説明

地絡検出方法及び装置

【課題】 瞬間地絡時の零相電流波形から、瞬間地絡を発生したフィーダを検出する地絡検出装置を提供する。
【解決手段】 地絡検出装置10は、瞬間地絡発生後の各フィーダの零相電流波形を周期2μsでサンプリングし、地絡発生時点でその前後の波形を記録する波形記録部11と、順次に1つのフィーダを選択するフィーダ選択部16と、フィーダ選択部16で選択されたフィーダ以外の全フィーダの零相電流の和を演算する加算部14と、加算部14で加算された零相電流の和の波形を記憶する加算波形記憶部15と、フィーダ選択部16で選択されたフィーダの零相電流の波形の位相と、他のフィーダの零相電流の和の波形の位相とを比較する位相比較部17と、全てのフィーダを選択してその位相比較を行った結果から、比較した零相電流の位相が相互に逆位相にある選択フィーダを特定する判定部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡検出方法及び装置に関し、更に詳しくは、複数のフィーダを有する電源系統で瞬間地絡が発生した際に、当該瞬間地絡を発生したフィーダを検出するために好適な地絡検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電系統は、電源に接続された複数の母線に、フィーダと呼ばれる分岐配線が複数接続された構造をなし、フィーダ単位に遮断器が設けられて管理されている。
【0003】
高圧ケーブルを使用した高圧配電系統では、高圧ケーブルの被覆層等における経年劣化のために地絡が発生する。地絡は、例えば高圧ケーブルの被覆層の微細な不良箇所に雨水等が侵入し、ケーブル心線とグラウンド(電気的グラウンド)との間に電流路が形成されること等により発生する。しかし、このような地絡は、そのケーブルにおける障害の初期段階では、被覆層の微細な不良箇所に侵入して、地絡の原因となった水分が、地絡電流が発生するジュール熱によって蒸発する。水分が蒸発すると一時的にケーブルの絶縁は回復し、配電系統は一見正常な状態に戻る。しかし、地絡の原因である高圧ケーブルの被覆層の微細な不良箇所が無くなった訳ではないので、再び雨水等の侵入により地絡が発生することになる。このような地絡は、水分の侵入による地絡とジュール熱による蒸発とがほぼ同時に起こり、瞬間的に発生し且つ消滅する瞬間地絡の現象として現れるため、地絡を起こしたケーブル(フィーダ)を特定することは難しかった。
【0004】
瞬間地絡の継続時間は、通常は数ミリ秒(ms)以下という短時間であり、極めて短い。従って、瞬間地絡がどのフィーダ(配電系)で発生したかを瞬間地絡の発生中に突き止めることは非常に困難である。このため、例えば、電源(母線)を見張り、瞬間地絡の発生した母線に繋がるフィーダの半数程度を他の母線に切り替え、次の瞬間地絡を待ち、瞬間地絡が再び発生したときに再度母線をチェックして、再度半数程度のフィーダを切り替える。これを繰り返し行い、瞬間地絡を起こしたフィーダを絞り込んでゆく等の努力がなされている。
【0005】
上記のような高圧ケーブルの被覆層の劣化に起因する瞬間地絡では、被覆層の不良箇所が回復するわけではないので、地絡が一度発生すると同じ部分で何度も発生し、そのケーブルの障害における最終段階では、大きな停電事故に発展することとなる。従って、瞬間地絡が発生した箇所をその初期段階で出来るだけ早く突き止め、高圧ケーブルを交換する等の処置が必要となる。
【0006】
特許文献1には、非接地系の高圧配電系統における瞬間地絡事故について、地絡フィーダの判別方法が記載されている。該方法では、地絡事故発生時に各フィーダで生ずる零相電流をフィルタ処理して、その高周波成分を測定する。その上で、測定した零相電流の高周波成分の位相が、他のフィーダの零相電流の高周波成分の位相とは異なるフィーダを、地絡したフィーダと判定している。該公報では、零相電流の高周波成分の具体的な周波数については記載がない。
