地盤状態判定装置及び地盤状態判定プログラム
【課題】宅地の地盤の状態を好適に判定することが可能な地盤状態判定装置を提供する。
【解決手段】地盤状態判定装置20は、宅地の地盤に関する地盤定性データと、宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部21と、取得された地盤定性データ及び地盤定量データに基づいて、地盤の状態を判定する判定部23と、判定結果を出力する出力部24と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】地盤状態判定装置20は、宅地の地盤に関する地盤定性データと、宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部21と、取得された地盤定性データ及び地盤定量データに基づいて、地盤の状態を判定する判定部23と、判定結果を出力する出力部24と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤状態判定装置及び地盤状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、宅地に建物を建てる前に、宅地の地盤の定量的なデータに基づいて地盤の状態を判定し、判定結果に基づいて基礎形状又は基礎補強工法を判断する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−68134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された技術は、宅地の地盤の定量的なデータのみに基づいて、基礎形状及び基礎補強工法のランクを判断するものである。基礎設計者は、かかる基礎形状及び基礎補強工法のランクを参考に、地盤の定性的なデータを加味して最終的な基礎形状及び基礎補強工法を決定する。すなわち、基礎設計者の判断が入り込む余地があるため、基礎設計者の熟練度合いが異なれば、地盤状態は異なるように判定されてしまい、基礎形状及び基礎補強工法の最終決定にバラツキが出るおそれがある。また、基礎設計者の判断が入り込むため、どうしても基礎形状及び基礎補強工法の最終決定が安全側に偏ってしまい、コストが嵩むおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みて創案されたものであり、宅地の地盤の状態を好適に判定することが可能な地盤状態判定装置及び地盤状態判定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の地盤状態判定装置は、宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部と、取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部と、前記判定部による判定結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、地盤定量データだけでなく、地盤定性データにも基づいて宅地の地盤状態を判定するので、基礎設計者の判断によらず、好適な判定を行うことができるとともに、判定が安全側に偏ってコストが嵩むことを防ぐことができる。
【0008】
前記地盤状態判定装置は、取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部をさらに備え、前記判定部は、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する構成であってもよい。
【0009】
かかる構成によると、建物を宅地に建てた場合の地盤の傾斜角を用いるので、より好適な判定を行うことができる。
【0010】
前記データ取得部は、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得し、前記判定部は、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する構成であってもよい。
【0011】
かかる構成によると、さらに既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データに基づいて宅地の地盤状態を判定するので、より好適な判定を行うことができる。
【0012】
また、本発明の地盤状態判定プログラムは、コンピュータを前記地盤状態判定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、宅地の地盤の状態を好適に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る地盤状態判定システムを模式的に示す図である。
【図2】入力画面の一例を示す図である。
【図3】入力画面の一例を示す図である。
【図4】入力画面の一例を示す図である。
【図5】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図6】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図7】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図8】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図9】入力画面の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る判定部に記憶された総合判定テーブルを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る地盤状態判定システム1は、コンピュータ等から構成されており、キーボード、マウス等の入力装置10と、地盤状態判定装置20と、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置30と、を備える。入力装置10は、ユーザによる操作に基づいて、地盤定性データ、地盤定量データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、周辺状況定性データを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0017】
