説明

埋込型再充填可能薬剤送達容器

埋込型薬剤送達装置および方法を記載する。入力ポート隔壁は、治療薬剤を受け取る。埋込型送達カテーテルは、ある体積の治療薬剤を保持し、入力ポート隔壁と流体連通している近位端と、カテーテルから流体を除去するための出力隔壁を含む遠位端と、隣接組織への治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面とを含む。一実施形態において、埋込型薬剤送達装置は、治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁と、ある体積の該治療薬剤を保持する埋込型送達カテーテルであって、i.該入力ポート隔壁と流体連通している近位端と、ii.該カテーテルから流体を除去するための出力隔壁を含む、遠位端と、iii.隣接組織への該治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面とを有する埋込型送達カテーテルとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/112,818号(2008年11月10日出願)に基づく優先権を主張する。該出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医療用インプラント、より具体的には、埋込型薬剤送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
標的内部組織に治療薬剤を送達するための埋込型薬剤送達システムへの関心が高まっている。接触インピーダンスを低減するために、心臓ペースメーカー電極とともに、皮質ステロイドを有する薬剤溶出電極リード線が成功裏に使用されてきた。加えて、薬理学的薬剤を搭載したシリコーンエラストマーが、バースコントロール、血管損傷治療、およびステント等のいくつかの用途において、溶出構造として使用されてきた。また、例えば、蝸牛インプラント電極の埋め込み後の治癒を促進するために、蝸牛に医薬品を送達するという試みが行われてきた。
【0004】
特許文献1(参照することによって本明細書に組み込まれる)は、周囲組織に1つ以上の治療薬剤を送達することができる埋込型刺激電極を含む、治療薬剤を送達するための埋込型システムを記載する。また、治療薬剤を含み、それらを電極に供給するための別個の埋込型容器もある。該特許は、容器が再充填可能であり得ることを考察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,044,942号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態では、皮下の1次容器は、1次体積の治療薬剤を保持し、治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁と流体連通している。皮下の2次容器は、1次容器と流体連通しており、2次体積の治療薬剤を保持する。2次容器は、隣接組織への治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面と、2次容器内での流体交換のためのプライミング隔壁とを含む。
【0007】
実施形態はまた、1次容器と2次容器との間の流体連通を提供する、拡散チャネルを含み得る。また、一方の容器から他方の容器への拡散チャネル内の流体のイオン変位を誘発するために、拡散チャネルの周囲にチャネルコイルが存在し得る。
【0008】
2次容器は、2次体積を取り囲む送達カテーテルを形成し得る。送達カテーテルは、例えば、薬剤溶出ポリマーまたはゲルに基づくフィルタロッドを使用して、カテーテルを通る流体流動を機械的に濾過するための、半透過性フィルタを含み得る。送達カテーテルは、シリコーンマトリクス上部構造を含み得る。
【0009】
該装置はまた、入力ポート隔壁と1次容器との間の流体連通を提供する入力チャネルを含み得る。また、例えば、出力ポート隔壁と1次容器との間の流体連通を提供する出力チャネルに基づき、1次容器から流体を除去するための、1次容器と連通している出力ポート隔壁が存在し得る。
【0010】
容器のうちの少なくとも1つは、容器のうちの少なくとも1つの中の流体の制御された流動を促進する、少なくとも1つの内部制御表面を含み得る。例えば、1つ以上の内部制御表面は、制御迷路に構成され得る。または、流動を制御するために、毛管構成が使用され得る。
【0011】