【特許文献1】特開平8−70531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、瞬間地絡が発生したフィーダを特定するにあたり、零相電流の高周波成分の位相をフィーダ毎に比較する手法を採用する。しかし、瞬間地絡が発生した際には、各フィーダの零相電流はかなり複雑な曲線を描いて変化するため、かなりな熟練者であっても、或いは、高精度な検出装置によっても、零相電流の高周波成分の位相について、地絡が発生したフィーダと他のフィーダとを見分けて、地絡が発生したフィーダを正確に検出することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、特別な熟練者でなくとも、高圧配電系統で瞬間地絡が発生したフィーダを、他のフィーダから容易に特定可能な瞬間地絡検出方法、及び、該方法を用いて瞬間地絡が発生したフィーダを検出する瞬間地絡検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の地絡検出方法は、3つ以上のフィーダを有する配電系統で瞬間地絡が発生したフィーダを検出する、地絡検出方法であって、
フィーダの零相電流を、それぞれ経時的にサンプリングするステップと、
地絡を検知した際に、前記経時サンプリングのデータの地絡発生時点前後の所定時間のデータを保存するステップと、
保存した一つのフィーダの零相電流の位相と、保存した他の複数のフィーダの零相電流の和の位相とを時間軸をほぼ同一にして比較し、該比較をフィーダごとに繰り返し行うステップと、
他の複数のフィーダの零相電流の和の位相と逆位相の一つのフィーダが検出されると、該一つのフィーダを瞬間地絡が発生したフィーダであると判定するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の地絡検出装置は、3つ以上のフィーダを有する配電系統で瞬間地絡が発生したフィーダを検出する、地絡検出装置であって、
フィーダの零相電流を、それぞれ経時的にサンプリングする手段と、
地絡を検知した際に、前記経時サンプリングのデータの地絡発生時点前後の所定時間のデータを保存する手段と、
保存した一つのフィーダの零相電流の位相と、保存した他の複数のフィーダの零相電流の和の位相とを時間軸をほぼ同一にして比較し、該比較をフィーダごとに繰り返し行う手段と、
他の複数のフィーダの零相電流の和の位相と逆位相の一つのフィーダが検出されると、該一つのフィーダを瞬間地絡が発生したフィーダであると判定する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の地絡検出方法及び地絡検出装置の好ましい態様では、零相電流のサンプリング周期を10μs以下とする。好ましくは、5μs以下、更に好ましくは2μsとする。この場合、過渡的な零相電流の周波数特性に基づいて、良好な判定が可能である。
【0012】
零相電流を加算するにあたっては、配電系統に接続された全てのフィーダから、選択された1つのフィーダを除き、それ以外のフィーダの内で地絡発生時に比較的大きな変動を示す一部の複数のフィーダを抜き出して和を計算することもでき、或いは、配電系統に接続された全てのフィーダから、選択された1つのフィーダを除いたフィーダの零相電流の和を計算してもよい。前者は計算が簡単になるが、正確性の観点からは後者がより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地絡検出方法及び地絡検出装置によると、各フィーダの零相電流の位相と、それ以外の複数のフィーダの零相電流の和の位相とを位相比較する構成により、これらの位相が逆位相であるか否かの判定が容易になり、地絡を発生したフィーダの検出が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の地絡検出装置のブロック図である。地絡検出装置10は、電源に対し3つ以上、通常は5つ以上、場合によっては数十〜数百個以上接続されたフィーダF1〜Fnのそれぞれの零相電流をサンプリングしてその波形をメモリ等(記憶装置)に記録(記憶)している。この記録は、或る程度の経過時間毎に上書きが繰り返されており、上書きのサイクルはメモリ等の容量、地絡検出に必要なデータ採取時間等に応じ適宜決定される。上書きサイクルは通常300〜400μs(マイクロ秒)程度で良い。
【0015】
今、いずれかのフィーダで瞬間地絡が発生すると、地絡継電器30が地絡の発生を検知し、地絡発生信号を発する。地絡発生信号を受けた波形記録部11は、地絡発生信号の発生時点より所定時間(通常100〜200μs程度)遡った時点から、地絡発生信号の発生時点から所定時間経過後(通常100〜300μs程度経過時)までの、各零相電流の波形を記録として残す。地絡発生信号の発生時点より所定時間遡った時点まで戻る理由は、地絡発生前の安定した零相電流波形を得るためである。このように、地絡発生信号の発生時点より所定時間遡った時点のデータを得るために、上記メモリ等での所定時間の繰り返し記録が行われる。
