説明

垂直的なパッチ乾燥

装置が提供され、当該装置は、1つ以上の薬物パッチ(20)を有し、かつ、面(22)を有し、該面は、前記1つ以上の薬物パッチを保持するように構成されている。ハウジング(24)は、1つ以上のガス流入用開口部(30)を定める形状であり、ガス流入用開口部(30)は、ガスの流れをパッチに向かわせることによりパッチの乾燥を促進するように構成され、その流れの中心線は、前記面の法線から20度未満の角度にある。他の実施形態についても、記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、Bar-El らの米国仮特許出願第61/001,016号の利益を主張するものであり、その仮出願は、2007年10月29日に出願され、「Vertical patch drying」というタイトルであって、参照したことにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概しては、医療装置および医療方法に関する。具体的には、本発明は溶出可能(dissolvable)な薬物パッチ(drug patch)に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
近年、多くの薬物が経皮送達(transdermal delivery、経皮デリバリー、経皮投与)のために処方されている。薬物の経皮送達は、多くの患者、とりわけ、経口的または注射によって薬物を投与することが困難に感じる患者にとっては、好ましい投与方法である。
【0004】
Sternらの米国特許出願公開第2004/0137044号(これは、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、乾燥または凍結乾燥された医薬組成物の経皮送達のためのシステムおよび該システムの使用方法が記載されている。該システムは、薬剤(agent)の経皮送達を促進するための装置を有し、親水性のマイクロチャネルを作り出すものであり、かつ、パッチを有し、該パッチは、医薬的に活性を有する薬剤を有している。該システムは、親水性の薬剤、特に高分子量のタンパク質の経皮送達のために有用であると記載されている。
【0005】
Avrahamiに対する米国特許第5,983,135号(これは、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、対象の皮膚に対して粉末を送達するためのデバイスが記載されており、該デバイスは、パッドを有し、該パッドは絶縁物質によって作られかつ上側(upper side)および下側(lower side)を有し、該下側は、粉末を付与した後に皮膚に当てて配置されるものである。電力源がパッドに電位(electrical potential)を印加し、それによって、静電的な力により粉末がパッドの下部に付着し、その後電位が変化されると、該粉末がパッドから放出され、パッドが配置された皮膚に接触するようになる。
【0006】
Chappaらの米国特許第7,097,850号(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、1つまたは複数部分のシステムの形態になっているコーティング組成物が記載され、かつ、湿度が制御された条件下でそのような組成物を適用する方法が記載されており、これらは、デバイス表面をコーティングして、水溶性系(aqueous system)で生物活性物質(bioactive agent)を放出する能力を制御、および/または、改善するために使用される。該コーティング組成物は、ステントやカテーテルなど、送達および/または使用の過程で大きく屈曲しかつ/または拡張する医療器具と共に使用されるために特に適している。該組成物には、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアリール(メタ)アクリレート、ポリアラルキル(メタ)アクリレートまたはポリアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートといった第1のポリマー組成物と、ポリ(エチレンコビニルアセテート)といった第2のポリマー組成物とを組み合わせた、生物活性薬剤が含まれる。
【0007】
Straubらに対する米国特許第6,932,983号(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、薬物、とりわけ低水溶性薬物が記載されており、それらは、多孔性マトリックス(porous matrix、多孔性基質)の形態にて、好ましくは微粒子にて提供され、水性媒体中での該薬物の溶出性を向上させる。該薬物のマトリックスは、次の事項を含むプロセスを用いて作られることが好ましい。(i)薬物(好ましくは低水溶性の薬物)を揮発性溶媒に溶かして薬物溶液を形成すること、(ii)該薬物溶液を少なくとも1つの細孔形成剤(pore forming agent)とあわせて、乳液、懸濁液または第2の溶液を形成すること、および、(iii)その乳液、懸濁液または第2の溶液から該揮発性溶媒および細孔形成剤を除去し、薬物の多孔性マトリックスを得る。細孔形成剤は、薬物溶媒と非混和性の揮発性液体または揮発性固体化合物(好ましくは揮発性塩)のいずれであってよい。好ましい実施形態では、溶媒および細孔形成剤を除去するためにスプレー乾燥が用いられる。得られる多孔性マトリックスは、該薬物の非多孔性マトリックス形態と比較して、患者への投与後の溶出速度がより大きいことが記載されている。好ましい実施形態では、多孔性薬物マトリックスの微粒子は、水性媒体と共に再構成されて非経口的に投与されるか、あるいは標準技術を用いて経口投与のために錠剤またはカプセル剤に加工される。
