説明

埋め立てゴミの減容化方法

【課題】 ゴミの性状にあった処理を行え、かつ環境を汚染する度合いが小さい埋め立てゴミの減容化方法を提供する。
【解決手段】 チェーンカッタ2を用いて目標深度まで埋め立てゴミを切削して切削孔10を形成し切削孔において埋め立てゴミの層状形態を断ち切り切削ゴミとなす切削ステップと、切削ステップの結果得られた切削ゴミを切削孔内に埋め戻す埋め戻しステップと、切削孔内のゴミを転圧する転圧ステップとを含む。埋め立てゴミの層構造が破壊され、高い減容化率が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ(一般廃棄物、産業廃棄物等)の最終処分場における埋め立てゴミの減容化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いうまでもなく、都市部、農村部の区別なく、ゴミ問題は、深刻な状況に至っている。市民の意識も向上し、ゴミの分別収集が進んでいるが、いかんせん、ゴミが埋め立てられる既設の最終処分場は、その残余年数がないか、あるいは残余年数がわずかになってきている。
【0003】
新規の最終処分場を建設することも、環境悪化を心配する地域住民の反対にあって非常に困難である。
【0004】
ゴミ問題の対策として、ゴミの総量規制やリサイクル運動の徹底等の点も重要であるが、既設の最終処分場を延命化する点もきわめて重要である。
【0005】
既設の最終処分場を延命化するためには、従来から次のような方法がとられている(例えば、特許文献1参照)。
(1)埋め立てゴミをパワーショベル等で地中から地面に掘り起こす。
(2)掘り起こした埋め立てゴミをリサイクルできるものとできないものに分別する。
(3)リサイクルできないものを地上で破砕し埋め戻す。
【0006】
即ち、埋め立てゴミは、全て地上で処理される。埋め立てゴミは、有機分などを含み、地中の微生物がそれを分解しているのが普通であり、また、埋め立てゴミ内にはウジ、ゴキブリ等の害虫が増殖していることが多い、このようにすると、周囲に悪臭、ガス、害虫が散乱し、周囲環境を汚染するおそれが大である。また、処理できる埋め立てゴミの深さは、パワーショベル等の能力により限定され、減容化率(処理により削減された埋め立てゴミの体積を、処理前の埋め立てゴミの体積で除した百分率)が低い。
【0007】
以上の点を考慮し、非特許文献1は、スクリューオーガ(円柱状の中心軸の周りにスパイラル状の羽根を備える)を改造したものを用いて、回転させながら地中に圧入して圧入孔を形成し、圧入孔内の埋め立てゴミを締め固める技術を開示する。
【0008】
しかしながら、この工法は、スクリューオーガにより、圧入孔内の埋め立てゴミを下方ないし圧入孔の周囲の壁に押しつけているだけである。この工法は、後述するように、ゴミの性状にあったものとは言い難い。このため、圧入孔毎の減容化率を上げるために、平面視において、圧入孔同士をある程度間隔を開けて配置している。言い換えると、圧入孔間に、未処理の箇所が形成されるため、全体としての減容化率は、20〜25%程度にとどまる。
【特許文献1】特開2001−232325号公報
【非特許文献1】「RP(リフューズプレス)工法による最終処分場の延命化実証試験」、樋口壮太郎ら
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、ゴミの性状にあった処理を行え、かつ環境を汚染する度合いが小さい埋め立てゴミの減容化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項2記載の埋め立てゴミの減容化方法は、チェーンカッタを用いて目標深度まで埋め立てゴミを切削して切削孔を形成し切削孔において埋め立てゴミの層状形態を断ち切り切削ゴミとなす切削ステップと、切削孔内のゴミを転圧する転圧ステップとを含む。
【0011】
ここで、埋め立てゴミは、概ね、塊状ゴミ(不定形で空隙に富む)、焼却灰(土砂性状に近い)及び繊維状ゴミ(電線被覆材、木屑、布類等)の集合体から形成される。塊状ゴミは地中においてランダムかつ散点状に分布し、その間隙に繊維状ゴミや焼却灰が分布する。そして、塊状ゴミや繊維状ゴミは、空隙を多数有する。埋め立てゴミの機械的性質を、マクロ的に見ると、塊状ゴミや繊維状ゴミの空隙内の空気あるいはその他のガスがバネとして作用する比較的軽量な弾性体であって、複雑な層構造をなすと考えることができる。
【0012】
したがって、埋め立てゴミに単に圧力をかけると、埋め立てゴミは収縮して体積が一時的に小さくなるが、その後、埋め立てゴミは、その弾性体としての性質により復元力を発揮し、その体積は圧力をかける前のものに近づく。
【0013】
