説明

地盤改良機

【課題】 混練ローター12及び改良度合い検出器13の位置を三次元でとらえられるようにして、地盤改良の状況を正確に把握できるとともに、基台を含めた機体の幅方向の移動回数を最小限にとどめられるようにする。
【解決手段】
コントローラは、上記支持部材の基端から混練ローター12あるいは改良度合い検出器13のうちの少なくとも一方にいたるまでの長さをあらかじめ記憶し、上記各回転角度センサーSから受信した角度信号に基づいて、上記混練ローターあるいは改良度合い検出器のうちの少なくともいずれか一方の三次元位置を演算し、その演算結果を、上記改良度合い検出器からの地盤情報とともに記憶し、かつ、このコントローラに接続した出力手段に出力させる構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の基礎を設けるための地盤を改良する地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良機として特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この従来の地盤改良機は、バックホーのバケットに、改良地盤の土を固化材液と混練する混練ローター及び地盤の改良度合いを検出する改良度合い検出器を設け、このバケット先端の移動軌跡を、深さと奥行きの二次元でとらえるようにしている。
【0003】
つまり、バケット先端の移動軌跡をとらえるのにコントローラを用いるとともに、このコントローラは、バックホーのブーム、アーム及びアームからバケット先端までの長さをあらかじめ記憶している。また、上記ブーム基端部分、ブームとアームの連結部分及びアームとバケットとの連結部分のそれぞれに、それら連結部分の垂直方向の回転角を検出する回転角センサーをもうけるとともに、これら回転角センサーが検出した回転角を上記コントローラに入力するようにしている。
【0004】
したがって、コントローラは、時々に入力する各回転角センサーの検出角と、あらかじめ記憶した上記ブーム等の長さに基づいて、バケット先端の位置を二次元的に演算することができる。そして、コントローラの演算結果は、当該コントローラに接続したモニターに表示するようにしている。
【0005】
さらに、上記コントローラには、改良度合い検出器が検出した地盤の改良度合い信号が入力し、この改良度合い信号も上記モニターに表示される。
なお、上記改良度合い検出器は、混練して流動化した土と固化材液の混合体の電気比抵抗値を検出するものである。
したがって、オペレータは、モニターを確認すれば、二次元でとらえた位置の地盤の改良状況を確認することができる。
【0006】
また、オペレータは、上記のようにモニターに二次元で表示されたバケットの位置を確認しながらバケットを移動させるが、このときには、ほぼバケットの幅分だけの作業幅を保ちながら、当該バケットを当該機体側に引き寄せるようにして混練作業をする。
そして、上記のようにバケットの幅分だけの混練作業が終了したら、当該機体を上記バケットの幅分だけ幅方向に移動して、隣の作業幅における混練作業をする。
このようにして機体を幅方向に順次移動しながら、一定面積の改良エリアの地盤を改良していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4478187号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来の地盤改良機では、バケットの位置を、深さと奥行きというように二次元でしかとらえられず、その平面幅方向の位置を自動的に把握することができなかった。
そのために、上記したようにバケットの幅分だけの作業幅を何回も繰り返して、一定面積の改良エリアの地盤を改良せざるを得なかった。なぜなら、機体を一定位置に保って、バケットを適当に幅方向に振りながら地盤改良作業をすると、未作業エリアができてしまうので、このような未作業エリアができないようにするためである。
【0009】
上記のように未作業エリアがないようにするために、バケットの幅分の作業幅を何回も繰り返して、一定面積の改良エリアの地盤を改良する作業を行うので、バックホーの移動回数が多くならざるをえないが、バックホーを移動するのは、大きな労力を必要とするので、その回数が多くなると、それだけ作業効率が悪くなる。
【0010】
そこで、バックホーの移動回数を減らすために、バックホーの位置を固定化してバケットを上記幅方向に振りながら作業をすれば、そのバックホーの特定の固定位置において、一直線上にバケットを移動させるときよりも、上記振り幅分だけ広い作業ができるようになる。
