埋設管補修装置、埋設管補修方法
【課題】算出された埋設管の変形、湾曲、屈曲などに対応して、埋設管を掘り起こしたり埋設管内部に作業者が入ったりすることなく、埋設管の変形を補修できる埋設管補修装置および埋設管補修方法を提供する。
【解決手段】本発明の埋設管補修装置1は、地中に埋設されている埋設管2内部を移動可能な本体部3と、前記埋設管2の補修領域における所定位置の第1貫通孔7および前記第1貫通孔7と異なる位置の第2貫通孔8を穿孔する穿孔ユニット4と、前記第1貫通孔7を通じて、前記埋設管2の外部であって前記第1貫通孔7周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニット5と、前記第2貫通孔8を通じて、前記埋設管2の外部であって前記第2貫通孔2周辺の空隙に収容袋61を挿入して、前記収容袋61に膨張剤を注入する注入ユニット6と、を備え、前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管2に交差する方向における前記収容袋61の膨張量は、前記埋設管2の平行方向における収容袋61の膨張量よりも大きい。
【解決手段】本発明の埋設管補修装置1は、地中に埋設されている埋設管2内部を移動可能な本体部3と、前記埋設管2の補修領域における所定位置の第1貫通孔7および前記第1貫通孔7と異なる位置の第2貫通孔8を穿孔する穿孔ユニット4と、前記第1貫通孔7を通じて、前記埋設管2の外部であって前記第1貫通孔7周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニット5と、前記第2貫通孔8を通じて、前記埋設管2の外部であって前記第2貫通孔2周辺の空隙に収容袋61を挿入して、前記収容袋61に膨張剤を注入する注入ユニット6と、を備え、前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管2に交差する方向における前記収容袋61の膨張量は、前記埋設管2の平行方向における収容袋61の膨張量よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中に埋設された埋設管の形状を算出し、変形や湾曲を起こしている埋設管を掘り起こすことなく自動で補修できる埋設管補修装置および埋設管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国をはじめ、各国において水道管、下水管などの多数の埋設管が、地中に埋設されている。これらの埋設管は、老朽化、地震などの天災、工事振動による人災などの影響を受け、埋設時とその形状を変化させることが多い。例えば、埋設管が湾曲したり、折れ曲がったり、変形したりするなどである。このように、埋設管の形状が変化してしまうと、上水や下水の流れに悪影響が生じたり、水漏れによる故障が生じたりする。近年、水道管の故障や破裂が、隣接するガス管を破壊するなどの重大事故も生じている。
【0003】
一方で、埋設管は地中に埋設されているので、その状態を地上から確認することはきわめて難しい。勿論、埋設管を掘り出して確認することは、多大な労力を要し、現実的な手法とは言いがたい。
【0004】
このため、埋設管を掘り出すことなしに、埋設された埋設管の形状を正確に算出することが求められていた。埋設管の形状を算出できることで、埋設管における問題を早期に確認でき、必要な修理や交換を行うことができる。結果として、埋設管の故障によって生じる災害などを防止できる。
【0005】
このような、埋設管の形状を算出するために、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
【0006】
一方、埋設管の形状が算出されることで、埋設管の変形や湾曲が検出される。このような埋設管の変形や湾曲がある場合には、補修や修繕が必要である。変形していることで、埋設管内部の流動性や移動性が悪くなったり、埋設管を通る油分が地中に漏れ出してしまったりするなどの問題が生じうるからである。
【0007】
しかしながら、地中に埋設されている埋設管内部に作業者が入って補修や修繕の作業を行うことは困難である。このため、地中に埋設された埋設管内部に特殊な機器を挿入して埋設管の修理を行う技術も提案されている(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−234124号公報
【特許文献2】特開平7−311022号公報
【特許文献3】特開平8−219782号公報
【特許文献4】特開平9−14932号公報
【特許文献5】特開2001−141431号公報
【特許文献6】特開2005−345118号公報
【特許文献7】特開2007−169987号公報
【特許文献8】特開2003−119836号公報
【特許文献9】特開平11−13985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜6は、埋設管内部の形状を算出する技術を開示する。種々の技術によって、埋設管内部の形状を算出する方式の提案がなされている。
【0010】
特許文献1は、管路内部を走行する装置が、管路内部に光を照射し、この照射光の反射波を用いて、管路内部の形状を算出する技術を開示する。
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術では、光の反射を利用するため、装置が大掛かりになると共に受光精度の劣化によって算出精度も劣化する問題がある。また、管路内部の形状を算出することはできるが、2次元あるいは3次元での、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物のそれぞれを算出することができない問題がある。
【0012】
また、特許文献2は、管路内部を走行する装置が、管路の曲率を算出する技術を開示する。
【0013】
しかしながら、特許文献2の技術では、管路の曲率を算出できるだけで、管径変化や内部障害物を算出できない。また、各位置における所定の基準線に対する曲率を測定できるだけであるので、左右方向、上下方向といった3次元的な管路の湾曲を算出することが困難である問題を有する。
【0014】
特許文献3は、管路を走行する2台の装置同士でレーザー光をやり取りし、このレーザー光の揺動によって管路の屈曲を算出する技術を開示する。
【0015】
しかしながら、特許文献3の技術では、レーザー光のやり取りが可能な範囲での屈曲しか算出できず、屈曲以外の管路の形状を算出することが困難である。加えて、レーザー光のやり取りを基本とするため、装置が大掛かりになると共にレーザー光のやり取りエラーなどの問題も生じさせる。
【0016】
特許文献4は、特許文献1、3と同様に、照射光を利用して管路内部の形状を算出する技術を開示する。
【0017】
しかしながら、装置が大掛かりとなったり、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物などの全てを算出できなかったりする問題がある。また、光学系を用いることでの算出精度の劣化も懸念される。
【0018】
特許文献5は、特許文献4と同様の技術であり、同様の問題を有する。
【0019】
特許文献6は、管路に配置された装置が電磁波パルスを管路に照射して、管路に含まれる空洞を算出する技術を開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献6の技術では、装置が大掛かりになると共に、ある所定位置での空洞を算出できるが、管路全体に渡って、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物のそれぞれを測定するのには不適である。また、小径の管路以外には適さない問題もある。
【0021】
また、特許文献7〜9は、埋設管の補修や修繕方法に関する技術を提案している。特許文献7〜9のそれぞれは、埋設管内部に機器を挿入して埋設管内部の補修を行う技術を提案している。
【0022】
しかしながら、特許文献7〜9のいずれの技術でも、埋設管内部の傷などの修復は可能であるが、屈曲したり変形したりしている埋設管を元のようにまっすぐにすることはできない。また、埋設管の状況を把握するのにあわせた補修を行う事もできない。
【0023】
以上のように、従来技術は、(1)埋設管の屈曲、湾曲、変形を検出した上で補修すること、(2)変形や湾曲している埋設管を、埋設されている周囲の状況に合わせて元のようにまっすぐに戻す補修を行うこと、(3)補修の状態を視認しながら補修を行うこと、などが困難である問題を有していた。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑み、算出された埋設管の変形、湾曲、屈曲などに対応して、埋設管を掘り起こしたり埋設管内部に作業者が入ったりすることなく、埋設管の変形を補修できる埋設管補修装置および埋設管補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題に鑑み、本発明の埋設管補修装置は、地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、第1貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、第2貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の埋設管補修装置は、作業者が入り込むことのできないような狭い埋設管であっても、埋設管を掘り起こすことなく自動で補修や修繕を行える。
【0027】
特に、埋設管の周囲を調整することで、埋設管の屈曲や変形を修正できるので、埋設管を取り替えることなく、埋設管の使用寿命を延ばすことができる。特に、埋設管の変形や屈曲を元に戻してまっすぐの状態にできるので、埋設管がその役割を果たせる状態に戻すことができる。
【0028】
加えて、屈曲や湾曲している埋設管を補修するために、屈曲や湾曲している埋設管を上げたり下げたりする場合に、確実に埋設管の移動を行える。この結果、埋設管の補修が確実かつ高い精度で行われるようになる。また、埋設管の形状を算出することを基礎として埋設管を自動で補修できるので、埋設管の実際の状況に合わせた補修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の概要図である。
【図2】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の動作説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の補修説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1における正常状態の埋設管の側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における屈曲状態の埋設管の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置による収容袋の挿入を示す説明図である。
【図14】本発明の実施の形態1における充填材の注入を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態2における埋設管補修装置のブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態2における補修領域を検出する状態を説明する説明図である。
【図17】本発明の実施の形態2における埋設管補修の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の発明に係る埋設管補修装置は、地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、第1貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、第2貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【0031】
この構成により、埋設管補修装置は、収容袋の膨張によって、屈曲や湾曲している埋設管の姿勢を修復できる。
【0032】
本発明の第2の発明に係る埋設管補修装置では、第1の発明に加えて、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張率は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張率よりも大きい。
【0033】
この構成により、膨張する収容袋は、屈曲している埋設管を、確実に通常の姿勢に戻すように圧力を掛けるようになる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の屈曲や湾曲を確実に補修できるようになる。
【0034】
本発明の第3の発明に係る埋設管補修装置では、第1又は第2の発明に加えて、空隙に挿入された状態において、鉛直方向における収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方より大きい。
【0035】
この構成により、膨張する収容袋は、屈曲している埋設管を、確実に通常の姿勢に戻すように圧力を掛けるようになる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の屈曲や湾曲を確実に補修できるようになる。
【0036】
本発明の第4の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、空隙に挿入された収容袋は、膨張剤の注入によって、埋設管の延伸方向と交差する方向に膨張する。
【0037】
この構成により、収容袋は、埋設管2の姿勢を修復する方向に圧力を確実に掛けることができる。
【0038】
本発明の第5の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、第1貫通孔および第2貫通孔のそれぞれは、埋設管において相互に対向する位置にある。
【0039】
この構成により、第1貫通孔は、余分な土砂を除去するために用いられ、第2貫通孔は、空隙で収容袋を膨張させるために用いられる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の変形を補修しやすくなる。
【0040】
本発明の第6の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、埋設管の補修領域が屈曲している場合には、第1貫通孔は、埋設管の屈曲内側に位置し、第2貫通孔は、埋設管の屈曲外側に位置する。
【0041】
この構成により、埋設管の屈曲を補修する方向へ、収容袋の膨張圧力を加えることができる。
【0042】
本発明の第7の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は、埋設管内部を移動可能な駆動部を備えている。
【0043】
この構成により、埋設管補修装置は、埋設管内部を自由に移動できる。
【0044】
本発明の第8の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、本体部は、埋設管における補修領域を決める位置決め制御部を備える。
【0045】
この構成により、埋設管補修装置は、埋設管の変形位置で確実に補修作業を行える。
【0046】
本発明の第9の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、穿孔ユニットは、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを有する。
【0047】
この構成により、埋設管補修装置は、容易に第1貫通孔と第2貫通孔を穿孔できる。加えて、所定の直径にあわせた貫通孔を穿孔できる。
【0048】
本発明の第10の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、除去ユニットはノズルを備え、除去ユニットは第1貫通孔からノズルを突出させて空気圧および水圧の少なくとも一方によって、除去領域の土砂を除去する。
【0049】
この構成により、除去ユニットは、土砂を確実かつ容易に除去できる。
【0050】
本発明の第11の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、注入ユニットは、除去領域での土砂の除去が行われた後で、第2貫通孔を通じて、収容袋を挿入して膨張剤を注入する。
【0051】
この構成により、注入ユニットは、収容袋を通じて、埋設管の湾曲や屈曲を補修できる。
【0052】
本発明の第12の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、注入ユニットは、膨張材の注入が行われた後で、第1貫通孔を通じて、除去領域に充填材を注入する。
【0053】
この構成により、埋設管の補修が完了し、補修された埋設管の状態が、その後に渡って維持されるようになる。
【0054】
