説明

埋設計器設置方法および埋設計器保持装置

【課題】被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置するに際し、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性を向上させ得る埋設計器設置方法および埋設計器保持装置を提供する。
【解決手段】埋設計器をボーリング孔内の埋設計器設置深度まで挿入するとともに、ボーリング孔内の埋設計器の近傍かつ削孔口側部分と削孔口近傍部分とにそれぞれパッカーを配置する。次いで、各パッカー内に硬化性止水材料を注入してボーリング孔の内周面に密着するまでそれぞれ膨張させる。次いで、その膨張させたパッカー同士のつくる区画部内に、パッカー用の配管や埋設計器の信号線を囲繞するように硬化性止水材料を注入するとともにその区画部内の水をボーリング孔外に導き出す。そして、区画部内が水から硬化性止水材料に入れ替わった後に注入および導き出した孔外の部分をそれぞれ閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置する方法、およびこれに好適に用い得る埋設計器保持装置に係り、特に、そのボーリング孔の止水に好適な埋設計器設置方法および埋設計器保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤中のボーリング等の削孔の止水は、例えば図6(b)に示すように、孔口を木栓、膨張性のゴム栓、急結モルタル、ベントナイト等による止水キャッピング109をして、孔内充填用の注入ホース110をボーリング孔60に挿入しておき、その注入ホース110からボーリング孔60内にセメントモルタル等の充填材を充填して止水している。この際、ボーリング孔60内に水がある場合には、その水を充填材と置換させるのは一般的なグラウト手法である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、例えば図6(a)に示すように、被圧水下におけるボーリング孔60内に間隙水圧計等の間隙水圧計1を設置する場合は、埋設計器設置深度に設置したパッカー2でボーリング孔60内の止水をするものの、間隙水圧計等の埋設計器は、ボーリング孔外まで延びる信号線6を有しており、また、パッカー2も配管4、5が配管されており、これらが孔外まで延びているので、上記グラウト手法をそのまま適用することはできない。特に、地盤中のボーリング等の周辺地盤中のクラック等から湧水が発生し、その湧水圧が高い場合には孔口側での止水が困難であった。
【0004】
ここで、この種の、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置する技術としては、例えば特許文献2に記載の技術が開示されている。
この特許文献2に記載の技術では、ボーリング孔内に挿入される管に、その管の内外をそれぞれ閉塞するための管内パッカーと外周パッカーとからなるパッカーを複数備えている。そして、それらパッカーを間隙水圧計に対して適宜設けることで、パッカーによって区画された所望の領域での水圧測定を可能としている。
【特許文献1】特開2002−13153号公報
【特許文献2】特開2002−276277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、間隙水圧計等の埋設計器は、ボーリング孔外まで延びる信号線を有しており、また、各パッカーには、パッカー内に流体を送り込むための配管が接続されている。そのため、例えば特許文献2に記載の技術では、管内パッカーは、パッカー用の配管や埋設計器の信号線を取り囲みつつ膨張することになるので、パッカー用の配管や埋設計器の信号線の周囲には隙間が生じる。したがって、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性が不十分となる。このことは、仮にパッカー用の配管や埋設計器の信号線を外周パッカー側から配管ないし配線した場合であっても同様である。