地質構造モデル作成・表示システム及び地層モデリング方法並びに地質構造モデル作成・表示プログラム
【課題】 ユーザが指定して選択することなく、不必要な地層部分を除去することが可能な地質構造モデル作成・表示システム、その方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】 本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点演算部と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割部と、交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部とを有する。
【解決手段】 本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点演算部と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割部と、交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング掘削により得られた地質データから、地層境界面を推定して抽出することにより、所定の演算を行いモデル化し、このモデルをコンピュータ画面上に3次元に表示する地質構造モデル作成・表示システム及び地層モデリング方法並びに地質構造モデル作成・表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物を建設する場合、建設する土地の地層を知ることは、建物の強度を図る上で非常に重要な条件となる。
このため、地質構造のモデリングは、対象となる領域において、所定の密度によりボーリング掘削を行い、各掘削位置毎に一定の深さ単位で、地質の情報(離散的な特定の地層境界の位置に関する情報:座標値及び深さ方向の地質データ)を取得して、地層の形状を推定、抽出することになる。
上述した推定は、多くの測定地点及び深さ方向の3次元の測定データを、地層の形状に、構成し直して、表示する必要がある。
このため、上記データを入力することにより、地層形状を演算により推定して、3次元表示するシステムが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】3次元地下情報管理システム、vulcan(登録商標)、[online]、[平成16年3月18日検索]、インターネット、<URL:http://www.vulcan3d.com>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、非特許文献1に示す地質構造モデル作成・表示システムは、地質構造を示す地層境界面を生成するとき、地質分野で特有の現象である地表及び断層の不整合の相互関係を示す場合、ユーザが不整合部分の画像を編集する必要がある。
ここで、地殻変動などにより、例えば、図11(b)に示すように、地層T1、T2、T3の右側が隆起したとする。
そして、ある期間の経過により、図11(c)に示すように、地層T1、T2の1部分が雨や風による侵食により除去され、その結果、地表面B(地層境界面B)が形成されたとする。
【0004】
従来の地質構造モデル作成・表示システム(地層構造の推定演算及び表示を行うCADシステム)を用い、上述した各地層T1〜T3により形成される地層境界面を推定演算したとき、地層境界面BとCとの構造の演算過程において、地層境界面Cが地層境界面Bと交差する部分で欠落し、地層境界面Bのみとなっていることを判定できないため、図11(d)に示すように、地層境界面Bより上部に地層境界面があるはずもないのに、地層境界面Bの上部に対し、存在しない地層境界面Cを形成し、2つの地層境界面が交差した3次元の地層のモデリングした画像データを表示することとなる。
すなわち、従来の地層CADシステムにあっては、地層境界面Cの下部に、実際に存在しない地層境界面Cの部分を形成してしまう。
【0005】
このため、従来の地層CADシステムは、表示画面において、ユーザが
(i) 地層境界面の上下関係を編集する2つの面を選択
(ii)2つの面の交差部分の抽出
(iii)2つの地層境界面の不必要な部分を指定し、選択
(iv)上記不必要な部分の除去操作
を行わなければならないという欠点がある。
また、従来の地層CADシステムは、上述したように、不必要な部分をユーザが選択して除去していくが、3次元の画像データであるため、他の面画像の陰になるところに存在する、不必要な部分をユーザが検出するのは困難であり、取りきれない部分が生じて、後の処理に不都合を生じさせる問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユーザが指定して選択することなく、不必要な部分を除去することが可能な地質構造モデル作成・表示システム、その方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割部と、交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記関連情報が、地層である制約面が対称面より、上部に存在し得ないことを示す関係式「対称面>制約面」、または、制約面が対称面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対称面<制約面」の関係式で表されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記分割境界面を削除し、表示される画像を再構成する不要部分消去演算部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記地層境界面生成演算部、所定の範囲の領域毎に、演算された地層境界面と、座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記関連情報を演算することを特徴とする。
【0011】
本発明の地層モデリング方法は、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算過程と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算過程と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割過程と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報(上部に存在し得ないことを示す関係式「対象面>制約面」、または、制約面が対象面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対象面<制約面」の関係式)に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算過程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算処理と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算処理と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割処理と、交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算処理とを有するコンピュータにより実行可能なプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した構成により、本発明の地質構造モデル作成・表示システムによれば、交差している地層境界面を交線により各々分割境界面に分割し、あらかじめ設定されている、制約条件としての地層境界面の存在に関する制約関係に基づき、不必要な分割境界面を選択して、この不必要な部分を削除するため、従来例のように、ユーザが指定して選択することなく、不必要な分割境界面を、間違いなくかつ完全に除去することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムを図面を参照して説明する。図1は同実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの一構成例を示すブロック図である。
