説明

地盤改良工法

【課題】地盤改良領域全体におけるシリカ注入材の反応生成物の影響を低減し、コンクリート構造物または土中埋設物に接する硫酸イオンを減少させることにより、コンクリート構造物等を保護すると共に、シリカのゲル耐久性がより優れた固結を可能にする地盤改良工法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材系注入材を注入することにより地盤改良領域2を形成する地盤改良工法である。地盤改良領域の地下水面下2の固結土、或いは地盤開領域全体の硫酸イオン濃度の平均が10000ppm以下部分的になるように硫酸系非アルカリ性シリカ注入材を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物や土中埋設物の近傍部の耐震補強や、注入後掘削してコンクリート構造物を構築する地盤改良工法に関し、詳しくは、液状化対策工等の半永久的に耐久性が要求されると共にコンクリート構造物や土中埋設物に永続的に接触するため地中構造物に悪影響を及ぼさないことが要求される地盤改良に関する。特に、地盤改良領域全体におけるシリカ注入材の反応生成物の影響を低減し、コンクリート構造物または土中埋設物に接する硫酸イオンを減少させることにより、コンクリート構造物等を保護すると共に、地下水中における反応生成物を少量におさえて水質保全を可能にする地盤改良工法であって液状化対策工や河川付近の地盤注入等に優れた改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカを主剤とした薬液注入による地盤改良工事において、液状化対策工等、構造物近傍部を中心として広範囲に経済的に地盤改良を行う場合、長いゲル化時間で長期耐久性を得る事が必要となる。このためには水ガラス注入材(水ガラスグラウト)の劣化要因であるアルカリを酸で除去した酸性シリカ溶液を用いる事が必要となる。このため水ガラス中のアルカリを除去してシリカを固結する為の硬化剤として硫酸が使用されている。硫酸は、他の酸や塩に比べ添加量が少なくてもpHを変化させることができる。そのため、シリカ以外の水溶性反応副生成物の少ない地盤改良を行えることから、反応生成物の量から考えると周囲の環境に影響を与えにくいという利点を有している。
【0003】
しかし、建造物の液状化対策における薬液注入において、非アルカリ性の注入材を用いた地盤改良を行う際、ゲル化物中の水溶性反応副生成物である硫酸ソーダや過剰硫酸にかかわる硫酸根が溶出して、コンクリート構造物や土中埋設物に接触したり、地下水に溶出してコンクリート構造物や土中埋設物に接触し、コンクリート構造物や水質に悪影響を及ぼすことがある。ここで、本発明において、コンクリート構造物とはコンクリートからできた構造物であり、トンネル等の地下構造物、斜面の擁壁、護岸構造物、住宅、道路、タンク等の構造物等マンホール等や地中間等の地中埋設コンクリートを挙げることができる。
【0004】
図10にシリカ系溶液とpHの関係を示す。従来非アルカリ領域のシリカ溶液を得るためにそこで、水ガラスをイオン交換処理によってアルカリを除去した活性シリカ注入材、或いは活性シリカを増粒したシリカコロイド系注入材、或いはシリカコロイドと水ガラスと酸を混合した非アルカリ性シリカ注入材、水ガラスと酸を混合してなる酸性シリカ注入材、さらには酸性シリカにpH緩衡剤やアルカリ剤を加えて中性でゲル化時間を調整する非アルカリ性シリカ注入材が提案されている。
【0005】
かかるシリカ注入材は、ゲル化時間が長く、広範囲な浸透性に優れ、かつ、水ガラス注入材の劣化要因となるアルカリを酸で除去しているため、長いゲル化時間で長期耐久性に優れ、広範囲にわたって耐久性の優れた固結領域を得る点で、他のアルカリ領域の水ガラス注入材では得られない特異な特性を有している。
【0006】
上記酸としては、水ガラスのアルカリの中和を効率的に行うために硫酸、リン酸またはこれらの混合物が用いられ、あるいは硫酸塩、リン酸塩、アルミニウム塩等の酸性塩が用いられる。その際、硫酸は2価の酸であり、酸性領域では1価で反応するリン酸と比べ、少量の添加によりpHが調整できることから、注入材のpH調整剤として利便性に優れている。
【0007】
また、これら以外にも、水ガラス系注入材を用いた地盤の改良技術として、特許文献1には、水ガラスに金属イオン封鎖剤やリン酸系化合物を含有させる技術が開示されている。これによれば、コンクリート構造物等からのアルカリの溶出を防止し、水ガラスのゲル化物がアルカリによって溶解することを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2552612号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、硫酸イオンは、セメント硬化物中の水酸化カルシウムと反応してセッコウを生成し、生成したセッコウは、セメント硬化体中のカルシウムアルミネートやアルミン酸三カルシウム(C3A)の水和によりエトリンガイトを生成し、生成したエトリンガイトは、結晶を生成する際に大きな体積膨張を示し、この際の膨張圧によりコンクリートは損傷を受けることがすでに知られている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、硫酸を用いながら地盤改良領域全体におけるシリカ注入材の反応生成物の影響を低減しつつ、コンクリート構造物または土中埋設物に接する硫酸イオンを減少させることにより、コンクリート構造物等を保護することを可能にする地盤改良工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために以下の点につき鋭意検討を行った。
すなわち、本発明の地盤改良工法は、コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入するに当たって、硫酸を使用しながらコンクリートに悪影響を与えないことにより地盤改良領域を形成する地盤改良工法に関わる。
【0012】
従来、水ガラスを酸性領域でゲル化せしめに当たって酸として、硫酸やリン酸、或いは硫酸とリン酸を併用して、水ガラス中のアルカリを除去して得られた酸性〜中性の水ガラスグラウトを地盤に注入する方法はすでに本出願人によって発明されている。また、リン酸やリン酸塩等の金属イオン封鎖材を含む酸性水ガラスグラウトがコンクリート表面に被覆層を形成しコンクリートのアルカリの溶出を防ぐ事も本出願人によって報告されている。
【0013】
また本発明者は注入対象地盤において、非アルカリ性シリカ溶液に用いる酸として硫酸が最も効率的かつ経済的で反応生成物が少ない事に着目して中和剤として硫酸を有効成分として用いながら地下水面下の注入地盤における硫酸イオンの含有量がコンクリート構造物に悪影響を及ぼさない濃度とすることが重要となる。
【0014】