そして、この問題は、湧水圧が高い場合にはより顕著であり、この場合、従来は止水が不可能であった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置するに際し、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性を向上させ得る埋設計器設置方法および埋設計器保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置する方法であって、前記埋設計器を前記ボーリング孔内の埋設計器設置深度まで挿入するとともに、前記ボーリング孔内の前記埋設計器の近傍かつ削孔口側部分と削孔口近傍部分とにそれぞれパッカーを配し、各パッカー内に硬化性止水材料を注入して前記ボーリング孔の内周面に密着するまでそれぞれ膨張させ、その膨張させたパッカー同士のつくる区画部内に、パッカー用の配管および埋設計器の信号線を囲繞するように硬化性止水材料を注入するとともに、その区画部内の水をボーリング孔外に導き出し、区画部内が水から硬化性止水材料に入れ替わった後に注入および導き出した孔外の部分をそれぞれ閉塞することを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、被圧水下におけるボーリング孔内に設置される間隙水圧計等の埋設計器を保持するとともに、そのボーリング孔を止水するための埋設計器保持装置であって、先端に前記埋設計器が装着されて前記ボーリング孔内の埋設計器設置深度まで挿入される埋設計器装着管と、この埋設計器装着管よりも前記ボーリング孔内の削孔口寄りの位置に挿入される削孔口側挿入管と、この削孔口側挿入管の孔外側の端部を閉塞する端部閉塞蓋と、を備え、前記埋設計器装着管には、その外周に、ボーリング孔の内周面に密着するまで膨張可能な第一のパッカーが装着され、この第一のパッカーには、その内部に硬化性止水材料を注入可能な第一の注入管と、その注入される硬化性止水材料を第一のパッカー内部から排出可能な第一の排出管と、がそれぞれ配管されており、前記削孔口側挿入管には、その外周に、ボーリング孔の内周面に密着するまで膨張可能な第二のパッカーが装着され、この第二のパッカーには、その内部に硬化性止水材料を注入可能な第二の注入管が配管されており、前記端部閉塞蓋には、硬化性止水材料を注入するための注入用バルブが設けられ、この注入用バルブに前記第一および第二のパッカー同士の間でボーリング孔内につくる区画部内まで延びる区画部注入管が配管されており、さらに、前記削孔口側挿入管は、その管内に、前記区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および埋設計器の信号線がそれぞれ挿通されるようになっており、その側面に、前記区画部内に注入される硬化性止水材料を排出可能に設けられた排出バルブを備えており、また、前記端部閉塞蓋は、前記埋設計器の信号線を孔外に水密しつつ導き出して保持可能な信号線導出部を有することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、ボーリング孔内の埋設計器側と削孔口側とにそれぞれ配したパッカーによって、二つのパッカーを膨張させて、ボーリング孔内に区画部を形成することができる。これにより、その区画部内に浸入する水を二つのパッカーで抑制することができる。そして、この区画部内に硬化性止水材料を注入し、区画部内のパッカー用の配管や埋設計器の信号線を、その注入した硬化性止水材料で囲繞することができる。ここで、注入される硬化性止水材料は液状なので、区画部内のパッカー用の配管や埋設計器の信号線の周囲隅々にまで行き渡らせることができる。そのため、パッカー用の配管や埋設計器の信号線の周囲に隙間がほとんど生じない。したがって、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性を向上させることができる。
【0010】
ここで、本発明に係る埋設計器保持装置において、ボーリング孔の削孔口部分の孔壁を支えるケーシングと、このケーシングおよび削孔口の周囲に打設されるコンクリートベースを相互に繋ぐための連結部材と、をさらに備える構成とすれば好ましい。このような構成であれば、ケーシングが水圧で押し上げられることを防ぐ上で好適である。
【0011】
また、本発明に係る埋設計器保持装置は、前記削孔口側挿入管、区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および第二の注入管のうち少なくとも一つの外周面に、その周囲を囲繞するパッキングを有する構成とすれば好ましい。このような構成であれば、当該少なくとも一つの外周面と注入される硬化性止水材料との相互間をより好適に水密することができる。また、この構成において、前記パッキングは、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて複数箇所に設けられていればより好ましい。このような構成であれば、当該少なくとも一つの外周面と注入される硬化性止水材料との相互間をより好適に水密することができる。