地盤定性データとは、宅地の地盤に関する定性的なデータである。
地盤定性データとしては、切り盛り造成地盤、傾斜地ですべり崩壊する危険のある地盤、不均質で軟弱な地盤、盛り土厚さに大きな差のある地盤、擁壁の埋め戻し部に建物がかかる場合、盛り土材が不良な地盤、古い盛り土と新しい盛り土に建物が跨る地盤、谷埋め盛り土で傾斜や沈下が生じやすい地盤等が挙げられる。
【0018】
地盤定量データとは、宅地の地盤に関する定量的なデータであり、建物建設による地中増加応力、圧密対象層厚、SWS試験における荷重、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数、有効上載圧、N値、地中応力、層厚等が挙げられる。
【0019】
既存構造物定性データとは、宅地の既存構造物(既存家屋、及び、他の既存構造物(宅地内の擁壁、土留め、塀等))に関する定性的なデータである。
既存家屋に関する定性的なデータとしては、地盤改良実績の有無、基礎及び外壁の(1mm以上の)亀裂の有無、柱の傾斜の有無、建具の不良の有無、クロスの亀裂の有無等が挙げられる。
擁壁及び土留めに関する定性的なデータとしては、はらみによる(著しい)変位の有無、頂部転倒による(著しい)変位の有無、(著しい)ひび割れの有無、伸縮目地の(著しい)食い違いの有無、裏込め土の(大きい)陥没の有無、背面の滞水の有無等が挙げられる。
塀に関する定性的なデータとしては、頂部転倒による(著しい)変位の有無、(著しい)ひび割れの有無等が挙げられる。
【0020】
既存構造物定量データとは、宅地の既存構造物に関する定量的なデータである。
既存家屋に関する定量的なデータとしては、測量された水準に基づく傾斜角等が挙げられる。
他の既存構造物に関する定量的なデータとしては、測量された水準に基づく傾斜角等が挙げられる。
【0021】
周辺状況定性データとは、宅地の周辺状況に関する定性的なデータである。
宅地から100m以内の周辺状況に関する定性的なデータとしては、大規模造成の計画の有無、高層建築物の計画の有無、腐植土の有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、周辺家屋に関する定性的なデータとしては、地盤改良実績の有無、基礎及び外壁の(1mm以上の)亀裂の有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、擁壁、土留め、塀等に関する定性的なデータとしては、電柱の(著しい)沈下・傾斜の有無、擁壁・塀の(著しい)ひび割れ・傾斜の有無、道路の(著しい)ひび割れ・波打ちの有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、環境に関する定性的なデータとしては、河川・水路・海・湖・沼・池の有無等が挙げられる。
【0022】
地盤状態判定装置20は、CPU、RAM、ROM、入出力回路等から構成されており、機能部として、データ取得部21と、傾斜角算出部22と、判定部23と、判定結果出力部24と、を備える。
【0023】
データ取得部21は、入力装置10から出力された各種データを取得し、地盤定量データを傾斜角算出部22へ出力するとともに、地盤定性データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、及び、周辺状況定性データを判定部23へ出力する。
【0024】
傾斜角算出部22は、データ取得部21から出力された地盤定量データを取得し、取得された地盤定量データに基づいて、宅地の地盤に建物を建てた場合の地盤の沈下量を算出するとともに、かかる沈下量に基づいて、宅地の地盤に建物を建てた場合の地盤の傾斜角を算出し、算出された傾斜角を判定部23へ出力する。
【0025】
本実施形態において、傾斜角算出部22は、圧密沈下量及び即時沈下量を算出するとともに、圧密沈下量による傾斜角と、圧密沈下量及び即時沈下量による傾斜角と、を算出し、算出結果を判定部23へ出力する。
【0026】
≪圧密沈下量の算出≫
傾斜角算出部22は、mv法によって圧密沈下量Sa[m]を算出する。
Sa=mv・Δσ・H
mv=1/80c
=1/40qu
=1/40(45WSW+0.75NSW)
ここで、mvは、体積圧密係数[m2/kN]、Δσは、建物建設による地中増加応力[kN/m2]、Hは、圧密対象層厚[m]、cは、圧密対象層の粘着力[kN/m2]、quは、圧密対象層の一軸圧密強さ[kN/m2]、WSWは、SWS試験における荷重[kN]、NSWは、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数[回/m]である。
【0027】
すなわち、データ取得部21は、地盤定量データとして、建物建設による地中増加応力Δσ、圧密対象層厚H、SWS試験における荷重WSW、及び、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数NSWを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて圧密沈下量Sa[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0028】
なお、傾斜角算出部22は、CC法によって圧密沈下量Saを算出する構成であってもよい。
Sa={CC・H/(1+e0)}・log{(PC+Δσ)/PC}
e0=(1+w/100)・2.65/ρ−1
CC=0.01WL
WL=1.1W
ここで、CCは、圧縮指数、Hは、圧密対象層厚[m]、e0は、初期間隙比、PCは、圧密降伏応力[kN/m2](有効上載圧σ0でも可)、WLは、液性限界[%]、Wは、含水比[%]、ρは、湿潤密度[g/cm3]である。なお、湿潤密度ρ[g/cm3]は、例えば、砂質土で1.8、シルトで1.6、粘性土で1.6、腐植土で1.0である。
