説明

培養可能な細胞の計数のための方法、キット及びシステム

本発明は、検査試料におけるエシェリキアコリ、シュードモナスエルジノーサ又は微生物細胞の混合物等の培養可能な微生物細胞の数(例えば全微生物数)を示す定量的値を決定するための方法、キット及びシステムを提供し、この方法は、(i)培養可能な微生物細胞を保持できる検査試料と微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤とを接触させるステップであって、前記接触が、信号放出剤が微生物細胞内に内部移行し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)行われるステップ、(ii)前記検査試料から非内部移行信号放出剤を除去するステップ、(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出するステップであって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づくステップ、及び(iv)前記選択された信号放出物に基づき、検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するステップを含む。キットは、1つ又は複数の前記信号放出剤、及びその使用のための命令を含む。また、前記方法を実施するマシンによって実行可能な命令のプログラムを確実に実装する、マシンによって読取り可能なプログラムストレージデバイス、及び、前記方法を実施するためのコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、試料中の細胞の量を定量的に測定するための方法、キット及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
下記は、本発明の分野における現況技術の記述に関連すると考えられる技術(state of the art)のリストである。
(1)国際特許出願公開第06/065350号(Kimberly Clark Worldwide Inc.)
(2)欧州特許出願第0612850号(Nihon Millipore Kogyo KK)
(3)米国特許第5,258,285号(Foss Electric Holding AS)
(4)米国特許出願公開第2008014607号
(5)国際特許出願公開第92/02632号(Sierra Cytometry)
(6)Jones, D. L., M. A. Brailsford及びJ.−L. Drocourt. 1999. Solid−phase, laser−scanning cytometry:製剤用水における微生物の計数のための新しい二時間法(a new two−hour method for the enumeration of microorganisms in pharmaceutical water.) Pharmacop. Forum 25:7626−7645
発明の背景
試料、特に液体試料における生物学的存在の定量的測定は、汚染の広がり、感染症、病状の決定等においてにおいて重要である。例えば、微生物学において細菌又は真菌の数の測定値はコロニー形成単位(CFU/ml)によって提供される。
【0003】
微生物には胞子の形態、不活性(培養不能)及び増殖可能な微生物が含まれ、増殖可能な微生物のみを定量する方法が存在することには大きな意味がある。例えば、増殖可能な微生物の定量は、食品及び飲料産業での品質維持工程、医薬品及びパーソナルケア等の消費者と接触のある商品の製造、河川、湖及び海洋等の利水システムの環境保護、公衆安全(例えば、市営の水道、井戸、プール、温泉及び浜辺等の娯楽用の水の細菌学的な監視等)、様々な工業的工程、医療関連感染、及び医療の提供において主要な問題の1つである。
【0004】
分裂(培養可能)微生物の定量は、一般的には、細菌培養増殖に基づいた専門的な検査法である。固形及び液体培地で微生物を増殖させるための特定の条件は、CFU(CFU/ml)を測定するまでの長時間の培養の間、維持する必要がある。研究室では、CFUは、計数されたコロニーの全数を、希釈数及び試料の容積に対して正規化することにより通常算出される。この方法では実験装置、有資格者、及び1日から1月に及ぶ長い期間が必要となる。それに含まれる仕事をするには多くの時間と労力が必要であるにもかかわらず、現在、CFUは規制団体により承認された微生物計数の基準となっている。
【0005】
当技術分野においては、検査試料中の微生物検出のために、細胞計数の代替案として、色又は蛍光の標識を利用する様々な方法が提供されている。
【0006】
例えば、国際特許出願公開第06/065350(Kimberly Clark Worldwide Inc.)では、試料中の微生物の存在を半定量的又は定量的に検出する方法が記述されている。この方法では、1つ又は複数の微生物が存在すると、検出可能な変色を起こす検査用色素を利用する。例えば、検査用色素は、微生物の構成成分(例えば、細胞膜、細胞質等)と細胞の外側の環境との間の極性の差異に応答するソルバトクロミック色素(例えば、Reichardt色素)である。
【0007】
欧州特許第0612850号では、試料液における生存可能な微生物細胞の数を測定する方法が記述されており、この方法には、試料液を疎水性のろ過膜でろ過して疎水性の隔壁内に微生物を捕捉し、そこにATP抽出試薬の微細噴霧剤を加え微生物から発光成分を抽出し、抽出された発光成分に別の液状発光誘発試薬の微細噴霧剤を加え、発光成分から光を放出させ、発光レベルを測定するための適切な方法を使用して、発光レベルを測定することが含まれる。
【0008】
米国特許第5,258,285号では、細菌及び体細胞を含む細胞集団における細菌の数を測定する方法が記述されている。
【0009】
米国特許出願公開第2008/014607号では、液体試料中に存在する可能性のある所与の種の生細胞を検出し計数する生物発光に基づく方法が記述されており、この方法では、所与の非ウイルス種の生細胞の、全遊離細胞内アデニルヌクレオチド(AN)の含有量をATPの形態で測定することが含まれる。
【0010】
国際特許出願公開第92/202632号では、牛乳中の生細胞の検出、同定、及び/又は計数のための工程が記述されており、この工程では、生細胞を蛍光色素(例えば、エステラーゼ依存型色素、核酸結合色素、及び細胞内の酸化活性を検出する色素)で選択的に標識し、その後同定及び/又は計数する。
【0011】
米国特許第7,312,073号では、生細胞の定量のための方法が記述されており、この方法では、マーカーを組み込んだゾルゲル液体前駆体を薄層コーティングとしてスライド上に固定する。このスライドを、検査試料から分離した微生物を含むフィルターと培養期間、接触させる。培養期間の間に、微生物がマーカー(複数可)を取り込む。その後、スライドを照射し、マーカーを含む微生物から放出された信号を検出し、微生物の計数検出のための画像が生成される。
【0012】
さらに、製剤用水中の微生物の計数のための2時間法が、Jonesら(Pharmacop. Forum 1999, 25, 7626−7645)によって記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願公開第06/065350号
【特許文献2】欧州特許出願第0612850号
【特許文献3】米国特許第5258285号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008014607号
【特許文献5】国際特許出願公開第92/02632号
【特許文献6】米国特許第7312073号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Jones, D. L., M. A. Brailsford及びJ.−L. Drocourt. 1999. Solid−phase, laser−scanning cytometry、Pharmacop. Forum 25:7626−7645
【発明の概要】
【0015】
本発明は細胞膜のダイナミクスの活用に基づき、このダイナミクスによって培養可能(分裂)細胞は膜輸送を持続的に行っている。本発明者らは、培養可能な微生物細胞においては、非分裂細胞よりもはるかに高速に細胞膜が内部移行(internalized)し、内部の膜区画に融合し、再度膜へ組み入れられることを想定してきた。
【0016】
本発明は特に、膜と結合して微生物の細胞内区画へ内部移行(internalize)できる蛍光色素で微生物細胞を染色すると、細胞内に色素が蓄積されるという発見に基づく。この内部移行(internalization)の過程には、蓄積が一定の平坦域に到達する第1期間、T1、及びその後蓄積量が平坦域で安定する特徴的な第2期間、T2という、特有のプロファイルがある。
【0017】
