説明

地積測量図の世界座標取得方法、地積測量図の世界座標取得装置、地積測量図の世界座標取得プログラム、及び地積測量図の世界座標取得プログラムの記憶媒体

【課題】 TS及びGPS等を用いた引照点における世界座標の付与に際して、TSによる任意座標を精度良く、世界座標に変換することを可能とする。
【解決手段】 この装置は、4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての任意座標及び世界座標の入力を受付ける座標値受付部1と、座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも当該引照点間の距離に関する条件式の係数を算出する距離演算部2と、座標値受付部1が受付けた座標値から少なくとも引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数を算出する挟角演算部3と、距離演算部2が算出した係数及び上記の挟角演算部3が算出した係数とから観測方程式の解として補正値を生成する補正値生成部4と、補正値生成部4が生成した補正値を格納する格納部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地積測量図の世界座標取得方法、地積測量図の世界座標取得装置、地積測量図の世界座標取得プログラム、及び地積測量図の世界座標取得プログラムの記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−115130
【非特許文献1】「17条地図利活用マニュアル −17条地図境界確認と復元−」福永宗雄著、日本加除出版株式会社出版(平成12年11月15日初版発行)143〜146頁
【0003】
従来より、地積測量図は、トータルステーション(TS)の距離測定部、水平角測定部及び高度角測定部によって引照点から地積測量図の境界点までの距離、水平角及び高度角を観測し、これら観測データから、コンピュータで最良線形計算を行うことによって作成されている。作成された地積測量図は、面積を記述して法務局に任意座標で登記される。
上記従来のTSを利用した地積測量では、TSの測量精度の高さから、正確な面積の登記が行えるものであった。
【0004】
一方、2002年度の改正測量法の施行により、基本測量及び公共測量が従うべき測量の基準のうち、経緯度の測定は、従来の日本測地系に代えて世界測地系(測量法第11条第3項)に従って行わねばならなくなった。
そのため、地籍調査などの作業に際して、法務局に登記されている地積測量図から、地積測量図に対し世界測地系座標(世界座標)を付与する必要が生じている。
【0005】
地積測量図に対する世界座標の付与に関しては、一般に、地積測量図の基準点となる引照点の世界座標を求め、この引照点の世界座標を基に、地積測量図を任意座標から世界座標に変換する方法が採られる。
具体的に説明すると、引照点の世界座標を求めるに際し、例えば、TSで実測した上記の引照点にGPS受信アンテナを設置し、GPS衛星の発信電波をGPS受信アンテナで受信し、GPSにて上記引照点の世界座標を取得するという手法が、一般に行われている。その手法として、スタティック法とRTK−GPS法とがある。後者のほうが簡便である。しかし、このRTK−GPSによる世界座標は、GPSの測量精度の低さから、そのままでは、引照点の世界座標として用いることができない。
【0006】
即ち、トータルステーション(TS)測量では、地積測量図のような比較的狭い距離範囲の相対位置関係を正確に測定できるのに対し、GPS測量では、測定距離の大小とは関係無く一定範囲(2cm程度)の測定誤差が常に生じることになり、上記の引照点を正確な世界座標で示すことができないのである。
このため、TS測量による相対位置関係が正確な地積測量図の各引照点の任意座標系における位置と、GPS測量による各引照点の世界座標系における位置(観測世界座標位置という。)との間に、ズレが生じて、GPS測量により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図を単純に任意座標から世界座標に適合させようとすると、TS測量によって得られた引照点(間を結んだ図形)による、正確な形と大きさを有する地積測量図が、変形してしまう。従って、上記のGPS測量の単純な併用では、引照点間の相対的位置関係を変えずに座標系のみを変更する所謂「変換」とは、程遠いものである。
【0007】
この点を解決すべく、上記特許文献1において、GPS測量等により得られた各引照点の世界座標とトータルステーション(TS)測量により得られた各引照点の任意座標とに対し最小バイアス計算を行うことにより、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換することを特徴とする地積測量図の世界座標付与方法が提案されている。
この特許文献1では、上記最小バイアス計算により、GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさを歪めることなく任意座標から世界座標へ変換して適合させることができるとされている。
【0008】
しかし、この特許文献1においては、TSによって実測した引照点(任意座標)を結ぶ図形の重心の位置と、当該引照点にてGPSにて実測した座標(世界座標)を結ぶ図形の重心の位置とが、一致するという前提で、当該重心を中心とする平行移動・回転・伸縮による変換(ヘルマート変換)にて補正が行われるため(特許文献1の段落番号0016の式(1)
及び(2) )、補正後の図形は、思いのほか変形してしまっているのである。例えば、特許文献1の段落番号0027において、3点(引照点A,B,C)の中心は、6mmものバラツキが生じていることが示されている。
【0009】
この点について説明すると、特許文献1の段落番号0026に記されている「トータルステーション(TS)測量による任意座標位置P1 ,P2 ,P3 ,P4 の座標の中心と、GPS測量による観測世界座標位置p1
,p2 ,p3 ,p4 の座標の中心とが一致している。」というのは、誤った認識であり、上記TSで得た各引照点(任意座標)を結ぶ図形の中心(重心)に対して、GPSで得た各引照点(世界座標)を結ぶ図形の中心(重心)は、ノイズ(誤差)が入っており、両中心点間にはズレがある。この点を無視した、即ち、両中心点が一致することを前提とする引用文献1の変換では、上記の通り、誤差を大きなものとしているのである。
また、上記非特許文献1においても、ヘルマート変換を利用して、世界座標を取得するものが記載されているが、上記特許文献1と同じ問題を有している。
尚、上記の座標位置を示す記号P1〜P4及びp1〜p4は、特許文献1の記載をそのまま用いたものであり、本明細書の他の欄で用いる記号と無関係である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記のTS及びGPS等を用いた引照点における世界座標の付与に際して、世界座標を最確値へ変換する補正値について、上記従来の技術に比して精度の高いものを算出できるものとし、TS(トータルステーション)による任意座標を精度良く、世界座標に変換することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、異なる4つの引照点のTSによる任意座標と、当該4つの引照点の世界座標とを用い、当該引照点間の観測方程式について、解を求める条件として上記引照点のうちの2つ対全ての引照点間の距離の他、特に引照点の対全ての当該対間を結ぶ線分同士がなす挟角を用い、世界座標の最確値を得るための補正値を、極めて精度良く求めることができることを見出し、これに基いて本願発明を完成させたものである。
【0012】
即ち、本願第1の発明は、トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得方法について次の構成を採る。
この地積測量図の世界座標取得方法は、トータルステーションにより任意座標p1〜p4を実測した4つの上記引照点について、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標p1’〜p4’を、世界座標の最確値に変換することが可能な補正値を求めるものである。そして、この方法は、上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての、上記任意座標pi(xi ,yi ),pj(xj ,yj
)(i=1,2,3,4、j=1,2,3,4、i≠jとする。)による距離の値Si,j 及び上記世界座標pi’(xi ’,yi ’),pj’(xj ’,yj ’)による距離の値Si,j ’の差ΔSi,j と、当該世界座標によるx方向の距離の値xj ’−xi ’と、当該世界座標によるy方向の距離の値yj ’−yi ’と、上記世界座標による距離の値Si,j ’と、更に、上記対なす引照点間を結ぶ各線分のうち、交差する2つの線分の組全てについての、上記任意座標による引照点間の当該線分の組pi(xi ,yi )pj(xj ,yj
),pi(xi ,yi )pk (xk ,yk )(k=1,2,3,4、i≠j≠kとする。)がなす挟角Tj,i,k 及び上記世界座標による引照点間の当該線分の組pi’(xi ’,yi ’)pj’(xj ’,yj ’),pi’(xi ’,yi ’)pk’(xk ’,yk ’)がなす挟角Tj,i,k ’の差の値ΔTj,i,k とから、上記4つの引照点の世界座標に対する補正値を、引照点の観測方程式の解として算出する。
【0013】
尚、ここでいう引照点とは、通常の引照点のほか、準拠点を含む。即ち、通常引照点といえば、境界点とは異なるものであるが、ここでは境界点となるもの(準拠点)も含む。
また、ここでいうGPS等測量とは、測量点における世界座標を認識できるものであればよく、周回・静止を問わず衛星を利用するものや、地上のビーコン局を利用して世界座標を取得(表示)できるものも含む。例えば、地球を周回する複数の衛星を利用する、通常のGPS(グローバル ポジショニング システム)を利用した測量の他、このようなGPSのデータを地上のビーコン局が発する電波にて補正するD−GPS(ディファレンシャルGPS)や、米国航空局(FAA)による静止衛星を用いたWAASを利用して世界座標を取得するものも含む。また、このGPS等測量とは、実際にGPSを用いて測量するものに限定せず、既に世界座標を既知とする基準点を引照点とし、当該基準点上にてTS測量を行った場合は、当該既知の世界座標を利用することも含む。例えば、国土地理院などが設置した基準点や地方自治体が設置した公共基準点の世界座標を用いる場合も含む。
【0014】
本願第2の発明は、上記本願第1の発明に係る地積測量図の世界座標取得方法について、次の構成を採るものである。
即ち、この方法は、上記の補正値を、4つの引照点の世界座標p1’〜p4’の座標成分に加算することによって、当該引照点の世界座標の最確値を求めるものである。
そして、上記の観測方程式は、V=AΔX−ΔL…式1
にて示される。
上記Vは、観測値の即ちGPSによる各引照点間の世界座標の、残差を成分とする残差ベクトルである。上記観測方程式のΔXは、当該4つの引照点の世界座標成分に加算される、上記補正値を成分とする未知の補正値ベクトルである。上記の補正値の算出において、上記の引照点の全ての対について、上記任意座標による当該引照点間の距離Si,j 及び上記世界座標による当該引照点間の距離Si,j ’の差の値ΔSi,jと、当該引照点の世界座標pi’(xi ’,yi ’),pj’(xj ’,yj ’)とから、距離に関する下記の条件式2、即ち、Vi,j =ai,j Δxi +bi,j Δyi +ci,j Δxj +di,j Δyj −ΔSi,j …式2
(ここで、ai,j =−(xj ’−xi ’)/Si,j ’、bi,j =−(yj ’−yi ’)/Si,j ’、ci,j =(xj
’−xi ’)/Si,j ’、di,j =(yj
’−yi ’)/Si,j ’)
にて、当該式を満たす係数の組(ai,j ,bi,j ,ci,j ,di,j
)を得るものであり、更に、挟角に関する下記の条件式3、即ち、
j,i,k =ei,k Δxi +fi,k Δyi +gi,k Δxk +hi,k Δyk −ΔTj,i,k …式3
(ここで、ei,k =(yk
’−yi ’)/Si,k2 ,fi,k =−(xk ’−xi ’)/Si,k2 ,gi,k =−(yk ’−yi ’)/Si,k2 ,hi,k =(xk ’−xi ’)/Si,k2 であり、またSi,k ’は、上記引照点の世界座標pi’(xi ’,yi ’)とpk ’(xk ’,yk ’)の間の距離である。)
にて、当該式を満たす係数の組(ei,k ,fi,k ,gi,k ,hi,k
)を得るものである。上記観測方程式の係数行列Aは、上記式2及び式3の上記係数ai,j ,bi,j ,ci,j
,di,j ,ei,k ,fi,k ,gi,k ,hi,k
を配列した係数行列である。上記観測方程式のΔLは、上記のΔSi,k の値と、上記のΔTj,i,k の値とを成分とする定数ベクトルである。
【0015】
上記本願第3の発明は、上記本願第2の発明に係る地積測量図の世界座標取得方法について、次の構成を採る。
即ち、上記の補正値ベクトルΔXは、上記4つの引照点の世界座標p1’〜p4’の座標成分x1 ’,y1 ’,x2 ’,y2 ’,x3 ’,y3 ’,x4 ’,y4 ’に加算する上記の補正値Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 を成分とする8次元の未知ベクトルである。上記の係数行列Aは、上記の距離に関する条件式2から、当該条件式2を満たす6つの係数の組(ai,j
,bi,j ,ci,j ,di,j )を得、また、上記の挟角に関する条件式3にて、当該条件式3を満たす8つの係数の組(ei,k
,fi,k ,gi,k ,hi,k )を得て、上記式2の右辺の係数ai,j
,bi,j ,ci,j ,di,j ,ei,k ,fi,k ,i,k
,hi,k を配列した14×8の行列である。上記定数ベクトルΔLは、上記6組のΔSi,j の値と、上記8組のΔTj,i,k の値とを成分とする14次元ベクトルである。上記係数行列Aから、ランク欠損3の8×8の正規方程式の係数行列を取得し、当該正規方程式の係数行列から、解のノルム最小を与える一般逆行列の計算にて、上記補正値ベクトルΔXを、上記観測方程式の最小二乗解として、求めるものである。
【0016】
本願第4の発明は、トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、コンピュータを用いて各引照点の任意座標を世界座標に変換することにより、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得方法について、次の構成をとるものを提供する。
即ち、上記のコンピュータは、4つの引照点の、トータルステーションにより実測した任意座標の座標値と、GPS測量等により得られた当該引照点の世界座標の座標値の、入力を受付け、4つの引照点の世界座標の上記座標値を当該引照点の世界座標の最確値とする補正値を、自動的に出力することが可能なものである。そして、上記のコンピュータは、上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての上記任意座標及び上記世界座標の入力を受付ける座標値受付部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも当該引照点間の距離に関する条件式の係数を算出する距離演算部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも上記引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数を算出する挟角演算部と、上記の距離演算部が算出した係数及び上記の挟角演算部が算出した係数とから上記の観測方程式の解として上記の補正値を生成する補正値生成部と、少なくとも上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数を格納し補正値生成部へ参照させる格納部とを備える。上記の格納部は、補正値生成部が補正値を生成する過程において参照する行列の各成分N1,1