このため本出願人は長年にわたる種々の研究の結果、硫酸イオンの水溶液のコンクリートに対する影響、非アルカリ性シリカ溶液により固結した固結土の硫酸イオンの限度とコンクリートへの影響を明らかにし、かつ地盤中の固結土ならびに注入対象地盤全体における硫酸イオンのコンクリートに影響を生ずる濃度を明らかにした。コンクリートに対する硫酸イオンを含む注入材の影響は、単に硫酸や硫酸ナトリウム水溶液中に養生した場合の影響とは異なること、コンクリートに対する硫酸イオンの影響は注入材に含まれる硫酸イオンで決まるものではなく固結土(サンドゲル)から溶出される硫酸イオン濃度で決まること、さらに、硫酸を用いた非アルカリ性シリカ系注入材による固結土を水中に養生した場合の反応生成物である硫酸塩が遅かれ早かれ養生水中に殆んど全量溶出し、その速度は地盤条件や地下水条件、コンクリート構造物の位置関係や構造物に関係があることを見出した。
【0015】
即ち本発明者らは従来の酸性水ガラスグラウトのコンクリート構造物に対する影響を酸性水ガラスグラウトの組成即ち水ガラスと硫酸やリン酸の濃度や配合比率のみに着目していたことから発想を転換して、コンクリートに対する影響は酸性水ガラスによる固結土(サンドゲル)の硫酸イオンの濃度によるものであり更にそのサンドゲルから地盤改良領域の地下水中に溶出した水溶性反応生成物の濃度によるものであり、かつその濃度は注入条件、土質条件、地下水条件やコンクリート構造物との位置関係と関係があり、更にこれらとの関連のもとに経時的に濃度が変化することに着目した。そして、地下水面下における固結土の硫酸イオン濃度とコンクリート構造物への影響、並びに地盤改良領域全体における地下水中の硫酸イオン濃度の変化も考慮して本発明を完成した。またこれらの研究結果に基づいて硫酸イオンを含有する非アルカリ性シリカ系注入材を注入するに当たって、コンクリートに悪影響を与えない注入設計法と注入工法を発明するに至った。
【0016】
以上の考えに基づいて本出願人は地盤中における硫酸イオン濃度がコンクリートに影響を生じないようにする以下の手法を見出した。すなわち、
(1)非アルカリ性シリカ溶液を処方するに当たって硫酸以外の酸を用いて硫酸使用量を少なくする例えば塩化アルミニウム等の非硫酸系酸性塩等やリン酸やリン酸塩等でを硫酸単独で用いた場合、その水ガラス濃度で所定のゲルタイムを得るために必要な硫酸の量の一部を置き換えて硫酸と併用する。
(2)充分な量の硫酸を有効成分とする非アルカリ性シリカグラウトを地盤中に注入して地盤全体として注入対象地盤における地下水の硫酸イオンがコンクリートに影響を与えない濃度になるようにする。
【0017】
具体的には、(i)地盤改良領域に部分的に注入する。即ち、固結部の間に非固結部を介在させる。その後固結砂から注入していない部分に水溶性反応生成物である硫酸イオンが経時的に溶出して地下水により地盤改良領域全体に拡散、希釈する。これによって注入当時の固結部の硫酸イオン濃度に比べて全体の地盤改良領域では硫酸イオンの濃度が低くなる。この結果、注入液そのものの硫酸イオン濃度は高くても地盤全体の地下水の硫酸イオン濃度がコンクリートに悪影響を及ぼさない濃度まで低減する。
【0018】
(ii)上記(i)の硫酸系シリカグラウトを注入していない部分には非硫酸系シリカグラウト或いはより硫酸含有量の少ない低濃度硫酸系シリカグラウト或いはアルカリ系シリカグラウトを注入して地盤改良領域全体としてコンクリートに悪影響を及ぼさない硫酸イオン濃度となり、かつ地盤改良領域全体の注入固結効果を確保する。
【0019】
この場合、アルカリ性シリカ系注入材はゲル中に過剰のアルカリや未反応水ガラスが残存しているため耐久性は得られないが、硫酸系酸性シリカ注入材固結領域から溶出した過剰の酸がアルカリ性シリカ注入材の注入領域に侵入してきて過剰のアルカリを中和して耐久性を改善することができる。その結果、地盤改良領域全体を耐久性のある固結領域をとすることができる。また、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材としては、リン酸で水ガラス中のアルカリを除去したリン酸性シリカ系注入材が挙げられ、また、硫酸含有量の少ない低硫酸性シリカ系注入材としては、そのシリカ濃度で硫酸のみで所定のゲルタイムを得るために必要な硫酸の一部をリン酸に置き換えたものや、塩化アルミニウムや酸性リン酸ソーダ等の酸性塩に置換えた酸性シリカ系注入材、等を用いる事ができる。
【0020】
また、地盤改良領域が貝殻やコーラルサンド等石灰質の多い地盤であれば、そのカルシウム分が硫酸イオンと反応して硫酸カルシウムとなり硫酸イオンを固定する。また、硫酸イオンを含む酸性シリカ系注入材に硫酸イオンを固定する反応剤を加えて注入するか、注入前の地盤に、予めまたは注入後に硫酸イオンを固定する反応剤の水溶液を地盤中に注入する。この場合、地盤中にカルシウム塩が存在すると硫酸と反応して硫酸イオンが固定されて硫酸イオンが低減させることができる。上記反応剤としてはカルシウムやマグネシウムの炭酸塩や水酸化物を挙げることができる。
【0021】
硫酸系非アルカリ性シリカによる固結土が長期にわたって接触する可能性のある特にコンクリート近傍部あるいは接触部は、不透水性の固結領域によって拘束されている状態になっているため地下水によってサンドゲル中の硫酸イオンは溶出しにくく希釈されにくい。このため、コンクリート構造物と上記改良部にはさまれた領域にはコンクリート保護機能を有するリン酸系非アルカリ性シリカ系注入材の固結体や硫酸イオンを含まないシリカ系注入材による固結領域で硫酸イオンの影響を遮断する方法をとるこができる。特に、トンネルや共同溝のように中空コンクリート構造物はゲル化物の溶出水はコンクリートや亀裂を通して中空部に侵入した場合、注入液の硫酸イオン濃度が低くてもコンクリートも内部溶出水が蒸散して硫酸イオン濃度が濃縮する危険があるので外周部にはリン酸系非アルカリ性シリカ系注入材を注入することが好ましい。
【0022】
以下に本出願人による実証試験結果を説明する。通常水ガラスを有効成分として硫酸のみで水ガラス中のアルカリを除去する場合、水ガラスのモル比が2.8〜5.0で水ガラスに起因するシリカ濃度が2〜15質量%でゲル化時間が1時間〜20時間の場合、硫酸イオンの濃度は160000ppm〜8500ppmである。そこで硫酸イオンで50000ppm、10000ppm、8000ppm、5000ppm、3000ppm、0ppm(ブランク)の濃度の硫酸ナトリウム水溶液の養生水にコンクリート供試体(直径5cm×10cm)を浸漬し、一定期間養生後、ダイヤモンドカッターで切断しフェノールフタレインにて浸食深さを測定した。その結果、50000〜10000ppmのものは明らかに浸食深さが認められた、それに対し、5000ppm以下は殆ど浸透がみられなかった。8000ppmは1年後にいくらかに浸食がみられた。
【0023】
図1に硫酸ナトリウム水溶液にコンクリート供試体を浸漬し、硫酸イオンの濃度によるコンクリートの影響を観察した結果を示す。これより、1年以内でコンクリート構造物に影響を与える硫酸イオン濃度は10000以上が著しく、5000ppm以下は1年以上でも殆んどなく、1年後にコンクリートに影響を与える硫酸イオンの濃度は10000ppm〜5000ppmの間にある事がわかった。このため本出願人はさらに。3ヶ月、6ヶ月、1年後においてそれぞれの濃度のコンクリート供試体表面の状況を確認したところ硫酸イオン濃度が5000ppm以下ならば1年後でも変化はない。硫酸イオン濃度が10000ppmの場合では3ヶ月までは変化がないが6ヶ月後には膨張剥離が現れ1年後には顕著になる(表1)。
【0024】
【表1】

○:外観形状に異常なし