【0008】
Alza Corporation(CA、USA)は、「Macroflux(登録商標)」という製品を開発した。これは、精密なマイクロ突起体を持った薄いチタンのスクリーンを組み込んでおり、それが、皮膚に適用されたときに、皮膚の感覚の無い(dead)障壁層を通過する表層経路を生成し、高分子の輸送を可能とすると記載されている。Macroflux(登録商標)製品は、皮膚内へのボーラス送達のために、薬物を、Macroflux(登録商標)のマイクロ突起体のアレイ上にドライコーティングすることと、連続的な受動的または電気輸送式の適用のために薬物レザーバーを用いることとの選択肢を提供する。加えて、Macroflux(登録商標)経路の生成は、皮膚パッチでの処置領域にわたる薬物分布のよりよい制御および皮膚刺激の可能性の低減を可能とすると記載されている。
【0009】
以下の特許および特許出願(これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる)に注目してもよい。
Trautmanらに対する米国特許第6,855,372号
Flockらの米国特許出願公開第2004/0059282号
Horstmannに対する米国特許第5,685,837号
Horstmannらに対する米国特許第5,230,898号
Crispらに対する米国特許第6,522,918号
Murdockに対する米国特許第6,374,136号
Flockらに対する米国特許第6,251,100号
Marchittoらの米国特許出願公開第2003/0204163号
Leeらに対する米国特許第5,141,750号
Suzukiらに対する米国特許第6,248,349号
TsujiらのPCT公開WO 05/088299
【0010】
以下の論文(これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる)に注目してもよい。
Patel ら,"Fast Dissolving Drug Delivery Systems: An Update", Pharmainfo.net(2006年7月)
Holman JP, "Heat Transfer", McGraw-Hill Inc., USA(1976年)
【発明の概要】
【0011】
発明の要旨
本発明のいくつかの実施形態では、薬物は、液体の形態にてパッチに塗布(applied、適用)される。次いでパッチは、面上に実質的に平坦に置かれ、法線流(normal flow、垂直な流れ)で乾燥させること、即ちガスの流れをパッチに向かわせること、によって乾燥させられ、その流れの中心線は、前記面の法線から20度未満、例えば、10度未満の角度にある。
【0012】
いくつかの実施形態では、所定量のガスに対して、法線流で乾燥させることによって、ガスの流れの中心線が前記面の法線から20度より大きい角度となっている流れをパッチに向かわせること(即ち、非法線流での乾燥(non-normal flow drying))によってパッチを乾燥させる場合よりも、パッチがより早く乾燥することが可能となる。(とは言え、適用によっては、法線流での乾燥は、非法線流での乾燥によってパッチを乾燥させるのと、同等またはそれより遅い早さであることもあり得る。)典型的には、法線流での乾燥を使用するパッチの乾燥は、非法線流の乾燥よりも、使用されるガスが少ない。(とは言え、適用によっては、同等またはそれより多くの量のガスが法線流の乾燥のために使用されることがあり得る。)いくつかの実施形態では、法線流の乾燥により、パッチが前記面上におけるその位置からずれる可能性が低減される。
【0013】
典型的には、空気および/または不活性ガスが、開口部を通してパッチに向かわせられる。いくつかの実施形態では、前記開口部は、ノズルを規定する形状であり、ガスのジェットがパッチに向かわせられる。
【0014】
いくつかの適用では、パッチに向かわせられるガスの湿度が制御される。パッチを乾燥させるガスの湿度は、使用者の湿った皮膚にパッチが置かれたときの薬物の最終的な溶出特性に影響し得る。代替的または付加的には、ガスの湿度は、異なる理由(例えば、より低い湿度が、乾燥の速度を高める)のために制御される。
【0015】
いくつかの実施形態では、パッチのアレイが前記面上に置かれ、かつ、ジェットのアレイが、ガスを前記パッチのアレイへと向かわせる。いくつかの適用では、パッチを乾燥させる間、パッチのアレイは静止しており、かつ、チャンバー内に配置されている。ガスのジェットは、前記アレイの各それぞれのパッチへと向けられている。代替的には、パッチのアレイは、乾燥する間にチャンバーを通るように移動させられる。例えば、前記面はコンベヤーベルトを有してもよい。パッチはコンベヤーベルト上に置かれ、乾燥する間にパッチが乾燥チャンバーを通るように、コンベヤーベルトが該パッチを移動させる。いくつかの実施形態では、前記面が、乾燥させる間に移動し、かつ、ジェットが、パッチが各々のジェットの下に配置されているときにのみ、ガスをパッチに向かわせるように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記開口部がノズルを定めていないか、または、前記開口部がノズルを定めているがそのノズルが個々のパッチへとジェットを向かわせない。これらの実施形態によれば、ガスは、パッチの方向に向けられはするが、個々のパッチへは向かわない。例えば、表面にある穴を通して高圧の空気を送ることによって、ガスをパッチに向かわせることができる。