本発明の第13の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、埋設管の補修の行われる補修領域を撮像可能な撮像部と、補修領域の撮像画像を送信する送信部と、を備える監視ユニットを更に備える。
【0055】
この構成により、埋設管補修装置による埋設管の補修状態を確認しながら、埋設管補修装置による補修作業が行える。結果として、埋設管の補修作業の効率が向上する。
【0056】
本発明の第14の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第13のいずれかの発明に加えて、本体部は、ジャイロ機構を用いて、埋設管の湾曲、屈曲、内径変化および変形の少なくとも一つを算出する。
【0057】
この構成により、埋設管補修装置は、簡便な仕組みで、埋設管の変形や変形している位置を検出できる。
【0058】
本発明の第15の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第14のいずれかの発明に加えて、収容袋は、開口部を備え、開口部を基準とした縦方向の膨張率が、開口部を基準とした横方向の膨張率よりも、10%以上大きい。
【0059】
本発明の第16の発明に係る埋設管補修装置では、第15の発明に加えて、収容袋は、開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが、開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも、20%以上大きい。
【0060】
本発明の第17の発明に係る埋設管補修装置では、第15又は第16の発明に加えて、収容袋は、開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、縦方向の引裂強さが横方向の引裂強さよりも小さい。
【0061】
これらの構成により、収容袋は、横方向よりも縦方向に膨張しやすくなる。
【0062】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0063】
(実施の形態1)
【0064】
実施の形態1について説明する。
【0065】
(全体概要)
まず、図1を用いて埋設管補修装置の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の概要図である。図1は、埋設管2内部に挿入された埋設管補修装置1を示している。なお、本明細書において、埋設管2は、埋設管2を形成する管路の部分および管路同士の継ぎ手の部分の全てを含む概念である。つまり、補修する埋設管2における補修の対象位置は、管路の部分であったり、継ぎ手の部分であったりする。
【0066】
埋設管補修装置1は、埋設管2内部に投入されて用いられる。埋設管補修装置1は、本体部3、穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6と、を備える。
【0067】
本体部3は、埋設管2内部を移動可能とし、埋設管補修装置1の全体的な外形を形作る。本体部3は、穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6と、を格納可能であってもよい。図1では、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6が本体部3の外部に出ているが、埋設管2内部を移動する際には、本体部3は、これら穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6を格納しておいてもよい。図2は、本体部3にこれらのユニットが格納されている状態を示している。図2は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の側面図である。埋設管補修装置1は、本体部3にこれらのユニットが格納されている状態で、埋設管2内部を移動する。
【0068】
穿孔ユニット4は、埋設管2において補修の対象となる補修領域におけるある位置に第1貫通孔7を穿孔する。更に、穿孔ユニット4は、第1貫通孔7と別の位置に第2貫通孔8を穿孔する。穿孔ユニット4は、単一の部材であって、単一の部材が第1貫通孔7と第2貫通孔8とを穿孔しても良い。あるいは、穿孔ユニット4は複数の部材を備えており、複数の部材の一方が第1貫通孔7を穿孔し、他方が第2貫通孔を穿孔しても良い。
【0069】
ここで、第1貫通孔7は、埋設管2を屈曲させたり湾曲させたりする原因となる土砂が堆積している領域である「除去領域」に接続する。一方、第2貫通孔8は、埋設管2を屈曲させたり湾曲させたりする原因となる空隙に接続する。穿孔ユニット4が、これら第1貫通孔7と第2貫通孔8とを穿孔することで、埋設管補修装置1は、除去領域および空隙にアクセスをすることが可能となる。
【0070】
除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて、第1貫通孔7周辺(埋設管2の外部における第1貫通孔7周辺)の土砂を除去する。第1貫通孔7の周辺の土砂を除去することで、埋設管2の屈曲や湾曲を補修する余地が生じる。すなわち、埋設管2の屈曲や湾曲を生じさせる圧力となっている土砂が除去されることで、埋設管2の屈曲や湾曲を戻すための空間が生じる。
【0071】
注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて、埋設管2の外部であって第2貫通孔8の周辺の空隙に収容袋を挿入する。更に、注入ユニット6は、この収容袋に膨張材を注入して、空隙内部で収容袋を膨張させる。この膨張によって、空隙を充填しつつ、屈曲や湾曲している埋設管2の姿勢を修復する。このとき、空隙に挿入された状態において、埋設管2に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管2の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【0072】
図3は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の動作説明図である。図3は、屈曲している埋設管2内部であって、屈曲している補修領域に埋設管補修装置1が配置されている状態を示している。埋設管補修装置1は、穿孔ユニット4によって、第1貫通孔7および第2貫通孔8を穿孔する。第1貫通孔7の外部の除去領域202では、除去ユニット5が土砂を除去している。この結果、除去領域7は、空隙となっている。
【0073】
第2貫通孔8の外部には、埋設管2の屈曲の原因となった空隙201が存在している。注入ユニット6は、この空隙201に収容袋61を挿入する。注入ユニット6は、この収容袋61内部に膨張剤を注入する。膨張剤の注入および膨張によって、収容袋61は、空隙201内部で膨張する。この収容袋61が空隙201内部で膨張することで、埋設管2を押し上げる。この押し上げによって、埋設管2は、その屈曲が修正されることになり、埋設管2の変形が補修される。このとき、収容袋61は、埋設管2に平行方向よりも、埋設管2に交差する方向に対して大きく膨張するので、屈曲している埋設管2の修正が効率的に図られることになる。
【0074】
収容袋61が埋設管2と交差する方向に膨張することで、空隙201において収容袋61が埋設管2と交差する方向に埋設管2を押し上げるようになる。図4は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の補修説明図である。図4に示されるように収容袋61が鉛直方向に膨張して埋設管2を押し上げる。この押し上げによって、屈曲していた埋設管2の姿勢が修復される。このとき、除去領域202の土砂が除去されているので、埋設管2の上昇余地があり、埋設管2の姿勢が修復される。
【0075】
次に、収容袋が用いられない場合の補修(参考技術)と収容袋が用いられる場合の補修(本発明)との差分を説明しつつ、埋設管補修装置1による補修方法の詳細を説明する。
【0076】
(収容袋が無い場合との対比)
次に、参考技術として、収容袋を用いない場合の埋設管2の補修方法について説明する。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態1における正常状態の埋設管の側面図である。図5における埋設管2は、地中20においてまっすぐな状態であり、屈曲や湾曲といった問題を生じさせていない。埋設管2は、複数の管路21がつなぎ合わされて形成される。このため、複数の管路21が、継ぎ手22において接続される。このように、埋設管2は、複数の管路21が継ぎ手22によって接続されることで形成される。このため、管路21そのものに屈曲や破壊が生じなくても、継ぎ手22において屈曲や湾曲が生じることがある。特に地盤変動や地形変動が生じると、継ぎ手22における屈曲が生じることがある。
【0078】
例えば、地中20において、継ぎ手22の周辺に圧力が生じたり空隙が生じたりすることで、継ぎ手22が折れ曲がってしまうことがある。この継ぎ手22の折れ曲がりによって、埋設管2が屈曲したり湾曲したりする。
【0079】
図6は、本発明の実施の形態1における屈曲状態の埋設管の側面図である。図6に示されるとおり、複数の管路21を接続する継ぎ手22のある場所が屈曲している。継ぎ手22の下側において、空隙201が生じている。例えば、地震や豪雨などによって生じる圧力によって、継ぎ手22の下側の土砂が減少することで、空隙201が生じる。あるいは、継ぎ手22の上側から圧力がかかることで、継ぎ手22が折れ曲がり、この折れ曲がりによって空隙201が生じる。
【0080】
このように、空隙201が生じていると継ぎ手22が折れ曲がり、埋設管2が屈曲した状態となる。埋設管2が屈曲していると埋設管2内部を、下水や上水が通りにくくなる。このため、この屈曲を元に戻す必要がある。参考技術における埋設管補修装置は、収容袋を用いずにこの空隙201に膨張剤を直接注入して空隙201を充填する。
【0081】
参考技術における埋設管補修装置100は、図7から図12に示されるように、埋設管2の屈曲を補修する。図7〜図12は、本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。埋設管補修装置100は、収容袋61を用いないことを除けば、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6を備えていることは、埋設管補修装置1と同様である。
【0082】
まず図7に示されるように、埋設管補修装置100は、埋設管2が屈曲している補修領域に到達する。次に、埋設管補修装置100は、穿孔ユニット4を用いて第1貫通孔7および第2貫通孔8を穿孔する。次に、図8に示されるように、除去ユニット5は、第1貫通孔7の周囲の除去領域202の土砂を除去する。除去領域202の土砂が除去されて、屈曲している埋設管2の上昇余地が生じる。
【0083】
次に、図9に示されるように、注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて空隙201に膨張剤を注入する準備を整える。注入ユニット6は、空隙201に直接的に膨張剤を注入する。図10では、注入ユニット6が、空隙201に膨張剤を注入している。膨張剤は、空気等に触れることで、その体積を膨張させるので、空隙201を充填するようになる。
【0084】
この膨張によって、図11に示されるように、屈曲している埋設管2が持ち上げられて、埋設管2の屈曲が修正されるようになるはずである。しかしながら、実際には、膨張剤は、空隙201をきれいに充填して埋設管2を持ち上げるのではなく、空隙201の周辺に広がってしまい、埋設管2を持ち上げることができないことが多い。すなわち、図12に示されるような状態になる。空隙201を形成して膨張剤を充填するだけでは、埋設管2の屈曲を補修するのは困難であることがある。
【0085】
(収容袋を用いる本発明の場合)
本発明の埋設管補修装置1は、空隙201において膨張剤を充填して埋設管2の姿勢を修正する圧力を生じさせるために、収容袋61を用いる。この収容袋61を用いた埋設管補修装置1による処理および各部の詳細について説明する。本発明の埋設管補修装置1による補修の手順は、収容袋61を注入するところまでは、図7〜図9で説明した手順と同じである。このため、説明のために図7〜図9を重複して用いる。
【0086】
(埋設管補修装置1の移動)
埋設管補修装置1は、まず補修領域に移動する。このとき、本体部3は、車輪と駆動系統などの駆動部を備えており、この駆動部の働きによって埋設管2内部を移動する。なお、埋設管補修装置1は、露出している埋設管2の端部より挿入されて補修領域まで移動する。
【0087】
ここで、埋設管補修装置1が到達する補修領域は、予め別の装置等によって検出されていてもよいし、埋設管補修装置1によって検出されても良い。後者の場合には、埋設管補修装置1は、自ら検出した補修対象の補修領域で、補修作業を行う。
【0088】
駆動部は、埋設管2内部において、本体部3を移動可能にする構造であればなんでもよく、埋設管2の底面に接触して走行する構造でも良いし、埋設管2の全面に車輪を押し付けて走行する構造でも良い。本体部3は、車輪を備える以外にも、埋設管2内部の位置を操作者に通知する通信手段や位置を把握する位置測位手段を有している。更には、本体部3は、後述の水、膨張材、充填材を収容している。収容している水は除去ユニット5によって土砂の除去に用いられ、収容している膨張材や充填材は、注入ユニット6によって用いられる。
【0089】
また、本体部3は、埋設管2の内部を移動しながら埋設管2の異常を補修するので、埋設管2の内径にあわせた大きさを有していることが好ましい。埋設管2は、その種類に応じて内径が様々である。小さい内径の埋設管2も大きい内径の埋設管2も存在しうる。このため、本体部3は、埋設管2の内径に応じた複数の種類を有していてもよい。
【0090】
(第1貫通孔の穿孔)
図7においては、屈曲している継ぎ手22の下側に空隙201が生じている。この空隙201によって、継ぎ手22は、下側に出っ張るように屈曲している。更に、この屈曲に合わせて、屈曲している継ぎ手22の上側に土砂が溜まっている。この溜まっている土砂によって、継ぎ手22が下側の空隙201に押し付けられることで、埋設管2が屈曲してしまう。
【0091】
埋設管補修装置1は、まず補修領域における所定位置に第1貫通孔7を穿孔する。このとき、埋設管補修装置1から突出する穿孔ユニット4が、第1貫通孔7を穿孔する。
【0092】
第1貫通孔7は、屈曲している埋設管2の屈曲内側(屈曲の折れ曲がっている内側)に位置する。第1貫通孔7は、屈曲している埋設管2の上側に溜まっている土砂を除去するために穿孔される孔である。屈曲を補修するには、屈曲によって折れ曲がっている内側に向けて、埋設管2を押し戻す必要がある。このため、第1貫通孔7は、土砂を除去する必要のある除去領域に接続できるように、屈曲している埋設管2の屈曲内側に穿孔される。図7では、埋設管2の上部に第1貫通孔7が穿孔される。もちろん、屈曲が図7と逆方向になっている場合には、埋設管2の下部に第1貫通孔7が穿孔される。
【0093】
穿孔ユニット4は、本体部3から突出して、埋設管2の内側から埋設管2の壁面に第1貫通孔7を穿つ。ここで、穿孔ユニット4は、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを備え、これらによって埋設管2の壁面に孔を空けることができる。特に、コアドリルを用いることで、埋設管2の壁面に所定の直径を有する孔を空けることができるようになる。
【0094】
穿孔ユニット4は、通常は本体部3内部に格納されており、埋設管2に孔を穿つ場合に本体部3から突出すればよい。もちろん、最初から穿孔ユニット4が突出しており、補修領域に到達したところで、穿孔ユニット4が第1貫通孔7を穿孔しても良い。あるいは、穿孔ユニット4の基礎部分が本体部3から突出しており、補修領域に到達したところで、基礎部分からドリルが突出して第1貫通孔7を穿孔してもよい。
【0095】
第1貫通孔7が穿孔されることで、埋設管2内部と余分な土砂を除去したい除去領域とが接続されることになる。この第1貫通孔7を通じて、除去領域に存在する土砂を除去することができるようになる。
【0096】
(土砂の除去)
次に、第1貫通孔7を通じて、埋設管2が屈曲している屈曲内側に圧力を掛けている余分な土砂が除去される。この余分な土砂が溜まっている領域は、除去領域として定義される。土砂の除去は、図8に示されている。埋設管補修装置1は、第1貫通孔7を通じて除去ユニット5を埋設管2の外側に突出させる。なお、この土砂を除去すべき領域(この土砂が埋設管2に圧力を加えて、埋設管2が屈曲している)が、除去領域202として定義される。
【0097】
除去ユニット5は、水や溶解液を除去領域202に噴射することで、除去領域202の土砂を除去する。水や溶解液が噴射されると、除去領域202の土砂が吹き飛ばされる。この吹き飛ばされた土砂は、除去領域202から他の場所に移動することになるので、除去領域202には空隙が生じることになる。この空隙が生じることによって、埋設管2に対して上側からかかっていた圧力が減少する。圧力が減少することで、埋設管2の屈曲を元に戻す余地ができることになる。
【0098】
