説明

埋め込み式取っ手

【課題】 取っ手のがたつきを防止し、かつ、製造コストの低減を図ることができる埋め込み式取っ手の提供を課題とする。
【解決手段】 埋め込み式取っ手1は、取っ手本体4と、取っ手本体4を扉2に取り付けるための第1機構6と、第2機構8とを含む。取っ手本体4は、底面40と、底面40から起立し縦方向Yに延びる両側周面41,42と、底面40から起立し横方向Xに延びる上下周面43,44とを含む。第1機構6は、縦方向Yに付勢可能なコイルバネ60と、上爪部材61および下爪部材62と、これらコイルバネ60と上下爪部材61,62とを収納する保持部材63とを含む。第2機構8は、板バネ80を含む。板バネ80は、取っ手本体4の両側周面41,42であって、その横方向Xの外側に取り付けられている。扉2には、取っ手本体4を取り付ける取付孔を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉に備える取っ手に関し、さらに詳しくは、扉に埋め込むタイプの取っ手であって、この扉を前後に開閉可能な埋め込み式取っ手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉に備える埋め込み式の取っ手として、例えば、特開平10−117870号公報(特許文献1)が公知である。この特許文献1によれば、収納庫の扉に、この扉を前後に開閉するための取っ手を取り付けている。取っ手は、扉に埋め込み式のものであって、ねじ等を用いることなく扉に取り付けることができるようにしている。すなわち、取っ手本体は、底壁と、左右の周壁と、上下端側周壁とを備え、これら底壁、左右周壁および下端側周壁にフックを形成している。取っ手が取り付けられる扉には、フックに係合する取付孔を形成し、これらフックと取付孔とを係合させることによって、取っ手本体を扉に取り付け可能としている。
【特許文献1】特開平10−117870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
取っ手本体は、強度等を考慮してステンレス等の金属製であることが多く、扉も金属製であることが多い。このような取っ手本体のフックと、扉の取付孔とを係合させると、それらの接触部分ではどうしてもがたつきが生じ、扉の開閉に違和感が生じたり、衝突音が発生したりするという問題があった。
また、扉には、フックの位置にあわせて取付孔を形成しなければならず、その形成のために時間と手間がかかり、結果として製造コストの増加を招いていた。
【0004】
この発明では、取っ手のがたつきを防止し、かつ、製造コストの低減を図ることができる埋め込み式取っ手の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、第1方向およびこれと直交する第2方向を含む取っ手本体と、前記取っ手本体を扉に取り付ける取付機構とを含む埋め込み式取っ手の改良に関わる。
【0006】
この発明は前記埋め込み式取っ手において、前記取っ手本体は、底面と、前記底面から起立し前記第1方向に延びる両側周面と、前記底面から起立し前記第2方向に延びる上下周面と、前記底面と反対側に位置し前記両側周面および上下周面によって形成された開口とを含み、前記取付機構は、第1機構と第2機構とを含む。前記第1機構は、前記上下周面から前記第1方向外側に突出し前記扉に係合可能な第1爪部材と、前記第1爪部材を前記第1方向外側に向かって付勢可能な第1付勢手段とを含み、前記第2機構は、前記両側周面から前記第2方向外側に突出し前記扉に係合可能な第2爪部材と、前記第2爪部材を前記第2方向外側に向かって付勢可能な第2付勢手段とを含むことを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記第1付勢手段は、コイルバネを含み、
前記第1爪部材は、前記コイルバネの上下端に位置する上爪部材と下爪部材とを含む。前記第1機構は、前記コイルバネおよび前記上下爪部材を前記第1方向移動可能に収納する保持部材を含み、前記保持部材は、前記コイルバネおよび前記上下爪部材を収納し前記第1方向に延びる管部と、前記取っ手本体に接合可能な取付部とを含む。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記上爪部材の上端および前記下爪部材の下端には、縦軸に対して傾斜する傾斜部と、縦軸に対して略垂直となる垂直部とを含み、前記傾斜部が前記取っ手本体の前記底面側に位置し、前記垂直部が前記開口側に位置し、前記傾斜部が、前記扉に形成された取付孔に対して、前記第1付勢手段の付勢に抗して摺動可能に形成される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記第2付勢手段および前記第2爪部材は、板バネによって形成され、前記板バネの一部が、前記扉に形成された取付孔に対しその付勢に抗して摺動可能に形成される。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記保持部材の前記管部は、前記取っ手本体の前記底面と、前記両側周面および上下周面とで形成された空間部に把持可能に形成される。
