説明

地盤補強部材

【課題】廃タイヤを切片状に切断破砕したゴム片を建築・土木用骨材として使用するに際し、運搬性、作業性および補強性に優れ、かつ弾性と透水性を備えた地盤補強部材を提供する
【解決手段】廃タイヤの両サイドウォール部3を切断したリング状台2内に、ゴム片4をバインダーと共に充填した地盤補強部材1である。バインダーとしては、ポリウレタン樹脂および/またはセメントを用いることができ、ゴム片4は、産業用ゴム製品の廃材を切断または破砕して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤補強部材に関し、詳しくは、廃タイヤを切片状に切断破砕したゴム片を建築・土木用骨材として使用するに際し、運搬性、作業性および補強性に優れた地盤補強部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤを切片状に切断破砕したゴム片を建築用骨材として使用することが行われていた。また、ゴム片を盛土材料として使用することも行われており、この場合、ゴム片を袋詰めにして施工現場に運び、現場で袋から出して使用していた。
【0003】
例えば、特許文献1では、地盤に鋤取りを行い透水性シートを設置してその中にゴム片を充填し、砂利等の盛土した路盤が報告されている。また、特許文献2では、ゴム片及びゴム粉の少なくとも一方をバインダーと共に圧縮状態で成形してなるゴム圧縮成形体が報告されている。さらに、非特許文献1および2では、廃タイヤのフープ力を利用し、粒状体に圧をかけながら廃タイヤ内に充填することにより得られた強固な地盤用構造体が報告されている。
【特許文献1】特開平6−123101号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2004−314493号公報(第1頁、図1)
【非特許文献1】廃タイヤを用いた地盤造成法とタイヤ改良体の特性(第5回環境地盤工学シンポジウム、pp189−194,2003.7)
【非特許文献2】種々の粒状体によるタイヤ中詰地盤改良体の作成法(第39回環境地盤工学研究発表会、pp653−654,2004.7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、廃タイヤを切片状に切断破砕したゴム片を盛土材料などとして使用する場合、そのゴム片を袋詰めして施工現場まで運搬するのは容易ではなく、また、現場においてはゴム片を袋から出して敷き詰めなければならないなど、作業性の効率化という点においても問題があった。さらに、その場でゴム片の締め固めを行うため、ゴム片の密度を均一にすることが容易ではないという問題もあった。
【0005】
上記特許文献1記載の路盤及び基礎地盤の造成方法においては、透水シートを設置し、その中にゴム片を充填するといった大掛かりな作業が必要となり、また、上記特許文献2記載のゴム圧縮成形体においては、圧縮工程を要するため設備が大掛かりとならざるを得ないのが実情であった。
【0006】
上記非特許文献1のタイヤ改良体および上記非特許文献2のタイヤ中詰地盤改良体においては、廃タイヤ空洞内の隅々まで粒状体を充填することは、リム部の幅は狭く空洞内はそれから一旦広がる形状になっているため、容易ではなく、そのため、充分にフープ力を活かせないことが問題であった。また、廃タイヤの弾性を活かすために、あるいは廃タイヤを用いた地盤補強部材に透水性を持たせるために、中詰め材も廃タイヤを破砕したゴム片を用いることが有効であるが、詰めにくく固定しにくいという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題点を解消し、廃タイヤを切片状に切断破砕したゴム片を建築・土木用骨材として使用するに際し、運搬性、作業性および補強性に優れ、かつ弾性と透水性を備えた地盤補強部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、予めリング状に切断した廃タイヤの内部にゴム片を充填して固化することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の地盤補強部材は、廃タイヤの両サイドウォール部を切断したリング状台内に、ゴム片をバインダーと共に充填したことを特徴とするものである。本発明の地盤補強部材においては、前記バインダーがポリウレタン樹脂および/またはセメントであることが好ましい。