説明

埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置

【課題】埋設パイプラインに発生した電磁誘導電圧を容易かつ効果的に低減することが可能な、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法及び低減装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、磁束密度を測定する手段を用いて送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出し、磁束密度測定手段からの出力信号を用いて、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数および位相を検出し、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号147を発生させ、検出信号に所定の位相差を付加することで、位相を調整した相殺信号149を埋設パイプラインに設けられた誘導起電力発生手段110に印加することで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させて、送電線あるいは交流式電気鉄道に起因する電磁誘導電圧、更には、管対地交流電位を低減する埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法及び低減装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス、石油、上水、工業用水、海水等の輸送手段として、パイプラインが多く敷設されている。多くのパイプラインは、地中に埋設して敷設されているが、パイプラインの一部が用地の制約等により、送電線あるいは交流式電気鉄道に近接して埋設される場合がある。
【0003】
鋼製パイプライン等のようなパイプラインが、送電線あるいは交流式電気鉄道に近接して、かつ、送電線あるいは交流式電気鉄道と並行して埋設されると、送電線あるいは交流式電気鉄道から電磁誘導を受けることとなる。特に、送電線に大きな交流電流が流れている場合には、送電線から100〜200m程度離して埋設されたパイプラインでも、電磁誘導を受けることとなる。
【0004】
パイプラインに近接して、並行した送電線あるいは交流式電気鉄道が存在すると、パイプラインには、以下に示す式1で表される電磁誘導電圧Eが、パイプラインの延長方向に沿って発生する。
【0005】
【数1】

ここで、jは虚数単位、ωは送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流の角周波数、Mは送電線あるいは交流式電気鉄道とパイプラインとの相互インダクタンス、Iは送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流、lはパイプラインと送電線あるいは交流式電気鉄道とが並行している距離である。
【0006】
上記の式1から明らかなように、送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流Iが大きいほど、また、パイプラインが送電線あるいは交流式電気鉄道と並行する距離lが長いほど、パイプラインに発生する電磁誘導電圧Eは大きくなる。
【0007】
ここで、パイプラインの軸方向に発生した電磁誘導電圧Eは、パイプラインの大地に対する交流電位(管対地交流電位)を発生させる。管対地交流電位が高いレベルまで上昇すると、現場作業の際に作業者が感電したり、パイプラインが交流腐食によって腐食したりするといった、種々の障害が懸念される。したがって、管対地交流電位を低減する必要がある。
【0008】
埋設パイプラインに生じる電磁誘導に関して、特許文献1では、埋設パイプラインに生じている常時誘導電圧を測定する方法について開示している。特許文献1に記載された測定方法は、送電線の電磁誘導範囲を通過して埋設されたパイプラインに対して、電磁誘導範囲の両端の通過点寄りに接地体を1個以上設け、両端の通過点内の電磁誘導電圧を測定するものである。
【0009】
また、特許文献2では、埋設パイプラインに生じている管対地交流電位を低減する方法について開示している。図14は、特許文献2に記載のパイプラインの管対地交流電位低減方法を説明するための模式図である。
【0010】
特許文献2に記載の方法は、図14に示したように、送電線7が張られた送電鉄塔5に近接した大地3中に、パイプライン1が埋設されている場合において、パイプライン1に接地体9、11を設け、この接地体9、11間に交流電流13を流すことで、パイプライン1に生じた管対地交流電位を低減する方法である。
【0011】
また、特許文献3では、媒質と媒質中に設けられたパイプラインとの間に生じた交流電圧を相殺する装置について開示している。図15は、特許文献3に記載の装置を説明するための模式図である。
【0012】
特許文献3に記載の装置は、図15に示したように、媒質、例えば大地3中に埋設されたパイプライン1と平行となるように、大地3上に測定用導体15を設置して、測定用導体15の対地電圧を測定し、得られた電圧信号を増幅器17により増幅した上で、振幅測定器19および位相測定器21を用いて振幅と位相とを測定する。測定した振幅と位相とに基づいて、制御器23は、測定用導体15が測定した対地電圧と逆位相の電圧を変圧器25に印加し、パイプライン1に生じた電磁誘導電圧、更に管対地交流電位を低減する。
【0013】
【特許文献1】特開平11−201400号公報
【特許文献2】特開平9−292100号公報
【特許文献3】米国特許第5541459号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記の特許文献2に記載された管対地交流電位低減方法では、パイプライン1に接地体9、11を設けても、設置箇所数が不十分であったり、十分低い接地抵抗が得られない場合は、充分に管対地交流電位を低減することができない。また、接地体9、11を設けた箇所の管対地交流電位が低減しても、他の接地体を設けていない箇所において、管対地交流電位が低減しないか、あるいは、増加する現象が起きることがあり、結果的に多くの接地体を設けなければならない場合がある。したがって、特許文献2に記載された方法で、全てのパイプライン埋設区間にわたって管対地交流電位を低減させることは、多大な労力を要するという問題があった。
【0015】
他方、上記の特許文献3に記載された電磁誘導電圧低減装置では、接地体を使用しないため上記の問題は生じないものの、充分な強度を持つ測定用導体15の対地電圧を得るためには、電磁誘導電圧を低減したいパイプライン1と平行に、出来る限り長い測定用導体15を準備する必要がある。しかし、パイプライン上に他の構造物がある等、地上の状況によっては、測定用導体15を敷設するのが困難となり、測定用導体15から測定するのに十分な強度の信号を得ることができない場合があるという問題があった。
【0016】
さらに、誘導起電力を発生させるための手段として変圧器を用いた場合、1台の変圧器を設置しただけでは、管対地交流電位をパイプライン全体にわたり低減することができないため、複数の変圧器を設置し、それぞれの変圧器を制御しなければならないという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、パイプラインに発生している電磁誘導電圧を容易かつ効果的に低減することが可能な、新規かつ改良された埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法であって、磁束密度を検出する手段を設け、前記送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出し、磁束密度の検出信号を用いて、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数および位相を検出し、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号を発生させ、検出信号に所定の位相差を付加して、位相を調整した相殺信号を埋設パイプラインに設けられた誘導起電力発生手段に印加することで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させて、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧を低減する埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法が提供される。
【0019】
かかる構成によれば、特許文献2に記載された接地体を設ける必要が無く、更に、特許文献3に記載された電磁誘導電圧低減装置における、パイプライン1と平行に、長い測定用導体15を準備することなく、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号を得ることが可能となる。当該検出信号に対して所定の位相差を付加することで生成した相殺信号が、誘導起電力発生手段に印加され、誘導起電力発生手段によって、パイプラインに、送電線あるいは交流式電気鉄道による電磁誘導電圧とは別の誘導起電力が発生する。誘導起電力発生手段によって発生した誘導起電力と、送電線あるいは交流式電気鉄道による電磁誘導電圧とが互いに打ち消しあうことで、パイプラインに発生している電磁誘導電圧を低減することが可能となる。これにより、パイプラインに発生している管対地交流電位を低減することが可能となる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によれば、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法であって、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数および位相を検出し、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号を発生させ、検出信号に所定の位相差を付加して、位相を調整した相殺信号を、埋設パイプラインに沿って、当該埋設パイプラインと送電線あるいは交流式電気鉄道とが並行している範囲に設けられた誘導起電力発生用導体に印加することで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させて、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧を低減する埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法が提供される。