【0012】
また、本発明に係る埋設計器保持装置は、前記削孔口側挿入管、区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および第二の注入管のうち少なくとも二つの外周面に、その周囲を囲繞する複数のパッキングをそれぞれ有しており、当該複数のパッキングは、各外周面毎に、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて設けられており、さらに、各外周面相互のパッキングは、前記ボーリング孔の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられていればより好ましい。このような構成であれば、当該少なくとも二つの外周面と注入される硬化性止水材料との相互間をより好適に水密することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置するに際し、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る埋設計器保持装置の一実施形態を説明する図であり、同図は、この埋設計器保持装置を用いて、埋設計器がボーリング孔内の埋設計器設置深度に埋設されている状態を示している。ここで、この埋設計器保持装置は、被圧水下におけるボーリング孔内に設置される間隙水圧計等の埋設計器を保持するとともに、そのボーリング孔を止水するものである。
【0015】
詳しくは、同図に示すように、この埋設計器保持装置10は、ボーリング孔60内の埋設計器設置深度まで挿入される埋設計器装着管20と、削孔口近傍部分に挿入される削孔口側挿入管であるパッカー取付管13と、このパッカー取付管13の孔外側の端部を閉塞するための略円盤状の端部閉塞蓋18と、を備えている。
埋設計器装着管20には、その先端側に、埋設計器として間隙水圧計1が装着される。この間隙水圧計1はボーリング孔外まで延びる信号線である計器信号ケーブル6を有している。なお、埋設計器装着管20の削孔口側の端部には、押込みロッド3を着脱するための脱着金具24が装着されている。
【0016】
さらに、埋設計器装着管20の外周には、ボーリング孔の内周面に密着するまで膨張可能な第一のパッカー2が間隙水圧計1の近傍かつ削孔口側部分(この例では間隙水圧計1の直上部分)に装着されている。この第一のパッカー2には、第一の注入ホース4と、第一の排出ホース5と、がそれぞれ配管されている。第一の注入ホース4は、第一のパッカー2の内部に、水、ないし硬化性止水材料としての無収縮モルタル(以下、単に「モルタル」ともいう)を注入可能に配管されている。また、第一の排出ホース5は、第一のパッカー2に注入される水ないしモルタルを、パッカー内部からボーリング孔外に排出可能に配管されている。ここで、上記第一の注入管には第一の注入ホース4が対応し、上記第一の排出管には第一の排出ホース5が対応している。
【0017】
また、パッカー取付管13には、その外周に、ボーリング孔60の内周面に密着するまで膨張可能な第二のパッカー12が下端側に装着されている。この第二のパッカー12には、その内部にモルタルを注入可能な第二の注入ホース14がパッカー取付管13の外周に沿って配管されている。パッカー取付管13は、その孔外側の端部に取り付け用のタップ穴を周方向等間隔にもつ、平面視が円形のフランジを有している。このフランジに、上記端部閉塞蓋18が止めねじ(不図示)によって装着可能に構成されている。ここで、上記第二の注入管にはこの第二の注入ホース14が対応している。
【0018】