【0016】
地絡発生時点(地絡発生信号発生時点)の所定時間前から地絡発生時点から所定時間経過後までの各フィーダの零相電流I0〜I0nのデータが波形記録部11に、図4に例示するように得られる。
【0017】
次いで、波形の比較処理が行われる。この比較処理は、特定の一つのフィーダの零相電流(例としてI01を用いる)と、これを除いた他のフィーダの零相電流I02〜I0nの和とを比較する。装置的には、選ばれた特定(一つ)のフィーダI01を選択するフィーダ選択部16と、他の零相電流I02〜I0nの和を計算する加算部14と、加算部14で加算された和(ΣI0)の波形を記憶する加算波形記憶部15と、加算部14で加算された零相電流の和ΣI0の位相と、特定(一つ)のフィーダI01の零相電流値I0の位相とを比較する位相比較部17と、位相比較部17の比較結果を蓄積し、比較判定する判定部18とからなる。
【0018】
他の零相電流I02〜I0nの和としては、通常は、I01以外の全ての零相電流の和を用いるが、フィーダの数が極端に多い場合には、代表的な何本かのフィーダの零相電流の和で代表することも可能である。この場合には、零相電流の波形が比較的大きく振れているフィーダを選び、全フィーダ数の5割〜7割程度の本数を選択することが好ましい。波形が大きく振れているフィーダの選択方法は、デジタルデータで絶対値に置き換え、振幅の大きいものを選択する方法、もしくは基準点との間の面積の大きいものを選択する方法等によれば良い。
【0019】
代表フィーダとして選択する本数は、フィーダの総本数にも依存するので一概に決められないが、フィーダの総数が数本から十数本であれば、他と比較する特定の一つのフィーダ以外の全てのフィーダの和を用い、フィーダの数がそれより多い場合には、数本から数十本程度(全フィーダ数の5〜7割程度)の代表フィーダを選択するようにすればよい。この比較処理は、特定の一つのフィーダとして選択するフィーダを次々に替えながら、その零相電流を他のフィーダの零相電流の和と比較し、全てのフィーダが選択され比較された時点で終了する。
【0020】
上記のような比較判定は、全てのフィーダについて繰り返し行い、全てのフィーダの零相電流の波形を、他のフィーダの零相電流の和の波形と比較する。判定部18では、この蓄積された比較結果から、ΣI0の位相と逆位相であるI0iを与えるフィーダiを特定し、このフィーダを、地絡を起こしたフィーダと特定する。
【0021】
通常は、上記判定方式で判定するが、波形の位相が逆転していない部分を含む瞬間地絡の場合もある。通常、瞬間地絡の零相電流量は、瞬間地絡を起こした時点(経過時間)における他のフィーダの零相電流の和の電流量とほぼ等しいので、電流量を時間について積分することで、零相電流波形と基準値(0)との間の面積を計算し、これを比較して瞬間地絡の発生か、他の外乱による変動かの判定の一要素としても良く、これにより、より正確な位相判定が行える。
【0022】
波形記録部11の各記録装置は、フィーダ毎に配置される。各記録装置は、対応する零相変流器ZcT〜ZcTnの出力電流を所定周期でサンプリングし、AD変換するAD変換器121〜12nと、AD変換器121〜12nに対応して配設され、AD変換器121〜12nで変換された零相電流I01〜I0nをそのサンプリング時刻毎に保存する記憶部131〜13nとから成る。各AD変換器121〜12nは、10μs以下、好ましくは5μs以下、更に好ましくは2μs以下の周期で、常に零相電流をサンプリングして記憶部I01〜I0nに記憶しており、地絡の発生がない場合には、後に得られた零相電流で先の零相電流を上書する。各AD変換器121〜12nは、地絡継電器30から地絡検出信号を受信すると、その後一定時間作動を継続し、停止する。これによって、地絡が発生した際には、その発生直前の或る時点の零相電流値から、地絡発生から所定時間経過後の零相電流値までの波形が、各記憶部131〜13nに保存される。
【0023】
