説明

培養装置

【課題】HID光源のように、その先端より中心軸方向に発せられる高輝度の光に関しても、光エネルギーの損失を極力抑えることが可能であり、しかも、光源からの放熱による培養液の温度上昇を、簡易な構成によりコストアップを招くことなく容易に抑えることができる培養装置を提供する。
【解決手段】中心側が上下に開口した中空部25となる中空筒状に透光性素材より形成され、光合成生物を混ぜた培養液を収容する容器本体20と、該容器本体20の中空部25内に配置され、該容器本体20内に向けて光を照射する光源30と、を備え、中空部25内に配置された光源30の上側および下側の少なくとも一方に、光源30より照射された光を容器本体20内に向けて反射する反射面41,51を有する反射体40,50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類等の光合成生物を培養液中で人工的に培養するための培養装置に関し、そのうち特に、魚介類の養殖時の飼料、あるいは有用物質を生産するバイオマス資源として利用可能な各種の緑藻やラン藻等の微細藻類を培養する培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細藻類を人工的に培養する技術としては、一般に覆いカバーのない透明平型の大型水槽に培養液を満たし、高圧ナトリウムランプ等のHID光源(High Intensity Discharge Lamps)で水槽上部より光を照射し、空気や、二酸化炭素の散気によるエアレーションを行うものが知られている。ところが、この培養技術では、水面で多くの光が反射してしまい、光エネルギーの損失が特に大きいという問題のみならず、微細藻類の培養濃度が高くなると、光が遮られて水槽の底付近まで光が到達しないと言う問題もあった。
【0003】
このような容認しがたい問題を解決するために、例えば、筒状で内周面が鏡面状である縦長の容器本体の内部中心に、光源を密封した光源筒を配設した技術(例えば、特許文献1参照)や、光を均一に反射できる内面の培養槽内に、光源として空隙を持たせて透明シースで囲ったハロゲンランプを設置し、各シース内に冷却用の空気を導入できる機構を備えた技術(例えば、特許文献2参照)が既に提案されている。
【0004】
【特許文献1】実公平3−53680号公報
【特許文献2】特開平11−75590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1,2に記載された従来技術では、何れも培養液の内周面で光を反射できるように構成しているが、主として、光源側方に対する光の反射を目的としたものであり、例えば、HID光源のように、その先端より中心軸方向に発せられる高輝度の光線に関しては、光エネルギーの損失を十分に低減することができず、さらなる光エネルギーの損失を低減するための工夫が希求されていた。
【0006】
また、特許文献1に記載された従来技術では、光源からの放熱による培養液の温度上昇を抑えることができず、特許文献2に記載された従来技術では、シース内に冷却用の空気を導入できるように構成しているが、シース内は一端が閉じられた形状であって十分な通気性を得ることができないばかりでなく、複数のシース内に延ばす培養用ブロアから分岐させた空気導入機構の配設も面倒であるという構成上の問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の有する問題点に着目してなされたものであり、例えばHID光源のように、その先端より中心軸方向に発せられる高輝度の光に関しても、光エネルギーの損失を極力抑えることが可能であり、しかも、光源からの放熱による培養液の温度上昇を、簡易な構成によりコストアップを招くことなく容易に抑えることができる培養装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]藻類等の光合成生物を培養液中で人工的に培養するための培養装置(10)において、
中心側が上下に開口した中空部(25)となる中空筒状に透光性素材より形成され、光合成生物を混ぜた培養液を収容する容器本体(20)と、該容器本体(20)の中空部(25)内に配置され、容器本体(20)内に向けて光を照射する光源(30)と、を備え、
前記中空部(25)内に配置された前記光源(30)の上側および下側の少なくとも一方に、前記光源(30)より照射された光を容器本体(20)内に向けて反射する反射面(41,51)を有する反射体(40,50)を設けたことを特徴とする培養装置(10)。
【0009】
[2]前記光源(30)は、その中心軸方向にも光線を発する電球型であり、前記中空部(25)内に、光源(30)の中心軸が中空部(25)の軸心と一致する状態に配置され、