端部閉塞蓋18には、ケーブルグランドパッキン口金22が装着されている。このケーブルグランドパッキン口金22は、間隙水圧計1の計器信号ケーブル6を、ボーリング孔外に水密しつつ導き出して、そのグランドパッキンを締付けることで計器信号ケーブル6を保持可能な信号線導出部である。また、端部閉塞蓋18には、モルタルを注入するためのモルタル注入バルブ19が設けられており、このモルタル注入バルブ19に前記第一および第二のパッカー2、12同士の間でボーリング孔内につくる区画部(符号(ロ)の領域)内まで延びるモルタル注入ホース17が配管されている。これにより、このモルタル注入ホース17で、区画部内にモルタル50を注入可能になっている。なお、モルタル注入ホース17の先端部は、埋設計器装着管20の近傍かつ削孔口側、つまり、この例では埋設計器装着管20の直上の位置になるようにボーリング孔60内に挿入される。
【0019】
パッカー取付管13は、その管内に、同図に示すように、モルタル注入ホース17、第一の用注入ホース4、パッカー用排出ホース5および計器信号ケーブル6がそれぞれ挿通されるようになっている。また、パッカー取付管13の側面に、前記区画部(ロ)内に注入されるモルタル50を排出可能に設けられた排出バルブ16を備えている。ここで、上記注入用バルブにはモルタル注入バルブ19が対応し、上記区画部注入管にはモルタル注入ホース17が対応している。
【0020】
ここで、上述の埋設計器保持装置10は、施工前ないし施工時に、3つの構成区分に分けられて準備されている。これら3つの構成区分は、間隙水圧計1が装着される埋設計器装着管20を含む第一の構成区分、削孔口側に配置されるパッカー取付管13を含む第二の構成区分、および削孔口側の端部を閉塞するための端部閉塞蓋18を含む第三の構成区分である。
【0021】
詳しくは、第一の構成区分は、図2(a)に示すように、間隙水圧計1が装着される区分であり、埋設計器装着管20の先端に間隙水圧計1が装着される。この間隙水圧計1には、所定深度まで必要な長さの計器信号用ケーブル6が付いている。そして、埋設計器装着管20には、間隙水圧計1上部側に上述の第一のパッカー2が装着されており、この第一のパッカー2には、所定深度まで必要な長さの第一の注入ホース4および第一の排出ホース5がそれぞれ配管されたものが準備されている。また、埋設計器装着管20の後端部分には、埋設計器装着管を所定深度に押込むための押込みロッド3が着脱可能に装着される。さらに、その所定深度まで必要な長さのモルタル注入ホース17が、第一の注入ホース4および第一の排出ホース5とともに軸方向に沿って挿入可能なように準備される。
【0022】
第二の構成区分は、削孔口側に配置される区分であり、図2(b)に示すように、パッカー取付管13の下端側に、第二の注入ホース14が配管された第二のパッカー12が装着されている状態で準備される。なお、図1にて示す止水注入ホース15が、さらに、第二のパッカー12の上部まで必要な長さで、パッカー取付管13の外面に軸方向に沿わせて挿入可能とした状態で準備される。
【0023】
第三の構成区分は、図2(c)に示すように、パッカー取付管13のフランジに装着可能な端部閉塞蓋18の部分であり、この端部閉塞蓋18に、信号ケーブルグランドパッキン口金22、およびモルタル注入バルブ19が装着されたものが準備される。
ここで、パッカー取付管13の外周及び第二の注入ホース14外周には、図2(b)に示すように、その周囲を囲繞する複数のパッキン9がそれぞれ設けられている。
【0024】
詳しくは、これら複数のパッキング9は、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて設けられており、複数のパッキング9のうち、パッカー取付管13に設けられているパッキング9は、第二のパッカー12の上部と端部のフランジとの間に、その外周面に、200mmピッチ程度にゴム系等粘着性テープを巻き付けることで、その周囲を囲繞する複数のパッキング9がそれぞれ設けられている。また、複数のパッキング9のうち、第二の注入ホース14に設けられているパッキング9は、第二のパッカー12の上部でのパッカー取付管13に沿った部分にも、同様に、その外周面に、200mmピッチ程度にゴム系等粘着性テープを巻き付けることで、その周囲を囲繞する複数のパッキング9がそれぞれ設けられている。さらに、各外周面相互のパッキング9は、ボーリング孔の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられている。これにより、充填されるモルタル50とパッカー取付管13との密着度をより上げることを可能としており、モルタル50とパッカー取付管13、並びに、モルタル50と第二の注入ホース14との間隙をより確実に止水可能になっている。
【0025】