また、さらに、本発明は、所与の微生物細胞型又は微生物細胞群に対して、第1期間T1及び第2期間T2が、(1つ又は複数の)細胞型に特徴的であるという発見に基づく。言いかえれば、T1及びT2は、あらかじめ定義された同一の条件下で計測された場合、所与の細胞型(又は細胞群)に対して本質的に一定のままとなるであろう。
【0018】
したがって、本発明は、第1の態様によると、検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するための方法を提供し、この方法は、
(i)培養可能な微生物細胞を保持できる検査試料を、微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤と接触させるステップであって、前記接触が、信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)行われるステップ、
(ii)前記検出試料から非内部移行信号放出剤(non−internalized signal emitting agent)を除去するステップ、
(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出し、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づくステップ、及び
(iv)前記選択された信号放出物に基づき、検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するステップ
を含む。
【0019】
本発明はまた、検査試料中の培養可能な微生物細胞の数と等しい定量的値を決定するためのキットを提供し、このキットは、
(i)微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤、
(ii)試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルまで信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)するのに十分である、第1期間(T1)、前記少なくとも1つの信号放出剤と試料を接触させるための命令、
(iii)前記試料から非結合信号放出剤を除去するための命令、
(iv)前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出し選択するための命令であって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づき、前記T1に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記検出及び選択を行う、命令、
(v)そこから検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するために、前記選択された信号放出物を使用するための命令
を含む。
【0020】
また、さらに、本発明は、検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するためのシステムを提供し、このシステムは、
(i)前記試料を保持するための、及び1つ又は複数の信号放出剤と試料との接触を可能とするための運搬体、
(ii)試料内の信号放出物を検出し、それに対応するデータを出力するための検出器、
(iii)既定の選択パラメータ及び複数の既定の正規化因子を有するデータベースを含むメモリユニットであって、各選択パラメータ及び各正規化因子が微生物細胞、又は微生物細胞群に特異的である、メモリユニット、
(iv)検出器から出力データを、前記メモリユニットから前記パラメータ及び前記正規化因子の1つ又は複数を受信し、前記パラメータ及び前記正規化因子で前記出力データを処理して、前記試料中の前記培養可能な微生物細胞の数を示す前記定量的値を測定するための処理ユニット
を含む。
【0021】
さらに、本発明は、検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するための方法を実施するマシンによって実行可能な命令のプログラムを確実に実装する、マシンによって読取り可能なプログラムストレージデバイスを提供し、この方法は、
(i)培養可能な微生物細胞を保持できる前記検査試料を、微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤と接触させるステップであって、前記接触が、信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)行われるステップ、
(ii)前記検査試料から非内部移行信号放出剤(non−internalized signal emitting agent)を除去するステップ、
(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出及び選択するステップであって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づくステップ、及び
(iv)前記選択された信号放出物に基づき、検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するステップ
を含む。
【0022】
加えて、コンピュータ上で実行される場合、本発明のすべてのステップを実施するためのコンピュータプログラムコード手段を含み、プログラムストレージデバイス内に実装されているコンピュータプログラムが提供される。
図面の簡単な説明
本発明を理解し実際の実施方法を理解するため、ここで以下に述べる非限定的な例のみを用いて、添付の図面を参照しながら、実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、蛍光色素FM1−43で染色した、市営水道水由来の細菌細胞の混合物(−■−)、単離したエシェリキアコリ(E.Coli)(−◆−)、及びシュードモナスエルジノーサ(Ps.Aeroginosa)(−▲−)を含む試料の時間の関数としての蛍光強度を表すグラフを示す。
【図2】図2は、試料中の微生物細胞のCFU/ml数対同一の試料中の微生物細胞の量の定量的測定値、つまり本発明の方法によって得られた定量的測定値をプロットしたグラフを示す。
【図3】図3A及び3Bは、従来法により得られたCFU/ml数(標準CFU/ml)と、本発明の実施形態により得られたCFU当量の間の相関関係を示すグラフであり(図3A)、また検査試料当たりの各値(CFU当量及び従来のCFU/ml)の間の相関関係を示すグラフである(図3B)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
表2の結果をグラフにもプロットして図3Aに示し、(◆はCFU当量をあらわし、■は標準CFUを表す)CFU当量と標準CFUとの間の相関関係を図3Bに示す。
発明の詳細な説明
一般的に、本発明は、試料、典型的には液体試料中の培養可能な微生物細胞の量を、従来の信号放出剤で試料を染色後、数分以内に定量的に測定するための方法、キット及びシステムを提供する。
【0025】
後述する従属栄養平板計数(Heterotrophic Plate Count)(HPC)等の従来の微生物細胞計数技術では、死細胞と培養可能な微生物細胞を区別し、培養細胞のみを数えるために、長時間にわたる微生物細胞の培養が通常必要となる。培養可能な微生物細胞のうちのいくつかは、コロニー形成単位(CFU/ml)として同定される。これに対して、本発明は、数分以内に培養可能な微生物細胞のみを数え、CFUと等しい定量的値を示すことができる。このように本発明は、従来法と比較して、時間を短縮し、必要な費用を削減しつつ、CFU当量を得ることができる。本発明のCFU当量は、従来のコロニー形成単位の測定値(HPC等)と相関があるが、いくらかの差異は存在し、この差異は、30%の差異を超えず、好ましくは10%の差異を超えず、より好ましくは5%の差異を超えない。
【0026】
本発明の文脈では、用語「培養可能な微生物細胞」又は「培養可能細胞」は、適切な、制御された培地に置いた時、2つの(娘)細胞へ分裂できる、顕微鏡的又は超顕微鏡的な大きさのいかなる細胞(例えば親細胞)をも意味するために使用する。したがって、用語「培養不能な微生物細胞」は、生存可能であっても、培養条件に置いた時、娘細胞に分裂せず、分裂できない細胞を意味する。
【0027】
微生物細胞には、大腸菌群(エシェリキアコリ)(E.Coli)、腸内細菌(サルモネラ菌、リステリア菌、赤痢菌)、シュードモナス群(シュードモナスアウリジノーサ(pseudomonas auriginosa)、シュードモナスフルオレッセンサ(pseudomonas fluorescensa))、ブドウ球菌群(スタフィロコッカスアウレウス(staphilococus aureus)、ストレプトコッカスフェカリス(streptococcus fecalis))、連鎖球菌群、及びメタバクテリア(Methanobacteria)等の細菌、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、ペニシリウム群等のカビ、カンジダ群、サクラミセス(Sachramises)群等の酵母菌、コクシジウム群(Cryptosporidium group)、ジアルジア群、アメーバ等の原生動物、緑藻類等の藻類、好酸性細菌(TAB)、レジオネラ群、ビブリオ属の種、及び他のものがあり、これらに限定されない。
