説明

埋め込み型装置内への適応的事象記憶

将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態を検出するために、埋め込み型生理的監視部を使用して生理的パラメータを監視し、将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態に関連するさらなる生理的データを収集する。現在の病理的エピソードの開始を示す状態を検出するために、生理的監視部を使用して別の生理的パラメータを監視し、その状態に応答してさらなる病理学データを収集する。将来のエピソードを予測する状態および現在のエピソードを示す状態が関連すると判定し、その判定に応答して、全ての収集された生理的データを記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2009年5月27日に出願された「Adaptive Event Storage in an Implantable Device」という名称の米国仮出願第61/181,542号(代理人文書番号第279.G95PRV号)の優先権の利益を主張し、当該米国仮出願の全体を参照により本明細書に組込む。
【背景技術】
【0002】
心臓調律管理装置は、心臓調律の乱れを処置するために、心臓の選択された腔に電気刺激を供給する埋め込み型装置を含むことができる。たとえば、埋め込み型ペースメーカは、心拍数が低くなり過ぎる徐脈性不整脈を処置するために、タイミングを取ったペーシングパルスを心臓に送出することができる。心臓調律管理装置の別の例では、埋め込み型カルディオバータ/除細動器は、心拍数が速くなり過ぎる頻脈性不整脈を処置するために抗頻脈性不整脈ペーシング(ATP)あるいはカルディオバージョンまたは除細動ショックを送出することができ、徐脈性不整脈ペーシング能力も含むことができる。なお別の例では、埋め込み型心臓再同期治療(CRT)装置は、心拍出量を改善するためのより効率的な収縮を得るために、(心拍数を変えてまたは変えないで)心臓収縮を空間的に協調させるペーシングレベルパルスを送出することができ、こうした能力は、ペーサ、カルディオバータ、または除細動器と組合されることがある。なおさらなる例では、埋め込み型神経刺激装置は、心臓血管性能に影響を及ぼすように自律神経平衡を調整するため、交感神経系または副交感神経系の一方を刺激するかまたは抑制するなどのために、自律神経系の所望の部分に電気エネルギーを送出するのに使用されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心臓調律管理装置は、治療が送出される方法に影響を及ぼす多数の異なるパラメータ設定を用いてプログラムすることができる。医師が患者を監視しながら埋め込み後にこれらのパラメータの初期プログラムが行われることがある。こうした場合、医師は、電位図または短期の臨床状況で入手可能な他の生理的情報に基づいて装置をプログラムする。しかし、患者の状態は後で変化することがある。長い期間たとえば定期的に予定される外来患者の診療所訪問間の期間にわたって、長期継続的に正確な電位図または他の生理的情報を取込むことは、医師が、必要ならば装置を再プログラムしたり、患者の状態を診断し評価するのに役立つことがある。
【0004】
本発明者等は、とりわけ、頻脈性不整脈または他のエピソードデータを記録することに対する従来の手法が、その状態の本当の発現を記録することに失敗することがあると認識した。エピソードの発現を見落とすと、記録されたデータが、処置する医師にとって役にたたなくなる。心臓調律管理装置内に存在するメモリ制約のために発現情報が見落とされることがある。本システムおよび方法は、とりわけ、複数のデータバッファおよびさらなるトリガー基準の使用などによって、頻脈性不整脈エピソード等の本当の発現を捕捉することに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例1の主題には、埋め込み型生理的データ監視部、プロセッサ、スタティックメモリバッファ、ローリングメモリバッファ、およびメモリを備えるシステムが含まれる。埋め込み型生理的データ監視部は、1つまたは複数の生理的データパラメータを監視するように構成される。プロセッサは、埋め込み型生理的データ監視部に結合され、将来の考えられる病理的エピソードを予測し、現在の病理的エピソードの開始を示す状態を検出するように構成される。将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態の検出は、埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第1の生理的データパラメータを使用して達成される。現在の病理的エピソードの開始を示す状態の検出は、埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第2の生理的データパラメータを使用して達成される。スタティックメモリバッファは、将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態の検出によってトリガーされると、第3の生理的データパラメータの時間セグメントを記憶するように構成される。ローリングメモリバッファは、第4の生理的データパラメータの一定セグメントを記憶するように構成される。第3の生理的データパラメータおよび第4の生理的データパラメータは共に、埋め込み型生理的データ監視部によって監視される。メモリは、スタティックメモリバッファおよびローリングメモリバッファ内に保持されたデータを記憶するように構成される。メモリへの記憶は、現在の病理的エピソードの開始を示す状態の検出によってトリガーされる。
【0006】
例2では、例1の主題は、将来の病理的エピソードを予測する状態が現在の病理的エピソードに関連すると判定するように構成されるプロセッサを含む。判定に応答して、スタティックメモリバッファ内に保持されたデータは、ローリングメモリバッファ内に保持されたデータに関連付けられることになる。
【0007】
例3では、例2の主題は、プロセッサは、少なくとも部分的に、将来のエピソードを予測する状態が現在の病理的エピソードの指定された期間内に起こったと判定することによって、2つの状態が関連すると判定するように構成されるプロセッサを含む。
【0008】
例4では、例3の主題は、現在の病理的エピソード状態が開始するまで予測状態が実質的に持続したと判定することによって、将来の病理的エピソードを予測する状態が現在の病理的エピソードに関連すると判定する。判定はまた、予測状態がその間持続した、指定された期間を含む。
【0009】
例5では、例4の主題は、予測状態が、ある期間を除いて、予測状態の最初の検出と、現在の病理的エピソード状態の開始を示す状態の検出との間に実質的に持続したと判定する。
【0010】
例6では、例1乃至5の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で不整脈エピソードを含む病理的エピソードを含む。
例7では、例1乃至6の任意の1つまたは複数の主題は、生理的データの少なくとも指定された数の連続的測定値がテストを満たすときを検出することを含む、状態のいずれかの検出を含む。
【0011】
例8では、例1乃至6の任意の1つまたは複数の主題は、生理的データの変化速度がテストを満たし、かつ、身体運動を示していないときを検出することを含む、状態のいずれかの検出を含む。
【0012】
例9では、例1乃至8の任意の1つまたは複数の主題は、同じ生理的特性を示す、第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つを含む。
例10では、例1乃至8の任意の1つまたは複数の主題は、異なる生理的特性を示す、第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つを含む。
【0013】
例11では、例1乃至8の任意の1つまたは複数の主題は、同じ生理的特性を示す、少なくとも第1および第2の生理的データパラメータを含む。例11では、監視される生理的特性は、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、血液ガス、血液化学物質(blood chemistry)、呼吸数、心房対心室心拍数、または心拍数安定の少なくとも1つを含む。
【0014】
例12では、例1乃至11の任意の1つまたは複数の主題は、心電図センサ、心拍数センサ、心音センサ、圧力センサ、血液ガスセンサ、神経電気記録図センサ、姿勢センサ、呼吸センサ、または、化学センサの1つまたは複数を監視するように構成される監視モジュールを含む。
【0015】
例13は、第1の生理的データパラメータを監視すること、将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態を検出すること、第2の生理的データパラメータを収集すること、第3の生理的データパラメータを監視すること、現在の病理的エピソードの開始を示す状態を検出すること、および、第4の生理的データパラメータを収集することを任意選択で含むために、例1乃至12の任意の1つを含む、または、任意の1つと組合される。第1および第2の生理的データパラメータを監視することは、埋め込み型データパラメータ監視部を使用して行われる。第2の生理的データパラメータは、将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態に関連する。第4の生理的データパラメータを収集することは、現在の病理的エピソードの開始を示す状態を検出することに応答して行われる。第4の生理的データパラメータは、現在の病理的エピソードの開始を示す状態に関連する。
【0016】
例14では、例13の主題は、将来の考えられる病理的エピソードが現在の病理的エピソードに関連すると判定することを含む。さらに、その状態が現在の病理的エピソードに関連すると判定することに応答して、例13の主題はまた、収集された第2の生理的データを、第4の生理的データに関連付けて記憶する。
【0017】
例15では、例14の主題は、任意選択で、予測状態が現在の病理的エピソードに関連すると判定することを含むことができ、任意選択で、予測状態が現在の病理的エピソードの指定された期間内に起こったと判定することを含むことができる。
【0018】
例16では、例14の主題は、任意選択で、予測状態が現在の病理的エピソードに関連すると判定することを含むことができ、任意選択で、現在の病理的エピソードの開始を示す状態が検出されるまで、予測状態が、指定された期間の間、実質的に持続したと判定することを含む。
【0019】
例17では、例16の主題は、任意選択で、その間に予測状態が存在しなかった、予測状態の最初の検出と、現在の病理的エピソードの開始を示す状態の検出との間の期間を検出することを含む、予測状態が実質的に持続したと判定することを含む。
【0020】
例18では、例13乃至17の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、将来の考えられる不整脈エピソードを予測する状態を検出することを含む、予測状態を検出することを含む。
【0021】
例19では、例13乃至18の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、監視される生理的データパラメータの少なくとも指定された数の連続的測定値がテストを満たすことを検出することを含む、状態の一方を検出することを含む。
【0022】
例20では、例13乃至18の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、監視される生理的データパラメータの変化速度がテストを満たし、身体運動に対応する表示が検出されないことを検出すること含む、状態の一方を検出することを含む。
【0023】
例21では、例13乃至20の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、同じ生理的特性を示す、第1、第2、第3、および第4の生理的データパラメータの少なくとも2つを含む。
【0024】
例22では、例13乃至20の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、異なる生理的特性を示す、第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つを含む。
【0025】
例23では、例13乃至20の任意の1つまたは複数の主題は、任意選択で、同じ生理的特性を示す、少なくとも第1および第2の生理的データパラメータを含む。例23では、監視される生理的特性は、任意選択で、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、血液ガス、血液化学物質、呼吸数、心房対心室心拍数、発現時心拍数(heart rate onset)、または心拍数安定の少なくとも1つを含む。
【0026】
これらの例は、任意の置換または組合せで組合される。この概要は、本特許出願の主題の概要を提供することを意図される。この概要は、本発明の排他的なまたは網羅的な説明を提供することを意図しない、詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれる。
【0027】
必ずしも一定比例尺に従って描かれていない図面では、同じ数字は、異なる図において類似のコンポーネントを述べる可能性がある。異なる添え字を有する同じ数字は、類似のコンポーネントの異なる例を示す可能性がある。図面は、一般に、本文書で論じる種々の実施形態を、制限としてではなく例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)(B)は不整脈エピソードを示す電位図データの複数のタイムラインセグメントの例示的な再現の図である。
【図2】エピソードの発現を含む不整脈エピソードを示す電位図(EGM)データの1つのタイムラインセグメントの実施例の再現の図である。
【図3】外部プログラミングおよび診断装置に通信可能に結合された埋め込み型心臓調律管理システムの実施例を示すブロック図である。
【図4】適応的事象記憶を可能にするように構成された埋め込み型心臓調律管理システムの実施例を示すブロック図である。
【図5】埋め込み型CRM装置における適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。
【図6】埋め込み型CRM装置における適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。
【図7】(A)(B)(C)はエピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図8A】エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図8B】エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図8C】エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図8D】エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図9】埋め込み型CRM装置におけるエピソード後適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。
【図10】(A)(B)はエピソード後事象の記憶をトリガーするときを決定する方法の実施例を示すタイムライン図である。
【図11】外部プログラミングおよび診断コンピュータの実施例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述したように、CRM装置を再プログラムしようと試みるとき、医師にとって装置性能に関する詳細な情報、特に不整脈等の病理的エピソードに関する情報が役立つことがある。以下は、頻脈性不整脈または他の病理的エピソードについて発現データを取込むことを含む、電位図(EGM)データなどの詳細な情報を医師に提供する方法およびシステムについて説明する。
【0030】
図1A及び1Bは、不整脈エピソードを示す電位図(EGM)データの複数のタイムラインセグメントを例示的に再現したものである。ある実施例では、例証100は、EGM発現タイムラインセグメント130、エピソード前EGMタイムラインセグメント140、およびエピソード後EGMタイムラインセグメント150を含む。図示した各EGMタイムラインセグメントは、心臓機能を示す電気信号を表す、検知されまた誘発された脱分極を示すグラフィカル部分110を含む。この実施例では、各EGMタイムセグメントはまた、グラフィカルディスプレイ120の底部に沿って記された種々の装置マーカ120を含む。この実施例では、装置マーカは、グラフィカルEGMデータに時刻同期される。装置マーカは、とりわけ、心房センス(AS)、右心室センス(VS,VT,VF)、右心室ペース(VP)、左心室センス(LVS)、左心室ペース(LVP)、ノイズ抑制ペース、持続的ノイズ、心室後心房不応期(PVARP)延長、および心房頻脈性不整脈反応(ATR)などのオペレーションインジケータを含む。EGMタイムラインデータは、医師が、ある期間にわたって患者の心臓機能を詳細に調べることを可能にする。脱分極モルフォロジーを可視化できることは、さらなる処置およびCRM装置プログラミングのために価値ある情報を医師に提供する。
【0031】
図2は、エピソードの発現を含む頻脈性不整脈エピソードを示す電位図(EGM)データの1つのタイムラインセグメントを再現したものである。この実施例では、例証200は、EGMタイムラインセグメント210を含み、エピソード発現を示す部分220が強調されている。EGMタイムラインデータを記憶することは、かなりの量のメモリ、(60BPMで)約1.7KB/心周期を使用するため、医師にとって関心のあるタイムセグメントだけを取込む方法が特に有利であることを本発明者等は認識した。埋め込み式装置の動作は外部プログラマを用いて監視することができるが、不整脈エピソードまたは他の関心事の発生の一部は、断続的にまたは特別な状況下で起こるだけであり、医師の診察場所で再現性よく発生しない。ある状況では、頻脈性不整脈エピソードなどの場合、エピソードの発現時に記録されたデータを医師が観測することが非常に有用である。したがって、将来のエピソードを予測する事象かまたは将来のエピソードの発現の兆候である事象に基づいてデータを取込み、その後、220などの発現タイムラインEGMデータを、後で取込まれる実際のエピソードデータに関連付ける方法は、臨床的に有用な結果をもたらす。
【0032】
