説明

地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法

【課題】簡単な構造で地盤改良部の余掘りを無くすことで、コストの低減を図ることができる。
【解決手段】鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸11(11A、11B、11C)と、それぞれ第1回転軸11の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼12(12A、12B、12C)と、隣り合う第1回転軸11同士の中間で第1回転軸11に平行に配置され、第1回転軸11の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸13(13A、13B)と、第2回転軸13の下端に固定されて水平方向に回転する第2掘削翼14(14A、14B)と、第2掘削翼14の上方で第1掘削翼12及び第2掘削翼14によって掘削されない断面領域内に位置し、隣り合う第1掘削翼12同士の回転軌跡の共通外接線に沿って設けられるサイドカッタ15とを備えた構成の地盤改良装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削し、その掘削部分に地盤改良材を添加して掘削土と混合し、攪拌することにより地盤改良を行う地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良施工として、地盤をブロック状あるいは壁状に掘削し、地盤をほぐした状態で、例えば地盤改良材を添加し、ほぐされた地盤とともに混合し、攪拌することにより地盤改良壁等を施工する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、先端(下端)に掘削翼を設けたロッドを、隣り合う掘削翼同士が接触しないように複数のロッドを配列するとともに、各ロッドの掘削翼の上方位置に攪拌翼を設け、その攪拌翼がロッドの回転方向と異なる方向に回転させるようにした構成であって、ロッドとともに掘削翼を回転させて地盤中を下方に移動させつつ、攪拌翼によって混合し、攪拌する地盤改良装置について開示されている。
【0003】
また、一般的な地盤改良装置として、3軸のロッドを地盤中に下方へ移動させるもので、それらロッドにはプロペラ状の混練翼と螺旋状の移動翼とが配置されており、それら混練翼と移動翼とが隣り合うロッド間で干渉しないように交互に配置された装置がある。この場合、図11に示すように各ロッドで造成される地盤改良領域M11(破線)同士がオーバーラップしており、例えば仮設土留壁として利用する地盤改良壁を施工する場合にあっては、壁面を形成できる領域(図11で符号M10の領域)がその仮設土留壁の有効断面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−217820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の地盤改良装置では、図11に示すように隣り合う地盤改良領域M11、M11どうしをオーバーラップさせて掘削する構造であり、地盤改良壁の壁面より外側の部分が有効断面とならず、すなわち改良径に対して有効断面が小さくなる問題があった。そのため、掘削翼で掘削して改良される円形の一部が有効断面として機能しない余掘り部に相当し、地盤改良部に無駄があることからコストの低減が求められていた。
また、近年では、都市部で狭いスペースでの地盤改良施工の要求が増加しており、簡単且つ小型化した構造のものが必要とされており、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で地盤改良部の余掘りを無くすことで、コストの低減を図ることができる地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る地盤改良装置では、地盤中を移動させて地盤改良を行う地盤改良装置であって、鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸と、第1回転軸の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼と、隣り合う第1回転軸同士の中間で第1回転軸に平行に配置され、第1回転軸の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸と、第2回転軸の下端に固定されて水平方向に回転する第2掘削翼と、第1掘削翼及び第2掘削翼によって掘削されない断面領域内に位置し、隣り合う第1掘削翼同士の回転軌跡の共通外接線に沿って設けられるサイドカッタと、を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る地盤改良方法では、上述した地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、地盤改良装置を改良対象地盤上に設置し、第1回転軸および第2回転軸とともに複数の第1掘削翼および第2掘削翼を回転させて第1掘削領域の地盤を掘削する工程と、サイドカッタで断面領域に相当する第2掘削領域を掘削する工程と、第1掘削領域および第2掘削領域を掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌する工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、隣り合う第1掘削翼同士の回転軌跡の共通外接線によって囲まれる地盤改良領域のうち、第1掘削翼と第2掘削翼とで掘削されずに残った断面領域(第2掘削領域)をサイドカッタによって削り落とすことが可能となり、これにより前記地盤改良領域全体を掘削し、改良することができる。