なお、除去ユニット5によって除去された土砂は、除去領域202以外の場所に移動されれば良いが、第1貫通孔7を通じて埋設管2内部に取り込まれても良い。除去された土砂が埋設管2内部に取り込まれても、埋設管2内部を上水や下水で洗浄することで、これらの土砂は流れ出すからである。例えば、除去領域202の周辺に土砂を移動させる余裕がない場合には、除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて除去した土砂を埋設管2内部に取り込む。
【0099】
また、除去領域202の土砂が、水やお湯の噴射では十分に除去できない場合(例えば、非常に硬い岩石質がある場合)には、除去ユニット5は、化学的な溶解液を噴出して、溶融させて除去すればよい。また、水や溶解液だけでなく、除去ユニット5は、空気を噴射することで、除去領域202の土砂を除去しても良い。空気圧による除去により、余分な汚泥を生じさせないで済むからである。
【0100】
また、除去ユニット5は、ノズルを備えており、このノズルから空気、水、溶解液などを噴射する。ノズルは、通常は本体部3や除去ユニット5内部に格納されており、除去作業の際に突出することで空気、水、溶解液などを噴射できる。除去ユニット5がノズルを備えることで、水や空気の噴射を細かに制御できるメリットがある。ノズルからの空気圧および水圧の少なくとも一方で、除去領域202の土砂が除去される。
【0101】
このように、第1貫通孔7が穿孔された後で、除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて除去領域202の土砂を除去できるようになる。除去されることで、埋設管2の屈曲部分に付与されている圧力が減少し、屈曲している埋設管2を元に戻す余地(元に戻すために必要となる空間)が形成できる。
【0102】
(第2貫通孔の穿孔)
次に、埋設管補修装置1は、第1貫通孔7と別の位置に第2貫通孔8を穿孔する。第2貫通孔8の穿孔の状態は、図9に示されている。このとき、第2貫通孔8は、第1貫通孔7と対向する位置に穿孔されることも好適である。第2貫通孔8は、収容袋61の膨張によって埋設管2の姿勢を制御するために設けられる。このため、第1貫通孔7と対向する位置であることで、第2貫通孔8はその役割を果たすことができるようになる。また、第2貫通孔8は、屈曲している埋設管2の屈曲外側に設けられることが好ましい。屈曲外側から収容袋61の膨張によって埋設管2の姿勢を制御するために、埋設管2を押し上げたり押し下げたりすることが可能となるように、である。すなわち、埋設管2が屈曲している場合には、第1貫通孔7は、埋設管2の屈曲内側に位置し、第2貫通孔8は、埋設管2の屈曲外側に位置する。
【0103】
(収容袋による修正)
埋設管補修装置1は、除去領域202の土砂の除去作業が終了すると、埋設管2の屈曲の原因となっている空隙201を埋めることで埋設管2の屈曲を元に戻す作業を行う。このとき、埋設管補修装置1は、収容袋61と収容袋61への膨張剤の注入によって、空隙201を埋める(完全に埋めることだけでなく、埋設管2の屈曲を持ち上げる程度に埋めることを含む)。
【0104】
図13は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置による収容袋の挿入を示す説明図である。埋設管補修装置1は、第2貫通孔8が穿孔されたところで、注入ユニット6より収容袋61を空隙201に挿入する。収容袋61は、予め本体部3に格納されておき、注入ユニット6を通じて挿入されれば良い。注入ユニット6は、収容袋61内部に膨張剤を注入する。この膨張剤の注入によって収容袋61が膨張して、屈曲している埋設管2を押し上げる(図13においては押し上げ)もしくは押し下げる(屈曲方向によって異なる)。もちろん、屈曲方向が左右であれば、左右に従って、膨張する収容袋61が埋設管2の屈曲を修正する。
【0105】
ここで、収容袋61は、空隙201に挿入された場合において、埋設管2に交差する方向における膨張量が、埋設管2の平行方向における膨張量よりも大きいことが好適である。この結果、収容袋61の膨張は、埋設管2を押し出す方向により働くことになって、収容袋61は、埋設管2の屈曲や湾曲を、確実に修復できるようになる。仮に、埋設管2の平行方向における膨張量が大きい場合には、収容袋61は、空隙201を拡張するかのように広がるばかりとなって、埋設管2の屈曲を修復する力を生じさせにくい。
【0106】
また、空隙201に挿入された状態において、埋設管2に交差する方向における収容袋61の膨張率は、埋設管2の平行方向における収容袋61の膨張率よりも大きいことも好適である。この結果、収容袋61は、膨張剤の注入によって、埋設管2との交差方向に大きく膨張することになる。この交差方向への膨張によって埋設管2が屈曲外側から屈曲内側に押し出されるようになり、埋設管2の屈曲が修正される
【0107】
あるいは、空隙201に挿入された状態において、鉛直方向における収容袋61の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における収容袋61の膨張量および膨張率の少なくとも一方よりも大きいことも好適である。埋設管2が図13のように下方向に屈曲している場合や上方向に屈曲している場合には、収容袋61は、鉛直方向に大きく膨張することになって、埋設管2を押し上げたり押し下げたりできる。これにより、埋設管2の屈曲は、確実に修正されるようになる。
【0108】
特に、空隙201に挿入された状態において、収容袋61は、膨張剤の注入によって埋設管2の延伸方向と交差する方向に膨張することが好ましい。この場合にも、膨張剤の注入によって膨張する収容袋61は、埋設管2を屈曲内側に押し出すようになる。この結果、膨張する収容袋61は、埋設管2の屈曲を確実に修正できる。
【0109】
以上のように、収容袋61の膨張量および膨張率が制御されていることで、収容袋61の膨張によって、埋設管2の屈曲が確実に補修される。特に、膨張剤が空隙201に直接注入される参考技術と異なり、(1)膨張剤が収容袋61に注入されることで膨張剤が土砂中に混入しない、(2)収容袋61が埋設管2の屈曲や湾曲を押し戻す方向に大きく膨張することで、空隙201の形状や大きさによらず、確実に埋設管2を押し戻す、との2つの作用によって、埋設管補修装置1は、埋設管2の屈曲や湾曲を確実に補修できる。
【0110】
以上は、埋設管2が湾曲している場合でも同様である。
【0111】
(収容袋61の特性)
収容袋61では、埋設管2に交差する方向における膨張量が、埋設管2の平行方向における膨張量よりも大きい。収容袋61は、空隙201に挿入されるが、挿入された状態で、収容袋61が、埋設管2に交差する方向により大きく膨張することで、屈曲している埋設管2を押し上げるようになるからである。ここで、空隙201にどのような状態で収容袋61が挿入されるかは状況によるが、収容袋61が備える開口部は、注入ユニット8の口に接続されるので(注入ユニット8から膨張剤が収容袋61に注入される必要があるため)、収容袋61は、開口部を上向きにして空隙201に挿入されるようになる。もちろん、空隙201が埋設管2の上や横である場合には、これに合わせた向きで空隙201に挿入されるようになる。後者の場合でも、収容袋61は、屈曲外側から開口部を基点に遠ざかる方向に収容されるようになる。
【0112】
このため、収容袋61は、開口部から開口部と対向する端部にかけての方向が、埋設管2と交差する方向に沿うようになる。すなわち、収容袋61は、開口部から縦方向における膨張量(膨張率)が、横方向における膨張量(膨張率)よりも大きいことで、空隙201において収容袋61が埋設管2に交差する方向に、大きく膨張するようになる。
【0113】
このように、開口部を基準に縦方向の膨張量(膨張率)が、横方向の膨張量(膨張率)よりも大きい収容袋61が用いられることで、空隙201において、屈曲や湾曲した埋設管2を元に戻す圧力を、確実に生じさせることができるようになる。
【0114】
例えば、収容袋61の縦方向の膨張率(伸び率)は、横方向の膨張率よりも10%以上大きいことが好適である。縦方向の膨張率が、横方向の膨張率よりも10%以上大きいことで、空隙201において、収容袋61は埋設管2に交差する方向により膨張しやすくなり、屈曲している埋設管2の屈曲を戻す方向に圧力を掛けやすくなるからである。また、横方向の膨張率が縦方向の膨張率よりも小さいことで、膨張剤が注入されても、埋設管2の平行方向に収容袋61が膨張することが少なくなり、埋設管2に対する圧力が、分散してしまうことも無くなる。
【0115】
あるいは、収容袋61の縦方向の引き張り強さが、横方向の引き張り強さの20%以上大きいことも好適である。このような特性を有することで、収容袋61は、埋設管2と交差する方向により大きく膨張し、埋設管2と平行方向においては膨張しすぎないようになるからである。
【0116】
また、収容袋61の縦方向の引き張り強さが横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、収容袋61の縦方向の引裂強さが横方向の引裂強さよりも小さいことも好適である。収容袋61は、横方向よりも縦方向に膨張しやすいことが求められる。このとき、引き張り強さについては縦方向が横方向よりも大きく、引裂強さについては横方向が縦方向よりも大きいことで、収容袋61は、膨張剤の注入に合わせて縦方向に膨張しやすくなる。この結果、屈曲している埋設管2に対して、屈曲を元に戻す方向への圧力が掛かるようになる。
【0117】
なお、収容袋61は、繊維の編み込みによって製造されれば良いが、この場合には、縦方向の密度が横方向の密度よりも大きいことも好適である。
【0118】
ここで、埋設管補修装置1は、角度検出機能を備えておくことで、埋設管2の屈曲や湾曲が無くなったことを確認できる。
【0119】
(充填材の注入)
埋設管2がまっすぐに戻ると、埋設管2の周囲は、土砂が除去された領域のみを空隙として残す。この空隙が残ったままであると、まっすぐになった埋設管2が、次に上向きに屈曲することも生じうる。このため、上向きに屈曲することを防止するために、土砂が除去されて生じた空隙を充填する必要がある。図14は、本発明の実施の形態1における充填材の注入を示す説明図である。図14は、空隙となった除去領域に充填材62が注入される様子を示している。
【0120】
埋設管補修装置1は、空隙201に膨張材61が注入されて埋設管2がまっすぐになったところで、注入ユニット6を介して土砂が除去された除去領域202に充填材62を注入する。このとき、注入ユニット6は、第1貫通孔7を通じて充填材62を注入する。充填材62は、既にその体積が確定している空隙である除去領域に注入されるので、膨張材61と異なり膨張する素材でなくともよい。もちろん膨張する素材でも良い。また、空隙201における場合と同様に、収容袋によって除去領域202が充填されても良い。
【0121】
注入ユニット6が、除去領域202に生じた空隙に充填材を注入することで、埋設管2の屈曲部分の周辺は、空隙がなくなって、まっすぐに補修された埋設管2の以降の変形や屈曲が防止できる。充填材62は、膨張剤と同様に、本体部3に収容されてもよいし、本体部3に接続される運搬路によって外部から供給されても良い。
【0122】
以上の手順によって、実施の形態1の埋設管補修装置1は、埋設管2の屈曲や湾曲などの変形を補修できる。すなわち、下記の手順を含む埋設管補修方法によって、屈曲や湾曲などの変形した埋設管2を、人力によらず補修できる。なお、注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて収容袋61や膨張剤を注入する機能を有していればよいので、穿孔ユニット4と共通の部材であってもよい。穿孔ユニット4がドリルなどの埋設管2を穿孔する部材に加えて、液体や固体を噴出させるノズルを備えておくことで、穿孔ユニット4が第2貫通孔8を穿孔した後で、このノズルを通じて空隙201に収容袋61や膨張剤を注入する。注入ユニット6が穿孔ユニット4と同一部材であることで、第2貫通孔8が穿孔されると即座に膨張材61が注入できる。
【0123】
加えて、穿孔ユニット4は、除去ユニット5と共通の部材であってもよい。除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて、除去領域202の土砂を除去する。このとき、除去ユニット5は、空気、水、溶解液などを噴射する機能を発揮するが、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7が穿孔されたのに続いて、除去領域202の土砂が除去されれば良い。このことから、穿孔ユニット4がノズルを備えており、このノズルが除去ユニット5の機能である空気や水などの噴射を行えばよい。
【0124】
更には、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6は、共通の部材であってもよい。例えば、穿孔ユニット4が貫通孔を穿つドリルとノズルとを備えておけば、穿孔ユニット4は、第1貫通孔7を穿孔した後で、第1貫通孔7よりノズルを除去領域202に挿入して土砂を除去できる。このように、穿孔ユニット4がドリルなどの掘削機構とノズルとを備えておくことで、穿孔ユニット4は、貫通孔の形成、土砂の除去および膨張材や充填材の注入を行うことができる。
【0125】
以上のように、実施の形態1における埋設管補修装置1は、埋設管2内部に作業者が入り込んだり、埋設管2を掘り起こしたりすること無く、埋設管2の屈曲や湾曲などの変形を補修できる。また、実施の形態1で説明した埋設管補修装置1は、埋設管補修方法に適用されることも当然に可能である。
【0126】
(実施の形態2)
【0127】
次に、実施の形態2について説明する。
【0128】
実施の形態2では、埋設管補修装置や埋設管補修方法の各部の詳細や変形例などについて説明する。
【0129】
(本体部)
本体部3は、埋設管2内部を移動可能である。更に、埋設管2の補修に必要となる穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6を備える。本体部3は、これらのユニットのそれぞれを格納したり外部に出したりする。このため、本体部3は、格納する機構や空間を備えている。あるいは、本体部3は、これらの各ユニットをその外部表面に取り付けておいてもよい。外部表面に取り付けておいて、各ユニットのそれぞれは、必要な作業時に突出する。また、各ユニットが本体部3によって牽引されて、補修領域において各ユニットが動作しても良い。要するに各ユニットは、本体部3によって補修領域に運搬されて、補修領域において作業のための動作を行えればよい。
【0130】
本体部3は、注入ユニット6を通じて注入する膨張材61や充填材62を収容する。例えば、本体部3はその内部に収容タンクを設けており、この収容タンクが必要となる膨張材61や充填材62を収容する。このとき、膨張材61と充填材62とが異なるタンク層に収容されることも好適である。また、本体部3は、埋設管2外部と接続可能な管路を備えており、この管路を通じて膨張材61や充填材62の供給を受けても良い。
【0131】
本体部3は、移動可能とするために車輪を備える。もちろん車輪だけでなく、クローラやタイヤなどを備えても良い。特に、埋設管2内部は変形している可能性もあるので、クローラなどの走行能力の高い部材が用いられることが好適である。
【0132】
また、本体部3は、埋設管2における補修領域において停止できる位置決め制御部を備えておくことが好適である。位置決め制御部は、ジャイロやGPS機能を備えることで、本体部3(すなわち埋設管補修装置1)を、所定の補修領域で停止させることができる。ジャイロやGPS機能は、一般的に知られる公知技術が用いられれば実現可能である。あるいは、予め補修領域が検出されている状態であって、補修領域は、埋設管2の入り口(埋設管補修装置1の入り口)より所定の距離に位置することが分かっている場合には、位置決め制御部は、走行距離を測定できる機能を備えておけばよい。この走行距離から、位置決め制御部は、埋設管補修装置1を停止させるべき位置を把握できる。
【0133】
あるいは、位置決め制御部は、本体部3の姿勢を検出する姿勢検出部を更に備えていることもよい。埋設管2は、上下方向における勾配や左右方向における進行方向は一定であり、勾配や進行方向に急変が生じる場所は、埋設管2に屈曲や湾曲などの変形が生じていることを示す。位置決め制御部は、この姿勢検出部によって、姿勢の急変する位置を把握し、この位置が埋設管補修装置1の停止位置であると把握する。
【0134】
もちろん、本体部3が監視カメラを備えておき、監視カメラの画像に基づいて埋設管補修装置1の停止位置が決定されても良い。監視カメラからの画像が送信されて、作業者がこの画像を監視することで埋設管補修装置1の停止位置を制御してもよい。あるいは、監視カメラからの画像を受け取った位置決め制御部が、画像を判断して、埋設管補修装置1の停止位置を決定しても良い。例えば、画像処理によって、位置決め制御部は、本体部3の動作ベクトルの急激な変化を算出し、この急激な変化を生じさせた位置が停止位置であると判断する。
【0135】