図3は、外部プログラミング可能および診断装置に通信可能に結合された埋め込み型心臓調律管理システムの実施例を示すブロック図である。この実施例では、システム300は、埋め込み型医療装置(IMD)305、生理的データセンサ310、および外部装置320を含む。ある実施例では、IMD305は、患者の心臓に対する心臓調律治療を行うために使用される心臓調律管理(CRM)装置を含む。ある実施例では、生理的データセンサ310は、検知された脱分極情報と誘発反応脱分極情報の両方を含むような、EGMデータを検出するために使用することができる。別の実施例では、生理的データセンサ310は、とりわけ心拍数、呼吸数、または血圧などの心臓動作に関連する1つまたは複数の生理的パラメータを監視するために使用することができる。一部の実施例では、複数の関連する生理的パラメータを監視するために複数の生理的データ監視部を使用することができる。
【0033】
外部装置320は、IMD305をプログラムするため、または、IMD305から得られるデータを表示するために使用することができる。ある実施例では、外部装置はIMD305と通信するように構成されたラップトップなどのパーソナルコンピュータを含む。ある実施例では、外部装置は有線通信リンクを介してIMD305と通信する。別の実施例では、外部装置320は無線通信リンクを通じてIMD305と通信する。ある実施例では、外部装置320はIMD305からデータを受信し、コンピュータディスプレイ上などでそれを表示する。外部装置320はまた、医師、技師、エンジニア、または他のユーザが、患者を監視するかまたは診断する、あるいは、IMD305の1つまたは複数の動作パラメータを調整するのを補助するために、1つまたは複数の統計量を計算したり、さらなる解析を実施する。さらなる解析の実施例は、心房頻脈性不整脈反応(ATR)などの装置に記憶された病理的エピソード、処置済みのおよび未処置の心室頻脈性不整脈エピソード用のカウンタを作成することを含む。
【0034】
図4は、適応的事象記憶を可能にするように構成された埋め込み型心臓調律管理システムの実施例を示すブロック図である。ある実施例では、システム400は、埋め込み型医療装置305、1つまたは複数の生理的データセンサ310A、310B、…310N(以降で総称して310と呼ぶ)、および外部装置320を含む。システム400のある実施例では、IMD305は、生理的データ監視部410、プロセッサ420、およびメモリ465を含む。いくつかの実施例では、プロセッサ420は、プロセッサ425および通信バス430を含む。ある実施例では、通信バス430は、生理的データ監視部410と、プロセッサ425と、メモリ465との間の通信を可能にする。いくつかの実施例では、メモリ465は、主メモリ460、第1のバッファ440、および第2のバッファ450を含む。ある実施例では、第1のバッファ440は、ローリングデータバッファを含む。この実施例では、ローリングデータバッファ440は、先入れ先出し(FIFO)メモリ装置として構成することができる。いくつかの実施例では、第2のデータバッファ450は、プロセッサまたは生理的データ監視部からデータのタイムセグメントを取込むように構成されたスタティックメモリバッファを含む。代替の実施例では、第2のデータバッファ450は、ローリングデータバッファ440と同様のFIFOメモリ装置として構成することができる。価値ある記憶空間を節約するために、データバッファ440、450ならびにメモリ460内で種々のデータ圧縮技法を使用することができる。一部の実施例では、データバッファ440、450およびメモリ460のそれぞれの中で異なるデータ圧縮技法を使用することができる。
【0035】
ある実施例では、通信バス430またはプロセッサ420は、第1のバッファ440、第2のバッファ450、主メモリ460、メモリ465、または生理的データ監視部410の任意の組合せと直接通信することが可能である。いくつかの実施例では、通信バス430は、他の装置コンピュータ間の直接通信接続の場合に省略可能である。
【0036】
ある実施例では、生理的データ監視部410は、1つまたは複数の生理的データセンサ310からデータを受信する。いくつかの実施例では、生理的データセンサ310は、内部センサとも呼ばれる、患者の身体内に埋め込まれたセンサを含む。他の実施例では、生理的データセンサ(複数可)310は、患者によって装着されるかまたは運ばれるか、患者の皮膚に付着されるか、あるは、患者の皮膚に対して装着されるような、携帯型のまたは他の外部センサを含む。一部の実施例では、生理的データセンサ310は、外部センサと内部センサの両方を含む。ある実施例では、生理的データセンサ310は、心音センサ、血圧センサ、姿勢センサ、呼吸センサ、活動センサ、または化学センサを含む。この実施例では、生理的データ監視部410は、センサのうちの任意のまたは全てのセンサからデータを受信し、受信データを、IMD305の他の部分または外部インタフェース装置などに通信するように構成される。
【0037】
受信されると、監視される生理的データはプロセッサ425に転送されるか、または、第1のバッファ440、第2のバッファ450、または主メモリ460の1つまたは複数に直接記憶される。この実施例では、第1のバッファ440、第2のバッファ450、または主メモリ460の任意のものが外部装置320によってアクセスされる。一部の実施例では、メモリ465は、通信リンクを通じて外部装置320にアクセス可能である。上述したように、外部装置320とIMD305との間の通信リンクは、有線または無線であり得る。
【0038】
図5は、埋め込み型CRM装置で使用される適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。ある実施例では、方法500は、第1の生理的データパラメータの監視510、エピソード予測状態(episode predictor condition)の検出520、第2の生理的データパラメータの収集530、第3の生理的データパラメータの監視540、エピソード開始状態の検出550、および、第4の生理的データパラメータの収集560を含む。
【0039】
510にて、ある実施例の方法500は、生理的データ監視部410が心拍数または呼吸数などの第1の生理的データパラメータを監視することで始まる。ある実施例では、生理的データ監視部410は、1つまたは複数の生理的データセンサ310を使用して、監視されるパラメータを患者から取得する。
【0040】
520にて、方法500は、監視される第1の生理的データパラメータを使用してエピソード予測状態を検出することによって継続する。エピソード予測状態は、監視対象の将来の考えられるエピソードの指標となる任意のテストや閾値等であり得る。ある実施例では、将来の頻脈性不整脈エピソードのエピソード予測状態は、頻脈性不整脈予測閾値を超えるが実際の頻脈性不整脈検出閾値よりは小さい上昇心拍数である。たとえば、頻脈性不整脈検出心拍数ゾーンは150bpm(拍動/分)で始まり、心調律がこの速度を超えると頻脈性不整脈であると認定される場合、本明細書で述べるように、将来の考えられる頻脈性不整脈エピソードの発現に関する情報の収集等に役立つように、エピソード予測状態は120bpmに設定されることがある。
【0041】
この実施例は心拍数に焦点を当てたが、エピソード予測状態は、IMD305によって管理される任意の数の生理的データパラメータまたは統計量によってトリガーされてもよい。例示的な生理的データパラメータとしては、心拍数、呼吸数、電位図モルフォロジー、血圧、心房対心室心拍数、または心拍数安定が挙げられる。いくつかの実施例では、エピソード予測状態は、複数の生理的データパラメータの組合せを含む。一部の実施例では、エピソード予測状態は、監視される生理的データパラメータの変化速度が指定されたテストを満たすときにトリガーするように構成される。ある実施例では、指定されたテストを満たすことは、閾値変化速度、たとえば心拍数の速い加速を超えることを含む。これらの実施例では、IMD305はまた、身体運動も検出する場合、速い変化速度を限定するまたは無視するように構成される。ある実施例では、エピソード予測状態は、医師がデータ収集のためにあるパラメータまたは状態に的を絞ることができるように、医師によってプログラムされることができる。適切にプログラムされると、エピソード予測状態は、たとえば将来の頻脈性不整脈エピソードの実際の発現などの将来のエピソードの実際の発現を含むデータを、IMD305が収集し記憶することを可能にする。
【0042】
530にて、方法500は、1つまたは複数の生理的データセンサ310から第2の生理的データパラメータを収集することなどによって継続する。ある実施例では、第2の生理的データパラメータは、生理的データ監視部410によって収集され、メモリ465内に記憶される。いくつかの実施例では、第2の生理的データパラメータは、データバッファ4340内に記憶される。ある実施例では、データバッファ440は、一定時間前にまた一定時間後に、一定量の生理的データを保持することが可能なスタティックデータバッファである。たとえば、エピソード予測状態が検出されると、生理的データ監視部410は、次の10秒のデータを収集するように指令されることができ、その次の10秒のデータは、その後、スタティックデータバッファ440内に以後の出力用または解析用等のために記憶される。生理的データ監視部410によってスタティックデータバッファ440内に記憶されるデータ量は、スタティックデータバッファ440に専用のメモリサイズによって構成され、制限される。別の実施例では、データバッファ440は、一定量の生理的データを一定時間の前後で保持することが可能なデータバッファである。この実施例では、エピソード予測状態が検出されると、データバッファ440は、エピソード予測状態の前の生理的データ監視部410から収集されるデータのある部分およびエピソード予測状態後に収集されるデータのある部分を保持する。
