説明

垂木固定ビス確認用部材及び垂木の固定構造

【課題】垂木固定用ビスの有無を容易に確認することができる垂木固定ビス確認用部材および垂木の固定構造を提供すること。
【解決手段】本発明の垂木固定ビス確認用部材1及び固定構造Bによれば、上面板2のはみ出し部2aを垂木11の上面11aからはみ出させることにより、検査者が屋根を見上げるようにして垂木11を見た場合、垂木固定ビス15が設けられた箇所には、必ずそのはみ出し部2aが視認される。よって、はみ出し部2aが見えるか否かによって垂木固定ビス15の有無を判断でき、したがって、検査者は、垂木固定ビス15の有無を容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂木の固定に用いられる垂木固定ビスを確認するための垂木固定ビス確認用部材、及び垂木の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、建物の屋根において横架材(例えば母屋、小屋梁、軒げた等)に垂木を固定するための垂木固定ビスが知られている。この垂木固定ビスは、横架材上に架設された垂木の上面側から横架材に向けてねじ込まれることによって、所定の強度(保持力)で垂木を固定するものである。この垂木固定ビスを用いることにより、ひねり金物と呼ばれる旧来の固定金具を用いる場合に比して、垂木を固定する際の施工性が大幅に向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−327540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、建物の検査の際、垂木が横架材に適切に固定されているか否かの確認は、目視にて行われる。この目視確認は、建物が2階建ての場合には検査者が2階に上がり、屋根を見上げるようにして行われるのが一般的である。しかしながら、上記の垂木固定ビスを用いた場合、垂木の固定後にビスが露出する部分は必然的に垂木の上面側に表れたビスの頭部のみとなるため、屋根を見上げるようにした場合には、ビスの有無を確認し難い。そのため、確認の容易性の点で改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、垂木固定用ビスの有無を容易に確認することができる垂木固定ビス確認用部材および垂木の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る垂木固定ビス確認用部材は、垂木の上面に載置される上面板と、上面板に形成されて、垂木を横架材に固定するための垂木固定ビスが通される通し孔と、を備え、上面板は、垂木の上面からはみ出すはみ出し部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る垂木固定ビス確認用部材によれば、垂木が横架材に固定される際、垂木固定ビス確認用部材が垂木の上面に載置され、その通し孔に垂木固定ビスが通される。そして、垂木固定ビスがねじ込まれることによって垂木が横架材に固定される。このとき、上面板のはみ出し部が垂木の上面からはみ出すため、屋根を見上げるようにして垂木を見た場合、垂木固定ビスが設けられた箇所では、必ずそのはみ出し部が視認される。よって、はみ出し部が見えるか否かによって垂木固定ビスの有無を判断できることになるため、垂木固定ビスの有無を容易に確認することができる。
【0008】
ここで、上面板は、傾斜した垂木の上面に載置されたときに、通し孔よりも低い部分の面積が通し孔よりも高い部分の面積よりも大きいと好適である。通し孔を通ってねじ込まれた垂木固定ビスの頭部が通し孔の周囲の上面板に圧接した際、その反動で、圧接された部分の外周部が反り返ることが考えられる。上記構成によれば、通し孔よりも高い部分の面積は小さくなっているため、傾斜方向上側における上面板の反り返りは比較的抑制される。よって、垂木上に野地板などの板材を設置するにあたり、板材を傾斜方向上方から下方に向けてスムーズに滑らすことができる。従って、屋根の施工性を低下させることなく、上記した確認容易性を実現できる。
【0009】
また、上面板のはみ出し部には、垂木の側面に沿って下方に延びる係止板が連設されていると好適である。この場合、はみ出し部のみならず係止板も視認することができ、垂木固定ビスの有無をより一層容易に確認することができる。しかも、垂木の上面に上面板が載置されると共に側面に沿って係止板が延びるため、垂木固定ビス確認用部材それ自体が垂木固定ビスのねじ込みに伴って回転するようなことを防止できる。さらに、係止板の形状等を工夫することで意匠性をもたせることもでき、美観の向上を図ることができる。
【0010】