この図において、入力部1は、外部機器から、評価対象の領域のボーリングによる掘削による地質調査により得られた、地質データを制御部2を介してデータベース4に格納する。(ここで、外部機器とはキーボード,外部記憶媒体,実際の測定装置など)
ここで、地質データとは、地層境界面の作成に用いられるものであり、ボーリング掘削等の地質調査から得られた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから構成されている。
このボーリング掘削は、評価対象の領域において、所定の密度で行われ、密度が高ければ、得られるモデリングの結果の精度も高くなる。
【0015】
出力部3は、演算部5の演算によりモデリングされた地層構造を、制御部2を介して入力して表示画面等に表示する。
データベース4は、すでに述べた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)と、演算部5により得られた地層境界面の3次元空間における位置情報と、この地層境界面の識別子及び表示色と、所定の領域毎の各地層境界面の上下関係を示す関連情報と、断層面の始点,終点及び角度の情報とが記憶されている。
【0016】
演算部5は、地層境界面生成演算部6,交点・交線演算部7,領域分割演算部8,相互関係判定演算部,不要部分消去演算部を有している。
地層境界面生成演算部6は、入力される(またはデータベース4に記憶されている)評価対象の領域における複数の測定座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、上記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める。
【0017】
ここで、地層境界面生成演算部6は、例えば、地質調査などにより得られた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)から限定された評価対象の領域に対して、一般的な数学的手法により地層境界面の深度分布を推定して、三角形または四角形のポリゴン(メッシュ)の集合体として、地層境界面を生成する。
上記一般的な数学敵手法とは、各測定座標値における、所定の深さ方向の距離(深度)毎の地質の情報から得られる地層境界点の深度を用い、この測定された地層境界点の深度により、測定されていない座標値の地層境界点の深度を補完することで、地層境界面の深度分布を推定し、曲面等をポリゴン(メッシュ)の集合体として表現している。
【0018】
例えば、以下に示すInverse Distance Weighted法から、地層境界面の情報として、三角形メッシュの集合体を生成する。
Z=Σ(Zi/Rin)/Σ(1/Rin)
Rin=((X−Xi)2+(Y−Yi)2)0.5
ここで、Xi,Yi,Ziは地質調査などにより得られた特定の地層境界に関する位置情報(実際に得られた情報)であり、X,Y,Zは求めるメッシュを構成する接点の座標値であり、nは距離の逆数に基づく重み係数である。ここで、XおよびYにより緯度経度の測定座標地を示し、Zは深度を示しており、三角メッシュ各々の頂点の座標値の(X,Y)深度Zを推定(補完)している。
【0019】
交点・交線演算部7は、地層境界面生成演算部6により生成された地層境界面が交差していることを検出すると、交差する2つの地層境界面の交線の座標を演算する。
すなわち、交点・交線演算部7は、2つの地層境界面の交線を算出するとき、地層境界面を構成する各三角メッシュ単位に、図2に示す演算式を用いて、交点の座標の演算を行う。
交点・交線演算部7は、この図2に示す各演算式を用いて、各三角メッシュ毎(図3(a))に交差している交点を演算する(図3(b))。
【0020】
領域分割演算部8は、上記交点と、最も近接している三角メッシュの頂点とを接続することにより、交点近傍にある三角メッシュを分割してサブ三角メッシュを構成し(図3(c))、地層境界面を表すメッシュ構造の再構成を行う。
また、領域分割演算部8は、交差しているサブ三角メッシュ各々を上記交点を結合した交線により、領域1及び領域2に分割し、交叉している地層境界面各々を、交線により2つの異なる境界面であるサブ地層境界面に分割する。
【0021】
相互関係判定演算部9は、内部の記憶部に記憶されている、入力部から入力された所定の領域毎の地層境界面の存在に関する制約を示す相互関連情報(関連情報)により、各サブ地層境界面毎に、上下関係を判定して、存在し得ない面として上記サブ地層境界面を抽出する。
不要部分消去演算部10は、存在し得ない面として抽出されたサブ地層境界面を削除し、残ったサブ地層境界面により、地層のモデリングされた画像を再構成して、表示画面に表示する。
【0022】
また、上記相互関連情報は、交差する地層境界面間における生成順位に基づく制約関係の情報(対象面が制約面に対して上部あるいは下部にあるべきかを示す情報)だけでなく、交差した2つの地層境界面のいずれが他方を切っているかの情報を含んでいる。
ここで、図11(d)を例に取ると、相互関連情報は、面B及び面Cなどの、交差している地層の交差の組み合わせを示す組合せデータと、これらの組合せの存在に関する制約関係データ(交差する2つの地層境界面間の存在に関する制約関係を示す)を示す関係式(対象面>制約面または対象面<制約面)とから構成されている。
【0023】
B(対象面)>C(制約面)の式は、左辺に対象面である地層境界面が示され、右辺に制約面である地層境界面が示されている。
対象面とは存在の有無が検出される対象となる地層境界面であり、制約面とは対称面に対する基準となる地層境界面である。
また、対象面は存在が否定された場合に削除される対象となるが、制約面は存在の有無を検出する基準であるので、不要部分消去演算部10により削除される対象にはならない。
【0024】
例えば、C<Bは、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより、上部には存在し得ないことを示している。したがって、地層境界面Bより上部にある点線の部分の地層境界面Cは存在しない面であることが検出される。
組合せとしては図4に示す4種類あり、図4(a)に示すように、領域分割演算部8により、地層境界面Bがサブ地層境界面B1及びB2に分割され、地層境界面Cがサブ地層境界面C1及びC2に分割されているとする。