【0011】
しかし、従来の地盤改良機では、オペレータの操作によってバケットを幅方向に移動させることはできるが、どのくらいの幅の範囲で移動させたのかという位置確認ができない。そのために、バックホーを幅方向に振るときに、その振り幅の基準がなくなり、ややもすると、ふり幅が小さすぎたり、あるいはそれが大きすぎたりしてしまうことがあった。このようにバックホーの振り幅が一定しないと、十分な地盤改良がされていない未作業分が残ってしまう。
【0012】
未作業エリアは、地盤改良が十分に行われなくなるが、それは必要エリアの改良作業を一通り終わってからの試料検査で判明することが多い。もし、この試料検査の段階で、地盤改良が不十分であると判定されると、上記必要エリアのすべての混練作業をやり直さざるをえず、作業効率が著しく悪くなってしまう。
【0013】
また、上記のように二次元の位置確認しかできないので、改良度合い検出器で検出する改良度合いの信号も二次元情報になってしまう。そのために三次元的な位置を確認しながら、その位置における改良度合いをその都度把握できないので、オペレータは、作業中に改良度合いを確認できないという問題があった。
【0014】
この発明の目的は、混練ローター及び改良度合い検出器の位置を三次元でとらえられるようにして、地盤改良の状況を正確に把握できるとともに、基台を含めた機体の幅方向の移動回数を最小限にとどめられる地盤改良機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、操縦室を備えるとともに基台に対して回転可能にした機体に、垂直方向に回動可能にした支持部材を設けるとともに、この支持部材の先端に、土を練るための混練ローターを設け、かつ、この混練ローターの近傍に、地盤の地盤改良の度合いを検出する改良度合い検出器を設けてなる地盤改良機を前提にする。
【0016】
第1の発明は、上記地盤改良機を前提にしつつ、上記機体には基台に対する水平方向の回転角を検出する水平回転角度センサーを設け、上記支持部材の回動部には、その回転角を検出する垂直回転角度センサーを設けるとともに、上記各回転角度センサーをコントローラに電気的に接続している。そして、コントローラは、上記支持部材の基端から混練ローターあるいは改良度合い検出器のうちの少なくとも一方にいたるまでの長さをあらかじめ記憶し、上記各回転角度センサーから受信した角度信号に基づいて、上記混練ローターあるいは改良度合い検出器のうちの少なくともいずれか一方の三次元位置を演算し、その演算結果を、上記改良度合い検出器からの地盤情報とともに記憶し、かつ、このコントローラに接続した出力手段に出力させる構成にしている。
【0017】
第2の発明は、上記支持部材が、垂直方向に回動自在にして機体に取り付けたブームと、このブームの先端に回動自在に設けたアームとからなる。そして、このアームの先端にはバケットを回動自在に設け、このバケット内に上記混練ローターを設けるとともに、バケット先端に上記改良度合い検出器を設けている。さらに、上記ブームとアームの連結部及びアームとバケットの連結部のそれぞれに、それらの連結部の角度を検出する垂直回転角度センサーを設けている。そして、コントローラは、機体側における上記ブームの回動支点からブームとアームとの連結部の回動支点までの長さ、ブームとアームとの連結部の回動支点からアームとバケットとの回動支点までの長さ、及びアームとバケットとの回動支点からバケットの所定位置までの長さをあらかじめ記憶し、上記水平回転角度センサー及び垂直回転角度センサーから受信した角度信号に基づいて、バケットの上記所定位置の三次元位置を演算する。
【0018】
第3の発明は、上記コントローラに接続した出力手段が、改良度合い検出器の深さ方向の位置及び奥行きの位置を示すモニターと、改良度合い検出器の水平方向の位置を示すモニターとからなり、それぞれのモニターに二次元情報を出力する構成にするとともに、上記幅方向の位置を示すモニターには改良度合い検出器が移動すべき複数のコースを平行に区分表示する一方、これらモニターを操縦室に設けている。
【0019】
第4の発明は、改良必要エリアの幅方向中央に機体を設置するとともに、当該必要改良エリアの複数の平面ポイントに、改良度合い検出器を埋没させて、それら複数の平面ポイントの改良度合いを検出して、その検出値をコントローラに入力し、コントローラは、この検出値を上記平面ポイントごとに上記モニターに表示させ、かつ、その検出値を上記記憶部に記憶させる構成にした請求項1〜3のいずれかに記載した地盤改良機。