【0029】
地盤状態判定装置20は、例えば図2に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する土質を選択したり数値を入れたりすることによって圧縮指数CC等が入力されてOKボタンが押下されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。出力されたデータはデータ取得部21によって取得され、続いて、地盤状態判定措置20は、例えば図3に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して建物荷重及び基礎荷重を入れたり基礎の種類を選択したりすること荷重に関するデータが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力される。出力されたデータはデータ取得部21によって取得され、傾斜角算出部22は、取得されたデータに基づいて圧密沈下量Sa及び即時沈下量Sb並びに長期地耐力を算出し、算出結果を出力装置30に表示させる。
【0030】
≪即時沈下量の算出≫
また、傾斜角算出部22は、地盤が砂層である場合には、De Beerの式によって即時沈下量Sbを算出する。
【数1】
ここで、P1は、有効上載圧[kN/m2]、Nは、N値、ΔPは、地中応力[kN/m2]、dzは、層厚[m]である。
【0031】
すなわち、地盤が砂層である場合には、データ取得部21は、地盤定量データとして、有効上載圧P1、N値N、地中応力ΔP、及び層厚dzを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて即時沈下量Sb[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0032】
一方、傾斜角算出部22は、地盤が粘土層である場合には、mv法によって即時沈下量Sbを算出する。
【0033】
Sb=mv・Δσ・H
mv=1/150qu
=1/150(45WSW+0.75NSW)
【0034】
すなわち、地盤が粘土層である場合には、データ取得部21は、地盤定量データとして、建物建設による地中増加応力Δσ、圧密対象層厚H、SWS試験における荷重WSW、及び、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数NSWを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて即時沈下量Sb[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0035】
≪傾斜角の算出≫
続いて、傾斜角算出部22は、圧密沈下量Saによる地盤の傾斜角φaを算出する。
φa=|Sai−Saj|/Lij
ここで、Saiは、調査ポイントiの圧密沈下量、Sajは、調査ポイントjの圧密沈下量、Lijは、調査ポイントi,j間の距離である。
【0036】
また、傾斜角算出部22は、圧密沈下量Sa及び即時沈下量Sbの合計沈下量Sc(=Sa+Sb)による地盤の傾斜角φcを算出する。
φc=|Sci−Scj|/Lij
ここで、Sciは、調査ポイントiの合計沈下量、Scjは、調査ポイントjの合計沈下量、Lijは、調査ポイントi,j間の距離である。
【0037】
傾斜角算出部22は、各調査ポイントi,j間の傾斜角φa,φcを算出し、最大となる傾斜角φa,φcを判定部23へ出力する。
【0038】
判定部23は、データ取得部21から出力された地盤定性データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データと、傾斜角算出部22から出力された傾斜角φa,φb(地盤定量データの一種)と、に基づいて、宅地の地盤の状態を判定する。この判定部23は、判定テーブル23a〜23c及び総合判定テーブル23dを備えており、各種データを用いて判定テーブルを検索することによって、判定結果を抽出する。
【0039】
判定テーブル23aでは、既存構造物定量データ及び既存構造物定性データと、これらデータによる宅地の地盤状態の判定結果X1と、が関連付けられている(図5及び図6参照)。
判定テーブル23bでは、周辺状況定性データと、周辺状況定性データによる宅地の地盤状態の判定結果X2と、が関連付けられている(図7参照)。
判定テーブル23cでは、地盤定量データと、地盤定量データによる宅地の地盤状態の判定結果X3と、が関連付けられている(図9参照)。
判定テーブル23dでは、地盤定性データと、前記した判定結果X1〜X3と、宅地の地盤状態の総合判定結果と、が関連付けられている(図10参照)。
【0040】
≪既存構造物定性データ及び既存構造物定量データによる判定≫
地盤状態判定装置20は、図3のOKボタンが押下されると、例えば図4に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する項目にチェックを入れたり数値を入れたりすることによって既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、周辺状況定性データが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0041】
まず、判定部23は、既存構造物定性データ(ここでは、既存家屋の地盤改良実績の有無)及び既存構造物定量データを用いて図2に示す判定テーブル23aを参照することによって、既存構造物定性データ及び既存構造物定量データによる判定を行う(一次判定)。例えば、ケース02は、宅地に既存家屋が建っておらず、他の既存構造物の測量された水準に基づく傾斜角が3/1000よりも大きく6/1000以下の場合であり、判定部23は、一次判定結果として、二次判定を行うと判定する。
【0042】
続いて、判定部23は、一次判定結果による必要に応じて、既存構造物定性データを用いて図5に示す判定テーブル23aを参照することによって、既存構造物定性データによる判定を行う(二次判定)とともに、一次判定結果及び二次判定結果による判定結果X1を抽出する。ここで、判定結果X1は、良い方から順にA→Cと段階的に分類されている。例えば、ケース01は、一次判定結果がOKの場合であり、判定部23は、二次判定を行わず、判定結果X1「B」を抽出する。
【0043】
≪周辺状況定性データによる判定≫
また、判定部23は、宅地から100m以内の周辺状況定性データを用いて図6に示す判定テーブル23bを参照することによって、周辺状況定性データによる判定を行う(一次判定)。
【0044】
続いて、判定部23は、一次判定結果による必要に応じて、宅地から20m以内の周辺状況定性データを用いて図7に示す判定テーブル23bを参照することによって、周辺状況定性データによる判定を行う(二次判定)とともに、一次判定結果及び二次判定結果による判定結果X2を抽出する。ここで、判定結果X2は、良い方から順にA→Cと段階的に分類されている。
【0045】
≪宅地定量データによる判定≫
また、判定部23は、傾斜角φa,φcを用いて図5に示す判定テーブル23cを参照することによって、宅地定量データによる判定結果X3を抽出する。ここで、判定結果X3は、良い方から順にA→Fと段階的に分類されている。
【0046】
≪地盤定性データ及び判定結果X1,X2,X3による総合判定≫
地盤状態判定装置20は、図4のOKボタンが押下されると、例えば図9に示す入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する項目にチェックを入れることによって地盤定性データが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0047】
続いて、判定部23は、地盤定性データ及び判定結果X1,X2,X3を用いて図6に示す総合判定テーブル23dを参照することによって、宅地の地盤が安定地盤であるか不安定地盤であるかを示す総合判定結果を抽出し、抽出された総合判定結果を判定結果出力部24へ出力する。例えば、地盤定性データが、切り盛り造成地盤である場合には、判定部23は、判定結果X1,X2,X3に応じた総合判定結果を抽出し、地盤定性データが、傾斜地ですべり崩壊する危険のある地盤である場合には、判定部23は、判定結果X1,X2,X3によらず、不安定地盤であると判定する。
【0048】
判定結果出力部24は、判定部23から出力された判定結果(総合判定結果)を取得し、判定結果を出力装置30としてのスピーカに発話させるための判定結果音声信号をスピーカへ出力したり、判定結果を出力装置30としてのディスプレイに表示させるための判定結果画像信号をディスプレイへ出力したりする。
【0049】
本発明の実施形態に係る地盤状態判定システム1は、地盤定量データだけでなく、地盤定性データにも基づいて宅地の地盤状態を判定するので、基礎設計者の判断によらず、好適な判定を行うことができるとともに、判定が安全側に偏ってコストが嵩むことを防ぐことができる。また、地盤状態判定システム1は、さらに既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データに基づいて宅地の地盤状態を判定するので、より好適な判定を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、データ取得部21が地盤定量データとして傾斜角φa,φcを取得する場合には、傾斜角算出部22を省略することができる。また、判定部23による判定結果X1,X2,X3の算出順序は、適宜変更可能である。また、判定部23による判定手法は、安定地盤であるか不安定地盤であるかの二択で判定することに限定されず、3段階以上のランクで判定したり、点数化したりする構成であってもよい。また、本発明は、コンピュータを前記した地盤状態判定装置20として機能させる地盤状態判定プログラムとしても具現化可能である。また、地盤状態判定装置20は、判定結果X1,X2を用いずに地盤定性データ及び判定結果X3に基づいて総合判定を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
20 地盤状態判定装置
21 データ取得部
22 傾斜角算出部
23 判定部
24 判定結果出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤状態判定装置及び地盤状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、宅地に建物を建てる前に、宅地の地盤の定量的なデータに基づいて地盤の状態を判定し、判定結果に基づいて基礎形状又は基礎補強工法を判断する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−68134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された技術は、宅地の地盤の定量的なデータのみに基づいて、基礎形状及び基礎補強工法のランクを判断するものである。基礎設計者は、かかる基礎形状及び基礎補強工法のランクを参考に、地盤の定性的なデータを加味して最終的な基礎形状及び基礎補強工法を決定する。すなわち、基礎設計者の判断が入り込む余地があるため、基礎設計者の熟練度合いが異なれば、地盤状態は異なるように判定されてしまい、基礎形状及び基礎補強工法の最終決定にバラツキが出るおそれがある。また、基礎設計者の判断が入り込むため、どうしても基礎形状及び基礎補強工法の最終決定が安全側に偏ってしまい、コストが嵩むおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みて創案されたものであり、宅地の地盤の状態を好適に判定することが可能な地盤状態判定装置及び地盤状態判定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の地盤状態判定装置は、宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部と、取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部と、前記判定部による判定結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、地盤定量データだけでなく、地盤定性データにも基づいて宅地の地盤状態を判定するので、基礎設計者の判断によらず、好適な判定を行うことができるとともに、判定が安全側に偏ってコストが嵩むことを防ぐことができる。