【0017】
よって、本発明の一つの実施形態に従った装置が提供され、該装置は、
1つ以上の薬物パッチを有し、
面を有し、該面は、前記1つ以上の薬物パッチを保持するように構成され、
ハウジングを有し、該ハウジングは、1つ以上のガス流入用開口部を定める形状となっており、該ガス流入用開口部は、ガスの流れをパッチに向かわせることによって、該パッチの乾燥を促進するように構成され、前記流れの中心線が、前記面の法線から20度未満の角度にある。
【0018】
一つの実施形態では、前記ガスが、室内空気を含み、かつ、前記1つ以上のガス流入用開口部が、該空気をパッチに向かわせるように構成される。
【0019】
一つの実施形態では、前記ガスが、不活性ガスから実質的に構成され、かつ、前記1つ以上のガス流入用開口部が、該不活性ガスをパッチに向かわせるように構成される。
【0020】
一つの実施形態では、前記ハウジングが、前記1つ以上の開口部を1つ以上のノズルとして定める形状であり、該1つ以上のノズルは、ガスのジェットをパッチに向かわせることによってパッチを乾燥させるように構成され、各々のガスのジェットの中心線は、前記法線から20度未満の角度にある。
【0021】
一つの実施形態では、当該装置は、圧力源を有し、該圧力源は、前記開口部を通して、3m/sから15m/sの速度でガスを送り出すように構成される。
【0022】
一つの実施形態では、前記圧力源が、前記開口部を通して、6m/sから12m/sの速度でガスを送り出すように構成される。
【0023】
一つの実施形態では、前記開口部が、0.5mmから7mmの直径を有する。
【0024】
一つの実施形態では、前記開口部が、2mmから5mmの直径を有する。
【0025】
一つの実施形態では、前記開口部が、パッチから0.5cmから7cmの距離から、パッチにガスを向かわせるように構成される。
【0026】
一つの実施形態では、前記開口部が、パッチから2cmから5cmの距離から、パッチにガスを向かわせるように構成される。
【0027】
一つの実施形態では、当該装置は、湿度コントローラーを有し、該湿度コントローラーは、ガスの湿度を制御するように構成される。
【0028】
一つの実施形態では、前記1つ以上の薬物パッチを乾燥させる間に、ガスの湿度を2%から20%の相対湿度に維持するように、前記湿度コントローラーが構成される。
【0029】
一つの実施形態では、前記1つ以上の薬物パッチを乾燥させる間に、ガスの湿度を5%から10%の相対湿度に維持するように、前記湿度コントローラーが構成される。
【0030】
一つの実施形態では、当該装置は、湿度検出器を有し、該湿度検出器は、ガスの湿度を検出するように構成される。
【0031】
一つの実施形態では、当該装置は、制御ユニットを有し、該制御ユニットは、検出された湿度に応じて、ガスの湿度を調節するように構成される。
【0032】
一つの実施形態では、前記1つ以上の薬物パッチが、薬物パッチのアレイを有し、前記面は、該パッチのアレイを保持するように構成され、かつ、前記ガス流入用開口部は、該パッチのアレイを乾燥させるように構成される。
【0033】
一つの実施形態では、パッチを乾燥させる間に、前記面が静止するように構成される。
【0034】
一つの実施形態では、パッチを乾燥させる間に、前記面が前記パッチのアレイを移動させるように構成される。
【0035】
一つの実施形態では、前記ガス流入用開口部が、ノズルのアレイを定めるように配置され、該ノズルのアレイは、各々のガスのジェットを各パッチに向かわせることによってパッチを乾燥させるように構成され、各々のジェットの中心線は、前記面への法線から20度未満の角度にある。
【0036】
一つの実施形態では、前記パッチのアレイ中のパッチの個数が、前記ノズルのアレイ中のノズルの個数と等しい個数である。
【0037】
一つの実施形態では、各ノズルが、パッチの各々1つにガスを向かわせるように配置される。
【0038】
一つの実施形態では、前記面が、前記パッチのアレイを断続的に移動させるように構成され、かつ、前記ノズルが、アレイの断続的移動の合間の期間中に、ガスを向かわせるように構成される。
【0039】
さらに、本発明の一つの実施形態に従って、薬物パッチの製造方法が提供され、該方法は、
液体の形態になっている薬物をパッチに塗布することを有し、
前記パッチを面の上に置くことを有し、
前記パッチにガスの流れを向かわせることによって該パッチを乾燥させることを有し、該流れの中心線が、前記面の法線から20度未満の角度にある。
【0040】
一つの実施形態では、当該方法は、前記ガスの湿度を制御することをさらに有する。
【0041】
一つの実施形態では、前記ガスは室内空気を含み、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該空気をパッチに向かわせることを有し、かつ、前記ガスの湿度を制御することが、該空気の湿度を制御することを有する。
【0042】
一つの実施形態では、前記ガスは、不活性ガスから実質的に構成され、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該不活性ガスをパッチに向かわせることを有し、かつ、前記ガスの湿度を制御することが、該不活性ガスの湿度を制御することを有する。
【0043】
本発明の実施形態についての以下の詳細な説明から、図面と共に解釈されて、本発明はより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態に従った、乾燥させている薬物パッチのアレイの模式図である。