【0020】
第5の発明は、上記垂直回転角度センサーであって、少なくともアームとバケットとの角度を検出する垂直角センサーは、アーム側に固定するプレートと、このプレートに対向してバケット側に固定したケーシングと、このケーシング内に設けた回転体と、この回転体の回転角度に応じて電気的な出力が制御される出力計と、上記プレートに設けるとともに回転体と対向する円周方向に複数設けた永久磁石と、上記回転体の円周方向にもうけるとともにプレートに設けた永久磁石と対向する複数の永久磁石とからなり、これら永久磁石の吸引力で、上記プレートと回転体とが一体回転する構成にしている。
【発明の効果】
【0021】
第1、2の発明によれば、混練ローター及び改良度合い検出器の位置を三次元でとらえられるので、地盤改良の状況を正確に把握することができる。つまり、コントローラは、混練ローターの移動位置を三次元的にとらえることによって、満遍なく混練がされたかどうかを把握できるとともに、改良度合い検出器の出力信号を三次元的に追跡することによって、地盤改良の度合いを正確に把握できる。
【0022】
また、水平回転角度センサーを設けたので、機体の位置を固定化した状態で支持部材を水平方向に回せば、混練ローター及び改良度合い検出器の水平方向の位置を位置情報としてコントローラに入力することができる。したがって、上記のように機体の位置を固定化しつつ、混練ローターを幅方向に移動させるなど、ある程度幅を持たせた範囲で混練作業をしても、コントローラは混練作業を実施した位置を把握できるとともに、その位置における改良度合い検出器からの地盤信号を三次元的に出力できる。
【0023】
上記のように混練ローターを幅方向に振りながら移動させても、コントローラがそれらの位置を把握できるので、その幅方向の範囲をはっきりと確認できる。したがって、混練ローターを幅方向に振りながら移動して、その作業効率を上げるとともに、基台を含めた機体の移動回数を最小限に抑えることができ、全体的にも作業効率の著しい向上を図ることができる。
【0024】
第3の発明によれば、複数のコースを操縦室のモニターに表示するようにしたので、これら各コースの幅を混練ローターの幅よりも広く設定しておけば、オペレータはモニターを見ながら、上記コースの範囲内で、混練ローター及び改良度合い検出器を幅方向に少し振りながら移動させることができる。このとき上記コースがモニターに表示されているので、各コース間の境界も明確になり、オペレータは混練ローター及び改良度合い検出器を振らせる範囲を意識しながら混練作業や地盤検出作業を実施できる。
【0025】
もし、上記のようにコース表示がなければ、オペレータは、実際に混練作業をどこまで実施したのかを判別しにくくなり、コースを変更する際に、機体の位置設定もあいまいになり、場合によってはコース間で重複するような作業を実施してしまうこともあるが、コースを表示した第4の発明によればそのような問題は一切発生しない。
【0026】
第4の発明によれば、地盤改良作業が一通り終了した後、必要改良エリアの幅方向中央に機体を設置したまま、改良度合い検出器を三次元に移動することによって、試料調査が可能になるとともに、その三次元位置における改良度合いの検出値を記憶させたり、出力させたりできる。
【0027】
第5の発明によれば、垂直角度センサーの回転体及びこの回転体の回転角度に応じて電気的な信号を出力する出力計をケーシングで覆い、この回転体と回転体と対向するプレートとのそれぞれに、永久磁石を設けてそれらを対向させたので、回転体及び出力計は混練中の土砂に影響されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】地盤改良機の側面図である。
【図2】垂直角度センサーの正面図である。
【図3】垂直角度センサーの断面図である。
【図4】地盤改良エリアを示した立体図である。
【図5】深さDと平面奥行き方向の長さLの二次元における混練ローターの位置を示すとともに、地盤改良度合いを表示したモニター上のグラフである。
【図6】平面奥行き方向の長さLと平面幅方向の長さWの二次元における混練ローターの位置を示すモニター上のグラフである。
