説明

埋立地における遮水構造

【課題】被遮水体の表面に遮水シートを敷設し、かつ、この遮水シートの一端縁部と被遮水体の表面がわとに跨るように遮水材層を設置する遮水作業を順次繰り返す場合や、この遮水作業の後に、埋立域に投入された埋立材が遮水シートに外力を与える場合などにおいて、遮水シートに引張力が与えられるとしても、遮水シートの一端縁部が遮水材層から容易には抜け出ないようにする。
【解決手段】埋立地の遮水構造が、被遮水体21の表面に敷設される遮水シート22と、この遮水シート22の面に沿った一方向におけるこの遮水シート22の一端縁部32の表面とこの一端縁部32に隣接する被遮水体21の表面がわとに跨るように設置される遮水材層28とを備える。遮水シート22の一端縁部32に取り付けられ、この一端縁部32の表面から突出し遮水材層28に埋入される突出体36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立域を囲む護岸など、遮水されるべき被遮水体の表面に敷設される遮水シートを備えた埋立地における遮水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物など埋立材を投入するための埋立地における遮水構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、埋立域を囲み、遮水されるべき被遮水体である護岸の表面に遮水シートが敷設されている。また、この場合、一般に、上記護岸の長手方向における上記遮水シートの一端縁部の表面とこの一端縁部に隣接する上記護岸の表面がわとに跨るように接着性遮水材層が設置されている。
【0003】
ここで、上記埋立域には、通常、汚濁水が生じるが、この汚濁水が上記護岸を透過して埋立域の外部にまで漏出するという不都合の発生は、上記遮水シートと遮水材層とによって防止され、埋立域外への汚濁水の拡散が防止されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−320335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記護岸の表面に遮水シートを敷設し、かつ、この遮水シートの一端縁部の表面とこの一端縁部に隣接する上記護岸の表面がわとに跨るように遮水材層を設置するという遮水作業を順次繰り返す場合には、上記各遮水シートを所定姿勢にさせたり、この遮水シートに一定の張りを与えるため、この遮水シートにその他端縁部から引張力を与えることがある。この場合、この引張力はある程度大きいため、上記遮水シートの一端縁部は上記引張力により上記遮水材層から抜け出てしまうおそれがあり、これが生じると、護岸における遮水性が阻害される。
【0005】
また、上記遮水作業が適正に繰り返されて完了したとしても、その後、廃棄物など埋立材が上記埋立域に投入されて埋立が行われ、上記埋立材から上記遮水シートに外力が与えられた場合には、この外力に基づき生じる上記遮水シートの引張力により、上記遮水シートの一端縁部が上記遮水材層から抜け出てしまうおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、被遮水体の表面に遮水シートを敷設し、かつ、この遮水シートの一端縁部とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように遮水材層を設置する遮水作業を順次繰り返す場合や、この遮水作業の後に、上記埋立域に投入された埋立材が上記遮水シートに外力を与える場合などにおいて、この遮水シートに引張力が与えられるとしても、この遮水シートの一端縁部が上記遮水材層から容易には抜け出ないようにして、被遮水体における遮水性が良好に保たれるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、被遮水体21の表面に敷設される遮水シート22と、この遮水シート22の面に沿った一方向におけるこの遮水シート22の一端縁部32の表面とこの一端縁部32に隣接する上記被遮水体21の表面がわとに跨るように設置される遮水材層28とを備えた埋立地における遮水構造において、
上記遮水シート22の一端縁部32に取り付けられ、この一端縁部32の表面から突出し上記接着性遮水材層28に埋入される突出体36を設けたことを特徴とする埋立地における遮水構造である。
【0008】