【発明の効果】
【0011】
取っ手本体を扉に取り付ける機構として、第1機構と第2機構とを備えることとした。第1機構では、取っ手本体の上下周面から突出し扉に係合可能な第1爪部材を、第1付勢手段によって第1方向外側に向かって付勢可能としている。第2機構では、両側面から突出し扉に係合可能な第2爪部材を、第2付勢手段によって第1方向と直交する第2方向外側に向かって付勢可能としている。したがって、取っ手本体を扉に取り付ける場合には、扉に取っ手本体を取り付ける取付孔を形成するだけでよく、他の特別な部材等を形成する必要がない。したがって、製造コストの低減が可能となる。
さらに、第1爪部材および第2爪部材を第1および第2付勢手段で付勢することによって、扉と取っ手本体とのがたつきを抑制することができ、扉の開閉操作を滑らかにし、衝突音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜4に基づいて、この発明の一実施形態を説明する。図1は埋め込み式取っ手1を扉2に取り付けたときの斜視図、図2は取っ手1の分解組立図、図3は図1のIII−III線断面図、図4は図1のIV−IV線断面図である。埋め込み式取っ手1は、筐体である取っ手本体4と、取っ手本体4を安定的に扉2に取り付けるための第1機構6と、第2機構8とを含む。これら第1機構6と第2機構8とによって、この発明の取付機構を形成している。扉2は、取っ手本体4を取っ手操作者の手前に引っ張ることによって開くことができるものであって、扉2および取っ手本体4において、扉2を開くために手を挿入する側を表面、その反対を裏面としている。
【0013】
取っ手本体4は、底面40と、底面40から起立し第1方向である縦方向Yに延びる両側周面41,42と、底面40から起立し第2方向であって縦方向Yと直交する横方向Xに延びる上下周面43,44とを含む。両側周面41,42と上下周面43,44とによって、底面40の外周を覆う周壁が形成される。両側周面41,42および上下周面43,44によって、底面40とは反対側に開口45が形成される。開口45では、両側周面41,42および上下周面43,44から略垂直に縦方向Yおよび横方向Xに延びるフランジ部46が形成される。取っ手本体4は、底面40、両側周面41,42および上下周面43,44によって空間部47を形成している。このような取っ手本体4は、開口45を扉2の表面に向かわせて取り付けられる。
【0014】
第1機構6は、縦方向Y外側に付勢可能なコイルバネ60と、コイルバネ60によって縦方向Yに付勢される第1爪部材を形成する上爪部材61および下爪部材62と、これらコイルバネ60と上下爪部材61,62とを収納する保持部材63とを含む。コイルバネ60によってこの発明の第1付勢手段を形成している。
上爪部材61は、コイルバネ60の縦方向Yの上端に位置し、下爪部材62は、コイルバネ60の下端に位置し、それぞれ略円柱形を形成している。上爪部材61の上端および下爪部材62の下端は、それら上下爪部材61,62の軸線に傾斜する傾斜部64,65と、軸線に直交し略垂直となる垂直部66,67とを含み、傾斜部が底面40側に、垂直部が開口45側になるように位置させている。傾斜部64,65は、縦方向Yの外側から内側に向かって、開口45から底面40へと延びるように傾斜している。これら傾斜部64,65は垂直部66,67よりも縦方向Yの外側に位置する。上下爪部材61,62は、コイルバネ60によって縦方向Y外側へと付勢されている。
【0015】
保持部材63は、コイルバネ60および上下爪部材61,62を縦方向Yに移動可能に収納する管部68と、取っ手本体4に接合可能な取付部69とを含む。具体的には、保持部材63は、一枚の板の一端を円柱を形成するように丸めて管部68を形成し、丸めていない平面を有する他端を取付部69としている。取付部69をフランジ46の表面側に当接させ、管部68を空間部47に位置させる。取付部69には、透孔70を形成し、これに挿入されたねじ、リベットなどの止着部材10によって保持部材63が取っ手本体4に接合される。取っ手本体4の上下周面43,44には、上下爪部材61,62に形成された傾斜部64,65が突出する爪部支持孔48が形成されている。