【0008】
前記地盤状態判定装置は、取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部をさらに備え、前記判定部は、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する構成であってもよい。
【0009】
かかる構成によると、建物を宅地に建てた場合の地盤の傾斜角を用いるので、より好適な判定を行うことができる。
【0010】
前記データ取得部は、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得し、前記判定部は、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する構成であってもよい。
【0011】
かかる構成によると、さらに既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データに基づいて宅地の地盤状態を判定するので、より好適な判定を行うことができる。
【0012】
また、本発明の地盤状態判定プログラムは、コンピュータを前記地盤状態判定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、宅地の地盤の状態を好適に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る地盤状態判定システムを模式的に示す図である。
【図2】入力画面の一例を示す図である。
【図3】入力画面の一例を示す図である。
【図4】入力画面の一例を示す図である。
【図5】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図6】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図7】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図8】図1の判定テーブルを模式的に示す図である。
【図9】入力画面の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る判定部に記憶された総合判定テーブルを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る地盤状態判定システム1は、コンピュータ等から構成されており、キーボード、マウス等の入力装置10と、地盤状態判定装置20と、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置30と、を備える。入力装置10は、ユーザによる操作に基づいて、地盤定性データ、地盤定量データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、周辺状況定性データを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0017】
地盤定性データとは、宅地の地盤に関する定性的なデータである。
地盤定性データとしては、切り盛り造成地盤、傾斜地ですべり崩壊する危険のある地盤、不均質で軟弱な地盤、盛り土厚さに大きな差のある地盤、擁壁の埋め戻し部に建物がかかる場合、盛り土材が不良な地盤、古い盛り土と新しい盛り土に建物が跨る地盤、谷埋め盛り土で傾斜や沈下が生じやすい地盤等が挙げられる。
【0018】
地盤定量データとは、宅地の地盤に関する定量的なデータであり、建物建設による地中増加応力、圧密対象層厚、SWS試験における荷重、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数、有効上載圧、N値、地中応力、層厚等が挙げられる。
【0019】
既存構造物定性データとは、宅地の既存構造物(既存家屋、及び、他の既存構造物(宅地内の擁壁、土留め、塀等))に関する定性的なデータである。
既存家屋に関する定性的なデータとしては、地盤改良実績の有無、基礎及び外壁の(1mm以上の)亀裂の有無、柱の傾斜の有無、建具の不良の有無、クロスの亀裂の有無等が挙げられる。
擁壁及び土留めに関する定性的なデータとしては、はらみによる(著しい)変位の有無、頂部転倒による(著しい)変位の有無、(著しい)ひび割れの有無、伸縮目地の(著しい)食い違いの有無、裏込め土の(大きい)陥没の有無、背面の滞水の有無等が挙げられる。
塀に関する定性的なデータとしては、頂部転倒による(著しい)変位の有無、(著しい)ひび割れの有無等が挙げられる。
【0020】
既存構造物定量データとは、宅地の既存構造物に関する定量的なデータである。
既存家屋に関する定量的なデータとしては、測量された水準に基づく傾斜角等が挙げられる。
他の既存構造物に関する定量的なデータとしては、測量された水準に基づく傾斜角等が挙げられる。
【0021】
周辺状況定性データとは、宅地の周辺状況に関する定性的なデータである。
宅地から100m以内の周辺状況に関する定性的なデータとしては、大規模造成の計画の有無、高層建築物の計画の有無、腐植土の有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、周辺家屋に関する定性的なデータとしては、地盤改良実績の有無、基礎及び外壁の(1mm以上の)亀裂の有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、擁壁、土留め、塀等に関する定性的なデータとしては、電柱の(著しい)沈下・傾斜の有無、擁壁・塀の(著しい)ひび割れ・傾斜の有無、道路の(著しい)ひび割れ・波打ちの有無等が挙げられる。
