すると、永久磁石の磁場が乱され、磁歪線上の磁歪の発生位置が不安定となり、地盤又は岩盤の変位を正確に計測できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、防水性能を高めつつ、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる変位計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による地盤又は岩盤用の変位計測装置は、地盤又は岩盤に形成された計測孔に設置され、計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置であって、計測孔に挿入される保護管と、保護管内に挿入される磁歪線と、保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように保護管の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットに設けられた永久磁石と、磁歪線にパルス状の電流を加え、パルス状の電流及び永久磁石の影響で磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備え、計測ターゲットは、流体圧力により膨張し、計測孔の内壁を圧迫してその内壁に固定される固定袋を有し、固定袋は、非磁性材料により構成され、永久磁石に隣接して配置されていることを特徴とする。
【0010】
このような地盤又は岩盤用の変位計測装置によれば、磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報が取得されるため、情報取得手段に計測ターゲットと連動する可動部が存在せず、情報取得手段の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲットは、固定袋が流体圧力によって膨張し、計測孔の内壁を圧迫することによって固定される。固定袋が計測孔の内壁を圧迫する力は、流体圧力によって自在に強めることができるため、計測ターゲットを計測孔の内壁に強く固定することができる。さらに、固定袋は非磁性材料により構成されているため、永久磁石に隣接して配置されていても永久磁石の磁場を乱すことがない。このため、永久磁石と固定袋とを隣接させて計測ターゲットを小型化し、磁歪線を短縮化すると共に、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0011】
ここで、保護管の外周には、計測ターゲットの管軸線方向の移動を規制するストッパー部が設けられていることが好ましい。この場合、計測孔内に保護管を挿入する作業時に、管軸線方向に保護管が移動すると、ストッパー部が計測ターゲットに当たり、その状態で保護管と計測ターゲットとを共に移動させることができる。このため、保護管と計測ターゲットとを共に計測孔に挿入し、保護管によって計測ターゲットを固定位置まで押し込むことができ、計測孔に変位計測装置を設置する作業が容易となる。
【0012】
また、磁歪線は、一本の棒状体を構成することが好ましい。この場合、磁歪線を挿入する作業が一本の棒状体を挿入する作業となるため、上方や側方に向かって形成された計測孔に対し磁歪線を挿入する作業が容易となる。また、計測孔の入口部に棒状体を固定した場合に、棒状体のうち計測ターゲットの移動範囲と対応する部分の位置が安定し、地盤又は岩盤の変位をより正確に計測することができる。
【0013】
また、棒状体は、磁歪線を形成する第1棒状部と、第1棒状部の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部と、を有し、第1棒状部の後端には、情報取得手段が封入されている接続部が設けられ、第2棒状部の先端は、接続部に螺着されることが好ましい。この場合、第2棒状部が磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料で構成され、棒状体全体の熱伸縮が抑制される。このため、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。また、第1棒状部の後端には、第2棒状部の先端を螺着するための接続部が設けられているため、第1棒状部と様々な長さの第2棒状部とを組み合わせることができ、磁歪線の位置を自在に調整することができる。さらに、情報取得手段が接続部内に封入されているため、情報取得手段の防水性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、防水性能を高めつつ、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる変位計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図2】変位計測装置の要部の詳細を示す断面図である。
【図3】計測ターゲットの後方斜視図である。
【図4】図2中のIV−IV断面図である。
【図5】図2中のV−V断面図である。
【図6】第1棒状部及び第2棒状部の詳細を示す断面図である。
【図7】変位計測装置を地盤又は岩盤の計測孔に挿入する工程を示す断面図である。
【図8】ガイドロッドを抜き取る工程を示す断面図である。
【図9】計測ターゲットを固定する工程を示す断面図である。
【図10】棒状体を固定する工程を示す断面図である。
【図11】保護管を固定する工程を示す断面図である。
【図12】グラウトを注入する工程を示す断面図である。
【図13】空洞の周囲の地盤又は岩盤に変位計測装置を配置した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置1は、地盤又は岩盤に形成された計測孔に挿入され、計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する。図1に示されるように、変位計測装置1は、計測孔に挿入される保護管2と、保護管2内に挿入される棒状体3と、保護管2の管軸線M方向に沿って移動可能となるように保護管2の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲット4と、計測孔への保護管2の挿入をガイドするガイドロッド41と、を備えている。