,N1,2 ,N1,3 …,N2,1 ,N2,2 ,N2,3 …Nr,S を所属する行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(r,s)と関連付けて格納する少なくともr×s個の参照値格納部と、補正値生成部が算出した行列の各成分Z1,1 ,Z1,2 ,Z1,3 …,Z2,1 ,Z2,2 ,Z2,3 …Zs,r を当該行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(s,r)と関連付けて格納する少なくともs×r個の中間値格納部とを、参照し生成する行列の数に対応して備える。補正値生成部は、少なくとも、格納部の参照地格納部又は中間値格納部中の行列の特定行kの成分値Nk,1 ,Nk,2 ,Nk,3 …Nk,S の夫々と、格納部の他の参照値格納部又は中間値格納部の行列中の上記行k成分Nk,1
,Nk,2 ,Nk,3 …Nk,S に対応する列t成分値Z1,t ,Z2,t
,Z3,t …Zs,t の夫々とを参照し、これらの成分同士を乗じて当該乗算結果の総和Nk,1 ・Z1,t +Nk,2
・Z2,t +Nk,3 ・Z3,t +…+Nk,S ・Zs,t
を、格納部中の更に別の参照値格納部又は中間値格納部中に、計算結果である行列の一成分として当該計算結果の行列中の配置情報を付して格納する、行列の乗算が可能なものである。未知数ベクトルΔXを上記の補正値を成分とする補正値ベクトルとし、Wを重み行列とし、Vを残差ベクトルとし、V1 を重み付けされた残差ベクトルとして、次式30に示される観測方程式について、
1 =W1/2 V=W1/2 (AΔX−ΔL)…式30
上記補正値生成部にて、上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数の夫々を式1の係数行列Aの構成成分として格納部中の何れかの参照値格納部又は中間値格納部に格納させ、更に、上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数からトータルステーションによる各任意座標座間距離とGPSによる世界座標の各引照点間距離との差夫々、及び、トータルステーションによる任意座標の世界座標の引照点対の線分間の挟角とGPSによる世界座標の引照点対の線分間の挟角との差夫々を、式1の定数ベクトルΔLの構成成分として格納部中の何れかの参照地格納部又は中間値格納部に格納させる。そして、補正値生成部に、格納部の参照地格納部及び中間値格納部を利用した上記行列の乗算を、上記係数行列A、重み行列W及び定数ベクトルΔLについて、正規方程式の係数行列AT WAをNとして、次式53に則して、順次行わせることにより、補正値ベクトルΔXを算出させる。
ΔX=N(NN)- ・N(NN)-
N・AT WΔL …式48
【0017】
本願第5の発明は、トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得装置について、次の構成を採るものである。
即ち、この地積測量図の世界座標取得装置は、トータルステーションにより実測した4つの上記引照点においてGPS測量等により得られた世界座標を、最確値へ変換することが可能な補正値について、引照点の観測方程式の解として求めるものである。そして、この装置は、上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての上記任意座標及び上記世界座標の入力を受付ける座標値受付部1と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも当該引照点間の距離に関する条件式の係数を算出する距離演算部2と、上記座標値受付部1が受付けた座標値から少なくとも上記引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数を算出する挟角演算部3と、上記の距離演算部2が算出した係数及び上記の挟角演算部3が算出した係数とから上記の観測方程式の解として上記の補正値を生成する補正値生成部4と、少なくとも上記の距離演算部と挟各演算部とが算出した係数を格納し補正値生成部へ参照させる格納部5とを備える。上記の観測方程式は、上記各引照点の世界座標のx,y成分に加算する補正値Δx,Δyを成分とする補正値ベクトルと上記補正値ベクトルの係数となる係数行列とを乗じて、上記引照点の対の任意座標と世界座標との距離の差及び挟角の差を成分とする定数ベクトルを差し引いたものを、引照点間の残差ベクトルとする。上記の係数行列は、引照点間の距離に関する条件式の係数及び引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数から構成されるものである。上記補正値生成部4は、上記の残差ベクトル及び補正値ベクトルのノルムを最小とする、当該観測方程式の最小二乗解として、上記の補正値ベクトルの各成分を算出するものである。
【0018】
本願第6の発明は、上記本願第5の発明に係る地積測量図の世界座標取得プログラムを提供する。
【0019】
本願第7の発明は、上記本願第6の発明に係る地積測量図の世界座標取得プログラムを記録した記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記本願の発明によって、TS(トータルステーション)で実測した引照点の任意座標について、世界座標を付与する際に、当該引照点においてGPS測量等に取得した世界座標を正確に補正することができる補正値を得ることができる。従って、従来に比して極めて精度の高い世界座標を上記任意座標に付与することができる。
即ち、本願発明は、従来の精度の問題を解決し、GPS測量等により得られた世界座標をもつ各引照点に対し、地積測量図をその形と大きさの歪みを抑えて任意座標から世界座標に変換して適合させることを可能にする地積測量図の世界測地系座標付与方法及びその装置、プログラム、記録媒体を提供し得たものである。
尚、本願発明は、上記のように引照点をGPS測量によって求める場合に限定されるものではなく、国土地理院などが設置した基準点や地方自治体が設置した公共基準点の世界座標を用いる場合にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、説明する。図1は、本願発明に係る装置の説明図である。図2は、その動作フローを示す説明図である。図3(A)〜(F)及び図4(A)〜(C)は、本願発明に係る世界座標の取得方法の要部を示す説明図である。
【0022】
1.本願発明に係る計算方法の概要
本願発明は、トータルステーション(TS)測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換するものであって、コンピュータを用いて、引照点間の距離に関する情報と共に、引照点を結ぶ線分間の挟角に関する情報を利用し、引照点の夫々を偏りなく対等に扱うことによって、TSによって得た任意座標を精度よく(任意座標間の位置関係を高精度に維持して)世界座標に変換するものである。
即ち、本願発明は、高精度な測量が行えるTSによって得た、引照点の任意座標を、世界座標に変換するものであり、その際、精度において極めて劣るRTK−GPS測量にて求めた当該引照点の世界座標を利用して、このGPSによる世界座標を修正する補正値として上記の挟角を用いて精度の高いものを取得する。そして、当該補正値にてGPSによる世界座標を修正することにより、上記TSによる任意座標の世界座標への高精度な変換を可能とするものである。
【0023】
2.本願発明において実現される計算の内容
補正値の取得の計算について、GPS測量を利用する場合を例に採り、簡単に説明する。
実測する引照点は、異なる4点である。この4つの引照点において利用者がTSによる実測にて任意座標p1(x1 ,y1
)、p2(x2 ,y2 )、p3(x3 ,y3 )、p4(x4
,y4 )を獲得する。更に、この4つの引照点において、利用者がGPS測量による実測にて世界座標p1’(x1 ’,y1 ’)、p2’(x2 ’,y2 ’)、p3’(x3 ’,y3 ’)、p4’(x4 ’,y4 ’)を獲得する。
【0024】
そして、図3(A)へ示す通り、上記世界座標で示す4つの引照点のうちの、2つの引照点pi’(xi ’,yi ’),pj’(xj ’,yj ’)の対(i=1,2,3,4、j=1,2,3,4、i≠j)全て、即ち、p1’とp2’、p2’とp3’、p3’とp4’、p4’とp1’、p1’とp3’、p2’とp4’の6つの対について、対なす引照点を結ぶ、線分p1’p2’、線分p2’p3’、線分p3’p4’、線分p4’p1’、線分p1’p3’、線分p2’p4’の6つの線分について、夫々、その長さ(引照点間距離)S1,2 ’,S2,3 ’,3,4 ’,S4,1 ’,S1,3 ’,S2,4 ’(以下、必要に応じてSi,j ’と表す。ここで、i=1,2,3,4、j=1,2,3,4、i≠jである。)を求める。
【0025】
図示は、省略するが、上記のGPSによる世界の座標の場合と同様に、上記任意座標で示す上記4つの引照点のうちの、2つの引照点(xi ,yi
),(xj ,yj )の対(i=1,2,3,4、j=1,2,3,4、i≠j)全て、即ち、p1とp2、p2とp3、p3とp4、p4とp1、p1とp3、p2とp4の6つの対について、対なす引照点を結ぶ、線分p1p2、線分p2p3、線分p3p4、線分p4p1、線分p1p3、線分p2p4の6つの線分について、夫々、その長さ(引照点間距離)S1,2 ,S2,3 ,S3,4 ,S4,1
,S1,3 ,S2,4 を求める。
【0026】
具体的には、上記の引照点の各対の座標値から、
i,j ’={(xj ’−xi ’)2 +(yj ’−yi ’)21/2 …式4
i,j ={(xj −xi2 +(yj −yi
21/2 …式5
を求める。
そして、上記の引照点の世界座標における引照点の対間の長さ(距離)の差ΔSij即ち、ΔSi,j =Si,j −Si,j ’…式6
を求める。
【0027】
また、上記世界座標の対間の、x成分の長さxj ’−xi ’及び、y成分の長さyj ’−yi ’とから、
i,j =−(xj ’−xi ’)/Si,j ’…式7
i,j =−(yj ’−yi ’)/Si,j ’…式8
i,j =(xj ’−xi ’)/Si,j ’ …式9
i,j =(yj ’−yi ’)/Si,j ’ …式10
を求める。
以上の計算で算出した各値は、観測方程式(式1)の距離に関する条件式(式2)、即ち
i,j =ai,j Δxi +bi,j Δyi +ci,j Δxj +di,j Δyj −ΔSi,j …式2
の係数及び定数ベクトルである。
【0028】
そして、世界座標における引照点の対間に引いた、図3(B)へ示す上記の線分p1’p2’を基準線(実線)として当該基準線p1’p2’と線分p1’p3’(当該基準線の一端点p1’において当該基準線と交差する交差線/一点鎖線)とにて挟まれた挟角∠p2’p1’p3’(以下挟角T2,1,3 ’と呼ぶ。)、図3(C)へ示す当該基準線p1’p2’と線分p4’p1’にて挟まれた挟角∠p2’p1’p4’(以下挟角T2,1,4 ’と呼ぶ。)、図3(D)へ示す上記の線分p2’p3’を基準線として当該基準線p2’p3’と線分(交差線)p2’p4’にて挟まれた挟角∠p3’p2’p4’(以下挟角T3,2,4 ’と呼ぶ。)、図3(E)へ示す当該基準線p2’p3’と線分p1’p2’にて挟まれた挟角∠p3’p2’p1’(以下挟角T3,2,1 ’と呼ぶ。)、図3(F)へ示す上記の線分p3’p4’を基準線として当該基準線p3’p4’と線分p1’p3’にて挟まれた挟角∠p4’p3’p1’(以下挟角T4,3,1 ’と呼ぶ。)、図4(A)へ示す当該基準線p3’p4’と線分p2’p3’にて挟まれた挟角∠p4’p3’p2’(以下挟角T4,3,2 ’と呼ぶ。)、図4(B)へ示す上記の線分p4’p1’を基準線として基準線p4’p1’と線分p1’p2’とに挟まれた挟角∠p1’p4’p2’(以下挟角T1,4,2 ’と呼ぶ。)、図4(C)へ示す通り当該基準線p4’p1’と線分p3’p4’に挟まれた挟角∠p1’p4’p3’(以下挟角T1,4,3 ’と呼ぶ。)の8つの挟角T2,1,3 ’〜T1,4,3 ’(ラジアン)を求める。
尚、上記(GPSによる世界座標の場合)の各挟角の正負については、基準線と対象線の交点を、縦軸をx、横軸をyとするX,Y直交座標の原点とした場合、基準線から対象線に向かって時計回りを正とし、時計と逆回り(反時計回り)を負とする。
【0029】
図3及び図4へ示す通り、4つの引照点の夫々、即ち左上の引照点p1’、右上の引照点p2’、右下の引照点p3’、左下の引照点p4’の対について、この実施の形態では、当該対間の線分を時計周りr(図3(A))に順次基準線として行く(当該引照点の対間の線分が基準線とされる順序の説明と、上記の挟角の正負の説明と区別するため、挟角の正負に関しては「時計回り」「反時計回り」と表記し、引照点の対間の線分が基準線とされる順序に関して「時計周り」「反時計周り」と表記する)。そして、当該基準線の一端点(時計周りの方向を前方とし、反時計周りの方向を後方として、基準線の後端点)において交差する対間の他の線分と、当該基準線とがなす角を挟角として求めるのである。但し、このような実施の形態に限定するものではなく、上記とは逆に、当該対間の線分を反時計周りに順次基準線とし、当該基準線の一端点において交差する対間の他の線分と、当該基準線とがなす角を挟角として求めるものとしても実施可能である。また、時計周りの方向を前方とし、反時計周りの方向を後方として、基準線の後端点にて交差する線分と当該基準線との挟角を求めるものとしたが、上記の時計周り・反時計周りの何れについても、基準線の先端点にて交差する線分と当該基準線との挟角を求めるものとしても実施可能である。
尚、挟角の取り方を上記にすればよく、挟角を求める順番を上記に制限するものではない(挟角を求める順番は、上記以外に変更可能である。例えば、並列処理できる環境があれば、各挟角を並行して求めることも可能である)。
また、基準線の選定については、基準線をp1−p3、p2−p4、p3−p1、p4−p2としても実施可能である。
【0030】
そして、図示はしないが、上記と同様に、TSによる任意座標における引照点の対間に引いた、上記の線分p1p2を基準線として当該基準線p1p2と線分p1p3(当該基準線の一端点p1において当該基準線と交差する交差線)とにて挟まれた挟角∠p2p1p3(以下挟角T2,1,3 と呼ぶ。)、当該基準線p1p2と線分p4p1にて挟まれた挟角∠p2p1p4(以下挟角T2,1,4 と呼ぶ。)、上記の線分p2p3を基準線として当該基準線p2p3と線分(交差線)p2p4にて挟まれた挟角∠p3p2p4(以下挟角T3,2,4 と呼ぶ。)、当該基準線p2p3と線分p1p2にて挟まれた挟角∠p3p2p1(以下挟角T3,2,1 と呼ぶ。)、上記の線分p3p4を基準線として当該基準線p3p4と線分p1p3’にて挟まれた挟角∠p4p3p1(以下挟角T4,3,1 と呼ぶ。)、当該基準線p3p4と線分p2p3にて挟まれた挟角∠p4p3p2(以下挟角T4,3,2 と呼ぶ。)、上記の線分p4p1を基準線として基準線p4p1と線分p1p2とに挟まれた挟角∠p1p4p2(以下挟角T1,4,2 と呼ぶ。)、通り当該基準線p4p1と線分p3p4に挟まれた挟角∠p1p4p3(以下挟角T1,4,3 と呼ぶ。)の8つの挟角T2,1,3 〜T1,4,3 (ラジアン)を求める。
このTSによる任意座標の場合も、上記各挟角の正負については、前記のGPSによる世界座標の場合と同様である。
【0031】
GPSによる世界座標における引照点の対間を結んだ上記の線分について、原則として、pj’pi’pk’即ち挟角Tj,i,k ’を、線分pi’pj’(基準線)の方向角TKA’と線分pi’pk’の方向角TKB’とから求める。
