説明

地質学的物質へのバクテリアの固定化

本発明は、バクテリアに対して透過性の物質、特には地質学的物体中にバクテリアを固定化する方法であって、該物質中に、該バクテリアを含有する第1の層を形成すること及び該物質の少なくとも一部を通して該第1の層が移動することを許すこと;該物質に有効量の凝集剤を含有する第2の層を形成すること及び該物質の少なくとも一部を通して該第2の層が移動することを許すこと、ここでこれら層は少なくとも部分的に重なり合うようになりかつバクテリアの少なくとも一部が凝集し、それにより固定化されることになるようにこれら層は移動することを許される、を含む前記方法に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質、特には地質学的物体中にバクテリアを固定化する方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
自然に存在する特定のバクテリアは、自然環境においてバイオミネラル化を引き起こすことができることが知られている。この知識に基づき、多孔性媒体を改変する為のバクテリアのウレアーゼの使用が、Enzyme and Microbial Technology 33(2003), 635〜642ページにおいて、Nemati及びVoordauwにより記載されている。
【0003】
バクテリアからウレアーゼを単離する必要なくバクテリアが用いられうることが意図されている。
【0004】
米国特許第5,143,155号明細書は、無機沈殿による表面下の地質学的形成物の透過性を減少する方法であって、該形成物の環境内における代謝活性を維持する能力を有する微生物培養物を該形成物に備えること、該形成物中に水性のミネラル化媒体を注入すること、及び該ミネラル化媒体から無機物質を沈殿させることから成る上記方法に関係する。
【0005】
凝集により該形成物中にバクテリアを固定化することは示唆されておらず、また、バクテリアの固定化後にミネラル化媒体を添加する追加の段階を適用することも示唆されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、バクテリアのような微生物及び基体を、処理されるべき物質を通して単に流すことによっては、不満足な結果が達せられることを発見している。特に、処理された物質(土壌)の外側を形成する粒子の故に、目詰まりが生じる傾向にある。その結果、該物質は、該基質及びバクテリアに対する透過性を失う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の様式にて該物質中にバクテリアを固定化することが可能であり、これにより、特に該バクテリアが無機物を形成することを許すことにより、該物質を改変するために、該固定化されたバクテリアが用いられうることを本発明者らは発見した。
【0008】
従って、本発明は、バクテリアに対して透過性の物質、特には地質学的な物体中にバクテリアを固定化する方法であって、
該物質中に、該バクテリアを含有する第1のゾーンを形成し、かつ、該第1のゾーンが、該物質の少なくとも一部を通って移動することを許すこと;
該物質に有効量の凝集剤を含有する第2のゾーンを形成し、かつ、該第2のゾーンが、該物質の少なくとも一部を通って移動することを許すこと;
ここで、これらのゾーンが少なくとも部分的に重なり合うようになりかつバクテリアの少なくとも一部が凝集し、それにより固定化されることになるようにこれらゾーンは移動することを許される、
を含む上記方法に関係する。
【0009】
上記各段階は、固定化されたバクテリアの量を増加する(そしてこれにより物質の体積当たりのバクテリアの活性を増加させる)ために1回以上繰り返されてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従う方法により、バクテリアがインシチューで(その場で)無機物を形成することを許し、同時に該物質中の孔の目詰まりを回避することにより、制御された様式で該物質が強化されうることが分かった。従って、インシチューでの無機物の堆積が、該物質の長い距離にわたり効果的に実現されうる。
【0011】
物質を改変する活動を実行するための該バクテリアの有用性が改善されるように、該バクテリアを固定化することにおいて、本発明に従う方法は有効であることが分かった。とくに、該物質中での該バクテリアによるバイオミネラル化に関して、固定化が有利であることが分かった。