さて、上記構成において、チェーンカッタを用いて目標深度まで埋め立てゴミを切削して切削孔を形成し切削孔において埋め立てゴミの層状形態を断ち切り切削ゴミとなすことにより、切削孔の境界付近において、チェーンカッタは、塊状ゴミを破砕して細かな断片になし、延伸性がある繊維状ゴミをずたずたに切り裂く。その結果、上記層構造が破壊される。また、ゴミの密度が高まり、ゴミは従前よりも均質になる。
【0014】
これにより、塊状ゴミや繊維状ゴミに含まれていた空隙内の空気あるいはその他のガスが、自由に移動可能となり、飛散する。その結果、切削孔内の埋め立てゴミはマクロ視的な弾性を失い、復元力をほとんど発揮しなくなる。しかも、切削孔内の埋め立てゴミは、切削孔の周囲の埋め立てゴミから切り離され、切削孔外の埋め立てゴミによる機械的作用をほとんど受けなくなる。言い換えれば、次に転圧がかかると、切削孔内の埋め立てゴミは、きわめて簡単に圧縮される状態となる。
【0015】
したがって、埋め戻された切削ゴミを転圧する転圧ステップにおいて、良好な減容化率を得ることができる。
【0016】
しかも、チェーンカッタを用いて上記層構造を破壊しているため、現在の切削孔を処理する反作用として、現在の切削孔の周囲が盛り上がる(非特許文献1は、この現象のため、圧入孔同士をある程度間隔を開けて配置しているのではないかと考えられる)ようなことはなく、次回の処理において、現在の切削孔のすぐ隣りあるいは、現在の切削孔にオーバーラップして、新たな切削孔を形成できる。このため、平面視における切削孔の密度を高め、減容化率をさらに向上できる。
【0017】
また、チェーンカッタを用いているため、目標深度を深く設定することができ、一層減容化率を向上できる。
【0018】
請求項3記載の埋め立てゴミの減容化方法では、切削ステップの結果得られた切削ゴミを切削孔内に埋め戻す埋め戻しステップをさらに含む。
【0019】
この構成により、切削ゴミを切削孔内に戻して、周囲環境を汚染しないようにすることができる。しかも、切削ゴミは、既にずたずたに引き裂かれたものであるから、転圧に対し圧縮されやすい状態にあり、良好な減容化率が得られる。
【0020】
請求項4記載の埋め立てゴミの減容化方法では、埋め戻しステップと転圧ステップとは、並行して実施される。
【0021】
この構成により、処理時間を短縮できる。
【0022】
請求項5記載の埋め立てゴミの減容化方法では、埋め戻しステップと転圧ステップとは、チェーンカッタを用いて実施される。
【0023】
この構成により、減容化の処理に要する部品点数を少なくでき、設備費用を削減できる。また、処理装置の交換に要する時間を短縮できる。
【0024】
請求項6記載の埋め立てゴミの減容化方法では、埋め戻しステップと転圧ステップとは、別個に実施される。
【0025】
この構成により、埋め戻しは埋め戻しに適した装置を用いて実施でき、転圧は転圧に適した装置を用いて実施できる。
【0026】
請求項7記載の埋め立てゴミの減容化方法では、転圧ステップは、チェーンカッタとは異なる転圧装置を用いて実施される。
【0027】
この構成により、チェーンカッタによるよりも高い減容化率を得ることができる。
【0028】
請求項8記載の埋め立てゴミの減容化方法では、転圧装置は、パワーショベル、スクリュー式圧密装置、バイブレータ式圧密装置のいずれかである。
【0029】
この構成により、転圧に適した装置により、高い減容化率を得ることができる。
【0030】
請求項9記載の埋め立てゴミの減容化方法では、切削ステップと転圧ステップとが、切削孔に対し繰り返し実施される。
【0031】
この構成により、繰り返し減容化が実施されるため、一層減容化率を向上できる。
【0032】
請求項10記載の埋め立てゴミの減容化方法では、切削ステップと埋め戻しステップとの間に、切削ゴミのうちリサイクルする部分とリサイクルしない部分とに分別する分別ステップを含み、埋め戻しステップでは、リサイクルする部分を切削孔内に埋め戻す対象から除外する。
【0033】
この構成により、リサイクルできる部分をリサイクル(サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル等)することにより、資源を有効活用できるだけでなく、埋め戻される体積を減らして、減容化率をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、埋め立てゴミの層構造を破壊し、高い減容化率を得ることができ、切削ゴミが地上に広範囲にばらまかれることはないから、環境を汚染する度合いが小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における埋め立てゴミの減容化方法の切削工程説明図であり、図2は、同転圧工程説明図である。
【0036】