【0043】
540にて、方法500は、次に第3の生理的データパラメータを監視する。ある実施例では、第3の生理的データパラメータは、生理的データ監視部410によって監視される。
【0044】
550にて、方法500は、第3の生理的データパラメータを使用してエピソード開始状態を検出する。ある実施例では、エピソード開始状態は、頻脈性不整脈などの実際のエピソードを示す。エピソード開始状態の検出は、1つまたは多くの異なる事象によってトリガーされることができ、実施例は、対応する身体運動の検出がない状態での(たとえば、たとえば150bpmを超える頻脈性不整脈速度ゾーン内の)速い心拍数または突然の呼吸増加を含む。
【0045】
560にて、IMD305は、実際のエピソード中に、関心のある第4の生理的データパラメータを収集することなどによって、検出されたエピソード開始状態に応答する。ある実施例では、エピソード開始状態は、生理的データ監視部410による第4の生理的データパラメータの収集をトリガーする。収集されたデータは、外部プログラミング装置320へのさらなる出力またはプロセッサ425による解析などのために、メモリ465内に記憶される。いくつかの実施例では、第4の生理的データパラメータは、ローリングデータバッファ450内に収集される。ローリングデータバッファ450は、先入れ先出し(FIFO)方式などで一定量のデータを記憶するように構成される。FIFO構成では、IMD305は、第4の生理的データパラメータのうちの指定されたあるタイムセグメントを絶えず維持することが可能になる。たとえば、FIFOバッファ450が、データを受信している時間の任意の所与の瞬間に30秒のEGMタイムラインデータを記憶できるように構成されている場合、IMD305は、過去の30秒のEGMタイムラインデータにアクセスできる。ローリングバッファ内にデータを記憶することにより、指定された長さのバッファ内で、過去の事象を取込むことが可能になる。ある実施例では、エピソード開始状態を検出することは、ローリングデータバッファ450の現在のコンテンツをメモリ460に記憶するようにIMD305をトリガーする。ある実施例では、エピソード開始状態の検出は、コンテンツをメモリ460内に記憶する前に、さらなる指定期間のデータをローリングデータバッファ内に収集するようにIMD305をトリガーする。たとえば、ローリングデータバッファが30秒のデータを記憶することが可能である場合、IMD305は、エピソード開始状態の検出後、20秒のデータを収集するように構成されることができ、エピソード開始状態の前の10秒のデータと検出後の20秒のデータとが、メモリ460に後で記憶するために利用可能であることになる。さらに、IMD305は、ローリングデータバッファ450のコンテンツをメモリ460内に繰返し記憶することによって、エピソード開始状態が検出された後により多くのデータを記憶するように構成される。ある実施例では、ローリングデータバッファ450は、10秒のデータを記憶することが可能である。この実施例では、エピソード開始状態が検出されると、ローリングデータバッファ450内に記憶された過去の10秒のデータがメモリ460に記憶される。その後、ローリングデータバッファ内に記憶された、2つのさらなる10秒のデータセグメントがメモリ460に記憶される。そのため、30秒のエピソードデータは、ちょうど10秒のデータを記憶することが可能なローリングデータバッファ450を使用してメモリ460にセーブされる。この実施例では、ローリングデータバッファ450のサイズは、保持されるエピソード開始状態の検出の前の時間長を決定する。
【0046】
一部の実施例では、IMD305は、構成された複数のトリガー条件を有することができ、IMD305はまた、どのトリガー条件が特定の記憶事象をもたらしたかについての表示を記憶する。ペーシングされた心室拍動の実際のパーセンテージまたはエピソード開始状態に先行する指定された時間間隔にわたる平均PR間隔などの、現在のエピソードに関するさらなる統計的情報が記憶される。同様に、患者の状態に関するさらなるデータは、エピソードに関して記憶されたデータに関連する状況または症状を診断するときに有用である。したがって、IMD305はまた、心房速度、心室速度、身体活動または運動レベル、呼吸数、自律神経平衡、日付け、または時間などの項目を記憶する。トリガー条件が満たされるときに記憶されるデータに加えて、システムはまた、トリガーパラメータの1つまたは複数に関する情報を連続的に記憶する。ある実施例では、IMD305は、ペーシングまたは他の治療がその間に送出される時間のパーセンテージを連続的に記憶する。このデータは、その後、経時的な傾向として表示される。
【0047】
図6は、埋め込み型CRM装置における適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。この実施例では、方法600は、エピソード予測状態がエピソード開始状態に関連するかどうかを判定するさらなる工程610と、エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付けるさらなる工程620と、収集された第2および第4の生理的データを、互いに関連付けてなどで記憶するさらなる工程630とを含むことなどによって、方法500に基づいて築くことができる。方法600は、エピソード予測状態が満たされたが、エピソード予測状態が実際の後のエピソードを予測しなかった、考えられる状況に対処する。エピソード予測状態およびエピソード開始状態が、実際に互いに(たとえば、同じエピソードに)関連するかどうかは、エピソード予測状態とエピソード開始状態との間の時間、エピソード予測状態の継続した存在、あるいは、1つまたは複数の他の監視される生理的データパラメータとの相関関係などの、1つまたは複数の因子に基づいてなどで判定される。さらに、エピソード予測状態およびエピソード開始状態が、実際に関連するかどうかは、エピソード予測状態の継続した存在または非存在に関する情報と組合せた、エピソード予測状態とエピソード開始状態との間の期間などの、因子の組合せを使用して判定される。エピソード予測状態およびエピソード開始状態が、実際に同じエピソードに関連するかどうかを判定するための考えられる技法の一部の実施例は、図7A乃至7Cおよび図8A乃至8Cに示される。
【0048】
図7A乃至7Cは、エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。図7Aは、ローリングバッファ710、スタティックバッファ720、エピソード予測状態730、エピソード開始状態740、および指定された期間750を示す。同様の要素は、図7Bおよび図7Cで見出されることができ、図7Bおよび図7Cは、図7Aで示すシナリオの異なる変形の実施例を示す。これらの図は、期間750を使用してエピソード予測状態730およびエピソード開始状態740を関連付ける実施例を示す。これらの図のそれぞれにおいて、エピソード予測状態は時間T1にて検出され、エピソード開始状態は時間T2にて検出される。各図には、T2からT0に戻るように延びる、指定された期間750も示される。時間T0は、これらの実施例では、T1が、起こるが、依然としてエピソード予測状態730がエピソード開始状態740に関連付けられている時間上の最も早い時点を示す。
【0049】
図7Aは、エピソード予測状態730が、時間T0後十分経って検出される実施例を示す。したがって、この実施例では、エピソード予測状態730は、エピソード開始状態740に関連することになる。図7Bは、エピソード予測状態730が時間T0にて起こる(T0=T1)境界条件を示す。この境界条件が2つの状態を関係付けることになるかどうかは、IMD305がどのようにプログラムされているかに依存する。たとえば、T1がT0より大きく(すなわち、T2に近く)なければならないように、IMD305がプログラムされる場合、エピソード予測状態730は、エピソード開始状態740に関連しないことになる。しかし、T1がT0に近くなることを可能にするようにIMD305がプログラムされる場合、2つの状態が関連付けられることになる。図7Cでは、エピソード予測状態は、明らかに、時間的にT0の前に起こり、関連付けを行うために使用される期間750を外れる。そのため、発現データがスタティックバッファ720内に記憶され、頻脈性不整脈エピソードデータがローリングバッファ710内に記憶される、頻脈性不整脈エピソードの実施例では、頻脈性不整脈発現データは、図7Cに示す状況についてではなく、図7A乃至7Bに示す状況について、頻脈性不整脈エピソードデータに関連付けて記憶される。
【0050】
図7A乃至7Cで具体的に示されない実施例では、エピソード予測状態は、スタティックバッファ720内に記憶されたデータの任意の部分が期間750内に記憶された場合、エピソード開始状態に関連付けられる。この実施例では、図7A乃至7Cで示す3つのシナリオ全てが、スタティックバッファ720内に記憶されたデータが、ローリングバッファ710内に記憶されたデータに関連付けられることをもたらすことになる。
【0051】
図8A乃至8Cは、エピソード予測状態をエピソード開始状態に関連付ける方法の実施例を示すタイムライン図である。図8A乃至8Cはそれぞれ、ローリングバッファ710、スタティックバッファ720、エピソード予測状態830、エピソード開始状態840、および記録された生理的データのタイムセグメントを示すストリップチャート850の図を含む。これらの図は、エピソード予測状態が時間T1にて検出されるときと、エピソード開始状態が時間T2にて検出されるときとの間の、エピソード予測状態830の継続した(たとえば、「持続した(sustained)」)存在に基づいて、エピソード予測状態830とエピソード開始状態840との関連付けを示す。