【0012】
本発明に従う方法は特に、土木工学または採鉱において用いられうる。それは、土壌又は他の地質学的形成物を改変する為、特に該物質を安定化する及び/又は補強するために用いられうる。このことは、長い距離にわたる該物質の処理を許すために、地質学的物体のような該物質の十分な多孔性を維持しながら、可能であることが分かった。
【0013】
図1は、懸濁物中のバクテリアの凝集を引き起こすことにおける、いくつかの凝集剤の有効性を示す。
【0014】
図2は、該物質を通じて移動する2つのゾーンのプロフィールを示す。
【0015】
図3は、砂物質中の固定化されたバクテリアの配置を示す。
【0016】
図4は、バクテリアを固定化した後の、物質中の様々な位置でのウレアーゼ活性を示す。
【0017】
図5は、バクテリアが固定化されている場合における、物質の空隙率に対する炭酸カルシウムの形成の効果を示す。
【0018】
図6は、添加されたカルシウムイオンの関数としての、カルシウムの吸着の効果を示す。
【0019】
図7は、バクテリアの凝集体のサイズに対する、塩化カルシウムの濃度の効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
原則として、バクテリアに対して透過性の任意の物質(すなわち、少なくとも圧力下において、バクテリアが物質を通過することを許すのに十分大きい空隙を有する任意の物質)が用いられうる。バイオミネラル化のようなインシチューでの活性の為にバクテリアを使用することが望まれる場合、該物質は通常は、そのような活性の為の基質(イオン)に対しても透過性であるべきである。本発明の方法において用いられるべき物質は、通常は、地質学的形成物又無機物質である。該地質学的形成物は特に、堆積物(粘土、沈泥、砂及び/又は砂利)、堆積岩石、土壌物質及び/又は透過性を有する岩石物質、例えば粉砕された岩石など、を含む物体でありうる。好ましい物質は、沈泥、粘土、砂及び砂利物体から成る群から選ばれる物質を包含する。特に、良い結果は砂により達成されている。
【0021】
原則として、該方法は、適当な凝集剤により、特に二価陽イオンにより凝集されることができる任意のバクテリアの固定化に適当である。特に、語「バクテリア」は、本発明に従い、胞子よりもむしろ、植物性バクテリアについて用いられる。大抵は休眠状態である胞子と比較すると、(植物性)バクテリアは大抵は増加された代謝活性を示す。(胞子はまず、該胞子が発芽する条件に付される必要があるが)該(植物性)バクテリアは既に活性であり、かつ/又は、バクテリアはより容易に凝集されうるという事実故に、(植物性)バクテリアの適用は、胞子(だけ)を適用することよりも有利である。サイズの違い、細胞壁構造の違い(例えばイオン化された基の存在)、及び/又は、凝集剤と接触されたときに凝集に寄与することができる1以上の化合物、特にはエキソ多糖類、を産生する(植物性)バクテリアの能力の故に、(植物性)バクテリアはより容易に凝集させられること、又は種々の条件下で少なくとも凝集することが意図される。従って、好ましくはエキソ多糖類を産生することができる(植物性)バクテリアが、該物質に適用される。
【0022】
該バクテリアは好ましくは、無機物、例えばCaCOなど、を形成することができるバクテリアから選ばれる。好ましくは、該バクテリアは、ウレアーゼを産生するバクテリアから成る群から、より好ましくはスポロサルシナ属(Sporosarcina)から成る群から選ばれ、特にはスポロサルシナ パスツーリ(Sporosarcina pasteurii)である。そのようなバクテリアは特に、それらのウレアーゼが良い活性を示すので、(バイオミネラル化の間に形成される)アンモニウムの存在下においても、有効であることが分かっている。
【0023】
該バクテリアは通常は、少なくとも0.1、好ましくは0.1〜1.0、より好ましくは最大で0.5mS/分の濃度で、該物質に添加される。(基質の添加後の高いバイオミネラル化速度のような)高いバクテリア活性の為に、該バクテリアは好ましくは(バクテリアが20℃で(水中の)1M尿素に添加されたときに産生される電気伝導度の相対的変動により決定される)少なくとも0.3mS/分の濃度で添加される。
【0024】