また、係止板には、垂木の側部にめり込む爪片が突設されていると好適である。この場合、垂木固定ビス確認用部材を垂木にあてがう際、爪片を垂木の側部にめり込ませることで、垂木固定ビス確認用部材を垂木に留めておくことができる。よって、垂木固定ビスの取付前に垂木固定ビス確認用部材がずれるようなことがなく、施工性の向上が図られる。さらに、爪片によって係止板が垂木に係合するため、垂木固定ビスを取り付けた際の係止板の浮き上がりを防止することができる。
【0011】
また、通し孔の直径は、垂木固定ビスの頭部の直径よりも小さいと好適である。この場合、垂木固定ビスが取り付けられた際にその頭部の周縁が、垂木との間に上面板を挟み込むこととなる。よって、上面板がワッシャのように機能し、垂木固定ビスの取り付けをより確実に行うことができる。
【0012】
本発明に係る垂木の固定構造は、横架材と、横架材の上部に架設された垂木と、垂木の上面側から横架材に向けてねじ込まれた垂木固定ビスと、垂木に載置されて通し孔に垂木固定ビスが通された上記の垂木固定ビス確認用部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この固定構造によれば、垂木固定ビスによる施工性の向上と、施工後における垂木固定ビスの有無の確認容易性とを両立することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、垂木固定用ビスの有無を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る垂木固定ビス確認用部材を示す図である。
【図2】図1の垂木固定ビス確認用部材を上面側から見た斜視図である。
【図3】図1の垂木固定ビス確認用部材を裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る垂木の固定構造を示す斜視図である。
【図5】図4の固定構造が適用された建物の全体を示す斜視図である。
【図6】図4中の垂木固定ビスの正面図である。
【図7】図4における垂木の中心線および垂木固定ビスの軸線を含む位置の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る垂木の固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[垂木固定ビス確認用部材]
図1〜図3に示すように、垂木固定ビス確認用部材1(以下、「確認用部材1」という)は、垂木の固定構造に用いられる垂木固定ビスの有無を確認するための部材である。図5に示すように、建物Aの屋根構造では、水平方向に延在する母屋などの横架材10が、屋根の傾斜方向において等間隔に複数並設されている。複数の横架材10の上部には、屋根の傾斜方向に沿って延在する垂木11が架設される。この垂木11は、横架材10の延在方向、すなわち水平方向において等間隔に複数並設される。
【0018】
図1(a)は確認用部材1の上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は右側面図である。確認用部材1は、横架材10と垂木11とが交差する位置において、垂木11に載置される。以下の説明において、横架材10の延在方向をX方向、垂木11の延在方向をY方向、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。すなわち、X方向は水平方向に一致し、Y方向は屋根の傾斜方向に一致する。
【0019】
確認用部材1は、例えば厚さ1mm程度の1枚の鋼板を折り曲げて形成される部材である。この確認用部材1は、垂木11の上面に載置される上面板2と、上面板2に連設されて下方に延びると共に、垂木11の側面に当接する係止板5とを有している。上面板2は、Y方向に対して角度θをなす方向に延びると共に、一定の幅を有している。上面板2の外形は、垂木11に載置されたときに位置が高くなる一方の端部が半円状をなしており、他方の端部がY方向に沿った直線状をなしている。なお、確認用部材1の材質は、アルミなど他の金属、又は樹脂であってもよい。
【0020】
上面板2の半円形をなす一方の端部には、円形の通し孔3が形成されている。この通し孔3は、後述の垂木固定ビスが通される孔である。通し孔3の直径は、例えば11.5mm程度であり、垂木固定ビスの頭部の直径よりも小さくなっている。
【0021】
上面板2の他方の端部には、垂木11の上面からはみ出すはみ出し部2aが設けられている。すなわち、上面板2は、垂木11の上面に載置されたときに、屋根の傾斜方向下向きに対して角度θをなす方向に延び、垂木11の上面から側方(X方向)に向けて僅かにはみ出す(張り出す)ように形成されている。はみ出し部2aのはみ出し幅は、例えば1mm程度であり、確認用部材1の厚みにほぼ一致する。また、通し孔3の中心とはみ出し部2aとの間のX方向における距離は、垂木11の幅を2等分した長さにほぼ一致している。