地絡発生フィーダの解析に際して、フィーダ選択部16は、まず任意のフィーダを1つ選択して、そのサンプリング時刻毎の零相電流値を記憶部13から読み出して、これを位相比較部17に比較データとして与える。フィーダ選択部16は、また、選択したフィーダの情報を加算部14に送る。加算部14は、選択されたフィーダ以外の全てのフィーダについて、それらの零相電流の和をサンプリング時刻毎に計算する。計算された零相電流の和は、サンプリング時刻毎の零相電流の和として加算波形記憶部15に保存される。位相比較部17は、加算波形記憶部15に記憶された零相電流の和の波形の位相と、選択された1つのフィーダの記憶部13に記憶され零相電流の波形とを比較する。位相比較部17で、選択された1つのフィーダの零相電流の位相と他のフィーダの零相電流値の和の位相との間で位相比較が終了すると、フィーダ選択部16は、次のフィーダを選択し、位相比較部17で同様な位相比較が行われる。判定部18は、全てのフィーダの位相比較結果から、最も逆位相であると判定されたフィーダを、地絡を発生したフィーダであると判定し、外部に出力する。
【0024】
図2は、上記地絡検出装置の処理を示す、本発明の一実施形態に係る地絡検出方法のフローチャートである。配電系統の運転中は、各零相変流器の出力電流が逐次サンプリングされ、その零相電流値がサンプリング時刻毎に記憶部13に保存される(ステップS1)。配電系統に地絡が発生すると(ステップS2)、所定時間経過後に(ステップS3)、AD変換器の作動は停止し、波形記録部11には零相電流の所定期間中の電流値が波形データとして保存される(ステップS4)。その後、本システムによる地絡フィーダの解析に移行する。
【0025】
フィーダ選択部16は、最初のフィーダF1を選択し(ステップS5)、その零相電流の波形を位相比較部17に送る。加算部14は、選択されたフィーダ以外の全てのフィーダF〜Fnの零相電流の和ΣI0を演算する(ステップS6)。位相比較部17は、入力したフィーダFの零相電流の波形と、選択されたフィーダ以外の全てのフィーダF〜Fnの零相電流の和ΣI0の波形とを比較し、その位相差を計算する(ステップS7)。フィーダ選択部16は、順次に次のフィーダを選択し(ステップS9)、位相比較部17は、その選択したフィーダの零相電流の位相と、選択したフィーダ以外の全てのフィーダの零相電流の和の位相とを比較し、その位相差を演算する(ステップS7)。全てのフィーダF1〜Fnについての選択が終わり、且つ、その位相比較が終了すると(ステップS8)、判定部18は、位相差が最も大きいフィーダを地絡が発生したフィーダと特定して、外部に出力する(ステップS10)。
【0026】
瞬間地絡は過渡的な現象であるものの、零相電流の波形の周期は概ね70〜80μs程度である。位相比較では、例えば零相電流の波形の3周期程度について比較を行うことで、逆位相又は同位相についての判定が可能になる。このため、零相電流の波形を記録する所定の時間は、300〜400μs程度でよい。また、そのような周期を有する零相電流の位相比較をするには、サンプリング周期として、好ましくは10μs以下、更に好ましくは5μs以下が必要である。サンプリング周期が20μs以上では、瞬間地絡に伴って、各フィーダの零相電流が急峻で且つ比較的不規則な変化を示すため、フィーダを特定する解析は困難である。
〔実施例〕
図3は、本発明の地絡検出方法を用いて実際に地絡を検出した6kV高圧配電系統の系統図である。この配電系統は、電力会社からの電力を受電する受電母線と、自家発電機からの発電母線とを母線としている。各フィーダF1〜F28は、これら母線の何れかから断路器20及び遮断器21を経由して受電し、高圧ケーブル22を介して各プラントに送電している。フィーダF1〜F28の内、本方法による検出の結果、地絡フィーダは、発電母線から受電しているフィーダの1つ、フィーダF1であった。本配電系統の何れかのフィーダで、以前に瞬間地絡の発生があったため、各フィーダに零相電流の波形記録部(REC)23を設置し、瞬間地絡の発生後に、波形記録部23のデータをパーソナルコンピュータに入力して解析した。
【0027】
図4は、各波形記録部23で記録された全フィーダの瞬間地絡発生前後の零相電流の波形を示している。時刻0を瞬間地絡の発生時刻としてある。各データのサンプリングは、1μsの周期によるサンプリング機能を持つ記録計を、2μsのサンプリング周期で作動させて行った。実際に発生したこの場合では、全フィーダの内で地絡を発生したフィーダF1は、他のフィーダに比して特別な立ち上がり波形を示している。しかし、このような場合はむしろ特殊であり、単に目視程度では地絡フィーダの特定は困難である。
【0028】