つまり、地盤改良領域全体を地盤改良壁としての有効断面となるので、従来のように掘削領域の一部が地盤改良壁として機能しない余掘り部分になるのを防ぐことができる。したがって、第1掘削翼の外径寸法を従来の掘削翼よりも小径にすることが可能なうえ、余掘りに相当する部分に対応する地盤改良材の添加量を少なくすることができるので、施工費の低減が図れ、しかも装置の小型化を図ることができる。
【0010】
また、サイドカッタは隣り合う第1掘削翼の回転軌跡の共通外接線に沿う位置に設けられていればよいので、回転や揺動などの駆動機構を伴わない構成でよく、複雑な駆動手段が不要で簡単な構成で済むことから、コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、地盤改良装置を簡単な構造とし、小型化させることができるので、バックホウなどの作業機のアタッチメントとして使用することが可能である。そのため、狭い空間であっても本地盤改良装置を導入して、地盤改良壁を形成することができる。この場合、既設の構造物下の地盤を囲うようにして外周改良部を形成することで、外周改良部によって囲繞された構造物下の地盤の水平方向の移動が規制され、変動が抑えられることから、その地盤の破壊を防止することができる。したがって、地震時おける構造物の振動を小さくすることができ、構造物の破壊を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係る地盤改良装置では、サイドカッタは、第2掘削翼の外周縁から水平面に対して斜め上方に向けた範囲によって囲まれた領域に設けられていることが好ましい。
この場合には、第2掘削翼の外周縁から水平面に対して斜め上方に向けた範囲によって囲まれた緩みが発生し得る領域にサイドカッタを配置することが可能となり、その場合、緩んだ地盤をサイドカッタによって削ぎ落とすようにして容易に掘削することができる。そして、サイドカッタの高さ方向の位置が第1掘削翼および第2掘削翼よりも上方に位置するため、これら第1掘削翼および第2掘削翼によって掘削した時点から一定の時間をおいた後にサイドカッタによって切削される。そのため、サイドカッタで切削する部分の地山の地盤の緩みが進行するため、サイドカッタよる切削がより容易になる。
【0013】
また、本発明に係る地盤改良装置では、サイドカッタは、内面側において、平面視で中央部から外周部へ向かうにしたがって漸次、共通外接線を含む鉛直面に向かう傾斜面が形成されていることが好ましい。
この場合、サイドカッタの下端が尖った形状で、その先端が前記共通外接線上となっているので、その共通外接線に沿って地盤をきれいに削ぎ落とすことができる。そして、サイドカッタの先端が地山に食い込み易くなり切削抵抗が小さくなるので、スムーズな掘削が行えるという利点がある。
【0014】
また、本発明に係る地盤改良装置では、サイドカッタは、平面視で下端側が先細りとなる形状をなしていることがより好ましい。
これにより、サイドカッタの先端が地山に食い込み易くなり切削抵抗が小さくなるので、スムーズな掘削が行えるという利点がある。
【0015】
また、本発明に係る地盤改良装置では、第1回転軸及び第2回転軸をそれぞれ回転自在に水平方向に連結する連結軸が設けられ、連結軸にサイドカッタが支持されていることが好ましい。
本発明では、連結軸が掘削翼を回転させるための回転軸によって回転することがないので、この連結軸に支持されるサイドカッタの姿勢が安定し、また掘削翼との位置が変化しないので、地盤改良領域を深度方向に一定の形状で掘削することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法によれば、第1掘削翼、第2掘削翼、およびサイドカッタで掘削される全領域を地盤改良壁としての有効断面とし、地盤改良部の余掘りを無くすことができ、従来のように余掘り部に添加する分の地盤改良材を無くすことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
また、サイドカッタは回転や揺動などの駆動手段によらないビット状の簡単な構造となるので、コストの低減が図れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による地盤改良装置の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すA−A線矢視図であって、地盤改良装置を下方から見た図である。