【0018】
計測ターゲット4は、保護管2の周囲に配置されている。また、計測ターゲット4は、保護管2の長さ方向に数ヶ所配置されている。各計測ターゲット4には、位置に関する情報として用いられる磁歪を発生させるための永久磁石5が設けられている。また、各計測ターゲット4には、流体圧力により膨張し、計測孔の内壁を圧迫してその内壁に固定される固定袋6が設けられている。各計測ターゲット4は、固定袋6を膨張させることにより、計測孔の内壁に固定される。各固定袋6は、非磁性材料からなり、永久磁石5に隣接して配置されている。各固定袋6には、流体を流入させて固定袋6を膨張させるための拡張チューブ7が接続されている。なお、非磁性材料としては、例えば銅を用いることができる。
【0019】
棒状体3は、磁歪材料からなる第1棒状部8と、第1棒状部8の端部に固定されたヘッド部9と、磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部10と、を有している。棒状体3は、計測ターゲット4と同数の第1棒状部8及びヘッド部9を有している。磁歪線をなす第1棒状部8は、棒状体3のうち、計測ターゲット4の移動範囲と対応する部分にそれぞれ配置される。ヘッド部9は、それぞれ第1棒状部8の後端に連設されている。棒状体3のうち、第1棒状部8及びヘッド部9以外の部分には、第2棒状部10が配置される。なお、磁歪材料は、例えば、鉄にテルビウム、ディスプロシウム等を混合したものである。また、磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料は、例えば、インバー材である。
【0020】
ヘッド部9には、情報取得手段として、振動/電気信号変換器であるプリアンプ21が封入されている。プリアンプ21は、メインアンプ(不図示)からの指令に応じ、第1棒状部8にパルス状の電流を加える。パルス状の電流は、第1棒状部8の周囲に磁場を生じる。計測ターゲット4に設けられた永久磁石5の近くでは、第1棒状部8の周囲に生じた磁場と永久磁石5の磁場とが相互に影響しあう。この影響により、第1棒状部8上に磁歪が生じる。第1棒状部8上に生じた磁歪は、この第1棒状部8の両端部に伝わる。プリアンプ21は、第1棒状部8の後端に伝わった磁歪を検出して電気信号に変換し、制御装置であるメインアンプに出力する。メインアンプでは、プリアンプ21が第1棒状部8にパルス状の電流を加え、磁歪の伝播を検出するまでの時間が取得され、この時間が磁歪の伝播時間であるとみなされる。そして、磁歪の伝播時間に磁歪の伝播速度を乗算し、第1棒状部8の後端に対する永久磁石5の位置が求められる。なお、メインアンプと各プリアンプ21とはケーブル11で接続されている。
【0021】
保護管2には、各計測ターゲット4の先端側への移動を規制するためのストッパー部12aと、各計測ターゲット4の後端側への移動を規制するためのストッパー部12bと、が設けられている。また、保護管2の先端側には、カップ状の先導部材13が連設されている。先導部材13は、先端側で開口し、計測孔への挿入時に計測孔内の切りくず等を掻き落として除去するものであり、掻き落とされた切りくず等は先導部材13のカップ内に収容される。先導部材13の外周部には、先端から後端に貫通したガイド孔14が形成されている。ガイド孔14には、計測孔への保護管2の挿入をガイドする上記ガイドロッド41が挿通される。先導部材13の底部には、後述のグラウトを注入するための注入チューブ15が接続されている。
【0022】
図2〜図5には、図1の計測ターゲット4の詳細な構成が示されている。図2及び図3に示されるように、計測ターゲット4は、保護管2の挿入が可能な挿通孔16が形成された筒状体17を有している。筒状体17は、永久磁石5が固定された位置検出用筒部18と、位置検出用筒部18の先端に連設されて固定袋6が固定された固定袋用筒部19と、を含んでいる。
【0023】
図3及び図4に示されるように、位置検出用筒部18には、複数の永久磁石5が周方向に並んで埋設されている。また、位置検出用筒部18の周方向の一部には、拡張チューブ7、ガイドロッド41及び注入チューブ15を外側から収容するための逃部22が形成されている。
【0024】
図3及び図5に示されるように、固定袋用筒部19には、外周を囲むように固定袋6が取り付けられている。固定袋用筒部19のうち、固定袋6に囲まれていない部分には、拡張チューブ7、ガイドロッド41及び注入チューブ15をそれぞれ外側から収容するための溝部23〜25が周方向に並んで形成されている。溝部23〜25の位置は、位置検出用筒部18の逃部22の位置と対応している。拡張チューブ7は、固定袋6の先端側から引き出され、固定袋用筒部19の先方で折り返され、溝部23及び逃部22を通って計測ターゲット4の後方に引き出されている。なお、溝部23及び逃部22には、先方に配置されている他の計測ターゲット4からの拡張チューブ7も収容されている。
【0025】
図6に示されるように、第1棒状部8と、第1棒状部8の後端に連設されたヘッド部9と、は一体化されて磁歪線ユニット33を構成している。ヘッド部9は、プリアンプ21を内蔵するケース37を有している。ケース37の後端から突出するケーブル引出部38及びケーブル11の周囲は、例えば樹脂で固められ、モールド部39を構成している。このモールド部39により、ケーブル引出部38からの水の浸入が防止され、プリアンプ21がヘッド部9に封入されている。
【0026】
磁歪線ユニット33は、第2棒状部10と分離可能となっている。ヘッド部9のモールド部39の後端面には、棒状体3の中心軸線L方向に沿って延在する雌ねじ部26が形成されている。一方、第2棒状部10の先端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雄ねじ部27が形成されている。第2棒状部10の雄ねじ部27が、ヘッド部9の雌ねじ部26に螺着される。このように、ヘッド部9は、プリアンプ21が封入された接続部を構成している。なお、プリアンプ21からメインアンプへ向かうケーブル11は、モールド部39において、雌ねじ部26の位置を避けるように後方に引き出されている。