図5は、加算部14で得られた地絡フィーダ以外の全フィーダの零相電流値の和ΣI0の波形と、地絡フィーダの零相電流I01の波形とを対比して示している。波形の加算及び比較の周期には、サンプリングされた周期である2μsが用いられた。波形の記録は、500μsまで行われているが、同図から理解できるように、零相電流の継続時間は約400μs程度である。また、その波形の周期は約70〜80μs程度であり、その周期的性質は高々300μsまでである。
【0029】
本実施例では、図5に示したような、選択したフィーダ以外の全フィーダの零相電流の和の波形と、選択したフィーダF1の零相電流の波形の双方について、各波形を時間積分し、双方の積分値の間で正負の反転が最も大きい組合せを与える選択フィーダを地絡フィーダと判定した。
【0030】
上記実施例との比較のため、比較例として、図3の波形を20μs周期でサンプリングし直して、同様に各フィーダの零相電流と他のフィーダの零相電流の和とを位相比較した。その結果、逆位相又は同位相である旨が正確に判定できなかった。従って、サンプリング周期が20μs以上では、地絡フィーダの特定が困難であることが判った。
【0031】
位相比較部17での位相比較にあたっては、他の種々の手法が採用できる。例えば、各フィーダの零相電流値及びその他のフィーダの零相電流の和の双方について、その値が極大値(又は極小値)になる時刻を逐次求め、対応する双方の時刻の差の平均値を求める。判定部18は、全てのフィーダについてその平均値を比較して、逆相である1つのフィーダを特定する。
【0032】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の地絡検出方法及び装置は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る地絡検出装置のブロック図。
【図2】図1の地絡検出装置で用いられる、本発明の一実施形態に係る地絡検出方法のフローチャート。
【図3】実施例で地絡検出の対象とした高圧配電系統の系統図。
【図4】各フィーダについて、地絡事故の発生に際して検出された零相電流の波形を例示するグラフ。
【図5】地絡を発生したフィーダの零相電流の波形と、他のフィーダの零相電流を加算して得られた零相電流の和の波形とを対比して示すグラフ。
【符号の説明】
【0034】
10:地絡検出装置
11:波形記録部
12:AD変換器
13:記憶部
14:加算部
15:加算波形記憶部
16:フィーダ選択部
17:位相比較部
18:判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上のフィーダを有する配電系統で瞬間地絡が発生したフィーダを検出する、地絡検出方法であって、
フィーダの零相電流を、それぞれ経時的にサンプリングするステップと、
地絡を検知した際に、前記経時サンプリングしたデータの地絡発生時点前後の所定時間のデータを保存するステップと、
保存した一つのフィーダの零相電流の位相と、保存した他の複数のフィーダの零相電流の和の位相とを時間軸をほぼ同一にして比較し、該比較をフィーダごとに繰り返し行うステップと、
他の複数のフィーダの零相電流の和の位相と逆位相の一つのフィーダが検出されると、該一つのフィーダを瞬間地絡が発生したフィーダであると判定するステップとを有することを特徴とする地絡検出方法。
【請求項2】
サンプリングステップが、10μ秒以下の周期で経時的にサンプリングを行う請求項1に記載の地絡検出方法。
【請求項3】
前記他の複数のフィーダが、前記一つのフィーダ以外の全てのフィーダを含む、請求項1又は2に記載の地絡検出方法。
【請求項4】
3つ以上のフィーダを有する配電系統で瞬間地絡が発生したフィーダを検出する、地絡検出装置であって、
フィーダの零相電流を、それぞれ経時的にサンプリングする手段と、
地絡を検知した際に、前記経時サンプリングのデータの地絡発生時点前後の所定時間のデータを保存する手段と、
保存した一つのフィーダの零相電流の位相と、保存した他の複数のフィーダの零相電流の和の位相とを時間軸をほぼ同一にして比較し、該比較をフィーダごとに繰り返し行う手段と、
他の複数のフィーダの零相電流の和の位相と逆位相の一つのフィーダが検出されると、該一つのフィーダを瞬間地絡が発生したフィーダであると判定する手段とを備えることを特徴とする地絡検出装置。
【請求項5】
サンプリング手段は、10μ秒以下の周期で経時的にサンプリングを行う、請求項4に記載の地絡検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate