説明

埋め込み型の医療用品に負荷をかけるための装置

本発明は、埋め込み型の医療用品に負荷をかけるための装置を提供する。本装置は、壁を備え、液体が流れ方向に流れ、流れ方向に見たときに液体が流路の内部を、または流路に沿って連続的に流れる連続的な流路と、容積が調節可能な第1の液室と、負荷がかけられる医療用品を収容するための生成物室と、容積が調節可能な第2の液室と、第1の閉状態では流路を閉鎖し第2の開状態では流路を通って液体が流れることができるようにする弁部材を有する弁装置と、を含む。本装置はさらに、第1の液室の容積を変化させることにより、流路を通る流れ方向への液体の流れを生じさせる流れ手段と、弁部材材を第1の状態と第2の状態との間で連続的に変化する調整が可能な操作手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型の医療用品に負荷をかけるための装置に関する。本装置は、壁を備え、液体が流れ方向に流れ、流れ方向に見たときに液体が流路の内部を、または流路に沿って連続的に流れる連続的な流路と、容積が調節可能な第1の液室と、負荷がかけられる医療用品を収容するための生成物室と、容積が調節可能な第2の液室と、第1の閉状態では流路を閉鎖し第2の開状態では流路を通って液体が流れることができるようにする弁部材を有する弁装置と、を含み、第1の液室の容積を変化させることにより、流路を通る流れ方向への液体の流れを生じさせる流れ手段をさらに含む。
【0002】
本発明は特に、埋め込み型の組織培養した医療用品を製造するためのバイオリアクタに関するが、これに限定はされない。埋め込み型の組織培養した医療用品の製造工程には、成長段階、調整段階、および試験段階が含まれる。これらの段階において、製造される用品はバイオリアクタ内である負荷パターンにさらされる。たとえば人工心臓弁のような(組織培養型でない)埋め込み型の医療用品の場合、本発明に関する装置内でこの医療用品に負荷がかけられる。それにより、この医療用品の耐久性などの特性をテストすることができる。
【背景技術】
【0003】
たとえば心臓弁などの組織培養した医療用品を製造するために、いわゆる足場(scaffold)がバイオリアクタの生成物室内に配置される。患者の細胞がこの足場上に置かれる。足場は、主に生分解性物質で構成され、所望の医療用品の形状を有する。細胞増殖およびその結果もたらされる足場上での医療用品の発達が、バイオリアクタ内では促進される。それは、製造工程の連続的な段階中に、人体内で一般的な生理条件がある程度模擬されるからである。足場を構成する物質が徐々に分解され、患者本来の体細胞を含む用品が得られる。その用品は患者とともに成長することができるし、別の形状になることもできるし、回収することもできる。さらに、医療用品を患者の体内に埋め込んだ後、医療用品が患者の体に拒絶される危険性は著しく低下するか、または全く無くなる。それは、その医療用品が完全に患者自身の細胞により形成されているからである。
【0004】
米国特許第5899937号には、導入部で説明された装置が開示されている。当該明細書には、埋め込まれる心臓組織を生理的な脈動流にさらすことのできる装置が記載されている。当該装置は、試験区間に存在する心臓組織を通過する液体の流れを生じさせるためのふいご(bellows)を含む。ここでは、プランジャポンプとモータとの組み合わせにより、外部の液体の体積が増大または減少する。その結果、ふいごがそれぞれ圧縮または膨張する。試験区間の下流に含まれるのは、シリンダが接続された、ある高さの液体の柱である。そのシリンダには膜が取り付けられている。ふいごが圧縮された場合にこの膜が広がる。その結果、液体がふいごから試験区間を通ってシリンダ内に流れ、ふいごの膨張によって液体が戻り流路を通ってふいご内に戻ってきたときに液体が跳ね返る。シリンダとふいごとの間の戻り流路には、一方向弁が含まれる。この一方向弁は、液体がふいごから試験区間を通ってシリンダへと流れるときに閉じているか、液体がシリンダからふいごへと流れて戻るときに完全に開いているかのどちらかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5899937号明細書
【発明の概要】
【0006】
米国特許第5899937号に記載された装置の主な欠点は、シリンダが試験区間およびふいごに対してある一定の高さで調整されていることである。この既知の装置では、これは人体内を支配している生理条件を高精度に模擬するために必要である。現実にはこれが普通の構成であり、上述の高さは約1.2mである。たとえば実験室における実験では、これは原則的には必ずしも欠点ではない。バイオリアクタに対する需要は、将来著しく増大することが期待される。しかし、シリンダの位置する高さが非常に高いことにより、この公知の装置は大規模な生産および使用には適さない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、好適な実施の形態のいずれかにおいて、上述の欠点を改善することにある。さらに具体的には、本発明は、簡単に操作できて大規模な製造および使用に適した小型の装置を提供することを目的とする。本装置が第1の状態と第2の状態との間で弁部材の連続的に変化可能な調整を可能にする操作手段を含むことにより、この目的は実現される。この点で本発明は、容積が調節可能な2つの液室を含む埋め込み型の医療用品に負荷をかけるための装置において、連続的な調節が可能な弁部材を有する弁装置を使用することにより、3つの重要なパラメータ、つまり医療用品を通る液体の流れと、医療用品の上流の液圧と、医療用品の下流の液圧とを、可変で連続的に互いに独立して調整することが可能となるという独創的な知見に基づく。実際には、弁装置の上流と下流の間での圧力低下は、連続的で可変的な調節が可能な弁部材によって生み出すことができる。これにより、医療用品の上流ではある液圧となり、医療用品の下流ではある液圧となる。したがって、人体内部に存在するような生理条件を正確に模擬することができる。もはや液室をかなり高くする必要はない。その結果、本装置を著しく小型にすることができる。そのため、大規模な製造および使用にはるかに適した装置とすることができる。
【0008】
弁部材を連続的な流路の壁の硬質部分に接続するために、弁装置は少なくとも部分的に柔軟性のある接続部材を含むことが好ましい。弁部材は、その接続部材に柔軟性材料が使用されることにより、弁装置内に移動可能に収容されている。しかし、ヒンジのような標準的な接続部の材料同士の摩擦により生じるような摩耗粒子は生成されない。バイオリアクタの内部は無菌でなければならない。したがって、バイオリアクタの内部で生じる汚染粒子が全く存在しないか、できるだけ少ないことが必須である。それにより、負荷がかけられる(組織培養された)医療用品上の沈殿物も、存在しないか最小限となる。
【0009】
接続部材の柔軟部分が弾性を有するのがさらに好ましい。これにより、弁部材のある(中立的な)好ましい配置が存在するという状態を実現することができる。したがって、外部負荷が存在しない場合には、弁部材の配置は明らかである。この配置は、たとえば完全に閉じた配置、完全に開いた配置、または中間の配置であってもよい。完全に閉じた配置と完全に開いた配置とのおよそ中間の配置であることが好ましい。この中立的な配置から始まる、完全に閉じた配置と完全に開いた配置とを実現するのに必要な接続部材の変形は、この場合に最小である。
【0010】
接続部材の柔軟部分が流路の壁の一部を構成する場合に、少なくとも部分的に柔軟性のある接続部材の利点は著しく顕著となる。その結果、接続部材を壁に固定するための追加的な部品を使用することなく、接続部材を備えた弁部材を、単純な方法により弁装置に含めることができる。これが原価に対して好ましい影響を及ぼすことは明らかである。
【0011】
少なくとも部分的に柔軟性のある接続部材が使用される場合、弁部材の位置を調整できるようにするため、操作手段が接続部材の柔軟部分を変形させるように構成されると非常に有利である。この構成では、流路の内部空間を外の大気から簡単に分離することができる。その結果、流路内の液体の滅菌状態を守ることができる。それは、たとえば弁装置の壁部を通って伸びる弁部材を操作するためのどんな可動部も不要だからである。可動部が不要であるため、接続部材の柔軟部分を変形させることが十分に可能である。
【0012】
操作手段は、接続部材の柔軟部分の外側に空気圧室を含み、当該空気圧室内の圧力を変化させるための空気圧手段を含むのが好ましい。上述のとおり、接続部材の柔軟部分により、流路の内部を外の大気から分離することが可能となる。たとえば圧縮空気などの空気圧手段を使用することにより、単純で安価で清潔な方法により弁装置の弁部材を操作することが可能となる。
【0013】
さらに、空気圧室は、接続部材の柔軟部分の外側に取り外し可能に設けられた囲壁を含むことが好ましい。流路の内部空間と外の大気とが隔離されていることにより、好ましくは圧縮空気を使った供給ラインなどの任意の追加的な部品を備えた圧力室が単純な方法により弁装置から分離することができるよう、圧力室の囲壁を設計することが可能となる。これにより本装置の操作性が著しく改善される。
【0014】
弁部材は、少なくとも部分的に柔軟性を有することが好ましく、弾力性を有することがより好ましい。これには、一方では弁部材が閉状態において、流路を閉じるために必要なOリングなどの追加的な設備がなくとも、液体の流路を効率的に閉じることができるという大きな利点がある。他方では、上述の実施の形態に従って柔軟な接続部材が使用された場合、弁部材は柔軟な接続部材とともに1つの一体的な構成部品として製造することができる。両方の効果が本装置の原価に好ましい影響を及ぼす。
【0015】
バイオリアクタ内での心臓弁の製造において、(模擬)心臓収縮期の間、液体は、第1の液室から心臓弁が存在する生成物室を通って第2の液室まで流れる。心臓弁の裏側の圧、つまり模擬大動脈圧がこの段階では心臓弁の表側の圧、つまり模擬左心室圧よりも高いため、(模擬)心臓拡張期の間、心臓弁は閉じている。これにより、弁装置を通って第1の液室へと液体を流し戻す。液体の流れを正確に制御するためには、たとえば上述の(模擬)心臓拡張期の場合、第2の液室の容積を変化させることにより、流れ手段が流路を通って流れ方向に液体を流れさせるようさらに構成されていると非常に有利である。
【0016】
上述の弁装置の柔軟な接続部材の場合と同じ理由で、少なくとも1つの液室が、少なくとも部分的に柔軟性のある、より好ましくは弾力性のある壁を含んでいると非常に有利である。
【0017】
実用的な理由およびコスト面から、少なくとも1つの液室の柔軟な壁が、接続部材および/または弁部材の柔軟部分と同じ材料で作られているとさらに有利である。
【0018】
液室の少なくとも部分的に柔軟性のある壁の利点は、少なくとも1つの液室の柔軟な壁を変形させることにより関連する1つ以上の液室の容積を変化させるように流れ手段が構成されている場合、特に明白である。したがって、容積の変化が、たとえばシリンダ−ピストン構造の場合のように互いにこすれ合う部品によって達成されるわけではないため、装置の流路内の無菌環境を簡単な方法により守ることができる。
【0019】
弁装置のように、流れ手段は、少なくとも1つの液室の柔軟な壁の外側に少なくとも1つの追加的な空気圧室を含み、当該少なくとも1つの追加的な空気圧室の圧力を調整するための空気圧手段を含むことがさらに好ましい。たとえば圧縮空気などの空気圧手段を使用することにより、単純で安価で清潔な方法によって、関連する液室の容積を設定することが可能になる。
【0020】
さらに、少なくとも1つの追加的な空気圧室が、少なくとも1つの液室の柔軟な壁の外側に対して取り外し可能に設けられた囲壁を含むことが好ましい。弁装置の流路は外の大気に対して完全に遮断されているため、好ましくは圧縮空気を使った供給ラインなどの任意の追加的な部品を備えた圧力室の囲壁を、単純な方法によって関連する液室から分離することができる。
【0021】
負荷がかけられていない状態で少なくとも1つの液室の柔軟な壁が実質的に凸形状であれば、追加的な利点が得られる。凸形状はたとえば射出成形によって容易に製造することができる。この特定の形状は、調整の可能性に不利な影響を及ぼすわけではないが、コストを低減させる効果がある。さらに、凸形状の場合、変形する領域は小さい。これは、柔軟な壁の剛性が、変形する領域の壁厚のみによって決まることを意味する。
【0022】
凸形状の柔軟な壁の壁厚が頂部から遠ざかるほど厚くなっている場合、柔軟な壁の変形の予測可能性が高まるというさらなる利点が得られる。これは関連するパラメータ(医療用品を通過する液体の流れ、または関連する液室内の液圧)を正確に制御するために有利となる。
【0023】
上述のように壁厚を増大させることに代えてまたはこれとともに、変形する領域を使用時に凸形状の柔軟な壁の非肥厚部に誘導するための肥厚部が、凸形状の柔軟な壁に局所的に設けられるとさらに有利である。代替的な肥厚および肥厚でないくさび形の領域、つまりリブの形で肥厚領域が凸形状の頂部から延びた場合に、凸形状の柔軟な壁の変形の予測可能性が明確に増大することを示す研究がある。
【0024】
凸形状の柔軟な壁の反対側に位置する液室の壁の一部が凸形状を有するとさらに有利である。この結果、凸形状の柔軟な壁が変形する間、液室が不必要に大きくなることなく、(鏡像関係にある)凸形状の柔軟な壁と反対に位置する液室の壁の凸形状の部分との間で、十分な間隔が常に存在し続けることができる。また、凸形状により、淀んだ液体を含む領域が形成されてしまうことを防止または少なくとも著しく低減することができる。淀んだ液体を含む領域の局所的な形成は、より角度のある形状の空間の場合に、特に起きる可能性がある。
【0025】
さらに、凸形状の柔軟な壁の反対側に位置する液室の壁の一部が剛性であることが好ましい。液室の壁の反対に位置する部分が剛性であれば、この反対に位置する壁は変形しないため、液室の柔軟な壁の変形(の制御)に対して重畳的な悪影響を及ぼさない。
【0026】
非常に単純で従って安価で有利な実施の形態では、液室は第1の筐体部および第2の筐体部により規定される。第1の筐体部と第2の筐体部とは、液漏れしない方法で相互に接続されている。
【0027】
さらに、本装置は第1の筐体部と第2の筐体部との間に密閉手段を含むことが好ましい。密閉手段は、第1の筐体部と第2の筐体部との間で吸引結合(suction joint)をもたらすために、2つの唇部の間で圧力が低下した容積(volume)を取り囲む2つの唇部を含む。圧力が低下した容積に対して間にリップシール(lip seals)を使用することにより、リップシールに近接した壁を特別に補強すること、および追加的な締め付け手段を用いて2つの筐体部を互いに締め付けることが原則的に不要となる。低下した圧力単独で、かなり大きな締め付け力を供給する。また、リップシールの唇部間の圧力が装置内部の圧力よりも原則的に低いため、不純物は装置の内部に入ることができない。装置の内部に要求される滅菌状態に鑑みると、後の特徴は非常に重要である。
【0028】
性能を損なうことなく費用効果が高い装置を得るためには、第1の筐体部が射出成形により成形され少なくとも部分的に剛性を有し、第1の筐体部が弁装置の接続部材の柔軟部分、および/または第1の液室および/または第2の液室の柔軟な壁を少なくとも含むことが非常に好ましい。硬質部分および柔軟部分を単一の射出成形品に一体化することには、必要となる高価な金型が1つで済むという利点がある。さらに、組み立ての作業量が著しく少なくなるため、明らかに大きなコスト低減効果を有する。
【0029】
本装置が射出成形による相互にはめ合わせられる2つの筐体部で実質的に構成されれば、さらに大幅にコストを削減することができる。この点において、液室の壁の硬質部分が第1の筐体部と一体であって、当該液室の柔軟な壁が第2の筐体部と一体であることが好ましい。
【0030】
さらに、第2の筐体部は、射出成形により形成され、柔軟な壁が第1の筐体部と一体になった液室の壁の硬質部分を含み、硬質壁部が第1の筐体部と一体になった液室の柔軟な壁を含むことが好ましい。本装置を簡単な方法によりこれらの2つの筐体部から構成することにより、2つの筐体部に対してそのような機能を分配することができる。
【0031】
また、2つの筐体部に対してこの機能の分配をすることにより、さらに好適な実施の形態では、第1の筐体部と第2の筐体部を同一の形状、または完全に同一とすることさえ可能になる。これは、射出成形の場合、2つの筐体部に対し、たった1つの射出成形金型しか必要とならないことを意味する。これは原価の観点でさらに非常に好ましい。本発明による装置は原価が低いため、使い捨て用途に非常に好適である。これは、本装置が1つだけの製品に負荷をかけるために使用されるという点で、ある用品から別の用品に、したがってある患者から別の患者に、汚染物質が感染することを防止できるという大きな利点がある。
【0032】
本装置が射出成形された少なくとも1つの筐体部を含んでいるとさらに好ましい。その目的で、複数の筐体部を、好ましくは同時に、1つの同一の射出成形ステップにて射出成形するために構成された射出成形金型が提供される。この利点は、本装置が小型から超小型版の場合に特に現れる。本装置の複数の筐体部が同時に射出成形できるように金型が設計された場合、大幅なコスト低減を実現することができる。
【0033】
さらなる実施の形態では、連続的な流路は、少なくとも2つの液体の静的混合を実現するための三次元の混合流路を有する混合装置を含む。(バイオ)リアクタでは多くの場合、リアクタの内部に存在する液体が、新たに供給された液体と混合されることにより回復されることが好ましい。または、添加物がリアクタ内の液体に混合により添加されることが好ましい。それらの場合、滅菌性の観点に加えコストの観点から、上述のように固定混合器が使用されると有利である。そのような混合器自体は、米国特許出願第2007/0177458により知られている。混合流路が連続的な流路のバイパス内に設けられることにより、液体の一部をさらに混合してもよいこと、または外部から供給された液体をその位置で混合してもよいことは明らかである。
【0034】
この点で三次元の混合流路は、一部が第1の筐体部に、一部が第2の筐体部に配置されていると有利である。三次元の混合流路は、2つの筐体部の移行部に配置された場合、容易に本装置と一体化してもよい。それにより、上述のように混合室は、一部が第1の筐体部に、一部が第2の筐体部に位置する。したがって、混合流路は2つの筐体部が1つに組み立てられた場合に最終形状となる。
【0035】
そのような混合器もまた、小型版のバイオリアクタで使用する場合に非常に好適である。そのような非常に小さな実施の形態は、たとえばDNA合成に非常に好適である。これに関連して、従来技術に従った装置内や導入部で説明した装置よりもより単純な装置内で混合器を使用することも可能である。導入部説明した装置は、連続的な流路を含み、液体が流れ方向に流れ、液体が流路の内部を、または流路に沿って流れる連続的な流路と、容積が調節可能な少なくとも1つの液室と、第1の閉状態では流路を閉鎖し第2の開状態では流路を通って液体が流れることができるようにする弁部材を有する弁装置と、を含む。この装置は、第1の液室の容積を変化させることにより、流路を通る流れ方向への液体の流れを生じさせる流れ手段と、連続的な流路は、少なくとも2つの液体の静的混合を実現するための三次元の混合流路を有する混合装置と、をさらに含む。その流れ手段は、上述のように構成されていることが好ましい。
【0036】
本発明はさらに、本発明に従った装置を製造するための方法を提供する。この方法は、第1の筐体部および/または第2の筐体部を1つの金型で射出成形するステップを含み、柔軟部分の材料と硬質部分の材料とは同一の射出成形ステップにより、好ましくは同時に射出される。この製造工程は、関連する筐体部の軟質部分および硬質部分が早くも射出成形段階において、単純な方法により互いに連結されることを意味する。
【0037】
本発明はさらに、本発明に従った装置を操作するための方法を提供する。この方法は、第1の液室の容積と、第2の液室の容積とを互いに独立して変化させることにより、本装置の少なくとも1つの液室の液圧を変化させるステップを含む。連続的に調節可能な弁部材を本発明に従った装置に使用することにより、弁装置の上流と下流との間で圧力低下を生み出すことができる。人体内で一般的な生理条件を正確に模擬するためには、これは非常に有利である。それに加え、第1の液室および/または第2の液室で圧力レベルが設定できると非常に有利である。たとえば、一方では第1の液室内の圧力の制御、他方では弁装置の上流と下流との間の圧力低下の制御は、第2の液室内の圧力を同時に規定する。後者の圧力は、模擬大動脈圧である。
【0038】
ここで本発明に従った装置の好適な実施の形態を説明することにより、以下の図を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従ったバイオリアクタの好適な実施の形態を図式的に示す。
【図2】図1のバイオリアクタの断面図であり、理解の手助けのために不可欠な部品が本図の面に組み込まれている。
【図3】閉じた状態(a)、大部分開いた状態(b)、および完全に開いた状態(c)の弁装置を備えた、図1に示すバイオリアクタの弁装置の断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、液室の柔軟な壁が異なる圧縮段階にある、図1に示すバイオリアクタの液室の断面図である。
【図5】図1のバイオリアクタの2つの主要部品のうち1つの三次元表示である。
【図6】軟質部分および硬質部分を有する図5の主要部品が切り離されて描かれた状態を示す。
【図7】図5の主要部品の柔軟部分の別の実施の形態を示す。
【図8】左心室の圧力が左心室の容積の関数としてプロットされた、心臓弁の成長過程を示すグラフである。
【図9】左心室の圧力が左心室の容積の関数としてプロットされた、心臓弁の調整過程を示すグラフである。
【図10】左心室の圧力が左心室の容積の関数としてプロットされた、心臓弁の試験過程を示すグラフである。
【図11】大動脈の圧力および左心室の圧力が時間の関数としてプロットされ、大動脈弁を通る体積流量が時間の関数としてプロットされた心拍のグラフである。
【0040】
(詳細な説明)
主要部品およびバイオリアクタ1におけるそれらの相互の配置を明瞭に示すために、図1にはバイオリアクタ1が図式的に描かれている。バイオリアクタ1は連続的な流路2を含む。連続的な流路2の内部では、養分を含む液体が流れ方向8に循環可能である。連続的な流路2の内部を、または連続的な流路2に沿って、流れ方向8に見ると、第1の液室3、生成物室4、第2の液室5、および弁装置6をこの順に確認できる。培養されることになる組織培養した医療用品41が生成物室4の内部に存在する。図1および図2に示した例では、当該組織培養した医療用品41は心臓弁(図式的に示す)、より具体的には大動脈弁であり、流路2の方向を向いている。これにより、液体が流れ方向8のみに通過することができる。これは、心臓弁は第1の液室3の液圧が第2の液室5の液圧よりも高くなったときに開き、第2の液室5の液圧が第1の液室3の液圧よりも高くなったときに閉じることを意味する。
【0041】
図2はバイオリアクタ1の断面図である。この横断面では、関連する流路の多くの構成材が点線により図式的に示されている。それらの流路の構成材の参照番号は、図1にも示されている。関連する流路の構成材を通る液体の流れ方向が、線の始端と終端における矢印で示されている。
【0042】
バイオリアクタ1は、射出成形による2つの筐体部11および筐体部12を含む。指示的な一点鎖線13の上に位置する部分はすべて筐体部11に属し、一点鎖線13の下に位置する部分はすべて筐体部12に属する。筐体部12は生成物室4の大部分を含む。一方、筐体部11における同一形状部の一部は、液体貯蔵室7として機能する。筐体部11と筐体部12とは同一形状であり、筐体部11は垂直軸(図示せず)に対して180°回転後、筐体部12の上に配置されている。これにより点対称の組立品が形成される。射出成形により形成された、たとえば参照番号33のリップシール(図4(a)も参照)は、筐体部11および筐体部12と一体化することにより、関連する筐体部11または筐体部12の一部も形成する。これらのリップシールにより、リップシールの唇部(lips)間の負圧(underpressure)によって、液漏れしない状態で、筐体部11および筐体部12を相互に接続させることが可能になる。たとえばゲート49を介して、生成物室4の2つの筐体部の間にあるリップシールの2つの柔軟性を有する唇部の間に、負圧を与えることができる。
【0043】
生成物室4の内部には、アダプタ40が配置されている。アダプタ40の内部には、組織培養した医療用品41が存在する。心臓弁が図式的に示されている。この場合、より具体的には心臓弁は大動脈弁である。上述のとおり、液体を一方向のみに通過させるのが大動脈弁の特徴である。大動脈弁は、生成物室4の方向を向くことにより、入口ゲート45から出口ゲート46へと液体が流れるのを可能にしている。大動脈弁は、動脈部43,43’に接続された3つのいわゆる弁尖(leaflets)42を含む。製造された大動脈弁が人体内部に移植される手術において、動脈部43,43’は既存の組織に接続することができる。
【0044】
流路部202は生成物室4の入口ゲート45とゲート611との間で接続されることにより、生成物室4を第1の液室3および流路部201に接続している(図1参照)。流路部203は生成物室4の出口ゲート46とゲート614の間に位置することにより、生成物室4を第2の液室5および流路部204に接続している。生成物室4はさらに、アダプタ40の内部に存在する液体を回復させるための2つのゲート47およびゲート48を有する。アダプタ40は内部で製造される用品の外側に配置されている。ゲート47は入口として機能し、図示しない流路部を介してゲート612に接続されている。ゲート48、つまり出口は、図示しない流路部を介して液体貯蔵室7のゲート74に接続されている。
【0045】
第1の液室3は、通路31を介して流路部201および流路部202と接続されている。バイオリアクタの機能性を高めるために、流路部202を通る流れは弁装置601によって遮ることができる。ここで注目すべきは、弁装置601は実際にはゲート611を閉じることしかできないことである。つまり、流路201と第1の液室3(通路31)との接続は弁装置601の存在によってそれほど妨害されることはない。言い換えると、弁装置601が閉じるとゲート611が閉じ、液体は、流路201から流路202へ流れることはできないが、流路201から第1の液室3へ、およびその逆へ流れることはできる。追加的な弁装置602はゲート612を開閉することができ、実際には流路部201の分岐となっている。さらに、流路部204と流路部201(図1も参照)の間に弁装置6を含めることにより、流路部204が弁装置6のゲート64を弁装置603のゲート613に対して接続している。
【0046】
弁装置6は第1の液室3と第2の液室5とを相互に接続している。弁装置6は図3(a)、図3(b)および図3(c)により詳細に示され、以下でより詳細に説明する。弁装置601、弁装置602、および弁装置6は同一の構造であるため、図2から明らかなように、弁装置601、弁装置602、または弁装置6のいずれにより(図1の概略図に従って)第2の液室5に接続されているかは、実際には重要ではない。しかし、弁装置603は、図1に示した弁装置として機能するためには弁装置601および弁装置6よりは適していない。これは、弁装置6における流れ方向と比べて、液体が弁装置603を通って反対方向へ流れるためである。弁部材6の場合、液体が弁装置を通って弁装置6により得られる方向に流れるとき、つまりゲート64から弁部材61に沿って流路201に流れるときに、弁装置の制御の安定性が最高になることが実験により示されている(図3(a)、図3(b)および図3(c)も参照)。
【0047】
第2の液室5は第1の液室3と同じ構造を有する。流路部203は第2の液室5を生成物室4に接続する。流路部203を閉じるために、弁装置604が必要に応じて追加的に設けられている。第2の液室5のゲート51は、流路部204および流路部203を第2の液室5に接続する。第2の液室5はゲート615をさらに含む。ゲート615は弁装置605によって閉じることができ、ゲート615によって第2の液室5を液体貯蔵室7に接続することができる(接続経路は詳しく示されていない)。
【0048】
液体貯蔵室7は生成物室4と同じ構造を有するが、液体貯蔵室7の内部には組織培養した医療用品を保持するためのアダプタ40が配置されていない。液体貯蔵室7の内部に存在する液体は、開放表面領域71のおかげで「呼吸する」ことができる。図2では例として、ゲート74が上側、ゲート72が下側となるようにバイオリアクタが配置されることが想定されている。実際には、開放表面領域71が液体貯蔵室7の内部にある限り、バイオリアクタがどんな向きであっても全く構わない。液体貯蔵室7の内部の空気は、ゲート72およびバイオリアクタ内部の大気の無菌状態を維持するために必要なエアフィルター(図示せず)を介して、外気と繋がっている。液体貯蔵室7のゲート73は第2の液室5のゲート615に繋がっている。弁装置605が開いた配置に設定されている場合、たとえばバイオリアクタを液体で充填することができる。バイオリアクタの液体による充填は、液体貯蔵室7のゲート74を通じて行われる。
【0049】
図3(a)、図3(b)および図3(c)により詳細に示されるように、弁装置6には弁部材61が設けられている。弁部材61は、図3(a)に示す閉状態において、自身の閉鎖端62を好ましくは対向する流路壁63に対して当てることができるように、柔軟性材料から作られることが好ましい。それにより、ゲート64を介して液体が弁装置を流れることができない。弁部材61は柔軟な接続部材65によって弁装置6に収容されている。接続部材65は実際には弁装置6の壁の一部を形成している。接続部材65の外側には、空気圧室66が存在する。空気圧室66は圧力室筐体67によって外の大気から隔離されている。またゲート68を通じて圧縮空気が空気圧室66に出入りすることができる。空気圧室66の内部における圧力の変化が接続部材65を変形させる。次に接続部材65が弁部材61の配置を変化させる。図3(a)は弁部材61、したがって弁装置6が完全に閉じた配置を示し、図3(b)はほぼ開いた配置を示す。弁装置6が完全に閉じた配置では、閉じているのはゲート64だけであることにここで言及しておくことは重要である。流路201の内部の液体の流れ、つまり左から右へ、そして図3(a)の弁装置6を通って戻る流れは、閉じた配置によってそれほど遮られない。図3(c)は、弁装置6が完全に開いた配置を示す。圧力室筐体67は、この配置において柔軟な接続部材65が圧力室筐体67の内壁69に寄りかかるように構成されている。したがって、この配置では、弁部材61はほぼ剛性部品として機能する。これにより、バイオリアクタの制御の総合的な安定性が増大することが実験により示されている。
【0050】
弁装置の弁部材61は、ゲート64を開閉させる機能を有するだけでなく、流路部204と流路部201との間で抵抗を形成する機能も有する。弁部材61がある程度開いた配置をとった場合に、抵抗が形成される。負荷をかける手段としての(圧縮性)空気の存在だけではなく、弁部材61、より具体的には弁部材61の閉鎖端62の柔軟性により、その抵抗は弁装置6を通る液体の流れの定量値に関係する。液体の流れが増えるにつれて、弁部材61は自動的により開いた配置をとる。それによって、弁部材61による抵抗が減少する。これは人体の内部における動脈と静脈の抵抗の挙動に対応する。
【0051】
図4(a)は、負荷がかけられていない状態における液室3の断面図である。ここで説明する本発明の実施の形態では、液室3および液室5は、互いに同一形状に構成されている。液室3は柔軟な壁部30と硬質壁部32とを有する。柔軟な壁部30は凸形状である。硬質壁部32も凸形状であるが、柔軟な壁部30とは逆向きの形状である。これら2つの壁部は、リップシール33によって互いに固定されている。リップシール33は壁部36に圧力を加える2つの唇部34および唇部34’を含む。壁部36は剛性材料で作られており、柔軟な壁部30に接続されている。図示しない接続を介して唇部の間でもたらされる負圧により、2つの唇部34および唇部34’が壁部36に押しつけられ、これにより液室3を外部から密封する。柔軟な壁部30の外側には、圧力室筐体38によって外の大気から隔離された空気圧室37が存在する。ゲート39を通じて圧縮空気を供給または放出することによって空気圧室37の内部の気圧を変えることにより、柔軟な壁部30が変形する。それによって液室3の容積が変化する。図4(a)、図4(b)および図4(c)は、柔軟な壁部30の3つの配置を表している。つまり、図4(a)は負荷がかけられていない状態であり、図4(b)はある程度負荷がかけられた状態であり、図4(c)はより大きく負荷がかけられた状態である。負荷がかけられた状態では、柔軟な壁部30の変形領域35が見えている。柔軟な壁部30の剛性は、変形領域35の厚さのみに依存する。
【0052】
上述のように、本発明によるバイオリアクタの基本的な実施の形態では、2つの同一形状の筐体部11および筐体部12によって形成される。図5は筐体部11を三次元表示で示している。筐体部11の一部を形成する各室および弁装置は、構造や機能を視覚的に分かりやすくするために、図2に示す図の平面において回転されている。実際に製造されたバイオリアクタでは、様々な部品が図5に示すように互いに配置されている。この配置により、筐体部11が小型になり、製造しやすくなる。同じことが筐体部11と同一の筐体部12にも当てはまる。
【0053】
上述のように、筐体部11(したがって、筐体部12も)は、射出成形品として1つの金型によって製造される硬質部分および柔軟部分の組み合わせを含む。これには当業者に知られている二成分型射出成形技術が使用される。図6は、硬質部分103および硬質部分15から切り離された柔軟部分101および柔軟部分102を示す。筐体部11の剛性部品である蓋15は、柔軟部分102の柔軟なヒンジ16を介して硬質部分103に接続されている(ヒンジ16は図2には示されていない)。図6は、柔軟なヒンジ16および第1の液室3の柔軟な壁部30とともに、弁装置6の柔軟な接続部材65と弁装置の柔軟な接続部材601および602とが1つの一体的な統一体を形成することを非常に明瞭に示す。これによって射出成形工程がかなり簡単になる。
【0054】
図7は、柔軟部分102の別の実施の形態として柔軟部分102’を示す。図6は上側から見た図である。一方、図7は下側から見た図である。柔軟な壁部30’の内側には、図6の柔軟な壁部30における柔軟部分102の実施の形態とは異なり、凸形状の内側に向かって突き出たリブ301が設けられている。リブ301は凸形状をくさび形の部分に分断する。リブ301は、操作中に柔軟な壁部30’をより予測可能に変形させる機能を果たす。
【0055】
本発明によるバイオリアクタの実施の形態のすべての部品を説明した。そこで、例として本発明によるバイオリアクタが大動脈弁の製造工程に使用できる方法を説明する。
【0056】
生成物室4の蓋15が開けられたときに、製造される心臓弁41、より具体的には大動脈弁の足場を備えたアダプタ40を生成物室4に配置することができる。患者の細胞が足場の上に配置される。蓋15が閉じられ、バイオリアクタには上述の方法によりゲート74を介して養分を含む液体が充填される。
【0057】
図8は大動脈弁の成長段階を表すグラフである。ここでは、左心室、つまり第1の液室3における液圧(左心室における液圧)が、左心室、つまりの第1の液室3の容積(左心室の容積)に対してプロットされている。破線EDPVRは、心臓拡張期の終わりにおける圧力と容積との関係を示す。破線ESPVRは、心臓収縮期の終わりにおける圧力と容積との関係を示す。閉じた実線は、成長段階における圧力と容積との関係を表す。この成長段階の間、心臓弁の上流と下流の間での圧力差は、生体内で大動脈弁が閉じる力を模擬するという観点から、比較的低いレベルで変化させられる。心臓弁の細胞増殖の大部分は、成長段階に起きる。成長段階では、弁装置601および弁装置604のみが開いている。弁6が閉じているため、この段階では液体の循環は生じない。第1の液室3の圧力は低く一定に保たれるが、第2の液室の圧力は脈動するように変化する。大動脈弁の両側で連続的に大きくなる圧力差により生じる変形によって、液体の移動量が連続的に増大する。そのため、大動脈弁の組織は損傷を受けない。
【0058】
図9は図8のグラフと類似するグラフであり、調整段階を示す。この調整段階では、大動脈弁に負荷がかけられることにより、大動脈弁の組織が正しい方向に強化される。その場合、弁の上流と下流との間で連続的に大きくなる圧力差がかけられ、連続的に増大する量の液体の移動が弁を通じて行われる。図9に示した分析結果の模擬は、後述する試験段階と同様に行われる。
【0059】
図10は、上述と同様のグラフであり、生体内における左心室の典型的な圧力/容積特性を示す。左心室の典型的な圧力/容積特性は、成長させられる大動脈弁の試験段階の間、模擬されることになる。区間aの模擬(図10)の間、弁装置605を除くすべての弁装置は開状態である。開いた弁装置6は、生体内で開いた僧帽弁を模倣する。第1の液室3の容積は増大し、第1の液室3と比較して第2の液室5に適用された容積の変化によって、圧力は生体内の心拍における大動脈圧のレベルに制御される。その間、第1の液室と第2の液室とが所望の圧力差となるように、弁装置6の配置が制御される。区間bおよび区間c(図10)の模擬の間、弁装置6は閉じている。それによって、僧帽弁の挙動が模倣される。こうして生体内における大動脈の液体の流れに対応する液体の流れが生じる。再びこの段階の間、第2の液室5の容積を相対的に変化させることにより、圧力が生体内の心拍における大動脈圧のレベルに制御される。区間cの終わりには液体の流れが減少し、大動脈弁が(自動的に)閉じる。段階dの模擬の間に再び弁装置6が開かれることにより、僧帽弁が開く状態が模倣される。本試験段階は、心臓弁が(可能であれば成長後および調整後に)所望の特性を有するかどうかを確認する機能を果たす。