【0028】
本発明は、好ましくはこれに限定されないが、試料内の微生物汚染、例えば疾患の原因となる(病原性)物質の本質的に即座の同定及び定量が必要である場合に、様々に応用できる。例えば、本発明の方法を、飲料水中の微生物細胞の量を定量的に測定するために応用できる。ほかには、産業微生物学(例えば、食品又は飲料、パーソナルケア、工業的工程及び医療関連感染における細胞の存在)、利水システム(飲用水、プロセス水、汚水、天然水源、プール、温泉及び浜辺等の娯楽用の水)、医学用微生物学(血漿、唾液、尿、咽頭試料、胃腸液)、環境微生物学(土壌、地表空気(air surface))等に関連した応用もいくつかある。
【0029】
上述のように、試料中の培養可能な微生物細胞の量をほぼ即時に測定するために本発明が提供する解決策は、膜輸送又は細胞内区画への細胞膜の移動を利用することに基づき、これは、生存可能だが培養不能である細胞内よりも培養可能細胞内で、ある程度、すなわち、1.5、3、6、12、及び最大20倍も活発に起こる。培養不能細胞には例えば、胞子、蘇生細胞等がある。したがって本発明者らは、膜と結合する信号放出剤で細胞膜を染色できるならば、膜輸送が起こると、信号放出剤は培養不能細胞内と比較して培養可能細胞内でより多く蓄積し、したがってこれら培養可能細胞からより強い信号が生じると仮定した。
【0030】
用語「本質的に即座の」又は「即座に」又は「ほぼ即時」は、後述するように、本発明の方法の開始から、検査試料の画像を少なくとも1つ取得し、本発明によるCFU当量を(典型的に及び好ましくは画像処理によって)導き出すまでの時間枠が、20分未満、好ましくは15分未満、より好ましくは10分未満であることを意味する。言いかえれば、本発明の方法は即時であるため、検査試料中の培養可能細胞の数を測定するための長期間(長時間)の細胞培養を必要としない。
【0031】
したがって第1の態様によれば、本発明は、検査試料中の培養可能な微生物細胞の細胞数を示す定量的値を決定するための方法を提供し、この方法は、
(i)培養可能な微生物細胞を保持できる前記検査試料を、微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤と接触させるステップであって、前記接触が、信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)行われるステップ、
(ii)前記検査試料から非内部移行信号放出剤(non−internalized signal emitting agent)を除去するステップ、
(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から、信号を放出する培養可能細胞を検出するステップであって、前記検出が培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づくステップ、及び
(iv)前記選択された信号放出物に基づき、検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するステップ
を含む。
【0032】
本発明に記載の方法は、細胞を培養できる条件で培養可能な微生物細胞を保持できる試料を提供することを含む。この条件は、当業者によって利用可能な技術に基づき容易に決定することができ、試料の中に存在すると考えられる微生物細胞又は微生物細胞群の型に通常依存する。この条件は、例えば、HPCに必要とされる条件に類似又は同一であってもよい。
【0033】
検査試料は液体、半液体、及び乾燥試料でもよい。試料が液体試料である場合、それは測定分析開始前に乾燥させてもよい。試料は、完全に乾燥させる必要はないが、細胞の濃縮物を得るため試料から液体の少なくとも一部を除去して試料内の細胞を濃縮すべきである。
【0034】
液体試料中の微生物細胞の濃縮には、生物学の研究所において利用可能な任意の方法を使用できる。これらの方法には、適切なフィルターによる試料のろ過、遠心分離、及び他の乾燥技術があるがこれらに限定されない。
【0035】
試料(得られたままの試料、又はそこから液体の少なくとも一部を除去した後の試料)を、1つ又は複数の信号放出剤で染色する。本明細書に使用される場合、用語「信号放出剤」は、適切な条件下で検出可能な信号を放出するあらゆる化学物質を意味する。信号放出剤は光放出剤、例えば比色剤、若しくはルミネセンス放出剤であってもよく、後者の場合、例えば光ルミネセンス(蛍光又は燐光を含む)、化学ルミネセンス、放射線ルミネセンス、熱ルミネセンス、又は当技術分野において知られる任意の他の細胞標識の信号放出剤でよい。
【0036】
本発明において使用できるルミネセンス放出成分の例には、ルシフェリン系剤(例えば、6−O−ベータ−ガラクトピラノシルルシフェリン)等の生物発光、Alexa Fluorファミリーメンバー(Invitrogen)、PromoFluor色素(PromoKine)、HiLyte Fluors(AnaSpec)、DyLight Fluors(Pierce、Thermo Fisher Scientific)、及び、ATTO Dyeシリーズ(ATTO−TEC及びSigma−Aldrich)等の蛍光があるが、これらに限定されない。当業者は、本発明において使用できる、様々な蛍光又は他のルミネセンス剤を認識すべきである。
【0037】
一実施形態において、信号放出剤は、親油性のリンカーに結合したルミネセンス、好ましくは、蛍光成分を含むが、親油性のリンカーにより、結合、例えば少なくとも培養可能細胞膜に信号放出剤の少なくとも一部を埋め込むことが可能となり、膜輸送の結果、信号放出剤が細胞内に内部移行(internalization)できる。
【0038】
培養可能細胞の細胞膜への信号放出剤の結合は、通常非特異的で、信号放出剤が親油性であるため(例えば親油性のリンカーへのルミネセンス成分の連結による)である。したがって、非特異性信号放出剤は、全培養可能細菌数(total culturable bacterial count)(TCBC)を得るために通常使用される。
【0039】
本発明はまた、たとえ試料に微生物が混合していても、試料中の特定の型の培養可能な微生物細胞の細胞数を得ることができる。これは、様々な特異的な信号放出剤を単独で、又は非特異的な信号放出剤と併用して使用することで実現できる。
【0040】
用語「特異的な信号放出剤」の文脈における用語「特異的な」又は特異性」は、信号放出剤が特定の細胞型(試料中で検出されるのが望ましい細胞)の膜又は細胞内の構成成分への親和性及び/又は選択的結合性を有することを意味するために使用される。
【0041】
特異的な信号放出剤は、標的実体、つまり細胞の細胞外成分に対して結合特異性を有するリガンドを含んでいてもよい。一実施形態において、標的化された信号放出剤は、培養可能細胞に内部移行(internalize)できるため、信号放出剤を内部移行(internalized)した培養可能細胞のみを検出できる。
【0042】
別の実施形態において、標的化された(特異的)信号放出剤は、標的とする細胞内に内部移行(internalize)せず、非特異的な信号放出剤とこの特異的な信号放出剤の併用によって、標的とする細胞の検出が可能となる。したがって、非特異的な信号放出剤より全培養可能な細菌数が分かり、特異的な信号放出剤により、(信号が特異的に結びつく)細胞型の全数が分かる。その後、2つの信号放出剤で得られた画像から放出された信号を重ね合わせ、両信号を放出する、すなわち、培養可能であり、特異的な信号放出剤と結合できるという両基準を満足する細胞のみを導き出す。
【0043】
酵素物質を使用して、信号放出剤を特異性としてもよい(例えば酵素が細胞型に特異的な細胞内反応を活性化する)。このような酵素には、オルト−ニトロフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシドに作用し信号を放出する分解物を生成するものがあるが、これらに限定されない。これにより、信号放出分解物を生成する特定の酵素を有する試料中の特定の細胞集団の同定を容易にできる。
【0044】
またさらなる例において、細胞特異的抗体(モノクローナル、またポリクローナル)の使用により、特異性(標的化)を実現してもよい。抗体の例には、抗サルモネラLPS抗体、抗CD18抗体、エシェリキアコリLPS抗体(例えばエシェリキアコリJ5LPS抗体)、抗サルモネラ鞭毛抗原抗体、抗エシェリキアコリK99接着因子抗体がある。またさらなる例として、抗体は免疫リポソーム(リポソームに連結した抗体)でもよい。