【0025】
図4(b)におけるB>Cの場合において、相互関係判定演算部9は、上述したように、対象面である地層境界面Bが制約面の地層境界面Cより下部に存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Cの下部に面Bが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面C2の下にある面B2を、必要の無い面として削除する。
図4(c)におけるB<Cの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Bが制約面の地層境界面Cより上部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Cの上部に面Bが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面C1の上にある面B1を削除する。
【0026】
図4(d)におけるC>Bの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより下部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Bの下部に面Cが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面B1の下にある面C1を、必要の無い面として削除する。
図4(e)におけるC<Bの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより上部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Bの上部に面Cが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面B2の上にある面C2を削除する。
【0027】
次に、図1及び図5を参照して、本実施形態の地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する。図5は本実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの動作例を示すフローチャートである。
ステップS1において、制御部2は、地質調査等によって得られた特定の(離散的な)地層境界の測定位置の位置座標(測定座標値、例えば、ボーリングによる掘削位置である緯度および経度の情報;(X,Y)座標)及びこの位置座標における所定深度(ボーリングによる掘削の深さ方向の距離;深度Z)ごとの地質情報からなる測定データを、入力部1を介して入力し、各位置座標毎にデータベース4に記憶させる。
また、制御部2は、相互関連情報を、入力部1を介して入力し、上記各位置座標毎に相互関係判定演算部9内の記憶部に記憶させる。
【0028】
このとき、制御部2は、入力される測定データの深度Z毎における地質情報から、各地層界面にある地層境界面を検出して、この検出された地層境界面により、この位置座標における各地層に対する相互関連情報を求め、各位置座標毎に相互関係判定演算部9内の記憶部に記憶させるように構成しても良い。
上述した測定データの入力処理において、入力部1はキーボードや外部記憶媒体であり、ユーザがキー入力したり、外部記憶媒体から読み込むことにより、上記測定データ及び相互関連情報を入力する。
【0029】
次に、ステップS2において、ユーザが地質構造モデル作成・表示システムの表示画面において、所定の範囲の地質構造のモデリングを行う場合、この所定の範囲を選択することにより、制御部2はこの範囲内に存在する測定座標値に対応する測定データを、データベース4から読み出す。
そして、ステップS3において、地層境界面生成演算部6は、上記読み出されたデータから、各地層の境界の深度分布を推定し、地層境界面を生成する。
また、出力部3は、得られた地層境界面A,B,C,Dから成る地層構造の画像を、図6に示すように、表示画面に表示する。
【0030】
次に、ステップS4において、交点・交線演算部7は、各々交差している地層境界面同士の交点、すなわち、地層境界面A及びDの交点、地層境界面B及びDの交点、地層境界面C及びDの交点を求め、この交点から各々の面同士の交線を求める。
そして、ステップS5において、領域分割演算部8は、上記交線により、地層境界面A,B,C,D各々を、図6に示すように、サブ地層境界面A1及びA2,サブ地層境界面B1及びB2,サブ地層境界面C1及びC2,サブ地層境界面D1及びD2に分割する。
【0031】
次に、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、予め記憶部に設定されている、測定座標値毎の相互関連情報に基づき、生成された地層構造の画像が実際の地層境界面との整合が取れているか否かの検出を行う。
例えば、上記記憶部に記憶されている相互関連情報を以下のa,b,cとする。
a、 C−D C<D 地層境界面Cは地層境界面Dより上部には存在しない。
b、 B−D B<D 地層境界面Bは地層境界面Dより上部には存在しない。
c、 A−D A<D 地層境界面Aは地層境界面Dより上部には存在しない。
d、 A−D D<A 地層境界面Dは地層境界面Aより上部には存在しない。
【0032】
まず、相互関係判定演算部9は、相互関連情報aの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Cは地層境界面Dより上部には存在しない。」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面C1が、不要であることを検出する。
そして、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面C1の画像データを消去し、図7に示すようにサブ地層境界面C1を除去して、地質構造を再構成する。
【0033】
次に、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報b,c,dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
そして、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報bの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Bは地層境界面Dより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面B1が、制約条件に対して整合性が取れていないために不必要であることを検出する。
【0034】
次に、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面B1の画像データを消去し、図8に示すようにサブ地層境界面B1を除去して、地層構造を再構成する。
そして、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報c,dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
【0035】