存在する条件下においてバクテリアが凝集することを引き起こすのに有効な任意の剤が、凝集剤として用いられうる。多価陽イオン、特に二価陽イオンが、特に適当である。そのような陽イオンは特に、スポロサルシナバクテリアのような、ウレアーゼを産生するバクテリアを固定化するために用いられうる。(植物性)バクテリアと対照的に、そのような陽イオンの存在下において、胞子は一般に凝集されないことが、注意されるべきである。
【0025】
本発明に従い、(炭酸カルシウム塩のような)該陽イオンを含有する沈殿した無機物の結果としてよりもむしろ、少なくとも主としてバクテリアと(カルシウムのような)該陽イオンとが一緒に相互作用(イオン的表面相互作用)することの結果として、凝集物は形成されることが、意図される。この洞察は、凝集物が2M HClにより処理されたところの実験に基づく。ガス(CO)が発生しなかった。
【0026】
好ましくは、該二価陽イオンは、ニッケルイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンから成る群から選ばれる。マグネシウムイオン及びカルシウムイオンは、凝集についてのそれらの大きな効果の故に特に好ましい(図1も参照されたい)。
【0027】
凝集剤の有効量は実験的に決定されうる。通常は、特に二価陽イオンについて、該濃度は少なくとも3mM、好ましくは少なくとも5mMである。比較的大きなサイズを有するフロックは、例えば粗い砂又は砂利が処理されるような、特に比較的粗い物質の場合に、バクテリアの強い固定を得るために有利である。従って、強い固定の為に、少なくとも10mM、特には少なくとも20mMの濃度を用いることが好ましい。
【0028】
通常は、凝集剤の濃度は、最大で約1000mMである。バクテリアの表面への吸収に関する効果の観点において、該濃度は好ましくは、最大で100mMである。
【0029】
さらに、バクテリアのフロックのサイズは、凝集剤の濃度を選ぶことにより定められうる(例えば図7を参照)。比較的小さなフロックを産生するために、凝集剤(特にカルシウム)の濃度は、好ましくは50mM以下、より好ましくは40mM以下である。これは、特に該物質が比較的細かい砂、粘土又は沈泥であるときに、目詰まりを回避する観点において有利である。
【0030】
該物質中においてゾーンを移動する為の適当なやり方は、無機物溶液を該物質中に導入しそしてそれを該物質を通じて移動させる為の既知の方法論に基づいてよい。例えば、国際公開第00/31209号パンフレットを参照されたい。
【0031】
該ゾーンは、水圧ポンプの使用により及び/又は動電学的に(electrokinetically)移動されうる。水圧ポンプは、砂のような比較的粗い物質又は少なくとも同じ平均粒子サイズを有する物質にとって特に好ましい。導電学的な移動は、粘土又は沈泥のような比較的低い透過性の物質について特に好ましい。
【0032】
好ましい方法において、該第2のゾーンは、該第1のゾーンの直後に形成され、そして、両ゾーンは該物質の少なくとも一部を通って同じ方向に(同時に)移動することを許される。これは、最初に、バクテリアを含有する液体を及びその後該凝集剤を含有する液体を、該物質に(例えば注入により)添加することにより、適当に達成されうる。バクテリアの粒子状性質及び/又は表面電荷の故に、バクテリアは典型的には、該凝集剤より低い速度で物質を通じて移動する。このように、両ゾーンは該物質を通じて移動するので、これらゾーンは(部分的に)重なり合うだろうし、そして、該凝集剤はバクテリアと接触し、それによりバクテリアが凝集することを引き起こす。該フロックは典型的には大きすぎて該物質を通じて移動することができず、そして、それにより固定化される。図2は、砂を含有するカラム中の該バクテリアの懸濁物の速度及び該凝集剤を含有する液体の速度の例を示す。それは、該バクテリアが該凝集剤よりゆっくりと移動すること、及び、該凝集剤を有するゾーン(左のピークにより描かれる)は該バクテリアを有するゾーン(右のピークにより描かれる)と混ざることを説明する。
【0033】
本発明者らは、部分的に重なる別個のゾーン中で(植物性)バクテリアと凝集剤とが移動することを許すことにより、バクテリアの固定化が制御された様式で達成されうること、それにより、一方で、(例えばバクテリアとミネラル化基質が該物質を通じて1のゾーン中で移動される方法と比較して)目詰まりのリスクを回避し又は少なくとも減少し、かつ/又は、(例えばバクテリア又は胞子を凝集させること無く、該物質がバクテリア又は胞子を備えられ、よってバクテリア又は胞子が固定化されるときに)意図される効果を達成するために必要とされるバクテリアの量を減少することを意図する。