実施形態は、1次容器と2次容器との間の圧力過渡を回避する、1次容器と2次容器との間の圧力制御要素を含み得る。例えば、圧力制御要素は、逆止弁構成または毛管構成を含み得る。
【0012】
本発明の実施形態はまた、治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁を有する、埋込型薬剤送達を含む。埋込型送達カテーテルは、ある体積の治療薬剤を保持し、入力ポート隔壁と流体連通している近位端と、カテーテルから流体を除去するための出力隔壁を含む遠位端と、隣接組織への治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面とを有する。特定の実施形態はまた、入力ポート隔壁と送達カテーテルとの間の流体連通を提供する、入力チャネルを含み得る。
【0013】
そのような実施形態では、送達カテーテルは、信号処理回路を含む埋込型刺激装置筐体に接続され得る。例えば、埋込型刺激装置筐体は、蝸牛インプラントシステムの一部であってもよく、送達カテーテルは、埋込型刺激電極の一要素であり得る。
【0014】
薬剤透過性表面は、薬剤透過性膜を含み得る。または、薬剤透過性スリットおよび/または穴の構成が存在し得る。治療薬剤流体は、2次容器からの治療薬剤の拡散を加速するために、食塩溶液等の浸透圧性薬剤と混合され得る。
【0015】
治療薬剤内の荷電分子性物質を駆動することによって、該装置内で治療薬剤を変位させるために、電荷平衡非対称パルス等の電気信号を印加する電荷駆動構成が使用され得る。例えば、2次容器を補充するように、時間をかけて1次容器から2次容器に治療薬剤を変位させるために、1次容器の中の活性電極および2次容器の中の接地電極等の1対の電荷駆動電極が存在し得る。または、2次容器から隣接組織に治療薬剤を変位させるために、容器内の一方の電極および2次容器の外側の他方の電極が存在し得る。
【0016】
治療薬剤内の荷電分子性物質を駆動することによって、該装置内で治療薬剤を変位させるために、磁力を印加する1対の磁石等の磁気駆動構成が存在し得る。例えば、磁気駆動構成は、2次容器を補充するように、時間をかけて1次容器から2次容器に治療薬剤を変位させるために、1次容器の中にリペラー磁石、および2次容器の中にアトラクタ磁石を含み得る。または、該駆動構成は、治療薬剤内の磁気分子性物質に磁気吸引力を及ぼし、薬剤透過性表面を通してそれらを隣接組織に引き込む、容器のうちの1つの中の磁石および2次容器の外側の磁石を含み得る。
【0017】
送達カテーテルは、カテーテルを通る流体流動を機械的に濾過するための、半透過性フィルタを含み得る。例えば、半透過性フィルタは、薬剤溶出ポリマーまたはゲルに基づく構造ロッドであり得る。該カテーテルはまた、シリコーンマトリクス上部構造を含み得る。薬剤透過性表面は、薬剤透過性膜および/または薬剤透過性スリットまたは穴を含み得る。
【0018】
本発明の実施形態は、治療薬剤を含む流体を移送するための装置を含む。送達シリンジは、送達体積の治療薬剤流体を埋込型システムに注入するための、送達ピストンを有する。受け取りシリンジは、埋込型システムから回収体積の流体を除去するための、受け取りピストンを有する。ピストン連結ロッドは、中心連結軸の周囲で回転し、送達ピストンが送達シリンジに押し込まれる時に、連結ロッドが同一量で受け取りピストンを押し出すように回転するように、ピストンのそれぞれに接続される。いくつかの実施形態では、シリンジ筐体は、送達シリンジおよび受け取りシリンジの両方を含み得る。
【0019】
実施形態はまた、治療薬剤を埋込型システムに送達する方法にも関する。治療薬剤を含む送達シリンジの針は、埋込型1次容器の入力ポート隔壁に挿入される。別の受け取りシリンジの針は、1次容器と流体連通している埋込型2次容器のプライミング隔壁に挿入される。治療薬剤は、送達シリンジから1次容器に注入され、流体は、容器を治療薬剤でプライミングするために、2次容器から受け取りシリンジの中へ引き出される。
【0020】
さらなる特定の方法では、針は、容器がプライミングされた後に隔壁から除去されてもよく、容器は、針が除去された後に患者の選択された位置で、皮下に埋め込むことができる。例えば、それらは、患者の頭蓋骨に隣接して埋め込まれ得る。
【0021】