【0032】
即ち、TKB’>TKA’の場合、上記の線分pi’pj’(基準線)の方向角TKA’について、以下の場合に分けて、該当する場合の下記計算により算出する。
1)xj ’−xi ’=0のとき、
i)yj ’−yi ’>0の場合、TKA’=π/2 …式11
ii)yj ’−yi ’<0の場合、TKA’=3π/2 …式12
2)xj ’−xi ’<0のとき、
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)}+π …式13
3)xj ’−xi ’>0のときであって、TKA’<0の場合
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)}+2π …式14
4)上記1)〜4)以外の場合
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)} …式15
【0033】
同様に、上記の線分pi’pk’の方向角TKB’について、以下の場合に分けて、該当する場合の計算により算出する。
1)xk ’−xi ’=0のとき、
i)yk ’−yi ’>0の場合、TKB’=π/2 …式16
ii)yk ’−yi ’<0の場合、TKB’=3π/2 …式17
2)xk ’−xi ’<0のとき、
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)}+π …式18
3)xk ’−xi ’>0のときであって、TKB’<0の場合
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)}+2π …式19
4)上記1)〜4)以外の場合
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)} …式20
【0034】
TKB’>TKA’の場合、上記により求めた、線分pi’pj’(基準線)の方向角TKA’と、線分pipkの方向角TKB’とから、その差TKB’−TKA’を計算して、∠pj’pi’pk’がなす挟角Tj,i,k ’とする。
例えば、TKA’とTKB’とが、共に上記4)の条件を満たすものであるとき、下記式21にて、挟角Tj,i,k ’が算出される。
j,i,k
=tan -1{(yk ’−yi ’)/(xk ’−yi ’)}−tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)}…式21
(n=1〜8)
一方、TKA’>TKB’の場合、上記により求めた、線分pi’pj’(基準線)の方向角TKA’と、線分pipkの方向角TKB’とから、2π−(TKA’−TKB’)を計算して、∠pj’pi’pk’がなす挟角Tj,i,k ’とする。
例えば、TKA’とTKB’とが、共に上記4)の条件を満たすものであるとき、下記式21’にて、挟角Tj,i,k ’が算出される。
j,i,k ’=2π−[tan -1{(yj ’−yi ’)/(xj ’−yi ’)}−tan -1{(yk ’−yi ’)/(xk ’−xi ’)}]…式21’
【0035】
TSによる任意座標における引照点の対間を結んだ線分についても、∠PjPiPkの挟角Tj,i,k と、線分PiPj(基準線)の方向角TKAと線分PiPkの方向角TKBとから求める。即ち、このTSの場合も、上記と同様、先ず、TKAとTKBの大小を判定し、TKB>TKAの場合、上記TKA’及びTKB’におけるのと同様の場合分けを行い、TKA及びTKBの夫々を求め、TKB>TKAの場合、Tj,i,k としてTKB−TKAを算出し、TKA>TKBの場合、Tj,i,k
として2π−(TKB−TKA)を算出する。
【0036】
そして、上記の任意座標による引照点の対を結ぶ線分間の挟角Tj,i,k と、引照点の世界座標による引照点の対を結ぶ線分間の挟角Tj,i,k
’との、差ΔTj,i,k 、即ち、
ΔTj,i,k =Tj,i,k −Tj,i,k ’…式22
を求める。
【0037】
また、
i,k =(yk ’−yi ’)/Si,k2 …式23
i,k =−(xk ’−xi ’)/Si,k2 …式24
を求める。
i,k =−(yk ’−yi ’)/Si,k2 …式25
i,k =(xk ’−xi ’)/Si,k2 …式26
を求める。
以上の計算で算出した各値は、観測方程式(式1)の挟角に関する条件式(式3)、即ち
j,i,k =ei,k Δxi +fi,k Δyi +gi,k Δxk +hi,k Δyk −ΔTj,i,k …式3
の係数及び定数ベクトルである。
【0038】
そして、上記の係数を下記の行列Aの要素として配列する。
/ \
A=|a1,2 b1,2 c1,2 d1,2 0 0 0 0 |
|a1,3 b1,3 0 0 c1,3 d1,3 0 0 |
|a1,4 b1,4 0 0 0 0 c1,4 d1,4 |
| 0 0 a2,3 b2,3 c2,3 d2,3 0 0 |
| 0 0 a2,4 b2,4 0 0 c2,4 d2,4 |
| 0 0 0 0 a 3,4 b3,4 c3,4 d3,4 |
|e1,3 f1,3 0 0 g1,3 h1,3 0 0 |
|e1,4 f1,4 0 0 0 0 g1,4 h1,4 |
| 0 0 e2,4 f2,4 0 0 g2,4 h2,4 |
|g2,1 h2,1 e2,1 f2,1 0 0 0 0 |
|g3,1 h3,1 0 0 e3,1 f3,1 0 0 |
| 0 0 g3,2 h3,2 e3,2 f3,2 0 0 |
| 0 0 g4,2 h4,2 0 0 e4,2 f4,2 |
| 0 0 0 0 g4,3 h4,3 e4,3 f4,3 |
\ /
…式27
この式27に示す通り、以下、行列の要素とその配列を提示して一つの行列を示す際、通常行列を示す表記として用いられる括弧を上記の通り、要素の配列の左右にバー(|)で囲み、当該バーの左上と右下へスラッシュ(/)を、当該バーの右上と左下へバックスラッシュ(\)を付加した。尚、上記の通りスラッシュ及びバックスラッシュを付加した。全てバーで表記しなかったのは、行列式と区別するためである。以下、行列の要素とその配列を提示して行列を示す際は、上記式27と同様に表記する。
【0039】
また、上記の距離差ΔS1,2 〜ΔS3,4 及び挟角差ΔT2,1,3 〜ΔT1,4,3 にて下記の定数項ベクトルΔLを構成する。
/ \
ΔL=|ΔS1,2
|ΔS1,3
|ΔS1,4
|ΔS2,3
|ΔS2,4
|ΔS3,4
|ΔT2,1,3
|ΔT2,1,4
|ΔT3,2,4
|ΔT3,2,1
|ΔT4,3,1
|ΔT4,3,2
|ΔT1,4,2
|ΔT1,4,3
\ /
…式28
【0040】
補正値ベクトルΔXを未知パラメータベクトルとして、拘束条件式(式2,式3)から得られる観測方程式の厳密解は、係数行列が正規方程式の形であり且つ正則を満たす、
AΔX=ΔL…式29
であるが、上記式29の左辺と右辺とを別々に算出し、係数行列が14行8列のため、未知数の個数より、式の個数のほうが多い方程式となっているので、残差Vを考慮して、
AΔX=ΔL+V…式1’
(V=AΔX−ΔL…式1)
とする観測方程式を得る。
ここで、上記観測方程式(式1)を残差Vの方程式とみなして、Vのノルム最小解、即ち、残差ベクトルVの成分の最小二乗和を求める。
【0041】
以下、この観測方程式と正規方程式の関係について簡単に説明する。
測量における観測方程式を上記式1とした場合、通常この式は、未知数の数よりも観測方程式の数のほうが多く、解が存在しない。この場合も、14個の条件式に対して、求める未知数は、8個である。
そのため、ここで、上記の観測方程式(式1)を残差Vの方程式とみなして、残差ベクトルVの成分の最小二乗和を求める、即ち、VT Vを最小にする方法を考える(添え字Tは転置行列を示している。従ってVT
はVの転置行列である。以下同じ)。
上記において、辺長(距離)と角度(挟角)とを同等に取り扱うために、実際には、下記の重み付けの行列Wが考慮される。
そうすると、上記の観測方程式(式1)は、次の通りに現される。
1 =W1/2 V=W1/2 (AΔX−ΔL)…式30
即ち、上記式30を観測方程式とし、当該観測方程式を残差V1 の方程式とみなして、V1 のノルム最小解、即ち、重み付けを考慮した残差ベクトルV1
の成分の最小二乗和を求めるのである。
そのため、V1 T1 (=VT1/2
1/2 V=VT WV)を最小にする方法を考える。
【0042】
ここで残差ベクトルVの平方の総和Φは、次の式31で表すことができる。
Φ=VT WV=(AΔX−ΔL)T W(AΔX−ΔL) …式31
=(ΔXTT W−ΔLT W)(AΔLX−ΔL) …式32
=ΔLT WΔL−ΔXTT WΔL−ΔLT WAΔX+ΔXTT WAΔX
…式33
=ΔLT WΔL−2ΔLT WAΔX+ΔXT (AT WA)ΔX …式34
上記においてVT WVは、残差ベクトルの平方和である。
【0043】
上記重み付けの行列Wは、ここでは次式35に示す14×14の対角行列である(下記式35の左辺の成分Wの添え字は、どの引照点の座標値かを示す添え字i,jと無関係である)。
/ \
W=| W1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 W2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 W3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 W4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 W5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 W6 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 W7 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 W8 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 W9 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 W100 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 W110 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 W120 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 W130 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 W14
\ /
…式35
【0044】
ここでは、Wの重みの値については、条件式全てにおいて、1として取り扱う。従って、上記式3は、次式36の通りである。
/ \
W=| 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 |
| 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 |
\ /
…式36
【0045】
上記のΦ(式34の両辺を)をΔXで微分する。これにより、次式37が得られる。
δΦ/δΔX=−2ΔLT WA+2ΔXT (AT WA)=0 …式37
これから次式38に示す正規方程式が得られる。即ち、上記観測方程式(式1)を解くことは、次の正規方程式を解くことに帰結する。
T WAΔX=AT WΔL…式38
ΔX=(AT WA)-1・(AT
WΔL)…式39
(上記において、AT は行列Aの転置行列を示し、(AT WA)-1は、行列AT
WAの逆行列を示す。)
T WAの逆行列(AT WA)-1が存在する(即ち正則の)場合は上記でよいのであるが、上記において、(8行8列の正規方程式の係数行列のランクは、未知数8に対してランク5のため)ランク欠損3となる。また、もう一つの条件である、W.Welschの条件式を満たすため、解のノルム最小(ΔXT ΔX=最小と等価)を与えるムーア・ペンローズ型又はベアハンマー型の一般逆行列を作る。
【0046】
上記について、より具体的に説明すると、
T WA=N …式40
とする正規方程式の係数行列を考える。
ここでNは、次の式41に示す通り、対角線に対称な8×8の対称行列である(ここで、nに付した添え字は、行列中の対角線及び対角線より上方に位置する成分の行と列の位置を示している。また、対角線より下方においては、対称となる対角線より上方の成分の上記行と列の位置を示している。上述の引照点の添え字と直接関係はない)。
/ \
N=|n1,1 n1,2 n1,3 n1,4 n1,5 n1,6 n1,7 n1,8 |
|n1,2 n2,2 n2,3 n2,4 n2,5 n2,6 n2,7 n2,8 |
|n1,3 n2,3 n3,3 n3,4 n3,5 n3,6 n3,7 n3,8 |
|n1,4 n2,4 n3,4 n4,4 n4,5 n4,6 n4,7 n4,8 |
|n1,5 n2,5 n3,5 n4,5 n5,5 n5,6 n5,7 n5,8 |
|n1,6 n2,6 n3,6 n4,6 n5,6 n6,6 n6,7 n6,8 |
|n1,7 n2,7 n3,7 n4,7 n5,7 n6,7 n7,7 n7,8 |
|n1,8 n2,8 n3,8 n4,8 n5,8 n6,8 n7,8 n8,8 |
\ /
(ni,j
=nj,i )
…式41
【0047】
上記のNから次式42で表される行列NNを求める。
この行列は、8×8の対角線に対称な対称行列である(添え字の付し方については、上記式41と同様である)。
/ \
NN=|nn1,1 nn1,2 nn1,3 nn1,4 …nn1,7 nn1,8 |
|nn1,2 nn2,2 nn2,3 nn2,4 …nn2,7 nn2,8 |
|nn1,3 nn2,3 nn3,3 nn3,4 …nn3,7 nn3,8 |
|nn1,4 nn2,4 nn3,4 nn4,4 …nn4,7 nn4,8 |
|nn1,5 nn2,5 nn3,5 nn4,5 …nn5,7 nn5,8 |
|nn1,6 nn2,6 nn3,6 nn4,6 …nn6,7 nn6,8 |
|nn1,7 nn2,7 nn3,7 nn4,7 …nn7,7 nn7,8 |
|nn1,8 nn2,8 nn3,8 nn4,8 …nn7,8 nn8,8 |
\ /
…式42
【0048】
上記の式42から、行列NNの一般逆行列(ランク5=8−ランク欠損3)である、次式43に示される(NN)- を求める。
(NN)- =
/ \
|/nn1,1 nn1,2 nn1,3 nn1,4 nn1,5 \-1 0 0 0|
||nn1,2 nn2,2 nn2,3 nn2,4 nn2,5 | 0 0 0|
||nn1,3 nn2,3 nn3,3 nn3,4 nn3,5 | 0 0 0|
||nn1,4 nn2,4 nn3,4 nn4,4 nn4,5 | 0 0 0|
|\nn1,5 nn2,5 nn3,5 nn4,5 nn5,5 / 0 0 0|
| 0 0 0 0 0 0 0 0|
| 0 0 0 0 0 0 0 0|
| 0 0 0 0 0 0 0 0|
\ /
…式43
【0049】
ここで、未知ベクトルである補正値ベクトルのノルム最小を与えるN(NN)- を計算し、更に、N(NN)- ・N(NN)-
N=N11- とする(ここではN11- は、ムーア・ペンローズ型逆一般行列を示す。即ち、このN11-
の添え字は、どの引照点の座標値かを示す添え字i,jや、行列の成分の配置を示す添え字と無関係である。Nと区別する意味である)。
ΔX=N11- ・AT WΔL …式44
ΔX=/ \
|Δx1
|Δy1
|Δx2
|Δy2
|Δx3
|Δy3
|Δx4
|Δy4
\ /
…式45
【0050】