請求項2の発明は、上記突出体36が、上記遮水シート22の一端縁部32の表面に面接触するように延びると共に、上記一方向に対し傾斜する方向に延びて、この一端縁部32に取り付けられる基板38と、この基板38に沿って延び、この基板38から突出する突出板39とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の埋立地における遮水構造である。
【0009】
請求項3の発明は、埋立域3を囲む護岸4の上記埋立域3がわの表面をこの埋立域3内に向かうに従い下傾する傾斜面17とし、この傾斜面17を上記被遮水体21の表面として、この表面に上記遮水シート22を敷設し、この遮水シート22の上端縁部42を上記護岸4の頂部がわに連結、連結解除可能に連結する連結体43を設け、上記護岸4と遮水シート22の上端縁部42とが上下方向で相対的に離反するとき、上記連結体43による連結が解除されるようにし、上記遮水シート22の上端縁部42に連結される浮体47を設けことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の埋立地における遮水構造である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、被遮水体の表面に敷設される遮水シートと、この遮水シートの面に沿った一方向におけるこの遮水シートの一端縁部の表面とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように設置される遮水材層とを備えた埋立地における遮水構造において、
上記遮水シートの一端縁部に取り付けられ、この一端縁部の表面から突出し上記遮水材層に埋入される突出体を設けている。
【0013】
このため、上記遮水材層と突出体とが互いに強固に連結されることから、この突出体を取り付けた遮水シートの一端縁部の上記遮水材層に対する連結強度が向上する。よって、被遮水体の表面に遮水シートを敷設し、かつ、この遮水シートの一端縁部とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように遮水材層を設置する遮水作業を順次繰り返す場合や、この遮水作業の後に、上記埋立域に投入された埋立材が上記遮水シートに外力を与える場合などにおいて、この遮水シートに引張力が与えられるとしても、この遮水シートの一端縁部が上記遮水材層から容易に抜け出るということは防止されて、被遮水体における遮水性が良好に保たれる。
【0014】
請求項2の発明は、上記突出体が、上記遮水シートの一端縁部の表面に面接触するように延びると共に、上記一方向に対し傾斜する方向に延びて、この一端縁部に取り付けられる基板と、この基板に沿って延び、この基板から突出する突出板とを備えている。
【0015】
このため、上記遮水シートの一端縁部に対し、上記基板は大きい面積で接触し、その分、上記遮水シートの一端縁部に対し突出体の基板は強固に取り付けられる。一方、上記遮水シートの一端縁部の面方向で、上記遮水材層に対し上記突出板は大きい面積で接触し、その分、上記遮水材層に対し突出体の突出板は強固に連結される。よって、上記突出体によれば、上記遮水材層に対する遮水シートの一端縁部の連結強度は、より向上する。この結果、上記被遮水体における遮水性がより良好に保たれる。
【0016】
請求項3の発明は、埋立域を囲む護岸の上記埋立域がわの表面をこの埋立域内に向かうに従い下傾する傾斜面とし、この傾斜面を上記被遮水体の表面として、この表面に上記遮水シートを敷設し、この遮水シートの上端縁部を上記護岸の頂部がわに連結、連結解除可能に連結する連結体を設け、上記護岸と遮水シートの上端縁部とが上下方向で相対的に離反するとき、上記連結体による連結が解除されるようにし、上記遮水シートの上端縁部に連結される浮体を設けており、これによれば、次の作用効果が生じる。
【0017】
即ち、上記護岸が埋立域と反対側の海域からの波により衝撃力を与えられるなどして崩落し始めるとき、上記遮水シートの一端縁部は浮体により水面上に浮こうとする。このため、上記護岸と遮水シートの一端縁部とは上下方向で相対的に離反することから、上記したように連結体による連結が解除され、上記遮水シートの一端縁部は浮体により水面がわに保持される。
【0018】
よって、上記したように、何らかの理由で護岸が崩落したとしても、上記遮水シートにより上記埋立域と海域とは仕切られた状態に維持され、上記埋立域の汚濁水が上記海域に流入するということは防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の埋立地における遮水構造に関し、被遮水体の表面に遮水シートを敷設し、かつ、この遮水シートの一端縁部とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように遮水材層を設置する遮水作業を順次繰り返す場合や、この遮水作業の後に、上記埋立域に投入された埋立材が上記遮水シートに外力を与える場合などにおいて、この遮水シートに引張力が与えられるとしても、この遮水シートの一端縁部が上記遮水材層から容易には抜け出ないようにして、被遮水体における遮水性が良好に保たれるようにするようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、埋立地における遮水構造は、被遮水体の表面に敷設される遮水シートと、この遮水シートの面に沿った一方向におけるこの遮水シートの一端縁部の表面とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように設置される遮水材層とを備えている。上記遮水シートの一端縁部に取り付けられ、この一端縁部の表面から突出し上記遮水材層に埋入される突出体が設けられる。
【実施例1】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1〜3に従って説明する。
【0022】
図1,2において、符号1は、海岸における廃棄物埋立地である。
【0023】
上記埋立地1の地盤2の上方域が、廃棄物など埋立材が投入される埋立域3とされている。この埋立域3を囲むよう上記地盤2の外縁部の上面に設置され、上記埋立域3の外縁部に沿って長く延びる護岸4が設けられている。この護岸4の外方域が海域5とされ、つまり、上記護岸4は、上記埋立域3と海域5とを仕切っている。
【0024】
上記護岸4は、上記地盤2の外縁部の上面に設置されるコンクリート製ケーソンである上、下護岸構造物7,8を備えている。上記上護岸構造物7は、上記護岸4の長手方向Aに沿った視線でみて、断面が矩形状かつ中空とされている。上記下護岸構造物8は、上記地盤2の外縁部の上面に設置される基台9と、この基台9の海域5がわ部分の上面から上方に突出し、この基台9に一体的に形成されるケーソン本体10と、上記基台9の埋立域3がわ部分の上面と上記ケーソン本体10の埋立域3がわの側面とに一体的に架設され、上記護岸4の長手方向Aで複数設けられる仕切壁11とを備えている。
【0025】
上記ケーソン本体10は、上記長手方向Aに沿った視線でみて、断面が台形状かつ中空とされている。そして、上記ケーソン本体10の頂部上面に上記上護岸構造物7が設置されている。上記上護岸構造物7と、下護岸構造物8のケーソン本体10の各中空部には図示しないが砕石や捨石などの重量充填物が充填される。
【0026】
上記各仕切壁11は、上記護岸4の長手方向Aに沿った視線でみて、三角形状をなしている。また、上記長手方向Aでわずかの空間14をあけて一対の仕切壁11,11が配置され、これら一対の仕切壁11,11は、上記長手方向Aで大きい他の空間15を置いて複数配置されている。上記各空間14,15には砕石や捨石などの重量充填物16が充填される。
【0027】
上記各仕切壁11の傾斜した上面と、上記各空間14,15に充填された重量充填物16の上面とは互いにほぼ面一とされ、これら上面は、上記下護岸構造物8の頂部から上記埋立域3内に向かうに従い下傾する傾斜面17とされている。
【0028】
上記護岸4における上記重量充填物16に対し、上記埋立域3で生じる汚濁水20が浸入しないよう上記重量充填物16が遮水されるべき被遮水体21とされている。そして、この被遮水体21の表面である上記傾斜面17に遮水シート22と、この遮水シート22を上下から挟む上、下保護シート23,24とが敷設されている。
【0029】
上記遮水シート22は、熱可塑性の高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、もしくは塩化ビニールなどの樹脂製であって熱可塑性を有し、厚さはほぼ1.5mm以上であって、通常ほぼ3mmとされている。上記保護シート23,24は、ポリエステル樹脂などの不織布製とされ、重さ500g/m以上とされている。