【0052】
図8Aは、エピソード予測状態830の検出をもたらした生理的状態の継続した存在に基づいて、エピソード予測状態830が、エピソード開始状態840に関連付けられることになる実施例を示す。この実施例では、ストリップチャート850は、心拍数または呼吸数などの生理的パラメータを示す。ストリップチャートは、時間T1にて、生理的パラメータがエピソード予測閾値状態を超えて飛び上がることを示す。右に継続して、ストリップチャート850は、エピソード開始状態840が検出されるT2まで、生理的パラメータがエピソード予測閾値を超えたままであることを示す。そのため、この実施例は、エピソード予測状態がエピソード開始状態に関連付けられる状況を示す。
【0053】
図8Bは、エピソード開始状態840が検出されるまで、エピソード予測状態830が実質的に存在する必要があるだけであるなどの場合に、エピソード予測状態830が、エピソード開始状態840に関連付けられる実施例を示す。もう一度、ストリップチャート850には、時間T1にて、生理的パラメータがエピソード予測閾値状態830を超えて上昇することが示されている。しかし、図8Aに示すシナリオと違って、生理的パラメータは、時間T3にて、短時間の間、エピソード予測閾値より下がる。ある実施例では、エピソード開始状態840が検出されるまで、エピソード予測状態830が連続的に持続できないときはいつでも、エピソード予測状態とエピソード開始状態840とは関連していないと見なされる。別の実施例では、これら2つの状態が関連するために、エピソード開始状態840が検出されるまでにエピソード予測状態830が実質的に存在することだけが必要である。この実施例では、図8Bに示すエピソード予測状態830の短期間が非存在であってもこれら2つの状態の関連付けは妨げられないことになる。エピソード予測状態830の非存在の厳密な程度すなわち期間は、状況、監視される生理的データ、またはデータ収集の診断目的に応じて構成される。エピソード予測状態830の非存在の厳密な程度すなわち期間は、非存在の時間の絶対表示、すなわち、エピソード予測状態を最初に検出してからの経過時間に対する非存在の期間の総計の相対表示(たとえば、パーセンテージ)を使用して構成される。ある実施例では、図8Bは、エピソード予測状態があるレベルのヒステリシスを有するものとして述べる。
【0054】
図8Cは、エピソード開始状態840の検出までのエピソード予測状態830の持続性の欠如に基づいて、エピソード予測状態830が、エピソード開始状態840に関連付けられない実施例を示す。ストリップチャート850は、生理的パラメータが、時間T1にてエピソード予測状態830の検出をトリガーし、その後、時間T2にてエピソード開始状態840の検出をトリガーすることを示す。しかし、ストリップチャート850はまた、時間T1の直後に時間T3にて生理的パラメータがエピソード予測状態830より降下することを示す。この実施例では、時間T3と、エピソード開始状態840の検出が起こる時間T2との間で、生理的パラメータは、エピソード予測状態830の検出を再トリガーしない。この実施例では、エピソード予測状態830は、エピソード開始状態840に関連付けられないことになる。
【0055】
図8Dは、エピソード開始状態840の検出の前にエピソード予測状態830A、830Bが複数回起こる実施例を示す。この実施例では、ストリップチャート850は、生理的パラメータが時間T1および時間T1’にてエピソード予測状態830A、830Bの検出をトリガーすること示す。ある実施例では、第1のエピソード予測状態830Aの検出に関してトリガーされるスタティックバッファ720は、生理的パラメータが閾値より低かった時間860の長さのために破棄される。第1のスタティックバッファ720が無視される場合、第2のスタティックバッファ725だけがローリングバッファ710に関連付けられることになる。別の実施例では、期間860は、図8Bに述べたように、生理的パラメータ内の窪み(dip)が無視されるのに十分に短い可能性がある。これは、第1のスタティックバッファ720がローリングバッファ710に関連付けられる実施例である。図8Dに示す実施例では、図7A乃至7Cを参照して上述した規則に従って、スタティックバッファが共に、ローリングバッファに関連付けられるのに適格である場合、スタティックバッファ720、725の一方または両方が、ローリングバッファ710に関連付けられる。ある実施例では、時間的に最も早いスタティックバッファ、この場合、スタティックバッファ720が、ローリングバッファ710に関連付けられる。別の実施例では、指定された期間750内に起こるスタティックバッファだけが、ローリングバッファ710に関連付けられる。図8Dで示すように、スタティックバッファに対する関連付けを期間750内に制限することは、スタティックバッファ720を削除することになる。なお別の実施例では、エピソード開始状態840に対して時間的に最も最近のスタティックバッファ720は、ローリングバッファ710に関連付けられる。
【0056】
図6および方法600に戻って、エピソード予測状態がエピソード開始状態に関連すると判定される場合、状態は、620にて関連付けられる。エピソード予測状態とエピソード開始状態の関連付けは、収集された第2および第4の生理的データが、関連情報として記憶されることをもたらす。たとえば、スタティックバッファ440内に収集された第2の生理的データは、ローリングバッファ450内に収集された第4の生理的データに関連しているとしてメモリ460内に記憶される。このデータの関連付けは、ローリングバッファ450からの実際のエピソードデータに関係してスタティックバッファ440からの発現情報を医師が観察することを可能にし、エピソードのより完全な描写を提供する。
【0057】
610にて、エピソード予測状態がエピソード開始状態に関連していないと判定される場合、エピソード予測状態に応答して収集されたデータは破棄される。ある実施例では、エピソード予測状態が、後で関連するエピソードを実際には予測しない場合、収集されたデータは、エピソードの発現を正しく示さず、したがって、診断のために医師にとって関心がない。一部の実施例では、IMD305は、エピソード予測状態の検出の結果として収集される未関連付けデータを記憶するように構成される。これらの実施例では、医師は、後続のエピソードが起こったか否かによらず、そのデータに関心がある可能性がある、または、装置エンジニアは、どの種類のデータが、実際の後のエピソードを予測するが、そのエピソードをもたらすことができないかに関心がある可能性がある。
【0058】
図9は、埋め込み型CRM装置におけるエピソード後適応的事象記憶の方法の実施例を示すフローチャートである。ある実施例では、方法900は、第1の生理的データパラメータを監視すること910、エピソード開始状態を検出すること920、第2の生理的データパラメータを収集すること930、エピソード終了状態を検出すること940、および第3の生理的データパラメータを収集すること950を含む。
【0059】
910にて、ある実施例では、方法900は、生理的データ監視部410が、心拍数、呼吸数、またはEGMモルフォロジーなどの第1の生理的データパラメータを監視することで始まる。この実施例では、生理的データ監視部は、1つまたは複数の生理的データセンサ310を使用して、監視されるデータを患者から取得する。
【0060】
920にて、監視される第1の生理的データパラメータを使用して、方法900は、エピソード開始状態を検出することによって継続する。先に詳細に論じたように、エピソード開始状態は、プロセッサ425が1つまたは複数の生理的データパラメータを解釈することによって検出される。この実施例では、エピソード開始状態は、監視される第1の生理的データパラメータがある指定されたテストを満たすかどうかを判定することなどによって、プロセッサ425によって検出される。指定されたテストの実施例は、閾値を超えること、複数の連続する測定値が閾値を超えると判定すること、監視される生理的データパラメータの長い非存在を検出すること、またはこれらの因子のある組合せを含む。
【0061】
930にて、エピソード開始状態が920にて検出されると、方法900は、第2の生理的データパラメータのタイムセグメントを収集することによって継続する。ある実施例では、IMD305は、生理的データ監視部410を介して、EGMデータのタイムセグメントを収集し、それをメモリ465内に記憶する。別の実施例では、IMD305は、ローリングバッファ450内に現在記憶されている第2の生理的データパラメータのタイムセグメントの記憶をトリガーする。
【0062】
940にて、この実施例では、方法900は、904にてエピソード終了状態を検出することによって継続する。エピソード終了状態は、現在のエピソードの終了を示す。ある実施例では、エピソード終了状態は、IMD305が電気刺激などの治療を送出するときに検出される。いくつかの実施例では、エピソード終了状態は、監視される生理的パラメータの1つまたは複数が指定されたテストを満たすときに検出される。エピソード終了状態が検出されると、方法900は、950にて第3の生理的データパラメータを収集する。ある実施例では、第3の生理的データパラメータのタイムセグメントが、収集され、メモリ465内に記憶される。エピソード終了状態が検出されると収集されるデータは、心拍数、EGMデータ、圧力センサデータ、姿勢センサデータ、活動レベルデータ、呼吸センサデータ、化学センサデータ、または装置マーカを含む。収集され、その後記憶されるデータ量は、メモリ465などの利用可能なIMD305メモリならびに収集されるデータのタイプに依存する。たとえば、装置マーカデータのタイムセグメントは、EGMデータの同様なタイムセグメントに比べてずっとコンパクトである。