【図3】サイドカッタの構成を示す拡大図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】(a)は地盤改良領域のうち第1掘削翼と第2掘削翼とによって掘削される第1掘削領域を示す図、(b)は地盤改良領域のうちサイドカッタで掘削される第2掘削領域を示す図である。
【図5】地盤改良装置を作業機に装着した側面図である。
【図6】図1に示す地盤改良装置を用いた地盤改良方法を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は地盤改良部の平面図である。
【図7】第1変形例による地盤改良方法を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は地盤改良部の平面図である。
【図8】第2変形例による地盤改良方法を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は地盤改良部の平面図である。
【図9】第3変形例による地盤改良方法を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は地盤改良部の平面図である。
【図10】第4変形例による地盤改良方法を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は地盤改良部の平面図である。
【図11】従来の地盤改良装置による地盤改良部の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態による地盤改良装置1は、例えば建物の基礎直下において、壁状あるいはブロック状での地盤改良部を形成するための装置である。バックホウ等の作業機2(図5参照)のアーム先端にアタッチメントとして装着して使用され、3軸のロッドの各下端に備えた掘削翼を回転させながら地盤中を鉛直方向下方に移動させて掘削し、その掘削土に地盤改良材を添加して混合し、攪拌することにより前記地盤改良部を施工するものである。
【0020】
ここで、掘削土に添加される地盤改良材として、地盤改良の目的に応じて、例えばセメントミルク等の液状の材料や、粉体状の材料などの適宜な薬剤を採用することができる。
なお、以下の説明で「掘削土」とは、地盤改良装置1によって掘削された地盤と地盤改良材とが混合されたものも含む。また、図1に示す地盤改良装置1において、紙面に向かって左右方向の長さ寸法を「幅方向X」という。
【0021】
地盤改良装置1は、鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸11(11A、11B、11C)と、それぞれ第1回転軸11の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼12(12A、12B、12C)と、隣り合う第1回転軸11同士の中間で第1回転軸11に平行に配置され、第1回転軸11の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸13(13A、13B)と、第2回転軸13の下端に固定されて水平方向に回転する第2掘削翼14(14A、14B)と、第2掘削翼14の上方で第1掘削翼12及び第2掘削翼14によって掘削されない断面領域(後述する第2掘削領域M2)内に位置し、隣り合う第1掘削翼12同士の回転軌跡の共通外接線(図2の符号T)に沿って設けられるサイドカッタ15と、を備えている。
【0022】
3軸の第1回転軸11A、11B、11Cのうち中央の第1回転軸11Bは、両側の第1回転軸11A、11Cよりも下方に突出する長さ寸法であり、それぞれの上端11aが後述する支持フレーム16(図5参照)に対して軸回りに回転可能に支持されている。そして、各第1回転軸11の先端には、下方に向けて尖った形状をなす先端刃17が設けられている。
【0023】
そして、3軸の第1回転軸11および2軸の第3回転軸13は、それぞれが軸方向Yの複数個所(図1で4箇所)で連結軸18によって互いに平行に且つ一定間隔をあけて支持されている。第2回転軸13A、13Bは、それぞれ同じ長さ寸法で、第1回転軸11よりも短く、下端に設けられる第2掘削翼14が第1掘削翼12よりも上方に位置するようになっている。
連結軸18は、幅方向Xに沿って延び、第1回転軸11及び第2回転軸13をそれぞれ回転自在に支持するとともに、こられ回転軸11、13を水平方向に連結している。
【0024】
第1掘削翼12A、12B、12Cは、それぞれ第1回転軸11A、11B、11Cの下端から径方向外側に向けて棒状の翼軸12aが延び、その翼軸12aの周面に複数の切削ビット12bが配置された構成となっており、第1回転軸11とともに中心軸線回りに回転する。第2掘削翼14A、14Bは、図2に示すように、第1掘削翼12よりも小径断面を掘削するものであり、第2回転軸13とともに中心軸線回りに回転する。
そして、第1掘削翼12と第2掘削翼14によって、図4(a)に示す第1掘削領域M1が掘削されることになる。
【0025】