また、前記ゴム片は、産業用ゴム製品の廃材を切断または破砕して得たものを好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の地盤補強部材によれば、両サイドウォール部を切断したリング状台を用いることで、ゴム片を極めて容易に、かつ隅々までスムーズに充填できるため、作業性の効率化が図られる。また、充填したゴム片をバインダーで固化することで廃タイヤのフープ力が有効に作用し、弾性と透水性に優れた地盤補強部材を得ることができる。さらに、バインダーをポリウレタン樹脂および/またはセメントとすることにより、良好な安定性および施工性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明の好適実施の形態について説明する。
図1に示す本発明の好適例の地盤補強部材1は、略円柱状をなし、廃タイヤの両サイドウォール部3を切断してできたトレッド部のみよりなるリング状台2と、その中に充填されるゴム片4とからなる。また、このゴム片4は、バインダーを介在してリング状台2に充填される。
【0012】
本発明の地盤補強部材のリング状台2は、乗用車用廃タイヤまたはトラックバス用大型廃タイヤの両サイドウォール部3を除去することにより形成される。この際、ナイフ等によりトレッド部とサイドウォール部の境界部を切断することで、リング状台2は極めて容易に得られる。リング状台2は、積み重ね可能なように、リング状台2の上面と底面が共に平坦面を形成している。
なお、余ったサイドウォール部3は、例えば北海道では農業用の重しとして、サイロや穀物保管場所で活用される。
【0013】
本発明の地盤補強部材のゴム片4は、産業用ゴム製品の廃材を切断又は破砕して得たものであるのが好ましい。ここで、産業用ゴム製品の廃材としては、廃タイヤ、廃コンベヤベルト、廃ワイヤーブレードホースの他、タイヤ加硫成形後のバリ、更生タイヤ作製のために削り取ったトレッドゴム等が挙げられる。産業用ゴム製品の廃材を破砕して得たゴム片は、該廃材を機械的且つランダムに破砕したものであり、一方、産業用ゴム製品の廃材を切断して得たゴム片は、例えば、廃タイヤを16分割、32分割等の規定の切断方法で切断したものである。但し、廃タイヤの場合、径の大きいビードリングは、破砕及び切断され難いため、予め除いてもよい。廃タイヤから得たゴム片を地盤補強部材に用いることにより、廃タイヤのマテリアルリサイクルが可能となる。また、その他の廃材を使用することにより、廃棄物の削減が可能となる。上記ゴム片は、長径が20〜100mmであるのが好ましい。ここで、ゴム片の長径とは、ゴム片の径が最大となる箇所を測定した値である。また、ゴム片は、スチールコード、有機繊維等が含まれていたり、露出していても構わない。
【0014】
本発明の地盤補強部材のバインダーは、ゴム片4同士を接着して地盤補強部材1を形成するために用いる。ここで、バインダーとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セメント等が挙げられ、地盤補強部材のヒステリシス(残留歪み)を小さくする観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。該ポリウレタン樹脂として、具体的には、三井武田ケミカル(株)のF−707N(商品名)、F−189(商品名)、AX−850(商品名)、F−187(商品名)、F−703N(商品名)等が挙げられる。また、ポリエステル樹脂として、具体的には、(株)エポックのポリエステル樹脂等が挙げられる。上記バインダーの配合量は、ゴム片4の合計100質量部に対して5〜30質量部であり、5〜20質量部が好ましい。バインダーの配合量が5質量部未満では、ゴム片4間の接着が弱く、得られた地盤補強部材1の強度が低下する一方、30質量部を超えると、空隙率が減少し、また、コスト高となる。
【0015】
また、バインダーとしてポリウレタン樹脂を用いる場合、該ポリウレタン樹脂には、必要に応じて硬化反応を促進する触媒を添加してもよい。該触媒として、具体的には、三井武田ケミカル(株)のS−9(商品名)、S−2(商品名)、S−102(商品名)、S−13(商品名)等が挙げられる。上記触媒の配合量は、例えば、ポリウレタン樹脂(バインダー)の配合量の4〜6質量%が適切である。これら樹脂は発泡状態のもの、例えばウレタンフォーム等を用いることも可能である。
【0016】