【0060】
図11は、(模擬)心拍の間に模倣されることになる圧力および液体の曲線を示す。図11のグラフの左の垂直軸に圧力がプロットされ、大動脈圧(Paorta)および左心室圧力(PIV)が時間の関数として示されている。液体の流量(Q)が右の垂直軸にプロットされ、グラフは大動脈(Q)の内部における液体の流量を示している。大動脈圧の曲線と左心室圧力の曲線との差異は、大動脈弁の上流と下流の間での圧力差を表す。弁装置6の弁部材61の配置が連続的で可変的に変化することを通じて、この圧力差を正確に模擬することができる。
【0061】
上述した方法により、大動脈弁が成長し、調整され、試験された後、試験結果が満足のいくものであれば、液体を排出し、蓋15を開け、上述のように製造された大動脈弁が装着されたアダプタをバイオリアクタから取り出すことができる。その後、大動脈弁を患者の心臓に埋め込むことができる。
【0062】
本発明は、決して上述の実施の形態のように大動脈弁の製造に限定されるものではない。適切なアダプタがあれば、たとえば静脈または半月板ですら製造することも可能である。本発明によるバイオリアクタは、それらの場合にも関連製品が製造できるようにするために、生体内で一般的な生理条件を正確に模擬する可能性を提供する。また、本バイオリアクタは、たとえば金属の人工心臓弁などの医療的な組織工学による製品以外の製品に対して負荷試験を行う場合にも著しく好適である。それらの場合でも、たとえば関連する弁に対して、この弁が成長しているかどうかにかかわらず耐久性試験を実行するために、生理条件を正確に模擬することができる。
【0063】
以上の説明は、単に本発明の可能性のある実施の形態の例を示したにすぎない。そのため、後者を制限するような解釈がされるべきではない。本発明が制限されるのは、原則的に以下の特許請求の範囲のみである。本発明の範囲内で様々な実施の形態が可能である。本装置はまた、たとえばDNAを合成するために用いられてもよい。その場合、生成物室4の代わりに、たとえば混合装置が図1および2に示された装置内に設けられてもよい。さらに、2つの液室3および液室5が使用される必要はなく、弁装置は必ずしも連続的に変化する調整が可能である必要はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁を備え、液体が流れ方向(8)に流れ、流れ方向(8)に見たときに液体が流路(2)の内部を、または流路(2)に沿って連続的に流れる連続的な流路(2)と、
容積が調節可能な第1の液室(3)と、
負荷がかけられる医療用品(41)を収容するための生成物室(4)と、
容積が調節可能な第2の液室(5)と、
第1の閉状態では流路(2)を閉鎖し第2の開状態では流路(2)を通って液体が流れることができるようにする弁部材(61)を有する弁装置(6)と、
第1の液室(3)の容積を変化させることにより、流路(2)を通る流れ方向(8)への液体の流れを生じさせる流れ手段と、を含み、
弁部材材(61)を第1の状態と第2の状態との間で連続的に変化する調整が可能な操作手段を有することを特徴とする埋め込み型の医療用品(41)に負荷をかけるための装置(1)。
【請求項2】
弁装置(6)は、連続的な流路(2)の壁の硬質部分に対して弁部材(61)を接続するための、少なくとも部分的に柔軟性のある接続部材(65)を有することを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
接続部材(65)の柔軟部分は、弾性を有することを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
接続部材(65)の柔軟部分は、流路(2)の壁の一部を構成することを特徴とする請求項2または3に記載の装置(1)。
【請求項5】
操作手段は、接続部材(65)の柔軟部分を変形させることにより弁部材(61)の配置を調整するように構成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
操作手段は、接続部材(65)の柔軟部分の外側に空気圧室(66)と、前記空気圧室(66)の内圧を変化させるための空気圧手段とを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
空気圧室(66)は、接続部材(65)の柔軟部分の外側に取り外し可能に設けられた囲壁(67)を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
弁部材(61)は、少なくとも部分的に柔軟性を有し、より好ましくは弾力性を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
流れ手段は、第2の液室(5)の容積を変化させることにより、流路(2)内で流れ方向(8)に液体を流すようさらに構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
液室(3,5)のうちの少なくとも一方は、少なくとも部分的に柔軟性を有し、より好ましくは弾力性を有する壁(30,50)を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
液室(3,5)のうちの少なくとも一方の柔軟な壁(30,50)は、接続部材(65)および/または弁部材(61)の柔軟部分と同じ材料でできていることを特徴とする請求項10に記載の装置(1)。
【請求項12】
流れ手段は、液室(3,5)のうちの少なくとも一方の柔軟な壁(30,50)を変形させることにより、関連する液室または液室(3,5)の容積を変化させるよう構成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の装置(1)。
【請求項13】
流れ手段は、液室(3,5)のうちの少なくとも一方の柔軟な壁(30,50)の外側に、追加的な空気圧室(37,57)のうちの少なくとも一方を含み、前記追加的な空気圧室(37,57)の内圧を調整するための追加的な空気圧手段を含むことを特徴とする請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