また、第1回転軸11は、内部に軸方向全体にわたって流路が設けられており、上端11aに供給された地盤改良材が下端へ流通するようになっている。そして、第1掘削翼12の周面には前記地盤改良材を噴射させるための噴出口12dが内部の流路に連通した状態で設けられ、この噴出口12dから地盤改良材を第1掘削翼12および第2掘削翼14の回転とともに径方向外方へ向けて噴射させ、掘削土に混合させる構成となっている。
【0026】
図1に示すように、第1回転軸11および第2回転軸13には、これら回転軸11、13と共に回転する攪拌翼19が回転軸11、13毎にそれぞれの軸方向の所定位置に設けられている。攪拌翼19は、それぞれ径方向外側に向けて複数の翼が延びた形状をなし、最下部に設けられる第1連結軸18Aと下から二番目に設けられる第2連結軸18Bとの間の範囲に設けられている。そして、第1回転軸11に設けられる攪拌翼19と第2回転軸13に設けられる攪拌翼19とが互いに干渉しないように上下方向にずれた位置に配置されている。
【0027】
図2および図3(a)、(b)に示すように、サイドカッタ15は、地盤掘削装置1の厚さ方向Zで最下部の第1連結軸18Aを挟んで両側に配置され、その第1連結軸18Aに対して連結材20を介して支持されている。
そして、サイドカッタ15は、図4(b)に示すように、複数の第1掘削翼12A〜12Cによって掘削される回転軌跡の共通外接線Tによって囲まれる地盤改良領域M0と、この地盤改良領域M0のうち第1掘削翼12と第2掘削翼14とによって掘削される第1掘削領域M1(図4(a)参照)と、の間の第2掘削領域M2内に位置している。
【0028】
サイドカッタ15は、内面側において、平面視で中央部から外周部へ向かうにしたがって漸次、共通外接線Tを含む鉛直面に向かう傾斜面15a(図3(b)参照)が形成されており、さらに下端側が先細りとなる形状に形成されている。また、サイドカッタ15は、第2掘削翼14の外周縁14aから水平面に対して斜め上方45度(図3でθ=45度)に向けた範囲によって囲まれた緩み領域Rに設けられている。
【0029】
図6に示すように、支持フレーム16は、第1回転軸11の上端11a及び第2回転軸13の上端13aを回転可能に支持し、作業機2のアーム21の先端21aに例えばピン等の着脱自在な連結手段により連結されるとともに、内部には前記回転軸11、12に回転動力を与える図示しない駆動モータが設けられている。
【0030】
次に、上述した地盤改良装置1を用いた地盤改良方法について説明する。
図5に示すように、地盤改良装置1をバックホウ等の作業機2のアタッチメントとして使用し、支持フレーム16を作業機2のアーム21の先端21aに取り付ける。そして、地盤改良装置1を改良対象地盤上に設置した後、作業機2により地盤改良装置1に鉛直方向で下向きの力を与え、掘削反力を取り、第1掘削翼12A、12B、12Cとともに第2掘削翼14A、14Bを回転させて図4(a)に示す第1掘削領域M1の地盤を掘削し、さらにサイドカッタ15で図4(b)に示す第2掘削領域M2の地盤を削ぎ落とすようにして切削する。
このようにして地盤改良を行うことにより、図4(b)に示すように、第1掘削領域M1が掘削され、さらにサイドカッタ15によって第2掘削領域M2が削り落とされて地盤改良領域M0が形成されることになる。
【0031】
なお、第1掘削領域M1および第2掘削領域M2で掘削した掘削土には第1回転軸11の噴射口11bから地盤に向けて地盤改良材を噴射させ、第1回転軸11および第2回転軸13に設けられる複数の攪拌翼19によって掘削土を均一に且つ効果的に混合し、攪拌する。
【0032】
次に、上述した地盤改良装置1の作用について、図面に基づいて具体的に説明する。
本地盤改良装置1では、隣り合う第1掘削翼12同士の回転軌跡の共通外接線Tによって囲まれる地盤改良領域M0のうち、第1掘削翼12と第2掘削翼14とで掘削されずに残った断面領域(第2掘削領域M2)をサイドカッタ15によって削り落とすことが可能となり、これにより地盤改良領域M0全体を掘削し、改良することができる。
つまり、地盤改良領域M0全体を地盤改良壁としての有効断面となるので、従来のように掘削領域の一部が地盤改良壁として機能しない余掘り部分になるのを防ぐことができる。したがって、第1掘削翼12の外径寸法を従来の掘削翼よりも小径にすることが可能なうえ、余掘りに相当する部分に対応する地盤改良材の添加量を少なくすることができるので、施工費の低減が図れ、しかも装置の小型化を図ることができる。
【0033】
また、サイドカッタ15は隣り合う第1掘削翼12の回転軌跡の共通外接線Tの内側に沿う位置に設けられていればよいので、回転や揺動などの駆動機構を伴わない構成でよく、複雑な駆動手段が不要で簡単な構成で済むことから、コストの低減を図ることができる。
【0034】
また、サイドカッタ15の切削領域が第2掘削翼14の外周縁14aから水平面に対して斜め上方45度に向けた範囲によって囲まれた緩み領域Rとなるので、緩んだ地盤をサイドカッタ15で削ぎ落とすようにして容易に掘削することができる。
【0035】
また、サイドカッタは下端が尖った傾斜面15aを有する形状で、その先端15bが前記共通外接線T上となっているので、その共通外接線Tに沿って地盤をきれいに削ぎ落とすことができる。そして、サイドカッタ15の先端15bが地山に食い込み易くなり切削抵抗が小さくなるので、スムーズな掘削が行えるという利点がある。