【図7】各ポイントp1〜p5における深さDの電気比抵抗を示すモニター上のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示した地盤改良機は、クローラを主体にした基台1に機体2を回動可能に設けたもので、上記基台1に対する機体2の回動位置を検出するための水平回転角センサーを設けているが、この水平回転角センサーは図示していない。
【0030】
上記のようにした機体2には操縦室3を設けるとともに、ブーム4の基端を垂直方向に回動自在に取り付けている。なお、図中符号5はブームシリンダで、その基端を機体に回動自在に取り付けている。そして、このブームシリンダ5の伸縮動作によって、ブーム4が垂直方向に回動する。
【0031】
上記ブーム4の先端には、回転軸6を回動支点にしたアーム7を回動自在に取り付けるとともに、ブーム4とアーム7間にアームシリンダ8を設け、このアームシリンダ8の伸縮動作でアーム7が垂直方向に回動する。
さらに、上記アーム7の先端には、回転軸9を回動支点にしたバケット10を回動自在に取り付けるとともに、アーム7とバケット10間にバケットシリンダ11を設け、このバケットシリンダ11の伸縮動作でバケット10が垂直方向に回動する。
【0032】
上記バケット10内には、複数の撹拌翼からなる混練ローター12を設けるとともに、バケット10の先端には、図示していないコントローラに接続した改良度合い検出器13を取り付けている。
上記混練ローター12は、図示していない油圧モータを駆動源として回転するもので、バケット10内で土砂およびセメント系の固化材液を混練するものである。
また、上記改良度合い検出器13は、上記のように混練された流動体の電気比抵抗を検出するもので、当該流動体が十分に混練されていれば検出する電気比抵抗の値が小さくなる。そして、その電気比抵抗が一定値以下になれば、改良度合いが十分であると判定される。
【0033】
上記のようにアーム7の先端に、回転軸9を回動支点にしたバケット10を回動自在に取り付けているが、この連結部である回転軸9には、図2,3に示す垂直回転角度センサーSを設けている。
この垂直回転センサーSは、バケット10に固定したブラケット14にケーシングCを固定しているが、このケーシングCは、本体15の周囲に囲い壁15aを設けるとともに、この囲い壁15aに蓋板16を固定している。
【0034】
このようにしたケーシングCには上記回転軸9を貫通させるとともに、この回転軸9には第1プーリー17を回転自在に設けている。この第1プーリー17には、図2に示すようにその円周方向に一定の間隔を保って、複数の永久磁石18を埋設している。
【0035】
さらに、上記ケーシングC内には、ベルト19を介して上記第1プーリー17と一体回転する第2プーリー20を設けるとともに、この第2プーリー20の回転軸21を、図3に示すように、ケーシングCの外部に設けたポテンショメータ22に連係している。このポテンショメータ22は、上記第2プーリー20の回転に連係して回るとともに、その回転角に応じて電気抵抗を可変にするものである。なお、このポテンショメータ22は、カバーで完全に覆われるとともに、図示していないコントローラに接続し、コントローラがポテンショメータ22の電気抵抗から上記回転角を検出するようにしている。
【0036】
なお、上記第1プーリー17と第2プーリー20のそれぞれは、この発明の回転体を構成するものである。また、上記ポテンショメータ22は、この発明の出力計を構成するもので、上記回転体の回転角度に応じて電気的な信号を出力する。
【0037】
一方、アーム7に固定したブラケット23には回転板24を固定するとともに、この回転板24には、第1プーリー17の永久磁石18と同数の永久磁石25を設け、これら永久磁石18,25を互いに対向させている。このように互いに対向させた永久磁石18,25は相互に吸引力を発揮する極性を保っている。
【0038】
上記のようにした垂直回転角センサーSは、第1プーリー17と第2プーリー20及びそれらを連係するベルト19がケーシングCに完全に収められているので、当該センサーSが流動化した土砂などのなかに埋められたとしても、その回転系に支障をきたすことはない。しかも、ポテンショメータ22もカバーで覆われているので、その電気系統に影響を及ぼすこともない。
さらに、第1プーリー17と回転板24とは、永久磁石18,25の吸引力で一体回転するので、第1プーリー17と回転板24との間に多少の土砂等が浸入しても、回転力は確実に伝達される。
【0039】