【0016】
取っ手本体4の両側周面41,42であって、その横方向Xの外側には一対の板バネ80を取り付けている。板バネ80によって、この発明の第2付勢手段を形成している。板バネ80は縦方向Yに延びる第1バネ部81と第2バネ部82と、第1バネ部81を取っ手本体4に取り付けるための取付部83とを含む。第1バネ部81はその一側縁で取付部83に接続し、他側縁で第2バネ部82と接続している。第2バネ部82は、第1バネ部81に接続する基端縁86と、その反対側に位置する自由端縁87とを含む。第2バネ部82の自由端縁87によって、この発明の第2爪部材を形成している。
上記のような一対の板バネ80の一方の取付部83には透孔84を形成し、他方の取付部83には透孔85を形成している。板バネ80は、透孔84,85に挿入されたねじ、リベットなどの止着部材10,11によって、取っ手本体4のフランジ46の裏面側に取り付けられる。なお、一方の板バネ80は、保持部材63を介して取っ手本体4に取り付けられ、他方の板バネ80は直接取っ手本体4に取り付けられる。したがって、一方の板バネ80の第1バネ部81の第2バネ部82までの長さ寸法は、他方のそれに比べて保持部材63の厚み分だけ短くなるようにしている。
【0017】
取っ手本体4の表面側には、カバー9を取り付ける。カバー9は、取っ手本体4のフランジ46を覆うとともに、取っ手本体4に取り付けた保持部材63の取付部69を覆い、その他の部分では空間部47が露出されるように開口90を形成している。カバー9には透孔91,92を形成し、これらに止着部材10,11を挿入することによって、カバー9が取っ手本体4に取り付けられる。止着部材10は、カバー9の透孔91と、保持部材63の透孔70と、取っ手本体4の透孔49と、板バネ80の透孔84とを貫通し、これらを一体となるように接合する。止着部材11は、カバー9の透孔92と、取っ手本体4の透孔50と、板バネ80の透孔85とを貫通し、これらを一体となるように接合する。
なお、図示していないが、取っ手本体4、カバー9および板バネ80の一体化は、それらが金属から形成されている場合には、スポット溶接で接合することができ、それらがプラスチックから形成されている場合には、接着剤で接合することができる。
【0018】
扉2には取っ手本体4の側周面41から側周面42までの縦方向Yの長さ寸法とほぼ一致し、上周面43から下周面44までのの横方向Xの長さ方向とほぼ一致する取付孔20を形成している。ただし、取付孔20の縦方向Yに延びる両側縁21には、板バネを支持する凹欠部22が形成されている。
【0019】
上記のような取っ手本体4を、扉2に取り付ける。取っ手本体4は、扉2に取り付ける前に、第1機構6、第2機構8、およびカバー9が接合され、これらが一体に形成される。このような取っ手本体4を扉2の取付孔20に向かってはめ込むように押し付ける。取っ手本体4を押し付けると、第2機構8の板バネ80が取付孔20の両側縁21に圧接される。すなわち、第2バネ部82が凹欠部22に圧接し、第2バネ部82をその付勢に抗して挾圧させながらこの凹欠部22に対して摺動して、取付孔20の奥へと向かう。第2バネ部82が凹欠部22を通り過ぎると、バネ部材の付勢によって、第2バネ部82の自由端縁87が横方向X外側に復元拡張し、扉2の裏面と当接する。このように第2バネ部82の自由端縁87が復元拡張し、扉2の裏面に当接することによって、取っ手本体4の抜け止めとなる。
【0020】
上記取っ手本体4を扉2の取付孔20に押し付けると、第1機構6の上下爪部材61,62に形成された傾斜部64,65が取付孔20の上下端縁23,24に当接する。さらに取っ手本体4を押し付けると、傾斜部64,65が上下端縁23,24に対して摺動し、コイルバネ60を縦方向Yに圧縮させながら、取付孔20の奥へと向かう。傾斜部64,65が上下端縁23,24を越えたところで、上下爪部材61,62がコイルバネ60の付勢によって縦方向Yの外側に復元拡張し、垂直部66,67が取付孔20の上下端縁23,24に当接する。このように上下爪部材61,62が縦方向Yに復元拡張し、垂直部66,67が扉2の取付孔20に当接することによって、取っ手本体4の抜け止めとなる。さらに、垂直部66,67はコイルバネ60によって縦方向Yに付勢されているから、取付孔20に対する取っ手本体4の縦方向Yのがたつきを防止することができる。扉2の取付孔20に対して取っ手本体4のがたつきを防止できるので、扉の開閉が滑らかになり、がたつきによる衝突音が発生することもない。