埋込型薬剤容器構成に治療薬剤を導入する別の方法の実施形態は、治療薬剤を含む送達シリンジの針を、患者の皮膚を通して埋込型薬剤容器の入力ポート隔壁に挿入することから始まる。別の受け取りシリンジの針は、患者の皮膚を通して埋込型薬剤容器の出力隔壁に挿入される。治療薬剤は、送達シリンジから薬剤容器に注入され、流体は、治療薬剤を薬剤容器に導入するように、薬剤容器から受け取りシリンジに引き込まれる。針は、治療薬剤が薬剤容器に導入された後に、隔壁から除去され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、埋込型薬剤送達システムの一実施形態を示す。
【図2】図2は、電荷駆動構成を使用した、埋込型薬剤送達システムの別の実施形態を示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態により使用されるような、磁気駆動構成の原理を示す。
【図4】図4は、送達カテーテルの中にある体積の治療薬剤流体を有する、一実施形態を示す。
【図5】図5は、薬剤送達ロッドの形態の半透過性フィルタを有する、一実施形態を示す。
【図6】図6は、埋込型送達カテーテルが埋め込み筐体の本体に接続される、一実施形態を示す。
【図7】図7は、拡散チャネルによって接続される1次容器および2次容器を有する、別の実施形態を示す。
【図8】図8は、流体の制御された流動を促進する制御迷路を形成するための1つ以上の内部制御表面を有する、一実施形態を示す。
【図9】図9は、圧力過渡を回避するために、1次容器と2次容器との間に圧力制御要素を有する、一実施形態を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に従った、送達シリンジおよび受け取りシリンジを有するデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の種々の実施形態は、埋込型薬剤送達装置および方法に関する。実施形態は、再充填中にその内圧を増加させない、充填可能および再充填可能な埋込型薬剤送達システムを含む。また、装置内の治療薬剤内の分子を変位させるために、電気および/または磁気パルスを使用することができる。そのような実施形態および技術は、蝸牛のような体腔等の標的組織に治療薬剤の溶液を送達するのに有用である。実施形態はまた、圧力を増加させることなく経皮的に再充填可能である、1つ以上の皮下薬剤送達容器を含む。実施形態はまた、薬剤が容器の外側に拡散する際に、薬剤送達容器内の治療薬剤の均一性を維持する。
【0024】
図1は、1次体積の治療薬剤を保持する皮下の1次容器101を含む、埋込型薬剤送達システム100の一実施形態を示す。1次容器101は、治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁104、および流体を除去するための対応する出力ポート隔壁105を含む。拡散チャネル103は、1次容器101から2次体積の治療薬剤を保持する2次容器102への流体連通経路を提供する。2次容器102は、隣接組織への治療薬剤の拡散のための薬剤透過性膜、スリット、または穴等の薬剤透過性表面107、および2次容器102内の流体交換のためのプライミング隔壁106を含む。そのような構成において、2次容器102からの治療薬剤の拡散を促進および加速するために、治療薬剤を食塩溶液等の浸透圧性薬剤と混合させることが有用であり得る。図1に示す実施形態はまた、一方の容器から他方の容器への拡散チャネル内の流体のイオン変位を誘発するために、拡散チャネル103を取り囲むチャネルコイル108を含む。
【0025】
該システムは、治療薬剤流体を含む送達シリンジの針を入力ポート隔壁104に挿入することにより、埋め込み前に治療薬剤流体で充填され得る。受け取りシリンジの針は、プライミング隔壁106に挿入され、受け取りシリンジが2次容器102から流体を引き出す一方で、治療薬剤流体は、送達シリンジから1次容器101に注入され、それにより、容器を治療薬剤流体でプライミングする。該システムのプライミング後、針は、隔壁から除去され、薬剤送達システムは、例えば、蝸牛インプラントシステムで使用するために患者の頭蓋骨に隣接して等、患者の選択された位置で、皮下に埋め込まれる準備ができる。
【0026】
埋込型薬剤送達システム100は、同一の治療薬剤、または異なる分子含有量の新しい治療薬剤のいずれかによる、容器101および102の再充填を可能にする。再充填プロセスは、薬剤送達システム100の内部体積内、または2次容器102の外側の周囲組織および流体領域のいずれかにおいても、圧力を上昇させない。分子拡散は、イオン透過性膜薬剤送達表面107を通して、または細菌の大きさよりも小さい薬剤送達表面107の穿刺を通して選択的に起こるため、特別な細菌フィルタは、必要ない。