【0045】
別の例において、バクテリオファージ(例えば蛍光バクテリオファージ)を使用して、特異性を実現してもよい。本発明の方法では、数分以内に定量的値が得られるため、蛍光バクテリオファージが細胞を損傷する前に、分析を完了できる。例として、バクテリオファージ、ラムバ コリファージ1(Lamba Coliphage 1)(LG1)を使用して、エシェリキアコリを検出し定量してもよい。
【0046】
非特異的及び特異的信号放出剤の併用の一例として、これに限定されないが、コレラ種を検出するためには、ルミネセンス部分をコレラB毒性結合タンパク質に接合することがあり、エシェリキアコリは、エシェリキアコリ特異的膜リポ多糖に連結したルミネセンス部分を使用して定量することができ、それぞれ、例において使用されるFM1−43等の非特異的な信号放出剤と併用して使用される。
【0047】
信号放出剤は絶えず信号を放出できる、又は細胞内区画内で行われる酵素プロセス、信号放出剤から信号を放出させるように操作する酵素反応、若しくは、(上述のように)信号を放出する酵素分解物、放射刺激等の刺激の結果、信号を発生できることに留意されたい。
【0048】
接触段階で、信号放出剤は細胞の膜と結合する。本発明の文脈において、用語「結合」は、細胞の膜と信号放出剤とのあらゆる種類の交互作用を意味し、静電結合、イオン結合、共有結合、マーカーの少なくとも一部の細胞の膜への埋め込み、抗原抗体結合、レセプターリガンド結合などを含むが、これらに限定されない。本発明の文脈において、用語「結合」はまた、細胞に既に内部移行(internalized)されたあらゆる信号放出剤を包含する。
【0049】
培養可能な微生物細胞を保持する試料は、信号放出剤が細胞内に内部移行(internalization)するのに十分であり、信号放出剤が細胞内に蓄積するのに十分な期間接触させる。本発明者らは、膜輸送は、培養不能細胞内よりも培養可能細胞内で活発に起こり、培養可能細胞には、細胞内に信号放出剤がより多く蓄積することを発見した。所与の条件下で蓄積された信号放出剤の量に関して、培養不能と培養可能細胞の間の差は、1.5、3、6、12、及び最大20倍にもなる。さらに、細胞内の信号放出剤の蓄積が平坦域に到達することが本発明者らによって測定された。
【0050】
信号放出剤が平坦域に到達するまでに必要な期間は、「T1」として本明細書に定義される。期間T1は細胞型に特徴的であらかじめ決定されている。T1は、選択された細胞型を信号放出剤で染色し、信号強度の変化を、信号強度に本質的に変化がなくなるまで検出することによりあらかじめ決定される。信号強度に明らかな変化がなくなった時点を、平坦域に到達した時点と定義する。本明細書に使用される場合、用語「平坦域」は、少なくとも50、250、及び最大900秒間同じままである細胞内に蓄積された信号放出剤のレベルを意味する。
【0051】
単離されたエシェリキアコリを含む試料の非特異性信号放出剤FM1−43(Molecular probes製)による染色では、取得された信号レベルが定常状態のレベルに到達するまでに約90〜110秒間のT1が必要であり、一方、単離されたシュードモナスエルジノーサを含む試料のFM1−43による染色では、定常状態のレベルに到達するまでに約70〜100秒間のT1が必要であることを示す、本明細書に示された例を、例示のために参照する。
【0052】
T1は検査試料に存在し得る細胞(又は細胞群)に対して事前に決定されるので、非結合、及び好ましくは非内部移行信号放出剤(複数可)(non−internalized signal emitting agent(s))を洗い出す時点を決定できる。信号放出剤の洗浄は当技術分野において知られるいかなる技術によって行ってもよい。洗浄方法には、ろ過(例えば従来の微生物フィルターを用いる)、遠心分離(例えば4500rpm超)、及び液体試料中で溶解又は懸濁した非結合剤(複数可)から細胞を分離できる任意の他の技術があるが、これらに限定されない。
【0053】
信号放出剤が結合した細胞は、信号放出物として検出される。しかしながら、周知のように、信号放出剤は、細胞の構成成分、又は無傷の培養可能細胞でない、試料中の他の人為産物とも結合して、誤った信号を出す可能性もある。同様に、信号は凝集した信号放出剤(例えば、試料に十分に溶解しなかった)から出ている可能性がある。したがって本方法は、信号放出剤が結合し内部移行(internalized)した細胞に由来する信号放出物のみを検出し選択するツールを提供する。本発明の文脈において、用語「信号放出物」は、信号を放出する検査試料からのあらゆる光スポットを意味する。信号放出物は細胞の大きさを有する必要はなく、実際には、細胞から放出された信号で細胞の周囲に形成された光ぼけ、特に画像化された細胞の焦点(「錯乱円」)がずれている場合に、より大きくなる場合がある。これは、信号放出細胞を画像化するときに、レンズから出る光錐が焦点に正確に合わないために起こる。信号が第2期間、T2で平坦域に到達した後、検出と選択が実行される。この期間、T2は、信号放出物から放出された信号が、本質的に定常状態である平坦域に留まっている間の時間枠を表す。
【0054】
T2の間、信号パラメータがいくつか検出される。これらのパラメータには、信号放出物から放出された信号の強度、検査試料内の信号放出物の大きさ、信号放出物の形態がある。
【0055】
微生物細胞又は微生物細胞群に対する選択基準では、検出された物体から放出された信号の強度が少なくとも既定の上限を下回り、いくつかの実施形態では既定の強度範囲内にあることが要求される。したがって、例えば細胞フラグメント(死滅細胞又は傷害細胞)から放出された、既定の最小レベルを下回る信号強度、又は、例えば試料内の信号放出剤の凝集物、又は細胞でない物体から放出された既定の最大レベル(上限)を上回る信号強度は廃棄される。
【0056】
選択基準では、信号放出物が既定の大きさの範囲を有することも要求される。これには、(例えば、細胞フラグメントに関した)最小閾値を下回る、又は(例えば試料中の大型の物体から求められた)最大閾値を上回る物体を廃棄することを含む。
【0057】
さらに、選択基準では、信号放出物が既定の形態を有することが要求されてもよい。周知のように、細胞の形態は一般的に所与の細菌種に特徴的であり、このような細胞には、様々な形態がある。これらには、本質的に円形(例えば球菌)、本質的に長方形(例えば桿菌)、棒状の形態等がある。信号放出物は、信号が放出される細胞の形態に対応した(似た)形状を通常有するであろう。例えば長方形の信号放出物は、通常、長方形の微生物細胞由来である。物体の形状の検出により、非微生物の信号放出物(すなわち人為産物)を廃棄できるだけでなく、信号を放出する細胞の型の同定も容易になる。
【0058】
一実施形態において、信号放出物の検出及び選択には、少なくとも強度パラメータ及び大きさのパラメータを満たすことが必要である。
【0059】
選択パラメータが応用間で変動する場合があることは知られている。例えば、飲料水の検査における範囲、閾値及び選択された形状は、例えば湖の水質検査における既定のものとは異なる場合がある。
【0060】
以下の非限定的な例では、少なくともエシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサを含む微生物の混合物に対して、大きさの範囲を、径0.8〜2μmと決定し、強度パラメータは254GL未満(及び60〜254GL範囲内、例には示さない)と決定した。
【0061】
一実施形態において、信号放出物の同定には少なくとも2つのパラメータ、好ましくは、強度パラメータ及び大きさのパラメータを満たす必要がある。一旦既定の選択基準を満たす信号放出物を同定すれば、これらの物体を選択し、これらの物体から定量的値を導き出す。一実施形態において、それら強度の平均平方根値をまとめており、このまとめた強度は、好ましくは既定の正規化因子で正規化され、(例えば既定の式(下記材料及び方法を参照)を使用することによって)試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値(つまりCFU当量)を得る。正規化因子は、試験試料の型毎(つまり応用毎)の細胞型に、又は細胞群に特異的で、応用毎の制御条件下で事前に測定された試験試料中の細胞の量に基づいて決定される。例えば、正規化因子は、ある地理的場所の飲料水用の制御条件下で、上述のように取得した画像から得た、HPC等の従来法によって得られた細胞数(CFU/ml)と相関する値によって一旦決定する。この正規化因子はその後、将来その場所での飲料水の品質を測定するために使用できる(材料及び方法を参照)。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、0.025x+0.3375(xは全蛍光の対数のスケール)の正規化因子(式)は、エシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサの混合物を含む検査試料に対して決定された。