△:表面は膨張し、一部表面が剥離している
×:表面は膨張し、表面の剥離が著しい
【0025】
さらに本出願人は径5cm×高さ10cmのモルタル供試体を埋めこんだ同一体積の酸性硫酸系シリカグラウト(硫酸イオン濃度50000ppm)で固めたサンドゲルの供試体300mL(間隙率0.4、充填率1)をつくりこれを10倍の養生水中に養生して養生水中に溶出した硫酸イオン濃度を測定した。また溶出した硫酸イオンからサンドゲル中の硫酸イオン濃度を計算したものを図2に示す。これよりこのサンドゲルの大きさと養生条件下では3ヶ月以内にサンドゲル中のほぼ全量の硫酸イオンが溶出することが判った。
【0026】
上記結果により、固結体(サンドゲル)から硫酸イオンが地下水中に溶出して最終的には全体的に注入時の固結体が含有する硫酸イオン濃度より地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度は低くなる事が判った。実際の現場ではその固結体中の硫酸イオンの低減速度は固結体の大きさ、土質の透水性、地下水流の速度、建造物との位置関係等によるが最終的に硫酸イオンは地盤改良領域全体に拡散して均一化することが判る。一方固結体(サンドゲル)ゲル中に残存する硫酸イオン濃度の低減は地下水中の硫酸イオンの濃度の増大を意味する。そして最終的には地盤改良領域の硫酸イオン濃度は平均化することになる。したがって、注入対象地盤全体の地下水の硫酸濃度とコンクリートの影響が問題となる。
【0027】
コンクリート構造物の接触部等の直近部ではコンクリート構造物と周辺部の注入による不透水性の固結部で拘束されているためゲル中の硫酸イオンは希釈の程度が少なく長期間ゲル中に残存すると思われるが徐々に地盤改良領域の外周部から硫酸イオンが周辺地下水中に溶出して、地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度は低下し、それにつけてコンクリート構造物直近部の固結体中の硫酸イオンは少なくなる。しかしながら、コンクリート直近部の硫酸イオン濃度の低減速度は前述の要件によって異なるので不明確である。このため、コンクリート直近部や接触部では硫酸系非アルカリ性シリカグラウトの固結部分とコンクリート構造物の間の領域にリン酸系非アルカリ性シリカグラウトによる固結部を介在させることが好ましい。この場合、コンクリートを硫酸イオンがアタックする前にリン酸イオンがコンクリートに到達してコンクリートのカルシウム分と反応してシリカ分と共にキレート効果による防護皮膜をコンクリート表面に形成して硫酸イオンを遮断する。以上より本出願人は施工時の注入地盤全体の硫酸イオンが10000ppm以下にしておけば式1の各種要因により1年経るうちに地盤改良領域の硫酸イオン濃度はほぼ1/2に低減するものとした。そしてコンクリートに対する硫酸イオンの悪影響は半年〜1年で表れるので、地盤改良領域全体の平均硫酸イオン濃度が5000ppmの濃度に1年以内に低減すればコンクリートには悪影響をもたらさない事が推測された。
なお、発明に示される地盤改領域の硫酸イオン濃度は
地盤の単位体積中の硫酸イオン濃度X(ppm)=硫酸イオン量(mg)/地盤の単位体積10cm(1L)
で表わされる。
【0028】
かかる知見に基づき、本発明者らはさらに鋭意検討をした結果、下記構成とすることにより、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
本発明の地盤改良工法は、コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良工法において、
地下水面下の硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ注入材による固結土または地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度の平均値によりコンクリート構造物への影響を評価することを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の他の地盤改良工法は、コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良工法において、
前記地盤改良領域の地下水面下に含まれる硫酸イオン濃度の平均が10000ppm以下になるように注入することを特徴とするものである。ここで、非アルカリとはpHが8以下を意味する。
【0031】
本発明においては、水ガラスに起因するシリカ分が2〜15質量%であり、かつ、pHが1〜8であることが好ましい。また、本発明においては、前記地盤改良領域に含まれる硫酸イオン濃度の平均が8000ppm以下であることが好ましい。さらに、本発明においては、前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が、硫酸の他に非硫酸の酸性成分を含み硫酸イオン濃度の平均が20000ppm以下であることが好ましい。さらにまた、本発明においては、前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を、地盤改良領域に部分的に注入することが好ましい。また、本発明においては、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材または硫酸イオン含有量が前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材より少ない酸性シリカ系注入材を、前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が注入されていない部分に注入することが好ましい。さらに本発明においては、さらに硫酸イオンの固定化材としてカルシウム塩を有効成分とする注入材を注入することが好ましい。さらにまた、本発明においては、前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が、活性シリカまたはコロイダルシリカを含むことが好ましい。また、本発明においては、前記硫酸イオンを含まない非アルカリ性シリカ系注入材または硫酸イオン含有量が前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材より少ない酸性シリカ系注入材が、リン酸またはリン酸化合物を有効成分として含むことが好ましい。さらに、本発明においては、コンクリート構造物と前記硫酸イオンを含むシリカ系注入材を注入する領域の間の領域にリン酸若しくはリン酸化合物を有効成分とする注入材またはアルカリ系シリカ注入材を注入することが好ましい。
【0032】
以上の研究結果に基づき本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を以下の注入設計で注入することにより地盤固結領域を形成する地盤注入工法において、コンクリートに接する硫酸イオンを低減することでコンクリート保護構造を保護することを可能にした。
【0033】
