説明

地盤改良方法

【課題】酸性の土質でも必要な強度で硬化させることができる地盤改良方法を提供する。
【解決手段】改良対象土と、セメント系固化材と、灰化焼成カルシウムを含む混練水とを混合し、撹拌した後、硬化させる。混練水は、灰化焼成カルシウムを0.1〜0.3質量%含み、100質量部のセメント系固化材に対して、10〜100質量部添加されている。混練水は、水道水または精製水に灰化焼成カルシウムを添加して製造されていてもよい。灰化焼成カルシウムは、貝殻を焼成して得られる貝殻焼成カルシウムから成っている。改良対象土は、pH2〜7である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軟弱地盤などの地盤改良方法では、消石灰や仮焼ドロマイト、高炉スラグなどが混合されたセメント系固化材が使用されている(例えば、特許文献1参照)。地盤改良を行う際には、そのセメント系固化材と水とを混合してスラリー状にし、改良対象土に注入して混合、撹拌したり、そのセメント系固化材を改良対象土に散布して混合、撹拌したりすることにより、軟弱地盤を硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−79161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のようなセメント系固化材をそのまま酸性土壌等の酸性の土質に使用すると、硬化の遅延や硬化不良、硬化後の強度不足、硬化後の溶解等が発生するという課題があった。ローム質や火山灰質、腐食土などは、セメント系固化材が不得意とする土質であった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、酸性の土質でも必要な強度で硬化させることができる地盤改良方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る地盤改良方法は、改良対象土と、セメント系固化材と、灰化焼成カルシウムを含む混練水とを混合し、撹拌した後、硬化させることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る地盤改良方法は、混練水が灰化焼成カルシウムを含んでいるため、イオン化した強アルカリ性の水(強アルカリ水)になり、改良対象土が酸性の土質であっても、必要な強度で硬化させることができる。また、アルカリイオンの伝達速度の速さを利用して、酸性の改良対象土質を速やかに中和したり、中性に近づけたりすることができる。水道水や雨水、河川水等をそのまま使用する場合と比べて、同じ量のセメント系固化材で、より大きい強度を得ることができ、また、所望の強度を得るためのセメント系固化材の量を減らすことができる。
【0008】
本発明に係る地盤改良方法で、前記混練水は前記灰化焼成カルシウムを0.1〜0.3質量%含み、100質量部の前記セメント系固化材に対して、10〜100質量部添加されることが好ましい。この場合、効率的に所望の強度を得ることができる。改良対象土の種類により、セメント系固化材と混練水との配合比率を変えることが好ましい。
【0009】
本発明に係る地盤改良方法で、前記改良対象土はpH2〜7であることが好ましい。この場合、特にその効果を顕著に発揮することができる。また、pH2の強酸性から、酸性、pH7の中性までの土質に対して、必要な地盤改良を行うことができる。
【0010】
本発明に係る地盤改良方法で、前記灰化焼成カルシウムは貝殻を焼成して得られる貝殻焼成カルシウムから成ることが好ましい。この場合、焼成する貝殻として、従来大量に廃棄されていたホタテやカキ等の貝殻を使用することができ、廃棄残渣物の減量化と資源の有効利用を促進することができる。
【0011】
本発明に係る地盤改良方法で、前記混練水は水道水または精製水に前記灰化焼成カルシウムを添加して製造されていてもよい。灰化焼成カルシウムが溶解することにより、混練水がイオン化する。この場合、固化強度発現効果がより大きくなる。精製水は、水道水を蒸留や濾過、脱塩処理などにより精製した水である。
【0012】
本発明に係る地盤改良方法は、前記セメント系固化材と前記混練水とを混合してスラリー状にした後、前記改良対象土に注入して混合し、撹拌してもよい。この場合、深層混合処理による地盤改良を実施することができる。また、本発明に係る地盤改良方法は、前記改良対象土に前記セメント系固化材を散布して混合した後、前記混練水を投入してさらに混合し、撹拌してもよい。この場合、浅層混合処理による地盤改良を実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸性の土質でも必要な強度で硬化させることができる地盤改良方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の地盤改良方法(「強アルカリ水」)および従来の地盤改良方法(「水道水」)により、盛岡市で採取した改良対象土から作成した改良土の一軸圧縮試験結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の形態の地盤改良方法(「強アルカリ水」)および従来の地盤改良方法(「水道水」)により、青森県六ヶ所村で採取した改良対象土から作成した改良土の一軸圧縮試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態の地盤改良方法の、水道水および精製水を使用して作成した改良土の一軸圧縮試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態の地盤改良方法を示している。