次に、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報cの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Aは地層境界面Dより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面A1が、不要であることを検出する。
そして、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面A1の画像データを消去し、図9に示すようにサブ地層境界面A1を除去して、地層構造を再構成する。
【0036】
次に、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
そして、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報dの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Dは地層境界面Aより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面A2より上部に存在するサブ地層境界面D2が、不要であることを検出する。
【0037】
次に、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面D2の画像データを消去し、図10に示すようにサブ地層境界面D2を除去して、地層構造を再構成する。
そして、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、全ての相互関連情報に対する相互判定が終了したことを検出すると、処理をステップS9へ進める。
【0038】
次に、ステップS9において、出力部3は、図10に示すように、最終的にモデリングされた地層構造の画像データを表示画面に出力する。
そして、ステップS10において、制御部2は、図10に示した、最終的なモデリングされた画像データに、モデリングの識別番号を付して、データベース4に格納する。
【0039】
また、上述してきた地層境界面には地表面や断層面を含ませることができ、地表面や断層面に対しても上記相互関連情報を定義し、相互関係の判定の処理の対象として用いる。
例えば、不整合等により断層面が地表まで到達していない場合、不整合面を制約条件として定義することにより、モデリングの結果の地層構造において、不整合面より上部の断層面を削除することもできる。
【0040】
なお、図1における地層CADシステムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより地層の3次元画像の生成及び表示処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】2つの地層境界面の交差している交点を求める処理を説明する概念図である。
【図3】図2の説明において求めた交点から、2つの地層境界面の交差している交線を求める処理を説明する概念図である。
【図4】2つの地層境界面の相互関連情報の構成と種類を説明する概念図である。
【図5】本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの動作例を示すフローチャートである。
【図6】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係(主に存在に関する制約関係)の判定動作を説明する概念図である。
【図7】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図8】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図9】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図10】地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する概念図である。
【図11】地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1…入力部
2…制御部
3…出力部
4…データベース
5…演算部
6…地層境界面生成演算部
7…交点・交線演算部
8…領域分割演算部
9…相互関係判定演算部
10…不要部分消去演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング掘削により得られた地質データから、地層境界面を推定して抽出することにより、所定の演算を行いモデル化し、このモデルをコンピュータ画面上に3次元に表示する地質構造モデル作成・表示システム及び地層モデリング方法並びに地質構造モデル作成・表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物を建設する場合、建設する土地の地層を知ることは、建物の強度を図る上で非常に重要な条件となる。
このため、地質構造のモデリングは、対象となる領域において、所定の密度によりボーリング掘削を行い、各掘削位置毎に一定の深さ単位で、地質の情報(離散的な特定の地層境界の位置に関する情報:座標値及び深さ方向の地質データ)を取得して、地層の形状を推定、抽出することになる。
上述した推定は、多くの測定地点及び深さ方向の3次元の測定データを、地層の形状に、構成し直して、表示する必要がある。
このため、上記データを入力することにより、地層形状を演算により推定して、3次元表示するシステムが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】3次元地下情報管理システム、vulcan(登録商標)、[online]、[平成16年3月18日検索]、インターネット、<URL:http://www.vulcan3d.com>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、非特許文献1に示す地質構造モデル作成・表示システムは、地質構造を示す地層境界面を生成するとき、地質分野で特有の現象である地表及び断層の不整合の相互関係を示す場合、ユーザが不整合部分の画像を編集する必要がある。
ここで、地殻変動などにより、例えば、図11(b)に示すように、地層T1、T2、T3の右側が隆起したとする。
そして、ある期間の経過により、図11(c)に示すように、地層T1、T2の1部分が雨や風による侵食により除去され、その結果、地表面B(地層境界面B)が形成されたとする。
【0004】
従来の地質構造モデル作成・表示システム(地層構造の推定演算及び表示を行うCADシステム)を用い、上述した各地層T1〜T3により形成される地層境界面を推定演算したとき、地層境界面BとCとの構造の演算過程において、地層境界面Cが地層境界面Bと交差する部分で欠落し、地層境界面Bのみとなっていることを判定できないため、図11(d)に示すように、地層境界面Bより上部に地層境界面があるはずもないのに、地層境界面Bの上部に対し、存在しない地層境界面Cを形成し、2つの地層境界面が交差した3次元の地層のモデリングした画像データを表示することとなる。
すなわち、従来の地層CADシステムにあっては、地層境界面Cの下部に、実際に存在しない地層境界面Cの部分を形成してしまう。