そして、アーム7とバケット10とが相対回転すると、例えば回転板24の回転力が永久磁石25,18を介して第1プーリー17に伝達されるとともに、この第1プーリー17の回転力がベルト19を介して第2プーリー20に伝達される。このようにして第2プーリー20が回転すると、それにともなってポテンショメータ22も回転し、その電気抵抗を変化させ、その抵抗に応じた電気信号が出力される。このときの電気信号を上記コントローラが読み取って、アーム7とバケット10との垂直方向の回転角を演算する。
【0040】
なお、ブーム4とアーム7との連結部における回転軸6にも垂直回転角度センサーを設けているが、この垂直回転角度センサーも、上記垂直回転角度センサーSと全く同じ構造のものを用いている。
また、ブーム4の基端における回動部にも垂直回転角度センサーを設けているが、この部分のセンサーは、どのような構造でもよい。なぜなら、ブーム4の基端部分は、流動化した土砂のなかに埋め込まれることがほとんどないからである。
【0041】
いずれにしても、上記3箇所に設けた垂直回転角度センサーのそれぞれは、上記コントローラに接続されているが、このコントローラは、機体2側における上記ブーム4の回動支点からブーム4とアーム7との連結部の回動支点である回転軸6までの長さ、この回転軸6からアーム7とバケット10との回動支点である回転軸9までの長さ、及びこの回転軸9からバケット10の先端までの長さをあらかじめ記憶している。
【0042】
したがって、コントローラは、上記3箇所に設けた垂直回転角度センサーから角度信号が入力されれば、バケット10の先端に設けた改良度合い検出器13の二次元位置を演算することができる。
また、上記したように機体2には基台1に対する水平方向の回転角を検出する水平回転角度センサーを設けているので、コントローラは、3箇所に設けた垂直回転角度センサーと水平回転角度センサーから受信した角度信号によって、バケット10の先端に設けた改良度合い検出器13の三次元位置を演算することができる。
【0043】
上記のようにしたコントローラは、上記三次元の位置情報を、操縦室3に設けた図示していないモニターに図5及び図6のグラフを同時に表示するようにしている。
すなわち、図5に示したグラフは、その縦軸を深さDとし、横軸を平面奥行き方向の長さLとするとともに、それら各軸には目盛をセンチメートルで示している。また、図5のグラフには、バケット10の移動位置に応じて伸縮するバー26,27を軸に沿って設け、これらバー26,27の先端が当該グラフ上の座標すなわちバケット10の現在地を示すようにしている。
【0044】
一方、図6に示したグラフは、その縦軸を平面奥行き方向の長さLとし、横軸を平面幅方向の長さWとするとともに、それら各軸には目盛をセンチメートルで示したものである。この図6に示したグラフには、バケット10の幅よりもやや広めに設定した複数のコースw1〜w3を平面幅W方向に平行に区分表示している。
【0045】
図7に示したグラフは、縦軸に深さを示し、横軸に水平面のポイントp1〜p5を示したもので、ひと通りの地盤改良が終了した後に、当該地盤改良機の改良度合い検出器13を、上記ポイントp1〜p5に埋没させながら、地盤改良度合いを試料検査するためのものである。
そして、コントローラは、上記ポイントp1〜p5における改良度合いを電気比抵抗値として記憶するとともに、モニターに表示させる。
【0046】
次に、地盤を改良する場合について説明する。
先ず、図4に示すように、地盤を改良すべき平面的なエリアである奥行き方向長さLと幅方向長さWとをあらかじめ設定するとともに、この地盤改良エリアをバックホー等の掘削機を用いて掘削して、基礎を形成する基礎底Bまでの土砂と、注入するセメント系の固化材液に相当する量の土砂を余剰土として排除する。
その後に、当該掘削した地盤改良エリア内であって、限られた範囲をいわゆる支持層にいたるまで掘り下げる。そして、支持層を確認できたら、その支持層Mまでの深さDを計測するとともに、その計測終了後に、支持層Mを確認するために掘り起こした土を再び埋め戻す。
【0047】
上記のように基礎底Bまでの深さまで掘った穴内に上記固化材液を注入した後、図1に示したこの発明の地盤改良機を用いて地盤を改良する。
このときには、最初に、当該地盤改良機の位置決めをするとともに、上記地盤改良エリアに対して、バケット10の先端のゼロ点位置を決め、このゼロ点を上記コントローラに記憶させる。
【0048】
上記のようにしてバケット10の先端のゼロ点が決まったら、オペレータは、バケット10を移動させながら、基礎底Bから支持層Mまでの土をバケット10で掘り起こし、その掘り起こした土と、あらかじめ注入してある固化材液とを、バケット10に設けた撹拌翼で撹拌しながら混練する。