本発明の地盤補強部材1は、ゴム片4をリング状台2内に充填し、ゴム片4をバインダーで固化することにより作製される。このように、バインダーを介在させることでリング状台内のゴム片4が簡単にはずれ落ちてしまうことを防止するとともに、リング状台2のフープ力が有効に作用することが可能となる。
【0017】
ゴム片4をリング状台2内に充填する際、バインダーにゴム片4を浸す、ゴム片4にバインダーを塗布する、またはスプレーする等の処理を施した後、詰め固めながらリング状台2内に充填することが好ましい。これによりゴム片4同士間の隙間がバインダーにより全て満たされることがなく、透水性を確保することが可能となる。尚、図2に示すように、ゴム片4をリング状台2内に大方詰めてから、バインダーをスプレーしたり、垂らしたりする方法もあるが、透水性の維持および作業性の観点からは、上述の方法がより好ましい。
【0018】
図3に示す本発明の好適な実施形態に係る地盤補強部材1は、ゴム片4に樹脂系のバインダーを浸しながら充填して作製したものであり、また、図4に示す好適な実施形態に係る地盤補強部材1は、セメントと樹脂系のバインダーを併用して浸しながら充填して作製したものである。
【0019】
上述の充填方法により作製された地盤補強部材1は、図5に示すように夫々のリング状台2間に離型フィルム5を噛ませて積層放置することにより効率よく固化され、このようにして優れた安定性および施工性を有する地盤補強部材1が得られる。
【0020】
本発明の地盤補強部材1は、軽量かつ高弾性透水性を有する地盤補強部材として、道路・鉄道の振動伝播抑制工へ適用することができる。本発明の地盤補強部材の好適例においては、図6に示すように、地盤補強部材1を枕木下の道床内に千鳥状にずらしながら積層し埋設する。リング状台2とゴム片4は共にタイヤゴムで形成されているため、地盤補強部材を埋設することで弾性効果により車輌および列車走行時の振動・騒音の低減が可能となる。なお、地盤補強部材1は、リング状台2の中心軸を合わせる状態で積層しても同様の効果が得られる。
【0021】
また、本発明の地盤補強部材の好適例においては、図7に示すように、地盤補強部材1を道路等の盛土内に埋設する。地盤補強部材1は、盛土路床等に積層してまたは単独で用いることができる。また、地盤補強部材1は、リング状台2の中心軸を合わせて積層したり、千鳥状にずらせて積層したり何れも可能である。また、地盤補強部材1を鉛直に立ててまたは斜めにして施工することも可能であるが(図示せず)、地盤補強部材の上面及び底面に大きい土圧がかかる方向に配置施工した場合に矢印に示すようにフープ力が最大限に働き高い強度を発揮するため(図7)、水平に配置施工することがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の地盤補強部材の好適な実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の地盤補強部材の写真図である。
【図3】本発明の地盤補強部材の写真図である。
【図4】本発明の地盤補強部材の写真図である。
【図5】地盤補強部材を積層した状態を示す断面図である。
【図6】地盤補強部材を路線の盛土内に埋設した状態を示す説明図である。
【図7】地盤補強部材を道路盛土へ埋設した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 地盤補強部材
2 リング状台
3 サイドウォール部
4 ゴム片
5 離型フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤの両サイドウォール部を切断したリング状台内に、ゴム片をバインダーと共に充填したことを特徴とする地盤補強部材。
【請求項2】
前記バインダーが、ポリウレタン樹脂および/またはセメントである請求項1記載の地盤補強部材。
【請求項3】
前記ゴム片が、産業用ゴム製品の廃材を切断または破砕して得たものである請求項1または2記載の地盤補強部材。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−121248(P2008−121248A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305053(P2006−305053)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】