さらに、上記第一の注入ホース4、第一の排出ホース5、および注入ホース17においても、同様に、図2(a)に示すように、それらの外周面に、ゴム系等粘着性テープを巻き付けることで、その周囲を囲繞する複数のパッキング9がそれぞれ設けられている。これらパッキング9についても上記同様に、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔(例えば200mmピッチ程度)を隔てて設けられており、さらに、各外周面相互のパッキング9は、ボーリング孔60の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられている。これにより、モルタル50と各ホースとの相互の隙間での密着性を向上させており、モルタル50への密着度を上げることを可能としており、モルタル50と第一の注入ホース4との相互の隙間、モルタル50と第一の排出ホース5との相互の隙間、および、モルタル50と注入ホース17との相互の隙間の水密を、それぞれ更に確実にしている。
【0026】
次に、上記埋設計器保持装置により埋設計器を設置する方法について図1、図3、図4および図5を適宜参照しつつ説明する。
間隙水圧計1および埋設計器保持装置10は、以下の手順を経て図1に示す状態に施工される。
まず、ボーリング削孔に際して、予め、コンクリートベース7を削孔口の周囲に打設し、さらに、ボーリング孔の削孔口部分の孔壁を支えるケーシングであるガイド管8をボーリング削孔口に施工しておく。ここで、本実施形態では、ガイド管8およびコンクリートベース7を相互に繋ぐための連結部材であるガイド管固定金具11をさらに備える構成としている。
【0027】
そして、上記準備された第一の構成区分を、図3に示す状態に施工する。この施工は、まず、ボーリング削孔内に第一の構成区分を挿入する。この挿入は、押込みロッド3によって第一の構成区分を挿入すべき埋設計器設置深度まで挿入し、ボーリング削孔内での所望の位置に間隙水圧計1(間隙水圧計)を設置する。このとき、その計器信号用ケーブル6は削孔外に引出しておく。その後、第一の排出ホース5の出口を塞いでおき、間隙水圧計1の上部の第一のパッカー2に第一の注入ホース4から、まず、水を送り込む。これにより、第一のパッカー2を膨らますことで、間隙水圧計1設置部での湧水圧を測定可能な状態にするように、第一のパッカー2より下側を仮止水する。
【0028】
次いで、この仮止水された状態で、間隙水圧計1の測定値が所定の値であることを確認する。そして、その測定値が所定の値であれば、その後、第一の排出ホース5の出口を開放し、第一の注入ホース4の注入口から無収縮モルタルを注入する。そして、第一の排出ホース5の排水口からモルタルの流出を確認する。モルタルの流出が確認されたら、その後、第一の排出ホース5の排水口を塞ぐとともにモルタルの注入圧を上げてモルタルをパッカー2内にさらに注入する。これにより、間隙水圧計1を備えた第一の構成区分が、図3に示す状態に施工される。なお、この第一の構成区分の施工後に、不要となった押込みロッド3は、埋設計器装着管20の削孔口側の端部の脱着金具24から切離してボーリング削孔外に引抜く。
【0029】
次いで、上記準備された第二の構成区分の施工を行う。この施工は、まず、パッカー取付管13の管内に、計器信号用ケーブル6、第一の注入ホース4および第一の排出ホース5、並びにモルタル注入ホース17を、それぞれ挿通し、図4に示すように、ボーリング孔内の削孔口側の所定位置にパッカー取付管13を挿入する。そして、第一の注入ホース4および第一の排出ホース5をパッカー取付管13内に収まる適当な長さで切断する。次いで、パッカー取付管13に装備されている第二のパッカー12内に、第二の注入ホース14から無収縮モルタルを注入し、第二のパッカー12をボーリング孔の内周面に密着するまで膨張させることで、パッカー取付管13をボーリング削孔に対して固定する。
【0030】
次いで、上記準備された第三の構成区分の施工を行う。この施工は、まず、図4に示すように、端部閉塞蓋18に装着されている信号ケーブルグランドパッキン口金22に、計器信号ケーブル6を通してから、図5に示すように、信号ケーブルグランドパッキン口金22のグランドパッキンを締付けて計器信号ケーブル6を固定する。次いで、モルタル注入バルブ19にモルタル注入ホース17を接続し、次いで、図5に示すように、端部閉塞蓋18を止めねじによってパッカー取付管13のフランジに固定することで、パッカー取付管13の孔外側の端部を閉塞する。