そして、サイドカッタ15は、平面視で下端側が先細りとなる形状をなしているので、その先端15bが地山に食い込み易くなり切削抵抗が小さくなるので、スムーズな掘削が行えるという利点がある。
【0036】
また、連結軸18Aにサイドカッタ15が支持され、連結軸18Aが掘削翼12、14を回転させるための回転軸11、13によって回転することがないので、この連結軸18Aに支持されるサイドカッタ15の姿勢が安定し、また掘削翼12、14との位置が変化しないので、地盤改良領域M0を深度方向に一定の形状で掘削することができる。
【0037】
次に、上述した地盤改良装置1を用いた耐震工法について図面に基づいて説明する。
図6(a)および(b)に示すように、本実施の形態による耐震工法は、上述した地盤改良装置1を用いて構造物3の周囲を地盤改良することによるものである。
すなわち、構造物3の下方の地盤を囲う領域の改良対象地盤中に図1に示す地盤改良装置1を投入し、第1掘削翼12および第2掘削翼14により図4(a)に示す第1掘削領域M1を掘削するとともに、サイドカッタ15によって図4(b)に示す第2掘削領域M2を掘削し、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで第1地盤改良体4Aを形成する。
【0038】
本実施の形態による地盤改良装置1では、上述したように簡単な構造であり、小型化させることができるので、バックホウなどの作業機2(図5参照)のアタッチメントとして使用することが可能である。そのため、狭い空間であっても地盤改良装置1を導入して、第1地盤改良体4Aを形成することができる。図6に示す第1地盤改良体4Aは、既設の構造物3下の地盤を囲うようにして外周改良部41が形成され、この外周改良部41によって囲繞された構造物3下の地盤gの水平方向の移動が規制され、変動が抑えられることから、その地盤の破壊を防止することができる。したがって、地震時おける構造物3の振動を小さくすることができ、構造物3の破壊を防ぐことができる。
【0039】
上述のように本実施の形態による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法では、第1掘削翼12、第2掘削翼14、およびサイドカッタ15で掘削される全領域を地盤改良壁としての有効断面とし、地盤改良部の余掘りを無くすことができ、従来のように余掘り部に添加する分の地盤改良材を無くすことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
また、サイドカッタ15は回転や揺動などの駆動手段によらないビット状の簡単な構造となるので、コストの低減が図れる効果を奏する。
【0040】
次に、本実施の形態の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
【0041】
図7〜図10に示す第1〜第4変形例は、上述した実施の形態による地盤改良方法の他の例であり、上記実施の形態と同様に地盤改良装置1(図1参照)を用いて施工している。
【0042】
図7(a)、(b)に示す第1変形例による第2地盤改良体4Bは、平面視四角形状に囲まれた外周改良部41の内側全面にわたって地盤改良装置1(図1参照)によって改良した表面改良部42を形成させている。この場合も、外周改良部41によって、表面改良部42の下面側の地盤gの変動を規制することができる。
【0043】
次に、図8(a)、(b)に示す第2変形例による第3地盤改良体4Cは、構造物3を対象とした建築基礎工法であり、上記実施の形態と同様に地盤改良装置1(図1参照)を用いて施工したものである。
地盤改良部10Gは、住宅などの構造物3を直接支持する地盤を地盤改良する耐震工法であって、構造物3の直下に地盤改良装置1(図1参照)を投入して所定領域を掘削するとともに、その掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌することで外周改良部43を形成したものである。この外周改良部43は、平面視で構造物3の外周部に沿って配置されており、構造物3の直下の地盤gの変動を規制している。なお、この場合、外周改良部43の上端に布基礎(図示省略)を設け、その布基礎上に基礎梁を介して構造物3を構築することも可能である。
【0044】
図9(a)、(b)に示す第3変形例による第4地盤改良体4Dは、ベタ基礎44を外周改良部43の上端に設け、外周支持部43がベタ基礎44を介してその上の構造物3を直接支持する構成となっている。
【0045】
図10(a)、(b)に示す第4変形例による第5地盤改良体4Eは、構造物を構築する前の造成時において、区画を仕切るようにして平面視で田の字状をなす区画改良部45を前記地盤改良装置1(図1参照)によって形成させている。
【0046】
以上、本発明による地盤改良装置、およびこれを用いた地盤改良方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではサイドカッタ15が連結材20を介して第1連結軸18Aに接続されて支持されているが、この位置に支持されることに限定されることはない。