【図2】図2は、本発明の一つの実施形態に従った、ジェットによって乾燥させている薬物パッチの、移動するアレイの模式図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に従った、乾燥させている薬物パッチの、移動するアレイの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態の詳細な説明
ここで図1を参照すると、該図は、本発明の一つの実施形態に従って乾燥させられている薬物パッチ20のアレイの模式図である。該薬物パッチは、面22の上に並べられ、該面は、乾燥チャンバー(drying chamber)24の内部に配置され、かつ、乾燥させる間、静止したままである。いくつかの実施形態では、乾燥チャンバーの開口部は、乾燥させる間、カバー26で覆われる。圧力源28は、開口部30のアレイからガスを送り出し(pump out)、該開口部は、ガスの流れをパッチの方へと向かわせるように構成され、その流れの中心線は、前記面の法線から20度未満の角度にある。(図1に示す角度は、法線から実質的に0度である。)典型的には、該ガスは、空気および/または不活性ガスを含む。いくつかの実施形態では、各開口部は、図1に示すように、各々のパッチにガスを向かわせる。
【0046】
いくつかの実施形態では、パッチを乾燥させるガスの湿度(humidity)が制御される。典型的には、ガスは、図1に示すように、湿度コントローラー36を通過する。典型的には、該湿度コントローラーは、ガスの湿度を、2%から20%の相対湿度に維持するように構成される。いくつかの実施形態では、該コントローラーは、該湿度を、5%から10%の相対湿度に維持する。いくつかの適用のためには、湿度検出器32が、ガスの湿度を検出するか、あるいは、パッチが乾燥させられる環境(例えば、パッチが乾燥させられる部屋または乾燥チャンバー)の湿度を検出する。制御ユニット34は、湿度コントローラーによって、検出された湿度に応じて、ガスの湿度を調節する。
【0047】
各々の相対的な湿度レベルを持った制御された環境において乾燥させられた、パッチの溶出特性を評価した実験について、以下に説明する。より低い相対湿度の条件におけるパッチの乾燥は、顕著に優れた溶出特性を有するパッチをもたらすことを、本発明者らは観察した。本発明者らは引き続いて実験を行い、パッチを乾燥させるために使用されるガスの湿度を制御した。5%から10%の相対湿度を有するガスで乾燥させられたパッチは、良好な溶出特性を有することが観察された。
【0048】
ここで図2を参照すると、該図は、本発明の一つの実施形態に従って乾燥させられている薬物パッチ20のアレイの模式図である。パッチの1列だけを示しているが、いくつかの実施形態では、該アレイは複数の列を有する。パッチは、面22上にアレイになるように並べられ、乾燥チャンバー内を移動するように構成される。例えば、面22は、コンベヤーベルトの表面を有し得る。乾燥させることに先立って、パッチは面上にアレイになるように並べられ、次いで、該面が乾燥チャンバー内を移動する。該面の移動方向を矢印50で示している。
【0049】
いくつかの実施形態では、開口部は、図2に示すように、ノズルを規定するような形状である。典型的には、それらノズルは、空気圧式の調節可能バルブ(pneumatic adjustable valve)であり、例えば、Pisco Pneumatic Equipments LTDによって製造されている(モデル no. JNC4-01)。それらノズルは、パッチを乾燥させる間に、各々のパッチに向けてガスのジェット(jet、噴流)を方向付けるように構成される。いくつかの実施形態では、面22は、パッチを乾燥させる間は、静止したままである。代替的には、面22は、乾燥させる間にチャンバーを通過するように移動し、かつ、ジェットは、各パッチが各々のジェットと一線上にそろったときにのみ、パッチにガスを向かわせるように構成される。パッチは、乾燥後に、矢印50の方向に、乾燥チャンバーから出て行く。
【0050】
ここで図3を参照すると、該図は、本発明の一つの実施形態に従って乾燥させられている薬物パッチ20のアレイの模式図である。該パッチは、面22の上に並べられ、該面は、パッチを乾燥させる間に、矢印50の方向へ移動する。パッチの1列だけを示しているが、いくつかの実施形態では、該アレイは複数の列を有する。乾燥チャンバー24の内側の上面は、開口部(openings、複数の開口)30を規定する形状になっており、それら開口部は、乾燥チャンバー内におよびパッチに対して各々のガスの流れを向かわせ、各々のガス流の中心線は、該面の法線から20度未満の角度にある。典型的には、ガスは、3m/sから15m/s(例えば、6m/sから12m/s)の速度でパッチに向かわせられる。開口部は、パッチの方向にガスを向かわせるが、個々のパッチに向かわせるのではない。その実施形態では、隣り合ったノズルから出てくるガスの流れが重なり合っている。典型的には、ジェットの各々の中心線52からの広がりアルファは、10度から30度(例えば、15度から25度)である。開口部30は、典型的には、0.5mmから7mm(例えば、2mmから5mm)の直径を有する。開口部からパッチまでの距離D1は、典型的には、0.5cmから7cm(例えば、2cmから5cm)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、パッチは、面22の上に並べられ、かつ、面22は、連続式の組立てライン状の様式で乾燥チャンバーを通るように移動する。制御ユニット34は、該面の移動、および、開口部を通したガスの方向付けを制御するように構成される。いくつかの適用のためには、制御ユニットは、湿度検出器32によって検出された湿度に応じて、面の移動またはガスの方向付けを制御するように構成される。