【0030】
上記一対の仕切壁11,11の間の空間14に充填された上記重量充填物16の傾斜面17は、上記各仕切壁11の上面および他の空間15に充填された上記重量充填物16の傾斜面17との対比で、凹所27とされている。この凹所27には接着性遮水材層28が充填されて設置されている。この遮水材層28は上、下遮水材層29,30で構成され、上遮水材層29には砕石や捨石などの石材31が混入している。上記遮水材層28はアスファルトマスチックといわれるものである。この遮水材層28は熱可塑性であり、160±20℃の高温で粘性の大きい熱溶融状態となり、その温度未満の低温では粘性が極めて大きく、レオロジー性を有する。
【0031】
上記遮水シート22と各保護シート23,24とのこれら各面に沿った一方向である上記護岸4の長手方向Aにおける各一端縁部32は、上記上、下遮水材層29,30の間に挟みこまれて、上記遮水材層28に埋入されている。また、上記下遮水材層30と上記下保護シート24との間には上記遮水材層28と同じ材質のマット33が介設されている。
【0032】
より具体的には、上記遮水シート22の一端縁部32の表面(上面)と、この一端縁部32に上記長手方向Aで隣接する上記凹所27における被遮水体21の表面がわ(下遮水材層30の表面)とに跨るように上記遮水材層28の上遮水材層29が設置されている。この場合、上記重量充填物16(被遮水体21)の表面と、上遮水材層29と、下遮水材層30と、これら遮水材層29,30に対面する上記各一端縁部32およびマット33とは互いに接着されて密着されている。
【0033】
上記遮水シート22の一端縁部32には、この一端縁部32の表面(上面)から外方(上方)に向かって突出し上記遮水材層28の上遮水材層29に埋入される樹脂製の突出体36が設けられている。この突出体36は、上記遮水シート22の一端縁部32の表面(上面)に面接触するように延びると共に、上記長手方向Aに対し傾斜する方向に長く延びてこの一端縁部32に熱溶解樹脂37により強固に溶接される長尺の基板38と、この基板38に沿って長く延び、この基板38から上記遮水シート22の一端縁部32の表面(上面)の外方(上方)に向かって一体的に突出する長尺の突出板39とを備えている。
【0034】
上記の場合、長手方向Aに対し傾斜する方向とは、図例では、上記長手方向Aにほぼ直交する方向であって、上記遮水シート22の幅方向とされている。また、上記突出体36はその断面がL字形状とされ、上記突出板39は、上記基板38の幅方向の両端縁部のうち、上記遮水シート22の一端縁部32における、より端縁がわの一端縁部に突設されている。なお、上記突出体36は板金製であってもよい。また、上記遮水シート22の一端縁部32への突出体36の取り付けは締結具、リベット、接着材などによってもよい。また、上記突出体36の基板38と突出板39とを互いに別体として、締結具などにより互いに結合してもよい。また、上記突出体36は断面が倒立T字形状であってもよい。また、上記突出板39は複数の突起で形成してもよく、突出板39に複数の切り欠きや貫通孔を形成してもよい。
【0035】
上記構成によれば、遮水シート22の一端縁部32に取り付けられ、この一端縁部32の表面から突出し上記遮水材層28に埋入される突出体36を設けているため、上記遮水材層28と突出体36とが互いに強固に連結されることから、この突出体36を取り付けた遮水シート22の一端縁部32の上記遮水材層28に対する連結強度が向上する。
【0036】
よって、被遮水体21の表面に遮水シート22を敷設し、かつ、この遮水シート22の一端縁部32とこの一端縁部32に隣接する上記被遮水体21の表面がわとに跨るように遮水材層28を設置する遮水作業を順次繰り返す場合や、この遮水作業の後に、上記埋立域3に投入された埋立材が上記遮水シート22に外力を与える場合などにおいて、この遮水シート22に引張力が与えられるとしても、この遮水シート22の一端縁部32が上記遮水材層28から容易に抜け出るということは防止されて、被遮水体21における遮水性が良好に保たれる。
【0037】
また、前記したように、突出体36が、上記遮水シート22の一端縁部32の表面に面接触するように延びると共に、上記一方向に対し傾斜する方向に延びて、この一端縁部32に取り付けられる基板38と、この基板38に沿って延び、この基板38から突出する突出板39とを備えている。