【0021】
かかる構成によれば、特許文献2に記載された接地体を設ける必要が無く、更に、特許文献3に記載された電磁誘導電圧低減装置における複数の変圧器を設置し、それぞれの変圧器を制御することなく、送電線あるいは交流式電気鉄道と並行している区間の埋設パイプラインに誘導起電力を発生させることが可能となる。従って、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有し、かつ、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に対して所定の位相差を有する相殺信号が、誘導起電力発生用導体に印加され、誘導起電力発生用導体によって、パイプラインに、送電線あるいは交流式電気鉄道による電磁誘導電圧とは別の誘導起電力が発生する。誘導起電力発生手段によって発生した誘導起電力と、送電線あるいは交流式電気鉄道による電磁誘導電圧とが互いに打ち消しあうことで、パイプラインに発生している電磁誘導電圧を低減することが可能となる。これにより、誘導起電力発生用導体が並行している範囲のパイプラインに生じている管対地交流電位を、低減することが可能となる。
【0022】
なお、上記の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法において、磁束密度を検出する手段を設け、送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出し、磁束密度を検出する手段から検出した検出信号の周波数および位相を調整することで相殺信号を生成してもよい。かかる構成によれば、磁気センサは、送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数や位相に関する情報を、検出信号から間接的に得る。得られた周波数や位相に関する情報に基づいて検出信号の周波数および位相を調整し、相殺信号を生成することにより、相殺信号が、パイプラインに発生した電磁誘導電圧と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧に対して所定の位相差を有するように調整することが可能である。
【0023】
少なくとも2以上の磁束密度を検出する手段を設け、各々の磁束密度を検出する手段について、異なる方向成分の磁束密度を検出するようにし、これらの磁束密度検出手段からの検出信号を合成して用いるようにしてもよい。指向性のある磁束密度検出手段を用いる場合、磁束密度検出手段と磁束との角度により、磁束密度検出手段の検出信号は大きく変化する。従って、磁束の方向が不明な場合、1つのみの磁束密度検出手段を用いただけでは、磁束密度検出手段と磁束との角度によっては十分大きい検出信号を得ることが出来ない場合がある。そのため、かかる構成によれば、1つのみの磁束密度検出手段を用いただけでは検出することが困難な送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を、異なる角度で検出することができ、より大きな検出信号を得ることができる。特に、3つの磁束密度検出手段を、他の磁束密度検出手段に対して90度の角度となるように用いることで、磁束密度の3軸成分それぞれを、各個別の磁束密度検出手段で検出することが可能であり、これらを合成した信号を検出信号として用いてもよい。
【0024】
少なくとも2以上の電位測定手段を埋設パイプラインに設け、任意の2つの電位測定手段間での電位差信号を測定し、測定された電位差信号を検出信号として用いて、検出信号の周波数および位相を調整して相殺信号を生成してもよい。かかる構成によれば、2つの電位測定手段は、パイプラインにおける任意の2点間の電位差信号を測定することで、送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧の周波数と位相に関する情報を得る。得られた周波数や位相に関する情報に基づいて検出信号の周波数および位相を調整し相殺信号を生成することで、相殺信号が、パイプラインに発生した電磁誘導電圧と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧に対して所定の位相差を有するように調整することが可能である。
【0025】
埋設パイプラインおよび埋設パイプラインが埋設されている大地との間の電位を測定する電位測定手段を設けて、埋設パイプラインと大地との電位差信号を測定し、測定された電位差信号を検出信号として用いて、検出信号の周波数および位相を調整して相殺信号を生成してもよい。かかる構成によれば、電位測定手段は、埋設パイプラインの管対地電位を測定することで、埋設パイプラインに発生している電磁誘導電圧の周波数と位相に関する情報を得る。得られた周波数や位相に関する情報に基づいて検出信号の周波数および位相を調整し相殺信号を生成することで、相殺信号が、パイプラインに発生した電磁誘導電圧と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧に対して所定の位相差を有するように調整することが可能である。
【0026】
電磁誘導電圧に起因して埋設パイプラインを流れる交流電流を測定する電流測定手段を埋設パイプラインに設け、電流測定手段により測定される交流電流を用いて、相殺信号の周波数および位相を調整してもよい。かかる構成によれば、電流測定手段は、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧によって埋設パイプラインを流れる交流電流の周波数と位相を測定する。得られた交流電流と同一の周波数および位相を有するように、相殺信号の周波数および位相を調整することが可能である。
【0027】
また、相殺信号の振幅を更に調整するようにしてもよい。かかる構成によれば、相殺信号の振幅を任意の振幅とすることができる。相殺信号の振幅を調整することで、相殺信号の振幅を、パイプラインに生じる電磁誘導電圧を効果的に低減または相殺するような振幅とすることが可能となる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第3の観点によれば、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置であって、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを検出する検出器と、検出器が検出した検出信号の位相を調整することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有し、当該送電線あるいは交流式電気鉄道に起因する電磁誘導電圧を相殺する相殺信号を発生する相殺信号発生器と、相殺信号が印加されることで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる誘導起電力発生器と、を備え、上記の検出器は、送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出する磁気センサであることを特徴とする埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置が提供される。
【0029】
かかる構成によれば、検出器である磁気センサは、送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを測定し、信号発生器は、磁気センサが検出した検出信号の位相を調整することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する相殺信号を発生し、誘導起電力発生器は、位相が調整された相殺信号が印加されることで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる。かかる誘導起電力が埋設パイプラインに発生すると、埋設パイプラインに生じた電磁誘導電圧と、誘導起電力発生器によって発生した誘導起電力とが打ち消しあい、電磁誘導電圧を低減し、かつ、管対地交流電位を低減することが可能となる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の第4の観点によれば、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置であって、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを検出する検出器と、検出器が検出した検出信号の位相を調整することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有し、当該送電線あるいは交流式電気鉄道に起因する電磁誘導電圧を相殺する相殺信号を発生する相殺信号発生器と、相殺信号が印加されることで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる誘導起電力発生器と、を備え、上記の誘導起電力発生器は、埋設パイプラインに沿って、当該埋設パイプラインと送電線あるいは交流式電気鉄道とが並行している範囲に設けられた、誘導起電力発生用導体であることを特徴とする、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置が提供される。