地盤中に注入された注入液のゲル化物中における硫酸イオンのコンクリートに対する影響は容器中におけるコンクリートと硫酸イオンの関係とは異なる。本出願人は永年にわたる研究の結果、地盤中におけるゲル中の硫酸イオンの挙動を研究した。容器中における硫酸イオンのコンクリートに対する影響を基本にして以下の要因を考慮して地盤注入の設計を行って注入することが可能である事を見出し本発明を完成した。即ち、本出願人は硫酸イオンのコンクリートに対する影響は注入対象地盤における固結土、あるいは地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度であり、その濃度として以下の式(1)のXであることを見出し、コンクリートに対する要因を明らかにした。これにより硫酸系非アルカリ性シリカ注入材による固結土の注入後の改良地盤中の硫酸イオン濃度X(ppm)を次式を満たす地盤改良設計方法、およびそれを用いた非アルカリ性シリカ系注入材の注入方法の実用化が可能になった。
X1=n×A×a・・・式(1)
X1:地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度(ppm)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
X1≦W1・・・式(2)
【0034】
硫酸イオンの変動Yを考慮する場合は
X2=n×A×a×Y・・・式(3)
X2:地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度(ppm)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
Yは下記パラメータのいずれか一つまたは複数
Δ1:改良領域中の注入部分の割合(%)
Δ2:地下水中への硫酸イオンの溶出による経時的変化率(=α)Δ2=1−α
Δ3:地盤中への硫酸イオンの固定率(=β)Δ3=1−β
Δ4:注入材中の非硫酸系反応材による硫酸イオンの置換率
X≦W2・・・式(4)
W1,2は構造物の重要度、地盤条件、地下水条件、地中構造物との位置関係、地中構造物の構造によって定める。
【0035】
さらに、式(2)、式(4)においてW1,2≦10000ppmとする。
式1〜4においてn×Aを注入率B(単位土量当たりの注入量)としてもよい。例えば1mの土を改良するのに用いる注入量が0.4mとすると注入率B=0.4となる。
【0036】
<具体例>
硫酸系非アルカリ性シリカ注入材の注入後の改良地盤中の硫酸イオン濃度X(ppm)は、式(1)より求めることができる。
X1=n×A×a
ここで、nは土の間隙率(%)/100、Aは注入材による間隙充填率(%)/100、aはホモゲル(注入液に相当する)の硫酸イオン含有量(ppm)である。
例えばn=0.4、A=1、a=25000ppm、とすると、
X1=0.4×1×25000(ppm)
=10000(ppm)
【0037】
また、地盤改良領域の硫酸イオン濃度X(ppm)は以下の式で求められる。
X2=n×A×a×Y・・・式(3)
において、例えば、Δ1=40%に、上記の硫酸系シリカ注入材を使用した場合、改良地盤領域の硫酸イオンは、
Y=0.4×1×25000×0.4
=4000ppm
【0038】
これより、改良地盤中の固結土の硫酸イオン濃度は、10000ppmとなる。通常、水ガラスのシリカ濃度が4〜5質量%の場合、硫酸単独で用いる場合、硫酸イオン濃度が50000〜30000ppm必要である。従ってa=25000ppmにするには硫酸の不足分をリン酸やAlCl等で置換えれば良い事が判る。
a=20000ppm、n=0.4、A=1.01.0
X1=20000×0.4×0.1=8000ppm
一年後において硫酸イオンは40%低減すると、
Δ2=1−0.4=0.4
X2=20000×0.4×1.0×0.6=4800ppm<5000ppm
となり、5000ppmを下回り、コンクリート構造物に影響を与えない。
A=30000ppm、n=0.4、A=1.0、Δ2=1−0.4(リン酸又は塩化アルミニウムを硫酸イオンで40%置き換え)とすると、
X2=30000×0.4×1.0×(1−0.4)=7200ppm
上式においてΔ2=1−0.6(リン酸又は塩化アルミニウムを硫酸イオンで60%置き換え)とすると、
X2=30000×0.4×1.0×(1−0.6)=4800ppm≦5000ppm
【0039】
すなわち、本発明の地盤改良設計方法は、コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良設計方法において、
下記式(1)表わされる前記地盤改良領域の地下水面下の固結土の硫酸イオン濃度X(ppm)を、下記式(2)で評価することを特徴とする地盤改良設計方法である。
X=n×A×a・・・(1)
X≦W・・・(2)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
n×Aを注入率B(単位土量当たりの注入量)としてもよい
W:目的とする地盤改良領域中の硫酸イオンの平均濃度。
【0040】
硫酸イオンの変動Yを考慮する場合は、下記式(3)で表わされる改良地盤中の硫酸イオン濃度X(ppm)を、下記式(4)で評価することを特徴とする地盤改良設計方法。
X=n×A×a×Y・・・(3)
X≦W・・・(4)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
Yは下記パラメータΔ1〜Δ4のいずれか一つまたは複数であって、
Δ1:地盤改良領域中の改良地盤率(%)/100
Δ2:1−地下水中への硫酸イオンの溶出による経時的変化率α(%)/100
Δ3:1−地盤中への硫酸イオンの固定率β(%)/100
Δ4:非アルカリ性シリカ系注入材中の非硫酸系反応材による硫酸イオンの交換率(%)/100
n×Aを注入率B(単位土量当たりの注入量)としてもよい
W:目的とする地盤改良領域中の硫酸イオンの平均濃度。
【0041】
具体的には、図3に示す様に、地盤改良領域2を未改良領域3と改良領域4とが等しくなるように区切ることで、硫酸イオンを拡散させ5000ppm以下とすることもできる。また図3の未改良領域3に非硫酸系シリカ溶液を注入しても良い。例えば水ガラス−重ソー系のアルカリ系水ガラスグラウトやその他の水ガラス―無機塩、無機酸、有機系反応財等を未改良領域に注入してもよい。この場合、アルカリ系水ガラスグラウトはアルカリ領域で未反応水ガラスやアルカリが残存しているため耐久性はないが周辺部の過剰の酸がゲル中に侵入してアルカリを中和して耐久性を向上することができる。
【0042】