【0063】
ある実施例では、第3の生理的データの収集は、エピソード終了状態が検出されるとすぐにトリガーされる。別の実施例では、第3の生理的データの収集は、エピソード終了状態が検出されたときを超えた、指定された遅延後にトリガーされる。一部の実施例では、指定された遅延は、IMD305によって送出される治療のタイプに依存する。なお別の実施例では、第3の生理的データの収集は、別の生理的データパラメータが指定されたテストを満たすことを検出するとトリガーされる。指定されたテストは、生理的データパラメータが、指定された閾値より降下すること、または、一定のモルフォロジーを示す複数のEGMの検出を含む。いくつかの実施例では、第3の生理的データの収集は、これらの因子の組合せによってトリガーされる。
【0064】
図10A乃至10Bは、エピソード後事象記憶をトリガーするときを決定する方法の実施例を示すタイムライン図である。図10A乃至10Bはそれぞれ、ローリングバッファ1010、スタティックバッファ1020、エピソード開始状態1030、エピソード終了状態1040、およびエピソード後事象記憶トリガー1050の例証を含む。これらの図は、頻脈性不整脈などのエピソードが起こった後に生理的データ収集をトリガーするオプションの2つの実施例を示す。
【0065】
図10Aは、指定された期間に基づいてエピソード後事象記憶をトリガーする方法の実施例を示すタイムライン図である。この実施例では、期間1060は、エピソード終了状態の検出後の指定された期間である。指定された期間1060の終了は、エピソード後事象記憶をトリガーする。指定された期間1060は、とりわけ、エピソードタイプまたは収集されるデータに基づいて構成される。
【0066】
図10Bは、監視される生理的パラメータに基づいてエピソード後事象記憶をトリガーする方法の実施例を示すタイムライン図である。この実施例では、ストリップチャート1070は、心拍数または呼吸数などの生理的パラメータを示す。この実施例では、ストリップチャート1070は、生理的パラメータ(たとえば、心拍数)が、頻脈性不整脈などのエピソード開始状態1030をトリガーすることを示す。ストリップチャート1070は、その後、監視される生理的パラメータの変化または減少に対応するエピソード終了状態1040を示し、頻脈性不整脈エピソードからの回復を示す。この実施例では、監視される生理的パラメータのさらなる変化または減少が検出されるまで、事後(post)事象記憶1050はトリガーされない。ある実施例では、事後事象記録トリガー1050は、生理的パラメータが実質的に定常な状態に達するまで遅延される。
【0067】
エピソード後データ収集実施例:
実施例1では、システムは、生理的データ監視部、プロセッサ、ローリングメモリバッファ、スタティックメモリバッファ、およびメモリを備える埋め込み型医療装置を含む。生理的データ監視部は、1つまたは複数の生理的データパラメータを監視するように構成される。プロセッサは、生理的データ監視部に結合され、エピソード開始状態およびエピソード終了状態を検出するように構成される。エピソード開始状態は、現在の病理的エピソードの開始を示し、生理的データ監視部によって監視される第1の生理的データパラメータを使用して検出される。エピソード終了状態は、現在の病理的エピソードの終了を示す。ローリングメモリバッファは、生理的データ監視部によって監視される第2の生理的データパラメータの一定セグメント(fixed segment)を連続的に記憶するために使用される。スタティックメモリバッファは、エピソード終了状態の検出に関連するトリガー事象に基づいて、生理的データ監視部によって監視される第3の生理的データパラメータの時間セグメントを記憶するように構成される。メモリは、エピソード開始状態によってトリガーされると、ローリングメモリバッファ内に保持されたデータを記憶するように構成される。メモリはまた、埋め込み型装置によって後で使用されるため、または、外部装置に出力するために、スタティックメモリバッファ内に保持されたデータを記憶し、スタティックメモリバッファ内に保持されたデータを、ローリングメモリバッファ内に保持されたデータに関連付けるように構成される。
【0068】
実施例2では、実施例1のプロセッサは、埋め込み型医療装置が治療を送出するときに、エピソード終了状態を検出する。
実施例3では、実施例2のスタティックメモリバッファは、エピソード終了状態がプロセッサによって検出されるときを超えて、指定された遅延後にデータを記憶するようにトリガーされる。この実施例では、指定された遅延は治療依存性がある。
【0069】
実施例4では、実施例1の生理的データ監視部は、第4の生理的データパラメータを監視するように構成される。この実施例では、プロセッサは、監視される第4の生理的データパラメータがテストを満たすときに、エピソード終了状態を検出するように構成される。
【0070】
実施例5では、実施例4の生理的データ監視部は、第1および第4の生理的データが同じ生理的特性を示すように、また、監視される生理的特性が、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、血液ガス、血液化学物質、呼吸数、心房対心室心拍数、または心拍数安定の少なくとも1つを含むように構成される。
【0071】
実施例6では、実施例1乃至5のいずれか1つの生理的データ監視部は、第1、第2、および第3の生理的データの少なくとも2つが同じ生理的特性を示すように構成される。
実施例7では、実施例1乃至5のいずれか1つの生理的データ監視部は、第1、第2、および第3の生理的データの少なくとも2つが異なる生理的特性を示すように構成される。
【0072】
実施例8では、実施例1乃至7のいずれか1つの生理的データ監視部は、心電図センサ、心拍数センサ、心音センサ、圧力センサ、血液ガスセンサ、神経電気記録図センサ、姿勢センサ、呼吸センサ、または、化学センサの1つまたは複数を監視するように構成される。
【0073】
実施例9では、方法は、第1の生理的データパラメータを監視すること、エピソード開始状態を検出すること、第2の生理的データパラメータを収集すること、エピソード終了状態を検出すること、および第3の生理的データパラメータを収集することを含む。この実施例では、第1の生理的データパラメータを監視することは、埋め込み型生理的データ監視部を使用して達成される。エピソード開始状態を検出することは、監視される第1の生理的データパラメータを使用して達成される。エピソード開始状態は、現在の病理的エピソードの開始を示す。第2の生理的データパラメータの収集は、エピソード開始状態を検出することによってトリガーされる。第2の生理的データパラメータは、エピソード開始状態の検出に関連付けられる。エピソード終了状態は、現在の病理的エピソードの終了を示す。第3の生理的データの収集は、エピソード終了状態の検出によってトリガーされる。第3の生理的データパラメータの収集は、エピソード終了状態の検出に関連付けられる。
【0074】
実施例10では、実施例1のエピソード終了状態は、埋め込み型心臓調律管理装置が治療を送出するときに検出される。
実施例11では、実施例10の第3の生理的データを収集することは、エピソード終了状態が検出されるときを超えて、指定された遅延後にトリガーされる。この実施例では、指定された遅延は治療依存性がある。
【0075】
実施例12では、実施例9の方法はまた、埋め込み型生理的監視部を使用して第4の生理的データを監視することを含む。この実施例では、エピソード終了状態は、監視される第4の生理的データがテストを満たすときに検出される。
【0076】
実施例13では、実施例12の少なくとも第1および第4の生理的データは、同じ生理的特性を示す。この実施例では、監視される生理的特性は、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、血液ガス、血液化学物質、呼吸数、心房対心室心拍数、または心拍数安定の少なくとも1つを含む。
【0077】
実施例14では、実施例9乃至13のいずれか1つの、第1、第2、および第3の生理的データの少なくとも2つは、同じ生理的特性を示す。
実施例15では、実施例9乃至13のいずれか1つの、第1、第2、および第3の生理的データの少なくとも2つは、異なる生理的特性を示す。
【0078】
例示的な外部装置および機械可読媒体
図11は、外部プログラミングおよび診断コンピュータの実施例を示すブロック図である。システム1100は、その中で、本明細書で論じた方法の任意の1つまたは複数の実施を補助するように機械にさせる命令が実行されてもよい、コンピュータシステム1100の例示的な形態の機械である。いくつかの実施例では、機械は、独立装置として動作する、または、他の機械に接続(たとえば、ネットワーク化)される。ネットワーク化された配置では、機械は、サーバ−クライアントネットワーク環境におけるサーバまたはクライアント機械の能力で、または、ピアツーピア(または分散)ネットワーク環境におけるピア機械として動作する。機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプリケーション、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、あるいは、その機械によって行われるアクションを指定する命令(シーケンシャルなまたはその他の)を実行することが可能な任意の機械である。さらに、単一機械だけが示されるが、機械は、本明細書で論じる方法の任意の1つまたは複数を実施するために、命令のセット(または複数のセット)を、単独でまたは連携して実行する機械の任意の集合体を含む。