このとき、コントローラは、上記した垂直回転角度センサーSと図示していない水平角度センサーからの信号に基づいてバケット10の三次元位置を演算し、その演算結果を、図5,6に示したグラフに同時に表示する。
【0049】
すなわち、図5のグラフには、深さDと平面奥行き方向長さLを示し、図6のグラフには平面奥行き方向長さLと平面幅方向長さWとを示す。ただし、上記図5のグラフには、そのポジションにおける電気比抵抗値を色分けした点によって、そのポジションと電気比抵抗値とを同時に表示するようにしている。
したがって、オペレータは、上記両グラフを見ながらバケット10の三次元位置及び色分けされた電気比抵抗値の点をチェックしながら、バケット10の位置と当該位置における改良度合いとを把握できることになる。
【0050】
また、図6に示したグラフには、上記したようにバケット10の幅よりもやや広めに設定した複数のコース区分w1〜w3を平面幅W方向に平行に表示しているが、このコース区分w1〜w3は、図4に示す改良エリアの幅区分W1〜W3に対応させている。
したがって、各幅区分W1〜W3における幅方向の中心をバケット10のゼロ点にしておけば、オペレータは、この幅区分W1〜W3の範囲でバケット10を多少振りながら、地盤改良作業をすることができる。バケット10を上記のように幅区分W1〜W3の範囲で振ることができるので、当該バケット10を一直線上に移動しながら作業する場合よりも、固定化した機体1で実施できる1回の作業幅を広くすることができる。
【0051】
しかも、上記幅区分W1〜W3はモニター上にコース区分w1〜w3としてグラフで示されているので、例えば幅区分W1の改良作業を終了して、隣の幅区分W2に移動するときに、図6のグラフをチェックしながら機体2の位置を特定し、当該幅区分W2の中心をゼロ点に設定することができる。
上記のように幅区分W1〜W3ごとにその中心をゼロ点に設定できるとともに、各幅区分W1〜W3の境界を、図6のグラフ上のコース区分w1〜w3を見ることによって明確に区分できるので、オペレータは、コース間の間隔をあけすぎて未作業分を残してしまうことがない。
【0052】
しかも、上記各コース区分における深さDと奥行きLとに関して、その改良度合いが色分け表示されているので、オペレータは,色分けされた色を見ながら、改良度合いを判定できる。したがって、改良度合いの低い箇所をそのまま残して改良作業を終えることはほとんどなくなる。
【0053】
また、上記のように各三次元位置における各データは、コントローラに記憶されるとともに、この発明の出力手段であるモニターに表示される。
したがって、地盤改良作業が終了した後に、コントローラに記憶されたデータにより、その改良度合いをチェックすることができる。
【0054】
上記のようにして一通りの改良作業が終えたら、今度は、機体2を平面幅W方向の中心に設定するとともに、この機体2の位置から、図4に示した上記地盤改良エリアの中心及び四隅に設定したポイントp1〜p5にバケット10を埋めて、これら5つのポイントp1〜p5の改良度合いを改良度合い検出器13で検出する。
【0055】
このときにも、コントローラは、当該バケット10の三次元位置を演算するとともに、その演算した三次元位置と、改良度合い検出器13で検出した改良度合いとを対応づけて図7に示したグラフに表示する。
【0056】
なお、上記図7のグラフは、各ポジションp1〜p5における深さDと電気比抵抗値との関係を示したものである。
そして、各ポイントp1〜p5における深さごとの電気抵抗値は、コントローラに記憶される。
上記のように機体2を所定の位置に固定しながら、ポイントp1〜p5における電気比抵抗値を測定し、それをコントローラに記憶させたり、モニターに表示したりできるのは、改良度合い検出器13の位置を三次元で検出できるようにしたためである。
【0057】
なお、上記実施形態では、改良度合い検出器13が、電気比抵抗値を検出するようにしたが、例えば、改良度合い検出器13が、土中に含まれているトリクロロエチレンやヒ素等を検出できるようにし、それらトリクロロエチレンやヒ素等が中和されたかどうかを検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 基台
2 機体
3 操縦室
4 ブーム
7 アーム
10 バケット
12 混練ローター
13 改良度合い検出器
S 垂直回転角度センサー