【0027】
また、第2棒状部10の後端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雌ねじ部28が形成されている。一方、第1棒状部8の先端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雄ねじ部29が形成されている。そして、第1棒状部8の雄ねじ部29が、第2棒状部10の雌ねじ部28に螺着される。
【0028】
図2に示されるように、保護管2は、複数の管本体30に分離可能となっている。管本体30の先端部には、先端側に向かって外径が徐々に小さくなる円錐台形状の外面が形成された一方の継手部31が設けられている。管本体30の後端部には、後端側に向かって内径が徐々に大きくなる円錐台形状の内面が形成された他方の継手部32が設けられている。そして、隣り合う管本体30同士は、一方の継手部31が他方の継手部32内に挿入され、圧着及び接着されることで連結されている。なお、管本体30は、例えば、塩化ビニル等で形成されている。
【0029】
また、保護管2の外周に固定されるストッパー部12a,12bは、リング状部材をなし、接着や溶着等により管本体30の外表面の所定位置に固定されている。ストッパー部12a,12bの間には、挿通孔16に管本体30が通された状態で計測ターゲット4が配置されている。ストッパー部12a,12bにより、管本体30の管軸線M方向に沿う計測ターゲット4の移動が規制されると共に、管本体30からの計測ターゲット4の脱落が防止される。
【0030】
以上のように構成された変位計測装置1を、地盤又は岩盤に形成された計測孔36に設置する手順を説明する。まず、図7に示されるように、計測孔36内にガイドロッド41を挿入し、ガイドロッド41をガイドにして変位計測装置1の挿入を開始する。挿入開始時点では、管本体30、磁歪線ユニット33、第2棒状部10は分離されており、挿入が進むにつれて継ぎ足される。この挿入過程では、計測ターゲット4を後側のストッパー部12bに当てておき、保護管2によって各計測ターゲット4を押し込む。各計測ターゲット4が固定位置に至ると変位計測装置1の挿入が完了する。変位計測装置1の挿入が完了すると、図8に示されるようにガイドロッド41を抜き去る。
【0031】
次に、図9に示されるように、拡張チューブ7に拡張用のポンプ34を接続し、例えば水などの流体を固定袋6に送り込む。固定袋6は、流体により膨張し、計測孔36の内壁に接触する。この固定袋6に、さらに所定の流体圧力をかけ続けることで、固定袋6が計測孔36の内壁を所定の力で圧迫し、計測ターゲット4が計測孔36の内壁にしっかりと固定される。
【0032】
次に、図10に示されるように、棒状体3及び保護管2を固定するための固定具35を計測孔36の入口部(後端部)に設置し、まず棒状体3の後端部を固定具35に固定する。この時点では、計測ターゲット4は、後側のストッパー部12bに当たっており、後側に移動できない状態となっている。そこで、図11に示されるように、保護管2を引き戻し、ストッパー部12aとストッパー部12bとの中心に計測ターゲット4を配置させ、ストッパー部12aとストッパー部12bとの間で計測ターゲット4が自由に動くことができるようにする。その後、保護管2の後端部を固定具35に固定する。
【0033】
次に、注入チューブ15を通し、計測孔36にグラウトを注入する。図12に示されるように、注入チューブ15の先端から排出されたグラウト42は、計測孔36の底部(先端部)から入口部に向かって流動し、計測孔36内に充填される。図12(b)に示されるように計測孔36の入口部までがグラウト42で満たされると、グラウト42の注入が終了する。グラウト42が乾燥すると、変位計測装置1の計測孔36への設置が完了する。
【0034】
変位計測装置1は、例えば、地下深くに形成された空洞やトンネルを囲む岩盤の変位を計測する際に用いられる。図13は、空洞40の周囲の地盤又は岩盤に放射状に形成された複数の計測孔に、それぞれ変位計測装置1が設置された状態を示している。
【0035】
以上に説明した変位計測装置1によれば、磁歪線をなす第1棒状部8上に生じる磁歪を利用して計測ターゲット4の位置に関する情報が取得されるため、情報取得手段であるプリアンプ21に計測ターゲット4と連動する可動部が存在せず、プリアンプ21の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲット4は、固定袋6が流体圧力によって膨張し、計測孔の内壁を圧迫することによって固定される。固定袋6が計測孔の内壁を圧迫する力は、流体圧力によって自在に強めることができるため、計測ターゲット4を計測孔の内壁に強く固定することができる。さらに、固定袋6は非磁性材料により構成されているため、永久磁石5に隣接して配置されていても永久磁石5の磁場を乱すことがない。このため、永久磁石5と固定袋6とを隣接させて計測ターゲット4を小型化し、第1棒状部8を短縮化すると共に、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0036】
保護管2の外周には、計測ターゲット4の管軸線M方向の移動を規制するストッパー部12a,12bが設けられており、計測孔内に保護管2を挿入する作業時に、管軸線M方向に保護管2が移動すると、後側のストッパー部12bが計測ターゲット4に当たり、その状態で保護管2と計測ターゲット4とを共に移動させることができる。このため、保護管2と計測ターゲット4とを共に計測孔に挿入し、保護管2によって計測ターゲット4を固定位置まで押し込むことができ、計測孔に変位計測装置1を設置する作業が容易となる。
【0037】
また、ストッパー部12a及び12bにより、計測ターゲット4の先端側への移動及び後端側への移動の両方が規制されているため、計測ターゲット4が保護管2から脱落することがなく、運搬を含む変位計測装置1の取り扱いが容易となる。