【0022】
上記構成を有する上面板2においては、垂木11の上面に載置されたときに、通し孔3よりも低い部分(図1(a)に示す部分S1)の面積が、通し孔3よりも高い部分(図1(a)に示す部分S2)の面積よりも大きくなっている。すなわち、通し孔3は、上面板2においてY方向上側に偏った位置に形成されている。
【0023】
係止板5は、上面板2のはみ出し部2aに連設されて下方に延びると共に、はみ出し部2aのY方向の長さにほぼ一致する長さの上辺を有する長方形状をなしている。上面板2を含む面と係止板5を含む面とは、互いに直交している。
【0024】
係止板5の中央付近には、X方向における上面板2側に向けて三角形状の爪片6が突設されている。この爪片6は、係止板5の一部がV字状に切り欠かれ、垂直に折り曲げられることにより形成されている。この爪片6が形成されることで、係止板5には三角形状の開口7が形成されている。爪片6は、確認用部材1が垂木11に取り付けられる際に、垂木11の側部にめり込む。
【0025】
[垂木の固定構造]
図4及び図5に示すように、垂木11の固定構造Bは、横架材10と垂木11との各々の接合部位において形成されている。横架材10の上部10aには、垂木11が嵌まり込む嵌合溝(図4では垂木11が嵌っているため見えない)が形成されており、この嵌合溝に垂木11が嵌め込まれることで、垂木11がY方向に延設されている。
【0026】
横架材10に対し垂木11が嵌め込まれたその位置において、垂木11の上部に前述の確認用部材1が載置されている。ここで、確認用部材1の上面板2は、垂木11の上面11aに載置されると共に、係止板5は、垂木11の側面11bに当接している。上面板2に形成された通し孔3は、垂木11の上面11aにおける幅方向(X方向)の略中央部に位置している。
【0027】
図6に示すように、垂木固定ビス15は、軸部16と、軸部16の先端側に形成されたネジ部17と、軸部16の基端側に形成された円板状の頭部20と、頭部20と軸部16の基端との間に形成された円錐台形部18とを有している。垂木固定ビス15は、上述した特許文献1に記載されたビスと同様の構成である。
【0028】
図4及び図7に示すように、垂木固定ビス15は、確認用部材1の通し孔3を通って垂木11を貫通し、横架材10内にねじ込まれている。これにより、垂木固定ビス15の軸部16は、Z方向に配置されている。ここで、頭部20の上端面は、垂木11の上面11aとほぼ面一であると共に、頭部20に圧接された通し孔3の周縁部2b(図7参照)は、垂木11内に陥没している。
【0029】
以上説明した本実施形態の確認用部材1によれば、上面板2のはみ出し部2aが垂木11の上面11aからはみ出すため、屋根を見上げるようにして垂木11を見た場合、垂木固定ビス15が設けられた箇所では、必ずそのはみ出し部2aが視認される。よって、はみ出し部2aが見えるか否かによって垂木固定ビス15の有無を判断できる。したがって、検査者は、垂木固定ビス15の有無を容易に確認できる。
【0030】
また、上面板2は、傾斜した垂木11の上面11aに載置されたときに、通し孔3よりも高い部分S2の面積は小さくなっているため、通し孔3を通ってねじ込まれた垂木固定ビス15の頭部20が通し孔3の周縁部2b(図7参照)に圧接しても、Y方向上側における上面板2の反り返りは抑制されている。よって、図5に示すように、垂木11上に野地板12などの板材を設置するにあたり、板材をY方向上方から下方に向けてスムーズに滑らすことができる。従って、屋根の施工性を低下させることなく、上記した確認容易性が実現される。
【0031】
また、上面板2のはみ出し部2aには、垂木11の側面11b(図4参照)に沿って下方に延びる係止板5が連設されているため、係止板5を視認することができ、検査者は、垂木固定ビス15の有無をより一層容易に確認できる。しかも、垂木11の上面11aに上面板2が載置されると共に側面11bに沿って係止板5が延びるため、確認用部材1それ自体が垂木固定ビス15のねじ込みに伴ってZ方向の軸線回りに回転することが防止されている。さらには、係止板5の形状等を工夫することで意匠性をもたせることもでき、美観の向上を図ることができる。
【0032】
また、係止板5には、垂木11の側部にめり込む爪片6が突設されているため、確認用部材1を垂木11にあてがう際、爪片6を垂木11の側部にめり込ませることで、確認用部材1を垂木11に留めておくことができる。よって、垂木固定ビス15の取付前に確認用部材1がずれるようなことがなく、施工性の向上が図られる。さらに、爪片6によって係止板5が垂木11に係合するため、垂木固定ビス15を取り付けた際の係止板5の浮き上がりが防止される。