【0079】
例示的なコンピュータシステム1100は、バス1108を介して互いに通信する、プロセッサ1102(たとえば、中央処理ユニット(CPU)、グラフィクス処理ユニット(GPU)、または両方)、主メモリ1104、およびスタティックメモリ1106を含む。コンピュータシステム1100はさらに、ビデオディスプレイユニット1110(たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))を含む。コンピュータシステム1100はまた、英数字入力装置1112(たとえば、キーボード)、ユーザインタフェース(UI)ナビゲーション装置1114(たとえば、マウス)、ディスクドライブユニット1116、埋め込み型医療装置インタフェース1118、およびネットワークインタフェース装置1120を含む。
【0080】
埋め込み型医療装置インタフェースは、埋め込み型医療装置との有線または無線接続を含む。ある実施例では、埋め込み型医療装置(IMD)インタフェースは、IMD内に記憶された情報が、表示または解析のためにコンピュータシステム1100にダウンロードされることを可能にする。ある実施例では、IMDからダウンロードされた情報は、ビデオディスプレイユニット1110上に表示される。別の実施例では、ダウンロードされた情報は、ビデオディスプレイユニット1110上に表示される前にプロセッサ1102によって処理される。ある実施例では、IMDインタフェースはまた、埋め込み型CRM装置用のプログラミングパラメータを含む情報を、IMDに戻すように、アップロードする。
【0081】
機械可読媒体
ディスクドライブユニット11116は、機械可読媒体1122を含み、機械可読媒体1122上に、本明細書で述べる方法または機能の任意の1つまたは複数を具現化するかまたは任意の1つまたは複数によって利用される、命令およびデータ構造(たとえば、ソフトウェア)1124の1つまたは複数のセットが記憶される。命令1124はまた、コンピュータシステム1100による命令の実行中に、主メモリ1104内にまたはプロセッサ1102内に、完全にまたは少なくとも部分的に存在することができ、主メモリ1104およびプロセッサ1102もまた、機械可読媒体を構成する。
【0082】
機械可読媒体1122が、例示的な実施形態において単一媒体であるように示されるが、用語「機械可読媒体(machine-readable medium)」は、1つまたは複数の命令またはデータ構造を記憶する単一媒体または複数媒体(たとえば、集中化または分散化データベースあるいは関連するキャッシュおよびサーバ)を含む。用語「機械可読媒体」は、機械によって実行されるための命令を記憶するか、符号化するか、または運ぶことが可能であり、また、本出願の方法の任意の1つまたは複数を実施するように機械にさせる、あるいは、こうした命令によって利用されるかまたはこうした命令に関連付けられるデータ構造を記憶するか、符号化するか、または運ぶことが可能である任意の有形媒体を含む。用語「機械可読媒体」は、固定メモリならびに光および磁気媒体を含むが、それに限定される必要はない。機械可読媒体の特定の実施例は、実施例として、半導体メモリ装置、たとえば消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、およびフラッシュメモリ;内部ハードディスクおよび取外し可能ディスクを含む磁気ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む不揮発性メモリを含む。
【0083】
伝送媒体
命令1124はさらに、伝送媒体を使用した通信ネットワーク1126を通じて送受信される。命令1124は、ネットワークインタフェース装置1120および多数の転送プロトコル(たとえば、HTTP)のうちの任意のプロトコルを使用して伝送される。通信ネットワークの実施例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネット、モバイル電話ネットワーク、プレインオールドテレフォン(Plain Old Telephone)(POTS)ネットワーク、およびワイヤレスデータネットワーク(たとえば、Wi−FiおよびWiMaxネットワーク)を含む。
【0084】
上述した説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面に対する参照を含む。図面は、例証として、本発明が実施されうる特定の実施形態を示す。これらの実施形態はまた、本明細書で「実施例(example)」とも呼ばれる。こうした実施例は、示され述べられた要素以外に要素を含む。しかし、本発明者等はまた、示され述べられたこれらの要素だけが提供される実施例を想定する。
【0085】
本文書で参照される全ての出版物、特許、および特許文書は、参照により個々に組込まれるかのように、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。本文書と、参照により組込まれるこれらの文書との間に矛盾する使用法がある場合、組込まれる参照(複数可)における使用法は、本文書の使用法を補助するものと考えられるべきである。すなわち、両立しない矛盾については、本文書における使用法が規制する。
【0086】
本文書において、用語「ある(a)」または「ある(an)」は、特許文書で一般的であるように、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つまたは複数(one or more)」の任意の他のインスタンス(instance)または使用と独立に、1つまたは2つ以上を含むために使用される。本文書では、用語「または(or)」は、非排他的なまたは(or)を指すのに使用される。したがって、特に指示されない限り、「AまたはB」は「AであるがBではない」、「BであるがAではない」および「AおよびB」を含む。添付特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「そこで(in which)」は、それぞれの用語「備える(comprising)」および「そこで(wherein)」の平易な英語の等価物として使用される。同様に、添付特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」は、無制限(pen-ended)である、すなわち、特許請求項のこうした用語の後に挙げられる要素以外に、要素を含むシステム、装置、製品、またはプロセスは、依然としてその特許請求項の範囲内に入ると考えられる。さらに、添付特許請求の範囲では、用語「第1の(first)」、「第2の(second)」、および「第3の(third)」などは、単にラベルとして使用され、その物体に対して数値要件を課すことを意図されない。
【0087】
本明細書で述べる方法の実施例は、少なくとも部分的に、機械実施式であるかまたはコンピュータ実施式であってもよい。一部の実施例は、上記実施例で述べた方法を実施するよう電子装置を構成するように働く命令をエンコードされるコンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含む。こうした方法の実施態様は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高レベル言語コード等のコードを含む。こうしたコードは、種々の方法を実施するためのコンピュータ可読命令を含む。コードは、コンピュータプログラム製品の所定部分を形成する。さらに、コードは、実行中、または、他の時点で、1つまたは複数の揮発性または不揮発性コンピュータ可読媒体上に有形に記憶されてもよい。これらのコンピュータ読取り可能媒体は、ハードディスク、取外し可能磁気ディスク、取外し可能光ディスク(たとえば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)等を含んでもよいが、それに限定されない。
【0088】
先の説明は、例証的であり、制限的でないことを意図される。たとえば、上述した実施例(あるいはその1つまたは複数の態様)は、互いに組合せて使用されてもよい。先の説明を検討することによって、他の実施形態が当業者などによって使用されてもよい。要約は、読者が技術的開示の特質を迅速に確認することを可能にするために、37C.F.R.§1.72(b)に対応するように提供される。要約は、特許請求項の範囲または意味を解釈するかまたは制限するために使用されることがないという理解によって提出される。同様に、上記詳細な説明では、種々の特徴は、開示を簡素化するために共にグループ化されてもよい。このことは、未請求の開示特徴が、任意の特許請求項に必須であることを意図するものとして解釈されるべきでない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示される実施形態の全ての特徴より少ない特徴に存在する可能性がある。そのため、添付特許請求項は、詳細な説明に組込まれ、各請求項は、別個の実施形態として自分自身を主張する。本発明の範囲は、添付特許請求の範囲を参照して、添付特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に確定されるべきである。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の生理的データパラメータを監視するように構成された埋め込み型生理的データ監視部と、