【0005】
このため、従来の地層CADシステムは、表示画面において、ユーザが
(i) 地層境界面の上下関係を編集する2つの面を選択
(ii)2つの面の交差部分の抽出
(iii)2つの地層境界面の不必要な部分を指定し、選択
(iv)上記不必要な部分の除去操作
を行わなければならないという欠点がある。
また、従来の地層CADシステムは、上述したように、不必要な部分をユーザが選択して除去していくが、3次元の画像データであるため、他の面画像の陰になるところに存在する、不必要な部分をユーザが検出するのは困難であり、取りきれない部分が生じて、後の処理に不都合を生じさせる問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユーザが指定して選択することなく、不必要な部分を除去することが可能な地質構造モデル作成・表示システム、その方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割部と、交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記関連情報が、地層である制約面が対称面より、上部に存在し得ないことを示す関係式「対称面>制約面」、または、制約面が対称面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対称面<制約面」の関係式で表されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記分割境界面を削除し、表示される画像を再構成する不要部分消去演算部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、前記地層境界面生成演算部、所定の範囲の領域毎に、演算された地層境界面と、座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記関連情報を演算することを特徴とする。
【0011】
本発明の地層モデリング方法は、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算過程と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算過程と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割過程と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報(上部に存在し得ないことを示す関係式「対象面>制約面」、または、制約面が対象面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対象面<制約面」の関係式)に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算過程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の地質構造モデル作成・表示システムは、入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算処理と、前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算処理と、交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割処理と、交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算処理とを有するコンピュータにより実行可能なプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した構成により、本発明の地質構造モデル作成・表示システムによれば、交差している地層境界面を交線により各々分割境界面に分割し、あらかじめ設定されている、制約条件としての地層境界面の存在に関する制約関係に基づき、不必要な分割境界面を選択して、この不必要な部分を削除するため、従来例のように、ユーザが指定して選択することなく、不必要な分割境界面を、間違いなくかつ完全に除去することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムを図面を参照して説明する。図1は同実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの一構成例を示すブロック図である。
この図において、入力部1は、外部機器から、評価対象の領域のボーリングによる掘削による地質調査により得られた、地質データを制御部2を介してデータベース4に格納する。(ここで、外部機器とはキーボード,外部記憶媒体,実際の測定装置など)
ここで、地質データとは、地層境界面の作成に用いられるものであり、ボーリング掘削等の地質調査から得られた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)とから構成されている。
このボーリング掘削は、評価対象の領域において、所定の密度で行われ、密度が高ければ、得られるモデリングの結果の精度も高くなる。
【0015】
出力部3は、演算部5の演算によりモデリングされた地層構造を、制御部2を介して入力して表示画面等に表示する。
データベース4は、すでに述べた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)と、演算部5により得られた地層境界面の3次元空間における位置情報と、この地層境界面の識別子及び表示色と、所定の領域毎の各地層境界面の上下関係を示す関連情報と、断層面の始点,終点及び角度の情報とが記憶されている。
【0016】
演算部5は、地層境界面生成演算部6,交点・交線演算部7,領域分割演算部8,相互関係判定演算部,不要部分消去演算部を有している。
地層境界面生成演算部6は、入力される(またはデータベース4に記憶されている)評価対象の領域における複数の測定座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、上記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める。
【0017】
ここで、地層境界面生成演算部6は、例えば、地質調査などにより得られた評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報(座標値)から限定された評価対象の領域に対して、一般的な数学的手法により地層境界面の深度分布を推定して、三角形または四角形のポリゴン(メッシュ)の集合体として、地層境界面を生成する。
上記一般的な数学敵手法とは、各測定座標値における、所定の深さ方向の距離(深度)毎の地質の情報から得られる地層境界点の深度を用い、この測定された地層境界点の深度により、測定されていない座標値の地層境界点の深度を補完することで、地層境界面の深度分布を推定し、曲面等をポリゴン(メッシュ)の集合体として表現している。
【0018】
例えば、以下に示すInverse Distance Weighted法から、地層境界面の情報として、三角形メッシュの集合体を生成する。
Z=Σ(Zi/Rin)/Σ(1/Rin)