22 出力計としてのポテンショメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦室を備えるとともに基台に対して回転可能にした機体に、垂直方向に回動可能にした支持部材を設けるとともに、この支持部材の先端に、土を練るための混練ローターを設け、かつ、この混練ローターの近傍に、地盤の地盤改良の度合いを検出する改良度合い検出器を設けてなる地盤改良機において、上記機体には基台に対する水平方向の回転角を検出する水平回転角度センサーを設け、上記支持部材の回動部には、その回転角を検出する垂直回転角度センサーを設けるとともに、上記各回転角度センサーをコントローラに電気的に接続している。そして、コントローラは、上記支持部材の基端から混練ローターあるいは改良度合い検出器のうちの少なくとも一方にいたるまでの長さをあらかじめ記憶し、上記各回転角度センサーから受信した角度信号に基づいて、上記混練ローターあるいは改良度合い検出器のうちの少なくともいずれか一方の三次元位置を演算し、その演算結果を、上記改良度合い検出器からの地盤情報とともに記憶し、かつ、このコントローラに接続した出力手段に出力させる構成にした地盤改良機。
【請求項2】
上記支持部材は、垂直方向に回動自在にして機体に取り付けたブームと、このブームの先端に回動自在に設けたアームとからなり、このアームの先端にはバケットを回動自在に設け、このバケット内に上記混練ローターを設けるとともに、バケット先端に上記改良度合い検出器を設け、上記ブームとアームの連結部及びアームとバケットの連結部のそれぞれに、それらの連結部の角度を検出する垂直回転角度センサーを設け、コントローラは、機体側における上記ブームの回動支点からブームとアームとの連結部の回動支点までの長さ、ブームとアームとの連結部の回動支点からアームとバケットとの回動支点までの長さ、及びアームとバケットとの回動支点からバケットの所定位置までの長さをあらかじめ記憶し、上記水平回転角度センサー及び垂直回転角度センサーから受信した角度信号に基づいて、バケットの上記所定位置の三次元位置を演算する請求項1記載の地盤改良機。
【請求項3】
上記コントローラに接続した出力手段は、改良度合い検出器の深さ方向の位置及び奥行きの位置を示すモニターと、改良度合い検出器の水平方向の位置を示すモニターとからなり、それぞれのモニターに二次元情報を出力する構成にするとともに、上記幅方向の位置を示すモニターには改良度合い検出器が移動すべき複数のコースを平行に区分表示する一方、これらモニターを操縦室に設けた請求項2記載の地盤改良機。
【請求項4】
改良必要エリアの幅方向中央に機体を設置するとともに、当該必要改良エリアの複数の平面ポイントに、改良度合い検出器を埋没させて、それら複数の平面ポイントの改良度合いを検出して、その検出値をコントローラに入力し、コントローラは、この検出値を上記平面ポイントごとに上記モニターに表示させ、かつ、その検出値を上記記憶部に記憶させる構成にした請求項1〜3のいずれかに記載した地盤改良機。
【請求項5】
上記垂直回転角度センサーであって、少なくともアームとバケットとの角度を検出する垂直角センサーは、アーム側に固定するプレートと、このプレートに対向してバケット側に固定したケーシングと、このケーシング内に設けた回転体と、この回転体の回転角度に応じて電気的な出力が制御される出力計と、上記プレートに設けるとともに回転体と対向する円周方向に複数設けた永久磁石と、上記回転体の円周方向にもうけるとともにプレートに設けた永久磁石と対向する複数の永久磁石とからなり、これら永久磁石の吸引力で、上記プレートと回転体とが一体回転する構成にした請求項1〜4のいずれか1に記載の地盤改良機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−36620(P2012−36620A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176715(P2010−176715)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【特許番号】特許第4772159号(P4772159)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(310013613)株式会社フレスコーヴォ (1)
【出願人】(598085906)株式会社立川機械製作所 (2)
【出願人】(506287383)
【Fターム(参考)】