追加的な空気圧室(37,57)のうちの少なくとも一方は、液室(3,5)のうちの少なくとも一方の柔軟な壁(30,50)の外側に、取り外し可能に設けられた囲壁(38,58)を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
液室(3,5)のうちの少なくとも一方の柔軟な壁(30,50)は、負荷がかけられていない状態において実質的に凸形状であることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項16】
凸形状の柔軟な壁(30,50)の壁厚は、頂部から遠ざかるほど厚くなっていることを特徴とする請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
凸形状の柔軟な壁(30,30’,50)には、使用時に変形した領域を凸形状の柔軟な壁(30,30’,50)の非肥厚部に誘導するための肥厚部(301)が局所的に設けられていることを特徴とする請求項15または16に記載の装置(1)。
【請求項18】
凸形状の柔軟な壁(30,50)の反対側に位置する液室(3,5)の壁(32)の一部は、凸形状であることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項19】
凸形状の柔軟な壁(30,50)の反対側に位置する液室(3,5)の壁(32,53)の一部は、硬質であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項20】
液室(3,5)は、第1の筐体部(11)および第2の筐体部(12)により規定され、第1の筐体部(11)と第2の筐体部(12)とは、液漏れしない状態で相互に接続されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項21】
第1の筐体部(11)と第2の筐体部(12)との間に密閉手段(33)を有し、
密閉手段(33)は、第1の筐体部(11)と第2の筐体部(12)との間で吸引結合をもたらすために、2つの唇部(34,34’)の間で圧力が低下した容積を取り囲む2つの唇部(34,34’)を有することを特徴とする請求項20に記載の装置(1)。
【請求項22】
第1の筐体部(11)は射出成形により形成され、少なくとも部分的に硬質であり、
前記第1の筐体部(11)は、弁装置(6)の接続部材(65)の柔軟部分および/または第1の液室(3)および/または第2の液室(5)の柔軟な壁(30,50)を少なくとも含むことを特徴とする請求項10〜21のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項23】
液室(3,5)の壁の硬質部分(32,53)は第1の筐体部(11)と一体であり、前記液室(3,5)の柔軟な壁(30,50)は第2の筐体部(12)と一体であることを特徴とする請求項22に記載の装置(1)。
【請求項24】
第2の筐体部(12)は、射出成形で形成され、柔軟な壁(30,50)が第1の筐体部(11)と一体である液室(3,5)の壁の硬質部分(32,53)を含み、硬質の壁部が第1の筐体部(11)と一体である液室(3,5)の柔軟な壁(30,50)を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置(1)。
【請求項25】
第1の筐体部(11)と第2の筐体部(12)とは同一形状であることを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項26】
射出成形で形成された少なくとも1つの筐体部(11,12)を含み、
少なくとも1つの筐体部(11,12)を射出成形で形成するために、複数の筐体部(11,12)を1つの同じ射出成形ステップで、好ましくは同時に射出成形するための射出成形金型が提供されることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項27】
連続的な流路は、少なくとも2つの液体の静的混合を実現するための三次元の混合流路を有する混合装置を含むことを特徴とする請求項1〜26のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項28】
三次元の混合流路の一部は第1の筐体部に位置し、一部は第2の筐体部に位置することを特徴とする請求項27に記載の装置(1)。
【請求項29】
液体が流れ方向に流れ、液体が流路の内部を、または流路に沿って流れる連続的な流路と、
容積が調節可能な少なくとも1つの液室と、
第1の閉状態では流路を閉鎖し第2の開状態では流路を通って液体が流れることができるようにする弁部材を有する弁装置と、を含み、
第1の液室の容積を変化させることにより、流路を通る流れ方向への液体の流れを生じさせる流れ手段と、
少なくとも2つの液体の静的混合を実現するための三次元の混合流路を有する混合装置と、をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項30】
第1の筐体部(11)および/または第2の筐体部(12)を1つの金型で射出成形するステップを含み、
柔軟部分の材料と硬質部分の材料とは同一の射出成形ステップにより、好ましくは同時に射出されることを特徴とする請求項20〜28のいずれかに記載の装置(1)を製造するための方法。
【請求項31】
第1の液室(3)の容積と、第2の液室(5)の容積とを互いに独立して変化させることにより、装置(1)の少なくとも1つの液室(3,5)の液圧を変化させるステップを含むことを特徴とする請求項1〜28のいずれかに記載の装置(1)を操作するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−504429(P2012−504429A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524922(P2011−524922)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050503
【国際公開番号】WO2010/024669
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(501276430)テクニーシェ・ユニバーシタイト・アイントホーベン (7)
【Fターム(参考)】