【0038】
磁歪線をなす第1棒状部8は、一本の棒状体3を構成し、磁歪線を挿入する作業が一本の棒状体3を挿入する作業となるため、上方や側方に向かって形成された計測孔に対し磁歪線を挿入する作業が容易となる。また、計測孔の入口部に棒状体3を固定した際に、棒状体3のうち計測ターゲット4の移動範囲と対応する部分の位置が安定し、地盤又は岩盤の変位をより正確に計測することができる。
【0039】
棒状体3は、磁歪線を形成する第1棒状部8と、第1棒状部8の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部10と、を有しており、第2棒状部10が磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料で構成され、棒状体3全体の熱伸縮が抑制される。このため、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0040】
第1棒状部8の後端には、接続部を構成するヘッド部9が設けられ、第2棒状部10の先端は、ヘッド部9に螺着されるため、第1棒状部8と様々な長さの第2棒状部10とを組み合わせることができ、磁歪線の位置を自在に調整することができる。
【0041】
また、第1棒状部8及びヘッド部9からなる磁歪線ユニット33は、第2棒状部10の後端に螺着されるため、磁歪線ユニット33と第2棒状部10とを自在に組み合わせ、磁歪線ユニット33の個数や位置の異なる様々な棒状体3を容易に構成することができる。
【0042】
さらに、プリアンプ21がヘッド部9内に封入されているため、プリアンプ21の防水性能をより高めることができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
ヘッド部9は、第1棒状部8の後端に連設されているが、第1棒状部8の先端に連設されていてもよい。この場合には、第1棒状部8の先端に対する永久磁石5の位置が計測される。
【0045】
固定袋用筒部19は、位置検出用筒部18の先端に連設されているが、位置検出用筒部18の後端に連設されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…変位計測装置、2…保護管、3…棒状体、4…計測ターゲット、5…永久磁石、6…固定袋、8…第1棒状部(磁歪線)、9…ヘッド部、10…第2棒状部、12a…ストッパー部、12b…ストッパー部、21…プリアンプ、26…雌ねじ部、27…雄ねじ部、M…管軸線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤又は岩盤に形成された計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野の変位計測装置としては、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備えたものが知られている。一般的な情報取得手段としては、計測ターゲットの位置を電気信号に変換する直動型ポテンショメータが挙げられる。直動型ポテンショメータは、計測ターゲットと連動する可動部分を有するため、この可動部分の防水性能を高めることが難しく、水の浸入により動作不良を生じるおそれがあった。
【0003】
上記可動部分を有さない変位計測装置としては、地盤用の変位計測装置であって、計測孔に挿入される保護管と、保護管内に挿入される磁歪線と、保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように保護管の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットに設けられた永久磁石と、磁歪線にパルス状の電流を加え、パルス状の電流及び永久磁石の影響で磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の地盤用の変位計測装置では、計測ターゲットは、外周に設けられた爪部によって計測孔の内壁に固定される。爪部は、計測ターゲットを計測孔に挿入する際に、内側に向かって押し付けられており、計測ターゲットを固定位置まで挿入した際に解放される。解放された爪部は、外側へ広がろうとする反発力によって計測孔の内壁に突き刺さり、計測ターゲットが計測孔の内壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3702461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の地盤用の変位計測装置では、情報取得手段が上記可動部分を有さないため、情報取得手段の防水性能を高めることができる。しかしながら、特許文献1の変位計測装置が硬い岩盤で用いられる場合には、計測孔の内壁が硬く、計測ターゲットの爪部が計測孔の内壁に突き刺さり難い。このため、計測ターゲットの固定が不完全となり、地盤又は岩盤の変位を正確に計測できないおそれがあった。
【0007】
これに対し、反発力が強い鉄鋼材料により爪部を構成することが考えられる。しかしながら、磁性材料である鉄鋼材料により爪部を構成すると、永久磁石の磁場が乱され、磁歪線上の磁歪の発生位置が不安定となり、地盤又は岩盤の変位を正確に計測できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、防水性能を高めつつ、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる変位計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による地盤又は岩盤用の変位計測装置は、地盤又は岩盤に形成された計測孔に設置され、計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置であって、計測孔に挿入される保護管と、保護管内に挿入される磁歪線と、保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように保護管の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、計測ターゲットに設けられた永久磁石と、磁歪線にパルス状の電流を加え、パルス状の電流及び永久磁石の影響で磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備え、計測ターゲットは、流体圧力により膨張し、計測孔の内壁を圧迫してその内壁に固定される固定袋を有し、固定袋は、非磁性材料により構成され、永久磁石に隣接して配置されていることを特徴とする。