本発明においては、以上よりコンクリートに影響を与えない前記地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度の平均Xの値はW以下であるとすると、Wは10000ppm以下、好ましくは8000ppm以下さらに好ましくは5000ppm以下である。このXの値は地盤条件、地下水条件、コンクリート構造物の構造と位置関係、水質条件、土質条件等によって定める事ができる。また、前記地盤改良領域の硫酸系非アルカリ性シリカ注入材が注入されていない領域に、非硫非アルカリ性シリカ注入材或いはリン酸系注入材のように金属イオン封鎖材を含む注入材やアルカリ系シリカ注入材を注入することが好ましく、さらに、前記硫酸系非アルカリ性シリカ注入材はリン酸化合物または金属封鎖剤を含んでもよく、さらにまた、前記硫酸系非アルカリ性シリカ注入材に用いられるシリカ化合物は、水ガラス、活性シリカ或いはコロイダルシリカからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の非アルカリ性シリカ系注入材の注入方法は、地盤改良設計方法を用いて算出した前記Xが前記Wを満足するように注入条件を設計して非アルカリ性シリカ系注入材を注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、地盤改良領域全体におけるシリカ注入材の反応生成物の影響を低減し、コンクリート構造物または土中埋設物に接する硫酸イオンを減少させることにより、コンクリート構造物等地中埋設物を保護すると共に、反応生成物を少なくすることによって水質保全性にすぐれた地盤改良工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】硫酸イオン濃度とコンクリートの浸食深さとの関係を示すグラフである。
【図2】サンドゲルからの硫酸イオンの濃度変化を示すグラフである。
【図3】本発明の一好適な実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明の他の好適な実施の形態を示す断面図である。
【図5】シリカ注入材のゲルタイムとpHとの関係を表したグラフである。
【図6】硫酸イオンの移動の説明図である。
【図7】硫酸イオンの移動の説明図である。
【図8】硫酸イオンの移動の説明図である。
【図9】サンドゲル硫酸イオン濃度の変化を示すグラフである。
【図10】シリカグラウトのpH領域と水ガラス濃度とゲル化時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。図3は、本発明の一好適実施の形態を示す断面図である。図示するように、コンクリート構造物1の近傍の地盤改良領域2は、所定の幅を有する未改良地盤3と改良地盤4とに区切られている。図示例では、コンクリート構造物1に接する区画を未改良地盤3とし、未改良地盤3の外側に改良地盤4を設けており、これ以降、未改良地盤3と改良地盤4とが交互に設けられている。本発明の地盤改良工法においては、改良地盤4のみに硫酸系非アルカリ性シリカ注入材を注入する。なお、未改良地盤3および改良地盤4の幅は、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材中の硫酸イオンの濃度、注入量、硫酸イオンの土壌中の拡散の程度を考慮して、適宜設定することができる。なお、未改良領域3に非硫酸系グラウトを用い固結することができる。
【0047】
図4は、本発明の他の好適実施の形態を示す断面図である。図3では、未改良地盤3と改良地盤4とを深さ方向のみに区切っているが、図4に示す様に、コンクリート構造物11の近傍の地盤改良領域12を、さらに鉛直方向に区切って、未改良地盤13と改良地盤14としてもよい。なお、未改良地盤13および改良地盤14の鉛直方向の幅についても、やはり、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材中の硫酸イオンの濃度、注入量、硫酸イオンの土壌中の拡散の程度を考慮して、適宜設定すればよい。
【0048】
前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材は、図10に示すように、長いゲル化時間により、地盤中において広範囲に浸透し、かつ、改良地盤において高い強度を得るためには水ガラスと硫酸を有効成分として含有し、水ガラスに起因するシリカ分が2〜15質量%であり、かつ、pHが1〜8であることが好ましい。
【0049】
従来コンクリートに対する注入液の影響は注入材そのものの硫酸イオンや配合処方が主であった。それに対し、本発明者は永年にわたる研究の結果コンクリートに対する地盤中に注入された硫酸系注入材の硫酸イオンの影響は(1)硫酸系注入材の組成(2)コンクリートとの位置関係、地盤改良領域全体中の非注入部分の割合、硫酸イオンの地下水中の挙動、地下水状況と関係があることを見出し、本発明を完成した。即ち本発明者はゲル中の水溶性反応生成物は地下水中に溶出して地盤条件、施工条件によって濃度が経時的に増減してコンクリートの劣化も濃度と経時的に変化するからである。具体的には、図4に示す様に、地盤改良領域2を未改良領域3と改良領域4とが等しくなるように区切ることで、硫酸イオンを拡散させ5000ppm以下とすることができる。
【0050】
また、本発明においては、図3および4における未改良地盤3、13にアルカリ系シリカ注入材を注入することができる。図5に、シリカ注入材のゲルタイムとpHとの関係を表したグラフを示す。シリカ注入材は、図5に示すとおり、酸性、アルカリ領域では長時間のゲルタイムが得られるが、アルカリ領域でのゲル化は未反応のシリカが残るため強度発現が低い。これに対し、中性領域ではゲルタイムは短いが、反応副生成物が少なく強度の発現が高い。アルカリ系シリカ注入材である重曹系(非硫酸系)シリカ注入材は、シリカを塩による凝集効果によりゲル化させるものであり、アルカリ領域でゲル化し、かつ、硫酸イオンを含まない為コンクリートへの影響の少ない注入材である。しかし、アルカリ領域でゲル化する為、長期においてはシリカの溶脱が発生し、ゲルの強度低下が起こる。
【0051】
そこで、図3および図4の未改良地盤3、13にアルカリ系シリカ注入材を注入することにより、硫酸イオンを低減するとともに、改良地盤全体を固結できる。さらに、硫酸系シリカ注入材のゲル化物中の過剰の酸とアルカリ系シリカ注入材ゲル化物中に浸入し、アルカリシリカグラウトのゲル化物中の過剰アルカリとの中和が起き、経日的にpHが中性領域に移行して未反応シリカのゲル化が進み強度増加をもたらすことになる。
【0052】
本発明に係る硫酸系非アルカリ性シリカ注入材は、これに反応剤(硬化剤)を添加して所定のゲル化時間に調整してもよい。このようにして製造される水ガラス系注入材は地盤中に注入され、該地盤を固結する。このとき、この水ガラス系注入材は、同時に地盤中に先行して存在するコンクリート構造物やセメント硬化物(以下、コンクリート等という)の表面に防護被膜を形成し、コンクリート等の外部から内部への上述反応剤はもちろん、海水等の侵入を遮断し、かつコンクリート等の内部から外部へのアルカリの溶出を遮断する。この結果、上述の水ガラス系注入材に含有される反応剤によるコンクリート等の劣化や中性化が防止されるとともに、水ガラス系注入材ゲル化物もまた、セメント等からのアルカリによる影響も防止される。さらに、セメント等と前記水ガラス系注入材ゲル化物はその接触面で強固に結合するため、セメント等の中性化も防止するものである。
【0053】
上述の反応剤としては、酸性塩、炭酸塩、重炭酸塩、炭酸ガス、炭酸水、塩化物、アルミン酸塩、グリオキザール、エチレンカーボネートのような炭酸エステル、多価酢酸エステル等が挙げられ、さらにこの他、セメント、石灰、スラグ等も反応剤として単独で、または上記反応剤に併用して用いることができる。
【0054】