【0027】
図2は、1次容器101の頂部に単一の一次隔壁201のみを有する、埋込型薬剤送達システム200の別の同様の実施形態を示す。また、チャネルコイル構成の代わりに、この実施形態は、治療薬剤内の荷電分子性物質を駆動することにより、装置内で治療薬剤を変位させるための電荷駆動構成を使用する。具体的に、パルス発生器204(例えば、埋込型刺激装置から)は、1次容器101の中の活性電極202への駆動信号を生成する。2次容器102の中の接地電極203は、電流路を完成する。次いで、図2の下部に示す実施例のような電荷平衡非対称パルスに基づく駆動信号は、例えば、2次容器を補充するように、時間をかけて1次容器101から2次容器102に治療薬剤を変位させるために、治療薬剤内の荷電分子性物質を駆動することができる。
【0028】
2次容器102の内側に接地電極203を配置する代わりに、いくつかの実施形態では、それは、2次容器102の外側にあり得る。そのような構成は、電荷平衡非対称パルスに基づく駆動信号が、1次容器101から2次容器102を通して、かつ薬剤透過性表面107を通る活性拡散により、隣接組織、例えば、周囲の蝸牛液または細胞外液に、治療薬剤を変位させることを可能にする。そのような電荷駆動構成は、薬剤透過性表面107のポリマーマトリクスと周囲組織との間に小型イオンチャネルが存在する場合、特に効果的であり得る。これらは、小型針で作製される穿刺、穴のレーザーアブレーション、イオン透過性膜の使用、および/またはメスによる1つ以上のスリットにより作製することができ、それらのうちのいずれもが、2次容器102の内側から周囲の流体および組織へと流出するための、治療薬剤中の複合荷電分子の流動のための改善された通路を提供し得る。
【0029】
平衡電荷駆動信号の使用は、電極202および203の望ましくない腐食を回避するのに役立ち得る。パルス発生器204は、有利に、蝸牛インプラント刺激装置の筐体内に位置してもよく、典型的には、電荷平衡対称または非対称パルスを送達するように設計される。あるいは、駆動信号は、電極の一方向への正味の電荷変位を誘発するために、三相パルスの使用に基づいてもよい。パルス発生器204の内外、および電極202と203との間の両方の、そのような実施形態に対する関連した絶縁配線は、容器の内部体積内で、または装置構造の壁および表面内で、もしくは該壁および表面に沿って伸び得る。
【0030】
図2に示すような電荷駆動構成よりもむしろ、いくつかの実施形態は、治療薬剤内の磁気分子性物質を駆動することにより、装置内で治療薬剤を変位させるための、図3に示す原理に基づく磁気駆動構成を使用し得る。電極203および204の代わりに、磁気駆動構成は、治療薬剤内の磁気分子性物質303を駆動することにより、装置内で治療薬剤を変位させる、リペラー磁石301とアトラクタ磁石302との間の磁場を引き起こす、リペラー磁石301およびアトラクタ磁石302を使用する。図3に示す実施例では、これは、付近で、より低い分子濃度305の領域を作成するように、リペラー磁石301から離れる磁性分子を駆動し、一方で、より高い分子濃度304の領域が、例えば、2次容器の外側に位置する、アトラクタ磁石302の付近で生じ、治療薬剤内の磁気分子性物質に磁気吸引力を及ぼし、薬剤透過性表面を通してそれらを隣接組織に引き込む。あるいは、アトラクタ磁石302は、2次容器を補充するように、時間をかけて1次容器から2次容器に治療薬剤流体を変位させるために、2次容器内に位置し得る。磁石301および/または302は、保護封止層により有用に被覆され得る。
【0031】
図4は、1次容器101、ならびにその入力隔壁104および出力隔壁105の構成が図1にあるようなものであるが、2次容器401は、2次体積を取り囲む送達カテーテルを形成するように細長い、埋込型薬剤送達装置の別の実施形態を示す。したがって、送達カテーテルの2次容器401の近位端は、入力隔壁104と流体連通しており、一方で、遠位端は、該システムの充填または再充填の時に、2次容器401から流体を除去するための出力隔壁403を含む。イオン透過拡散膜等の薬剤透過性表面402は、周囲組織および流体に治療薬剤流体を拡散する。
【0032】