【0010】
このような地盤又は岩盤用の変位計測装置によれば、磁歪線上に生じる磁歪を利用して計測ターゲットの位置に関する情報が取得されるため、情報取得手段に計測ターゲットと連動する可動部が存在せず、情報取得手段の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲットは、固定袋が流体圧力によって膨張し、計測孔の内壁を圧迫することによって固定される。固定袋が計測孔の内壁を圧迫する力は、流体圧力によって自在に強めることができるため、計測ターゲットを計測孔の内壁に強く固定することができる。さらに、固定袋は非磁性材料により構成されているため、永久磁石に隣接して配置されていても永久磁石の磁場を乱すことがない。このため、永久磁石と固定袋とを隣接させて計測ターゲットを小型化し、磁歪線を短縮化すると共に、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0011】
ここで、保護管の外周には、計測ターゲットの管軸線方向の移動を規制するストッパー部が設けられていることが好ましい。この場合、計測孔内に保護管を挿入する作業時に、管軸線方向に保護管が移動すると、ストッパー部が計測ターゲットに当たり、その状態で保護管と計測ターゲットとを共に移動させることができる。このため、保護管と計測ターゲットとを共に計測孔に挿入し、保護管によって計測ターゲットを固定位置まで押し込むことができ、計測孔に変位計測装置を設置する作業が容易となる。
【0012】
また、磁歪線は、一本の棒状体を構成することが好ましい。この場合、磁歪線を挿入する作業が一本の棒状体を挿入する作業となるため、上方や側方に向かって形成された計測孔に対し磁歪線を挿入する作業が容易となる。また、計測孔の入口部に棒状体を固定した場合に、棒状体のうち計測ターゲットの移動範囲と対応する部分の位置が安定し、地盤又は岩盤の変位をより正確に計測することができる。
【0013】
また、棒状体は、磁歪線を形成する第1棒状部と、第1棒状部の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部と、を有し、第1棒状部の後端には、情報取得手段が封入されている接続部が設けられ、第2棒状部の先端は、接続部に螺着されることが好ましい。この場合、第2棒状部が磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料で構成され、棒状体全体の熱伸縮が抑制される。このため、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。また、第1棒状部の後端には、第2棒状部の先端を螺着するための接続部が設けられているため、第1棒状部と様々な長さの第2棒状部とを組み合わせることができ、磁歪線の位置を自在に調整することができる。さらに、情報取得手段が接続部内に封入されているため、情報取得手段の防水性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、防水性能を高めつつ、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる変位計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図2】変位計測装置の要部の詳細を示す断面図である。
【図3】計測ターゲットの後方斜視図である。
【図4】図2中のIV−IV断面図である。
【図5】図2中のV−V断面図である。
【図6】第1棒状部及び第2棒状部の詳細を示す断面図である。
【図7】変位計測装置を地盤又は岩盤の計測孔に挿入する工程を示す断面図である。
【図8】ガイドロッドを抜き取る工程を示す断面図である。
【図9】計測ターゲットを固定する工程を示す断面図である。
【図10】棒状体を固定する工程を示す断面図である。
【図11】保護管を固定する工程を示す断面図である。
【図12】グラウトを注入する工程を示す断面図である。
【図13】空洞の周囲の地盤又は岩盤に変位計測装置を配置した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る地盤又は岩盤用の変位計測装置1は、地盤又は岩盤に形成された計測孔に挿入され、計測孔の深さ方向で地盤又は岩盤の変位を計測する。図1に示されるように、変位計測装置1は、計測孔に挿入される保護管2と、保護管2内に挿入される棒状体3と、保護管2の管軸線M方向に沿って移動可能となるように保護管2の周囲に配置され、計測孔の内壁に固定される計測ターゲット4と、計測孔への保護管2の挿入をガイドするガイドロッド41と、を備えている。
【0018】
計測ターゲット4は、保護管2の周囲に配置されている。また、計測ターゲット4は、保護管2の長さ方向に数ヶ所配置されている。各計測ターゲット4には、位置に関する情報として用いられる磁歪を発生させるための永久磁石5が設けられている。また、各計測ターゲット4には、流体圧力により膨張し、計測孔の内壁を圧迫してその内壁に固定される固定袋6が設けられている。各計測ターゲット4は、固定袋6を膨張させることにより、計測孔の内壁に固定される。各固定袋6は、非磁性材料からなり、永久磁石5に隣接して配置されている。各固定袋6には、流体を流入させて固定袋6を膨張させるための拡張チューブ7が接続されている。なお、非磁性材料としては、例えば銅を用いることができる。
【0019】