また、位置決め制御部は、埋設管補修装置1が埋設管2内部を走行しながら、埋設管2の変形位置(補修領域)を検出することで停止位置を決定しても良い。あるいは、予め埋設管2の変形位置(補修領域)が特定されている場合には、この位置を特定する情報に基づいて停止位置を決定しても良い。
【0136】
(補修領域の決定)
図15は、本発明の実施の形態2における埋設管補修装置のブロック図である。埋設管補修装置1は、位置決め制御部9および姿勢検出部91を備えている。位置決め制御部9は、上述の通り、埋設管補修装置1の埋設管2内部での停止位置を決定する。
【0137】
また、位置決め制御部9は、姿勢検出部91を備えている。姿勢検出部91は、本体部3の姿勢を検出する。埋設管2は、複数の管路21(コンクリート、金属、樹脂などで形成されている)が継ぎ手22によって接続されているので、特殊な継ぎ手による分岐やカーブなどを除けば、まっすぐに延伸する。このため、埋設管2は、上下方向に生じる勾配、左右方向に生じる進行方向以外の方向性を有さないのが一般的であり、埋設管2内部そのものはまっすぐの状態である。
【0138】
姿勢検出部91は、埋設管2内部を移動する本体部3の姿勢を検出する。例えば、姿勢検出部91は、本体部3の上下方向の勾配や左右の進行方向のベクトルを検出する。埋設管2に変形が無ければ、姿勢検出部91は、ベクトルの変化を検出しない。一方、埋設管2に屈曲や湾曲などの変形が生じていれば、勾配や進行方向のベクトルに変化が発生する。姿勢検出部91は、このベクトルの変化を検出する場合に、この変化を生じさせた位置が変形している位置(すなわち補修の対象となる補修領域)であると判断する。
【0139】
図16は、姿勢検出部91によって本体部3の姿勢を検出することで、補修領域を検出する様子を示している。図16は、本発明の実施の形態2における補修領域を検出する状態を説明する説明図であり、屈曲している埋設管2内部を移動する埋設管補修装置1の移動経路を示している。
【0140】
姿勢検出部91は、本体部3の移動経路における本体部3の姿勢を検出する。姿勢は、動きベクトルや測位などによって検出される。図16においては、埋設管2は、あるところまではまっすぐの状態を維持しているが、継ぎ手22において屈曲している。これは、継ぎ手22の下側に空隙201が生じているからである。この空隙201によって、継ぎ手22の上下の圧力バランスが悪くなって屈曲している。
【0141】
埋設管2がまっすぐな状態においては、本体部3の移動経路は、破線Bのようにまっすぐになるはずである。しかしながら、継ぎ手22が屈曲しているために、継ぎ手22の部分で本体部3の移動経路は、実線Aのように屈曲する。この破線Bおよび実線Aのそれぞれは、本体部3の移動方向のベクトルを示す。姿勢検出部91は、この移動方向のベクトルから、本体部3の姿勢が急激に変化する位置を検出できる。図16では、継ぎ手22の部分で、移動方向のベクトルが急激に変化している(本来あるべき破線Bから実線Aに変化している)ので、この位置において姿勢が急変している。この結果、姿勢検出部91は、継ぎ手22の部分が、屈曲や湾曲などの変形位置であることを判断できる。
【0142】
姿勢検出部91がこの移動方向ベクトルの変化を算出することで、埋設管補修装置1は、埋設管2において補修すべき補修領域を検出できる。
【0143】
姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を位置決め制御部9に出力する。位置決め制御部9は、受け取った位置情報に基づいて、本体部3の移動を停止させ、補修作業を行える位置に埋設管補修装置1を停止させる。また、姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を、通信手段(無線通信あるいは有線通信であって、公知技術として知られている通信手段)によって埋設管2外部で作業する作業者(作業者が使用する端末)に通知する。この通知に基づいて、作業者が位置決め制御部9の遠隔操作を介して、埋設管補修装置1の作業位置を決定して停止させる。
【0144】
姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を制御部10に出力する。制御部10は、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6の動作を制御する。制御部10は、姿勢検出部91から受け取った補修領域の位置を確認し、穿孔ユニット4などを動作させて、実施の形態1で説明したように埋設管2の補修を行う。
【0145】
また、姿勢検出部91は、位置情報を埋設管2外部の作業者(あるいは作業者の端末)に出力する。作業者は、この位置情報に基づいて、位置決め制御部9を遠隔制御して埋設管補修装置1を停止させる。更に、作業者は制御部10を制御することで、穿孔ユニット4などを動作させて埋設管2の補修を行う。
【0146】
以上のように、姿勢検出部91によって、埋設管補修装置1が補修のために停止すべき位置が検出され、位置決め制御部9による停止制御によって、埋設管補修装置1による埋設管2の補修が実行される。
【0147】
(監視ユニット)
埋設管補修装置1を用いた埋設管2の補修においては、作業者の便宜のために、埋設管補修装置1とセットとなる監視ユニットが備えられても良い。
【0148】
図17は、本発明の実施の形態2における埋設管補修の状態を示す説明図である。図17は、埋設管補修装置1とセットとなり、補修領域や補修領域での補修の状況の画像を撮像して、撮像画像を送信する監視ユニット30を示している。監視ユニット30は、埋設管補修装置1および補修領域を撮像できる撮像部31、撮像した画像を送信する送信部32と、を備えている。送信部32は、無線通信および有線通信のいずれかによって撮像した画像を、作業者に送信する。図17では、有線通信に用いられる信号ケーブル33が示されている。信号ケーブル33は、外部の表示手段などと接続しており、撮像画像を送信する。
【0149】
作業者は、埋設管2の外部において、送られてくる撮像画像を確認しながら、監視ユニットや埋設管補修装置1を操作する。操作に当たっては、操作端末が用いられる。作業者が遠隔的に操作している状況を図18に示す。図18は、本発明の実施の形態2における埋設管補修方法の実施を示す説明図である。
【0150】
作業者50は、埋設管2の外部において操作端末40を操作することで、埋設管2内部を移動する埋設管補修装置1の動作を制御する。操作端末40は、表示装置41を備えており、表示装置41は、監視ユニット30から送信されてくる撮像画像を表示する。作業者50は、表示手段41に表示される撮像画像を見ながら埋設管補修装置1を制御する。このとき、操作端末40は、無線通信もしくは有線通信によって、操作端末40に入力された命令を埋設管補修装置1に出力する。埋設管補修装置1は、自律して動作する以外の動作においては、この操作端末40から送信される命令に従った動作を行う。
【0151】
例えば、操作端末40は、埋設管補修装置1の制御部10に命令を信号として出力する。この信号を受けた制御部10は、埋設管補修装置1を所定位置で停止させたり、穿孔ユニット4などの動作を制御したりする。
【0152】
これらの作業においては、実際の補修領域での作業状態が見える状態であることが、適切な補修作業においては好ましい。表示装置41に監視ユニット40からの撮像画像が表示されるので、作業者50は、この画像を確認しながら、適切な命令を埋設管補修装置1に出力できる。例えば、補修領域での作業であるかを確認できるし、補修の進行状態を確認することもできる。監視ユニット30によって、作業者50が、補修の状態を確認しながら補修を実施できるようになる。
【0153】
作業者50は、次の手順で埋設管2の変形を補修する。
(1)埋設管補修装置1と監視ユニット30を、対象となる埋設管2に投入する。作業者50は、埋設管補修装置1と監視ユニット30とを、操作端末40からの命令によって埋設管2内部を移動させる。
(2)埋設管補修装置1は、姿勢検出部91の動作によって、埋設管2の変形部分を特定する。特定すると、特定できた補修領域の位置情報を、姿勢検出部91は、操作端末40に送信する。
(3)作業者50は、特定された補修領域の位置情報に基づいて、補修領域の撮像画像(監視ユニット30が撮像する)を、表示手段41によって確認する。
(4)作業者50は、確認した画像によっては、埋設管補修装置1の停止位置を制御する。このとき、操作端末40からの命令信号によって制御する。
(5)作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7を穿孔することを命じる。命令を受けた穿孔ユニット4は、埋設管2の屈曲内側の位置に、第1貫通孔7を穿孔する。
(6)作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、除去ユニット5によって除去領域の土砂を除去することを命じる。この命令を受けた除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて空気圧や水圧を掛けることで、除去領域の土砂を除去する。なお、除去の工程を、監視ユニット30から送信される撮像画像によって、作業者50は確認できる。
(7)次に、作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7と対向する位置(異なる位置であって、空隙201に接続される位置であればよい)に第2貫通孔8を穿孔することを命じる。この命令を受けた穿孔ユニット4は、第2貫通孔8を穿孔する。なお、この穿孔においては、監視ユニット30から送信される画像を確認しながら、作業者50は、正確な位置に第2貫通孔8を穿孔できる。
(8)次に、作業者50は、操作端末40を通じて埋設管補修装置1に対して、注入ユニット6によって空隙201に収容袋61を挿入することを命じる。更に、注入ユニット6によって、収容袋61に膨張剤を注入することを命じる。作業者50は、監視ユニット30から送信される撮像画像を確認しながら収容袋61の膨張に伴う埋設管2の上昇を確認できる。屈曲している埋設管2がまっすぐになったことを確認して(作業者50が、監視ユニット30からの画像で確認しても良いし、姿勢検出部91から送信される本体部3の姿勢の値によって確認しても良い)、膨張材の注入が終了する。
(9)次いで、作業者50は、操作端末40を通じて埋設管補修装置1に対して、注入ユニット6によって除去領域に充填材62を注入することを命じる。この命令によって、注入ユニット6は、第1貫通孔7を通じて除去領域に生じた空隙に、充填材を注入する。この充填材62の注入によって、まっすぐに戻された埋設管2の周囲は、確実に固定される。
【0154】
以上のように、作業者50が操作端末40を通じて、埋設管補修装置1を操作しながら埋設管2の変形を補修できる。もちろん、上述の(1)〜(9)の手順の一部もしくは全部が、埋設管補修装置1によって自動で行われても良い。このように、監視ユニット30や操作端末40が備わることで、埋設管2の補修がより容易となる。
【0155】
なお、監視ユニット30は、図17では、埋設管補修装置1と別の装置となっているが、一体の装置であってもよい。
【0156】
以上のように、実施の形態2における埋設管補修装置および埋設管補修方法は、埋設管内部に作業者が入ったり、埋設管を掘り起こしたりすること無く、容易かつ確実に埋設管2の変形を補修できる。
【0157】
以上、実施の形態1〜2で説明された埋設管補修装置、埋設管補修方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0158】
1 埋設管補修装置
2 埋設管
21 管路
22 継ぎ手
23、24 内壁
201 空隙
202 除去領域
3 本体部
4 穿孔ユニット
5 除去ユニット
6 注入ユニット
61 収容袋
62 充填材
7 第1貫通孔
8 第2貫通孔
9 位置決め制御部
91 姿勢検出部
10 制御部
30 監視ユニット
40 操作端末
41 表示装置
50 作業者
【技術分野】
【0001】
本発明は地中に埋設された埋設管の形状を算出し、変形や湾曲を起こしている埋設管を掘り起こすことなく自動で補修できる埋設管補修装置および埋設管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国をはじめ、各国において水道管、下水管などの多数の埋設管が、地中に埋設されている。これらの埋設管は、老朽化、地震などの天災、工事振動による人災などの影響を受け、埋設時とその形状を変化させることが多い。例えば、埋設管が湾曲したり、折れ曲がったり、変形したりするなどである。このように、埋設管の形状が変化してしまうと、上水や下水の流れに悪影響が生じたり、水漏れによる故障が生じたりする。近年、水道管の故障や破裂が、隣接するガス管を破壊するなどの重大事故も生じている。
【0003】
一方で、埋設管は地中に埋設されているので、その状態を地上から確認することはきわめて難しい。勿論、埋設管を掘り出して確認することは、多大な労力を要し、現実的な手法とは言いがたい。
【0004】
このため、埋設管を掘り出すことなしに、埋設された埋設管の形状を正確に算出することが求められていた。埋設管の形状を算出できることで、埋設管における問題を早期に確認でき、必要な修理や交換を行うことができる。結果として、埋設管の故障によって生じる災害などを防止できる。
【0005】
このような、埋設管の形状を算出するために、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
【0006】
一方、埋設管の形状が算出されることで、埋設管の変形や湾曲が検出される。このような埋設管の変形や湾曲がある場合には、補修や修繕が必要である。変形していることで、埋設管内部の流動性や移動性が悪くなったり、埋設管を通る油分が地中に漏れ出してしまったりするなどの問題が生じうるからである。
【0007】
しかしながら、地中に埋設されている埋設管内部に作業者が入って補修や修繕の作業を行うことは困難である。このため、地中に埋設された埋設管内部に特殊な機器を挿入して埋設管の修理を行う技術も提案されている(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−234124号公報
【特許文献2】特開平7−311022号公報
【特許文献3】特開平8−219782号公報
【特許文献4】特開平9−14932号公報
【特許文献5】特開2001−141431号公報
【特許文献6】特開2005−345118号公報
【特許文献7】特開2007−169987号公報
【特許文献8】特開2003−119836号公報
【特許文献9】特開平11−13985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜6は、埋設管内部の形状を算出する技術を開示する。種々の技術によって、埋設管内部の形状を算出する方式の提案がなされている。
【0010】
特許文献1は、管路内部を走行する装置が、管路内部に光を照射し、この照射光の反射波を用いて、管路内部の形状を算出する技術を開示する。
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術では、光の反射を利用するため、装置が大掛かりになると共に受光精度の劣化によって算出精度も劣化する問題がある。また、管路内部の形状を算出することはできるが、2次元あるいは3次元での、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物のそれぞれを算出することができない問題がある。
【0012】
また、特許文献2は、管路内部を走行する装置が、管路の曲率を算出する技術を開示する。
【0013】
しかしながら、特許文献2の技術では、管路の曲率を算出できるだけで、管径変化や内部障害物を算出できない。また、各位置における所定の基準線に対する曲率を測定できるだけであるので、左右方向、上下方向といった3次元的な管路の湾曲を算出することが困難である問題を有する。
【0014】
特許文献3は、管路を走行する2台の装置同士でレーザー光をやり取りし、このレーザー光の揺動によって管路の屈曲を算出する技術を開示する。
【0015】
しかしながら、特許文献3の技術では、レーザー光のやり取りが可能な範囲での屈曲しか算出できず、屈曲以外の管路の形状を算出することが困難である。加えて、レーザー光のやり取りを基本とするため、装置が大掛かりになると共にレーザー光のやり取りエラーなどの問題も生じさせる。
【0016】
特許文献4は、特許文献1、3と同様に、照射光を利用して管路内部の形状を算出する技術を開示する。
【0017】
しかしながら、装置が大掛かりとなったり、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物などの全てを算出できなかったりする問題がある。また、光学系を用いることでの算出精度の劣化も懸念される。
【0018】
特許文献5は、特許文献4と同様の技術であり、同様の問題を有する。
【0019】
特許文献6は、管路に配置された装置が電磁波パルスを管路に照射して、管路に含まれる空洞を算出する技術を開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献6の技術では、装置が大掛かりになると共に、ある所定位置での空洞を算出できるが、管路全体に渡って、管路の湾曲、曲がり、管径変化、内部障害物のそれぞれを測定するのには不適である。また、小径の管路以外には適さない問題もある。