いくつかの実施形態では、2次容器401の内部は、カテーテルを通る流体流動を機械的に濾過するために、図5に示す薬剤送達ロッド502等の半透過性フィルタを含み得る。示される実施例では、薬剤送達ロッド502は、薬剤溶出シリコーンロッド等の薬剤溶出ゲルまたは薬剤溶出ポリマーの特定の形態であり得る。次いで、そのような薬剤送達ロッド502は、2次容器401の主要な上部構造に埋め込まれるか、または組み込まれ、それは、例えば、シリコーンマトリクス501であり得る。シリコーンマトリクス501は、周囲の流体による薬剤溶出材料の水和を可能にする、スリット開口部503を含み得る。いくつかの実施形態では、2次容器401の細長い形態は、体内構造の周囲で配置を適合させるように屈曲を有するように予め形状決定され。または、2次容器401は、そのような体内構造の周囲で屈曲性され得るように可撓性である。
【0033】
図6は、埋込型送達カテーテル401が蝸牛インプラント刺激装置筐体等の埋め込み筐体603の本体に接続される、別の実施形態を示す。そのような実施形態では、送達カテーテル401は、例えば、聴覚障害患者の蝸牛に埋め込まれる、刺激装置の電極アレイ内の内部体積であり得る。そのような一実施形態における電極アレイは、治療薬剤がそこを通って周囲組織または流体に拡散する、上記のような薬剤透過性表面を含む(例えば、イオンもしくは分子透過性膜および/または複数の拡散スリットもしくは穴の構成)。示される実施形態では、治療薬剤は、入力ポート602を覆う入力隔壁601の構成を介して、入力チャネル604および埋め込み筐体603を通して、送達カテーテル401に送達される。別の実施形態では、それ自体として認識できる画定された入力ポート602なしで、単純に入力隔壁601が存在し得る。いずれの構成においても、該システムを初期に充填するために、送達カテーテル401内の既存の流体を引き出すために、埋め込み前に、プライミング隔壁106が使用され得る。埋め込み後、患者の皮膚の直下に位置する入力隔壁601を通して経皮的に、さらなる治療薬剤流体を定期的に追加することができる。
【0034】
図7は、拡散チャネル703により接続される、1次容器701および2次容器702を有する、別の実施形態を示す。2次容器702は、他の実施形態に関する上記のような、プライミング隔壁710および薬剤送達表面711を含む。加えて、入力チャネル708は、1次容器701と入力隔壁704を有する入力ポート706との間の流体連通を提供する。同様に、出力チャネル709もまた、1次容器701と出力隔壁705を有する出力ポート707との間の流体連通を提供する。
【0035】
該システムの初期充填は、入力隔壁704およびプライミング隔壁710を使用して、埋め込み前に行われ得る。埋め込み後、該システムは、患者の皮膚を通して入力隔壁704へと、1次容器701を経皮的に再充填するために、治療薬剤流体を含む送達シリンジを使用して、充填/補充することができ、一方で、負圧下(すなわち、プランジャを引く)の受け取りシリンジは、空気または古い流体が出力隔壁705および皮膚を通して受け取りシリンジへと経皮的に引き込まれることを可能にし、それにより、1次容器701を再充填/補充する。治療薬剤流体が1次容器701に導入された後、送達シリンジ針および受け取り針の両方が除去される。
【0036】
実施形態はまた、例えば、容器中の流体内の治療薬剤の所望の濃度を維持するために、1次容器内で流体流動を正確かつ確実に方向付けるために、内部流動制御構成を含み得る。例えば、図8は、1次容器800内の流体の制御された流動を促進する制御迷路を形成するために、1つ以上の内部制御表面801を有する1次容器800を示す。図8Aは、単一制御表面801の使用を示し、他の実施形態では、より複雑な制御迷路を形成するように構成される、複数のそのような制御表面が存在し得る。例えば、図9の下部に示すような毛管構成が、1次容器800内の制御迷路として使用され得る。
【0037】
実施形態はまた、1次容器と2次容器との間の圧力過渡を回避するために、1次容器と2次容器との間に圧力制御要素を含み得る。流体充填操作中の1次容器と2次容器との間の圧力過渡の制限はまた、2次容器の外側の周囲組織および流体領域における圧力過渡を回避する働きもする。例えば、そのような圧力制御要素は、単一フラップ逆止弁901または二重フラップ逆止弁902等、拡散チャネルへの開口部における逆止弁構成の特定の形態であり得る。圧力が流体充填中に1次容器中で増加した場合、逆止弁901または902は、2次容器中の圧力過渡を回避するように閉鎖する。あるいは、拡散チャネルの開始における毛管構成903は、拡散を可能にするが、任意の圧力駆動流体流動に対する有意な抵抗性を提供することにより、同じ目的に適うことができる。