【0034】
好都合なことに、例えば、凝集プロセスを制御することに関して、バクテリアと凝集剤は同じ方向に移動される。
【0035】
原則として、バクテリアと凝集剤は、(例えば、任意的にポンプとの組み合わせにおいて、電気泳動的に及び/又は動電学的に)互いに対して、実質的に反対方向に移動されうる。
【0036】
バクテリアを含有するゾーンと凝集剤を含有するゾーンとを、或る角度下で移動させることにより、混合を引き起こすことも可能であり、例えば、該バクテリアが実質的に水平に移動され、かつ、該凝集剤が実質的に垂直に又は該バクテリアに対して0と90°の間の角度で移動されうる、又は、逆も同様である。これは、(該ゾーンが沿って移動する進路の交差点で)該物質の局在的な部分における固定化が所望される場合に有利でありうる。
【0037】
該バクテリアを含有する液体は好ましくは、処理されるべき該物質の先端において、少なくとも該物質の反対の先端にバクテリアが検出されうるまで添加される。検出は、該反対の先端で、例えば600nmでの、光学密度を監視することにより、視覚的な観察又は当技術分野において既知の他の技術による顕微鏡的な検査により、適切になされうる。
【0038】
該凝集剤を含有する液体は好ましくは、少なくとも該凝集剤又はこの液体の他の成分が反対の先端で検出可能となるまで、該物質に添加される。これは、検出されるべき成分についての任意の適当な検出技術によりなされうる。伝導度の監視は、一般に適当な様式である。
【0039】
該固定化は、環境の条件化で、特には、室温で実施されうる。
【0040】
該バクテリアと該凝集剤は通常は、0.1〜2.0の水圧勾配と少なくとも等しい流速で、該物質中に導入される。実際的な理由により、水圧勾配は通常は最大で0.8〜1.2であり、好ましくは最大で1.0である。
【0041】
該バクテリアが固定化された後に、物質改変活性、例えば無機物の産生など、を実行することを該バクテリアに許すために、該物質に基質が添加されうる。最初の、凝集による該バクテリアの固定化、及びその後の基質の添加は、ミネラル化などの該活性が、例えばミネラル化基質と固定化剤とが同時に適用されるだろうところの方法と比較して、より良く制御されうることにおいて有利である。特に、該物質は、より均一な様式において改変され、かつ/又は物質のより多くの量の範囲で(例えば、より長い距離にわたり)改変されうる。
【0042】
基質の選択は、バクテリアと意図されるその活性に依存する。ウレアーゼ活性を有するバクテリアを使用する、炭酸塩のような無機物を形成する為に、尿素及び陽イオン、例えばカルシウムなど、がバイオミネラル化を引き起こすために添加されうる。基質成分の濃度は、当技術分野で既知の方法論に基づき選ばれてよい。好ましくは、該陽イオン(カルシウム)濃度は、少なくとも100mM、より好ましくは800〜1500mMの範囲である。該尿素濃度は好ましくは、該添加された陽イオンの濃度と(ほぼ)等モル濃度である。
【0043】
本発明は、ここで、以下の実施例により説明されるだろう。
【0044】
実施例1:バクテリアの凝集化
【0045】
スポロサルシナ パスツーリバクテリアの懸濁物(600nmでの光学密度=1.0)が、二価陽イオンの20mMの最終濃度へと、20℃の温度で、いくつかの二価陽イオンの塩と混合された。該塩は夫々、Ni(NO、ZnCl、Mg(NO、CaClであった。
【0046】
混合の5分後、600nmでの光学密度が測定され、対照(添加された二価陽イオン無しのバクテリア懸濁物)と比較された。図1は、結果を示す。
【0047】
光学密度における増加から、ニッケル、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムが凝集を引き起こすのに有効であることが結論付けられる。
【0048】
実施例2:ブレイクスルー体積の決定
【0049】
カラム(1.6cmの円の内径、長さ1m)が、Itterbeek砂(d50=420μm)により、1.7g/cmの密度へと充満された。
【0050】