宅地から20m以内の周辺状況の、環境に関する定性的なデータとしては、河川・水路・海・湖・沼・池の有無等が挙げられる。
【0022】
地盤状態判定装置20は、CPU、RAM、ROM、入出力回路等から構成されており、機能部として、データ取得部21と、傾斜角算出部22と、判定部23と、判定結果出力部24と、を備える。
【0023】
データ取得部21は、入力装置10から出力された各種データを取得し、地盤定量データを傾斜角算出部22へ出力するとともに、地盤定性データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、及び、周辺状況定性データを判定部23へ出力する。
【0024】
傾斜角算出部22は、データ取得部21から出力された地盤定量データを取得し、取得された地盤定量データに基づいて、宅地の地盤に建物を建てた場合の地盤の沈下量を算出するとともに、かかる沈下量に基づいて、宅地の地盤に建物を建てた場合の地盤の傾斜角を算出し、算出された傾斜角を判定部23へ出力する。
【0025】
本実施形態において、傾斜角算出部22は、圧密沈下量及び即時沈下量を算出するとともに、圧密沈下量による傾斜角と、圧密沈下量及び即時沈下量による傾斜角と、を算出し、算出結果を判定部23へ出力する。
【0026】
≪圧密沈下量の算出≫
傾斜角算出部22は、mv法によって圧密沈下量Sa[m]を算出する。
Sa=mv・Δσ・H
mv=1/80c
=1/40qu
=1/40(45WSW+0.75NSW)
ここで、mvは、体積圧密係数[m2/kN]、Δσは、建物建設による地中増加応力[kN/m2]、Hは、圧密対象層厚[m]、cは、圧密対象層の粘着力[kN/m2]、quは、圧密対象層の一軸圧密強さ[kN/m2]、WSWは、SWS試験における荷重[kN]、NSWは、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数[回/m]である。
【0027】
すなわち、データ取得部21は、地盤定量データとして、建物建設による地中増加応力Δσ、圧密対象層厚H、SWS試験における荷重WSW、及び、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数NSWを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて圧密沈下量Sa[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0028】
なお、傾斜角算出部22は、CC法によって圧密沈下量Saを算出する構成であってもよい。
Sa={CC・H/(1+e0)}・log{(PC+Δσ)/PC}
e0=(1+w/100)・2.65/ρ−1
CC=0.01WL
WL=1.1W
ここで、CCは、圧縮指数、Hは、圧密対象層厚[m]、e0は、初期間隙比、PCは、圧密降伏応力[kN/m2](有効上載圧σ0でも可)、WLは、液性限界[%]、Wは、含水比[%]、ρは、湿潤密度[g/cm3]である。なお、湿潤密度ρ[g/cm3]は、例えば、砂質土で1.8、シルトで1.6、粘性土で1.6、腐植土で1.0である。
【0029】
地盤状態判定装置20は、例えば図2に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する土質を選択したり数値を入れたりすることによって圧縮指数CC等が入力されてOKボタンが押下されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。出力されたデータはデータ取得部21によって取得され、続いて、地盤状態判定措置20は、例えば図3に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して建物荷重及び基礎荷重を入れたり基礎の種類を選択したりすること荷重に関するデータが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力される。出力されたデータはデータ取得部21によって取得され、傾斜角算出部22は、取得されたデータに基づいて圧密沈下量Sa及び即時沈下量Sb並びに長期地耐力を算出し、算出結果を出力装置30に表示させる。
【0030】
≪即時沈下量の算出≫
また、傾斜角算出部22は、地盤が砂層である場合には、De Beerの式によって即時沈下量Sbを算出する。
【数1】
ここで、P1は、有効上載圧[kN/m2]、Nは、N値、ΔPは、地中応力[kN/m2]、dzは、層厚[m]である。
【0031】
すなわち、地盤が砂層である場合には、データ取得部21は、地盤定量データとして、有効上載圧P1、N値N、地中応力ΔP、及び層厚dzを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて即時沈下量Sb[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0032】
一方、傾斜角算出部22は、地盤が粘土層である場合には、mv法によって即時沈下量Sbを算出する。
【0033】
Sb=mv・Δσ・H
mv=1/150qu
=1/150(45WSW+0.75NSW)
【0034】
すなわち、地盤が粘土層である場合には、データ取得部21は、地盤定量データとして、建物建設による地中増加応力Δσ、圧密対象層厚H、SWS試験における荷重WSW、及び、SWS試験における貫入量1[m]あたりの半回転数NSWを調査ポイントごとに取得して傾斜角算出部22へ出力し、傾斜角算出部22は、これらの値を用いて即時沈下量Sb[m]を調査ポイントごとに算出する。
【0035】
≪傾斜角の算出≫
続いて、傾斜角算出部22は、圧密沈下量Saによる地盤の傾斜角φaを算出する。
φa=|Sai−Saj|/Lij