【0052】
最終的な溶出特性に対する、薬物パッチが乾燥させられる環境の湿度の影響を調べるための実験を行った。10mg/mLのhPTH溶液を各パッチに塗布することにより、50マイクログラムのhPTH(1−34)(ヒト副甲状腺ホルモン)がパッチにプリントされた。パッチを、25Cで3時間、2つの相対的な湿度レベルの下で気候(climatic)チャンバー内で乾燥させた:
1. 5個のパッチを、84%の相対湿度に制御された条件において乾燥させた。
2. 5個のパッチを、45%の相対湿度に制御された条件において乾燥させた。
【0053】
気候チャンバー内での3時間の乾燥後に、アルゴンガスで満たされかつシリカゲル小袋が収容された袋にパッチを詰め、4Cに保持された部屋に移した。
【0054】
5個のパッチの第3のグループを、約1.5%の相対湿度の条件下、25Cで乾燥させた。この条件は、パッチの塗り付けの直後に、シリカゲルを有する密封ラミネートされた袋内にパッチを入れることによって作り出した。
【0055】
パッチの溶出特性を、3日後および7日後に、トリフルオロ酢酸/高速液体クロマトグラフィー(TFA−HPLC)分析を用いて分析した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
この結果は、より低い相対湿度の条件においてパッチを乾燥させることで、改善された溶出特性を有するパッチがもたらされることを示している。
【0058】
さらなる実験を行い、90マイクログラムのhPTH(1−34)を24個のパッチの一群に塗り付けた。30%RH/25Cから45%RH/25Cの制御された湿度を有する環境において、当該分野で公知の乾燥技術を用いてパッチを乾燥させた。パッチの乾燥時間を測定したところ、パッチは、30分から50分の乾燥時間であった。5個のパッチの溶出特性を、4Cの部屋内で1週間、シリカゲルの小袋を含有する袋中でパッチを保管した後に分析した。パッチは、最初に乾燥させられて各々のパッチ上にあるhPTH(1−34)の量の、平均85.1%±3.5%を放出した。前記パッチの一群の残りのパッチのうちの5つについて溶出特性を、当該残りのパッチを4Cの部屋内で1ヶ月間、シリカゲルの小袋を含有する袋中に保管した後で分析した。パッチは、最初に乾燥させられて各々のパッチ上にあったhPTH(1−34)の量の、平均83.0%±4.1%の量を放出した。
【0059】
なおさらなる実験において、本発明者らは、上述したような法線流の乾燥技術を用いて乾燥させた50個のパッチを分析した。分析したパッチは、hPTH(1−34)のパッチであり、乾燥させられてパッチ上にあった薬物を、50マイクログラムまたは80マイクログラム有している。該パッチは、5%RH/25Cから10%RH/25Cの相対湿度を有する乾燥空気で乾燥させたものである。これらの条件下でのパッチの平均乾燥時間は、4分未満であった。全てのパッチは、最初に乾燥させられて各々のパッチ上にあったhPTH(1−34)の量の、80%から90%を放出した。加えて、該パッチは、他の実験に関して上述した代替的な方法によって乾燥されたパッチと同様、5%未満の分解産物を放出した。これらの結果は、法線流の乾燥を使用し、かつ乾燥空気を使用するパッチの乾燥により、好適な溶出特性を有するパッチが、比較的短時間で生成されることを本発明者らに示した。
【0060】
本発明の一つの実施形態では、1列のパッチが、薬物パッチ製造ラインの部分として連続的に稼動するコンベヤーベルトに乗って、乾燥チャンバーを通過する。5%RH/25Cから10%RH/25Cの湿度を有する乾燥空気が、法線流にてコンベヤーベルトに向けられる。これらの条件下で、各パッチは約4分間乾燥させられる(実際の時間は多くの要因に依存する)。一つの実施形態では、コンベヤーベルトは1m/分の速度で移動し、かつ、コンベヤーベルトの長さは4メートルである。直径が2cmである円形パッチまたは一辺が2cmである正方形パッチが、コンベヤーベルトの1メートル毎に50個のパッチが並ぶように、コンベヤーベルト上に並べられる。1分毎に、コンベヤーベルト上で乾燥させられた50個の乾燥パッチが、製造ラインの次の段階に移動する。いくつかの実施形態では、1列を超えるパッチが、コンベヤーベルト上に並べられ、例えば、4列のパッチをコンベヤーベルト上に隣接して並べてもよく、それにより、1分あたり200個のパッチが乾燥させられる。
【0061】
本発明は、上記に特に示して説明したものに限定されないことが当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、上述した様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両方、ならびに先行技術にはなく、上記記載を読んだ当業者が想起するであろうそれらの変形および改良が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、当該装置は、
1つ以上の薬物パッチを有し、
面を有し、該面は、前記1つ以上の薬物パッチを保持するように構成され、
ハウジングを有し、該ハウジングは、1つ以上のガス流入用開口部を定める形状となっており、該ガス流入用開口部は、ガスの流れをパッチに向かわせることによって、該パッチの乾燥を促進するように構成され、前記流れの中心線が、前記面の法線から20度未満の角度にある、
前記装置。
【請求項2】