【0038】
容器中で一定圧力を維持するために、該システムの内外への流体流動は、体積および流量が調整される必要がある。これは、同時に、かつ同一流量で、同一量の流体を容器の内外に出し入れするデバイスまたは構成により達成され得る。図10は、単一筐体中に、送達ピストン1003を有する送達シリンジ1001および受け取りピストン1004を有する受け取りシリンジ1002を含む、流体置換デバイス1000の一実施例を示す。連結軸1006の周囲で回転するピストン連結ロッド1005が各ピストンに接続され、送達ピストンが送達シリンジ1001に押し込まれる時に、連結ロッド1005は、同一量で受け取りピストン1004を押し出すように回転する。
【0039】
本発明の種々の例示的な実施形態が開示されているが、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明の利点のいくつかを達成する種々の変更および修正が行われ得ることは、当業者に明らかであるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型薬剤送達装置であって、
治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁と、
ある体積の該治療薬剤を保持する埋込型送達カテーテルであって、
i.該入力ポート隔壁と流体連通している近位端と、
ii.該カテーテルから流体を除去するための出力隔壁を含む、遠位端と、
iii.隣接組織への該治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面と
を有する埋込型送達カテーテルと
を備えている、装置。
【請求項2】
前記送達カテーテルは、信号処理回路を含む埋込型刺激装置筐体に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記埋込型刺激装置筐体は、蝸牛インプラントシステムの一部である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記送達カテーテルは、埋込型刺激電極の一要素である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記刺激電極は、蝸牛インプラントシステムの一要素である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記送達カテーテルは、該カテーテルを通る流体流動を機械的に濾過するための半透過性フィルタを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記半透過性フィルタは、薬剤溶出ポリマーを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記半透過性フィルタは、薬剤溶出ゲルを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記カテーテルは、シリコーンマトリクス上部構造を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記入力ポート隔壁と前記送達カテーテルとの間の流体連通を提供する、入力チャネル
をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記治療薬剤は、前記送達カテーテルからの前記治療薬剤の拡散を加速するための浸透圧性薬剤と混合される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記治療薬剤内の荷電分子性物質を駆動することにより、前記装置内で前記治療薬剤を変位させるための電気信号を印加する電荷駆動構成をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記電荷駆動構成は、1対の電荷駆動電極を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電荷駆動電極は、前記カテーテルの内側の活性電極と、該カテーテルの外側の接地電極とを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記電気信号は、電荷平衡非対称パルスを