【0031】
そして、ボーリング削孔口側の間隙部(符号(イ)の領域)に対し止水注入ホース15から無収縮モルタル50を注入する。さらに、排水バルブ16を開いて、前記第一および第二のパッカー2、12同士の間でボーリング孔内につくる区画部(ロ)の領域の湧水を排水バルブ16から排水する。このとき、間隙部(イ)に注入する無収縮モルタル50は、ガイド管8とパッカー取付管13との隙間から溢れ出るまで注入して、ガイド管8とパッカー取付管13との間、および、第二のパッカー12と孔壁との間に無収縮モルタル50をそれぞれ十分に充填させて、それぞれの隙間を水密させる。
【0032】
さらに、モルタル注入バルブ19からモルタル注入ホース17を介して無収縮モルタル50を上記区画部(ロ)の部分に注入し、排出バルブ16からモルタル50が排出されてきたことを確認し、排出バルブ16からモルタル50が高い濃度で排出されたら区画部(ロ)の水がボーリング孔60外に導き出されてモルタル50に入れ替わったと判断して、排出バルブ16を締める。そして、モルタル注入圧をさらに高くしてからモルタル注入バルブ19を閉めて区画部(ロ)での止水を確実なものにする。なお、この目安としては、モルタル50の注入圧で管理すればよく、例えばモルタルの注入圧が1割程度高くなった時点でモルタル注入バルブ19を閉じるようにする。
【0033】
以上の手順によって、間隙水圧計1および埋設計器保持装置10を、図1に示す状態に施工することができる(なお、図1では、図面の煩雑をさけるために複数のパッキング9の図示は省略している。)。図1に示すように、施工された状態においては、隣接する配管は、孔内で相互が接触した状態になっている。
【0034】
次に、この埋設計器設置方法および埋設計器保持装置の作用・効果について説明する。
上述のように、この埋設計器保持装置10およびこれを用いた埋設計器設置方法によれば、ボーリング孔60内の間隙水圧計1の近傍かつ削孔口側部分と削孔口近傍部分とに第一のパッカー2および第二のパッカー12をそれぞれ配しており、二つのパッカー2、12をボーリング孔60の内周面に密着するまでそれぞれ膨張させて、ボーリング孔60内に区画部(ロ)を形成することができる。これにより、その区画部(ロ)内に浸入する湧水を二つのパッカーで抑制することができる。
【0035】
そして、この区画部(ロ)内に、モルタル注入バルブ19からモルタル注入ホース17を介して無収縮モルタル50を注入しつつ、その区画部(ロ)内の水を排出バルブ16からボーリング孔外に導き出している。これにより、区画部(ロ)内のパッカー用の配管である、第一の注入ホース4および第一の排出ホース5、並びに、区画部(ロ)内の間隙水圧計1の計器信号ケーブル6を、その注入した無収縮モルタル50で囲繞することができる。すなわち、注入される無収縮モルタル50は液状なので、区画部(ロ)内のパッカー用の配管や埋設計器の信号線の周囲隅々にまで無収縮モルタル50を行き渡らせることができる。そのため、パッカー用の配管や埋設計器の信号線の周囲に隙間がほとんど生じない。したがって、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性を向上させることができる。
【0036】
また、この埋設計器保持装置10において、ボーリング孔60の削孔口部分の孔壁を支えるガイド管8および削孔口の周囲に打設されるコンクリートベース7を相互に繋ぐためのガイド管固定金具11を備えているので、ガイド管8が水圧で押し上げられることを防ぐことができる。
また、この埋設計器保持装置10は、注入した無収縮モルタル50で囲繞する複数の管路、つまり、パッカー取付管13、モルタル注入ホース17、第一の注入ホース4、第一の排出ホース5および第二の注入ホース14の外周面に、その管路の周囲を囲繞する複数のパッキング9をそれぞれ有しており、各管路の複数のパッキング9は、各外周面毎に、ボーリング孔60の軸方向に適宜の間隔を隔てて設けられている。さらに、各外周面相互のパッキング9は、ボーリング孔60の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられているので、このパッキング9を有する外周面と注入される無収縮モルタル50との相互間をより好適に水密することができる。
【0037】