また、サイドカッタ15の幅方向Xの長さ寸法は第2掘削領域M2の範囲内であれば任意に設定することが可能である。
さらに、本実施の形態ではサイドカッタ15が第2掘削翼14よりも上方で、かつ第2掘削翼14の外周縁14aから水平面に対して斜め上方45度に向けた範囲によって囲まれた緩み領域Rに設けられているが、この位置に設けることに制限されることはない。例えば、第2掘削翼14と同じ高さレベルにサイドカッタ15を配置することも可能である。要は、平面視で隣り合う第1掘削翼12、12同士の回転軌跡の共通外接線Tに沿う位置にサイドカッタ15が設けられていれば良いのである。
【0047】
また、第1掘削翼12、第2掘削翼14の外径寸法、配置、形状、数量などの構成は、任意に設定することができる。さらに第1回転軸11、第2回転軸13の本数、長さ寸法なども装置の仕様条件に合わせて任意に設定することができる。例えば、本実施の形態では幅方向中央に位置する第1掘削翼12Bがその両サイドの第1掘削翼12A、12Cよりも下方に突出しているが、これに限らず3つの掘削翼12A〜12Cともに同じ高さレベルに配置される構成であっても良い。
さらにまた、攪拌翼19の大きさ、配置、形状、数量などの構成は、改良対象地盤の地質、掘削速度などに応じて適宜設定することができる。
また、連結軸18の上下方向の設置位置、設置数量についても、本実施の形態に限定されることはなく、任意に設定することができる。
【0048】
また、本実施の形態による地盤改良装置1はバックホウ等の作業機2に取り付けられるアタッチメントとしての使用としているが、このような使用形態であることに制限されることはなく、例えば専用の架台に設置して用いることも可能である。
さらにまた、耐震工法による地盤改良部4A〜4Eの位置、深さ、構造物3と外周改良部41の間隔、表面改良部42の厚さ寸法等も特に制限されることはない。
【符号の説明】
【0049】
1 地盤改良装置
2 作業機
3 構造物
4A〜4E 地盤改良体
11、11A〜11C 第1回転軸
12、12A〜12C 第1掘削翼
13、13A、13B 第2回転軸
14、14A、14B 第2掘削翼
15 サイドカッタ
16 支持フレーム
18 連結軸
19 攪拌翼
41、43 外周改良部
42 表面改良部
44 ベタ基礎
M0 地盤改良領域
M1 第1掘削領域
M2 第2掘削領域
T 共通外接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中を移動させて地盤改良を行う地盤改良装置であって、
鉛直軸回りに回転し、互いに平行に設けられた複数の第1回転軸と、
該第1回転軸の下端に固定されて水平回転する第1掘削翼と、
隣り合う前記第1回転軸同士の中間で前記第1回転軸に平行に配置され、前記第1回転軸の回転が伝達されて鉛直軸回りに回転する第2回転軸と、
該第2回転軸の下端に固定されて水平方向に回転する第2掘削翼と、
前記第1掘削翼及び前記第2掘削翼によって掘削されない断面領域内に位置し、隣り合う第1掘削翼同士の回転軌跡の共通外接線に沿って設けられるサイドカッタと、
を備えていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記サイドカッタは、前記第2掘削翼の外周縁から水平面に対して斜め上方に向けた範囲によって囲まれた領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記サイドカッタは、内面側において、平面視で中央部から外周部へ向かうにしたがって漸次前記共通外接線を含む鉛直面に向かう傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記サイドカッタは、平面視で下端側が先細りとなる形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記第1回転軸及び前記第2回転軸をそれぞれ回転自在に水平方向に連結する連結軸が設けられ、
該連結軸に前記サイドカッタが支持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の地盤改良装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、
前記地盤改良装置を改良対象地盤上に設置し、前記第1回転軸および第2回転軸とともに複数の前記第1掘削翼および第2掘削翼を回転させて第1掘削領域の地盤を掘削する工程と、
前記サイドカッタで前記断面領域に相当する第2掘削領域を掘削する工程と、
前記第1掘削領域および第2掘削領域を掘削した地盤に地盤改良材を混合させて攪拌する工程と、
を有することを特徴とする地盤改良装置を用いた地盤改良方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−83068(P2013−83068A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222892(P2011−222892)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(511243602)株式会社リアス (3)
【Fターム(参考)】