Rin=((X−Xi)2+(Y−Yi)2)0.5
ここで、Xi,Yi,Ziは地質調査などにより得られた特定の地層境界に関する位置情報(実際に得られた情報)であり、X,Y,Zは求めるメッシュを構成する接点の座標値であり、nは距離の逆数に基づく重み係数である。ここで、XおよびYにより緯度経度の測定座標地を示し、Zは深度を示しており、三角メッシュ各々の頂点の座標値の(X,Y)深度Zを推定(補完)している。
【0019】
交点・交線演算部7は、地層境界面生成演算部6により生成された地層境界面が交差していることを検出すると、交差する2つの地層境界面の交線の座標を演算する。
すなわち、交点・交線演算部7は、2つの地層境界面の交線を算出するとき、地層境界面を構成する各三角メッシュ単位に、図2に示す演算式を用いて、交点の座標の演算を行う。
交点・交線演算部7は、この図2に示す各演算式を用いて、各三角メッシュ毎(図3(a))に交差している交点を演算する(図3(b))。
【0020】
領域分割演算部8は、上記交点と、最も近接している三角メッシュの頂点とを接続することにより、交点近傍にある三角メッシュを分割してサブ三角メッシュを構成し(図3(c))、地層境界面を表すメッシュ構造の再構成を行う。
また、領域分割演算部8は、交差しているサブ三角メッシュ各々を上記交点を結合した交線により、領域1及び領域2に分割し、交叉している地層境界面各々を、交線により2つの異なる境界面であるサブ地層境界面に分割する。
【0021】
相互関係判定演算部9は、内部の記憶部に記憶されている、入力部から入力された所定の領域毎の地層境界面の存在に関する制約を示す相互関連情報(関連情報)により、各サブ地層境界面毎に、上下関係を判定して、存在し得ない面として上記サブ地層境界面を抽出する。
不要部分消去演算部10は、存在し得ない面として抽出されたサブ地層境界面を削除し、残ったサブ地層境界面により、地層のモデリングされた画像を再構成して、表示画面に表示する。
【0022】
また、上記相互関連情報は、交差する地層境界面間における生成順位に基づく制約関係の情報(対象面が制約面に対して上部あるいは下部にあるべきかを示す情報)だけでなく、交差した2つの地層境界面のいずれが他方を切っているかの情報を含んでいる。
ここで、図11(d)を例に取ると、相互関連情報は、面B及び面Cなどの、交差している地層の交差の組み合わせを示す組合せデータと、これらの組合せの存在に関する制約関係データ(交差する2つの地層境界面間の存在に関する制約関係を示す)を示す関係式(対象面>制約面または対象面<制約面)とから構成されている。
【0023】
B(対象面)>C(制約面)の式は、左辺に対象面である地層境界面が示され、右辺に制約面である地層境界面が示されている。
対象面とは存在の有無が検出される対象となる地層境界面であり、制約面とは対称面に対する基準となる地層境界面である。
また、対象面は存在が否定された場合に削除される対象となるが、制約面は存在の有無を検出する基準であるので、不要部分消去演算部10により削除される対象にはならない。
【0024】
例えば、C<Bは、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより、上部には存在し得ないことを示している。したがって、地層境界面Bより上部にある点線の部分の地層境界面Cは存在しない面であることが検出される。
組合せとしては図4に示す4種類あり、図4(a)に示すように、領域分割演算部8により、地層境界面Bがサブ地層境界面B1及びB2に分割され、地層境界面Cがサブ地層境界面C1及びC2に分割されているとする。
【0025】
図4(b)におけるB>Cの場合において、相互関係判定演算部9は、上述したように、対象面である地層境界面Bが制約面の地層境界面Cより下部に存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Cの下部に面Bが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面C2の下にある面B2を、必要の無い面として削除する。
図4(c)におけるB<Cの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Bが制約面の地層境界面Cより上部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Cの上部に面Bが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面C1の上にある面B1を削除する。
【0026】
図4(d)におけるC>Bの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより下部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Bの下部に面Cが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面B1の下にある面C1を、必要の無い面として削除する。
図4(e)におけるC<Bの場合において、相互関係判定演算部9は、対象面である地層境界面Cが制約面の地層境界面Bより上部には存在し得ないことを示す制約関係データにより、面Bの上部に面Cが存在することの無いことを検出し、不要部分消去演算部10は面B2の上にある面C2を削除する。
【0027】
次に、図1及び図5を参照して、本実施形態の地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する。図5は本実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの動作例を示すフローチャートである。
ステップS1において、制御部2は、地質調査等によって得られた特定の(離散的な)地層境界の測定位置の位置座標(測定座標値、例えば、ボーリングによる掘削位置である緯度および経度の情報;(X,Y)座標)及びこの位置座標における所定深度(ボーリングによる掘削の深さ方向の距離;深度Z)ごとの地質情報からなる測定データを、入力部1を介して入力し、各位置座標毎にデータベース4に記憶させる。
また、制御部2は、相互関連情報を、入力部1を介して入力し、上記各位置座標毎に相互関係判定演算部9内の記憶部に記憶させる。
【0028】
このとき、制御部2は、入力される測定データの深度Z毎における地質情報から、各地層界面にある地層境界面を検出して、この検出された地層境界面により、この位置座標における各地層に対する相互関連情報を求め、各位置座標毎に相互関係判定演算部9内の記憶部に記憶させるように構成しても良い。
上述した測定データの入力処理において、入力部1はキーボードや外部記憶媒体であり、ユーザがキー入力したり、外部記憶媒体から読み込むことにより、上記測定データ及び相互関連情報を入力する。
【0029】
次に、ステップS2において、ユーザが地質構造モデル作成・表示システムの表示画面において、所定の範囲の地質構造のモデリングを行う場合、この所定の範囲を選択することにより、制御部2はこの範囲内に存在する測定座標値に対応する測定データを、データベース4から読み出す。
そして、ステップS3において、地層境界面生成演算部6は、上記読み出されたデータから、各地層の境界の深度分布を推定し、地層境界面を生成する。