さらに、本発明においては、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材がリン酸化合物または金属封鎖剤を含むことが好ましい。リン酸化合物または金属封鎖剤は、地盤中に存在するコンクリート構造物等の主としてカルシウムやマグネシウムを取り込み、コンクリート構造物の表面に、シリカ溶液中のシリカおよびリンと、マグネシウムおよびカルシウムとからなる防護被膜(マスキングシリカ)を形成する。これにより、コンクリート構造物内部への硫酸イオンの浸入を防ぎ、かつ、コンクリート内部から外部へのアルカリの流出を防止することができる。その結果、コンクリートの劣化を抑制することができる。
【0055】
本発明に用いられるリン酸系化合物または金属封鎖剤は、キレート効果を有するものであり、例えば、リン酸、各種の酸性リン酸塩、中性リン酸塩、塩基性リン酸塩が挙げられ、テトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ヘキサメタリン酸塩、酸性ピロリン酸塩等の縮合リン酸塩類等を挙げることができ、縮合リン酸塩類がナトリウム塩であることが好ましく、非アルカリ性シリカ溶液を形成するリン酸化合物としては、ヘキサメタリン酸ソーダが特にコンクリート表面に強固なマスキングシリカを形成するため好ましい。また、金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルコン酸、酒石酸またはこれらの塩類等を挙げることができ、本発明においては、リン酸化合物がシリカ溶液の存在下でコンクリート表面に最も効果的なマスキングシリカを形成する。
【0056】
さらにまた、本発明においては、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材に用いられるシリカ化合物が、水ガラス、活性シリカおよびコロイダルシリカからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。ここで、水ガラスとしては水ガラス水溶液、これに酸、塩あるいは有機系反応剤、例えば、グリオキザール等のアルデヒド化合物、酢酸エステル、ジエステル、トリエステル、炭酸エステル等のエステル類を加えた水ガラス水溶液、あるいは水ガラスのアルカリを酸で中和して得られる中性〜非アルカリ性シリカ溶液、活性シリカ、シリカコロイド、ホワイトカーボン水溶液等が挙げられる。
【0057】
本発明において注入材に含まれる硫酸イオンを低減する方法としては、イオン交換法にて水ガラスよりNaイオンを除去した活性シリカや、活性シリカを濃縮することで得られるコロイダルシリカを用いることにより、シリカに由来するアルカリ成分であるNaイオンを少なくすることでpHを中性化する為に用いる硫酸の量を減らすことができる。コロイダルシリカはNaイオンを除去することにより、帯電しコロイド状に凝集するため、pH9付近を呈し、分子量が大きいため、少量の酸にてpHを中性付近に調整しても、水ガラスに比べ長いゲル化時間を保持することができる。
【0058】
活性シリカは、水ガラスをイオン交換樹脂またはイオン交換膜で処理して、水ガラス中のアルカリの一部または全部を除去して得られる。また、水ガラスと酸を混合してなる酸性水ガラスを、イオン交換樹脂またはイオン交換膜に通過させ、水ガラス中の塩の一部または全部を脱塩して得られたものであってもよい。さらに、活性シリカのシリカ濃度が低い場合には、加熱濃縮したり、コロイダルシリカ、水ガラス等を適宜に添加して、シリカ濃度を上げることもできる。活性シリカのシリカ濃度は、1〜8質量%、pHは2〜4である。
【0059】
かかる活性シリカは、シリカ粒径が1〜5nmに成長して数日後にはゲル化するが、苛性アルカリや水ガラス等のアルカリを加えて、アルカリ側のpHにすることにより安定化される。この安定化した活性シリカに、現場で酸や塩を加えてpHやゲル化時間を調整し、使用に供される。また、活性シリカに酸を加え、可使時間を長くしてゲル化時間を調製することもできる。この種の活性シリカはゲル化時間を長く調整できるのみならず、低濃度でもゲル化し、かつ固結後の耐久性にも優れている。粘度は水とほとんど変わらず、2cps以下である。
【0060】
また、コロイダルシリカはコロイド化されており、活性シリカをアルカリまたは水ガラスを加えて濃縮重合して、弱アルカリ領域に安定化して製造する。これにより、Na含有量が少ないことから中性付近のpHでも、ゲル化せず長時間安定し、また少ない反応剤でもゲル化することから、本発明に適している。
【0061】
かかるコロイダルシリカは、上記活性シリカを加熱することにより濃縮増粒し、pHを9〜10に調製して安定化して得られるが、pHが酸性〜中性であってもよい。このようにして得られたコロイダルシリカはシリカ濃度が5質量%以上、通常は30質量%程度であり、また、粒径は5〜20nmであるが、それ以上、例えば、100nm程度まで大きくすることができる。
【0062】
また、本発明における硫酸イオンの固定化剤としてはマグネシウム塩やカルシウム塩を一種または複数用い、好ましくはマグネシウム、カルシウムの、水酸化塩、またはカルシウム塩を用いる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
<実施例1>
地盤中で、未改良地盤と改良地盤を併設する場合の硫酸イオンの移動を模型地盤にて測定した。図6に示すように、水中にて長期養生したモルタル供試体(直径5cm×高さ10cm)を、直径11cmの密閉容器内に領域Aとして、表2に示す非アルカリ性シリカ系注入材を豊浦砂に混合し、間隙0.4、非アルカリ性シリカ系注入材による間隙充填率を1に調整したもので、厚さmcmで囲んだ。さらにその周辺を領域Bとして、湿砂にて厚さncmで囲み間隙0.4に調整した後、1年間室温養生した。非アルカリ性シリカ系注入材のシリカ溶液は3号水ガラスを用いた。領域Aの厚みmと領域Bの厚みnは表3に示す組合せで行った。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
1年経過後、コンクリート供試体を回収し一軸圧縮試験を行い、同期間水養生したコンクリート供試体と試験結果を比較した結果。表3に示す実施例1−1〜1−3においては同等の強度を発現し、実施例1−4においては強度の低下が若干見られたもののコンクリート供試体の外観に変化はなかった。比較例1−1、1−2はコンクリート表面にヒビ割れがみられ水養生したコンクリート供試体に比べ低い結果が得られた。領域A、Bそれぞれに含有する硫酸イオンを測定したところ、ほぼ同量の硫酸イオン量を示したことから、接した領域A,Bにおいて硫酸イオンの拡散が起こり、一年経過後において密閉容器内で硫酸イオン濃度が均一になったことがわかる。
【0067】
尚、この結果を下記式(1)に当てはめると、
X=n×α×a×A×Y・・・(1)
Y=Δ1
とすると
実施例1−1の場合
n=1、A=1、a=26150ppm、Δ1=34.5%となるため、
X=0.4×1×26150×0.345=3608.7ppmとなる。
同様に実施例1−2〜1−4、比較例1−1、1−2について、結果を表3に併記する。
【0068】
この結果より、地盤改良領域に部分的に硫酸系注入材を注入しても、硫酸イオンの拡散が経時的に起こり、硫酸イオン濃度が領域全体において均一化され、コンクリートへの影響を低減することがわかる。
【0069】
<実施例2>