棒状体3は、磁歪材料からなる第1棒状部8と、第1棒状部8の端部に固定されたヘッド部9と、磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部10と、を有している。棒状体3は、計測ターゲット4と同数の第1棒状部8及びヘッド部9を有している。磁歪線をなす第1棒状部8は、棒状体3のうち、計測ターゲット4の移動範囲と対応する部分にそれぞれ配置される。ヘッド部9は、それぞれ第1棒状部8の後端に連設されている。棒状体3のうち、第1棒状部8及びヘッド部9以外の部分には、第2棒状部10が配置される。なお、磁歪材料は、例えば、鉄にテルビウム、ディスプロシウム等を混合したものである。また、磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料は、例えば、インバー材である。
【0020】
ヘッド部9には、情報取得手段として、振動/電気信号変換器であるプリアンプ21が封入されている。プリアンプ21は、メインアンプ(不図示)からの指令に応じ、第1棒状部8にパルス状の電流を加える。パルス状の電流は、第1棒状部8の周囲に磁場を生じる。計測ターゲット4に設けられた永久磁石5の近くでは、第1棒状部8の周囲に生じた磁場と永久磁石5の磁場とが相互に影響しあう。この影響により、第1棒状部8上に磁歪が生じる。第1棒状部8上に生じた磁歪は、この第1棒状部8の両端部に伝わる。プリアンプ21は、第1棒状部8の後端に伝わった磁歪を検出して電気信号に変換し、制御装置であるメインアンプに出力する。メインアンプでは、プリアンプ21が第1棒状部8にパルス状の電流を加え、磁歪の伝播を検出するまでの時間が取得され、この時間が磁歪の伝播時間であるとみなされる。そして、磁歪の伝播時間に磁歪の伝播速度を乗算し、第1棒状部8の後端に対する永久磁石5の位置が求められる。なお、メインアンプと各プリアンプ21とはケーブル11で接続されている。
【0021】
保護管2には、各計測ターゲット4の先端側への移動を規制するためのストッパー部12aと、各計測ターゲット4の後端側への移動を規制するためのストッパー部12bと、が設けられている。また、保護管2の先端側には、カップ状の先導部材13が連設されている。先導部材13は、先端側で開口し、計測孔への挿入時に計測孔内の切りくず等を掻き落として除去するものであり、掻き落とされた切りくず等は先導部材13のカップ内に収容される。先導部材13の外周部には、先端から後端に貫通したガイド孔14が形成されている。ガイド孔14には、計測孔への保護管2の挿入をガイドする上記ガイドロッド41が挿通される。先導部材13の底部には、後述のグラウトを注入するための注入チューブ15が接続されている。
【0022】
図2〜図5には、図1の計測ターゲット4の詳細な構成が示されている。図2及び図3に示されるように、計測ターゲット4は、保護管2の挿入が可能な挿通孔16が形成された筒状体17を有している。筒状体17は、永久磁石5が固定された位置検出用筒部18と、位置検出用筒部18の先端に連設されて固定袋6が固定された固定袋用筒部19と、を含んでいる。
【0023】
図3及び図4に示されるように、位置検出用筒部18には、複数の永久磁石5が周方向に並んで埋設されている。また、位置検出用筒部18の周方向の一部には、拡張チューブ7、ガイドロッド41及び注入チューブ15を外側から収容するための逃部22が形成されている。
【0024】
図3及び図5に示されるように、固定袋用筒部19には、外周を囲むように固定袋6が取り付けられている。固定袋用筒部19のうち、固定袋6に囲まれていない部分には、拡張チューブ7、ガイドロッド41及び注入チューブ15をそれぞれ外側から収容するための溝部23〜25が周方向に並んで形成されている。溝部23〜25の位置は、位置検出用筒部18の逃部22の位置と対応している。拡張チューブ7は、固定袋6の先端側から引き出され、固定袋用筒部19の先方で折り返され、溝部23及び逃部22を通って計測ターゲット4の後方に引き出されている。なお、溝部23及び逃部22には、先方に配置されている他の計測ターゲット4からの拡張チューブ7も収容されている。
【0025】
図6に示されるように、第1棒状部8と、第1棒状部8の後端に連設されたヘッド部9と、は一体化されて磁歪線ユニット33を構成している。ヘッド部9は、プリアンプ21を内蔵するケース37を有している。ケース37の後端から突出するケーブル引出部38及びケーブル11の周囲は、例えば樹脂で固められ、モールド部39を構成している。このモールド部39により、ケーブル引出部38からの水の浸入が防止され、プリアンプ21がヘッド部9に封入されている。
【0026】
磁歪線ユニット33は、第2棒状部10と分離可能となっている。ヘッド部9のモールド部39の後端面には、棒状体3の中心軸線L方向に沿って延在する雌ねじ部26が形成されている。一方、第2棒状部10の先端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雄ねじ部27が形成されている。第2棒状部10の雄ねじ部27が、ヘッド部9の雌ねじ部26に螺着される。このように、ヘッド部9は、プリアンプ21が封入された接続部を構成している。なお、プリアンプ21からメインアンプへ向かうケーブル11は、モールド部39において、雌ねじ部26の位置を避けるように後方に引き出されている。
【0027】
また、第2棒状部10の後端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雌ねじ部28が形成されている。一方、第1棒状部8の先端部には、中心軸線L方向に沿って延在する雄ねじ部29が形成されている。そして、第1棒状部8の雄ねじ部29が、第2棒状部10の雌ねじ部28に螺着される。
【0028】
図2に示されるように、保護管2は、複数の管本体30に分離可能となっている。管本体30の先端部には、先端側に向かって外径が徐々に小さくなる円錐台形状の外面が形成された一方の継手部31が設けられている。管本体30の後端部には、後端側に向かって内径が徐々に大きくなる円錐台形状の内面が形成された他方の継手部32が設けられている。そして、隣り合う管本体30同士は、一方の継手部31が他方の継手部32内に挿入され、圧着及び接着されることで連結されている。なお、管本体30は、例えば、塩化ビニル等で形成されている。