【0021】
また、特許文献7〜9は、埋設管の補修や修繕方法に関する技術を提案している。特許文献7〜9のそれぞれは、埋設管内部に機器を挿入して埋設管内部の補修を行う技術を提案している。
【0022】
しかしながら、特許文献7〜9のいずれの技術でも、埋設管内部の傷などの修復は可能であるが、屈曲したり変形したりしている埋設管を元のようにまっすぐにすることはできない。また、埋設管の状況を把握するのにあわせた補修を行う事もできない。
【0023】
以上のように、従来技術は、(1)埋設管の屈曲、湾曲、変形を検出した上で補修すること、(2)変形や湾曲している埋設管を、埋設されている周囲の状況に合わせて元のようにまっすぐに戻す補修を行うこと、(3)補修の状態を視認しながら補修を行うこと、などが困難である問題を有していた。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑み、算出された埋設管の変形、湾曲、屈曲などに対応して、埋設管を掘り起こしたり埋設管内部に作業者が入ったりすることなく、埋設管の変形を補修できる埋設管補修装置および埋設管補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題に鑑み、本発明の埋設管補修装置は、地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、第1貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、第2貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の埋設管補修装置は、作業者が入り込むことのできないような狭い埋設管であっても、埋設管を掘り起こすことなく自動で補修や修繕を行える。
【0027】
特に、埋設管の周囲を調整することで、埋設管の屈曲や変形を修正できるので、埋設管を取り替えることなく、埋設管の使用寿命を延ばすことができる。特に、埋設管の変形や屈曲を元に戻してまっすぐの状態にできるので、埋設管がその役割を果たせる状態に戻すことができる。
【0028】
加えて、屈曲や湾曲している埋設管を補修するために、屈曲や湾曲している埋設管を上げたり下げたりする場合に、確実に埋設管の移動を行える。この結果、埋設管の補修が確実かつ高い精度で行われるようになる。また、埋設管の形状を算出することを基礎として埋設管を自動で補修できるので、埋設管の実際の状況に合わせた補修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の概要図である。
【図2】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の動作説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の補修説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1における正常状態の埋設管の側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における屈曲状態の埋設管の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態1における埋設管補修装置による収容袋の挿入を示す説明図である。
【図14】本発明の実施の形態1における充填材の注入を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態2における埋設管補修装置のブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態2における補修領域を検出する状態を説明する説明図である。
【図17】本発明の実施の形態2における埋設管補修の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の発明に係る埋設管補修装置は、地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、第1貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、第2貫通孔を通じて、埋設管の外部であって第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【0031】
この構成により、埋設管補修装置は、収容袋の膨張によって、屈曲や湾曲している埋設管の姿勢を修復できる。
【0032】
本発明の第2の発明に係る埋設管補修装置では、第1の発明に加えて、空隙に挿入された状態において、埋設管に交差する方向における収容袋の膨張率は、埋設管の平行方向における収容袋の膨張率よりも大きい。
【0033】
この構成により、膨張する収容袋は、屈曲している埋設管を、確実に通常の姿勢に戻すように圧力を掛けるようになる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の屈曲や湾曲を確実に補修できるようになる。
【0034】
本発明の第3の発明に係る埋設管補修装置では、第1又は第2の発明に加えて、空隙に挿入された状態において、鉛直方向における収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方より大きい。
【0035】
この構成により、膨張する収容袋は、屈曲している埋設管を、確実に通常の姿勢に戻すように圧力を掛けるようになる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の屈曲や湾曲を確実に補修できるようになる。
【0036】
本発明の第4の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、空隙に挿入された収容袋は、膨張剤の注入によって、埋設管の延伸方向と交差する方向に膨張する。
【0037】
この構成により、収容袋は、埋設管2の姿勢を修復する方向に圧力を確実に掛けることができる。
【0038】
本発明の第5の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、第1貫通孔および第2貫通孔のそれぞれは、埋設管において相互に対向する位置にある。
【0039】
この構成により、第1貫通孔は、余分な土砂を除去するために用いられ、第2貫通孔は、空隙で収容袋を膨張させるために用いられる。結果として、埋設管補修装置は、埋設管の変形を補修しやすくなる。
【0040】
本発明の第6の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、埋設管の補修領域が屈曲している場合には、第1貫通孔は、埋設管の屈曲内側に位置し、第2貫通孔は、埋設管の屈曲外側に位置する。
【0041】
この構成により、埋設管の屈曲を補修する方向へ、収容袋の膨張圧力を加えることができる。
【0042】
本発明の第7の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は、埋設管内部を移動可能な駆動部を備えている。
【0043】
この構成により、埋設管補修装置は、埋設管内部を自由に移動できる。
【0044】
本発明の第8の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、本体部は、埋設管における補修領域を決める位置決め制御部を備える。
【0045】
この構成により、埋設管補修装置は、埋設管の変形位置で確実に補修作業を行える。
【0046】
本発明の第9の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、穿孔ユニットは、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを有する。
【0047】
この構成により、埋設管補修装置は、容易に第1貫通孔と第2貫通孔を穿孔できる。加えて、所定の直径にあわせた貫通孔を穿孔できる。
【0048】
本発明の第10の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、除去ユニットはノズルを備え、除去ユニットは第1貫通孔からノズルを突出させて空気圧および水圧の少なくとも一方によって、除去領域の土砂を除去する。
【0049】
この構成により、除去ユニットは、土砂を確実かつ容易に除去できる。
【0050】
本発明の第11の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、注入ユニットは、除去領域での土砂の除去が行われた後で、第2貫通孔を通じて、収容袋を挿入して膨張剤を注入する。
【0051】
この構成により、注入ユニットは、収容袋を通じて、埋設管の湾曲や屈曲を補修できる。
【0052】
本発明の第12の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、注入ユニットは、膨張材の注入が行われた後で、第1貫通孔を通じて、除去領域に充填材を注入する。
【0053】
この構成により、埋設管の補修が完了し、補修された埋設管の状態が、その後に渡って維持されるようになる。
【0054】
本発明の第13の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、埋設管の補修の行われる補修領域を撮像可能な撮像部と、補修領域の撮像画像を送信する送信部と、を備える監視ユニットを更に備える。
【0055】
この構成により、埋設管補修装置による埋設管の補修状態を確認しながら、埋設管補修装置による補修作業が行える。結果として、埋設管の補修作業の効率が向上する。
【0056】
本発明の第14の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第13のいずれかの発明に加えて、本体部は、ジャイロ機構を用いて、埋設管の湾曲、屈曲、内径変化および変形の少なくとも一つを算出する。
【0057】
この構成により、埋設管補修装置は、簡便な仕組みで、埋設管の変形や変形している位置を検出できる。
【0058】
本発明の第15の発明に係る埋設管補修装置では、第1から第14のいずれかの発明に加えて、収容袋は、開口部を備え、開口部を基準とした縦方向の膨張率が、開口部を基準とした横方向の膨張率よりも、10%以上大きい。
【0059】
本発明の第16の発明に係る埋設管補修装置では、第15の発明に加えて、収容袋は、開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが、開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも、20%以上大きい。
【0060】
本発明の第17の発明に係る埋設管補修装置では、第15又は第16の発明に加えて、収容袋は、開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、縦方向の引裂強さが横方向の引裂強さよりも小さい。
【0061】
これらの構成により、収容袋は、横方向よりも縦方向に膨張しやすくなる。
【0062】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0063】
(実施の形態1)
【0064】
実施の形態1について説明する。
【0065】
(全体概要)
まず、図1を用いて埋設管補修装置の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の概要図である。図1は、埋設管2内部に挿入された埋設管補修装置1を示している。なお、本明細書において、埋設管2は、埋設管2を形成する管路の部分および管路同士の継ぎ手の部分の全てを含む概念である。つまり、補修する埋設管2における補修の対象位置は、管路の部分であったり、継ぎ手の部分であったりする。
【0066】
埋設管補修装置1は、埋設管2内部に投入されて用いられる。埋設管補修装置1は、本体部3、穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6と、を備える。
【0067】
本体部3は、埋設管2内部を移動可能とし、埋設管補修装置1の全体的な外形を形作る。本体部3は、穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6と、を格納可能であってもよい。図1では、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6が本体部3の外部に出ているが、埋設管2内部を移動する際には、本体部3は、これら穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6を格納しておいてもよい。図2は、本体部3にこれらのユニットが格納されている状態を示している。図2は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の側面図である。埋設管補修装置1は、本体部3にこれらのユニットが格納されている状態で、埋設管2内部を移動する。
【0068】
穿孔ユニット4は、埋設管2において補修の対象となる補修領域におけるある位置に第1貫通孔7を穿孔する。更に、穿孔ユニット4は、第1貫通孔7と別の位置に第2貫通孔8を穿孔する。穿孔ユニット4は、単一の部材であって、単一の部材が第1貫通孔7と第2貫通孔8とを穿孔しても良い。あるいは、穿孔ユニット4は複数の部材を備えており、複数の部材の一方が第1貫通孔7を穿孔し、他方が第2貫通孔を穿孔しても良い。
【0069】
ここで、第1貫通孔7は、埋設管2を屈曲させたり湾曲させたりする原因となる土砂が堆積している領域である「除去領域」に接続する。一方、第2貫通孔8は、埋設管2を屈曲させたり湾曲させたりする原因となる空隙に接続する。穿孔ユニット4が、これら第1貫通孔7と第2貫通孔8とを穿孔することで、埋設管補修装置1は、除去領域および空隙にアクセスをすることが可能となる。
【0070】
除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて、第1貫通孔7周辺(埋設管2の外部における第1貫通孔7周辺)の土砂を除去する。第1貫通孔7の周辺の土砂を除去することで、埋設管2の屈曲や湾曲を補修する余地が生じる。すなわち、埋設管2の屈曲や湾曲を生じさせる圧力となっている土砂が除去されることで、埋設管2の屈曲や湾曲を戻すための空間が生じる。
【0071】
注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて、埋設管2の外部であって第2貫通孔8の周辺の空隙に収容袋を挿入する。更に、注入ユニット6は、この収容袋に膨張材を注入して、空隙内部で収容袋を膨張させる。この膨張によって、空隙を充填しつつ、屈曲や湾曲している埋設管2の姿勢を修復する。このとき、空隙に挿入された状態において、埋設管2に交差する方向における収容袋の膨張量は、埋設管2の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい。
【0072】
図3は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の動作説明図である。図3は、屈曲している埋設管2内部であって、屈曲している補修領域に埋設管補修装置1が配置されている状態を示している。埋設管補修装置1は、穿孔ユニット4によって、第1貫通孔7および第2貫通孔8を穿孔する。第1貫通孔7の外部の除去領域202では、除去ユニット5が土砂を除去している。この結果、除去領域7は、空隙となっている。
【0073】
第2貫通孔8の外部には、埋設管2の屈曲の原因となった空隙201が存在している。注入ユニット6は、この空隙201に収容袋61を挿入する。注入ユニット6は、この収容袋61内部に膨張剤を注入する。膨張剤の注入および膨張によって、収容袋61は、空隙201内部で膨張する。この収容袋61が空隙201内部で膨張することで、埋設管2を押し上げる。この押し上げによって、埋設管2は、その屈曲が修正されることになり、埋設管2の変形が補修される。このとき、収容袋61は、埋設管2に平行方向よりも、埋設管2に交差する方向に対して大きく膨張するので、屈曲している埋設管2の修正が効率的に図られることになる。
【0074】
収容袋61が埋設管2と交差する方向に膨張することで、空隙201において収容袋61が埋設管2と交差する方向に埋設管2を押し上げるようになる。図4は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置の補修説明図である。図4に示されるように収容袋61が鉛直方向に膨張して埋設管2を押し上げる。この押し上げによって、屈曲していた埋設管2の姿勢が修復される。このとき、除去領域202の土砂が除去されているので、埋設管2の上昇余地があり、埋設管2の姿勢が修復される。
【0075】
次に、収容袋が用いられない場合の補修(参考技術)と収容袋が用いられる場合の補修(本発明)との差分を説明しつつ、埋設管補修装置1による補修方法の詳細を説明する。