また、出力部3は、得られた地層境界面A,B,C,Dから成る地層構造の画像を、図6に示すように、表示画面に表示する。
【0030】
次に、ステップS4において、交点・交線演算部7は、各々交差している地層境界面同士の交点、すなわち、地層境界面A及びDの交点、地層境界面B及びDの交点、地層境界面C及びDの交点を求め、この交点から各々の面同士の交線を求める。
そして、ステップS5において、領域分割演算部8は、上記交線により、地層境界面A,B,C,D各々を、図6に示すように、サブ地層境界面A1及びA2,サブ地層境界面B1及びB2,サブ地層境界面C1及びC2,サブ地層境界面D1及びD2に分割する。
【0031】
次に、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、予め記憶部に設定されている、測定座標値毎の相互関連情報に基づき、生成された地層構造の画像が実際の地層境界面との整合が取れているか否かの検出を行う。
例えば、上記記憶部に記憶されている相互関連情報を以下のa,b,cとする。
a、 C−D C<D 地層境界面Cは地層境界面Dより上部には存在しない。
b、 B−D B<D 地層境界面Bは地層境界面Dより上部には存在しない。
c、 A−D A<D 地層境界面Aは地層境界面Dより上部には存在しない。
d、 A−D D<A 地層境界面Dは地層境界面Aより上部には存在しない。
【0032】
まず、相互関係判定演算部9は、相互関連情報aの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Cは地層境界面Dより上部には存在しない。」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面C1が、不要であることを検出する。
そして、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面C1の画像データを消去し、図7に示すようにサブ地層境界面C1を除去して、地質構造を再構成する。
【0033】
次に、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報b,c,dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
そして、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報bの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Bは地層境界面Dより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面B1が、制約条件に対して整合性が取れていないために不必要であることを検出する。
【0034】
次に、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面B1の画像データを消去し、図8に示すようにサブ地層境界面B1を除去して、地層構造を再構成する。
そして、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報c,dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
【0035】
次に、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報cの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Aは地層境界面Dより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面D1より上部に存在するサブ地層境界面A1が、不要であることを検出する。
そして、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面A1の画像データを消去し、図9に示すようにサブ地層境界面A1を除去して、地層構造を再構成する。
【0036】
次に、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、まだ、相互関連情報dが終了していないことを検出して、処理をステップS6へ戻す。
そして、ステップS6において、相互関係判定演算部9は、相互関連情報dの存在に関する制約関係データ(すなわち、「地層境界面Dは地層境界面Aより上部には存在しない」である制約条件)により、サブ地層境界面A2より上部に存在するサブ地層境界面D2が、不要であることを検出する。
【0037】
次に、ステップS7において、不要部分消去演算部10は、上記検出結果により、サブ地層境界面D2の画像データを消去し、図10に示すようにサブ地層境界面D2を除去して、地層構造を再構成する。
そして、ステップS8において、相互関係判定演算部9は、選択した範囲の測定データに対応する相互関連情報全ての相互関係の判定を行ったか否かを検出し、全ての相互関連情報に対する相互判定が終了したことを検出すると、処理をステップS9へ進める。
【0038】
次に、ステップS9において、出力部3は、図10に示すように、最終的にモデリングされた地層構造の画像データを表示画面に出力する。
そして、ステップS10において、制御部2は、図10に示した、最終的なモデリングされた画像データに、モデリングの識別番号を付して、データベース4に格納する。
【0039】
また、上述してきた地層境界面には地表面や断層面を含ませることができ、地表面や断層面に対しても上記相互関連情報を定義し、相互関係の判定の処理の対象として用いる。
例えば、不整合等により断層面が地表まで到達していない場合、不整合面を制約条件として定義することにより、モデリングの結果の地層構造において、不整合面より上部の断層面を削除することもできる。
【0040】
なお、図1における地層CADシステムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより地層の3次元画像の生成及び表示処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】2つの地層境界面の交差している交点を求める処理を説明する概念図である。
【図3】図2の説明において求めた交点から、2つの地層境界面の交差している交線を求める処理を説明する概念図である。
【図4】2つの地層境界面の相互関連情報の構成と種類を説明する概念図である。
【図5】本発明の一実施形態による地質構造モデル作成・表示システムの動作例を示すフローチャートである。
【図6】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係(主に存在に関する制約関係)の判定動作を説明する概念図である。
【図7】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図8】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図9】図1の相互関係判定演算部9による隣接した地層境界面間の相互関係の判定動作を説明する概念図である。