【0031】
かかる構成によれば、検出器は、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを測定し、信号発生器は、検出器が検出した検出信号の位相を調整することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する相殺信号を発生し、誘導起電力発生器である誘導起電力発生用導体は、位相が調整された相殺信号が印加されることで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる。かかる誘導起電力が埋設パイプラインに発生すると、埋設パイプラインに生じた電磁誘導電圧と、誘導起電力発生器によって発生した誘導起電力とが打ち消しあい、誘導起電力発生用導体が並行している範囲の電磁誘導電圧を低減することが可能となる。これにより、パイプラインに生じている管対地交流電位を、低減することが可能となる。
【0032】
ここで、上記の検出器は、磁気センサであっても良い。かかる構成によれば、検出器である磁気センサは、送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを測定し、信号発生器は、磁気センサが検出した検出信号の位相を調整することで、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する相殺信号を発生し、誘導起電力発生器である誘導起電力発生用導体は、位相が調整された相殺信号が印加されることで、埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる。かかる誘導起電力が埋設パイプラインに発生すると、埋設パイプラインに生じた電磁誘導電圧と、誘導起電力発生器によって発生した誘導起電力とが打ち消しあい、電磁誘導電圧を低減し、且つ、管対地交流電位を低減することが可能となる。
【0033】
上記の磁気センサを少なくとも2以上用い、各々の磁気センサがそれぞれ違う方向を向くようにし、これらの磁気センサからの検出信号を合成して用いるようにしてもよい。指向性のある磁気センサを用いる場合、磁気センサと磁束との角度により磁気センサの検出信号は大きく変化する。従って、磁束の方向が不明な場合、1つのみの磁気センサを用いただけでは、磁気センサと磁束との角度によっては十分大きい検出信号を得ることが出来ない場合がある。そのため、かかる構成によれば、1つのみの磁気センサを用いただけでは検出することが困難な送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を異なる角度で検出することができ、より大きな検出信号を得ることができる。特に、3つの磁気センサを、他の磁気センサに対して90度の角度となるように用いることで、磁束密度の3軸成分それぞれを、各個別の磁気センサで検出することが可能であり、これらを合成した信号を検出信号として用いてもよい。
【0034】
上記の検出器は、埋設パイプラインにおける任意の2点間の電位差を測定する電位差測定器であってもよい。かかる構成によれば、電位差測定器は、当該電位差測定器が設けられた埋設パイプラインの地点間の電位差を測定する。得られた電位差信号を解析することで、送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに発生した電磁誘導電圧信号の周波数および位相に関する情報を得ることができる。
【0035】
上記の検出器は、埋設パイプラインの大地に対する電位を測定する電位差測定器であってもよい。かかる構成によれば、電位差測定器は、大地に対する埋設パイプラインの電位差を測定する。得られた電位差信号を解析することで、送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる電流に起因して埋設パイプラインに発生した電磁誘導電圧信号の周波数および位相に関する情報を得ることができる。
【0036】
上記の検出器は、埋設パイプラインに生じる電磁誘導電圧に起因する交流電流を測定する電流測定器であってもよい。かかる構成によれば、電流測定器は、送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインを流れる交流電流を測定する。得られた交流電流信号を解析することで、交流電流の周波数と位相に関する情報を得ることができる。
【0037】
上記の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置は、相殺信号の振幅を調整する振幅調整器を更に備えてもよい。かかる構成によれば、振幅調整器は、相殺信号の振幅を任意の値に調整する。相殺信号の振幅を調整することで、パイプラインに生じる電磁誘導電圧を効果的に低減または相殺することができる。
【0038】
また、上記の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置は、検出器で検出された検出信号を増幅する増幅器を更に備えてもよい。かかる構成によれば、増幅器は、検出器が検出した送電線あるいは交流式電気鉄道を流れる交流電流に関する検出信号を増幅する。その結果、検出された検出信号が微弱であっても、任意の強度まで信号強度を変更することが可能となる。
【0039】
上記の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置は、検出器で検出された検出信号から所定の周波数より大きな周波数成分を除去するローパスフィルタを更に備えてもよく、検出器で検出された検出信号から所定の周波数成分のみを抽出するバンドパスフィルタを更に備えてもよい。かかる構成によれば、ローパスフィルタは、検出器で検出された検出信号から、所定の周波数より大きな周波数成分を除去し、所定の周波数以下の周波数成分のみを抽出し、バンドパスフィルタは、検出器で検出された検出信号から、所定の周波数成分のみを抽出する。その結果、検出器で検出された検出信号に混在しているノイズ成分を、除去することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、パイプラインに発生している電磁誘導電圧を容易かつ効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0042】
なお、以下に示す本発明の各実施形態においては、パイプラインが送電線の近傍に埋設されている場合について説明するが、本発明が以下の場合に限定されるわけではなく、パイプラインが交流式電気鉄道の近傍に埋設されている場合についても同様であることは、言うまでもない。
【0043】
なお、以下に示す本発明の各実施形態において、検出器から出力される出力信号を「検出信号」と称し、検出信号を位相調整したもの、または、位相調整および振幅調整したものを「相殺信号」と称することとする。
【0044】
(第1の実施形態)
以下に、図1〜図7を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置について、説明する。図1は、本実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置を説明するための模式図である。図2Aは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。図2Bは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。図3Aは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、大地を帰路とした回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。図3Bは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、大地を帰路とした回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。図4Aは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、複数回往復する回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。図4Bは、本実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、複数回往復する回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。図5は、本実施形態に係る変圧器を説明するための斜視図である。図6は、本実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における信号の流れを説明するためのブロック図である。図7は、送電線中を流れる交流電流に起因して生じる電磁誘導電圧、変圧器による誘導起電力、および相殺後の電圧の波形を説明するためのグラフ図である。
【0045】
本実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置(以下、電磁誘導電圧低減装置と略記する。)100は、図1に示すように、送電鉄塔5間に張られている送電線7中を流れる交流電流に起因して、大地3中に、送電線7と略平行に埋設されたパイプライン1(図1中のP1〜P2地点間で送電線7と並行しているものとする。)に生じる電磁誘導電圧を低減する装置である。