前記ガスが、室内空気を含み、かつ、前記1つ以上のガス流入用開口部が、該空気をパッチに向かわせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガスが、不活性ガスから実質的に構成され、かつ、前記1つ以上のガス流入用開口部が、該不活性ガスをパッチに向かわせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記1つ以上の開口部を1つ以上のノズルとして定める形状となっており、該1つ以上のノズルは、ガスのジェットをパッチに向かわせることによって該パッチを乾燥させるように構成され、各々のガスのジェットの中心線は、前記法線から20度未満の角度にある、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
圧力源を有し、該圧力源は、前記開口部を通して、3m/sから15m/sの速度でガスを送り出すように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記圧力源が、前記開口部を通して、6m/sから12m/sの速度でガスを送り出すように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記開口部が、0.5mmから7mmの直径を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記開口部が、2mmから5mmの直径を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記開口部が、パッチから0.5cmから7cmの距離から、パッチにガスを向かわせるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記開口部が、パッチから2cmから5cmの距離から、パッチにガスを向かわせるように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
湿度コントローラーを有し、該湿度コントローラーは、ガスの湿度を制御するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記1つ以上の薬物パッチを乾燥させる間に、ガスの湿度を2%から20%の相対湿度に維持するように、前記湿度コントローラーが構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上の薬物パッチを乾燥させる間に、ガスの湿度を5%から10%の相対湿度に維持するように、前記湿度コントローラーが構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
湿度検出器を有し、該湿度検出器は、ガスの湿度を検出するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
制御ユニットを有し、該制御ユニットは、検出された湿度に応じて、ガスの湿度を調節するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記1つ以上の薬物パッチが、薬物パッチのアレイを有し、前記面は、該パッチのアレイを保持するように構成され、かつ、前記ガス流入用開口部は、該パッチのアレイを乾燥させるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
パッチを乾燥させる間に、前記面が静止するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
パッチを乾燥させる間に、前記面が、該パッチのアレイを移動させるように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記ガス流入用開口部が、ノズルのアレイを定めるように配置され、該ノズルのアレイは、各々のガスのジェットを各パッチに向かわせることによってパッチを乾燥させるように構成され、各々のジェットの中心線は、前記面への法線から20度未満の角度にある、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記パッチのアレイ中のパッチの個数が、前記ノズルのアレイ中のノズルの個数と等しい個数である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
各ノズルが、パッチの各々1つにガスを向かわせるように配置されている、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記面が、前記パッチのアレイを断続的に移動させるように構成され、かつ、前記ノズルが、アレイの断続的な移動の合間の期間中に、ガスを向かわせるように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
薬物パッチの製造方法であって、当該方法は、
液体の形態になっている薬物をパッチに塗布することを有し、
前記パッチを面の上に置くことを有し、
前記パッチにガスの流れを向かわせることによって該パッチを乾燥させることを有し、該流れの中心線が、前記面の法線から20度未満の角度にある、
前記方法。
【請求項24】