このようにして、補正値ベクトルが求まる。
そして、引照点4点のGPSによる世界座標p1(x1 ’,y1 ’)、p2(x2 ’,y2 ’)、p3(x3 ’,y3 ’)、p4(x4 ’,y4 ’)の座標値に対して、上記補正値ベクトルの各成分を加算する。
P1(x1 ’+Δx1 ,y1 ’+Δy1 ),
P2(x2 ’+Δx2 ,y2 ’+Δy2 ),
P3(x3 ’+Δx3 ,y3 ’+Δy3 ),
P4(x4 ’+Δx4 ,y4 ’+Δy4
このようにして、世界座標の最確値P1(X1 ,Y1 ),P2(X2 ,Y2
),P3(X3 ,Y3 ),P4(X4 ,Y4 )を算出することができる。
尚、補正値には、負数も含むので、ここでいう加算は、代数和をいい、結果として減算を含む。
【0051】
尚、上記において、ムーア・ペンローズ型一般逆行列に代え、ベアハンマー型一般逆行列(N10- =N(NN)-
…式46)を用いて計算することも可能である。
挟角条件式において、世界座標側の基準線を動かした係数行列Aの配列も、可能であるが、計算式が複雑化し、このような複雑化が原因となって、コンピュータの計算過程において、丸め誤差、情報落ち、桁落ち誤差の発生が懸念され、更なる悪条件式を回避するためにも好ましくない。
【0052】
2.本願発明に係る世界座標の取得装置の概要とその構成
図1は、この装置の説明図である。図2は、その処理のフローを示す説明図である。
2−1)本願発明に係る世界座標の取得装置の概要
この装置は、オペレータから引照点のTSによる任意座標とGPSによる世界座標の座標値の入力を受付け、自動的に(出力まで人手を要することなく専ら装置のみにて)計算を行い、上記の補正値を算出する。但し、途中で入力のミスがないか確認するインターフェースを用意して、オペレータが入力ミスをチェックする工程を付加するものとしても実施可能である。ここでは、そのような入力ミスのチェックの支援の機構及び工程については、省略する。
【0053】
2−2)ハードウエア構成
この位置計算装置は、位置計算プログラムをコンピュータへ導入することにより、構築される。このコンピュータは、入力装置と、演算装置と、制御装置と、記憶装置(内部記憶装置及び外部記憶装置)とを備えた一般的なPC(パーソナルコンピュータ)やWS(ワークステーション)を採用して実施することができる。即ち、キーボード、マウスに代表される入力装置、ディスプレイやプリンタに代表される出力装置、CPU(中央情報処理装置)に代表される演算装置や制御装置(演算制御装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)に代表される内部記憶装置、ハードディスクやフレキシブルディスクその他の磁気ディスク或いは光学ディスクに代表される外部記憶装置を備えた一般的なコンピュータを採用して実施することができる。
【0054】
2−3)ソフトウエア
上記の世界座標の取得装置のプログラム(補正値取得プログラム)は、コンピュータの資源を全て占有する専用のソフトウエアであっても実施可能であるが、MS−DOS(登録商標)、Windows(登録商標)、UNIX(登録商標)やLinux(登録商標)に代表される周知のOS(オペレーティングシステム)上で動作するものとしても実施可能である。
また、世界座標の取得装置のプログラム(補正値取得プログラム)は、インタプリンタ型のものであっても、アセンブラやコンパイラを使用して生成されたものであっても何れでもよい。
この実施の形態において、世界座標の取得装置のプログラム(補正値取得プログラム)は、OSが導入されたコンピュータ上に、導入されて世界座標の取得装置を実現する。以下、OSと、世界座標の取得装置のプログラム(補正値取得プログラム)とを補正ソフトウエアと呼ぶ(必要に応じて単にソフトと呼ぶ)。
尚、補正ソフトは、当該補正ソフトで得た補正値を用いて(補正値を加算して)、補正後の世界座標の最確値を算出するものであっても実施可能である。
但し、補正ソフトで得た補正値を用いて最確値を得る方法については、別途のソフトによるものであっても、或いは電卓その他の手段にて、GPSで得た世界座標に加算するものとしても実施可能である。
ここでは、補正値を算出するまでを、上記補正ソフトによって、行うものとして説明する。
【0055】
2−4)本願発明に係る世界座標の取得装置の構成
図1に示す通り、この世界座標の取得装置は、座標値受付部1と、距離演算部2と、挟角演算部3と、補正値生成部4と、格納部5と、出力部6と、初期化部7とを備える。
上記の座標値受付部1は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の入力装置と、演算制御装置とにて構築される。
上記の距離演算部2は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の演算制御装置、内部記憶装置及び外部記憶装置とにて構築される。
上記の挟角演算部3は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の演算制御装置、内部記憶装置及び外部記憶装置とにて構築される。
上記の補正値生成部4は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の演算制御装置、内部記憶装置及び外部記憶装置とにて構築される。
上記の格納部5は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の演算制御装置と、内部記憶装置と、外部記憶装置とにて構築される。
上記の出力部6は、上記ソフトと、コンピュータが有する上記出力装置と、演算制御装置とにて構築される。
上記の初期化部7は、上記ソフトと、コンピュータが有する、上記の演算制御装置と、内部記憶装置とにて構築される。
【0056】
2−5)装置の構成の要部詳細
上記の格納部5は、入力値格納部51と、係数格納部52と、定数格納部53、重み格納部54と、出力値格納部55とを備える。
上記入力値格納部51は、少なくとも4つの引照点の、上記TSによる任意座標値を格納する任意座標値格納部51aと、上記GPSによる世界座標値を格納する世界座標値格納部51bとを備える。
上記係数格納部52は、条件式の係数値格納部52aと、係数配列格納部52bと、中間値格納部52cとを備える。
上記定数格納部53は、定数値格納部53aと、定数配列格納部53bとを備える。
上記重み格納部54は、重み値格納部54aと、重み値配列格納部54bとを備える。
【0057】
この重み格納部54の上記重み値格納部54aには、重み値が格納されている。また、重み値配列格納部54bは、前記式35に示す行列W中の当該重み値の配列位置に関する情報(識別子)を保持している。但し、通常、記憶装置に記憶される情報には、その後の参照や更新のためにアドレス情報が付されているので、特定のアドレスが付された情報の格納場所を上記の行列中の特定の位置と決めてしまえば、上記のように別途行列中の配置情報を設定せずとも(別途識別子を付与せずとも)、そのアドレスに格納することによって行列中の特定の位置の成分として取り扱うことができる(この場合、当該アドレスを上記の識別子とし、重み値配列格納部54bはこのアドレスを保持するものと考えればよい)。例えば、当該プログラムの作成に当り、BASICやC言語を用いる場合、配列宣言を行うことにより、そのような取り扱いが容易に行える。また、このような配列情報の付与について、表計算ソフト(セル)を用いたり、データベースソフトを用いてSQL文を利用することも可能である。
上記において、重み格納部54は、14×14の行列の配列を上記重み値配列格納部54bに重み値1(数値)を格納するものとし、重み配列格納部54bにより、この重み値1を前記式36へ示す通り、行列W中の対角線上の位置即ち、(行番号,列番号)とした場合の、(1,1)、(2,2),(3,3),(4,4),(5,5),(6,6),(7,7),(8,8),(9,9),(10,10),(11,11),(12,12),(13,13),(14,14)の位置と対応するように、上記重み値格納部54aに格納するものとしてもよく、更に、前記式36へ示す通り、重み付け行列W中の他の位置に配列される0(数値)も、当該位置情報と共に重み格納部54に格納するものとしてもよい。但し、行列中の対角線上にある要素以外は、全て0であるので、重み付け行列Wを、1次元配列として処理可能であり、上記のように、一々対角線以外の位置の0の格納場所を確保する必要はない。特に、メモリなどのコンピュータの記憶領域の節約のため、上記の通り、重み付け行列Wをその要素W1 〜W14のみを(一次元配列として)格納し、当該対角線上以外の位置の0については、プログラム処理により、0が配置されるものとし、このような対角線上以外の位置全ての0について別途格納する場所を確保することなく、取り扱うのが好ましい。プログラミングの周知の手法により、行列Wをその要素W1
〜W14の一次元配列とし、上記の対角線上以外には0が配置されるものとして取り扱うことができるからである。
【0058】
上記の格納部5において、係数格納部52の係数値格納部52aと係数配列格納部52bの対、及び、当該係数格納部52の中間値格納部52c、更に、定数格納部53の定数値格納部53aと定数配列格納部53bの対、重み格納部54の重み値格納部54aと重み値配列格納部54bの対について、夫々、補正値生成部が補正値を生成する過程において参照する行列の各成分N1,1
,N1,2 ,N1,3 …,N2,1 ,N2,2 ,N2,3 …Nr,S を所属する行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(r,s)と関連付けて格納する少なくともr×s個の係数値格納部と、補正値生成部が算出した行列の各成分Z1,1 ,Z1,2 ,Z1,3 …,Z2,1 ,Z2,2 ,Z2,3 …Zs,r を当該行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(s,r)と関連付けて格納する少なくともs×r個の中間値格納部とを、参照し生成する行列の数に対応して備える。
補正値生成部は、少なくとも、格納部の係数値格納部又は中間値格納部中の行列の特定行kの成分値Nk,1 ,Nk,2 ,Nk,3
…Nk,S の夫々と、格納部の他の参照値格納部又は中間値格納部の行列中の上記行k成分Nk,1
,Nk,2 ,Nk,3 …Nk,S に対応する列t成分値Z1,t ,Z2,t
,Z3,t …Zs,t の夫々とを参照し、これらの成分同士を乗じて当該乗算結果の総和Nk,1 ・Z1,t +Nk,2
・Z2,t +Nk,3 ・Z3,t +…+Nk,S ・Zs,t
を、格納部中の更に別の参照値格納部又は中間値格納部中に、計算結果である行列の一成分として当該計算結果の行列中の配置情報を付して格納する、行列の乗算が可能なものである。
また、補正値生成部は、格納部が格納する行列の転置行列を生成し(即ち、元の行列の行の情報と列の情報とを入れ替え)、若しくは格納部が格納する行列をその転置行列として参照(即ち上記のように元の行列から実際に転置行列を生成するのではなく、元の行列の行の情報を列の情報として参照し、元の行列の列情報を行の情報として、行と列とを入れ替えて参照)することが可能なものである。
【0059】
上記の構成を採ることにより、この装置は、未知数ベクトルΔXを上記の補正値を成分とする補正値ベクトルとし、Wを重み行列、Vを残差ベクトルとして、次式30に示される観測方程式について、
1 =W1/2 V=W1/2 (AΔX−ΔL)…式30
上記補正値生成部にて、上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数の夫々を式1の係数行列Aの構成成分として格納部中の何れかの参照値格納部又は中間値格納部に格納させ、更に、上記の距離演算部と挟各演算部とが算出した係数からトータルステーションによる各任意座標座間距離とGPSによる世界座標の各引照点間距離との差夫々、及び、トータルステーションによる任意座標の世界座標の引照点対の線分間の挟角とGPSによる世界座標の引照点対の線分間の挟角との差夫々を、式1の定数ベクトルΔLの構成成分として格納部中の何れかの参照地格納部又は中間値格納部に格納させ、そして、補正値生成部に、格納部の参照地格納部及び中間値格納部を利用した上記行列の乗算を、上記係数行列A、重み行列W及び定数ベクトルΔLについて、次式48に則して、順次行わせることにより、補正値ベクトルΔXを算出させることができる。即ち、N=AT WAとして、
ΔX=N(NN)- ・N(NN)-
N・AT WΔL …式48
を求めるのである。
【0060】
3.本願発明に係る装置の動作及びこの装置による世界座標取得のフロー
以下、装置各部の動作をその演算方法に則して説明する。
本願発明に係る世界座標の取得方法は、座標値受付工程(ステップ100)と、距離演算工程(ステップ200)と、距離係数演算工程(ステップ300)と、距離差演算工程(ステップ400)と、挟角演算工程(ステップ500)と、挟角係数演算工程(ステップ600)と、挟角差演算工程(ステップ700)と、補正値生成工程(ステップ800)と、出力工程(ステップ900)を遂行する。
この装置において、上記の座標値受付工程のみ、オペレータの入力作業を必要とする。他の工程は、逐次本願発明に係る装置が自動的に処理を行う。
以下、各工程及び工程中の動作について順に説明する。
【0061】
3−1)座標値受付工程(ステップ100)
この座標値受付工程において、上記の座標受付部1は、オペレータから、引照点の、任意座標p1〜p4の座標値(x1 ,y1
)、(x2 ,y2 )、(x3 ,y3 )、(x4
,y4 )及び世界座標p1’〜p4’の座標値(x1 ’,y1 ’)、(x2 ’,y2 ’)、(x3 ’,y3 ’)、(x4 ’,y4 ’)の入力を受付け、受付けた任意座標p1〜p4の座標値(x1 ,y1 )、(x2 ,y2
)、(x3 ,y3 )、(x4 ,y4 )を格納部5の入力値格納部51の任意座標値格納部51aへ格納し、受付けた世界座標p1’〜p4’の座標値(x1 ’,y1 ’)、(x2 ’,y2 ’)、(x3 ’,y3 ’)、(x4 ’,y4 ’)を格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51bへ格納する。
【0062】
3−2)距離演算工程(ステップ200)
上記の距離演算部2は、基本的には、加減乗除の計算、また、これに派生して、少なくとも自乗計算、正弦・余弦・正接の計算を行うことが可能な周知の一般的な計算機(演算装置と基本ソフトと応用ソフト)を採用することができる。
この距離演算工程において、距離演算部2は、格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51bに格納された引照点の世界座標値p1’〜p4’の座標値(x1 ’,y1 ’)、(x2 ’,y2 ’)、(x3 ’,y3 ’)、(x4 ’,y4 ’)を参照して、前述の式4(下に示す。)の演算を行い、その結果である距離Si,j ’の値を、係数格納部52の中間値格納部52cへ格納する。
i,j ’={(xj ’−xi ’)2 +(yj ’−yi ’)21/2 …式4
【0063】
また、距離演算部2は、格納部5の入力値格納部51の任意座標値格納部51aに格納された引照点の任意座標値p1〜p4の座標値(x1 ,y1
)、(x2 ,y2 )、(x3 ,y3 )、(x4
,y4 )を参照して、前述の式5(下に示す。)の演算を行い、その結果である距離Si,j の値を、(上記距離Si,j
’とは別に)係数格納部52の中間値格納部52cへ格納する。
i,j ={(xj −xi2 +(yj −yi
21/2 …式5
【0064】
3−3)距離係数演算工程(ステップ300)