本発明の実施の形態の地盤改良方法では、セメント系固化材と混練水とを使用する。
【0016】
セメント系固化材は、普通ポルトランドセメント、早強セメント、B種高炉セメント等に、消石灰や仮焼ドロマイト、高炉スラグ等が混合された市販のセメント系固化材から成っている。セメント系固化材としては、例えば、宇部三菱セメント株式会社製の「ユースタビラー」を使用することができる。
【0017】
混練水は、水道水に灰化焼成カルシウムを0.2質量%添加したものから成っている。灰化焼成カルシウムは、ホタテの貝殻を焼成して得られるホタテ貝殻焼成カルシウムから成っている。なお、混練水は、水道水の代わりに、精製水が使用されていてもよい。
【0018】
本発明の実施の形態の地盤改良方法は、pH2の強酸性から、酸性、pH7の中性までの土質に対して、浅層混合処理や深層混合処理による地盤改良を実施することができる。なお、本発明の実施の形態の地盤改良方法は、浅層混合処理や深層混合処理の他に、プラント混合処理でも実施可能である。
【0019】
浅層混合処理の場合、まず、改良対象地盤から改良対象土の試料を採取し、室内配合試験を行う。次に、改良対象地盤を整地、掘削し、支持層を確認する。室内配合試験結果から、セメント系固化材の添加量を求め、その添加量分のセメント系固化材を改良対象地盤に散布し、改良対象土とセメント系固化材とを空練して混合する。そこに、100質量部のセメント系固化材に対して、改良対象土の種類に応じて10〜100質量部の混練水を投入してさらに混合し、撹拌した後、硬化させる。硬化後、天端仕上げを行う。
【0020】
深層混合処理の場合、ボーリング等により改良対象地盤から改良対象土の試料を採取し、室内配合試験を行う。次に、室内配合試験結果から、セメント系固化材の添加量を求め、その添加量分のセメント系固化材と、100質量部のセメント系固化材に対して、改良対象土の種類に応じて10〜100質量部の混練水とを混合してスラリー状にする。そのスラリーを改良対象地盤に注入して改良対象土と混合し、撹拌した後、硬化させる。
【0021】
本発明の実施の形態の地盤改良方法は、混練水が灰化焼成カルシウムを含んでいるため、イオン化した強アルカリ性の水(強アルカリ水)になり、改良対象土が酸性の土質であっても、必要な強度で硬化させることができる。また、アルカリイオンの伝達速度の速さを利用して、酸性の改良対象土質を速やかに中和したり、中性に近づけたりすることができる。水道水や雨水、河川水等をそのまま使用する場合と比べて、同じ量のセメント系固化材で、より大きい強度を得ることができ、また、所望の強度を得るためのセメント系固化材の量を減らすことができる。従来大量に廃棄されていたホタテの貝殻から得られる灰化焼成カルシウムを使用するため、廃棄残渣物の減量化と資源の有効利用を促進することができる。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施の形態の地盤改良方法による改良地盤の強度発現効果を検討するために、混練水として水道水を使用した従来の地盤改良方法との比較試験を行った。セメント系固化材は、宇部三菱セメント株式会社製の一般軟弱土用の「ユースタビラー10(以下、「US−10」)」、および、特殊土用の「ユースタビラー50(以下、「US−50」)」を使用した。混練水は、本発明の実施の形態の地盤改良方法の場合、水道水に灰化焼成カルシウムを添加したもの、従来の地盤改良方法の場合、水道水そのままを使用している。
【0023】
改良対象地盤から採取した改良対象土から、本発明の実施の形態の地盤改良方法(以下、「強アルカリ水」)および従来の地盤改良方法(以下、「水道水」)により改良土を作成した。このとき、改良対象土に対するセメント系固化材の添加量を変えたものを、各試験毎に3試料ずつ作成した。作成した改良土の各試料に対して一軸圧縮試験を行った結果を、図1および図2に示す。
【0024】
図1は盛岡市で採取した改良対象土、図2は青森県六ヶ所村で採取した改良対象土を使用したときの試験結果である。図1(a)は、セメント系固化材に対する混練水の質量比(W/C)が60%、セメント系固化材がUS−50、図1(b)は、W/Cが10%、セメント系固化材がUS−50、図1(c)は、W/Cが10%、セメント系固化材がUS−10、図2(a)は、W/Cが60%、セメント系固化材がUS−50、図2(b)は、W/Cが60%、セメント系固化材がUS−10のときの試験結果である。