【0029】
また、保護管2の外周に固定されるストッパー部12a,12bは、リング状部材をなし、接着や溶着等により管本体30の外表面の所定位置に固定されている。ストッパー部12a,12bの間には、挿通孔16に管本体30が通された状態で計測ターゲット4が配置されている。ストッパー部12a,12bにより、管本体30の管軸線M方向に沿う計測ターゲット4の移動が規制されると共に、管本体30からの計測ターゲット4の脱落が防止される。
【0030】
以上のように構成された変位計測装置1を、地盤又は岩盤に形成された計測孔36に設置する手順を説明する。まず、図7に示されるように、計測孔36内にガイドロッド41を挿入し、ガイドロッド41をガイドにして変位計測装置1の挿入を開始する。挿入開始時点では、管本体30、磁歪線ユニット33、第2棒状部10は分離されており、挿入が進むにつれて継ぎ足される。この挿入過程では、計測ターゲット4を後側のストッパー部12bに当てておき、保護管2によって各計測ターゲット4を押し込む。各計測ターゲット4が固定位置に至ると変位計測装置1の挿入が完了する。変位計測装置1の挿入が完了すると、図8に示されるようにガイドロッド41を抜き去る。
【0031】
次に、図9に示されるように、拡張チューブ7に拡張用のポンプ34を接続し、例えば水などの流体を固定袋6に送り込む。固定袋6は、流体により膨張し、計測孔36の内壁に接触する。この固定袋6に、さらに所定の流体圧力をかけ続けることで、固定袋6が計測孔36の内壁を所定の力で圧迫し、計測ターゲット4が計測孔36の内壁にしっかりと固定される。
【0032】
次に、図10に示されるように、棒状体3及び保護管2を固定するための固定具35を計測孔36の入口部(後端部)に設置し、まず棒状体3の後端部を固定具35に固定する。この時点では、計測ターゲット4は、後側のストッパー部12bに当たっており、後側に移動できない状態となっている。そこで、図11に示されるように、保護管2を引き戻し、ストッパー部12aとストッパー部12bとの中心に計測ターゲット4を配置させ、ストッパー部12aとストッパー部12bとの間で計測ターゲット4が自由に動くことができるようにする。その後、保護管2の後端部を固定具35に固定する。
【0033】
次に、注入チューブ15を通し、計測孔36にグラウトを注入する。図12に示されるように、注入チューブ15の先端から排出されたグラウト42は、計測孔36の底部(先端部)から入口部に向かって流動し、計測孔36内に充填される。図12(b)に示されるように計測孔36の入口部までがグラウト42で満たされると、グラウト42の注入が終了する。グラウト42が乾燥すると、変位計測装置1の計測孔36への設置が完了する。
【0034】
変位計測装置1は、例えば、地下深くに形成された空洞やトンネルを囲む岩盤の変位を計測する際に用いられる。図13は、空洞40の周囲の地盤又は岩盤に放射状に形成された複数の計測孔に、それぞれ変位計測装置1が設置された状態を示している。
【0035】
以上に説明した変位計測装置1によれば、磁歪線をなす第1棒状部8上に生じる磁歪を利用して計測ターゲット4の位置に関する情報が取得されるため、情報取得手段であるプリアンプ21に計測ターゲット4と連動する可動部が存在せず、プリアンプ21の防水性能を高めることができる。また、計測ターゲット4は、固定袋6が流体圧力によって膨張し、計測孔の内壁を圧迫することによって固定される。固定袋6が計測孔の内壁を圧迫する力は、流体圧力によって自在に強めることができるため、計測ターゲット4を計測孔の内壁に強く固定することができる。さらに、固定袋6は非磁性材料により構成されているため、永久磁石5に隣接して配置されていても永久磁石5の磁場を乱すことがない。このため、永久磁石5と固定袋6とを隣接させて計測ターゲット4を小型化し、第1棒状部8を短縮化すると共に、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0036】
保護管2の外周には、計測ターゲット4の管軸線M方向の移動を規制するストッパー部12a,12bが設けられており、計測孔内に保護管2を挿入する作業時に、管軸線M方向に保護管2が移動すると、後側のストッパー部12bが計測ターゲット4に当たり、その状態で保護管2と計測ターゲット4とを共に移動させることができる。このため、保護管2と計測ターゲット4とを共に計測孔に挿入し、保護管2によって計測ターゲット4を固定位置まで押し込むことができ、計測孔に変位計測装置1を設置する作業が容易となる。
【0037】
また、ストッパー部12a及び12bにより、計測ターゲット4の先端側への移動及び後端側への移動の両方が規制されているため、計測ターゲット4が保護管2から脱落することがなく、運搬を含む変位計測装置1の取り扱いが容易となる。
【0038】
磁歪線をなす第1棒状部8は、一本の棒状体3を構成し、磁歪線を挿入する作業が一本の棒状体3を挿入する作業となるため、上方や側方に向かって形成された計測孔に対し磁歪線を挿入する作業が容易となる。また、計測孔の入口部に棒状体3を固定した際に、棒状体3のうち計測ターゲット4の移動範囲と対応する部分の位置が安定し、地盤又は岩盤の変位をより正確に計測することができる。
【0039】
棒状体3は、磁歪線を形成する第1棒状部8と、第1棒状部8の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部10と、を有しており、第2棒状部10が磁歪材料よりも熱伸縮し難い材料で構成され、棒状体3全体の熱伸縮が抑制される。このため、地盤又は岩盤の変位を正確に計測することができる。
【0040】
第1棒状部8の後端には、接続部を構成するヘッド部9が設けられ、第2棒状部10の先端は、ヘッド部9に螺着されるため、第1棒状部8と様々な長さの第2棒状部10とを組み合わせることができ、磁歪線の位置を自在に調整することができる。
【0041】
