説明

垂直式の水冷ダクト内部の作業用の足場設置機構

【課題】
内部で作業者が作業するために足場を設置する必要のある垂直に配置された水冷式ダクトにおいて、足場を必要に応じて容易かつ安全に設置できる機構を設ける。
【解決手段】
垂直に設置された水冷ダクト1の内部で使用する脱着可能な足場機構において、足場となる棒状体8を水平に水冷ダクト1の外筒2から内筒3へ挿通し、さらに内筒3から外筒2へ挿通するための貫通孔6を有する支持筒7を水冷ダクト1の外筒2および内筒3に設けて、これらの支持筒7を1対とし、同じ高さとなる他の水平位置に、上述の支持筒7と同様にもう1対の支持筒7を設置し、それぞれの対となる支持筒7のスパンより長い棒状体8を水冷ダクト1の外部より挿入し、支持筒7よりはみ出した棒状体8の端部を水冷ダクト1の外部から固定した垂直式の水冷ダクト1の内部の作業用の足場設置機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で作業者が作業する作業用ステージの足場を設置する必要のある垂直に配置された水冷ダクトにおいて、足場を設置するための水冷ダクトの内部の作業用の足場設置機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉や取鍋炉などから排出される高温気体を排気するために用いられる垂直式の水冷ダクト1は、水冷ダクト1の外筒2と内筒3の間に水路4を設けて水冷ダクト1を冷却水により冷却を行っている。水冷ダクト1の内筒2の内側は、高温気体が流れるために、内筒3が損傷し、水冷ダクト1の内部の水路4から水漏れを起こすことがある。ところで垂直に配置された水冷ダクト1では、足場板9からなる足場を設置しなければ、生じた水漏れの修理作業や水路4の点検作業が出来ない箇所が存在する。
【0003】
従来、水冷ダクト1の内部で行う足場設置作業においては、水冷ダクト1の内部の下端で水平な安定した箇所より、パイプ足場を組上げて行き、作業用ステージとして足場板9を設置する。あるいは水冷ダクト1の中段に設けられた作業員が出入する点検口より、水冷ダクト1の内部に向かって伸びる張出し足場を設置し、水冷ダクト1の内部の張出し足場の上にパイプ足場を組上げて行き、足場板9を設置する方法があった。
【0004】
この足場を組上げる方法では、足場の設置および撤去作業の作業量が非常に大きくなり、さらに狭暗所での作業が多いために、転落事故などリスクが増大し、コストの問題も発生する。
【0005】
別の方法として、水冷ダクト1の内筒3にアングル材などを常設足場として溶接固定して設置し、修理作業や点検作業時に、常設足場の上に足場板9を設置する方法を採っていた。
【0006】
このダクト内部に常設足場の溶接固定による方法は、足場設置の作業量は減少するが、水冷ダクト1を長期にわたり使用している間に、ダクト内を流れる高温の気体や、腐食成分を含む気体によって、常設足場の変形や、溶接部分の腐食が起こる問題がある。この変形や腐食により、常設足場の強度は著しく低下しており、この常設足場を継続して使用することは、作業者の転落事故や、足場材自体の落下事故が発生する懼れがある。しかし、水冷ダクト1の外筒2の外部での常設足場の設置は高温および腐食の問題は生じない。
【0007】
その他に、水冷ダクト1の内部に脱着式の足場を設置するための機構が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、水冷ダクト1の内径よりも短寸の棒状体8を水冷ダクト1の側壁に配置された係止体あるいは貫通孔6に挿入して、足場を形成するものである。
【0008】
しかし、上記の特許文献1に記載された方法では、棒状体8が水冷ダクト1の内径よりも短寸であるために、ダクト内部より行う棒状体8の配置作業や棒状体8の支持作業もしくは棒状体8の固定作業が必要となるが、棒状体8が不安定な状態のもとで、作業者の身体をこの棒状体8に預けて行う作業となるため、極めて危険な作業であった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−140570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、水冷ダクトの内部に作業用足場の設置作業を安全かつ簡便に実施でき、さらに得られた足場がより安全なものとなっている構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、水冷ダクト1の内部で使用する脱着可能な足場板9を水冷ダクト1の外部より固定することができる機構を水冷ダクト1に備えさせることである。
【0012】
上記の目的のために、棒状体8を水冷ダクト1の一側の外筒2から内筒3へ水平に挿通し、さらにこの棒状体8の先端を水冷ダクト1の他の一側の内筒3から外筒2へ挿通し得るように、水冷ダクト1の内部を貫通する貫通孔6を設ける。このとき冷却水の漏洩防止と棒状体8を挿通支持する支持筒7を内筒3から外筒2の外側にまで延在するように設ける。すなわち水冷ダクト1の内部を貫通する貫通孔6の両端の内筒3から外筒2の外側にまで延在している1対の支持筒7とする。
【0013】
上記の一対の支持筒7の高さ位置と同じ高さとなる位置に、もう1対の支持筒7を設け、それぞれの対となる支持筒7のスパンより長い棒状体8を水冷ダクト1の外部より挿入し、支持筒7より外部にはみ出した棒状体6を水冷ダクト1の外部から固定する。2本の棒状体6、6を固定することにより、水冷ダクト1の内部で、棒状体6の上に足場板9を安定させて設置できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る水冷ダクトの内部の作業用の足場設置機構は、従来のパイプ足場の組上げに比べて大幅に設置のための作業量を減少させることができる。