以上説明したように、この埋設計器設置方法および埋設計器保持装置10によれば、被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の間隙水圧計1を設置するに際し、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性をより向上させることができる。
なお、本発明に係る埋設計器設置方法および埋設計器保持装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、埋設計器として間隙水圧計を例に説明したが、これに限定されず、ボーリング孔内に設置される埋設計器であれば、種々の埋設計器に対して本発明に係る埋設計器設置方法および埋設計器保持装置が適用可能である。
【0038】
また、例えば、上記実施形態では、ゴム系等粘着性テープを巻き付けることでパッキング9を設けた例で説明したが、これに限定されず、このようなパッキングを設けない構成としてもよい。しかし、パッカー用の配管や埋設計器の信号線まわりの水密性をより向上させる上では、上記例示したようなパッキングを設けた構成とすることが好ましい。また、上記実施形態では、パッキングを、各外周面毎に、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて複数設けられている例で説明したが、例えば一カ所のみであっても水密性を向上させる効果を得ることができる。また、各外周面相互のパッキングは、ボーリング孔の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられている例を示したが、軸方向で同じ位置にパッキングを設けてもよい。また、上記実施形態の例では、複数の管路のいずれにもパッキングを設けているが、例えば少なくとも一つの管路にパッキングを設けていれば、当該管路まわりでの水密性をより向上させることができる。また、複数の管路でパッキングを互い違いに設ける場合には、少なくとも二つの管路に設ければ上記効果を奏する。しかし、上述のように複数の管路を無収縮モルタルで囲繞して、その無収縮モルタルと複数の管路との隙間での水密性をより向上させる上では、上記実施形態で例示した構成とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る埋設計器保持装置の一実施形態を説明する図であり、同図は、その埋設計器保持装置を用いて埋設計器が埋設されている状態を示している。
【図2】本発明に係る埋設計器保持装置の一実施形態を説明する図であり、同図(a)は、その3つの構成区分のうち第一の構成区分を、同図(b)は、その第二の構成区分を、また、同図(c)は、その第三の構成区分をそれぞれ示している。
【図3】本発明に係る埋設計器設置方法の一実施形態を説明する図であり、同図は、埋設計器保持装置の第一の構成区分を施工した状態を示している。
【図4】本発明に係る埋設計器設置方法の一実施形態を説明する図であり、同図は、埋設計器保持装置の第二の構成区分を施工し、さらに第三の構成区分を施工する状態を示している。
【図5】本発明に係る埋設計器設置方法の一実施形態を説明する図であり、同図は、埋設計器保持装置の第三の構成区分を施工した状態を示している。
【図6】従来の例を説明する図であり、同図(a)は、従来の埋設計器設置での止水方法を説明する図、また、同図(b)は、従来の削孔頭部で止水する例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 間隙水圧計(埋設計器)
2 第一のパッカー
3 押込みロッド
4 第一の注入ホース(第一の注入管)
5 第一の排出ホース(第一の排出管)
6 計器信号ケーブル(信号線)
7 コンクリートベース
8 ガイド管
9 パッキング
10 埋設計器保持装置
11 ガイド管固定金具
12 第二のパッカー
13 パッカー取付管(削孔口側挿入管)
14 第二の注入ホース
15 止水注入ホース
16 排出バルブ
17 モルタル注入ホース(区画部注入管)
18 端部閉塞蓋
19 モルタル注入バルブ(注入用バルブ)
20 埋設計器装着管
22 信号ケーブルグランドパッキン口金(信号線導出部)
24 脱着金具
50 無収縮モルタル(硬化性止水材料)
60 ボーリング孔
109 止水キャッピング
110 注入ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧水下におけるボーリング孔内に間隙水圧計等の埋設計器を設置する方法であって、