前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該パッチにガスのジェットを向かわせることを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ガスが空気を含み、かつ、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該空気を該パッチに向かわせることを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ガスが不活性ガスを含み、かつ、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該不活性ガスを該パッチに向かわせることを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ガスの流れを向かわせることが、0.5mmから7mmの直径を有する開口部を通して該ガスの流れを向かわせることを有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記開口部を通してガスの流れを向かわせることが、2mmから5mmの直径を有する開口部を通してガスの流れを向かわせることを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ガスの流れを向かわせることが、パッチから0.5cmから7cmの距離にある開口部を通して、ガスの流れを向かわせることを有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記開口部を通してガスの流れを向かわせることが、パッチから2cmから5cmの距離にある開口部を通してガスの流れを向かわせることを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記パッチにガスの流れを向かわせることが、3m/sから15m/sの速度でパッチにガスの流れを向かわせることを有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記パッチにガスの流を向かわせることは、5m/sから12m/sの速度で該パッチにガスの流れを向かわせることを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ガスの湿度を制御することをさらに有する、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ガスが室内空気を含み、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該パッチに該空気を向かわせることを有し、かつ、前記ガスの湿度を制御することが、該空気の湿度を制御することを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ガスが、不活性ガスから実質的に構成され、前記パッチにガスの流れを向かわせることは、該パッチに該不活性ガスを向かわせることを有し、かつ、前記ガスの湿度を制御することが、該不活性ガスの湿度を制御することを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ガスの湿度を制御することが、2%から20%の相対湿度のレベルに該ガスの湿度を維持することを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
環境の湿度を制御することが、5%から10%の相対湿度のレベルにガスの湿度を維持することを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ガスの湿度を検出することを有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
検出された湿度に応じて、ガスの湿度を調節することを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記パッチが、パッチのアレイを有し、前記パッチを面の上に置くことが、該パッチのアレイを前記面の上に置くことを有し、かつ、前記パッチにガスの流れを向かわせることが、該パッチのアレイにガスの流れを向かわせることを有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記パッチのアレイを乾燥させることが、該アレイが静止している間に、該アレイを乾燥させることを有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記アレイにガスを向かわせている間に、前記パッチのアレイを移動させることを有する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記アレイを断続的に移動させることを有し、前記ガスの流れを向かわせることが、アレイの断続的な移動の合間の期間中に、ガスの流れを向かわせることを有する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記パッチのアレイにガスの流れを向かわせることが、前記アレイの各々パッチのそれぞれにガスのジェットを向かわせることを有する、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−500259(P2011−500259A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530631(P2010−530631)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001427
【国際公開番号】WO2009/057112
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】