【0076】
(収容袋が無い場合との対比)
次に、参考技術として、収容袋を用いない場合の埋設管2の補修方法について説明する。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態1における正常状態の埋設管の側面図である。図5における埋設管2は、地中20においてまっすぐな状態であり、屈曲や湾曲といった問題を生じさせていない。埋設管2は、複数の管路21がつなぎ合わされて形成される。このため、複数の管路21が、継ぎ手22において接続される。このように、埋設管2は、複数の管路21が継ぎ手22によって接続されることで形成される。このため、管路21そのものに屈曲や破壊が生じなくても、継ぎ手22において屈曲や湾曲が生じることがある。特に地盤変動や地形変動が生じると、継ぎ手22における屈曲が生じることがある。
【0078】
例えば、地中20において、継ぎ手22の周辺に圧力が生じたり空隙が生じたりすることで、継ぎ手22が折れ曲がってしまうことがある。この継ぎ手22の折れ曲がりによって、埋設管2が屈曲したり湾曲したりする。
【0079】
図6は、本発明の実施の形態1における屈曲状態の埋設管の側面図である。図6に示されるとおり、複数の管路21を接続する継ぎ手22のある場所が屈曲している。継ぎ手22の下側において、空隙201が生じている。例えば、地震や豪雨などによって生じる圧力によって、継ぎ手22の下側の土砂が減少することで、空隙201が生じる。あるいは、継ぎ手22の上側から圧力がかかることで、継ぎ手22が折れ曲がり、この折れ曲がりによって空隙201が生じる。
【0080】
このように、空隙201が生じていると継ぎ手22が折れ曲がり、埋設管2が屈曲した状態となる。埋設管2が屈曲していると埋設管2内部を、下水や上水が通りにくくなる。このため、この屈曲を元に戻す必要がある。参考技術における埋設管補修装置は、収容袋を用いずにこの空隙201に膨張剤を直接注入して空隙201を充填する。
【0081】
参考技術における埋設管補修装置100は、図7から図12に示されるように、埋設管2の屈曲を補修する。図7〜図12は、本発明の実施の形態1における参考技術での埋設管補修の説明図である。埋設管補修装置100は、収容袋61を用いないことを除けば、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6を備えていることは、埋設管補修装置1と同様である。
【0082】
まず図7に示されるように、埋設管補修装置100は、埋設管2が屈曲している補修領域に到達する。次に、埋設管補修装置100は、穿孔ユニット4を用いて第1貫通孔7および第2貫通孔8を穿孔する。次に、図8に示されるように、除去ユニット5は、第1貫通孔7の周囲の除去領域202の土砂を除去する。除去領域202の土砂が除去されて、屈曲している埋設管2の上昇余地が生じる。
【0083】
次に、図9に示されるように、注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて空隙201に膨張剤を注入する準備を整える。注入ユニット6は、空隙201に直接的に膨張剤を注入する。図10では、注入ユニット6が、空隙201に膨張剤を注入している。膨張剤は、空気等に触れることで、その体積を膨張させるので、空隙201を充填するようになる。
【0084】
この膨張によって、図11に示されるように、屈曲している埋設管2が持ち上げられて、埋設管2の屈曲が修正されるようになるはずである。しかしながら、実際には、膨張剤は、空隙201をきれいに充填して埋設管2を持ち上げるのではなく、空隙201の周辺に広がってしまい、埋設管2を持ち上げることができないことが多い。すなわち、図12に示されるような状態になる。空隙201を形成して膨張剤を充填するだけでは、埋設管2の屈曲を補修するのは困難であることがある。
【0085】
(収容袋を用いる本発明の場合)
本発明の埋設管補修装置1は、空隙201において膨張剤を充填して埋設管2の姿勢を修正する圧力を生じさせるために、収容袋61を用いる。この収容袋61を用いた埋設管補修装置1による処理および各部の詳細について説明する。本発明の埋設管補修装置1による補修の手順は、収容袋61を注入するところまでは、図7〜図9で説明した手順と同じである。このため、説明のために図7〜図9を重複して用いる。
【0086】
(埋設管補修装置1の移動)
埋設管補修装置1は、まず補修領域に移動する。このとき、本体部3は、車輪と駆動系統などの駆動部を備えており、この駆動部の働きによって埋設管2内部を移動する。なお、埋設管補修装置1は、露出している埋設管2の端部より挿入されて補修領域まで移動する。
【0087】
ここで、埋設管補修装置1が到達する補修領域は、予め別の装置等によって検出されていてもよいし、埋設管補修装置1によって検出されても良い。後者の場合には、埋設管補修装置1は、自ら検出した補修対象の補修領域で、補修作業を行う。
【0088】
駆動部は、埋設管2内部において、本体部3を移動可能にする構造であればなんでもよく、埋設管2の底面に接触して走行する構造でも良いし、埋設管2の全面に車輪を押し付けて走行する構造でも良い。本体部3は、車輪を備える以外にも、埋設管2内部の位置を操作者に通知する通信手段や位置を把握する位置測位手段を有している。更には、本体部3は、後述の水、膨張材、充填材を収容している。収容している水は除去ユニット5によって土砂の除去に用いられ、収容している膨張材や充填材は、注入ユニット6によって用いられる。
【0089】
また、本体部3は、埋設管2の内部を移動しながら埋設管2の異常を補修するので、埋設管2の内径にあわせた大きさを有していることが好ましい。埋設管2は、その種類に応じて内径が様々である。小さい内径の埋設管2も大きい内径の埋設管2も存在しうる。このため、本体部3は、埋設管2の内径に応じた複数の種類を有していてもよい。
【0090】
(第1貫通孔の穿孔)
図7においては、屈曲している継ぎ手22の下側に空隙201が生じている。この空隙201によって、継ぎ手22は、下側に出っ張るように屈曲している。更に、この屈曲に合わせて、屈曲している継ぎ手22の上側に土砂が溜まっている。この溜まっている土砂によって、継ぎ手22が下側の空隙201に押し付けられることで、埋設管2が屈曲してしまう。
【0091】
埋設管補修装置1は、まず補修領域における所定位置に第1貫通孔7を穿孔する。このとき、埋設管補修装置1から突出する穿孔ユニット4が、第1貫通孔7を穿孔する。
【0092】
第1貫通孔7は、屈曲している埋設管2の屈曲内側(屈曲の折れ曲がっている内側)に位置する。第1貫通孔7は、屈曲している埋設管2の上側に溜まっている土砂を除去するために穿孔される孔である。屈曲を補修するには、屈曲によって折れ曲がっている内側に向けて、埋設管2を押し戻す必要がある。このため、第1貫通孔7は、土砂を除去する必要のある除去領域に接続できるように、屈曲している埋設管2の屈曲内側に穿孔される。図7では、埋設管2の上部に第1貫通孔7が穿孔される。もちろん、屈曲が図7と逆方向になっている場合には、埋設管2の下部に第1貫通孔7が穿孔される。
【0093】
穿孔ユニット4は、本体部3から突出して、埋設管2の内側から埋設管2の壁面に第1貫通孔7を穿つ。ここで、穿孔ユニット4は、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを備え、これらによって埋設管2の壁面に孔を空けることができる。特に、コアドリルを用いることで、埋設管2の壁面に所定の直径を有する孔を空けることができるようになる。
【0094】
穿孔ユニット4は、通常は本体部3内部に格納されており、埋設管2に孔を穿つ場合に本体部3から突出すればよい。もちろん、最初から穿孔ユニット4が突出しており、補修領域に到達したところで、穿孔ユニット4が第1貫通孔7を穿孔しても良い。あるいは、穿孔ユニット4の基礎部分が本体部3から突出しており、補修領域に到達したところで、基礎部分からドリルが突出して第1貫通孔7を穿孔してもよい。
【0095】
第1貫通孔7が穿孔されることで、埋設管2内部と余分な土砂を除去したい除去領域とが接続されることになる。この第1貫通孔7を通じて、除去領域に存在する土砂を除去することができるようになる。
【0096】
(土砂の除去)
次に、第1貫通孔7を通じて、埋設管2が屈曲している屈曲内側に圧力を掛けている余分な土砂が除去される。この余分な土砂が溜まっている領域は、除去領域として定義される。土砂の除去は、図8に示されている。埋設管補修装置1は、第1貫通孔7を通じて除去ユニット5を埋設管2の外側に突出させる。なお、この土砂を除去すべき領域(この土砂が埋設管2に圧力を加えて、埋設管2が屈曲している)が、除去領域202として定義される。
【0097】
除去ユニット5は、水や溶解液を除去領域202に噴射することで、除去領域202の土砂を除去する。水や溶解液が噴射されると、除去領域202の土砂が吹き飛ばされる。この吹き飛ばされた土砂は、除去領域202から他の場所に移動することになるので、除去領域202には空隙が生じることになる。この空隙が生じることによって、埋設管2に対して上側からかかっていた圧力が減少する。圧力が減少することで、埋設管2の屈曲を元に戻す余地ができることになる。
【0098】
なお、除去ユニット5によって除去された土砂は、除去領域202以外の場所に移動されれば良いが、第1貫通孔7を通じて埋設管2内部に取り込まれても良い。除去された土砂が埋設管2内部に取り込まれても、埋設管2内部を上水や下水で洗浄することで、これらの土砂は流れ出すからである。例えば、除去領域202の周辺に土砂を移動させる余裕がない場合には、除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて除去した土砂を埋設管2内部に取り込む。
【0099】
また、除去領域202の土砂が、水やお湯の噴射では十分に除去できない場合(例えば、非常に硬い岩石質がある場合)には、除去ユニット5は、化学的な溶解液を噴出して、溶融させて除去すればよい。また、水や溶解液だけでなく、除去ユニット5は、空気を噴射することで、除去領域202の土砂を除去しても良い。空気圧による除去により、余分な汚泥を生じさせないで済むからである。
【0100】
また、除去ユニット5は、ノズルを備えており、このノズルから空気、水、溶解液などを噴射する。ノズルは、通常は本体部3や除去ユニット5内部に格納されており、除去作業の際に突出することで空気、水、溶解液などを噴射できる。除去ユニット5がノズルを備えることで、水や空気の噴射を細かに制御できるメリットがある。ノズルからの空気圧および水圧の少なくとも一方で、除去領域202の土砂が除去される。
【0101】
このように、第1貫通孔7が穿孔された後で、除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて除去領域202の土砂を除去できるようになる。除去されることで、埋設管2の屈曲部分に付与されている圧力が減少し、屈曲している埋設管2を元に戻す余地(元に戻すために必要となる空間)が形成できる。
【0102】
(第2貫通孔の穿孔)
次に、埋設管補修装置1は、第1貫通孔7と別の位置に第2貫通孔8を穿孔する。第2貫通孔8の穿孔の状態は、図9に示されている。このとき、第2貫通孔8は、第1貫通孔7と対向する位置に穿孔されることも好適である。第2貫通孔8は、収容袋61の膨張によって埋設管2の姿勢を制御するために設けられる。このため、第1貫通孔7と対向する位置であることで、第2貫通孔8はその役割を果たすことができるようになる。また、第2貫通孔8は、屈曲している埋設管2の屈曲外側に設けられることが好ましい。屈曲外側から収容袋61の膨張によって埋設管2の姿勢を制御するために、埋設管2を押し上げたり押し下げたりすることが可能となるように、である。すなわち、埋設管2が屈曲している場合には、第1貫通孔7は、埋設管2の屈曲内側に位置し、第2貫通孔8は、埋設管2の屈曲外側に位置する。
【0103】
(収容袋による修正)
埋設管補修装置1は、除去領域202の土砂の除去作業が終了すると、埋設管2の屈曲の原因となっている空隙201を埋めることで埋設管2の屈曲を元に戻す作業を行う。このとき、埋設管補修装置1は、収容袋61と収容袋61への膨張剤の注入によって、空隙201を埋める(完全に埋めることだけでなく、埋設管2の屈曲を持ち上げる程度に埋めることを含む)。
【0104】
図13は、本発明の実施の形態1における埋設管補修装置による収容袋の挿入を示す説明図である。埋設管補修装置1は、第2貫通孔8が穿孔されたところで、注入ユニット6より収容袋61を空隙201に挿入する。収容袋61は、予め本体部3に格納されておき、注入ユニット6を通じて挿入されれば良い。注入ユニット6は、収容袋61内部に膨張剤を注入する。この膨張剤の注入によって収容袋61が膨張して、屈曲している埋設管2を押し上げる(図13においては押し上げ)もしくは押し下げる(屈曲方向によって異なる)。もちろん、屈曲方向が左右であれば、左右に従って、膨張する収容袋61が埋設管2の屈曲を修正する。
【0105】
ここで、収容袋61は、空隙201に挿入された場合において、埋設管2に交差する方向における膨張量が、埋設管2の平行方向における膨張量よりも大きいことが好適である。この結果、収容袋61の膨張は、埋設管2を押し出す方向により働くことになって、収容袋61は、埋設管2の屈曲や湾曲を、確実に修復できるようになる。仮に、埋設管2の平行方向における膨張量が大きい場合には、収容袋61は、空隙201を拡張するかのように広がるばかりとなって、埋設管2の屈曲を修復する力を生じさせにくい。
【0106】
また、空隙201に挿入された状態において、埋設管2に交差する方向における収容袋61の膨張率は、埋設管2の平行方向における収容袋61の膨張率よりも大きいことも好適である。この結果、収容袋61は、膨張剤の注入によって、埋設管2との交差方向に大きく膨張することになる。この交差方向への膨張によって埋設管2が屈曲外側から屈曲内側に押し出されるようになり、埋設管2の屈曲が修正される
【0107】
あるいは、空隙201に挿入された状態において、鉛直方向における収容袋61の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における収容袋61の膨張量および膨張率の少なくとも一方よりも大きいことも好適である。埋設管2が図13のように下方向に屈曲している場合や上方向に屈曲している場合には、収容袋61は、鉛直方向に大きく膨張することになって、埋設管2を押し上げたり押し下げたりできる。これにより、埋設管2の屈曲は、確実に修正されるようになる。
【0108】
特に、空隙201に挿入された状態において、収容袋61は、膨張剤の注入によって埋設管2の延伸方向と交差する方向に膨張することが好ましい。この場合にも、膨張剤の注入によって膨張する収容袋61は、埋設管2を屈曲内側に押し出すようになる。この結果、膨張する収容袋61は、埋設管2の屈曲を確実に修正できる。
【0109】
以上のように、収容袋61の膨張量および膨張率が制御されていることで、収容袋61の膨張によって、埋設管2の屈曲が確実に補修される。特に、膨張剤が空隙201に直接注入される参考技術と異なり、(1)膨張剤が収容袋61に注入されることで膨張剤が土砂中に混入しない、(2)収容袋61が埋設管2の屈曲や湾曲を押し戻す方向に大きく膨張することで、空隙201の形状や大きさによらず、確実に埋設管2を押し戻す、との2つの作用によって、埋設管補修装置1は、埋設管2の屈曲や湾曲を確実に補修できる。
【0110】
以上は、埋設管2が湾曲している場合でも同様である。
【0111】
(収容袋61の特性)
収容袋61では、埋設管2に交差する方向における膨張量が、埋設管2の平行方向における膨張量よりも大きい。収容袋61は、空隙201に挿入されるが、挿入された状態で、収容袋61が、埋設管2に交差する方向により大きく膨張することで、屈曲している埋設管2を押し上げるようになるからである。ここで、空隙201にどのような状態で収容袋61が挿入されるかは状況によるが、収容袋61が備える開口部は、注入ユニット8の口に接続されるので(注入ユニット8から膨張剤が収容袋61に注入される必要があるため)、収容袋61は、開口部を上向きにして空隙201に挿入されるようになる。もちろん、空隙201が埋設管2の上や横である場合には、これに合わせた向きで空隙201に挿入されるようになる。後者の場合でも、収容袋61は、屈曲外側から開口部を基点に遠ざかる方向に収容されるようになる。
【0112】
このため、収容袋61は、開口部から開口部と対向する端部にかけての方向が、埋設管2と交差する方向に沿うようになる。すなわち、収容袋61は、開口部から縦方向における膨張量(膨張率)が、横方向における膨張量(膨張率)よりも大きいことで、空隙201において収容袋61が埋設管2に交差する方向に、大きく膨張するようになる。
【0113】
このように、開口部を基準に縦方向の膨張量(膨張率)が、横方向の膨張量(膨張率)よりも大きい収容袋61が用いられることで、空隙201において、屈曲や湾曲した埋設管2を元に戻す圧力を、確実に生じさせることができるようになる。
【0114】