ここで、Saiは、調査ポイントiの圧密沈下量、Sajは、調査ポイントjの圧密沈下量、Lijは、調査ポイントi,j間の距離である。
【0036】
また、傾斜角算出部22は、圧密沈下量Sa及び即時沈下量Sbの合計沈下量Sc(=Sa+Sb)による地盤の傾斜角φcを算出する。
φc=|Sci−Scj|/Lij
ここで、Sciは、調査ポイントiの合計沈下量、Scjは、調査ポイントjの合計沈下量、Lijは、調査ポイントi,j間の距離である。
【0037】
傾斜角算出部22は、各調査ポイントi,j間の傾斜角φa,φcを算出し、最大となる傾斜角φa,φcを判定部23へ出力する。
【0038】
判定部23は、データ取得部21から出力された地盤定性データ、既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データと、傾斜角算出部22から出力された傾斜角φa,φb(地盤定量データの一種)と、に基づいて、宅地の地盤の状態を判定する。この判定部23は、判定テーブル23a〜23c及び総合判定テーブル23dを備えており、各種データを用いて判定テーブルを検索することによって、判定結果を抽出する。
【0039】
判定テーブル23aでは、既存構造物定量データ及び既存構造物定性データと、これらデータによる宅地の地盤状態の判定結果X1と、が関連付けられている(図5及び図6参照)。
判定テーブル23bでは、周辺状況定性データと、周辺状況定性データによる宅地の地盤状態の判定結果X2と、が関連付けられている(図7参照)。
判定テーブル23cでは、地盤定量データと、地盤定量データによる宅地の地盤状態の判定結果X3と、が関連付けられている(図9参照)。
判定テーブル23dでは、地盤定性データと、前記した判定結果X1〜X3と、宅地の地盤状態の総合判定結果と、が関連付けられている(図10参照)。
【0040】
≪既存構造物定性データ及び既存構造物定量データによる判定≫
地盤状態判定装置20は、図3のOKボタンが押下されると、例えば図4に示すような入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する項目にチェックを入れたり数値を入れたりすることによって既存構造物定性データ、既存構造物定量データ、周辺状況定性データが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0041】
まず、判定部23は、既存構造物定性データ(ここでは、既存家屋の地盤改良実績の有無)及び既存構造物定量データを用いて図2に示す判定テーブル23aを参照することによって、既存構造物定性データ及び既存構造物定量データによる判定を行う(一次判定)。例えば、ケース02は、宅地に既存家屋が建っておらず、他の既存構造物の測量された水準に基づく傾斜角が3/1000よりも大きく6/1000以下の場合であり、判定部23は、一次判定結果として、二次判定を行うと判定する。
【0042】
続いて、判定部23は、一次判定結果による必要に応じて、既存構造物定性データを用いて図5に示す判定テーブル23aを参照することによって、既存構造物定性データによる判定を行う(二次判定)とともに、一次判定結果及び二次判定結果による判定結果X1を抽出する。ここで、判定結果X1は、良い方から順にA→Cと段階的に分類されている。例えば、ケース01は、一次判定結果がOKの場合であり、判定部23は、二次判定を行わず、判定結果X1「B」を抽出する。
【0043】
≪周辺状況定性データによる判定≫
また、判定部23は、宅地から100m以内の周辺状況定性データを用いて図6に示す判定テーブル23bを参照することによって、周辺状況定性データによる判定を行う(一次判定)。
【0044】
続いて、判定部23は、一次判定結果による必要に応じて、宅地から20m以内の周辺状況定性データを用いて図7に示す判定テーブル23bを参照することによって、周辺状況定性データによる判定を行う(二次判定)とともに、一次判定結果及び二次判定結果による判定結果X2を抽出する。ここで、判定結果X2は、良い方から順にA→Cと段階的に分類されている。
【0045】
≪宅地定量データによる判定≫
また、判定部23は、傾斜角φa,φcを用いて図5に示す判定テーブル23cを参照することによって、宅地定量データによる判定結果X3を抽出する。ここで、判定結果X3は、良い方から順にA→Fと段階的に分類されている。
【0046】
≪地盤定性データ及び判定結果X1,X2,X3による総合判定≫
地盤状態判定装置20は、図4のOKボタンが押下されると、例えば図9に示す入力画面をディスプレイである出力装置30に表示させる。ユーザが入力装置10を操作して該当する項目にチェックを入れることによって地盤定性データが入力されると、入力装置10は、入力されたデータを地盤状態判定装置20へ出力する。
【0047】
続いて、判定部23は、地盤定性データ及び判定結果X1,X2,X3を用いて図6に示す総合判定テーブル23dを参照することによって、宅地の地盤が安定地盤であるか不安定地盤であるかを示す総合判定結果を抽出し、抽出された総合判定結果を判定結果出力部24へ出力する。例えば、地盤定性データが、切り盛り造成地盤である場合には、判定部23は、判定結果X1,X2,X3に応じた総合判定結果を抽出し、地盤定性データが、傾斜地ですべり崩壊する危険のある地盤である場合には、判定部23は、判定結果X1,X2,X3によらず、不安定地盤であると判定する。
【0048】
判定結果出力部24は、判定部23から出力された判定結果(総合判定結果)を取得し、判定結果を出力装置30としてのスピーカに発話させるための判定結果音声信号をスピーカへ出力したり、判定結果を出力装置30としてのディスプレイに表示させるための判定結果画像信号をディスプレイへ出力したりする。
【0049】