【0033】
また、通し孔3の直径は、垂木固定ビス15の頭部20の直径よりも小さいため、垂木固定ビス15が取り付けられた際に頭部20の周縁が、垂木11との間に上面板2を挟み込むこととなる。よって、上面板2がワッシャのように機能し、垂木固定ビス15の取り付けがより確実に行われる。
【0034】
また、本実施形態に係る垂木11の固定構造Bによれば、垂木固定ビス15による施工性の向上と、施工後における垂木固定ビス15の有無の確認容易性とを両立することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
【0036】
例えば、図8(a)に示すように、円板状の上面板2Cからなる確認用部材1Cを用いた固定構造Cであってもよい。この場合、上面板2Cの周縁部21,21が垂木11の上面11aからはみ出す構成とすれば、上記実施形態と同じく下方からの視認が可能になる。
【0037】
また、図8(b)に示すように、略三角形状の上面板2Cからなる確認用部材1Dを用いた固定構造Dであってもよい。この場合、三角形状の一の角部に垂木固定ビス15を通し、他の角部22,22が垂木11の上面11aからはみ出す構成とすれば、上記実施形態と同じく下方からの視認が可能になる。
【0038】
さらには、図8(c)に示すように、長方形状の上面板2Eと、上面板2Eの両端24,24に連設された五角形状の係止板5Eと、からなる確認用部材1Eを用いた固定構造Eであってもよい。この場合、両端24,24が垂木11の上面11aからはみ出すと共に、係止板5Eが側面11bに当接する構成とすれば、上記実施形態と同じく下方からの視認が可能になる。ここで、係止板5Eの下側の頂部(上面板2Eから最も遠い位置にある頂部)は、垂木11の延在方向における位置が通し孔3の中心位置と略一致するように形成されることが好ましい。このようにすれば、係止板5Eを垂木11に載置するにあたり、垂木固定ビス15をねじ込むべき目標位置(垂木11の延在方向における位置)にその頂部を予め合わせておくことで、その目標位置に容易かつ確実に垂木固定ビス15をねじ込むことができる。図8(c)では、横架材10の辺(嵌合溝が形成されて切り欠かれた稜線部)の位置に垂木固定ビス15をねじ込む場合について示している。
【符号の説明】
【0039】
1…確認用部材(垂木固定ビス確認用部材)、2,2C〜2E…上面板、2a…はみ出し部、3…通し孔、5,5E…係止板、6…爪片、10…横架材、11…垂木、11a…上面、15…垂木固定ビス、21,22,24…はみ出し部、B〜E…固定構造(垂木の固定構造)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂木の上面に載置される上面板と、
前記上面板に形成されて、前記垂木を横架材に固定するための垂木固定ビスが通される通し孔と、を備え、
前記上面板は、前記垂木の前記上面からはみ出すはみ出し部を有することを特徴とする垂木固定ビス確認用部材。
【請求項2】
前記上面板は、傾斜した前記垂木の前記上面に載置されたときに、前記通し孔よりも低い部分の面積が前記通し孔よりも高い部分の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の垂木固定ビス確認用部材。
【請求項3】
前記上面板の前記はみ出し部には、前記垂木の側面に沿って下方に延びる係止板が連設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の垂木固定ビス確認用部材。
【請求項4】
前記係止板には、前記垂木の側部にめり込む爪片が突設されていることを特徴とする請求項3記載の垂木固定ビス確認用部材。
【請求項5】
前記通し孔の直径は、前記垂木固定ビスの頭部の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の垂木固定ビス確認用部材。
【請求項6】
前記横架材と、
前記横架材の上部に架設された前記垂木と、
前記垂木の上面側から前記横架材に向けてねじ込まれた前記垂木固定ビスと、
前記垂木に載置されて前記通し孔に前記垂木固定ビスが通された請求項1〜5のいずれか一項記載の垂木固定ビス確認用部材と、
を備えることを特徴とする垂木の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−97537(P2012−97537A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248575(P2010−248575)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)