まず、図1(a)に示すように、地面1に対しチェーンカッタ2の長手方向をほぼ垂直になし、チェーンカッタ2のチェーンに多数設けられたビット3で埋め立てゴミの切削を開始する。このとき、ビット3を保持するチェーンの回転方向は正(矢印N1)であり、チェーンカッタ2の進行方向は下向き(矢印N2)である。なお、チェーンカッタ2の昇降は、クレーン(図示せず)等チェーンカッタ2を支持する装置による。チェーンカッタは、任意のもので差し支えなく、さらに、円筒形の切削孔を形成するタイプのカッタを用いても良い。
【0037】
そして、目標深度H1まで埋め立てゴミの切削を継続する。このとき、地面1の上には、切削ゴミ4が排出され、切削の結果、切削孔10が形成される。この切削により、埋め立てゴミの層状形態が断ち切られる。目標深度H1は、例えば5m〜20mのように深く設定できる。
【0038】
地面1上において、切削ゴミ4は、リサイクルする部分とリサイクルしない部分とに分別され、リサイクルする部分は、切削孔10内に埋め戻さず、リサイクル施設へ搬出される。
【0039】
次に、図1(b)に示すように、ビット3を保持するチェーンの回転方向を逆(矢印N3)としチェーンカッタ2を上昇させる(矢印N4)。このとき、切削ゴミ4をバックホウ5を用いて切削孔10内に押し込み、切削ゴミ4を切削孔10内に埋め戻す。また、チェーンの回転を止め、チェーンカッタ2を上下させながら切削孔10内に埋め戻した切削ゴミ4を転圧する。このようにすれば、埋め戻しと転圧とが、チェーンカッタを用いて並行して実施されることになる。
【0040】
そして、図1(c)示すように、以上の処理が完了したら、チェーンカッタ2を引き上げて切削孔10を開放する。なお、次の転圧工程を実施する場合には、チェーンカッタ2による切削ゴミ11の転圧は、省略しても良い。また、次の切削は、現在の切削孔10に接して、あるいはオーバーラップして実施することができる。
【0041】
次の転圧工程を実施しない場合には、図1(c)において、減容化率は、(H2/H1)*100(%)となる。また、後述するように、図1に示した切削及び転圧は、繰り返し実施することが望ましい。こうすると、減容化率をさらに向上できる。
【0042】
次に、図2を参照しながら、切削孔10内のゴミを転圧する転圧工程について説明する。本形態では、図2に示すように、転圧を、図1に示したチェーンカッタとは異なる転圧装置を用いて実施する。転圧装置は、パワーショベル、スクリュー式圧密装置、バイブレータ式圧密装置のいずれでも良いが、本形態では、スクリュー式圧密装置を用いる。
【0043】
本形態のスクリュー式圧密装置は、図2(a)に示すように、駆動部17により駆動され正逆回転する円筒状の回転軸15を備え、回転軸15の先端部には、螺旋羽根16が設けられている。
【0044】
そして、駆動部17により、螺旋羽根16を正転させながら下向き(矢印N5方向)に下降させる。その結果、螺旋羽根16は切削ゴミ11内を下向きに進行する。
【0045】
図2(b)に示すように、螺旋羽根16が目標深度H1まで達したら、螺旋羽根16の回転方向を逆にし螺旋羽根16を上昇させる。その結果、切削ゴミ11は、螺旋羽根16により転圧され深さ方向に圧縮される。
【0046】
図2(c)に示すように、転圧が完了したとき、切削ゴミ11の深さをH3とすると、減容化率は、(H3/H1)*100(%)となる。
【0047】
本発明者が、秘密裏に実施した実験により、次のような結果を得た。
【0048】
(実験1)福岡県大牟田市所有の一般廃棄物最終処分場(福岡県大牟田市大浦町、大牟田市第2大浦埋立地内)において、埋め立て終了後20年程度経過した埋め立てゴミを、チェーンカッタを使用し減容化試験した。但し、切削ゴミの分別やリサイクルは行わず、チェーンカッタのみを用いて、切削ゴミをそのまま転圧し、埋め戻しした。その結果、平均約40%の減容化率を得た。
【0049】
詳細は、つぎのとおり。
(1)未破砕ゴミの性状・形状調査
バックホウにて覆土を掘り、深度約1mのゴミを調査した。ゴミの種類としては、木材、合成樹脂(容器、シート、袋等)、ガラス、ゴム類(電線被覆材)、金属(缶、線等)及び焼却灰などであった。形状は、元の形状を失っているものや元の形状のままのものなど様々であった。サイズは、砂状の小径のものから直径30cm以上の木材などこれも様々であった。
【0050】
さらに、バックホウにて覆土を掘り、深度約2mのゴミを調査した。深度約1mのゴミとほとんど変わらず、大きな石や焼却灰がやや多い点が確認された。
(2)第1、2回試験
目標深度を5mとし、チェーンカッタを使用し減容化試験した。
【0051】
減容化率は、次のとおり。
【0052】
切削した体積は
1(m)*0.75(m)*5(m)+0.5(m)*0.5(m)*3.14*0.75(m)/2=4.04(m^3)