例えば、収容袋61の縦方向の膨張率(伸び率)は、横方向の膨張率よりも10%以上大きいことが好適である。縦方向の膨張率が、横方向の膨張率よりも10%以上大きいことで、空隙201において、収容袋61は埋設管2に交差する方向により膨張しやすくなり、屈曲している埋設管2の屈曲を戻す方向に圧力を掛けやすくなるからである。また、横方向の膨張率が縦方向の膨張率よりも小さいことで、膨張剤が注入されても、埋設管2の平行方向に収容袋61が膨張することが少なくなり、埋設管2に対する圧力が、分散してしまうことも無くなる。
【0115】
あるいは、収容袋61の縦方向の引き張り強さが、横方向の引き張り強さの20%以上大きいことも好適である。このような特性を有することで、収容袋61は、埋設管2と交差する方向により大きく膨張し、埋設管2と平行方向においては膨張しすぎないようになるからである。
【0116】
また、収容袋61の縦方向の引き張り強さが横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、収容袋61の縦方向の引裂強さが横方向の引裂強さよりも小さいことも好適である。収容袋61は、横方向よりも縦方向に膨張しやすいことが求められる。このとき、引き張り強さについては縦方向が横方向よりも大きく、引裂強さについては横方向が縦方向よりも大きいことで、収容袋61は、膨張剤の注入に合わせて縦方向に膨張しやすくなる。この結果、屈曲している埋設管2に対して、屈曲を元に戻す方向への圧力が掛かるようになる。
【0117】
なお、収容袋61は、繊維の編み込みによって製造されれば良いが、この場合には、縦方向の密度が横方向の密度よりも大きいことも好適である。
【0118】
ここで、埋設管補修装置1は、角度検出機能を備えておくことで、埋設管2の屈曲や湾曲が無くなったことを確認できる。
【0119】
(充填材の注入)
埋設管2がまっすぐに戻ると、埋設管2の周囲は、土砂が除去された領域のみを空隙として残す。この空隙が残ったままであると、まっすぐになった埋設管2が、次に上向きに屈曲することも生じうる。このため、上向きに屈曲することを防止するために、土砂が除去されて生じた空隙を充填する必要がある。図14は、本発明の実施の形態1における充填材の注入を示す説明図である。図14は、空隙となった除去領域に充填材62が注入される様子を示している。
【0120】
埋設管補修装置1は、空隙201に膨張材61が注入されて埋設管2がまっすぐになったところで、注入ユニット6を介して土砂が除去された除去領域202に充填材62を注入する。このとき、注入ユニット6は、第1貫通孔7を通じて充填材62を注入する。充填材62は、既にその体積が確定している空隙である除去領域に注入されるので、膨張材61と異なり膨張する素材でなくともよい。もちろん膨張する素材でも良い。また、空隙201における場合と同様に、収容袋によって除去領域202が充填されても良い。
【0121】
注入ユニット6が、除去領域202に生じた空隙に充填材を注入することで、埋設管2の屈曲部分の周辺は、空隙がなくなって、まっすぐに補修された埋設管2の以降の変形や屈曲が防止できる。充填材62は、膨張剤と同様に、本体部3に収容されてもよいし、本体部3に接続される運搬路によって外部から供給されても良い。
【0122】
以上の手順によって、実施の形態1の埋設管補修装置1は、埋設管2の屈曲や湾曲などの変形を補修できる。すなわち、下記の手順を含む埋設管補修方法によって、屈曲や湾曲などの変形した埋設管2を、人力によらず補修できる。なお、注入ユニット6は、第2貫通孔8を通じて収容袋61や膨張剤を注入する機能を有していればよいので、穿孔ユニット4と共通の部材であってもよい。穿孔ユニット4がドリルなどの埋設管2を穿孔する部材に加えて、液体や固体を噴出させるノズルを備えておくことで、穿孔ユニット4が第2貫通孔8を穿孔した後で、このノズルを通じて空隙201に収容袋61や膨張剤を注入する。注入ユニット6が穿孔ユニット4と同一部材であることで、第2貫通孔8が穿孔されると即座に膨張材61が注入できる。
【0123】
加えて、穿孔ユニット4は、除去ユニット5と共通の部材であってもよい。除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて、除去領域202の土砂を除去する。このとき、除去ユニット5は、空気、水、溶解液などを噴射する機能を発揮するが、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7が穿孔されたのに続いて、除去領域202の土砂が除去されれば良い。このことから、穿孔ユニット4がノズルを備えており、このノズルが除去ユニット5の機能である空気や水などの噴射を行えばよい。
【0124】
更には、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6は、共通の部材であってもよい。例えば、穿孔ユニット4が貫通孔を穿つドリルとノズルとを備えておけば、穿孔ユニット4は、第1貫通孔7を穿孔した後で、第1貫通孔7よりノズルを除去領域202に挿入して土砂を除去できる。このように、穿孔ユニット4がドリルなどの掘削機構とノズルとを備えておくことで、穿孔ユニット4は、貫通孔の形成、土砂の除去および膨張材や充填材の注入を行うことができる。
【0125】
以上のように、実施の形態1における埋設管補修装置1は、埋設管2内部に作業者が入り込んだり、埋設管2を掘り起こしたりすること無く、埋設管2の屈曲や湾曲などの変形を補修できる。また、実施の形態1で説明した埋設管補修装置1は、埋設管補修方法に適用されることも当然に可能である。
【0126】
(実施の形態2)
【0127】
次に、実施の形態2について説明する。
【0128】
実施の形態2では、埋設管補修装置や埋設管補修方法の各部の詳細や変形例などについて説明する。
【0129】
(本体部)
本体部3は、埋設管2内部を移動可能である。更に、埋設管2の補修に必要となる穿孔ユニット4、除去ユニット5、注入ユニット6を備える。本体部3は、これらのユニットのそれぞれを格納したり外部に出したりする。このため、本体部3は、格納する機構や空間を備えている。あるいは、本体部3は、これらの各ユニットをその外部表面に取り付けておいてもよい。外部表面に取り付けておいて、各ユニットのそれぞれは、必要な作業時に突出する。また、各ユニットが本体部3によって牽引されて、補修領域において各ユニットが動作しても良い。要するに各ユニットは、本体部3によって補修領域に運搬されて、補修領域において作業のための動作を行えればよい。
【0130】
本体部3は、注入ユニット6を通じて注入する膨張材61や充填材62を収容する。例えば、本体部3はその内部に収容タンクを設けており、この収容タンクが必要となる膨張材61や充填材62を収容する。このとき、膨張材61と充填材62とが異なるタンク層に収容されることも好適である。また、本体部3は、埋設管2外部と接続可能な管路を備えており、この管路を通じて膨張材61や充填材62の供給を受けても良い。
【0131】
本体部3は、移動可能とするために車輪を備える。もちろん車輪だけでなく、クローラやタイヤなどを備えても良い。特に、埋設管2内部は変形している可能性もあるので、クローラなどの走行能力の高い部材が用いられることが好適である。
【0132】
また、本体部3は、埋設管2における補修領域において停止できる位置決め制御部を備えておくことが好適である。位置決め制御部は、ジャイロやGPS機能を備えることで、本体部3(すなわち埋設管補修装置1)を、所定の補修領域で停止させることができる。ジャイロやGPS機能は、一般的に知られる公知技術が用いられれば実現可能である。あるいは、予め補修領域が検出されている状態であって、補修領域は、埋設管2の入り口(埋設管補修装置1の入り口)より所定の距離に位置することが分かっている場合には、位置決め制御部は、走行距離を測定できる機能を備えておけばよい。この走行距離から、位置決め制御部は、埋設管補修装置1を停止させるべき位置を把握できる。
【0133】
あるいは、位置決め制御部は、本体部3の姿勢を検出する姿勢検出部を更に備えていることもよい。埋設管2は、上下方向における勾配や左右方向における進行方向は一定であり、勾配や進行方向に急変が生じる場所は、埋設管2に屈曲や湾曲などの変形が生じていることを示す。位置決め制御部は、この姿勢検出部によって、姿勢の急変する位置を把握し、この位置が埋設管補修装置1の停止位置であると把握する。
【0134】
もちろん、本体部3が監視カメラを備えておき、監視カメラの画像に基づいて埋設管補修装置1の停止位置が決定されても良い。監視カメラからの画像が送信されて、作業者がこの画像を監視することで埋設管補修装置1の停止位置を制御してもよい。あるいは、監視カメラからの画像を受け取った位置決め制御部が、画像を判断して、埋設管補修装置1の停止位置を決定しても良い。例えば、画像処理によって、位置決め制御部は、本体部3の動作ベクトルの急激な変化を算出し、この急激な変化を生じさせた位置が停止位置であると判断する。
【0135】
また、位置決め制御部は、埋設管補修装置1が埋設管2内部を走行しながら、埋設管2の変形位置(補修領域)を検出することで停止位置を決定しても良い。あるいは、予め埋設管2の変形位置(補修領域)が特定されている場合には、この位置を特定する情報に基づいて停止位置を決定しても良い。
【0136】
(補修領域の決定)
図15は、本発明の実施の形態2における埋設管補修装置のブロック図である。埋設管補修装置1は、位置決め制御部9および姿勢検出部91を備えている。位置決め制御部9は、上述の通り、埋設管補修装置1の埋設管2内部での停止位置を決定する。
【0137】
また、位置決め制御部9は、姿勢検出部91を備えている。姿勢検出部91は、本体部3の姿勢を検出する。埋設管2は、複数の管路21(コンクリート、金属、樹脂などで形成されている)が継ぎ手22によって接続されているので、特殊な継ぎ手による分岐やカーブなどを除けば、まっすぐに延伸する。このため、埋設管2は、上下方向に生じる勾配、左右方向に生じる進行方向以外の方向性を有さないのが一般的であり、埋設管2内部そのものはまっすぐの状態である。
【0138】
姿勢検出部91は、埋設管2内部を移動する本体部3の姿勢を検出する。例えば、姿勢検出部91は、本体部3の上下方向の勾配や左右の進行方向のベクトルを検出する。埋設管2に変形が無ければ、姿勢検出部91は、ベクトルの変化を検出しない。一方、埋設管2に屈曲や湾曲などの変形が生じていれば、勾配や進行方向のベクトルに変化が発生する。姿勢検出部91は、このベクトルの変化を検出する場合に、この変化を生じさせた位置が変形している位置(すなわち補修の対象となる補修領域)であると判断する。
【0139】
図16は、姿勢検出部91によって本体部3の姿勢を検出することで、補修領域を検出する様子を示している。図16は、本発明の実施の形態2における補修領域を検出する状態を説明する説明図であり、屈曲している埋設管2内部を移動する埋設管補修装置1の移動経路を示している。
【0140】
姿勢検出部91は、本体部3の移動経路における本体部3の姿勢を検出する。姿勢は、動きベクトルや測位などによって検出される。図16においては、埋設管2は、あるところまではまっすぐの状態を維持しているが、継ぎ手22において屈曲している。これは、継ぎ手22の下側に空隙201が生じているからである。この空隙201によって、継ぎ手22の上下の圧力バランスが悪くなって屈曲している。
【0141】
埋設管2がまっすぐな状態においては、本体部3の移動経路は、破線Bのようにまっすぐになるはずである。しかしながら、継ぎ手22が屈曲しているために、継ぎ手22の部分で本体部3の移動経路は、実線Aのように屈曲する。この破線Bおよび実線Aのそれぞれは、本体部3の移動方向のベクトルを示す。姿勢検出部91は、この移動方向のベクトルから、本体部3の姿勢が急激に変化する位置を検出できる。図16では、継ぎ手22の部分で、移動方向のベクトルが急激に変化している(本来あるべき破線Bから実線Aに変化している)ので、この位置において姿勢が急変している。この結果、姿勢検出部91は、継ぎ手22の部分が、屈曲や湾曲などの変形位置であることを判断できる。
【0142】
姿勢検出部91がこの移動方向ベクトルの変化を算出することで、埋設管補修装置1は、埋設管2において補修すべき補修領域を検出できる。
【0143】
姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を位置決め制御部9に出力する。位置決め制御部9は、受け取った位置情報に基づいて、本体部3の移動を停止させ、補修作業を行える位置に埋設管補修装置1を停止させる。また、姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を、通信手段(無線通信あるいは有線通信であって、公知技術として知られている通信手段)によって埋設管2外部で作業する作業者(作業者が使用する端末)に通知する。この通知に基づいて、作業者が位置決め制御部9の遠隔操作を介して、埋設管補修装置1の作業位置を決定して停止させる。
【0144】
姿勢検出部91は、検出した補修領域の位置情報を制御部10に出力する。制御部10は、穿孔ユニット4、除去ユニット5および注入ユニット6の動作を制御する。制御部10は、姿勢検出部91から受け取った補修領域の位置を確認し、穿孔ユニット4などを動作させて、実施の形態1で説明したように埋設管2の補修を行う。
【0145】
また、姿勢検出部91は、位置情報を埋設管2外部の作業者(あるいは作業者の端末)に出力する。作業者は、この位置情報に基づいて、位置決め制御部9を遠隔制御して埋設管補修装置1を停止させる。更に、作業者は制御部10を制御することで、穿孔ユニット4などを動作させて埋設管2の補修を行う。
【0146】
以上のように、姿勢検出部91によって、埋設管補修装置1が補修のために停止すべき位置が検出され、位置決め制御部9による停止制御によって、埋設管補修装置1による埋設管2の補修が実行される。
【0147】
(監視ユニット)
埋設管補修装置1を用いた埋設管2の補修においては、作業者の便宜のために、埋設管補修装置1とセットとなる監視ユニットが備えられても良い。
【0148】
図17は、本発明の実施の形態2における埋設管補修の状態を示す説明図である。図17は、埋設管補修装置1とセットとなり、補修領域や補修領域での補修の状況の画像を撮像して、撮像画像を送信する監視ユニット30を示している。監視ユニット30は、埋設管補修装置1および補修領域を撮像できる撮像部31、撮像した画像を送信する送信部32と、を備えている。送信部32は、無線通信および有線通信のいずれかによって撮像した画像を、作業者に送信する。図17では、有線通信に用いられる信号ケーブル33が示されている。信号ケーブル33は、外部の表示手段などと接続しており、撮像画像を送信する。
【0149】
作業者は、埋設管2の外部において、送られてくる撮像画像を確認しながら、監視ユニットや埋設管補修装置1を操作する。操作に当たっては、操作端末が用いられる。作業者が遠隔的に操作している状況を図18に示す。図18は、本発明の実施の形態2における埋設管補修方法の実施を示す説明図である。
【0150】
作業者50は、埋設管2の外部において操作端末40を操作することで、埋設管2内部を移動する埋設管補修装置1の動作を制御する。操作端末40は、表示装置41を備えており、表示装置41は、監視ユニット30から送信されてくる撮像画像を表示する。作業者50は、表示手段41に表示される撮像画像を見ながら埋設管補修装置1を制御する。このとき、操作端末40は、無線通信もしくは有線通信によって、操作端末40に入力された命令を埋設管補修装置1に出力する。埋設管補修装置1は、自律して動作する以外の動作においては、この操作端末40から送信される命令に従った動作を行う。
【0151】
例えば、操作端末40は、埋設管補修装置1の制御部10に命令を信号として出力する。この信号を受けた制御部10は、埋設管補修装置1を所定位置で停止させたり、穿孔ユニット4などの動作を制御したりする。
【0152】
これらの作業においては、実際の補修領域での作業状態が見える状態であることが、適切な補修作業においては好ましい。表示装置41に監視ユニット40からの撮像画像が表示されるので、作業者50は、この画像を確認しながら、適切な命令を埋設管補修装置1に出力できる。例えば、補修領域での作業であるかを確認できるし、補修の進行状態を確認することもできる。監視ユニット30によって、作業者50が、補修の状態を確認しながら補修を実施できるようになる。
【0153】
作業者50は、次の手順で埋設管2の変形を補修する。
(1)埋設管補修装置1と監視ユニット30を、対象となる埋設管2に投入する。作業者50は、埋設管補修装置1と監視ユニット30とを、操作端末40からの命令によって埋設管2内部を移動させる。
(2)埋設管補修装置1は、姿勢検出部91の動作によって、埋設管2の変形部分を特定する。特定すると、特定できた補修領域の位置情報を、姿勢検出部91は、操作端末40に送信する。
(3)作業者50は、特定された補修領域の位置情報に基づいて、補修領域の撮像画像(監視ユニット30が撮像する)を、表示手段41によって確認する。
(4)作業者50は、確認した画像によっては、埋設管補修装置1の停止位置を制御する。このとき、操作端末40からの命令信号によって制御する。