また、第1棒状部8及びヘッド部9からなる磁歪線ユニット33は、第2棒状部10の後端に螺着されるため、磁歪線ユニット33と第2棒状部10とを自在に組み合わせ、磁歪線ユニット33の個数や位置の異なる様々な棒状体3を容易に構成することができる。
【0042】
さらに、プリアンプ21がヘッド部9内に封入されているため、プリアンプ21の防水性能をより高めることができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
ヘッド部9は、第1棒状部8の後端に連設されているが、第1棒状部8の先端に連設されていてもよい。この場合には、第1棒状部8の先端に対する永久磁石5の位置が計測される。
【0045】
固定袋用筒部19は、位置検出用筒部18の先端に連設されているが、位置検出用筒部18の後端に連設されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…変位計測装置、2…保護管、3…棒状体、4…計測ターゲット、5…永久磁石、6…固定袋、8…第1棒状部(磁歪線)、9…ヘッド部、10…第2棒状部、12a…ストッパー部、12b…ストッパー部、21…プリアンプ、26…雌ねじ部、27…雄ねじ部、M…管軸線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤又は岩盤に形成された計測孔に設置され、前記計測孔の深さ方向で前記地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置であって、
前記計測孔に挿入される保護管と、
前記保護管内に挿入される磁歪線と、
前記保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように前記保護管の周囲に配置され、前記計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、
前記計測ターゲットに設けられた永久磁石と、
前記磁歪線にパルス状の電流を加え、前記パルス状の電流及び前記永久磁石の影響で前記磁歪線上に生じる磁歪を利用して前記計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備え、
前記計測ターゲットは、流体圧力により膨張し、前記計測孔の内壁を圧迫して前記内壁に固定される固定袋を有し、
前記固定袋は、非磁性材料により構成され、前記永久磁石に隣接して配置されていることを特徴とする地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項2】
前記保護管の外周には、前記計測ターゲットの前記管軸線方向の移動を規制するストッパー部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項3】
前記磁歪線は、一本の棒状体を構成することを特徴とする請求項1又は2記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項4】
前記棒状体は、前記磁歪線を形成する第1棒状部と、前記第1棒状部の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部と、を有し、
前記第1棒状部の後端には、前記情報取得手段が封入されている接続部が設けられ、
前記第2棒状部の先端は、前記接続部に螺着されることを特徴とする請求項3記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項1】
地盤又は岩盤に形成された計測孔に設置され、前記計測孔の深さ方向で前記地盤又は岩盤の変位を計測する変位計測装置であって、
前記計測孔に挿入される保護管と、
前記保護管内に挿入される磁歪線と、
前記保護管の管軸線方向に沿って移動可能となるように前記保護管の周囲に配置され、前記計測孔の内壁に固定される計測ターゲットと、
前記計測ターゲットに設けられた永久磁石と、
前記磁歪線にパルス状の電流を加え、前記パルス状の電流及び前記永久磁石の影響で前記磁歪線上に生じる磁歪を利用して前記計測ターゲットの位置に関する情報を取得する情報取得手段と、を備え、
前記計測ターゲットは、流体圧力により膨張し、前記計測孔の内壁を圧迫して前記内壁に固定される固定袋を有し、
前記固定袋は、非磁性材料により構成され、前記永久磁石に隣接して配置されていることを特徴とする地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項2】
前記保護管の外周には、前記計測ターゲットの前記管軸線方向の移動を規制するストッパー部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項3】
前記磁歪線は、一本の棒状体を構成することを特徴とする請求項1又は2記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【請求項4】
前記棒状体は、前記磁歪線を形成する第1棒状部と、前記第1棒状部の材料よりも熱伸縮し難い材料からなる第2棒状部と、を有し、
前記第1棒状部の後端には、前記情報取得手段が封入されている接続部が設けられ、
前記第2棒状部の先端は、前記接続部に螺着されることを特徴とする請求項3記載の地盤又は岩盤用の変位計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−118019(P2012−118019A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270597(P2010−270597)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000206196)株式会社アサノ大成基礎エンジニアリング (12)
【出願人】(391007747)株式会社興和 (17)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000206196)株式会社アサノ大成基礎エンジニアリング (12)
【出願人】(391007747)株式会社興和 (17)
[ Back to top ]