【0046】
本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100は、図1に示すように、誘導起電力発生器110と、相殺信号発生器130と、検出器150とを備える。
【0047】
(誘導起電力発生器110)
誘導起電力発生器110は、送電線7を流れる交流電流に起因した電磁誘導電圧が発生しているパイプライン1に、電磁誘導電圧を低減・相殺するための誘導起電力を発生させる装置である。この誘導起電力発生器110として、例えば、パイプライン1に沿って設置される誘導起電力発生用導体や、励磁コイルを用いた変圧器等がある。
【0048】
以下では、まず、誘導起電力発生器110の一例である誘導起電力発生用導体について、図2A〜図4Bを参照しながら、詳細に説明する。
【0049】
誘導起電力発生用導体111は、誘導起電力を発生することで、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧を打ち消す役割を果たす。図2Aに、誘導起電力発生用導体111の一例を示す。誘導起電力発生用導体111は、例えば、銅線などのケーブルや、鉄板などの構造物などからなる。送電線7とパイプライン1が並行している範囲に、パイプライン1に沿って、パイプライン1の軸を中心にして往復するように、誘導起電力発生用導体111を設ける。誘導起電力発生用導体111に、発信器117を用いて、所定範囲の周波数および位相を有する交流電圧を印加すると、誘導起電力発生用導体111に交流電流113、114が流れる。その結果、誘導起電力発生用導体111の周囲に、交流磁界115、116が発生する。
【0050】
図2Bに、図2Aをパイプライン1の軸方向に対して直交する方向で切断した断面図を示す。図2Bに示したように、誘導起電力発生用導体111を流れる往路の交流電流113から発生する交流磁界115の向きと、復路の交流電流114から発生する交流磁界116の向きとは、互いに逆となるため、パイプライン1には、往路の交流磁界115と、復路の交流磁界116とが加算された(重ね合わされた)磁界が、パイプライン1の軸方向に対して直交する方向に発生する。これらの交流磁界が時間的に変化することにより、パイプライン1の軸方向に沿って、誘導起電力121が発生する。このとき、送電線7の影響によりパイプライン1に発生した電磁誘導電圧119を打ち消す誘導起電力121を発生させるように、誘導起電力発生用導体111に交流電流113、114を流すことで、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119、更には、管対地交流電位を低減することができる。
【0051】
ここで、誘導起電力発生用導体111に流す交流電流113および114、すなわち、誘導起電力発生用導体111に印加する交流電圧の大きさを調整することで、パイプライン1に生じる誘導起電力121の大きさ等を変化させることが可能である。これにより、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119、更には、管対地交流電位を、効果的に低減することが可能となる。
【0052】
誘導起電力発生用導体111を、パイプライン1に密着して設置することも可能である。しかし、パイプライン1に密着して設置する場合には、誘導起電力発生用導体111とパイプライン1との間に絶縁材を挿入するなど、誘導起電力発生用導体111とパイプライン1とを、電気的に絶縁する必要がある。
【0053】
図3Aには、誘導起電力発生用導体111の一端と、発信器117の出力側の他端とを接地123して、大地を帰路とする交流電流113を流す例を示す。図3Bに、図3Aをパイプライン1の軸方向に対して直交する方向で切断した断面図を示す。図3Bに示したように、誘導起電力発生用導体111を流れる交流電流113から発生する交流磁界115が、パイプライン1の軸方向に対して直交する方向に発生する。送電線7の影響によりパイプライン1に発生した電磁誘導電圧119を打ち消す誘導起電力121を発生させるように、誘導起電力発生用導体111に交流電流113を流すことで、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を低減することができる。この場合は、誘導起電力発生用導体111をパイプライン1に沿って往復して設置する必要がなく、設置する誘導起電力発生用導体111の長さを、例えば約半分にすることが可能である。
【0054】
図4Aおよび図4Bには、誘導起電力発生用導体111をパイプライン1の周囲に複数回往復させる例を示す。図示の例では、誘導起電力発生用導体111を、パイプライン1の周囲に、例えば2往復させている。誘導起電力発生用導体111を2往復往復させることにより、誘導起電力発生用導体111から発生する交流磁界が増加し、パイプライン1に、誘導起電力発生用導体111を1往復させたものに比べて約2倍の誘導起電力121を発生させることが可能である。
【0055】
なお、上記のいずれの例においても、誘導起電力発生用導体111に流す交流電流113の大きさ、誘導起電力発生用導体111の長さ、あるいは、誘導起電力発生用導体111とパイプライン1との間隔を調整することで、パイプライン1に生じる誘導起電力121の大きさを変化させることが可能である。
【0056】
続いて、誘導起電力発生器110の他の例として、励磁コイルを用いた変圧器125について、図5を参照しながら、詳細に説明する。変圧器125は、誘導起電力を発生することで、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧を打ち消す役割を果たす。
【0057】
変圧器125は、貫通孔127が形成された複数枚の略円形状の電磁鋼板が重ね合わされた層構造を有し、この電磁鋼板が鉄心126として機能する。層構造を有することにより、鉄心126の中に生じる渦状の電流と鉄心126に起因する、発熱によるエネルギーの損失(渦電流損)を小さくすることが可能である。変圧器125を構成する電磁鋼板としては、例えばケイ素鋼板を用いることができる。鉄心126には、巻線128が何重にも巻き付けられており、巻線128の両端には、交流電圧を巻線128に印加することが可能な発信器117を取り付けることができる。巻線128は、例えば、エナメル線、ホルマール線または銅線などを使用することができる。
【0058】
また、変圧器125は、鉄心126を例えば円弧状に2つ以上に分割できる構造を有しても良い。鉄心126を円弧状に分割できる構造を有することにより、この円弧を組み合わせて、パイプライン1を囲むように変圧器125を設置することが可能である。
【0059】
変圧器125の略中央に設けられた貫通孔127に、電磁誘導電圧を低減しようとするパイプライン1を通すことで、パイプライン1に誘導起電力を発生させることができる。パイプライン1に誘導起電力が発生する理由については、以下に述べる。変圧器125に設けられる貫通孔127の径の大きさは、電磁誘導電圧を低減しようとするパイプライン1の径の大きさに応じて、適宜設計することが可能である。
【0060】
なお、図5においては、変圧器125の形状は、略円形状であるが、鉄心126を構成する電磁鋼板の形状は、円形状に限定されるわけではなく、例えば略四角形状であってもよい。また、変圧器125に形成される貫通孔127の形状についても、略円形状に限定されるわけではなく、例えば略四角形状であってもよい。
【0061】
巻線128の両端に発信器117が取り付けられ、巻線128に所定範囲の周波数および位相を有する交流電圧が印加されると、巻線128に励磁電流が流れ、鉄心126の中に、円周方向に沿って磁束φが生じる。このφが時間的に変化することにより。貫通孔127を貫いているパイプライン1に、誘導起電力が発生する。巻線128に印加する交流電圧の大きさを調整することで、パイプライン1に生じる誘導起電力の大きさ等を変化させることが可能である。
【0062】
ここで、変圧器125については、変圧器125を設置した箇所において局所的に誘導起電力121を発生させる。そのため、送電線7とパイプライン1が並行している距離が短く、パイプライン1の局所的な範囲で電磁誘導電圧119が生じている場合には、変圧器125を設置して局所的な電磁誘導電圧119を低減することが効果的且つ効率的である。
【0063】
一方、誘導起電力発生用導体111については、誘導起電力発生用導体111を設置した範囲の全体に渡り、誘導起電力121を発生させる。そのため、送電線7とパイプライン1が並行している距離が長く、パイプライン1の広い範囲で電磁誘導電圧119が生じている場合には、例えば、誘導起電力発生用導体111として軽量で且つ費用が安価なケーブルを使用し、これをパイプライン1に沿って設置して広範囲に渡る電磁誘導電圧119を低減することが効果的且つ効率的である。
【0064】
(相殺信号発生器130)
続いて、相殺信号発生器130について、説明する。相殺信号発生器130は、検出器150にて検出した所定の周波数を有する交流電圧信号である検出信号に任意の位相を付加することで相殺信号を発生させ、パイプライン1に設置された誘導起電力発生器110に対して、発生した相殺信号を印加する装置である。ここで、位相を付加するとは、相殺信号発生装置130で発生した相殺信号に対して、相殺信号の位相を進めたり、または遅らせたりすることを意味する。付加する位相差は、電磁誘導電圧低減装置100の使用者が任意の値に決定することが可能である。
【0065】
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100を詳細に説明する。前述のように、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100は、誘導起電力を発生する誘導起電力発生器110と、相殺信号149を発生する相殺信号発生器130と、検出器150と、を備える。