50mM塩化カルシウムの10mlパルスが注入された。その後、該塩化カルシウムが脱イオン水によりカラムを通してポンプ移送され、そして、塩素化合物レベルがカラムの端で観察された。図3は、実質的に遅れること無く該物質を通じて塩化カルシウムが移動することを示す。すなわち、約1カラム体積の後に塩化カルシウムゾーンの先端がカラムの端に達し、そして、1.5カラム体積以内で、実質的に全ての塩化カルシウムが物質を通じて移動した。
【0051】
別個の実験において、スポロサルシナ パスツーリバクテリアの懸濁物(4.2の600nmでの光学密度)が10mlパルスとして注入された。実験は、バクテリアを含有するゾーンの先端は、1カラム体積超がカラム中を通過された後に、カラムの端に達し、これはバクテリアが凝集剤(塩化カルシウム)よりもカラム中をゆっくりを移動していることを示す。
【0052】
実施例3:バクテリアの固定化
【0053】
カラム(円の直径1.8cm、長さ6.8m)がItterbeek砂(d50=420μm)により充満され、そして、飽和した条件下で維持された。バクテリア(濃度=0.5mS/分)が、それらがカラム出口に現れるまで注入された。その後すぐに、50mM塩化カルシウムの同じ体積が注入され、1時間、放置された。カラムは次に、細孔容積の3倍の脱イオン水により洗い流され、そして、ウレアーゼ活性分析の為に片に切断された。
【0054】
ウレアーゼ活性は、容器中の砂の既知体積を秤量すること及び1Mの最終濃度へ尿素を添加すること、次に尿素加水分解速度を得るために電気伝導度(mS/分)を計測することにより、決定された。
【0055】
ウレアーゼ活性は、カラムの長さ6.8mに沿って全ての場所で検出された(図3)。
【0056】
実施例4:ex-situ(別の場所)でのセメンテーション
【0057】
カラム(円の直径1.8cm、長さ6.8m)が、Itterbeek砂(d50=420μm)により充満され、そして、飽和した条件下で維持された。バクテリア(濃度=0.5mS/分)が、それらがカラム出口に現れるまで注入された。その後すぐに、50mM塩化カルシウムの同じ体積が注入され、1時間、放置された。カラムは次に、細孔容積の3倍の脱イオン水により洗い流され、そして、ウレアーゼ活性分析の為に片に切断された。ウレアーゼ活性は、実施例3におけるように測定された。
【0058】
この試験に加えて、ウレアーゼ活性について分析された区分のすぐ次のカラム片が、取り除かれ、そして、その場(インシチュー)でのセメンテーション(cementation)を模倣するために、1M尿素と1M塩化カルシウムとを含有する密封された容器中に置かれた。これらの容器は穏やかに混合され、そしてアンモニウム産生が計測された。
【0059】
注入点(40cm)に最も近い片を除いて、コアの全ての片が、完全なセメンテーションを達成した。コア中に検出されたウレアーゼ活性と(最初の24時間の間の)当初のアンモニウム産生速度とは一致した(図4)。
【0060】
実施例5:空隙率に対するCaCo含有量の効果
【0061】
実施例4の実験が、0.3の水圧勾配を有する、大規模のカラム(内径6.6cm、長さ5m)中で繰り返された。物質中の種々のCaCO含有量を得るために、1.1M等モルの尿素及び塩化カルシウム溶液が注入され、そして、カラムに沿った勾配中でセメント化された。カラムは、片に切断され、そして、空隙率に対する効果が測定された。図5に示されるように、所定の方法によるバクテリアの固定化及び続くセメンテーションの後、炭酸カルシウム含有量の増加と共にわずかな空隙率の減少だけが観察された。これは、本発明が、バルクの物質において、又は、地質学的形成物の長い距離にわたり、バイオミネラル化を引き起こすのに適当であることを支持する。
【0062】
実施例6:凝集物サイズに対する凝集剤濃度の効果
【0063】
或る量のバクテリア(600nmでの光学密度=1.0)が、様々なCaCl濃度と混合された。凝集物サイズに対する効果は、レーザー回折により決定された。図7に示されるように、凝集物サイズは、凝集剤の濃度の増加と共に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】バクテリアの懸濁物に対する20mM二価陽イオンの効果を示すグラフである。
【図2】物質を通じて移動する2つのゾーンの特性を示すグラフである。
【図3】砂物質中の固定化されたバクテリアの位置を示すグラフである。
【図4】バクテリアを固定化した後の、物質中の様々な位置でのウレアーゼ活性を示すグラフである。