【0038】
このため、上記遮水シート22の一端縁部32に対し、上記基板38は大きい面積で接触し、その分、上記遮水シート22の一端縁部32に対し突出体36の基板38は強固に取り付けられる。一方、上記遮水シート22の一端縁部32の面方向で、上記遮水材層28に対し上記突出板39は大きい面積で接触し、その分、上記遮水材層28に対し突出体36の突出板39は強固に連結される。よって、上記突出体36によれば、上記遮水材層28に対する遮水シート22の一端縁部32の連結強度は、より向上する。この結果、上記被遮水体21における遮水性がより良好に保たれる。
【0039】
図2,3では、便宜上、上記保護シート23,24とマット33との図示を省略している。この図2,3において、上記上護岸構造物7近傍の上記下護岸構造物8の頂部がわに上記遮水シート22の上端縁部42を連結、連結解除可能に連結する連結体43が設けられている。この連結体43は、上記下護岸構造物8の頂部から上方に向かって突出する連結杭44を備え、この連結杭44に対し、その上方から上記遮水シート22の上端縁部42が嵌脱可能に嵌合されている。また、上記連結体43は、上記遮水シート22の上端縁部42の上面に載置される土嚢である重し45と、この重し45を上記上護岸構造物7に連結するチェーン、ロープ、ベルトなどの索条体である連結具46とを備えている。
【0040】
上記遮水シート22の上端縁部42上から重し45が離脱し、上記護岸4の護岸構造物8と遮水シート22の上端縁部42とが上下方向で相対的に離反するとき、上記遮水シート22の上端縁部42と連結杭44との嵌合が解除されて、上記下護岸構造物8に対する遮水シート22の上端縁部42の上記連結体43による連結が解除されるようになっている。
【0041】
上記護岸4の長手方向Aに沿って延び、上記遮水シート22の上端縁部42に連結される発泡樹脂製などの棒形状の浮体47が設けられている。
【0042】
一方、上記遮水シート22の下端がわ48は、上記埋立域3の底面である地盤2上に敷設されている。
【0043】
図3において、上記構成によれば、次の作用効果が生じる。
【0044】
即ち、上記下護岸構造物8が上記海域5がわからの波などにより衝撃力を与えられて上記海域5がわの水49の水面以下にまで崩落し、これに連動して上記上護岸構造物7が上記重し45を伴って海域5がわに落下したとする。この場合、上記重し45は上記遮水シート22の上端縁部42上から離脱する一方、上記浮体47は上記水49の水面上に浮こうとして、上記遮水シート22の上端縁部42を上記連結体43の連結杭44からその上方に離反させる。これにより、上記下護岸構造物8に対する遮水シート22の上端縁部42の上記連結体43による連結が解除される(図3中一点鎖線)。
【0045】
よって、上記したように、何らかの理由で護岸4が崩落したとしても、上記遮水シート22により上記埋立域3と海域5とは仕切られた状態に維持され、上記埋立域3の汚濁水20が上記海域5に流入するということは防止される。
【0046】
なお、以上は図示の例によるが、海域5は河川域や湖などの水域であってもよい。また、上記上護岸構造物7は中実であってもよく、台形であってもよい。また、上記下護岸構造物8のケーソン本体10は中実であってもよく、矩形であってもい。また、上記被遮水体21の表面は水平、垂直のいずれに延びるものであってもよい。また、上記遮水材層28に接着性はなくてもよい。
【0047】
以下の図4〜6は、実施例2〜4を示している。この実施例2〜4は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0048】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図4に従って説明する。
【0049】
図4において、上記下護岸構造物8の表面に樹脂製の遮水板52が取り付けられ、この遮水板52の表面の一部にアンカー53が突設されている。上記遮水板52の表面の他部に重量充填物16で構成される被遮水体21が連設され、この被遮水体21の表面に遮水シート22が敷設されている。この遮水シート22の上記遮水板52がわの一端縁部32の表面に突出体36が突設されている。
【0050】
上記遮水シート22の一端縁部32の表面とこの一端縁部32に隣接する上記被遮水体21の表面がわとに跨るように遮水材層28が設置され、この遮水材層28に上記各アンカー53と突出体36とが埋入されている。これにより、上記遮水板52、遮水シート22の一端縁部32、および遮水材層28の互いの連結強度が向上させられている。