【0066】
送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧(図2中の119)の周波数は、商用周波数と同期しており、東日本では50Hz、西日本では60Hzである。しかしながら、この電磁誘導電圧119の周波数は正確には一定ではなく、発電所の発電機の出力および需要家の負荷に対応して、わずかながら変動している。そのため、送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧119に誘導起電力発生器110による誘導起電力121を正確に同期させるためには、送電線7に起因する電磁誘導電圧119と完全に同期した信号を検出し、この信号に連動した信号を誘導起電力発生器110に印加する必要がある。
【0067】
そこで、送電線を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧119と完全に連動した信号を、検出器150により検出する。検出器150により検出した検出信号147は、相殺信号発生器130に入力される。なお、検出器150については、以下で改めて詳細に説明する。
【0068】
相殺信号発生器130は、図6に示したように、検出器150にて検出した検出信号147の位相を調整するための、位相調整器131を備える。この位相調整器131により検出信号147の位相を調整して、送電線7の影響によりパイプライン1に発生した電磁誘導電圧119と、誘導起電力発生器110が発生する誘導起電力121との位相差が180度となるような位相を有する相殺信号149を生成する。
【0069】
検出器150が検出した検出信号147は、必要に応じて増幅器141で増幅され、更に、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:LPF)143によって高調波を除去した後に、位相調整器131に入力される。ここで、LPF143が除去する高調波とは、検出信号に含まれている商用周波数(例えば、50Hz〜60Hz)よりも大きな周波数を有する信号(例えば、100Hz以上の周波数を有する信号)を意味する。また、LPF143を用いることで、ノイズを除去することも可能となる。
【0070】
また、LPF143の代わりにバンドパスフィルタ(Band Pass Filter:BPF)を用いて、検出信号147に含まれている商用周波数(例えば、50Hz〜60Hz)のみを抽出することも可能である。
【0071】
相殺信号発生器130は、その他、例えば、発電機133と、整流器135と、電力増幅器137と、出力変圧器139と、振幅調整器145とを備える。発電機133により生成した交流電力は、整流器135によって整流され、電力増幅器137に供給される。
【0072】
位相調整器131によって位相調整された信号は、電力増幅器137により必要な大きさまで増幅され、出力変圧器139を介して、誘導起電力発生器110へと供給される。このとき、振幅調整器145を用いて、パイプライン1に誘起される誘導起電力と電磁誘導電圧とが打ち消しあうように、相殺信号149の振幅を適宜調整する。
【0073】
ここで、図7を参照しながら、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100が、埋設パイプライン1に生じた電磁誘導電圧を低減する方法について説明する。
【0074】
パイプライン1と並行した送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導により、図1のP1地点とP2地点の間に電磁誘導電圧119が発生している。この状態で、誘導起電力発生器110によって、極性が電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ誘導起電力121をパイプライン1に発生させることで、送電線7からの電磁誘導電圧119を低減させることができる。
【0075】
ここで、送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧119をEpとする。図7には、横軸を時間、縦軸を電圧としたときの送電線7からの電磁誘導電圧Epの波形が示されている。
【0076】
この状態で、パイプライン1にEpとの位相差が180度(π)となる誘導起電力Ec121を誘導起電力発生器110によって発生させ、パイプライン1に重畳させると、パイプライン1のP1とP2の間の電圧は相殺され、波形123となって現れる。この相殺された電圧ΔEは、以下に示す式2で表される。
【0077】
ΔE=Ep−Ec ・・・(式2)
【0078】
ここで、誘導起電力発生器110による誘導起電力121の大きさを、送電線7による電磁誘導電圧119と同じ大きさ、すなわち、
Ec=Ep ・・・(式3)
とすると、相殺された電圧は、
ΔE=0 ・・・(式4)
となる。すなわち、送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導の影響を、除去することが可能となり、パイプライン1に発生した管対地交流電位を除去することが可能となる。
【0079】
このように、パイプライン1に対して、誘導起電力発生器110により、送電線7からの電磁誘導電圧119と180度の位相差を持つ誘導起電力121を発生させることにより、送電線7からの電磁誘導電圧を低減させることができ、オシロスコープ等を見ながら誘導起電力発生器110による起電力Ecの大きさを調整することで、送電線7による電磁誘導電圧Epを相殺することができる。
【0080】
図7から明らかなように、誘導起電力発生器110による誘導起電力121によって、送電線7からの電磁誘導電圧119をうまく相殺させるためには、誘導起電力発生器110による起電力121が送電線7からの電磁誘導電圧119と同一の周波数を有しており、かつ、誘導起電力発生器110による起電力121と送電線7からの電磁誘導電圧119との位相差が、180度になっている必要がある。そのため、送電線7による電磁誘導電圧と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧119と誘導起電力121との位相差が180度となるような相殺信号149を、誘導起電力発生器110に入力する必要がある。
【0081】
(検出器150)
続いて、検出器150について、詳細に説明する。誘導起電力発生器110に送電線7による電磁誘導電圧119と180度の位相差を持つ誘導起電力121を発生させるためには、検出器150により、電磁誘導電圧119と連動する信号を検出する必要がある。信号の種類として、例えば、送電線7からの磁束密度、パイプライン1における任意の2点間の電位差、パイプライン1と大地3との間の電位差、またはパイプライン1の管内電流の4種類が挙げられる。これら4種類の信号は、いずれも電磁誘導電圧119と同一の周波数を有している。これらいずれかの信号を、相殺信号発生器130に検出信号147として入力する。
【0082】
上記の4種類の信号の測定方法について、以下に例を示しながら説明を行う。
【0083】
図8は、図1に示した検出器150として、磁束密度測定手段のひとつである磁気センサ151を用いた場合を説明する模式図である。磁気センサ151は、送電線7から発生した磁界の強度(磁束密度)を、例えば、探りコイルやホール素子等を利用して計測する装置である。この磁気センサ151を用いることで、送電線7から発生した磁束密度や周波数だけでなく、位相に関する情報も得ることが可能である。磁気センサ151は、送電線7とパイプライン1の間であれば、どの位置に設置してもよいが、送電線7に近い位置に設置することで、正確でノイズの少ない測定値を得ることができる。なお、本実施形態では、磁束密度測定手段の例として磁気センサを用いた場合について説明するが、本実施形態に係る磁束密度測定手段は、磁気センサに限定されるわけではなく、磁束密度を測定することが可能な測定方法、測定機器等であれば、いずれも使用することが可能である。
【0084】
磁気センサ151が測定した磁束密度、周波数および位相に関する信号は、図8に示したように、相殺信号発生器130に入力される。相殺信号発生器130において、磁気センサ151が測定した検出信号147は、図6に示したように、例えば、増幅器141およびLPF143を介して、位相調整器131に入力される。パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺できるように、位相調整器131にて、検出信号147に所定の位相差を付加し、電磁誘導電圧に対して180度の位相差を持つ誘導起電力121を誘導起電力発生器110に発生させるように、位相を調整する。相殺信号発生器130から、位相が調整された相殺信号149が誘導起電力発生器110に印加されることにより、誘導起電力発生器110に磁束が発生する。この磁束に起因してパイプライン1に発生する誘導起電力121は、送電線7により発生した電磁誘導電圧119と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ信号であるため、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺することができる。これにより、パイプライン1に発生している管対地交流電位を低減することができる。
【0085】
ここで、上記の磁気センサ151として、指向性を有する磁気センサを使用してもよく、また、無指向性の磁気センサを使用してもよい。さらに、検出器150として使用する磁気センサの個数は1つでもよく、2以上であってもよい。特に、3つの磁気センサを他の磁気センサに対して90度の角度となるように使用し、送電線7からの磁束密度の3軸成分を同時に検出することで、より大きな検出信号を得ることが可能となる。
【0086】