前記埋め込み型生理的データ監視部に結合されたプロセッサであって、前記埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第1の生理的データパラメータを使用して、将来の考えられる病理的エピソードを予測するエピソード予測状態を検出し、前記埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第2の生理的データパラメータを使用して、現在の病理的エピソードの開始を示すエピソード開始状態を検出するように構成された前記プロセッサと、
前記エピソード予測状態の検出によってトリガーされたときに前記埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第3の生理的データパラメータのうちの時間セグメントを記憶するように構成されたスタティックメモリバッファと、
前記埋め込み型生理的データ監視部によって監視される第4の生理的データパラメータの一定セグメントを連続して記憶するために使用されるローリングメモリバッファと、
前記プロセッサによって後で使用するためにまたは外部装置に出力するために、前記プロセッサによる前記エピソード開始状態の検出によってトリガーされると、前記スタティックメモリバッファおよび前記ローリングメモリバッファ内に保持されたデータを記憶するように構成されたメモリとを備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定し、その判定に応答して、前記スタティックメモリバッファ内に保持されたデータを、前記ローリングメモリバッファ内に保持されたデータに関連付けるように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、少なくとも部分的に、前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードの指定された期間内に起こったと判定することによって、前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定するように構成される請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項4】
前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定することは、前記エピソード開始状態が検出されるまでに、前記エピソード予測状態が、指定された期間の間、実質的に持続したと判定することを含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記エピソード予測状態が実質的に持続したと判定することは、前記エピソード予測状態の最初の検出と前記エピソード開始状態の検出との間の期間であって、その期間中に前記エピソード予測状態が存在しない前記期間を検出することを含む請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記病理的エピソードは不整脈エピソードである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記生理的データの少なくとも指定された数の連続的測定値がテストを満たすときに、前記エピソード予測状態または前記エピソード開始状態の少なくとも一方の検出が起こる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記生理的データの変化速度が身体運動を示していない状態でテストを満たすときに、前記エピソード予測状態または前記エピソード開始状態の少なくとも一方の検出が起こる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つは、同じ生理的特性を示す請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つは、異なる生理的特性を示す請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも前記第1および第2の生理的データは同じ生理的特性を示し、
前記監視される生理的特性は、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、血液ガス、血液化学物質、呼吸数、心房対心室心拍数、発現時心拍数、または心拍数安定の少なくとも1つを含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記埋め込み型生理的データ監視部は、
心電図センサ、
心拍数センサ、
心音センサ、
圧力センサ、
血液ガスセンサ、
神経電気記録図センサ、
姿勢センサ、
呼吸センサ、または、
化学センサ
の1つまたは複数を監視するように構成される請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
埋め込み型生理的監視部を使用して第1の生理的データを監視し、
前記監視される第1の生理的データを使用して、将来の考えられる病理的エピソードを予測するエピソード予測状態を検出し、
前記エピソード予測状態の検出に関連する第2の生理的データを収集することによって前記エピソード予測状態の検出に応答し、
前記埋め込み型生理的監視部を使用して第3の生理的データを監視し、
前記監視される第3の生理的データを使用して、現在の病理的エピソードの開始を示すエピソード開始状態を検出し、
前記エピソード開始状態の検出に関連する第4の生理的データを収集することによって前記エピソード開始状態を検出することに応答することを備える方法。
【請求項14】
前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定し、その判定に応答して、前記収集された第2の生理的データを、前記第4の生理的データに関連付けて記憶することをさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定することは、前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードの指定された期間内に起こったと判定することを含む請求項13または14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記エピソード予測状態が前記現在の病理的エピソードに関連すると判定することは、前記エピソード開始状態が検出されるまでに、前記エピソード予測状態が、指定された期間の間、実質的に持続したと判定することを含む請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記エピソード予測状態が実質的に持続したと判定することは、前記エピソード予測状態の最初の検出と前記エピソード開始状態の検出との間の期間であって、その期間中に前記エピソード予測状態が存在しない前記期間を検出することを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エピソード予測状態を検出することは、将来の考えられる病理的エピソードを予測する状態を検出することを含む請求項13乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記生理的データの少なくとも指定された数の連続的測定値がテストを満たすときに、前記エピソード予測状態または前記エピソード開始状態の少なくとも一方を検出することが起こる請求項13乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記生理的データの変化速度が身体運動を示さない状態でテストを満たすときに、前記エピソード予測状態または前記エピソード開始状態の少なくとも一方を検出することが起こる請求項13乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つは、同じ生理的特性を示す請求項13乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1、第2、第3、および第4の生理的データの少なくとも2つは、異なる生理的特性を示す請求項13乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも前記第1および第3の生理的データは同じ生理的特性を示し、
前記監視される生理的特性は、心拍数、電位図モルフォロジー、血圧、呼吸数、心房対心室心拍数、発現時心拍数、または心拍数安定の少なくとも1つを含む請求項13乃至20のいずれか1項に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−527958(P2012−527958A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513101(P2012−513101)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/035133
【国際公開番号】WO2010/138332
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】