更に、距離係数演算工程において、距離演算部2は、格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51bに格納された引照点の世界座標値p1’〜p4’の座標値(x1 ’,y1 ’)、(x2 ’,y2 ’)、(x3 ’,y3 ’)、(x4 ’,y4 ’)及び、上記の中間値格納部52cに格納された距離Si,j ’の値を参照して、前述の式8〜11(下に示す。)の演算を行い、その結果である係数ai,j 〜di,j の値夫々を、係数格納部52の係数値格納部52aへ格納する。このとき、係数ai,j
〜di,j には、前述の式27に示す行列Aの成分として、この行列A中の(配列)位置の情報(識別子)が与えられ、当該識別子は、係数配列格納部52bに格納される。
i,j =−(xj ’−xi ’)/Si,j ’…式7
i,j =−(yj ’−yi ’)/Si,j ’…式8
i,j =(xj ’−xi ’)/Si,j ’ …式9
i,j =(yj ’−yi ’)/Si,j ’ …式10
尚、距離演算部2は、x,y方向の距離の値(xj ’−xi ’)、(yj ’−yi ’)も、上記と別途に計算して中間値格納部52cに格納しておき、上記係数ai,j 〜di,j を計算するものとして実施することが可能である。
尚、上記の位置の情報については、一々識別子を与えて当該識別子の情報を格納とするという手法に限定するものではなく、配列宣言という周知のプログラミングの手法により、上記の係数ai,j
〜di,j の値を配列として格納することができる。即ち、これらの係数ai,j 〜di,j の値の格納場所によって、その配列が決定されるものとしても実施可能である。この場合、上記の位置の情報(識別子)というのは、係数ai,j
〜di,j を格納する場所そのものである(この場合、上記の係数格納部52aが係数配列格納部52bを兼ねる)。
【0065】
即ち、係数ai,j 〜di,j は、行列A中の位置の情報と対にして、係数格納部52に格納される。通常、記憶装置に記憶される情報には、その後の参照や更新のためにアドレス情報が付されているので、特定のアドレスが付された情報の格納場所を上記の行列中の特定の位置と決めてしまえば、上記のように別途行列中の配置情報を設定せずとも(別途識別子を付与せずとも)、そのアドレスに格納することによって行列中の特定位置の成分として取り扱うことができる。
距離演算部52aは、各係数ai,j 〜di,j を、係数格納部52の係数値格納部52a中、上記AΔXにおいて上記距離に関する条件式である式2の係数としてΔXの各成分Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 と対応する位置に格納する。
【0066】
式27に示す行列Aに則して、より具体的に説明すると、距離演算部2は、例えば(世界)座標p1’とp2’によって求めたa1,2 の値を、係数格納部52の係数値格納部52a中、前述の14×8の行列Aの1行1列目(1,1)に対応するアドレスの場所に格納する。同様に、係数b1,2 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの1行2列目(1,2)に対応するアドレスの場所に、c1,2 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの1行3列目(1,3)に対応するアドレスの場所に、係数d1,2
の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの1行2列目(1,4)に対応するアドレスの場所に、格納する。また、座標p1’とp3’によって求めた係数a1,3 の値を、係数格納部52の係数値格納部52a中、行列Aの2行1列目(2,1)に対応するアドレスの場所に格納する。そして、係数b1,3
の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの2行2列目(2,2)に対応するアドレスの場所に、係数c1,3 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの2行5列目(2,5)に対応するアドレスの場所に、係数d1,3
の値を係数格納部52の係数値格納部52a中、行列Aの2行2列目(2,6)に対応するアドレスの場所に、格納する。
【0067】
以下、簡単に説明すると、距離演算部2は、係数格納部52の係数値格納部52a中、座標p1’とp4’によって求めた、係数a1,4 は行列Aの(3,1)と対応する場所へ、係数b1,4
は行列Aの(3,2)と対応する場所へ、係数c1,4 は行列Aの(3,7)と対応する場所へ、係数d1,4 は行列Aの(3,8)と対応する場所へ、座標p2’とp3’によって求めた、係数a2,3 は行列Aの(4,3)と対応する場所へ、係数b2,3
は行列Aの(4,4)と対応する場所へ、係数c2,3 は行列Aの(4,5)と対応する場所へ、係数d2,3 は行列Aの(4,6)と対応する場所へ、座標p2’とp4’によって求めた、係数a2,4 は行列Aの(5,3)と対応する場所へ、係数b2,4
は行列Aの(5,4)と対応する場所へ、係数c2,4 は行列Aの(5,7)と対応する場所へ、係数d2,4 は行列Aの(5,8)と対応する場所へ、座標p3’とp4’によって求めた、係数a3,4 は行列Aの(6,5)と対応する場所へ、係数b3,4
は行列Aの(6,6)と対応する場所へ、係数c3,4 は行列Aの(6,7)と対応する場所へ、係数d3,4 は行列Aの(6,8)と対応する場所へ、格納する。
この係数行列A中の上記距離に関する係数(行列成分)及び後述の挟角に関する係数(行列成分)以外の位置に対応する格納場所には、0(数値)が格納される。
具体的には、上記の初期化部7は、行列A中の上記各係数の格納前に、格納部5の、少なくとも係数格納部52が格納する係数行列A内の全位置に対応するアドレスに、0(数値)を格納する(初期化する)。この後係数格納部52(係数値格納部52a)上記の各係数の格納を行えば、係数が格納された位置以外の位置には、0が格納されることになる(行列A中の成分の全配置位置の中身を0にてマスクする)。
【0068】
3−4)距離差演算工程(ステップ400)
距離差演算工程において、距離演算部2は、係数格納部52の中間値格納部52cを参照して、前述の式6(下に示す。)の計算を行い、求めた距離差ΔSi,j の値夫々を、定数格納部53の定数値格納部53aへ格納する。
ΔSi,j =Si,j −Si,j ’ …式6
このとき、距離差ΔS1,2 〜ΔS3,4 には、前述の式28示される定数ベクトル(14×1の行行列。換言すると14次元列ベクトル)ΔLの成分として、定数ベクトルΔL中の位置の情報(識別子)が与えられ、当該識別子は、定数配列格納部53bに格納される。
前述の係数ai,j 〜di,j の場合と同様、距離差ΔS1,2 〜ΔS3,4 の値は、行列ΔL中の位置の情報と対にして、定数格納部53に格納される。通常、記憶装置に記憶される情報には、その後の参照や更新のためにアドレス情報が付されているので、特定のアドレスの情報の格納場所を上記のベクトル中の特定の位置に配置されるものと決めてしまえば(そのように取り扱うこととすれば)、上記のように別途ベクトル中の配置情報を設定せずとも、そのアドレスに格納することによってベクトル中の特定位置の成分として取り扱うことができる。
距離演算部2は、距離差ΔS1,2 〜ΔS3,4 の夫々を、定数格納部53の定数値格納部53a中、上記距離に関する条件式である式2の定数として対応する位置に格納する。
【0069】
式28に示す定数ベクトルΔLに則して、より具体的に説明すると、距離演算部2は、例えば世界座標p1’とp2’及び任意座標p1とp2によって求めた距離差ΔS1,2 の値を、定数格納部53の定数値格納部53a中、前述の14次元(14×1)ベクトルである定数ベクトルΔLの1行目(1,1)に対応するアドレスの場所に格納する。同様に、距離差ΔS1,3 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの2行目(2,1)に対応するアドレスの場所に、距離ΔS1,4 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの3行目(3,1)に対応するアドレスの場所に、距離差ΔS2,3 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの4行目(4,1)に対応するアドレスの場所に、距離差ΔS2,4 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの5行目(5,1)に対応するアドレスの場所に、距離差ΔS3,4 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの6行目(6,1)に対応するアドレスの場所に、格納する(上記においてΔLはベクトルであるので、他の行列と区別するため、例えば、上記の(1,1)を(1)、(2,1)を(2)、(3,1)を(3)と表記することも可能であるが、明細書中の項目番号など、他の括弧書きとの区別が煩雑となるので、ここでは、ベクトルを1列の行列として、上記の通り記載する)。
但し、周知の一次元配列というプログラム手法を採ることにより、上記の列については、夫々実際に、アドレス(置き場所)を確保する必要はない。
【0070】
3−5)挟角演算工程(ステップ500)
上記の挟角演算部3は、第1判定部31と、角度演算部32と、第2判定部33とを備える。上記の角度演算部32は、基本的には、加減乗除の計算、また、これに派生して、少なくとも、自乗計算、正弦・余弦・正接、tan-1の計算を行うことが可能な周知の一般的な計算機(演算装置と基本ソフト)を採用することができる。
上記の第1判定部31は、上記格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51b或いは中間値格納部52cを参照して、線分pi’pj’について、下記の判定を行い、また、角度演算部32は、当該第1判定部31の判定に従い、下記の演算及び処理を行う。
【0071】
即ち、第1判定部31は、xj ’−xi ’が0になるか否かを判定する。
第1判定部31は、xj ’−xi ’が0と判定した場合において、更にyj ’−yi ’が0より大きいか小さいか判定する。第1判定部31が、yj ’−yi ’は0より大きいと判定した場合において、角度演算部32は、係数格納部線分pi’pj’(基準線)の上記方向角TKA’の値(ラジアン)として、π/2を中間値格納部52cへ格納し、上記において、第1判定部31が、yj ’−yi ’は0より大きいと判定した場合、角度演算部32は、上記方向角TKA’として、3π/2を中間値格納部52cへ格納する。
【0072】
一方、第1判定部31にて、xj ’−xi ’が0でないと判定した場合において、角度演算部32は、式15の計算を行い、算出したTKA’の値を中間値格納部52cに格納する。
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)} …式15
この場合、更に第1判定部31が、xj ’−xi ’は0より大きいか小さいかを判定する。その結果、第1判定部31が、xj ’−xi ’は0より小さいと判定した場合、角度演算部32は、中間値格納部52cを参照して、上記にて格納した式15によるTKA’の値にπを加算したもの(式13)を、TKA’として、新たに中間値格納部52cに格納する(当該πを加算した値をTKA’の値として採用する)。
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)}+π…式13
【0073】
また、上記において、第1判定部31、xj ’−xi ’が0より大きいと判定した場合、更に、角度演算部32は、中間値格納部52cを参照して、式15にて算出したTKA’の値について、0より小さいか否か判定する。その結果、第1判定部31が、上記TKA’の値は0より小さいと判定した場合、(式15にて算出した)当該TKA’の値に対して2πを加算した値(式14)を新たにTKA’の値として、中間値格納部52cに格納する(当該 2πを加算した値をTKA’の値として採用する)。
TKA’=tan -1{(yj
’−yi ’)/(xj ’−xi ’)}+2π… 式14
【0074】
また、第1判定部31が、(式15にて算出した)上記TKA’の値は0より小さいものでないと判定した場合、式15により算出した値をそのままTKA’として採用する。即ち、第1判定部31が、式15にて算出した上記TKA’の値は0より小さいものでないと判定した場合、角度演算部32は、上記の式15により算出した値に加工を加えない。
【0075】
そして、上記と同様に、上記の第1判定部31は、上記格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51b或いは中間値格納部52cを参照して、基準線pi’pj’と交差する線分pi’pk’について、下記の判定を行い、また、角度演算部32は、当該第1判定部31の判定に従い、下記の演算及び処理を行う。
【0076】
即ち、第1判定部31は、xk ’−xi ’が0になるか否かを判定する。
第1判定部31は、xk ’−xi ’が0と判定した場合において、更にyk ’−yi ’が0より大きいか小さいか判定する。第1判定部31が、yk ’−yi ’は0より大きいと判定した場合において、角度演算部32は、係数格納部線分pi’pk’の上記方向角TKB’の値(ラジアン)として、π/2を中間値格納部52cへ格納し、上記において、第1判定部31が、yk ’−yi ’は0より小さいと判定した場合、角度演算部32は、上記方向角TKB’として、3π/2を中間値格納部52cへ格納する。
【0077】
一方、第1判定部31にて、xk ’−xi ’が0でないと判定した場合において、角度演算部32は、式20の計算を行い、算出したTKB’の値を中間値格納部52cに格納する。
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)} …式20
この場合、更に第1判定部31が、xk ’−xi ’は0より大きいか小さいかを判定する。その結果、第1判定部31が、xk ’−xi ’は0より小さいと判定した場合、角度演算部32は、中間値格納部52cを参照して、上記にて格納した式15によるTKB’の値にπを加算したもの(式18)を、TKB’として、新たに中間値格納部52cに格納する(当該πを加算した値をTKB’の値として採用する)。
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)}+π …式18
【0078】
また、上記において、第1判定部31が、xk ’−xi ’は0より大きいと判定した場合、更に、角度演算部32は、中間値格納部52cを参照して、式20にて算出したTKB’の値について、0より小さいか否か判定する。その結果、第1判定部31が、上記TKB’の値は0より小さいと判定した場合、(式20にて算出した)当該TKB’の値に対して2πを加算した値(式19)を新たにTKB’の値として、中間値格納部52cに格納する(当該 2πを加算した値をTKB’の値として採用する)。
TKB’=tan -1{(yk
’−yi ’)/(xk ’−xi ’)}+2π …式19
【0079】
また、第1判定部31が、(式20にて算出した)上記TKB’の値は0より小さいものでないと判定した場合、式20により算出した値をそのままTKB’として採用する。即ち、第1判定部31が、式20にて算出した上記TKB’の値は0より小さいものでないと判定した場合、角度演算部32は、上記の式20により算出した値に加工を加えない。
【0080】
そして、上にて採用されたTKA’及びTKB’について、前記第2判定部33は、TKA’とTKB’の大小を判定する。その結果第2判定部33が、TKB’>TKA’と判定した場合、角度演算部32は、TKB’−TKA’を計算して、その結果を挟角Tj,i,k ’として、中間値格納部52cへ格納する。
一方第2判定部33が、TKA’>TKB’と判定した場合、角度演算部32は、2π−(TKA’−TKB’)を計算して、その結果を挟角Tj,i,k ’として、中間値格納部52cへ格納する。
【0081】
尚、上記のTKA’及びTKB’の算出のための、第1判定部31における上記の各判定、及び当該判定による角度演算部32の演算の順序については、BASICによるプログラミングに適したものを示したものであり、上記に限定するものではなく、BASICを採用してプログラムを作成する場合であっても、これ以外の順序を採用するものであっても実施可能である。更に、例えば、(ソースコードの作成に際して)更にプログラミングの言語として高級言語を採用することによって、前述の「2.本願発明において実現される計算の内容」で示したTKA’及びTKB’の算出の順序にそのまま従うものとしても、実施可能である(「2.本願発明において実現される計算の内容」では、主として各場合における計算の内容を)示したものであり、計算の順序を同欄で記載したものに制限するものではない)。
【0082】
また、TSによる任意座標における引照点の対間を結んだ線分についても、上記のGPSによる場合(TKA’、TKB’及びTj,i,k ’)と同様に、第1判定部31の判定に従って角度演算部32が演算を行い、また第2判定部33の判定に従って角度演算部32がTj,i,k の計算を行い、∠PjPiPkの挟角Tj,i,k を、線分PiPj(基準線)の方向角TKAと線分PiPkの方向角TKBとから求める。このTSの場合も、上記GPSの場合と同様、第2判定部33がTKAとTKBの大小を判定し、その結果TKB>TKAの場合、角度演算部32は、Tj,i,k としてTKB−TKAを算出して中間値格納部52cへ格納し、また、その結果TKA>TKBの場合、Tj,i,k
として2π−(TKA−TKB)を算出て中間値格納部52cへ格納する。
【0083】
3−6)挟角係数演算工程(ステップ600)
更に、挟角係数演算工程において、挟角演算部3の角度演算部31は、格納部5の入力値格納部51の世界座標値格納部51bに格納された引照点の世界座標値p1’〜p4’の座標値(x1 ’,y1 ’)、(x2 ’,y2 ’)、(x3 ’,y3 ’)、(x4 ’,y4 ’)及び、上記の中間値格納部52cに格納された距離Si,j ’の値を参照して、前述の式23〜26(下に示す。)の演算を行い、その結果である係数ei,k 〜hi,k の値夫々を、係数格納部52の係数値格納部52aへ格納する。このとき、係数ei,k
〜hi,k には、前述の式27の行列Aの成分として、行列A中の位置の情報(識別子)が与えられ、当該識別子は、係数配列格納部52bに格納される。
i,k =(yk ’−yi ’)/Si,k 2 ’…式23
i,k =−(xk ’−xi ’)/Si,k 2 ’…式24
i,k =−(yk ’−yi ’)/Si,k 2 ’ …式25
i,k =(xk ’−xi ’)/Si,k 2 ’ …式26
尚、距離演算部2は、x,y方向の距離の値(xk ’−xi ’)、(yk ’−yi ’)も、上記と別途に計算して中間値格納部52cに格納しておき、上記係数ei,k 〜hi,k を計算するものとして実施することが可能である。
【0084】
また、上記の角度に関する係数についても、距離に関する係数と同様の手法により、係数値格納部52aが、係数配列格納部52bを兼ねるものとしても実施可能である。即ち、その場合、係数ei,k
〜hi,k は、行列A中の位置の情報と対にして、係数格納部52に格納される。通常、記憶装置に記憶される情報には、その後の参照や更新のためにアドレス情報が付されているので、特定のアドレスの情報の格納場所を上記の行列の特定の位置としてしまえば、上記のように別途行列中の配置情報を設定せずとも、そのアドレスに格納することによって行列の特定の位置の成分として取り扱うことができる。
挟角演算部3の角度演算部31は、各係数ei,j 〜hi,j を、係数格納部52の係数値格納部52a中、上記AΔXにおいて上記挟角に関する条件式3の係数としてΔXの各成分Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 と対応する位置に格納する。
【0085】
式27に示す行列Aに則して、より具体的に説明すると、挟角演算部3の角度演算部31は、例えば(世界)座標p1’とp3’によって求めたe1,3 の値を、係数格納部52の係数値格納部52a中、前述の14×8の行列Aの7行1列目(7,1)に対応するアドレスの場所に格納する。同様に、係数f1,3 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの7行2列目(7,2)に対応するアドレスの場所に、g1,3
の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの7行5列目(7,5)に対応するアドレスの場所に、係数h1,3 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの7行6列目(7,6)に対応するアドレスの場所に、格納する。また、座標p1’とp4’によって求めた係数e1,4 の値を、係数格納部52の係数値格納部52a中、行列Aの8行1列目(8,1)に対応するアドレスの場所に格納する。そして、係数f1,4
の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの8行2列目(8,2)に対応するアドレスの場所に、係数g1,4 の値を係数格納部の係数値格納部52a中、行列Aの8行7列目(8,7)に対応するアドレスの場所に、係数h1,4
の値を係数格納部52の係数値格納部52a中、行列Aの8行8列目(8,8)に対応するアドレスの場所に、格納する。
【0086】
以下、簡単に説明すると、挟角演算部3の角度演算部31は、係数格納部52の係数値格納部52a中、座標p2’とp4’によって求めた、係数e2,4 は行列Aの(9,3)と対応する場所へ、係数f2,4
は行列Aの(9,4)と対応する場所へ、係数g2,4 は行列Aの(9,7)と対応する場所へ、係数h2,4 は行列Aの(9,8)と対応する場所へ、座標p2’とp1’によって求めた、係数e2,1 は行列Aの(10,3)と対応する場所へ、係数f2,1
は行列Aの(10,4)と対応する場所へ、係数g2,1 は行列Aの(10,1)と対応する場所へ、係数h2,1 は行列Aの(10,2)と対応する場所へ、座標p3’とp1’によって求めた、係数e3,1 は行列Aの(11,5)と対応する場所へ、係数f3,1 は行列Aの(11,6)と対応する場所へ、係数g3,1
は行列Aの(11,1)と対応する場所へ、係数h3,1 は行列Aの(11,2)と対応する場所へ、座標p3’とp2’によって求めた、係数e3,2 は行列Aの(12,5)と対応する場所へ、係数f3,2
は行列Aの(12,6)と対応する場所へ、係数g3,2 は行列Aの(12,3)と対応する場所へ、係数h3,2 は行列Aの(12,4)と対応する場所へ、座標p4’とp2’によって求めた、係数e4,2 は行列Aの(13,7)と対応する場所へ、係数f4,2
は行列Aの(13,8)と対応する場所へ、係数g4,2 は行列Aの(13,3)と対応する場所へ、係数h4,2 は行列Aの(13,4)と対応する場所へ、座標p4’とp3’によって求めた、係数e4,3 は行列Aの(14,7)と対応する場所へ、係数f4,3
は行列Aの(14,8)と対応する場所へ、係数g4,3 は行列Aの(14,5)と対応する場所へ、係数h4,3 は行列Aの(14,6)と対応する場所へ、格納する。
【0087】
3−7)挟角差演算工程(ステップ700)
挟角差演算工程において、挟角演算部3は、係数格納部52の中間値格納部52cを参照して、前述の式22(下に示す。)の計算を行い、求めた挟角差ΔTj,i,k の値夫々を、定数格納部53の定数値格納部53aへ格納する。
ΔTj,i,k =Tj,i,k
−Tj,i,k ’ …式22
このとき、挟角差ΔT2,1,3 〜T1,4,3 には、前述の式28示される定数ベクトルΔLの成分として、定数ベクトルΔL中の位置の情報(識別子)が与えられ、当該識別子は、定数配列格納部53bに格納される。
前述の距離差ΔS1,2 〜ΔS3,4 の値の場合と同様、挟角差ΔT2,1,3 〜T1,4,3 の値は、行列ΔL中の位置の情報と対にして、定数格納部53に格納される。この場合も、記憶装置に記憶される情報には、その後の参照や更新のためにアドレス情報が付されているので、特定のアドレスの情報の格納場所を上記のベクトル中の特定の位置に配置されるものと決めてしまえば(そのように取り扱うこととすれば)、上記のように別途ベクトル中の配置情報を設定せずとも、そのアドレスに格納することによってベクトル中の特定位置の成分として取り扱うことができる。
挟角演算部3は、挟角差ΔT2,1,3 〜T1,4,3 の夫々を、定数格納部53の定数値格納部53a中、上記挟角に関する条件式3の定数として対応する位置に格納する。
【0088】
式28に示す定数ベクトルΔLに則して、より具体的に説明すると、挟角演算部3は、例えば世界座標p1’とp2’とp3’及び任意座標p1とp2とp3によって求めた挟角差ΔT2,1,3 の値を、定数格納部53の定数値格納部53a中、前述の14次元(14×1)列ベクトルである定数ベクトルΔLの7行目(7,1)に対応するアドレスの場所に格納する。同様に、挟角差ΔT2,1,4 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの8行目(8,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT3,2,4 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの9行目(9,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT3,2,1 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの10行目(10,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT4,3,1 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの11行目(11,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT4,3,2 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの12行目(12,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT1,4,2 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの13行目(13,1)に対応するアドレスの場所に、挟角差ΔT1,4,3 の値を定数格納部53の定数値格納部53a中、定数ベクトルΔLの14行目(14,1)に対応するアドレスの場所に、格納する。この場合も、ΔLは、列ベクトルであるので、その成分夫々について、一次元配列として、格納することができる。
【0089】
3−8)補正値生成工程(ステップ800)
補正値生成工程において、上記の補正値生成部4は、係数格納部52(の係数配列格納部52bと係数値格納部52a)、定数格納部53(の定数配列格納部53bと定数値格納部53a)及び重み格納部54(の重み値配列格納部54bと重み値格納部54a)を参照して、下記の式44を計算し、算出した補正値ベクトルΔXの成分Δx1、Δy1、Δx2、Δy2、Δx3、Δy3、Δx4、Δy4の値を格納部5の出力値格納部55へ格納する。
ΔX=N11- ・AT WΔL …式44
【0090】
上記の式44の計算について、具体的に説明する。補正値生成部4は、上記の通り、先ずAT WA(=N)の計算を行い、Nを求める。ここで、補正値生成部4は、先ず係数格納部52(の係数配列格納部52bと係数値格納部52a)を参照して、行列A中の各係数の行と列の配列(アドレス)を入れ替えた状態にして、中間値格納部52cに当該配列情報と共に格納するものとしてもよいが、前述の通り、このような転置行列をいちいち生成するのではなく、補正値生成部4は、係数値格納部52aのAの行と列とを逆に参照してAT
を用いる計算を行うのが好ましい。以下、補正値生成部4は、係数値格納部52aを直接参照してAT を用いる計算を行うものとする。
補正値生成部4は、係数値格納部52aに格納されている係数行列Aの成分情報と係数配列格納部52bに格納されている係数行列Aの成分の配置情報、重み値配列格納部54bに格納されている重み行列Wの重み値(1)と重み値格納部54aに格納されている重み行列W中の当該重み値の配置情報を参照して、AT
WAを計算し、当該計算結果である行列N(式40)の成分とその配置情報を中間値格納部52cに格納する。
そして、補正値生成部4は、中間値格納部52cに格納された上記Nを参照して、下記式47の計算を行い、行列N11- を求め、当該N11-
の成分とその配置情報を中間値格納部52cに格納する。
11- =N(NN)- ・N(NN)- ・N …式47
【0091】
そして、補正値生成部4は、この中間値格納部52c、重み格納部54及び定数格納部53を参照して、下記式48を計算し、補正値ベクトルΔXの各成分を算出し、出力値格納部55へ格納する。
ΔX=N(NN)- ・N(NN)-
・N・AT WΔL …式48
行列間の成分計算(乗算と加算)に当っては、補正値生成部4にて、対応する配列格納部同士の指定により配列情報と対なす値(数値)を取得し計算を行い、必要に応じて中間値格納部52cを利用して演算途中に生じる中間値を保持し、計算結果を演算結果として決められた配置情報と共に、出力値格納部55に格納すればよい。即ち、補正値生成部4は、上記式53の計算において必要な、行列とベクトルの対応する成分同士の計算の組み合わせ手順を予め保持しており、その手順に従って、格納部5内に格納された行列・ベクトルの各成分を参照し、計算を行う。
【0092】
上記の計算方法について、その一例を挙げると、補正値生成部4は、定数格納部53に格納された定数ベクトルΔLの各成分と、重み格納部54に格納された重み行列Wの各成分と、上記中間値格納部52cに格納された上記転置行列AT の各成分とを参照し、AT WΔLの計算を行う。そして補正値生成部4は、算出したAT WΔLの各成分の値及びその配列を中間値格納部52cに格納する。
また、補正値生成部4は、上記の通り、AT WAを計算して、その結果をNとして、中間値格納部52cへ格納する。そして、補正値生成部4は、中間値格納部52cを参照して、当該Nの値から、NNの計算を行う。
【0093】
具体的には、上記補正値生成部4は、上記の係数格納部52に格納された係数行列Aの各成分(及びその配列)と、重み格納部54に格納された重み行列Wの各成分(及びその配列)とを参照して、AT
WAの計算を行い、その結果Nについて更にNN即ち、AT WA・AT WAの計算を行う。補正値生成部4は、このNNの計算結果である行列について、その各成分を(配列情報と共に)中間値格納部52cへ格納する。
補正値生成部4は、中間値格納部52cの上記NNの結果である行列(NN)の各成分(及びその配列)を参照して、当該(NN)の逆行列を算出する。この行列(NN)は、ランク欠損3となることが分かっているので、(NN)-
の一般逆行列のランクを5として、(NN)- の計算を行い、当該(NN)- の計算結果も中間値格納部52cに格納する。更に補正値生成部4は、中間値格納部52cのNと(NN)-
の各成分(及びその配列)を参照して、N(NN)- の計算を行い、その結果を中間値格納部52cへ格納する。また、更に、補正値生成部4は、上記にて中間値格納部52cに格納されたN(NN)-
の成分び配列を参照して、N(NN)- ・N(NN)- の計算を行い、その結果を中間値格納部52cへ格納する。そして、補正値生成部4は、中間値格納部52cに格納された上記N(NN)-
・N(NN)- の各成分及びその配列を参照して、N(NN)- ・N(NN)- ・N即ちN11-