(5)作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7を穿孔することを命じる。命令を受けた穿孔ユニット4は、埋設管2の屈曲内側の位置に、第1貫通孔7を穿孔する。
(6)作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、除去ユニット5によって除去領域の土砂を除去することを命じる。この命令を受けた除去ユニット5は、第1貫通孔7を通じて空気圧や水圧を掛けることで、除去領域の土砂を除去する。なお、除去の工程を、監視ユニット30から送信される撮像画像によって、作業者50は確認できる。
(7)次に、作業者50は、操作端末40を通じて、埋設管補修装置1に、穿孔ユニット4によって第1貫通孔7と対向する位置(異なる位置であって、空隙201に接続される位置であればよい)に第2貫通孔8を穿孔することを命じる。この命令を受けた穿孔ユニット4は、第2貫通孔8を穿孔する。なお、この穿孔においては、監視ユニット30から送信される画像を確認しながら、作業者50は、正確な位置に第2貫通孔8を穿孔できる。
(8)次に、作業者50は、操作端末40を通じて埋設管補修装置1に対して、注入ユニット6によって空隙201に収容袋61を挿入することを命じる。更に、注入ユニット6によって、収容袋61に膨張剤を注入することを命じる。作業者50は、監視ユニット30から送信される撮像画像を確認しながら収容袋61の膨張に伴う埋設管2の上昇を確認できる。屈曲している埋設管2がまっすぐになったことを確認して(作業者50が、監視ユニット30からの画像で確認しても良いし、姿勢検出部91から送信される本体部3の姿勢の値によって確認しても良い)、膨張材の注入が終了する。
(9)次いで、作業者50は、操作端末40を通じて埋設管補修装置1に対して、注入ユニット6によって除去領域に充填材62を注入することを命じる。この命令によって、注入ユニット6は、第1貫通孔7を通じて除去領域に生じた空隙に、充填材を注入する。この充填材62の注入によって、まっすぐに戻された埋設管2の周囲は、確実に固定される。
【0154】
以上のように、作業者50が操作端末40を通じて、埋設管補修装置1を操作しながら埋設管2の変形を補修できる。もちろん、上述の(1)〜(9)の手順の一部もしくは全部が、埋設管補修装置1によって自動で行われても良い。このように、監視ユニット30や操作端末40が備わることで、埋設管2の補修がより容易となる。
【0155】
なお、監視ユニット30は、図17では、埋設管補修装置1と別の装置となっているが、一体の装置であってもよい。
【0156】
以上のように、実施の形態2における埋設管補修装置および埋設管補修方法は、埋設管内部に作業者が入ったり、埋設管を掘り起こしたりすること無く、容易かつ確実に埋設管2の変形を補修できる。
【0157】
以上、実施の形態1〜2で説明された埋設管補修装置、埋設管補修方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0158】
1 埋設管補修装置
2 埋設管
21 管路
22 継ぎ手
23、24 内壁
201 空隙
202 除去領域
3 本体部
4 穿孔ユニット
5 除去ユニット
6 注入ユニット
61 収容袋
62 充填材
7 第1貫通孔
8 第2貫通孔
9 位置決め制御部
91 姿勢検出部
10 制御部
30 監視ユニット
40 操作端末
41 表示装置
50 作業者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、
前記埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および前記第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、
前記第1貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、
前記第2貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、前記収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張量は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい、埋設管補修装置。
【請求項2】
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張率は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張率よりも大きい、請求項1記載の埋設管補修装置。
【請求項3】
前記空隙に挿入された状態において、鉛直方向における前記収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における前記収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方より大きい、請求項1又は2記載の埋設管補修装置。
【請求項4】
前記空隙に挿入された前記収容袋は、前記膨張剤の注入によって、前記埋設管の延伸方向と交差する方向に膨張する、請求項1から3のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項5】
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔のそれぞれは、前記埋設管において相互に対向する位置にある、請求項1から4のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項6】
前記埋設管の前記補修領域が屈曲している場合には、前記第1貫通孔は、前記埋設管の屈曲内側に位置し、前記第2貫通孔は、前記埋設管の屈曲外側に位置する、請求項1から5のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記埋設管内部を移動可能な駆動部を備えている、請求項1から6のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項8】
前記本体部は、前記埋設管における前記補修領域を決める位置決め制御部を備える、請求項1から7のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項9】
前記穿孔ユニットは、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを有する、請求項1から8のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項10】
前記除去ユニットはノズルを備え、前記除去ユニットは前記第1貫通孔から前記ノズルを突出させて空気圧および水圧の少なくとも一方によって、前記除去領域の土砂を除去する、請求項1から9のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項11】
前記注入ユニットは、前記除去領域での土砂の除去が行われた後で、前記第2貫通孔を通じて、前記収容袋を挿入して膨張剤を注入する、請求項1から10のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項12】
前記注入ユニットは、前記膨張材の注入が行われた後で、前記第1貫通孔を通じて、前記除去領域に充填材を注入する、請求項1から11のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項13】
前記埋設管の補修の行われる補修領域を撮像可能な撮像部と、前記補修領域の撮像画像を送信する送信部と、を備える監視ユニットを更に備える、請求項1から12のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項14】
前記本体部は、ジャイロ機構を用いて、前記埋設管の湾曲、屈曲、内径変化および変形の少なくとも一つを算出する、請求項1から13のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項15】
前記収容袋は、開口部を備え、前記開口部を基準とした縦方向の膨張率が、前記開口部を基準とした横方向の膨張率よりも、10%以上大きい、請求項1から14のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項16】
前記収容袋は、前記開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが、前記開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも、20%以上大きい、請求項15記載の埋設管補修装置。
【請求項17】
前記収容袋は、前記開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが前記開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、前記縦方向の引裂強さが前記横方向の引裂強さよりも小さい、請求項15又は16記載の埋設管補修装置。
【請求項18】
地中に埋設されている埋設管内部において前記埋設管を補修する埋設管補修法であって、
前記埋設管の補修領域における所定位置での第1貫通孔および前記第1貫通孔と異なる位置での第2貫通孔を穿孔する穿孔ステップと、
前記第1貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)土砂を除去する除去ステップと、
前記第2貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、前記収容袋に膨張剤を注入する注入ステップと、を備え、
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張量は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい、埋設管補修方法。
【請求項1】
地中に埋設されている埋設管内部を移動可能な本体部と、
前記埋設管の補修領域における所定位置の第1貫通孔および前記第1貫通孔と異なる位置の第2貫通孔を穿孔する穿孔ユニットと、
前記第1貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)の土砂を除去する除去ユニットと、
前記第2貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、前記収容袋に膨張剤を注入する注入ユニットと、を備え、
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張量は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい、埋設管補修装置。
【請求項2】
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張率は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張率よりも大きい、請求項1記載の埋設管補修装置。
【請求項3】
前記空隙に挿入された状態において、鉛直方向における前記収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方が、平面方向における前記収容袋の膨張量および膨張率の少なくとも一方より大きい、請求項1又は2記載の埋設管補修装置。
【請求項4】
前記空隙に挿入された前記収容袋は、前記膨張剤の注入によって、前記埋設管の延伸方向と交差する方向に膨張する、請求項1から3のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項5】
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔のそれぞれは、前記埋設管において相互に対向する位置にある、請求項1から4のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項6】
前記埋設管の前記補修領域が屈曲している場合には、前記第1貫通孔は、前記埋設管の屈曲内側に位置し、前記第2貫通孔は、前記埋設管の屈曲外側に位置する、請求項1から5のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記埋設管内部を移動可能な駆動部を備えている、請求項1から6のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項8】
前記本体部は、前記埋設管における前記補修領域を決める位置決め制御部を備える、請求項1から7のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項9】
前記穿孔ユニットは、コアドリル、ドリルおよびホールソーの少なくとも一つを有する、請求項1から8のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項10】
前記除去ユニットはノズルを備え、前記除去ユニットは前記第1貫通孔から前記ノズルを突出させて空気圧および水圧の少なくとも一方によって、前記除去領域の土砂を除去する、請求項1から9のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項11】
前記注入ユニットは、前記除去領域での土砂の除去が行われた後で、前記第2貫通孔を通じて、前記収容袋を挿入して膨張剤を注入する、請求項1から10のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項12】
前記注入ユニットは、前記膨張材の注入が行われた後で、前記第1貫通孔を通じて、前記除去領域に充填材を注入する、請求項1から11のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項13】
前記埋設管の補修の行われる補修領域を撮像可能な撮像部と、前記補修領域の撮像画像を送信する送信部と、を備える監視ユニットを更に備える、請求項1から12のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項14】
前記本体部は、ジャイロ機構を用いて、前記埋設管の湾曲、屈曲、内径変化および変形の少なくとも一つを算出する、請求項1から13のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項15】
前記収容袋は、開口部を備え、前記開口部を基準とした縦方向の膨張率が、前記開口部を基準とした横方向の膨張率よりも、10%以上大きい、請求項1から14のいずれか記載の埋設管補修装置。
【請求項16】
前記収容袋は、前記開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが、前記開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも、20%以上大きい、請求項15記載の埋設管補修装置。
【請求項17】
前記収容袋は、前記開口部を基準とした縦方向の引き張り強さが前記開口部を基準とした横方向の引き張り強さよりも大きいと共に、前記縦方向の引裂強さが前記横方向の引裂強さよりも小さい、請求項15又は16記載の埋設管補修装置。
【請求項18】
地中に埋設されている埋設管内部において前記埋設管を補修する埋設管補修法であって、
前記埋設管の補修領域における所定位置での第1貫通孔および前記第1貫通孔と異なる位置での第2貫通孔を穿孔する穿孔ステップと、
前記第1貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第1貫通孔周辺の領域(以下、「除去領域」という)土砂を除去する除去ステップと、
前記第2貫通孔を通じて、前記埋設管の外部であって前記第2貫通孔周辺の空隙に収容袋を挿入して、前記収容袋に膨張剤を注入する注入ステップと、を備え、
前記空隙に挿入された状態において、前記埋設管に交差する方向における前記収容袋の膨張量は、前記埋設管の平行方向における収容袋の膨張量よりも大きい、埋設管補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−40513(P2013−40513A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178627(P2011−178627)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(509121019)株式会社春田建設 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(509121019)株式会社春田建設 (7)
【Fターム(参考)】
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