【0063】
本発明はまた、検査試料における培養可能な微生物細胞の数と等しい定量的値を測定するためのキットを提供し、このキットは、
細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤、
前記試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルまで前記信号放出剤が前記細胞内に内部移行(internalization)するのに十分である第1期間(T1)、前記少なくとも1つの信号放出剤と前記試料を接触させるための命令、
前記試料から非結合信号放出剤(non−associated signal emitting agent)を除去するための命令、
前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出及び選択するための命令であって、前記検出が前記培養可能な微生物細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づき、前記第1期間(T1)に続く、試料から放出された信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、検出及び選択を行う、命令、
そこから前記試験試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するために、前記選択された信号放出物を使用するための命令
を含む。
【0064】
キットはまた、前記信号放出剤で試料を染色する前に前記試料から液体の少なくとも一部を除去するための命令を含んでもよい。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、キットは複数の信号放出剤を含む。複数の信号放出剤は、応用、すなわち家庭用の市営水道水品質検査用キットに対して特徴的であり、したがってこのキットには市営水道水において通常見られる微生物細胞に特異的な信号放出剤が含まれることとなる。
【0066】
一実施形態において、命令には、検出される細胞又は細胞群の選択指針が含まれ、前記細胞又は細胞群に対して既定の信号強度の上限及び/又は信号強度範囲、検出される物体の大きさの範囲、既定の信号放出物の形態、及び指針を満たす物体を選択するための命令も含まれる。
【0067】
さらに、この特定の態様においては、キットは、1又は複数の既定の細胞に特異的な正規化の式、つまり細菌細胞型、菌類、又は他の微生物の型に特異的な正規化の式、及び前記既定の式を使用してCFU当量である定量的値をそこから導き出すための命令を含むことができる。
【0068】
本発明はまた、試験試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するためのシステムであって、このシステムは、
試料を保持し、試料と1つ又は複数の信号放出剤との接触を可能とするための運搬体、
試料内の信号放出物を検出し、それに対応するデータを出力するための検出器、
既定の選択パラメータ及び1つ又は複数の既定の細胞特異的な正規化因子を有するデータベースを含むメモリユニットであって、各選択パラメータ及び各正規化因子が微生物細胞、又は微生物細胞群に特異的である、メモリユニット、
検出器から出力データを受信し、前記メモリユニットから、微生物細胞、又は微生物細胞群に特異的である選択パラメータ及び前記正規化因子を受信し、前記パラメータ及び前記正規化因子で前記出力データを処理して、試料中の前記培養可能な微生物細胞の数と等しい定量的値をそこから決定するための処理ユニット
を含む。
【0069】
運搬体は生物の細胞を保持できるいかなる容器でもよい。一実施形態において、運搬体は、前記試料から液体の少なくとも一部をろ過除去し、半乾燥又は乾燥試料を保持するためのフィルターを含む。
【0070】
本発明による検出器は、試験試料から放出されたルミネセンス信号の1つ又は複数の画像を取得できるカメラ等の、ルミネセンス画像システムを通常含む。本発明により使用することができるカメラの非限定的な例には、電荷結合素子(CCD)、CMOS検出器、フォトダイオード(PD)検出器、光電子増倍管(PMT)、γ計数器、シンチレーション計数器、又は当技術分野において知られる、ルミネセンス物体を画像化するあらゆる他の信号捕捉デバイスがある。
【0071】
画像処理ユニットは、試験試料から放出された1つ又は複数の画像を受信し、そこから信号放出物の選択パラメータに基づいて、試料中の培養可能細胞の数を同定するように構成する。
【0072】
本明細書中において使用される場合、用語「処理ユニット」は、試料中の信号放出物から測定された信号パラメータを収集し、あらかじめ定義された条件に従う信号パラメータ選択からなるデータ分析を行い、選択された選択パラメータに基づいて定量的値を出力するようにあらかじめプログラムされたいかなるデータ処理及び分析ユーティリティをも意味する。したがって、処理ユニットは、分析を行うように構成されているコンピュータベースのプログラムを有する。
【0073】
一実施形態において、画像処理ユニットは、全信号放出物から既定の範囲内の信号強度、既定の範囲内の大きさ、及び既定の形態を有する信号放出物を選択し、選択された信号放出物の平均平方根値の強度を決定するように構成されている。処理ユニットは、選択された物体から放出された平均平方根値強度に基づいた定量的値を出力するようにさらに構成されている。
【0074】
また、さらなる実施形態においては、画像処理ユニットは、データベースから検索された正規化因子で定量的値を正規化し、CFU/ml数と等しい正規化値を得るようにさらに構成されている。
【0075】
本発明を説明的方法で記述してきたが、使用した用語は、限定ではなく説明の言葉としての使用を意図していることを理解すべきである。明らかに、本発明の多数の修飾及び変更は、上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、特に以下に記述される以外でも、本発明は実行され得ることを理解するべきである。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「これ(the)」の形態は、特記しない限り、単数と同様に複数も含む。例えば、用語「1つ(a)の信号パラメータ」は1つ又は複数のパラメータを含む。
【0077】
さらに、本明細書に使用される場合、用語「含む(comprising)」は、方法、キット及びシステムが列挙された要素を含むが、他を排除しないことを意味するよう意図される。同様に、「から本質的になる」は、方法、キット及びシステムが、列挙された要素を含むが、本発明の実行に本質的に重要である他の要素を排除することを定義するために使用される。「からなる」は、他の要素のわずかな要素を超えたものを排除することを意味するものとする。各移行部によって定義された実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0078】
さらに、すべての数値、例えば、濃度又は用量又はそれらの範囲は、表示された値の(+)又は(−)20%まで、時には10%まで変動する近似値である。たとえ常に明記していなくても、数値的な内容はすべて、用語「約」が数値に先行するように読まれるべきであると理解すべきである。常に明記していなくても、本明細書に記載の試薬は、単に代表的なものであり、当技術分野において知られる同様のものの等価物であることも理解されるべきである。
【実施例】
【0079】
非限定的な代表的実施形態の説明
一般
以下の非限定的な例において、既定濃度の細菌と混合した市営水道水(水道水)を含む試料を使用し本発明の方法の有効性を測定した。
【0080】
各試料において、本発明の方法と共に、標準CFU計数も使用して、生存可能な増殖微生物の量を定量した。(水及び廃水の検査のための標準的な方法(Standard Methods for Examination of Water & Wastewater(Lenore S. Clescerl(編), Arnold E. Greenberg(編), Andrew D. Eaton(編) 18−th Edition, 2002.)結果を比較し、本発明の方法の有効性は、CFU法に対してR2=0.997の相関関係を有していた。
材料及び方法
微生物細胞
微生物細胞原料調製物(microbial cell stock preparations)を3つ用意した。
【0081】
エシェリキアコリ(第1調製物)及びシュードモナスエルジノーサ(第2調製物)を天然形態で水道水から単離し、エシェリキアコリには、Tryptone Bile X−Glucuronide(TBX)培地(Promega製)及びシュードモナスエルジノーサには、セトリマイド寒天(Promega製)を使用した。第3調製物は一般の水道水を含有し、微生物混合調製物と呼ぶ(一般的に微生物の混合物を含有すると思われるため)。