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記電荷駆動構成は、前記治療薬剤を前記カテーテルから前記隣接組織の中へ変位させる、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記治療薬剤内の磁気分子性物質を駆動することにより、前記装置内で該治療薬剤を変位させるための磁力を印加する磁気駆動構成をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記磁気駆動構成は、前記治療薬剤を前記カテーテルから前記隣接組織の中へ変位させる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記磁気駆動構成は、前記治療薬剤内の磁気分子性物質に磁気吸引力を及ぼし、前記薬剤透過性表面を通してそれらを前記隣接組織に引き込む、前記カテーテルの外側の少なくとも1つのアトラクタ磁石を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記磁気駆動構成は、前記装置内で前記治療薬剤を変位させるための1対の駆動磁石を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記磁石は、前記カテーテル内のリペラー磁石と、前記カテーテルの外側のアトラクタ磁石とを含み、該リペラー磁石と該アトラクタ磁石とは、前記治療薬剤を前記カテーテルから前記隣接組織に変位させる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
埋込型薬剤送達装置であって、
1次体積の治療薬剤を保持し、該治療薬剤を受け取るための入力ポート隔壁と流体連通している皮下の1次容器と、
該1次容器と流体連通しており、2次体積の該治療薬剤を保持する皮下の2次容器であって、
i.隣接組織の中への該治療薬剤の拡散のための薬剤透過性表面と、
ii.該2次容器内の流体交換のためのプライミング隔壁と
を有する皮下の2次容器と
を備えている、装置。
【請求項23】
治療薬剤を含む流体を移送するための装置であって、
送達体積の治療薬剤流体を埋込型システムに注入するための送達ピストンを有する送達シリンジと、
回収体積の流体を該埋込型システムから除去するための受け取りピストンを有する、受け取りシリンジと、
中心連結軸の周囲で回転するピストン連結ロッドであって、該ピストン連結ロッドが、該送達ピストンおよび該受け取りピストンのそれぞれに接続されることにより、該送達ピストンが該送達シリンジに押し込まれる場合に、該連結ロッドは、同一量で該受け取りピストンを押し出すように回転する、ピストン連結ロッドと
を備えている、装置。
【請求項24】
治療薬剤を送達する方法であって、
該治療薬剤を含む送達シリンジの針を埋込型1次容器の入力ポート隔壁に挿入することと、
受け取りシリンジの針を該1次容器と流体連通している埋込型2次容器のプライミング隔壁に挿入することと、
該送達シリンジから該1次容器に該治療薬剤を注入することと、
該1次容器と該2次容器とを該治療薬剤でプライミングするために、該2次容器から該受け取りシリンジの中へ流体を回収することと
を含む、方法。
【請求項25】
埋込型薬剤容器構成に治療薬剤を導入する方法であって、
該治療薬剤を含む送達シリンジの針を、患者の皮膚を通して埋込型薬剤容器の入力ポート隔壁に挿入することと、
受け取りシリンジの針を、該患者の皮膚を通して該埋込型薬剤容器の出力隔壁に挿入することと、
該送達シリンジから該薬剤容器に該治療薬剤を注入することと、
該治療薬剤を該薬剤容器に導入するために、該薬剤容器から該受け取りシリンジの中へ流体を回収することと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−508071(P2012−508071A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535713(P2011−535713)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/063677
【国際公開番号】WO2010/054281
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507417101)メド−エル エレクトロメディジニシェ ゲラテ ゲーエムベーハー (26)
【Fターム(参考)】