の計算を行い、その結果を、更に中間値生成部52cへ格納する。更に、補正値生成部4は、中間値格納部52cに前記にて格納されているAT WΔLの結果と上記にて格納されたN11- の結果とを参照して、補正値ベクトルΔXの成分Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 の値を算出し、出力値格納部55へ格納する。
【0094】
本願発明の装置によって、(少なくとも小数第10位のオーダーにて)ここで得られた補正値の合計、即ち、Δx1 +Δy1 +Δx2 +Δy2 +Δx3 +Δy3 +Δx4 +Δy4 が0(数値)になる。即ち、ΔXT ・ΔXの全微分の値が0となる(W.Welschの条件式にて全微分の結果が0になることの確認)。このような補正値の合計が0となっていることを確認(出力)できるようにしてもよいが、本願発明に係る装置において、補正値を求める上でそのような確認は必要ない。
上記のΔXT ・ΔXの全微分の値が0となることの確認について、ムーア・ペンローズの一般逆行列は、ノルム最小の解を与える最小二乗解を求める式であるが、その解のノルム最小を検証するために、設けた工程である。即ち、TSで得た任意座標値の地積測量図の土地の形状を公共座標でも確保するため、W.Welcshの条件式(補正値ベクトルのノルム最小と等価)の全微分が、「完全0」になることの確認を行っている。
【0095】
3−9)出力工程(ステップ900)
出力工程において、出力値格納部55に格納された上記の補正値Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 は、出力部6に出力される。出力部6は、モニタへの表示、プリントアウト、フレキシブルディスク等の記録媒体への記録の少なくとも何れか1つを行うものである。
尚、この実施の形態において、補正値生成部4による補正値の生成まで、一つのシステム(装置及びプログラム)で行うことを前提としたが、係数行列A及び定数ベクトルΔLの算出(行列・ベクトルとしての成分の配置を含む。)までを上記のシステムで行い、当該係数行列A及び定数ベクトルΔLから上記補正値ベクトルΔXの算出については、観測方程式の解法が可能な既存のシステムを別途用意して利用するものとしても実施可能である。その場合、図1に示す上記のシステムにおいて、補正値生成部4を設けずに、出力部6にて一旦、上記係数行列A及び定数ベクトルΔL(その成分の値と配列)を記録媒体に出力するものとして実施することができる。この場合、当該記録媒体を観測方程式の解法を行う別途のシステムを利用して上記補正値ベクトルΔXの生成を行えばよい。
また、上記図1に示す装置では、補正値ベクトルΔXを出力することにより、全工程を終了するものとしたが、補正値加算部(図示せず。)を備えるものとし、補正値ベクトルΔXの各成分をGPSによる世界座標値に加算して、世界座標の最確値の算出まで行うようにしても実施可能である。この場合、補正値加算部は、算出した最確値を格納部5の出力値格納部55へ格納し、出力部6が、当該最確値を出力するものとして実施することができる。
【0096】
上記において、この世界座標の取得方法は、座標値受付工程(ステップ100)、距離演算工程(ステップ200)、距離係数演算工程(ステップ300)、距離差演算工程(ステップ400)、挟角演算工程(ステップ500)、挟角係数演算工程(ステップ600)、挟角差演算工程(ステップ700)、補正値生成工程(ステップ800)、出力工程(ステップ900)の順で、各工程を遂行するものとしたが、距離演算工程(ステップ200)、距離係数演算工程(ステップ300)、距離差演算工程(ステップ400)、挟角演算工程(ステップ500)、挟角係数演算工程(ステップ600)及び挟角差演算工程(ステップ700)については、このような順序での処理に限定するものではなく、順序の変更は可能であり、更には、これらの各工程を並行して遂行するものとしても実施可能である。
また、算出した世界座標の最確値を、GPSの世界座標値として、再度上記の演算を繰り返し行い、最確値の精度を更に向上させることも可能である(通常1度繰り返せば、それ以上最確値の精度は、変化しない)。
【0097】
尚、一般的な測量等において平面直角座標が利用され、当該座標によって、位置の特定がされる(測量法第11条)。この座標平面については、回転楕円体(地球楕円体)から、直接平面に投影するガウス・クリューゲルの等角投影(横メルカトール投影)を採用して、座標系原点を通る子午線は等長に、図形は等角の相似形に投影される。しかし、距離については、基準子午線から東西に離れるに従って平面距離が増大していく。このため、通常の土地の境界線及び基準点の確定程度では問題にならないが、トンネルや道路など、引照点間の距離が大きい場合は、地球が楕円体(地球楕円体)であることを考慮して、適切な変換が必要である。この点については、本願発明者が、本願発明に先行して創作した、特願2004−246064(平成16年8月26日出願)の方法を利用することができる。
【実施例】
【0098】
図5を用いて、本願発明の実施例について説明する。
この図5は、前述の非特許文献1の143頁の図−3.40に対応するものである。ここでは、10個の境界点を採り、この境界点のうち4個A〜Dを引照点としている(本明細書では、既に引照点にp1〜p4の記号を用いており、紛らわしいので、図5において、m1〜m6の記号を用いて、引照点A〜D以外の境界点を表す。またTSの設置点Tについても、本明細書で用いた挟角の表記と紛らわしいので、図5において、Mで示す)。
即ち、境界点A〜D,m1〜m6の全てについて、TSにて測量を行い任意座標を得ているものとし、そのうちA〜Dの4点を引照点とし、当該A〜D上にてGPSによる世界座標を取得しているものとする。
このような状況で、本願発明による方法(装置)を用いた場合と、非特許文献1とによる誤差の比較を行う。
【0099】
この非特許文献1のデータに則して、説明すると、各座標値の単位は、メートルであり、また、角度については、度−分−秒である。
先ず、上記境界点のうち、引照点としてGPSによる世界座標を取得したA〜Dの4点について、最確値を求める。そして、当該引用照点間において、点間距離が最長となる対A−Bについて、変換係数(平行移動・回転)を求め、この変換係数を用いて、他の境界点m1〜m6を世界座標に変換する。
先ず、次の「TS LOCATION 」に示す通り、非特許文献1の実測データを用いて、上記にA〜Dについて、TSによる任意座標値を本願発明に係る装置に入力した。
【0100】
以下において、TSX( 1) はTS(トータルステーション)による上記引照点Aの任意座標のX座標値を、TSY( 1) はTSによる上記引照点Aの任意座標のY座標値を示している。TSX(
2) はTSによる上記引照点Bの任意座標のX座標値を、TSY( 2) はTSによる上記引照点Bの任意座標のY座標値を示している。TSX( 3) はTSによる上記引照点Cの任意座標のX座標値を、TSY(
3) はTSによる上記引照点Cの任意座標のY座標値を示している。TSX( 4) はTSによる上記引照点Dの任意座標のX座標値を、TSY( 4) はTSによる上記引照点Dの任意座標のY座標値を示している。
また、次の「既測値座標 トータルステーション」に、上記A〜Dの任意座標と共に、(非特許文献1において)TSにて実測した境界点m1〜m6の値を示す。
【0101】
更に次の「GPS LOCATION」に示す通り、非特許文献1の実測データを用いて、上記にA〜Dについて、GPSによる任意座標値を本願発明に係る装置に入力した。
以下において、GPX( 1) はGPSによる上記引照点Aの世界座標のX座標値を、GPY( 1) はGPSによる上記引照点Aの世界座標のY座標値を示している。GPX(
2) はGPSによる上記引照点Bの任意座標のX座標値を、GPY( 2) はGPSによる上記引照点Bの任意座標のY座標値を示している。GPX( 3) はGPSによる上記引照点Cの任意座標のX座標値を、GPY(
3) はGPSによる上記引照点Cの任意座標のY座標値を示している。GPX( 4) はGPSによる上記引照点Dの任意座標のX座標値を、GPY( 4) はGPSによる上記引照点Dの任意座標のY座標値を示している。
【0102】
また、次の「CORRECTION」は、上記の引照点のTSによる任意座標の座標値とGPSによる世界座標の座標値とを本願発明に係る装置に入力し、出力した補正値を示している。DX(
1)は上記のGPSによる上記引照点Aの世界座標のX座標値に加算する補正値(ΔX1 )を、DY( 1)は上記のGPSによる上記引照点Aの世界座標のY座標値に加算する補正値(ΔY1 )を、DX( 2)は上記のGPSによる上記引照点Bの世界座標のX座標値に加算する補正値(ΔX2 )を、DY( 2)は上記のGPSによる上記引照点Bの世界座標のY座標値に加算する補正値(ΔY2 )を、DX( 3)は上記のGPSによる上記引照点Cの世界座標のX座標値に加算する補正値(ΔX3 )を、DY( 3)は上記のGPSによる上記引照点Cの世界座標のY座標値に加算する補正値(ΔY3 )を、DX( 4)は上記のGPSによる上記引照点Dの世界座標のX座標値に加算する補正値(ΔX4 )を、DY( 4)は上記のGPSによる上記引照点Dの世界座標のY座標値に加算する補正値(ΔY4 )を、夫々示している。
【0103】
そして、次の「ADJUSTED LOCATION 」は、本願発明によって求めた上記補正値を加算して補正した後の世界座標の座標値、即ち最確値を示している。即ち、AX(
1)はAのX座標の最確値を、AY( 1)はAのY座標の最確値を、AX( 2)はBのX座標の最確値を、AY( 2)はBのY座標の最確値を、AX( 3)はCのX座標の最確値を、AY(
3)はCのY座標の最確値を、AX( 4)はDのX座標の最確値を、AY( 4)はDのY座標の最確値を、夫々示している。
また、下記の「最確値」において、本願発明の実施によって求めた上記のA〜Dの最確値と共に、境界点m1〜m6の最確値を示す(この境界点m1〜m6の最確値の算出については、前述の通り、引照点の対間の線分中、最長の線分ABから求めた換算値を用いて行った)。
一方次の「ヘルマート変換値」は、非特許文献1に記載の方法(ヘルマート変換係数)により、求めた変換値である(ヘルマート変換係数をTS座標値に乗算及び加減算して、世界座標値に換算した値である)。
尚、上記のヘルマート変換とは、既測TS座標値(この場合、A〜Dの4点)と観測世界座標値(この場合、A’〜D’の4点)とから、最小二乗法によって、最適変換係数4個を求め、当該変換係数を用いて、上記既測TS座標値の全てを、世界座標値に変換するものである。
【0104】
TS LOCATION
TSX( 1)=32.2410
TSY( 1)=20.1220
TSX( 2)=70.0420
TSY( 2)=59.8770
TSX( 3)=47.4130
TSY( 3)=67.9800
TSX( 4)=24.9760
TSY( 4)=32.4330
【0105】
GPS LOCATION
GPX( 1)=-23.6740
GPY( 1)=-11.8670
GPX( 2)= 29.8950
GPY( 2)= O.0000
GPX( 3)= 15.6610
GPY( 3)= 19.3750
GPX( 4)=-22.8230
GPY( 4)= 2.4090
【0106】
CORRECTION
DX( 1)= 0.OO73572839
DY( 1)= 0.0076252040
DX( 2)=-0.0017425794
DY( 2)= 0.OO28591491
DX( 3)=-0.0120532589
DY( 3)=-0.O116404310
DX( 4)= 0.0064385543
DY( 4)= O.OO1156O779
【0107】
ADJUSTED LOCATION
AX( 1)=-23.6666
AY( 1)=-11.8594
AX( 2)= 29.8933
AY( 2)= 0.OO29
AX( 3)= 15.8489
AY( 3)= 19.3634
AX( 4)=-22.8166
AY( 4)= 2.4102
【0108】
既測座標値 トータルステーション
測点名 TSX TSY
A 32.241 20.122
m1 51.410 24.547
m2 68.818 31.982
m3 63.114 48.427
B 70.042 59.877
m4 60.742 75.655
C 47.413 67.980
m5 39.863 55.873
m6 28.446 47.169
D 24.976 32.433
【0109】
最確値
測点名 AX AY
A -23.6666 -11.8594
m1 -5.2948 -18.8957
m2 13.2974 -22.4517
m3 17.7514 -5.6250
B 29.8933 0.0029
m4 30.7679 18.4356
C 15.6489 19.3634
m5 2.6241 13.5380
m6 -11.7075 12.6951
D -22.8166 2.4102
【0110】
ヘルマート変換値
測点名 HX HY
A -23.674 -11.864
m1 -5.297 -18.903
m2 13.302 -22.460
m3 17.757 -5.628
B 29.903 0.002
m4 30.778 18.441
C 15.654 19.369
m5 2.625 13.542
m6 -11.711 12.698
D -22.824 2.410
【0111】
次の「点間距離比較」において、上記にて求めた本願発明による引照点A〜Dの最確値(実施例)及び非特許文献1による引照点A〜Dのヘルマート変換値について夫々の最確値による引照点間の距離と、TSの任意座標による引照点間の距離(既測TS)を示す。
また、次の「挟角比較」において、各境界点(引照点を含む。)の対間を結ぶ線分同士がなす挟角について、上記にて求めた本願発明による引照点A〜Dの最確値(実施例)及び非特許文献1による引照点A〜Dのヘルマート変換値について夫々の最確値又は変換値によるものと、TSによるものとを示す。
【0112】
点間距離比較(メートル)
測点間 既測TS 実施例 ヘルマート変換
A-m1 19.67311 19.67314 19.67896
m1−m2 18.92928 18.92921 18.93608
m2−m3 17.40614 17.40620 17.41158
m3−B 13.38281 13.38279 13.38739
B−m4 18.45346 18.45343 18.45975
m4−C 15.14738 15.14744 15.15244
C−m5 14.26821 14.26817 14.27266
m5−m6 14.35644 14.35637 14.36082
m6−D 15.13904 15.13906 15.14403
D−A 14.29479 14.29489 14.29929
A−B 54.85778 54.85779 54.87528
A−C 50.20536 50.20529 50.22143
A−D 14.29479 14.29489 14.29929
B−C 24.03602 24.03605 24.04402
B−D 52.76474 52.76484 52.78196
C−D 42.03580 42.03577 42.04954
【0113】
挟角比較(度−分−秒)
測点間 既測TS 実施例 ヘルマート変換
m1-A-D 107-32-50 107-32-52 107-33-02
A-D-m6 136-12-13 136-12-10 136-12-01
D-m6-m5 140-34-17 140-34-20 140-34-37
m6-m5-C 200-43-52 200-43-51 200-43-35
m5-C-m4 152-23-29 152-23-30 152-23-35
C-m4-B 90-47-42 90-47-42 90-47-40
m4-B-m3 117-35-05 117-35-05 117-35-09