【実施例3】
【0051】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例3を添付の図5に従って説明する。
【0052】
図5において、上記被遮水体21の表面に2枚の遮水シート22,22が連設されている。これら両遮水シート22,22の互いの対向縁部である各一端縁部32が互いに重ね合わされている。上記両一端縁部32,32のうち、一方の一端縁部32の表面と、この一端縁部32に隣接する上記被遮水体21の表面がわとに跨るように、つまり、他の一端縁部32を介して上記被遮水体21の表面に跨るように遮水材層28が設置されている。これによれば、上記両遮水シート22,22と遮水材層28との互いの連結強度が向上させられる。
【実施例4】
【0053】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例4を添付の図6に従って説明する。
【0054】
図6において、上記連結体43は、上記護岸4の長手方向Aに沿って延び、上記遮水シート22の上端縁部42に連結される金属製の連結バー56と、この連結バー56を上記連結杭44に連結させるロープ製などのリング57とを備えている。なお、図中一点鎖線で示すように、前記実施例1と同様に、上記連結杭44に上記遮水シート22の上端縁部42を嵌脱可能に嵌合させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1を示し、図2のI−I線矢視拡大断面図である。
【図2】実施例1を示し、埋立地の部分斜視部分断面図である。
【図3】実施例1を示し、護岸の長手方向に沿った視線でみた埋立地の部分断面図である。
【図4】実施例2を示し、図1に相当する図である。
【図5】実施例3を示し、図1に相当する図である。
【図6】実施例4を示し、図2の部分拡大に相当する図である。
【符号の説明】
【0056】
1 埋立地
2 地盤
3 埋立域
4 護岸
5 海域
17 傾斜面
20 汚濁水
21 被遮水体
22 遮水シート
28 遮水材層
32 一端縁部
36 突出体
38 基板
39 突出板
42 上端縁部
43 連結体
47 浮体
49 水
A 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被遮水体の表面に敷設される遮水シートと、この遮水シートの面に沿った一方向におけるこの遮水シートの一端縁部の表面とこの一端縁部に隣接する上記被遮水体の表面がわとに跨るように設置される遮水材層とを備えた埋立地における遮水構造において、
上記遮水シートの一端縁部に取り付けられ、この一端縁部の表面から突出し上記遮水材層に埋入される突出体を設けたことを特徴とする埋立地における遮水構造。
【請求項2】
上記突出体が、上記遮水シートの一端縁部の表面に面接触するように延びると共に、上記一方向に対し傾斜する方向に延びて、この一端縁部に取り付けられる基板と、この基板に沿って延び、この基板から突出する突出板とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の埋立地における遮水構造。
【請求項3】
埋立域を囲む護岸の上記埋立域がわの表面をこの埋立域内に向かうに従い下傾する傾斜面とし、この傾斜面を上記被遮水体の表面として、この表面に上記遮水シートを敷設し、この遮水シートの上端縁部を上記護岸の頂部がわに連結、連結解除可能に連結する連結体を設け、上記護岸と遮水シートの上端縁部とが上下方向で相対的に離反するとき、上記連結体による連結が解除されるようにし、上記遮水シートの上端縁部に連結される浮体を設けことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の埋立地における遮水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−11990(P2009−11990A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179641(P2007−179641)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】