本発明の実施形態に係る地盤状態判定システム1は、地盤定量データだけでなく、地盤定性データにも基づいて宅地の地盤状態を判定するので、基礎設計者の判断によらず、好適な判定を行うことができるとともに、判定が安全側に偏ってコストが嵩むことを防ぐことができる。また、地盤状態判定システム1は、さらに既存構造物定性データ、既存構造物定量データ及び周辺状況定性データに基づいて宅地の地盤状態を判定するので、より好適な判定を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、データ取得部21が地盤定量データとして傾斜角φa,φcを取得する場合には、傾斜角算出部22を省略することができる。また、判定部23による判定結果X1,X2,X3の算出順序は、適宜変更可能である。また、判定部23による判定手法は、安定地盤であるか不安定地盤であるかの二択で判定することに限定されず、3段階以上のランクで判定したり、点数化したりする構成であってもよい。また、本発明は、コンピュータを前記した地盤状態判定装置20として機能させる地盤状態判定プログラムとしても具現化可能である。また、地盤状態判定装置20は、判定結果X1,X2を用いずに地盤定性データ及び判定結果X3に基づいて総合判定を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
20 地盤状態判定装置
21 データ取得部
22 傾斜角算出部
23 判定部
24 判定結果出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部と、
取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする地盤状態判定装置。
【請求項2】
取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤状態判定装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得し、
前記判定部は、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤状態判定装置。
【請求項4】
コンピュータを、
宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部、
取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部、
及び、
前記判定部による判定結果を出力する出力部、
として機能させることを特徴とする地盤状態判定プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部としてさらに機能させ、
前記判定部に、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定させる
ことを特徴とする請求項4に記載の地盤状態判定プログラム。
【請求項6】
前記データ取得部に、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得させ、
前記判定部に、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定させる
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の地盤状態判定プログラム。
【請求項1】
宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部と、
取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする地盤状態判定装置。
【請求項2】
取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤状態判定装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得し、
前記判定部は、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤状態判定装置。
【請求項4】
コンピュータを、
宅地の地盤に関する地盤定性データと、前記宅地の地盤に関する地盤定量データと、を取得するデータ取得部、
取得された前記地盤定性データ及び前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の状態を判定する判定部、
及び、
前記判定部による判定結果を出力する出力部、
として機能させることを特徴とする地盤状態判定プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
取得された前記地盤定量データに基づいて、前記地盤の沈下量を算出するとともに、算出された前記沈下量に基づいて、当該沈下量による地盤の傾斜角を算出する傾斜角算出部としてさらに機能させ、
前記判定部に、前記地盤定量データとしての前記傾斜角及び前記地盤定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定させる
ことを特徴とする請求項4に記載の地盤状態判定プログラム。
【請求項6】
前記データ取得部に、前記宅地の既存構造物に関する既存構造物定性データ及び既存構造物定量データと、前記宅地の周辺状況に関する周辺状況定性データと、をさらに取得させ、
前記判定部に、さらに前記既存構造物定性データ、前記既存構造物定量データ及び前記周辺状況定性データに基づいて、前記地盤の状態を判定させる
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の地盤状態判定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−158872(P2012−158872A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17462(P2011−17462)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
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