【0082】
培養し単離したエシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサ、及び水道水の調製物をそれぞれブロス増殖培地へ移し、溶原培地(LB)(Promega Cat.#7290A)を使用して振動させながら培養した。
【0083】
3つの調製物の培養条件
エシェリキアコリ 35℃で18時間
シュードモナスエルジノーサ 30℃で40時間
微生物細胞混合水 30℃で72時間
培養された調製物をIso標準PBSを使用して、遠心分離(6,000rpmを5分間)で3回すすいだ。この段階で、微生物のろ過CFU数として測定される微生物濃度を次のように測定した。
【0084】
エシェリキアコリ 約1010CFU/ml
シュードモナスエルジノーサ 約109CFU/ml、及び
微生物混合物由来の水 約108CFU/ml
その後、滅菌PBSで微生物調製物(エシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサ)を希釈し、水道水細菌混合調製物を滅菌された水道水(0.22μmの微生物フィルター(Milipore製)で水道水をろ過して調製)で希釈するか、そのままとした。従属栄養平板計数(Heterotrophic Plate Count)(HPC)は微生物ろ過(0.45μmフィルター)方法を用いて(水及び廃水の検査のための標準的な方法(Standard Methods for Examination of Water & Wastewater/ By Lenore S. Clescerl(編), Arnold E. Greenberg(編), Andrew D. Eaton(編) 18−th Edition, 2002.)、0.01mlから1リットルの範囲の懸濁検査容積で調製した。フィルターをPCA(Promega Cat.#7157A)培地上で以下のような培養条件で培養した。
【0085】
エシェリキアコリ 35℃で24時間
シュードモナスエルジノーサ 30℃で48時間
細菌混合 30℃で72時間
検査容積1リットルまでCFU計数の結果を正規化した。
蛍光色素
以下の実験では、FM1−43スチリル色素(Nishikawa S. Sasaki F. Xenopus larvae中の測線器官の有毛細胞におけるスチリル色素FM1−43の内部移行(Internalization of styryl dye FM1−43 in the hair cells of lateral line organs in Xenopus larvae, Histochem Cytochem, 1996 44(7):733−41))をPBS中、1μg/ml濃度で使用した。
染色法
FM1−43スチリル色素を使用して、室温(約25℃)で微生物細胞調製物の蛍光染色を行った。染色時間及び作業時間枠は細胞の単層調製物を使用して測定した。信号が信号平坦域に到達するのに必要とされる時間は2分であり(T1、下記のT1とT2の測定を参照)、平坦域は、約600秒定常状態に留まる(T1、下記のT1とT2の測定を参照)ことが測定された。染色の終わりに、培養物をIso標準PBSで3回すすいだ。同様の染色法をフィルター表面に付着している培養物又は懸濁培養物に使用したことに留意されたい。(つまり、この染色法は単層調製物に特異的ではない。)
蛍光画像法
信号放出試料の蛍光画像はAxiovert200顕微鏡(Karl Zeiss)、1.3NA Plan Neofluor X10対物レンズ、BP450−490励起フィルター(励起450〜490nm、ビームスプリッターFT510nm、発光(emission)515−565nm、Karl Zeiss)を使用して取得した。
画像取得
画像は、標準Sensicam qe(Cooke Corp.)512×512CCDを使用して取得した。
画像処理
画像処理とデータ収集はImagePro+ソフトウエア(2002)を使用して実施した。
T1とT2の測定
T1を測定するために、3つの試料を原料調製物から調製した。
すなわち、水道水に天然に存在する細菌混合物を含む水道水試料(上述のように培養培地で培養しPBSで洗浄)、第2の試料である単離されたエシェリキアコリ(上述のように培養しPBSで洗浄)、第3の試料である単離されたシュードモナスエルジノーサ(上述のように培養しPBSで洗浄)。
【0086】
各原料調製物由来の試料をHPC形態法に従い分析し、対応する従来のCFU/ml数を得た。
【0087】
その後、各試料をPBSで希釈し、約1000CFU/ml濃度の試料を得た。次いで、各試料をFM1−43で染色し、(上述のように)単層にして、単層から放出された信号が平坦域に到達するまで10秒毎に画像を取得した。信号が平坦域に到達した時間をT1とした。
T2の測定
3つの調製物をそれぞれ希釈した3つの試料を新たに用意し、試料を染色後約110秒でPBSで洗浄し、単層にして、信号の減衰開始まで10秒の時間系列で画像を取得した。信号の減衰開始時点をT2とした。
【0088】
以上の手順を3度繰り返した。測定セッション中に取得された信号の強度をプロットした。図1にその結果を示す。
CFU当量の決定
CFU当量を同定する(すなわち標準CFU/ml数で本発明の測定をキャリブレートする)ために、3つの異なった地理的な場所(A、B、及びC)から水道水の試料を計3つ採取し使用した。T1の測定に関して、各場所からの調製物を上述のように調製し、単離されたエシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサの試料、及び細菌の混合物試料を得た。各場所に対して、各細菌細胞の濃度又は各調製物の全細菌数をHPC形態法に基づいて事前に測定し(つまり希釈前にTBCを得る)、その後細菌混合調製物の試料(つまり各場所から計3つ)を滅菌水で希釈し、4つの近似濃度、1000CFU/ml、100CFU/ml、10CFU/ml、及び1CFU/ml、すなわち計12の試料を得た。
【0089】
12の試料をそれぞれ、HPC形態法、及び本発明の方法でも分析した。後者の場合、上述のようにFM1−43で各試料をそれぞれ染色し、120秒後、滅菌水で洗浄し(つまり平坦域の初めで)、直ちに画像化した(約150〜180秒で)。画像は信号選択パラメータに従って処理された。特に、画像を取得するとすぐに、選択パラメータを満たす物体の数を数え、それらの平均平方根強度を測定した。選択の結果を、下の表1Aと1Bに示す。
【0090】
上で調製された試料から単離されたエシェリキアコリ及びシュードモナスエルジノーサは、細菌の混合試料と同様に処理した。変化のダイナミクスは細菌混合物のものと類似しており、同様の濃度の細菌混合試料から得た信号に有意な変化がないことが観察された(データは非表示)。
本発明の方法の検証
3つの異なった場所から合計48の微生物の試験サンプルを上述のように調製した(各場所から4つの試料をそれぞれ3セット)。特に、各場所からの調製物(細胞濃度不明)は、滅菌水で×10、×100に希釈するか、又は希釈しなかった。また、0.22μmメッシュフィルター(ニトロセルロース、Milipore製)でろ過して、各場所の原料調製物の試料1つを滅菌した。
【0091】
その後、各試験試料をFM1−43で染色し、滅菌水で洗浄し、従来のHPC法又は上述の本発明の方法を使用して分析した。結果を以下の表2に示す。
蛍光測定
蛍光測定及び対応するCFU計数はすべて室温(約25℃)で行った。
画像化と信号処理
画像分析のために、微生物信号放出物(つまり計数される物体)を大きさ0.8〜1.5μmであると決定したが、これは光学顕微鏡によって可視化された時、12〜28ピクセルに対応する(非限定的な例で使用した特定の設定)。これらを選択基準とした。
【0092】
本明細書の非限定的な例において、特に述べない限り、染色後150〜180秒後に試料の画像を取得した(つまり染色後2分経過後直ちに)。さらに、「微生物物体」の最大蛍光強度を254階調(又は60〜254GLの間)とするために、照射時間をキャリブレーションした。照射時間を0.8秒に調節した。
【0093】
平均値算定及び標準偏差(パーセントで)を定量的値を決定するため使用した。
結果
本発明は、増殖する(培養可能)微生物細胞が細胞外の細胞壁の脂質画分を内部移行(internalize)し、ある期間(培養不能な微生物細胞と比較して高速で)細胞内で脂質画分を凝縮できるという知見に基づく。膜輸送速度及びその細胞内濃度レベルは、細胞活動の関数の1つであり、増殖可能な微生物において非常に高レベルである。したがって発明者らは、試料中の生存可能であり増殖可能な細胞を識別しその量を定量するためにこの事象を利用することを想定してきた。
T1とT2の測定