ここで、前述のように、パイプライン1に発生する送電線7からの電磁誘導電圧119は、送電線7から発生する磁界に依存するため、送電線7の電力量が変動すると、送電線7から発生する磁界の振幅が変動する。磁界の振幅の変動に応じて、検出器150から出力される検出信号147の振幅、相殺信号発生器130における電力増幅器137に入力される位相調整された検出信号147の振幅、さらに、誘導起電力発生器110へ印加される相殺信号149の振幅も変動することとなる。そのため、検出器150、振幅調整器141、電力増幅器137、出力変圧器139などの入出力特性が線形増幅するものを使用すれば、電磁誘導電圧119の振幅の変動に応じて誘導起電力121の振幅が変化し、効果的に電磁誘導電圧119を相殺することができるという利点を有する。
【0087】
図9は、図1に示した検出器150として、パイプライン1における任意の2点間の電位差を測定するための電位測定手段を設けた場合を説明するための模式図である。パイプライン1には、前述のように、パイプライン1の軸方向に沿って、送電線7を流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧119が発生している。この電磁誘導電圧119を測定するために、電位測定手段として、例えば導線153を、パイプライン1の任意の2点に設置する。パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を直接測定することで、この電磁誘導電圧119を低減または相殺するために必要な、電磁誘導電圧119の周波数や位相等に関する情報を得ることが可能となる。なお、導線153を設置する位置については、パイプライン1が送電線7と並行している部分の両端、すなわち、図1におけるP1地点とP2地点に限定されるわけではなく、検出信号147として充分な大きさの信号が得られるのであれば、電位差を測定するための地点は限定されない。
【0088】
導線153により得られた管対管交流電位に関する信号は、図9に示したように、相殺信号発生器130に入力される。相殺信号発生器130において、管対管交流電位の検出信号147は、図6に示したように、例えば、増幅器141およびLPF143を介して、位相調整器131に入力される。パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺できるように、位相調整器131にて、検出信号147に所定の位相差を付加し、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ誘導起電力121を誘導起電力発生器110に発生させるように、位相を調整する。相殺信号発生器130から、位相が調整された相殺信号149が誘導起電力発生器110に印加されることにより、誘導起電力発生器110の周囲に磁束が発生する。この磁束に起因してパイプライン1に発生する誘導起電力121は、送電線7により発生した電磁誘導電圧119と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ信号であるため、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺することができる。これにより、パイプライン1に発生している管対地交流電位を低減することができる。
【0089】
図10は、図1に示した検出器150として、パイプライン1とパイプライン1が埋設された大地3との電位差、すなわち、管対地交流電位を測定する電位測定手段を設けた場合を説明するための模式図である。図10から明らかなように、パイプライン1が埋設されている大地3に基準電極155を設け、パイプライン1には導線153を設置する。送電線7を流れる交流電流に起因してパイプライン1には電磁誘導電圧119が発生しているため、パイプライン1が埋設されている大地3とパイプライン1との間には、電位差が発生することとなる。この管対地電圧に関する信号は、パイプライン1に発生した電磁誘導電圧119の信号と連動しているため、管対地交流電位の周波数や位相を測定し、得られた信号に基づいて印加する相殺信号149の位相等を調整することが可能である。
【0090】
導線153および基準電極155により得られた管対地交流電位に関する信号は、図10に示したように、相殺信号発生器130に入力される。相殺信号発生器130において、管対地交流電位の検出信号147は、図6に示したように、例えば増幅器141およびLPF143を介して位相調整器131に入力される。パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺できるように、位相調整器131にて、検出信号147に所定の位相差を付加し、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ誘導起電力121を誘導起電力発生器110に発生させるように、位相を調整する。相殺信号発生器130から、位相が調整された相殺信号149が誘導起電力発生器110に印加されることにより、誘導起電力発生器110の周囲に磁束が発生する。この磁束に起因してパイプライン1に発生する誘導起電力121は、送電線7により発生した電磁誘導電圧119と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ信号であるため、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺することができる。これにより、パイプライン1に発生している管対地交流電位を低減することができる。
【0091】
図11は、図1に示した検出器150として、電流センサ157を用いた場合を説明するための模式図である。パイプライン1に電磁誘導電圧119が発生することにより、パイプライン1には、管内電流として交流電流が流れている。この管内電流は、電磁誘導電圧119の周波数や位相等と連動しているため、この管内電流の検出信号147の位相等を調整し、誘導起電力発生器110に相殺信号140を印加することが可能である。なお、電流センサ157としては、交流電流を測定できるものであれば、既存のものを使用することが可能である。また、検出信号147として充分な大きさの信号が得られるのであれば、電流センサ157を設置する位置は任意の位置に設置することが可能である。
【0092】
電流センサ157により得られた管内電流に関する信号は、図11に示したように、相殺信号発生器130に入力される。相殺信号発生器130において、管内電流の検出信号147は、図6に示したように、例えば増幅器141およびLPF143を介して位相調整器131に入力される。パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺できるように、位相調整器131にて、検出信号147に所定の位相差を付加し、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ誘導起電力121を誘導起電力発生器110に発生させるように、位相を調整する。相殺信号発生器130から、位相が調整された相殺信号149が誘導起電力発生器110に印加されることにより、誘導起電力発生器110の周囲に磁束が発生する。この磁束に起因してパイプライン1に発生する誘導起電力121は、送電線7により発生した電磁誘導電圧119と同一の周波数を有し、かつ、電磁誘導電圧119に対して180度の位相差を持つ信号であるため、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺することができる。これにより、パイプライン1に発生している管対地交流電位を低減することができる。
【0093】
以上のように、図8〜図11を参照しながら、様々な検出器を用いた場合について説明したが、これらの検出器は、送電線7を流れる交流電流に起因する磁界(磁束密度)を直接測定するもの(磁気センサ151)と、発生した磁界に基づく電気的物性(例えば、管対管交流電位、管対地交流電位、管内交流電流等)を測定するものとに大別される。
【0094】
図9〜図11に示したような、発生した磁界に基づく電気的物性を測定する検出器においては、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100が機能することによって、検出器が測定している管対管交流電位、管対地交流電位、または管内交流電流等が減少していくこととなる。そのため、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100を安定に制御するためには、測定した信号強度の増幅や、測定した信号からのノイズ除去が重要となる。
【0095】
一方、図8に示したような、発生した磁界(磁束密度)を直接測定する検出器(例えば、磁気センサ151等)においては、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100が機能することによっても、発生している磁界そのものは減少しない。そのため、常に一定の強度の信号を検知することが可能であり、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100を安定に制御することが可能となる。
【0096】
なお、上記の4種類の信号の測定方法においては、誘導起電力発生器110として、誘導起電力発生用導体111を使用してもよく、また、励磁コイルなどの変圧器125を用いてもよい。どちらの誘導起電力発生器110を使用するかについては、パイプライン1の設置状況等に応じて適宜選択することが可能である。
【0097】
(第2の実施形態)