B-m3-m2 230-18-21 230-18-21 230-18-22
m3-m2-m1 93-59-53 93-59-54 93-59-52
m2-m1-A 169-52-16 169-52-16 169-52-06
B-A-D 74-06-09 74-06-11 74-06-15
A-D-C 117-11-40 117-11-38 117-11-35
D-C-B 102-33-30 102-33-31 102-33-29
C-B-A 66-08-41 66-08-40 66-08-41
【0114】
上記の「点間距離比較」において、例えば、本願発明の実施例のA−B間の距離を見れば、54.85779mであり、TS(既測TS)のA−B間の距離
54.85778 mに対して、小数第5位で(100分の1mm)で初めて差異(0.00001 m)が認められる。一方、非特許文献1のヘルマート変換によるものでは、A−B間の距離は54.87528mと小数第2位で(100分の1m)で差異(0.0175m)が生じている。
また、上記の「挟角比較」において、∠BADをについて、本願発明の実施例は74-06-11(74度06分11秒)であり、TSの 74-06-09 (74度06分09秒)に対してその差異は、+2秒である。一方、非特許文献1のヘルマート変換によるものでは、∠BADをについて、
74-06-15 (74度06分15秒)と、TSに対する差異は、+6秒である。
上記の通り、本願発明は、非特許文献1と同じデータを用いても、TSによる実測図形に対して、変換後の変形は極めて小さく、比較例とした非特許文献1と比べて、精度が非常に高いことが確認できる。
【0115】
最後に、本願発明を統括すると、その特徴は、世界座標の最確値を得るための補正値の算出にあたり、従来同様、引照点のTSによる任意座標とGPSによる世界座標を用いるものであるが、観測方程式の条件として、従来と異なり、引照点間の距離と共に挟角を用いること(即ち、距離に関する条件式により6個の方程式を、更に、挟角に関する条件式により8個の方程式を求めること)である。そして、これら6+8=14個の観測方程式から、正規方程式の係数行列である
8×8行列求めるものである。この係数行列である8×8行列はランク欠損3であるので、ムーア・ペンローズ又はベアハンマーの一般逆行列により計算して、W.Welschの条件式の未知ベクトル及び残差ベクトル夫々のノルム最小の最小解を観測方程式の条件とし、上記の未知ベクトルの最小解を得る一般逆行列及び引照点間の距離と挟角の2つの条件式を用いることにより、特定の引照点に偏ることなく、各引照点から式の係数行列及び定数列ベクトルを算出することにて、極めて精度の高い世界座標の最確値を求めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本願発明に係る装置の一実施の形態の説明図である。
【図2】本願発明に係る装置の動作及び本願発明に係る方法のフローを示す説明図である。
【図3】(A)〜(F)本願発明に係る方法の説明図である。
【図4】(A)〜(C)本願発明に係る方法の説明図である。
【図5】本願発明に係る方法による境界点及び引照点の説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 座標受付部
2 距離演算部
3 挟角演算部
4 補正値生成部
5 格納部
6 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、各引照点の任意座標を世界座標に変換することにより、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得方法において、
トータルステーションにより任意座標p1〜p4を実測した4つの上記引照点について、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標p1’〜p4’を、世界座標の最確値に変換することが可能な補正値を求めるものであって、
上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての、上記任意座標pi(xi ,yi),pj(xj,yj)(i=1,2,3,4、j=1,2,3,4、i≠jとする。)による距離の値Si,j 及び上記世界座標pi’(xi ’,yi ’),pj’(xj ’,yj ’)による距離の値Si,j ’の差ΔSi,j と、当該世界座標によるx方向の距離の値xj ’−xi ’と、当該世界座標によるy方向の距離の値yj ’−yi ’と、上記世界座標による距離の値Si,j ’と、
更に、上記対なす引照点間を結ぶ各線分のうち、交差する2つの線分の組全てについての、上記任意座標による引照点間の当該線分の組pi(xi ,yi)pj(xj,yj
),pi(xi ,yi )pk(xk ,yk )(k=1,2,3,4、i≠j≠kとする。)がなす挟角Tj,i,k 及び上記世界座標による引照点間の当該線分の組pi’(xi ’,yi ’)pj’(xj ’,yj ’),pi’(xi ’,yi ’)pk’(xk ’,yk ’)がなす挟角Tj,i,k ’の差の値ΔTj,i,k とから、
上記4つの引照点の世界座標に対する補正値を、引照点の観測方程式の解として算出するものであることを特徴とする地積測量図の世界座標取得方法。
【請求項2】
上記の補正値を、4つの引照点の世界座標p1’〜p4’の座標成分に加算することによって、当該引照点の世界座標の最確値を求めるものであり、
上記の観測方程式は、V=AΔX−ΔL…式1
で示されるものであり、
上記Vは、観測値の即ちGPSによる各引照点間の世界座標の、残差を成分とする残差ベクトルであり、
上記観測方程式のΔXは、当該4つの引照点の世界座標成分に加算される、上記補正値を成分とする未知の補正値ベクトルであり、
上記の補正値の算出において、上記の引照点の全ての対について、上記任意座標による当該引照点間の距離Si,j 及び上記世界座標による当該引照点間の距離Si,j
’の差の値ΔSi,j と、当該引照点の世界座標pi’(xi ’,yi ’),pj’(xj ’,yj ’)とから、式2で示される距離に関する条件式、即ち、Vi,j =ai,j Δxi +bi,j Δyi +ci,j Δxj +di,j Δyj −ΔSi,j …式2
(ここで、ai,j =−(xj’―xi ’)/Si,j ’、bi,j =−(yj’―yi ’)/Si,j ’、ci,j =(xj’―xi ’)/Si,j ’、di,j =(yj’―yi ’)/Si,j ’)にて、当該式を満たす係数の組(ai,j
,bi,j ,ci,j ,di,j )を得るものであり、
更に、挟角に関する下記の条件式、即ち、
j,i,k =ei,k Δxi +fi,k Δyi +gi,k Δxk +hi,k Δyk −ΔTj,i,k…式3
(ここで、ei,k =(yk’−yi ’)/Si,k2 ,fi,k =−(xk ’−xi ’)/Si,k2 ,gi,k =−(yk ’−yi ’)/Si,k2 ,hi,k =(xk ’−xi ’)/Si,k2 であり、またSi,k ’は、上記引照点の世界座標pi’(xi ’,yi ’)とpk ’(xk ’,yk ’)の間の距離である。)にて、当該式を満たす係数の組(ei,k ,fi,k ,gi,k ,hi,k)を得るものであり、
上記観測方程式の係数行列Aは、上記式2及び式3の上記係数ai,j ,bi,j ,ci,j ,di,j,ei,k
,fi,k ,gi,k ,hi,k を配列した係数行列であり、
上記観測方程式のΔLは、上記のΔSi,k の値と、上記のΔTj,i,k の値とを成分とする定数ベクトルであることを特徴とする請求項1記載の地積測量図の世界座標取得方法。
【請求項3】
上記の補正値ベクトルΔXは、上記4つの引照点の世界座標p1’〜p4’の座標成分x1 ’,y1 ’,x2 ’,y2 ’,x3 ’,y3 ’,x4 ’,y4 ’に加算する上記の補正値Δx1 ,Δy1 ,Δx2 ,Δy2 ,Δx3 ,Δy3 ,Δx4 ,Δy4 を成分とする8次元の未知ベクトルであり、
上記の係数行列Aは、上記の距離に関する条件式2から、当該条件式2を満たす6つの係数の組(ai,j ,bi,j ,ci,j,di,j)を得、また、上記の挟角に関する条件式3にて、当該条件式3を満たす8つの係数の組(ei,k
,fi,k,gi,k,hi,k )を得て、上記式2の右辺の係数ai,j
,bi,j,ci,j ,di,j ,ei,k ,fi,k
,gi,k,hi,kを配列した14×8の行列であり、
上記定数ベクトルΔLは、上記6組のΔSi,j の値と、上記8組のΔTj,i,k の値とを成分とする14次元ベクトルであり、
上記係数行列Aから、ランク欠損3の8×8の正規方程式の係数行列を取得し、当該正規方程式の係数行列から、解のノルム最小を与える一般逆行列の計算にて、上記補正値ベクトルΔXを、上記観測方程式の最小二乗解として、求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の地積測量図の世界座標取得方法。
【請求項4】
トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、コンピュータを用いて各引照点の任意座標を世界座標に変換することにより、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得方法において、
上記のコンピュータは、4つの引照点の、トータルステーションにより実測した任意座標の座標値と、GPS測量等により得られた当該引照点の世界座標の座標値の、入力を受付け、4つの引照点の世界座標の上記座標値を当該引照点の世界座標の最確値とする補正値を、自動的に出力することが可能なものであり、
上記のコンピュータは、上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての上記任意座標及び上記世界座標の入力を受付ける座標値受付部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも当該引照点間の距離に関する条件式の係数を算出する距離演算部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも上記引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数を算出する挟角演算部と、上記の距離演算部が算出した係数及び上記の挟角演算部が算出した係数とから上記の観測方程式の解として上記の補正値を生成する補正値生成部と、少なくとも上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数を格納し補正値生成部へ参照させる格納部とを備えるものであり、
上記の格納部は、補正値生成部が補正値を生成する過程において参照する行列の各成分N1,1 ,N1,2 ,N1,3…,N2,1 ,N2,2,N2,3
…Nr,S を所属する行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(r,s)と関連付けて格納する少なくともr×s個の参照値格納部と、補正値生成部が算出した行列の各成分Z1,1 ,Z1,2 ,Z1,3 …,Z2,1 ,Z2,2,Z2,3 …ZS,r を当該行列中の配置情報(1,1),(1,2),(1,3)…(2,1),(2,2),(2,3)…(s,r)と関連付けて格納する少なくともs×r個の中間値格納部とを、参照し生成する行列の数に対応して備え、
補正値生成部は、少なくとも、格納部の参照地格納部又は中間値格納部中の行列の特定行kの成分値Nk,1 ,Nk,2 ,Nk,3…Nk,S の夫々と、格納部の他の参照値格納部又は中間値格納部の行列中の上記行k成分Nk,1,Nk,2
,Nk,3 …Nk,S に対応する列t成分値Z1,t ,Z2,t,Z3,t …zZs,t の夫々とを参照し、これらの成分同士を乗じて当該乗算結果の総和Nk,1
・Z1,t +Nk,2・Z2,t +Nk,3 ・Z3,t
+…+Nk,S ・Zs,t
を、格納部中の更に別の参照値格納部又は中間値格納部中に、計算結果である行列の一成分として当該計算結果の行列中の配置情報を付して格納する、行列の乗算が可能であり、
未知数ベクトルΔXを上記の補正値を成分とする補正値ベクトルとし、Wを重み行列とし、Vを残差ベクトルとし、V1 を重み付けされた残差ベクトルとして、次式30に示される観測方程式について、
1 =W1/2 V=W1/2 (AΔX−ΔL)…式30
上記補正値生成部にて、上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数の夫々を式1の係数行列Aの構成成分として格納部中の何れかの参照値格納部又は中間値格納部に格納させ、更に、上記の距離演算部と挟角演算部とが算出した係数からトータルステーションによる各任意座標座間距離とGPSによる世界座標の各引照点間距離との差夫々、及び、トータルステーションによる任意座標の世界座標の引照点対の線分間の挟角とGPSによる世界座標の引照点対の線分間の挟角との差夫々を、式1の定数ベクトルΔLの構成成分として格納部中の何れかの参照地格納部又は中間値格納部に格納させ、補正値生成部に、格納部の参照地格納部及び中間値格納部を利用した上記行列の乗算を、上記係数行列A、重み行列W及び定数ベクトルΔLについて、正規方程式の係数行列AT WAをNとして、次式53に則して、順次行わせ、
ΔX=N(NN)- ・N(NN)-N・AT
WΔL …式48
補正値ベクトルΔXを算出させるものであることを特徴とする地積測量図の世界座標取得方法。
【請求項5】
トータルステーション測量により得られた各引照点の任意座標と、GPS等測量により得られた当該引照点の世界座標とから、各引照点の任意座標を世界座標に変換し、地積測量図を任意座標から世界座標へ変換する地積測量図の世界座標取得装置において、
トータルステーションにより実測した4つの上記引照点においてGPS測量等により得られた世界座標を、最確値へ変換することが可能な補正値について、引照点の観測方程式の解として求めるものであり、
上記4つの引照点のうちの2つの引照点の対全ての上記任意座標及び上記世界座標の入力を受付ける座標値受付部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも当該引照点間の距離に関する条件式の係数を算出する距離演算部と、上記座標値受付部が受付けた座標値から少なくとも上記引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数を算出する挟角演算部と、上記の距離演算部が算出した係数及び上記の挟角演算部が算出した係数とから上記の観測方程式の解として上記の補正値を生成する補正値生成部と、少なくとも上記の距離演算部と挟各演算部とが算出した係数を格納し補正値生成部へ参照させる格納部とを備えるものであり、
上記の観測方程式は、上記各引照点の世界座標のx,y成分に加算する補正値Δx,Δyを成分とする補正値ベクトルと上記補正値ベクトルの係数となる係数行列とを乗じて、上記引照点の対の任意座標と世界座標との距離の差及び挟角の差を成分とする定数ベクトルを差し引いたものを、引照点間の残差ベクトルとするものであり、
上記の係数行列は、引照点間の距離に関する条件式の係数及び引照点の各対を結ぶ線分間の挟角に関する条件式の係数から構成されるものであり、
上記補正値生成部は、上記の残差ベクトル及び補正値ベクトルのノルムを最小とする、当該観測方程式の最小二乗解として、上記補正値ベクトルの各成分を算出するものであることを特徴とする地積測量図の世界座標取得装置。
【請求項6】
請求項5に記載の地積測量図の世界座標取得装置のプログラム。
【請求項7】
上記の請求項6に記載の地積測量図の世界座標取得プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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