図1は、染色後、信号が平坦域に到達するまで、FM1−43が約120秒間かけて蓄積されたことを示す。したがって、この時点を、T1としてマークする。細胞内の色素の安定した蓄積は、平坦域の開始から115〜550秒の時間枠において安定し一定に維持される。言いかえれば、細胞の混合物の細胞内区画での蛍光色素の蓄積は、115秒後に安定し、少なくとも550秒間そのままである。したがって、液体試料中のエシェリキアコリ及び/又はSp.エルジノーサ(Sp. Aeruginosa)の定量的測定において、約115秒から約550秒までの時間枠が有効な計測枠T2であると決定した。
CFU当量の測定
上述のように、CFU当量の測定に使用する12の微生物試料の画像を処理し、ここから、既定の選択基準(すなわち大きさ0.8〜1.5μm、これは光学顕微鏡によって可視化された時12〜28ピクセルに対応する、最大強度254階調)を満たす物体を選択した。
【0094】
選択された物体に対する強度の測定された平均平方根値を、従来のHPC形態法により得られたCFU/ml数と一緒に表1A及び1Bに示す。原料調製物に対して得られたCFU/ml数に基づき、近似の濃度を決定した。場所(A、B、又はC)及び場所ごとの試料番号(Xl、X2、又はX3)により各試料を識別する。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
表1Aに示した結果は図2にも示す。図2は、標準HPC法によって得られたCFU/ml値と、本発明の方法によって得られた定量的値との間の相関関係を示す。図2は、2つの測定法の間の相関関係が、下記の式で表せることを特に示す。
y=0.025x+0.3375、
したがって、この式を、市営水道水システムの水道水試料中に存在する微生物混合物を定量的に測定するための正規化因子と決定した。
CFU当量法の検証
未知の水道水試料に関して上記の式の精度を検証するために、さらなる分析を行った。分析は、異なった場所の市営水道水の試料に対して上述したように、しかし細菌濃度は事前に決定せずに行った。各場所から試料を3つ採取した。試料をすべて、材料及び方法で記述したように希釈し(検証ステップのための調製)、上記で確認した正規化の式を使用する本発明の方法によるCFU当量数、及び標準CFU数を測定するため、平行して検査した。試料は場所、希釈、及び3セットの試料番号、すなわち各場所に対してA、B、又はC、各希釈に対して例えばA、A、A、A、3セットに対してA1、A1、A1で識別することに留意されたい。したがって、例えば、試料A1aは、場所1からの3つの試料のうちの1つで希釈していないことを意味する。
【0098】
結果を、様々な液体試料のCFU当量数(本発明の方法)と標準CFU数の間の比較を表す表2に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
表に示したように、本発明の方法によって得られた定量的値(すなわちCFU当量)と従来のHPC方法によって取得された値との間の差は、すべての検査試料において10%未満であった。相関関係はR2=0.9978であることが判明し、本発明の方法によるCFU当量数は、ほぼ即時にCFU数として問題なく使用できることを裏付ける。
【0101】
表2の結果をグラフにプロットし、図3Aに示し(◆はCFU当量をあらわし、■は標準CFUを表す)、CFU当量及び標準CFUの間の相関関係を図3Bに示す。
増殖可能な微生物の定量に対する標準CFU数及びCFU当量の決定の比較
本発明に記載のCFU当量は、液体試料中の微生物を高速に、及びほぼ即時に定量するための方法を提供する。CFU当量は標準CFU計数方法と比較して、単に時間がかからないというだけでなく、標準CFU計数を使用する場合、数日必要であることと比較して、ほぼ即時(5〜10分)に結果を入手できる。
【0102】
さらに、CFU当量数の取得は、安価で、工程を自動化でき、大型の作業スペースを必要とせず、検査地域の近くで測定可能である。比較の結果を図3A、及び図3Bに示す。特に、図3Aは、2つの測定技術の間には、おおよそ線形相関があること、すなわちR2=0.9978であることを示し、図3Bは、各試料において、各方法(HPC又は本発明の方法)により取得された値がほぼ重なることを示す。したがって、本発明の方法によりCFU当量値を問題なく提供できることが結論づけられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するための方法であって、
(i)培養可能な微生物細胞を保持できる前記検査試料を、微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤と接触させるステップであって、前記接触が、前記信号放出剤が前記微生物細胞内に内部移行(internalization)し、前記試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)行われるステップ、
(ii)前記検査試料から内部移行しなかった(non−internalized)信号放出剤を除去するステップ、
(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出するステップであって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づくステップ、及び
(iv)前記選択された信号放出物に基づき、前記検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記信号放出剤で前記試料を染色する前に前記検査試料から液体の少なくとも一部を除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体の除去が、ろ過又は遠心分離の1つ又は複数による、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が1つ又は複数の型の微生物細胞を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記信号放出剤がルミネセンス剤又は光放出剤である、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料を、前記試料に存在すると考えられる選択された微生物細胞に対して特異性を有する少なくとも1つの追加の信号放出剤と接触させるステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料の各信号放出剤から放出された信号を検出し、そこから試料中の培養可能な特異的な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各値が試料において特異的な微生物細胞の数、又は特異的な群の微生物細胞の数を示す、複数の定量的値を決定するための、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記選択パラメータが、信号放出物から放出された信号の強度、信号放出物の大きさ、信号放出物の形態から選択された2つ以上のパラメータを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
既定の上限を下回る信号強度、及び物体の大きさのある範囲内の大きさを少なくとも有する信号放出物のみが検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
既定の強度範囲内の信号強度、及び物体の大きさのある範囲内の大きさを少なくとも有する信号放出物のみが検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記選択された物体の前記定量的値を算出するステップを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記定量的値が、前記選択された物体の平均平方根強度を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記定量的値が、コロニー形成単位(CFU)数に対応するように正規化され、正規化された定量的値がCFU当量である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記正規化が、既定の細胞特異的な正規化因子で前記定量的値を因数に分解し(factoring)、前記CFU当量を得るステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
検査試料中の培養可能な微生物細胞の数と等しい定量的値を決定するためのキットであって、
(i)微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤、
(ii)信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)、試料を前記少なくとも1つの信号放出剤と接触させるための命令、
(iii)前記試料から非結合信号放出剤(non−associated signal emitting agent)を除去するための命令、