続いて、図12および図13を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置200および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法について、詳細に説明する。図12は、本実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置200における信号の流れを説明するためのブロック図である。図13は、本実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置200を説明するための模式図である。
【0098】
本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置200は、図12に示したように、例えば、誘導起電力発生器210と、相殺信号発生器230と、検出器250と、振幅調整用検出器310とを備える。
【0099】
上記の誘導起電力発生器210、相殺信号発生器230および検出器250に関しては、本発明の第1の実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100に用いたものと、それぞれ同一の機能を有し、同様な効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
【0100】
振幅調整用検出器310は、誘導起電力発生器210による誘導起電力121が誘起された後のパイプライン1の電気的物性値(例えば、管対管交流電位、管対地交流電位、管内交流電流等)を検出し、相殺信号発生器230に出力する装置である。相殺信号発生器230にて、誘導起電力発生器210による誘導起電力121がパイプライン1に誘起され、電磁誘導電圧119と誘導起電力発生器210による誘導起電力121とが打ち消しあった後の電位が0となるように、振幅調整用検出器310からの出力信号に基づいて、相殺信号249の振幅を適宜調整する。振幅調整用検出器310としては、本発明の第1の実施形態における図9〜図11で説明したような、管対地交流電位を測定するために設置する導線等の電位測定手段や、電流センサを使用することが可能である。
【0101】
なお、図12において、相殺信号発生器230における振幅調整器245と振幅調整用検出器310との間に、必要に応じて、図6に示したような増幅器やLPFを設置してもよい。かかる増幅器やLPFを設置することで、検出した信号の強度を増幅したり、検出した信号からノイズ成分を除去したりすることが可能となるため、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置200の制御を、正確かつ効率的に行うことが可能である。
【0102】
図13は、検出器250として磁気センサ251を用い、相殺信号発生器230に接続される振幅調整用検出器310として、基準電極311と導線313を用いた場合の模式図である。図13に示した電磁誘導電圧低減装置200において、磁気センサ251は、送電線7中を流れる交流電流によって発生した磁界(磁束密度)を測定し、送電線7に流れる交流電流の周波数および位相等に関する信号を検出する。磁気センサ271からの出力信号は、検出信号247として相殺信号発生器230に入力され、相殺信号発生器230における位相調整器231は、この検出信号247の位相を調整する。位相が調整された相殺信号249は、誘導起電力発生器210に印加され、誘導起電力発生器210は、パイプライン1に誘導起電力121を発生させる。誘導起電力発生器210による誘導起電力121は、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119と互いに打ち消しあうことで、電磁誘導電圧119を低減させる。これにより、パイプライン1に発生している管対地交流電位を低減することができる。
【0103】
続いて、基準電極311は、誘導起電力発生器210による誘導起電力によって低減した後の、パイプライン1の管対地交流電位を測定し、得られた信号を、相殺信号発生器230へと出力する。相殺信号発生器230は、パイプライン1の管対地電圧信号に基づいて、相殺信号249の振幅を調整し、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺するために最も効率の良い振幅とする。このようにして振幅が調整された相殺信号249は、再び誘導起電力発生器210に印加され、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を相殺することとなる。
【0104】
このように、相殺後の電磁誘導電圧を測定する振幅調整用検出器310を更に設けることで、パイプライン1に生じている電磁誘導電圧119に関する情報をフィードバックしつつ、本実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置200を制御することが可能となる。その結果、容易かつ効果的に、パイプラインに発生している電磁誘導電圧119を相殺することが可能となる。
【0105】
以上説明したように、本発明の各実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法および埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置100、200は、送電線7を流れる交流電流と連動している信号(例えば、送電線7の周囲に発生している磁界、パイプライン1の管対管交流電位、パイプライン1の管対地交流電位、またはパイプライン1を流れる管内交流電流等)を測定し、測定した信号147,247と同一の周波数を有し、かつ、測定した信号に対して180度の位相差を有する信号149、249を誘導起電力発生器110、210に印加することで、誘導起電力発生器110、210によってパイプライン1に誘導起電力121を発生させ、パイプライン1に発生している電磁誘導電圧119を低減もしくは相殺するものである。本発明の各実施形態に係る電磁誘導電圧低減装置100、200を用いることで、送電線7と並行しているパイプライン1の全ての区間において、電磁誘導電圧を容易かつ効果的に低減もしくは相殺することができる。これにより、パイプライン1の全ての区間において、管対地交流電位を低減し、作業者の感電や、パイプラインの交流腐食等を防止することができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0107】
例えば、上述した各実施形態においては、パイプライン1に設置する誘導起電力発生器110、210の数が1つの場合について説明したが、パイプライン1が送電線7と並行する区間に複数設けても良い。
【0108】
また、上述した各実施形態においては、送電線7を流れる交流電流に同期した信号を検出器によって測定する場合について説明したが、送電線7を流れる交流電流を直接測定し、交流電流の周波数、振幅、位相等に関する情報を得てもよい。
【0109】
さらに、上述した各実施形態においては、相殺信号発生器130、230にローパスフィルタが設けられている場合について説明したが、ローパスフィルタの代わりにバンドパスフィルタを用いたり、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを組み合わせて用いたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置を説明するための模式図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。
【図3A】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、大地を帰路とした回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。
【図3B】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、大地を帰路とした回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。
【図4A】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、複数回往復する回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための斜視図である。
【図4B】本発明の第1の実施形態に係る誘導起電力発生用導体として、複数回往復する回路を有する誘導起電力発生用導体を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る変圧器を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における信号の流れを説明するためのブロック図である。
【図7】送電線中を流れる交流電流に起因して生じる電磁誘導電圧、変圧器による誘導起電力、および相殺後の電圧の波形を説明するためのグラフ図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における検出器として磁気センサを用いた場合を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における検出器としてパイプラインにおける任意の2点間の電位差を測定するための電位測定手段を設けた場合を説明するための模式図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における検出器としてパイプラインとパイプラインが埋設された大地との電位差、すなわち、管対地交流電位を測定する電位測定手段を設けた場合を説明するための模式図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における検出器として電流センサを用いた場合を説明するための模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置における信号の流れを説明するためのブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置を説明するための模式図である。