【図5】バクテリアが固定化されているところの、物質の空隙率に対する炭酸カルシウムの形成の効果を示すグラフである。
【図6】添加されたカルシウムイオンの関数としての、カルシウムの吸収の効果を示すグラフである。
【図7】バクテリアのフロックのサイズに対する、塩化カルシウムの濃度の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリアに対して透過性の物質中に、特には地質学的物体中にバクテリアを固定化する方法であって、
該物質中に、該バクテリアを含有する第1のゾーンを形成し、かつ、該第1のゾーンが、該物質の少なくとも一部を通って移動することを許すこと;
該物質に有効量の凝集剤を含有する第2のゾーンを形成し、かつ、該第2のゾーンが、該物質の少なくとも一部を通って移動することを許すこと、
ここで、これらのゾーンが少なくとも部分的に重なり合うようになりかつバクテリアの少なくとも一部が凝集し、それにより固定化されることになるようにこれらゾーンは移動することを許される、
を含む前記方法。
【請求項2】
該第2のゾーンが、該第1のゾーンの直後に形成され、かつ、両ゾーンが該物質の少なくとも一部を通って同じ方向に移動することを許される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1のゾーンが第1の方向に移動され、かつ、該第2のゾーンが該第1の方向から或る角度で移動され、ここで該方向はこれらのゾーンが互いに向き合って移動しかつ互いに交差するようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該物質が、(粘土、沈泥、砂及び/又は砂利のような)堆積物を含有する地質学的物体;堆積岩石;土壌物質及び(粉砕された岩石のような)バクテリアに対して透過性の岩石物質からなる群から選ばれる物質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該凝集剤が、二価陽イオンから成る群から、特にはニッケルイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンから成る群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該凝集剤が、3〜100mmol/液体リットルの濃度で該物質に添加される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該バクテリアが、ウレアーゼを産生するバクテリアから成る群から選ばれる、好ましくはスポロサルシナ属から成る群から選ばれる、特にはスポロサルシナ パスツーリである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該バクテリアが、(バクテリアが20℃で1M尿素に添加されたときに産生される電気伝導度の相対的変動により決定される)0.1〜1.0mS/分を含有する懸濁物の形態で、該物質に添加される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該第1及び/又は該第2のゾーンが、0.1〜2.0の範囲の水圧勾配により規定される速度で、該物質を通って移動される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
固定化後に、該バクテリアが無機物を形成することを許す有効量で、基質が該物質に添加される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
尿素とカルシウムイオンとが、該バクテリアがCaCOを形成することを許す有効量で該固定化されたバクテリアに接触される、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−519036(P2009−519036A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545514(P2008−545514)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000598
【国際公開番号】WO2007/069884
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508178423)
【Fターム(参考)】