【0015】
さらに水冷ダクトの内部の足場上に載って行う作業が無い時は、足場を形成する棒状体の取外しができ、水冷ダクト内を通るガスによる足場自体の腐食や変形から守ることができる。また支持筒も外筒に取り付けられているので、腐食による支持筒の落下も防護されている。
【0016】
さらに足場板を設置するための棒状体を水冷ダクトの外部から固定できるので、水冷ダクトの内部における足場板の設置作業や内壁の修理や点検の作業時には、棒状体が十分な強度を持った足場として安全に使用できるなど、本願の手段は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の水冷ダクト1の縦断面図である。この水冷ダクト1はそれぞれ円筒状の外筒2と内筒3からなり、外筒2と内筒3の間には水冷ダクト1を冷却するための水冷用の水路4が螺旋状の管体から形成されており、例えば、水冷ダクト1の下部の側壁に有する水路入口12から水路4に冷却水を流し、水冷ダクト1の上部の側壁に有する水路出口13から放出して水冷ダクト1の内壁3を冷却して、水冷ダクト1を流れる高温から内壁3を保護している。
【0018】
この水冷ダクト1は、図2の平面図に見られるように、内筒3の径の大きさが1800mmである。この水冷ダクト1では、外筒2および内筒3の径方向の中心線5を任意に設定し、さらに中心線5から両側にそれぞれ450mm離れた位置に中心線に平行な平行線aおよび平行線a’を設定する。この設定した平行線aおよび平行線a’上に位置する水冷ダクト1の内筒3および外筒2に、それぞれ2つずつ計4つの貫通孔6を設ける。これらの貫通孔6を内部に有し、かつ、内筒3および外筒2の間からの冷却水の漏洩防止および貫通孔6に挿通する棒状体8の支持を目的とした支持筒7を水冷ダクト1の壁部にそれぞれ1つずつ平行線aおよび平行線a’の2方向に向けて取り付けている。これら同一平行線上にある2つの支持筒7を対とし、この対となる2つの支持筒7の端同士の間のスパンの2000mmより少しはみ出して長寸に形成された棒状体8を挿入し、支持筒7よりはみ出した棒状体8を水冷ダクト1の外部にてそれぞれ固定する。こうして固定された2本の棒状体8の上に足場板9を載置することで、安定した作業用ステージとする。
【0019】
棒状体8の水冷ダクト1の外部からの固定方法は、例えば足場クランプを用いるが、支持筒7より径の大きな円板を支持筒7の外側に当てがって棒状体8の抜け止めとしてもよい。
【0020】
さらに、水冷ダクト1の内部の上下方向に作業ステージを多段として必要とする場合には、上下方向の作業ステージの間隔を1200mmとなるようにして、それぞれの他段の位置に貫通孔6および支持筒7を設けるものとする。
【0021】
貫通孔6へ支持筒7を取り付ける手段は溶接によるものとし、この場合、内筒3および外筒2からの冷却水の漏洩がないようにするために、図3に示すように、支持筒7と内筒3および外筒2の接触部の全周を溶接して溶接部14とする。例えば、直径50mmの棒状体8を使用する場合、支持筒7は丸パイプからなるものとして、例えば、JIS規格の100A SCH160の鋼管を使用するのが適している。
【0022】
足場を設置しない時の水冷ダクト1からのエアリークを防止するために、同じく図3に示すように、水冷ダクト1の外側に突出する支持筒7の端部にフランジ10を設け、足場を設置しない時は、さらにその外側に穴なしフランジ11を施して支持筒7の孔を封止する。また、エアリーク防止に穴なしフランジ11に代えて封止キャップを用いても良い。
【0023】
この水冷ダクト1の内部の作業用の足場設置機構に使用する棒状体8の形状は、丸棒、角棒、丸パイプ、角パイプなどで良く、設置した足場、作業員、足場上の道工具の重量を支え得る強度を有していれば、その材質は問わない。
【0024】
同じ高さに設置する棒状体8は、足場板9が安定に設置できれば、2本以上配置されても良く、また、これらが平行に配置されている必要はない。しかし、交差して配置された棒状体8の上には足場板9を安定に設置することは難しい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】水冷ダクトを縦断面で示す立面図である。
【図2】内部に作業用の足場設置機構を有する水冷ダクトを断面で示す平面図である。
【図3】水冷ダクトの内部の作業用の足場設置機構の支持筒を断面で示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 水冷ダクト
2 外筒
3 内筒
4 水路
5 径方向の任意の中心線
6 貫通孔
7 支持筒
8 棒状体
9 足場板
10 フランジ
11 穴なしフランジ
12 水路入口
13 水路出口
14 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に設置された水冷ダクトの内部で使用する着脱可能な足場機構において、足場となる棒状体を水平に水冷ダクトの内筒へ挿通し、さらに内筒から外筒へ挿通するための指示部を有する貫通孔をそれぞれ水冷ダクトの外筒および内筒に設け、これら貫通孔の外筒の外部に突出する一対の支持筒を設け、該貫通孔と同じ高さとなる位置に同様に他の貫通孔を設けて該他の貫通孔の外部に突出するもう一対の支持筒を設置し、それぞれの対となる一対の支持筒にこれらの一対の支持筒のスパンより長い棒状体を水冷ダクトの外筒の外部から一対の支持筒および貫通孔に挿入貫通し、支持筒より外部にはみ出した棒状体を外部から固定したことを特徴とする垂直式の水冷ダクト内部の作業用の足場設置機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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