(iv)前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出し選択するための命令であって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づいており、前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、検出及び選択を行う、命令、
(v)そこから検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するために、前記選択された信号放出物を使用するための命令
を含むキット。
【請求項17】
前記信号放出剤で試料を染色する前に前記試料から液体の少なくとも一部を除去するための命令を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
2つ以上の信号放出剤を含む、請求項16又は16に記載のキット。
【請求項19】
信号放出剤がルミネセンス剤又は光放出剤である、請求項16から18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
前記信号放出剤が蛍光色素である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
選択パラメータ、及び前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能な微生物細胞を選択するために前記選択パラメータの少なくとも2つを使用するための命令を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
前記選択パラメータが、既定の信号強度の上限、信号強度範囲、既定の信号放出物の大きさの範囲内の大きさ、及び信号放出形態を含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
既定の上限を下回る信号強度を有する、又は物体の大きさのある範囲内であり、既定の大きさの範囲内の大きさを有する信号放出物のみを選択するための前記選択パラメータの少なくとも2つを使用するための命令を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記選択された物体から前記定量的値を算出するための命令を含む、請求項15から23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
前記命令が、前記選択された物体の平均平方根強度を計算し、それから前記定量的値を得ることを含む、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
コロニー形成単位(CFU)数当量を得るために正規化因子で前記定量的値を正規化するための命令を含む、請求項16から25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
1つ又は複数の既定の正規化因子、及び測定された定量的値から前記CFU当量を導き出すために前記既定の正規化因子を使用するための命令を含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するためのシステムであって、
(i)試料を保持し、試料と1つ又は複数の信号放出剤との接触を可能とするための運搬体、
(ii)試料内の信号放出物を検出し、それに対応するデータを出力するための検出器、
(iii)既定の選択パラメータ及び複数の既定の正規化因子を有するデータベースを含むメモリユニットであって、各選択パラメータ及び各正規化因子が微生物細胞、又は微生物細胞群に特異的である、メモリユニット、
(iv)検出器から出力データを受信し、前記メモリユニットから前記パラメータ及び前記正規化因子の1つ又は複数を受信し、前記パラメータ及び前記正規化因子で前記出力データを処理して、前記試料中の前記培養可能な微生物細胞の数を示す前記定量的値を決定するための処理ユニット
を含むシステム。
【請求項29】
前記運搬体が、前記試料から液体の少なくとも一部をろ過除去するためのフィルターを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記検出器が、前記検査試料中の信号放出物の画像を取得するためのカメラを含む、請求項28又は29に記載のシステム。
【請求項31】
前記処理ユニットが、前記検出器から受信したデータから、検出された各信号放出物の信号強度、信号放出物の大きさ、信号放出物の形態を測定するように構成されている、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記処理ユニットが、既定の強度閾値を下回る信号強度、及び既定の大きさの範囲内の大きさを有する信号放出物を選択するように構成されている、請求項28から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記処理ユニットが、既定の強度範囲内の信号強度、及び既定の範囲内の大きさを有する信号放出物を選択するように構成されている、請求項28から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記処理ユニットが、選択された信号放出物から放出された強度の平均平方根に基づいて定量的値を出力するように構成されている、請求項32又は33に記載のシステム。
【請求項35】
前記処理ユニットが、前記データベースから検索された正規化因子で定量的値を正規化するように構成されている、請求項28から34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
1つ又は複数の信号放出剤のカセットを含み、前記カセットが前記1つ又は複数の信号放出剤を前記運搬体に放出するのを可能にし、前記運搬体内での前記1つ又は複数の信号放出剤と検査試料との接触を可能にするようにあらかじめプログラムされている、請求項28から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
それぞれが信号放出剤を運搬するカセットのアレイを含み、前記カセットのアレイから1つ又は複数の信号放出剤を運搬体に放出するのを可能にするようにあらかじめプログラムされている、請求項28から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
検査試料中の培養可能な微生物細胞の数を示す定量的値を決定するための方法を実施するマシンによって実行可能な命令のプログラムを確実に実装する、マシンによって読取り可能なプログラムストレージデバイスであって、前記方法が、
(i)培養可能な微生物細胞を保持できる前記検査試料を、微生物細胞の膜と結合できる少なくとも1つの信号放出剤と接触させるステップであって、信号放出剤が微生物細胞内に内部移行(internalization)し、試料から放出された信号が平坦域に本質的に到達するレベルとなるのに十分である既定の第1期間(T1)、前記接触が行われるステップ、
(ii)前記検査試料から非内部移行信号放出剤(non−internalized signal emitting agent)を除去するステップ、
(iii)前記第1期間(T1)に続く、前記信号が前記平坦域において本質的に維持される第2期間(T2)の間、前記試料内の信号放出物から信号を放出する培養可能細胞を検出及び選択するステップであって、前記検出が前記培養可能細胞に対してあらかじめ決定された選択パラメータに基づいているステップ、及び
(iv)前記選択された信号放出物に基づき、検査試料中の培養可能細胞の数を示す定量的値を決定するステップ
を含む方法。
【請求項39】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実施するための前記マシンによって実行可能な、請求項38のプログラムストレージデバイス。
【請求項40】
コンピュータ上で実行される場合、請求項1から15のいずれか一項に記載のすべてのステップを実施するためのコンピュータプログラムコード手段を含み、プログラムストレージデバイス内に実装されているコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2011−527562(P2011−527562A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517312(P2011−517312)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000690
【国際公開番号】WO2010/004567
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511007727)ティーエーカウント イグザクト リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TACOUNT EXACT LTD.
【Fターム(参考)】