前記埋設計器を前記ボーリング孔内の埋設計器設置深度まで挿入するとともに、前記ボーリング孔内の前記埋設計器の近傍かつ削孔口側部分と削孔口近傍部分とにそれぞれパッカーを配し、各パッカー内に硬化性止水材料を注入して前記ボーリング孔の内周面に密着するまでそれぞれ膨張させ、その膨張させたパッカー同士のつくる区画部内に、パッカー用の配管および埋設計器の信号線を囲繞するように硬化性止水材料を注入するとともに、その区画部内の水をボーリング孔外に導き出し、区画部内が水から硬化性止水材料に入れ替わった後に注入および導き出した孔外の部分をそれぞれ閉塞することを特徴とする埋設計器設置方法。
【請求項2】
被圧水下におけるボーリング孔内に設置される間隙水圧計等の埋設計器を保持するとともに、そのボーリング孔を止水するための埋設計器保持装置であって、
先端に前記埋設計器が装着されて前記ボーリング孔内の埋設計器設置深度まで挿入される埋設計器装着管と、この埋設計器装着管よりも前記ボーリング孔内の削孔口寄りの位置に挿入される削孔口側挿入管と、この削孔口側挿入管の孔外側の端部を閉塞する端部閉塞蓋と、を備え、
前記埋設計器装着管には、その外周に、ボーリング孔の内周面に密着するまで膨張可能な第一のパッカーが装着され、この第一のパッカーには、その内部に硬化性止水材料を注入可能な第一の注入管と、その注入される硬化性止水材料を第一のパッカー内部から排出可能な第一の排出管と、がそれぞれ配管されており、
前記削孔口側挿入管には、その外周に、ボーリング孔の内周面に密着するまで膨張可能な第二のパッカーが装着され、この第二のパッカーには、その内部に硬化性止水材料を注入可能な第二の注入管が配管されており、
前記端部閉塞蓋には、硬化性止水材料を注入するための注入用バルブが設けられ、この注入用バルブに前記第一および第二のパッカー同士の間でボーリング孔内につくる区画部内まで延びる区画部注入管が配管されており、
さらに、前記削孔口側挿入管は、その管内に、前記区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および埋設計器の信号線がそれぞれ挿通されるようになっており、その側面に、前記区画部内に注入される硬化性止水材料を排出可能に設けられた排出バルブを備えており、また、前記端部閉塞蓋は、前記埋設計器の信号線を孔外に水密しつつ導き出して保持可能な信号線導出部を有することを特徴とする埋設計器保持装置。
【請求項3】
ボーリング孔の削孔口部分の孔壁を支えるケーシングと、このケーシングおよび削孔口の周囲に打設されるコンクリートベースを相互に繋ぐための連結部材と、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の埋設計器保持装置。
【請求項4】
前記削孔口側挿入管、区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および第二の注入管のうち少なくとも一つの外周面に、その周囲を囲繞するパッキングを有することを特徴とする請求項2または3に記載の埋設計器保持装置。
【請求項5】
前記パッキングは、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の埋設計器保持装置。
【請求項6】
前記削孔口側挿入管、区画部注入管、第一の注入管、第一の排出管および第二の注入管のうち少なくとも二つの外周面に、その周囲を囲繞する複数のパッキングをそれぞれ有しており、当該複数のパッキングは、各外周面毎に、ボーリング孔の軸方向に適宜の間隔を隔てて設けられており、さらに、各外周面相互のパッキングは、前記ボーリング孔の軸方向での位置が、互い違いになる位置に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の埋設計器保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−120026(P2007−120026A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309989(P2005−309989)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(390029687)株式会社東亜測器 (3)