減容化した体積は
0.95(m)*1.4(m)*1.4(m)=1.86(m^3)
減容化率は
(1.86/4.04)*100=46.04(%)
(3)考察
減容化率は、転圧の方法により、大きく左右されるものと考えられる。より大きな減容化率を得るには、撤きだし厚を小さくする、一度の転圧後、再度2m程度チェーンカッタで切削し、転圧を繰り返すとよい。最終的に、50〜60%程度の減容化率を得ることが可能である。
【0053】
(実験2)
実験1と同様にして、非特許文献1記載の技術(比較例)と本発明(本法)との比較実験を行った。結果は、次のとおり。
【0054】
本法 比較例
目標深度 5m 10m
減容化率 30〜35% 20〜25%
工事費(円) 15000-20000 25000-30000
ここで、目標深度が深いほど、高い減容化率を得やすく有利である。本法は、目標深度の点で、比較例よりも不利な条件で実施したが、比較例よりも優れた減容化率が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る埋め立てゴミの減容化方法は、例えば、埋め立てゴミの最終処分場等において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本発明の一実施の形態における埋め立てゴミの減容化方法の切削工程説明図 (b)同切削工程説明図 (c)同切削工程説明図
【図2】(a)同転圧工程説明図 (b)同転圧工程説明図 (c)同転圧工程説明図
【符号の説明】
【0057】
1 地面
2 チェーンカッタ
3 ビット
4、11 切削ゴミ
5 バックホウ
10 切削孔
15 回転軸
16 螺旋羽根
17 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタを用いて目標深度まで埋め立てゴミを切削して切削孔を形成し前記切削孔において埋め立てゴミの層状形態を断ち切り切削ゴミとなす切削ステップと、
前記切削孔内のゴミを転圧する転圧ステップとを含む埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項2】
前記カッタは、チェーンカッタである請求項1記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項3】
前記切削ステップの結果得られた切削ゴミを前記切削孔内に埋め戻す埋め戻しステップをさらに含む請求項2記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項4】
前記埋め戻しステップと前記転圧ステップとは、並行して実施される請求項3記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項5】
前記埋め戻しステップと前記転圧ステップとは、前記チェーンカッタを用いて実施される請求項4記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項6】
前記埋め戻しステップと前記転圧ステップとは、別個に実施される請求項3記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項7】
前記転圧ステップは、前記チェーンカッタとは異なる転圧装置を用いて実施される請求項2記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項8】
前記転圧装置は、パワーショベル、スクリュー式圧密装置、バイブレータ式圧密装置のいずれかである請求項7記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項9】
前記切削ステップと前記転圧ステップとが、前記切削孔に対し繰り返し実施される請求項2から8記載の埋め立てゴミの減容化方法。
【請求項10】
前記切削ステップと前記埋め戻しステップとの間に、前記切削ゴミのうちリサイクルする部分とリサイクルしない部分とに分別する分別ステップを含み、
前記埋め戻しステップでは、前記リサイクルする部分を前記切削孔内に埋め戻す対象から除外する、請求項3記載の埋め立てゴミの減容化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−15309(P2006−15309A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198265(P2004−198265)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(502252909)株式会社アースクリエイト (1)
【出願人】(593010132)株式会社テノックス九州 (5)
【Fターム(参考)】