さらに、実施例1において領域Bを下記表4に示す非アルカリ性シリカ系注入材を用い同様の実験を行った結果、実施例1−1と同様に実施例2−1〜2−3において強度低下がみられず、実施例2−4は外観に変化はないが強度低下がみられた。比較例2−1、2−2においてはヒビ割れがみられ強度低下がみられた。この実験により、地盤改良領域において一部を硫酸系注入材とし、それ以外を非アルカリ性シリカ系注入材を用いることで地盤改良領域全体を改良でき、かつ、硫酸イオンの影響を低減することができる。
【0070】
【表4】

【0071】
また、図6と実施例1,2の結果より、コンクリート供試体に接する地盤が一年経過後までに硫酸イオンが5000ppm以下に拡散することでコンクリートへ供試体の影響が低減できることがわかる。このためにはコンクリート近傍にリン酸化合物を含む非アルカリ性シリカ系注入材等の固結ゾーンを設けることで、硫酸イオンが拡散するまでの過程で、大量の硫酸イオンをコンクリート供試体が接することを回避できる。
【0072】
<実施例3>
厚さ10cm高さ30cm奥行き30cmのコンクリート供試体に接するように直径10cmの立方体に成形した非アルカリ性シリカ系注入材(配合2)を用いたサンドゲルのブロックと、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材(配合3)を用いたサンドゲルのブロックを図7のように、縦方向に3、横方向に3、深さ方向に3の合計27ブロック使用し、図格子状に組合せた。非アルカリ性シリカ系注入材を用いたブロックは14個、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材を用いたブロックは13個で、非アルカリ性シリカ系注入材の領域は140cm、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材の領域は130cmである。各注入材の配合を表5に示す。この時のブロックの間隙率は0.4、注入率は100%とした。
【0073】
【表5】

※1:硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材
※2:硫酸イオンを含まないシリカ系注入材
【0074】
1年後にコンクリートを地盤改良領域に接する位置と、地盤改良領域から離れた位置において直径5cm、高さ10cmの円筒に成形し供試体を作成し一軸圧縮強度測定を行った結果、地盤改良領域に接した位置のコンクリート供試体は同じコンクリートを水養生したものに比べ若干強度低下がみられたが、地盤改良領域から離れた位置の供試体は強度低下がみられなかった。YをΔ1として、得られた結果を式(1)に当てはめると、
n=1、A=1、a=35379.4ppm、Δ1=51.9%であるため、
X=0.4×1×35379.4×0.519=7344.8ppmとなる。
さらに、コンクリートへの影響を低減する為に非硫酸系注入材に75%リン酸を16ml加えpH3に調整したところ、コンクリートへの影響は水養生のものと同程度の強度が得られた。これより、リン酸のコンクリート保護効果によりコンクリートへの影響を低減できることがわかる。
【0075】
<実施例4>
拡散の経時変化による硫酸イオンの予測
図8に示すように実施例1の実験装置を横60cm、奥行き30cmの水槽に設置し、コンクリート遠方に開放領域として厚さ20cm高さ30cm奥行き30cm、間隙率0.4の未改良地盤の湿砂を設けた。この時、非アルカリ性シリカ系注入材の領域は140cm、硫酸イオンを含まないシリカ系注入材の領域は130cm、未改良地盤は180cmである。また、コンクリートと周辺にサンドゲルのブロックで囲まれている非アルカリ性シリカ系注入材ブロックAにおける硫酸イオンの変化を1、6、12ヶ月後に測定した結果を図9に示す。
【0076】
図9よりブロックAの硫酸イオンは初期値において約14100ppm、1ヶ月目において約10450ppmに低下し低減率は74.1%、6ヶ月目において約5100ppmに低下し低減率は36.2%、12ヶ月目においては約4400ppmに低下し低減率は31.2%であった。十分に硫酸の拡散が起きた一年後においては、
n=1、A=1、a=35379.4ppm、Δ1=140/(140+130+180)=31.1%となるため、
X=0.4×1×35379.4×0.311=4401.2ppmとなる。
【0077】
また、1ヶ月目および6ヶ月目の低減率を用いてY=Δ2を算出し、式(1)に適用すると、1カ月目においては、
Δ2=74.1%であり、
X=0.4×1×35379.4×0.741=10486.5ppmとなる。
養生開始6ヶ月後においては
Δ2=36.2%であり、
X==0.4×1×35379.4×0.362=5122.9ppmとなる。
【0078】
1年後にコンクリートを改良地盤に接する位置と、改良地盤から離れた位置において直径5cm高さ10cmの円筒に成形し供試体を作成し一軸圧縮強度測定を行った結果、改良地盤に接した位置のコンクリート供試体、改良地盤から離れた位置の供試体は同じコンクリートを水養生したものに比べ同様の強度が得られ、強度低下がみられなかった。
【0079】
<実施例5>
硫酸イオン固定材を用いることにより硫酸イオンを低減する方法
炭酸カルシウムは硫酸イオンを含まないシリカ系注入材中では反応に影響しないが、硫酸イオンと結合することで硫酸カルシウムを生成しコンクリート構造物への影響を低減する。図7において硫酸イオンを含まないシリカ系注入材に硫酸イオン固定材として炭酸カルシウム10gを混合した。配合を表6に示す。
【0080】
【表6】

※2:硫酸イオンを含まない非アルカリ性シリカ系注入材
※3:炭酸カルシウム
【0081】
室内試験において等量の炭酸カルシウムと硫酸イオンが反応すると硫酸イオンの50〜70%程度が固定化される実験結果が得られたことより、式(1)に当てはめると、
Y=Δ1×Δ3
Δ1:地盤改良領域中の改良地盤率(%)/100
Δ3:1−地盤中への硫酸イオンの固定率β(%)/100
n=1、A=1、a=35379.4ppm、Δ1=51.9%、Δ3=50〜70%となるため、
X=0.4×1×35379.4×0.519×0.5〜0.7=3672.4〜5141.3ppmとなる。
【0082】
本実施例において一年後にコンクリートを改良地盤に接する位置と、改良地盤から離れた位置において直径5cm高さ10cmの円筒に成形し供試体を作成し一軸圧縮強度測定を行った結果、改良地盤に接した位置のコンクリート供試体、改良地盤から離れた位置の供試体は同じコンクリートを水養生したものに比べ同様の強度が得られ、強度低下がみられなかった。
【0083】
<実施例6>
注入材中の硫酸イオンを含まないシリカ系注入材により硫酸イオンの交換することにより硫酸イオンを低減する方法
表4の非アルカリ性シリカ系注入材において、非アルカリ性シリカ系注入材を硫酸イオン量で50%減らし5.75mLとし、非硫酸系反応剤として75%リン酸10mlを用いで同様のpHとゲルタイムに調整した。配合は下記表7に示すとおりである。
【0084】
【表7】

※1:硫酸イオンを含まない非アルカリ性シリカ系注入材
【0085】
式(1)にあてはめると、
Y=Δ1×Δ4
Δ1:地盤改良領域中の改良地盤率(%)/100