【図14】従来のパイプラインの電磁誘導電圧低減方法を説明するための模式図である。
【図15】従来の媒質中に設けられたパイプラインの電磁誘導電圧を低減する装置を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1 パイプライン
3 大地
5 送電鉄塔
7 送電線
100,200 電磁誘導電圧低減装置
110,210 誘導起電力発生器
111 誘導起電力発生用導体
113,114 誘導起電力発生用導体を流れる交流電流
115,116 誘導起電力発生用導体を流れる交流電流により発生する磁界
117 発信器
119 送電線による電磁誘導電圧
121 誘導起電力発生器による誘導起電力
122 低減後のパイプラインの電位差
125 変圧器
126 鉄心
127 貫通孔
128 巻線
130,230 相殺信号発生器
131,231 位相調整器
133 発電機
135 整流器
137 電力増幅器
139 出力変圧器
141 増幅器
143 ローパスフィルタ
145 振幅調整器
150,250 検出器
151,251 磁気センサ
153,313 導線
155,311 基準電極
157 電流センサ
310 振幅調整用検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法であって:
磁束密度を検出する手段を設け、前記送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出し、
前記磁束密度の検出信号を用いて、前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数および位相を検出し、
前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号を発生させ、
前記検出信号に所定の位相差を付加して、位相を調整した相殺信号を前記埋設パイプラインに設けられた誘導起電力発生手段に印加することで、前記埋設パイプラインに誘導起電力を発生させて、前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧を低減することを特徴とする、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項2】
送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法であって:
前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数および位相を検出し、
前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有する検出信号を発生させ、
前記検出信号に所定の位相差を付加して、位相を調整した相殺信号を、前記埋設パイプラインに沿って、当該埋設パイプラインと前記送電線あるいは交流式電気鉄道とが並行している範囲に設けられた誘導起電力発生用導体に印加することで、前記埋設パイプラインに誘導起電力を発生させて、前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因する電磁誘導電圧を低減することを特徴とする、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項3】
磁束密度を検出する手段を設け、前記送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出し、
前記磁束密度の検出信号の周波数および位相を調整することを特徴とする、請求項2に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項4】
少なくとも2以上の前記磁束密度を検出する手段を設け、
前記少なくとも2以上の磁束密度を検出する手段からの検出信号を合成して用いることを特徴とする、請求項1または3に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項5】
少なくとも2以上の電位測定手段を前記埋設パイプラインに設け、任意の2つの前記電位測定手段間での交流電位差信号を測定し、
測定された前記交流電位差信号を用いて、前記検出信号の周波数および位相を調整することを特徴とする、請求項2に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項6】
前記埋設パイプラインと、前記埋設パイプラインが埋設されている大地と、の間の交流電位を測定する電位測定手段を設けて、前記埋設パイプラインと前記大地との交流電位差信号を測定し、
測定された前記交流電位差信号を用いて、前記検出信号の周波数および位相を調整することを特徴とする、請求項2に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項7】
前記電磁誘導電圧に起因して前記埋設パイプラインを流れる交流電流を測定する電流測定手段を前記埋設パイプラインに設け、
前記電流測定手段により測定される交流電流を用いて、前記検出信号の周波数および位相を調整することを特徴とする、請求項2に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項8】
前記相殺信号の振幅を更に調整することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減方法。
【請求項9】
送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置であって:
前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを検出する検出器と、
前記検出器が検出した検出信号の位相を調整することで、前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有し、当該送電線あるいは交流式電気鉄道に起因する前記電磁誘導電圧を相殺する相殺信号を発生する相殺信号発生器と、
前記相殺信号が印加されることで、前記埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる誘導起電力発生器と、
を備え、
前記検出器は、前記送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出する磁気センサであることを特徴とする、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項10】
送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流に起因して埋設パイプラインに生じている電磁誘導電圧を低減する、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置であって:
前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流の周波数と位相とを検出する検出器と、
前記検出器が検出した検出信号の位相を調整することで、前記送電線あるいは交流式電気鉄道に流れる交流電流と同一の周波数を有し、当該送電線あるいは交流式電気鉄道に起因する前記電磁誘導電圧を相殺する相殺信号を発生する相殺信号発生器と、
前記相殺信号が印加されることで、前記埋設パイプラインに誘導起電力を発生させる誘導起電力発生器と、
を備え、
前記誘導起電力発生器は、前記埋設パイプラインに沿って、当該埋設パイプラインと前記送電線あるいは交流式電気鉄道とが並行している範囲に設けられた、誘導起電力発生用導体であることを特徴とする、埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項11】
前記検出器は、前記送電線あるいは交流式電気鉄道から発生する磁束密度を検出する磁気センサであることを特徴とする、請求項10に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項12】
前記検出器として、少なくとも2以上の磁気センサを用い、
前記少なくとも2以上の磁気センサからの検出信号を合成して用いることを特徴とする、請求項9または11に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項13】
前記検出器は、前記埋設パイプラインにおける任意の2点間の電位差を測定する電位差測定器であることを特徴とする、請求項10に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項14】
前記検出器は、前記埋設パイプラインの大地に対する電位を測定する電位差測定器であることを特徴とする、請求項10に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項15】
前記検出器は、前記埋設パイプラインに生じる電磁誘導電圧に起因する交流電流を測定する電流測定器であることを特徴とする、請求項10に記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
【請求項16】
前記相殺信号の振幅を調整する振幅調整器を更に備えることを特徴とする、請求項9〜15のいずれかに記載の埋設パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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