【0025】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態の地盤改良方法(強アルカリ水)によれば、混練水として水道水のみを使用する場合(水道水)と比べて、同じ量のセメント系固化材で、より大きい強度を得ることができること、また、所望の強度を得るためのセメント系固化材の量を減らすことができることが確認された。例えば、図1の場合、目標強度約170kN/mの改良土を得るために、セメント系固化材を、図1(a)の水道水では320kg/m必要とするのに対し、強アルカリ水では270kg/mでよく、図1(b)の水道水では80kg/m必要とするのに対し、強アルカリ水では50kg/mでよく、図1(c)の水道水では115kg/m必要とするのに対し、強アルカリ水では85kg/mでよい。また、図2の場合、目標強度約1600kN/mの改良土を得るために、セメント系固化材を、図2(a)の水道水では336kg/m必要とするのに対し、強アルカリ水では269kg/mでよく、図2(b)の水道水では322kg/m必要とするのに対し、強アルカリ水では296kg/mでよい。このように、本発明の実施の形態の地盤改良方法によれば、目標強度の改良土を得るためのセメント系固化材の使用量を減らすことができ、経済的である。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施の形態の地盤改良方法の、混練水で使用する水の種類による改良地盤の強度発現効果を検討するために試験を行った。混練水で使用する水として、水道水および精製水の2種類を使用した。精製水は、水道水を濾過、脱塩処理により精製して製造した。セメント系固化材には、特殊土用の固化材(宇部三菱セメント株式会社製、商品名「ユースタビラー50」)(図中、「US−50」で示す)を使用した。
【0027】
改良対象地盤(盛岡市)から採取した改良対象土から、水道水による混練水を使用した改良土、および、精製水による混練水を使用した改良土を作成した。このとき、W/Cを60%とし、改良対象土に対するセメント系固化材の添加量を変えたものを、3試料ずつ作成した。作成した改良土の各試料に対して一軸圧縮試験を行った結果を、図3に示す。
【0028】
図3に示すように、本発明の実施の形態の地盤改良方法では、混練水で使用する水として精製水を使用した場合(「精製水でつくった強アルカリ水」)の方が、水道水を使用した場合(「水道水でつくった強アルカリ水」)と比べて、同じ量のセメント系固化材で、より大きい強度を得ることができること、また、所望の強度を得るためのセメント系固化材の量を減らすことができることが確認された。水道水に代えて精製水を使用することにより、その強度発現効果が、約1.5〜5倍程度と大きくなっている。水道水に代えて精製水を使用すれば、目標強度の改良土を得るためのセメント系固化材の使用量を減らすことができ、経済的である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良対象土と、セメント系固化材と、灰化焼成カルシウムを含む混練水とを混合し、撹拌した後、硬化させることを、特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
前記混練水は前記灰化焼成カルシウムを0.1〜0.3質量%含み、100質量部の前記セメント系固化材に対して、10〜100質量部添加されることを、特徴とする請求項1記載の地盤改良方法。
【請求項3】
前記改良対象土はpH2〜7であることを、特徴とする請求項1または2記載の地盤改良方法。
【請求項4】
前記灰化焼成カルシウムは貝殻を焼成して得られる貝殻焼成カルシウムから成ることを、特徴とする請求項1、2または3記載の地盤改良方法。
【請求項5】
前記混練水は水道水または精製水に前記灰化焼成カルシウムを添加して製造されていることを、特徴とする請求項1、2、3または4記載の地盤改良方法。
【請求項6】
前記セメント系固化材と前記混練水とを混合してスラリー状にした後、前記改良対象土に注入して混合し、撹拌することを、特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の地盤改良方法。
【請求項7】
前記改良対象土に前記セメント系固化材を散布して混合した後、前記混練水を投入してさらに混合し、撹拌することを、特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の地盤改良方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−46926(P2012−46926A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188826(P2010−188826)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(505230401)株式会社ミック・スリー (1)
【Fターム(参考)】