Δ4::非アルカリ性シリカ系注入材中の非硫酸系反応材による硫酸イオンの交換率(%)/100
n=1、A=1、a=35379.4ppm、Δ1=51.9%、Δ3=50%となるため、
X=0.4×1×35379.4×0.519×0.5=3672.4となる。
【0086】
本実施例において一年後にコンクリートを改良領域に接する位置と、改良地盤から離れた位置において直径5cm高さ10cmの円筒に成形し供試体を作成し一軸圧縮強度測定を行った結果、改良地盤に接した位置のコンクリート供試体、改良地盤から離れた位置の供試体は同じコンクリートを水養生したものに比べ同様の強度が得られ、強度低下がみられなかった。
【0087】
以上の結果から、本発明によれば、地盤改良領域全体における非アルカリ性シリカ系注入材の反応生成物の影響を低減し、コンクリート構造物または土中埋設物に接する硫酸イオンを減少させることにより、コンクリート構造物等を保護すると共に、シリカのゲル耐久性がより優れた固結を可能にする地盤改良工法を提供することが可能であることが確かめられた。
【0088】
1、11 コンクリート構造物
2、12 地盤改良領域
3、13 未改良地盤
4、14 改良地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良工法において、
地下水面下の硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ注入材による固結土または地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度の平均値によりコンクリート構造物への影響を評価することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良工法において、
地下水面下の硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ注入材による固結土または地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度の平均が10000ppm以下になるように注入することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が、水ガラスと硫酸を有効成分として含有し、水ガラスに起因するシリカ分が2〜15質量%であり、かつ、pHが1〜8である請求項1または2記載の地盤改良工法。
【請求項4】
前記地盤改良領域に含まれる硫酸イオン濃度の平均が8000ppm以下である請求項1〜3記載の地盤改良工法。
【請求項5】
前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を、地盤改良領域に部分的に注入する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の地盤改良工法。
【請求項6】
硫酸イオンを含まないシリカ系注入材または硫酸イオン含有量が前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材より少ないシリカ系注入材を、前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が注入されていない部分に注入する請求項5記載の地盤改良工法。
【請求項7】
さらに硫酸イオンの固定化材としてカルシウム塩を有効成分とする注入材を注入する請求項1〜6のうちいずれか一項記載の地盤改良工法。
【請求項8】
前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材が、活性シリカまたはコロイダルシリカを含む請求項1〜7のうちいずれか一項記載の地盤改良工法。
【請求項9】
前記硫酸イオンを含まない非アルカリ性シリカ系注入材または硫酸イオン含有量が前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材より少ないシリカ系注入材が、リン酸またはリン酸化合物を有効成分として含む請求項6〜8のうちいずれか一項記載の地盤改良工法。
【請求項10】
前記コンクリート構造物と前記硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入する領域の間の領域にリン酸若しくはリン酸化合物を有効成分とする注入材またはシリカ系注入材を注入する請求項4〜9のうちいずれか一項記載の地盤改良工法。
【請求項11】
コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良設計方法において、
下記式(1)表わされる前記地盤改良領域の地下水面下の固結土の硫酸イオン濃度X(ppm)を、下記式(2)で評価することを特徴とする地盤改良設計方法。
X=n×A×a・・・(1)
X≦W・・・(2)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
n×Aを注入率B(単位土量当たりの注入量)としてもよい
W:目的とする地盤改良領域中の硫酸イオンの平均濃度。
【請求項12】
コンクリート構造物の近接部或いは掘削後コンクリート構造物を構築する予定部の近接部に硫酸イオンを含む非アルカリ性シリカ系注入材を注入することにより地盤改良領域を形成する地盤改良設計方法において、
下記式(3)で表わされる改良地盤中の硫酸イオン濃度X(ppm)を、下記式(4)で評価することを特徴とする地盤改良設計方法。
X=n×A×a×Y・・・(3)
X≦W・・・(4)
n:土の間隙率(%)/100
Α:注入材による間隙充填率(%)/100
a:ホモゲルの硫酸イオン含有量(ppm)
Yは下記パラメータΔ1〜Δ4のいずれか一つまたは複数であって、
Δ1:地盤改良領域中の改良地盤率(%)/100
Δ2:1−地下水中への硫酸イオンの溶出による経時的変化率α(%)/100
Δ3:1−地盤中への硫酸イオンの固定率β(%)/100
Δ4:非アルカリ性シリカ系注入材中の非硫酸系反応材による硫酸イオンの交換率(%)/100
n×Aを注入率B(単位土量当たりの注入量)としてもよい
W:目的とする地盤改良領域中の硫酸イオンの平均濃度。
【請求項13】
前記Wが10000ppmである請求項11または12記載の地盤改良設計方法。
【請求項14】
請求項11〜13のうちいずれか一項記載の地盤改良設計方法を用いて算出した前記Xが前記Wを満足するように注入条件を設計して非アルカリ性シリカ系注入材を注入することを特徴とする非アルカリ性シリカ系注入材の注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−149397(P2012−149397A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7364(P2011−7364)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 社団法人地盤工学会 〔刊行物名〕 第45回地盤工学研究発表会−平成22年度発表講演集(2分冊の1)− 〔発行年月日〕 平成22年7月15日
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】