また、取付孔20の両側縁21は、第2バネ部82が摺動可能な大きさを有していればよいので、取っ手本体4の横方向Xにおいて取付孔20との間隔を大きくする必要がなく、大きながたつきが発生することがない。
【0021】
扉2には、取っ手本体4を取り付けるための取付孔を形成するだけでよいので、それ以外の特別な処理工程を必要とせず、製造コストの削減が可能となる。また、取っ手本体4を扉2の取付孔20に押し付けるだけで、これらを取り付けることができるので、取っ手本体4を扉2に取り付けるためにねじ等を使用する必要がなく、容易にかつ短時間で取り付けをすることができる。取っ手本体4に保持部材63を取り付けることによって、この保持部材63を把持部として使用することができるので、特別に把持部を形成する必要がなく、その分製造コストの低減を図ることができる。保持部材63の管部68を把持することが可能であり、管部68が円筒形を有しているので、これを握ったときには手になじみやすく、開閉の操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】取っ手の斜視図。
【図2】取っ手の分解組立図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】図1のIV−IV線断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 埋め込み式取っ手
2 扉
20 取付孔
4 取っ手本体
40 底面
41 側周面
42 側周面
43 上周面
44 下周面
45 開口
47 空間部
6 第1機構
60 コイルバネ(第1付勢手段)
61 上爪部材(第1爪部材)
62 下爪部材(第1爪部材)
63 保持部材
64 傾斜部
65 傾斜部
66 垂直部
67 垂直部
68 管部
69 取付部
8 第2機構
80 板バネ(第2付勢手段)
81 第1バネ部
82 第2バネ部(第2爪部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向およびこれと直交する第2方向を含む取っ手本体と、前記取っ手本体を扉に取り付ける取付機構とを含む埋め込み式取っ手において、
前記取っ手本体は、底面と、前記底面から起立し前記第1方向に延びる両側周面と、前記底面から起立し前記第2方向に延びる上下周面と、前記底面と反対側に位置し前記両側周面および上下周面によって形成された開口とを含み、
前記取付機構は、第1機構と第2機構とを含み、
前記第1機構は、前記上下周面から前記第1方向外側に突出し前記扉に係合可能な第1爪部材と、前記第1爪部材を前記第1方向外側に向かって付勢可能な第1付勢手段とを含み、
前記第2機構は、前記両側周面から前記第2方向外側に突出し前記扉に係合可能な第2爪部材と、前記第2爪部材を前記第2方向外側に向かって付勢可能な第2付勢手段とを含むことを特徴とする前記埋め込み式取っ手。
【請求項2】
前記第1付勢手段は、コイルバネを含み、
前記第1爪部材は、前記コイルバネの上下端に位置する上爪部材と下爪部材とを含み、
前記第1機構は、前記コイルバネおよび前記上下爪部材を前記第1方向に移動可能に収納する保持部材を含み、
前記保持部材は、前記コイルバネおよび前記上下爪部材を収納し前記第1方向に延びる管部と、前記取っ手本体に接合可能な取付部とを含む請求項1記載の埋め込み式取っ手。
【請求項3】
前記上爪部材の上端および前記下爪部材の下端には、縦軸に対して傾斜する傾斜部と、縦軸に対して略垂直となる垂直部とを含み、前記傾斜部が前記取っ手本体の前記底面側に位置し、前記垂直部が前記開口側に位置し、前記傾斜部が、前記扉に形成された取付孔に対して、前記第1付勢手段の付勢に抗して摺動可能に形成される請求項1または2記載の埋め込み式取っ手。
【請求項4】
前記第2付勢手段および前記第2爪部材は、板バネによって形成され、前記板バネの一部が、前記扉に形成された取付孔に対しその付勢に抗して摺動可能に形成される請求項1〜3のいずれかに記載の埋め込み式取っ手。
【請求項5】
前記保持部材の前記管部は、前記取っ手本体の前記底面と、前記両側周面および上下周面とで形成された空間部に把持可能に形成される請求項1〜4のいずれかに記載の埋め込み式取っ手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−37859(P2010−37859A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203578(P2008−203578)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000152169)株式会社栃木屋 (50)