【図10】地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する概念図である。
【図11】地質構造モデル作成・表示システムの動作を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1…入力部
2…制御部
3…出力部
4…データベース
5…演算部
6…地層境界面生成演算部
7…交点・交線演算部
8…領域分割演算部
9…相互関係判定演算部
10…不要部分消去演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報から、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算部と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域分割演算部と、
交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部と
を有することを特徴とする地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項2】
前記関連情報が、分割境界面である制約面が対象面より、上部に存在し得ないことを示す関係式「対象面>制約面」、または、制約面が対象面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対象面<制約面」の関係式で表されていることを特徴とする請求項1記載の地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項3】
存在し得ない前記分割境界面を削除し、表示される画像を再構成する不要部分消去演算部を有することを特徴とする地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項4】
前記地層境界面生成演算部が、所定の範囲の領域毎に、地層境界面と、離散的な特定の地層境界の位置に関する情報から、前記関連情報を演算することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項5】
入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この離散的な特定の地層境界の位置に関する情報とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算過程と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算過程と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割過程と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算過程と
を有することを特徴とする地層モデリング方法。
【請求項6】
入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算処理と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算処理と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割処理と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算処理と
を有するコンピュータにより実行可能な地質構造モデル作成・表示プログラム。
【請求項1】
入力される評価対象の領域における離散的な特定の地層境界の位置に関する情報から、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算部と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算部と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域分割演算部と、
交差している地層の上下関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算部と
を有することを特徴とする地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項2】
前記関連情報が、分割境界面である制約面が対象面より、上部に存在し得ないことを示す関係式「対象面>制約面」、または、制約面が対象面より下部に存在し得ないことを示す関係式「対象面<制約面」の関係式で表されていることを特徴とする請求項1記載の地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項3】
存在し得ない前記分割境界面を削除し、表示される画像を再構成する不要部分消去演算部を有することを特徴とする地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項4】
前記地層境界面生成演算部が、所定の範囲の領域毎に、地層境界面と、離散的な特定の地層境界の位置に関する情報から、前記関連情報を演算することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の地質構造モデル作成・表示システム。
【請求項5】
入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この離散的な特定の地層境界の位置に関する情報とから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算過程と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算過程と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割過程と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算過程と
を有することを特徴とする地層モデリング方法。
【請求項6】
入力される評価対象の領域における複数の座標値と、この座標値各々での所定の深さ距離毎の地質データとから、前記領域における地層境界面の深度分布を、所定の演算により求める地層境界面生成演算処理と、
前記地層境界面同士が交差している場合、これら2面の交線を求める交点・交線演算処理と、
交差している地層境界面各々を、前記交線により、異なる分割境界面として分割する領域演算分割処理と、
交差している地層の存在に関する制約関係を示す関連情報に対して、存在し得ない前記分割境界面を抽出する相互関係判定演算処理と
を有するコンピュータにより実行可能な地質構造モデル作成・表示プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−9262(P2006−9262A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183757(P2004−183757)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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