前記反射体(40,50)は、前記光源(30)よりその中心軸方向に発せられた光線を、全周方向かつ広角に前記容器本体(20)の中空部(25)に面した内側外周面(26)に向けて反射させる略円錐状であって、その外周が前記反射面(41,51)を成すことを特徴とする[1]に記載の培養装置(10)。
【0010】
[3]前記容器本体(20)の中空部(25)内を上下方向に通気可能とし、該中空部(25)内を強制的に通気させる送風手段(70)を備えたことを特徴とする[1]または[2]に記載の培養装置(10)。
【0011】
[4]前記容器本体(20)の外側外周面(22)を、前記光源(30)より培養液中を透過して届いた光を再び培養液に向けて反射する反射面としたことを特徴とする[1],[2]または[3]に記載の培養装置(10)。
【0012】
[5]前記容器本体(20)の中空部(25)に面した内側外周面(26)に沿って、透光性を有し熱線を遮断する熱反射シートを貼り付けたことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の培養装置(10)。
【0013】
本発明は、次のように作用する。
前記[1]に記載の培養装置(10)によれば、容器本体(20)は中心側が上下に開口した中空部(25)となる中空筒状(言い換えればドーナツ状)に形成されており、中空部(25)内に配置した光源(30)の発する光は、容器本体(20)の中心側より放射状に照射される。
【0014】
ここで、光源(30)より上下方向に発せられた光は、そのままでは中空部(25)の上下の開口を通り抜けてしまい容器本体(20)内に照射されることはないが、光源(30)の上側および下側の少なくとも一方に反射体(40,50)を設け、この反射面(41,51)により光源(30)より上下方向に発せられた光を容器本体(20)内に向けて反射させることができるので、光エネルギーの損失を極力抑えることが可能となる。
【0015】
より具体的には、例えば前記[2]に記載したように、前記光源(30)は、その中心軸方向にも光線を発する電球型として、前記中空部(25)内に、光源(30)の中心軸が中空部(25)の軸心と一致する状態に配置させる。
【0016】
そして、前記反射体(40,50)は、光源(30)よりその中心軸方向に発せられた光線を、全周方向かつ広角に容器本体(20)の中空部(25)に面した内側外周面(26)に向けて反射させる略円錐状であって、その外周を反射面(41,51)とする。これにより、光源(30)の中心軸方向へ発せられた光は、反射体(40,50)によって中心軸より全周方向へ広角に屈折反射し、内側外周面(26)に対して小さな入射角にて入射し、無駄に反射することなく培養液中に到達することができる。
【0017】
また、前記[3]に記載したように、容器本体(20)の中空部(25)内を上下方向に通気可能とし、該中空部(25)内を強制的に通気させる送風手段(70)を備えさせると良い。これにより、容器本体(20)の中空筒状(ドーナツ状)という元々の形状をうまく利用して、中空部(25)の上下開口を他部材により塞ぐことなく通気性を確保したままで、後は小型ファン等の送風手段(70)で風を送るだけという簡易な構成により、中空部(25)内に光源(30)により熱せられた高温空気がこもることがなく、光源(30)からの放熱による培養液の温度上昇を防ぐことができる。
【0018】
また、前記[4]に記載したように、容器本体(20)の外側外周面(22)を、光源(30)より培養液中を透過して届いた光を再び培養液に向けて反射させる反射面にすると良い。これにより、光源(30)から放射状に照射された光が、培養液中を通過して容器本体(20)の外側外周面(22)に到達すると、この外側外周面(22)である反射面に反射されて再び培養液中に戻される。従って、培養液中における光の通過滞在時間が長くなり、より少ない光源(30)でも光合成生物が利用するのに十分な光照射を得ることが可能となる。
【0019】
さらにまた、前記[5]に記載したように、容器本体(20)の内側外周面(26)に沿って、透光性を有し熱線を遮断する熱反射シートを貼り付けるようにすれば、光合成生物に必要な光を遮ることなく、前記中空部(25)での送風と相俟って、なおさら光源(30)からの放熱による培養液の不必要な温度上昇を低減させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る培養装置によれば、容器本体は、その中心側が上下に開口した中空部となる中空筒状に形成され、該容器本体の中空部内に光源が配置され、中空部内に配置された光源の上側および下側の少なくとも一方に、光源より照射された光を容器本体内に向けて反射する反射面を有する反射体を設けたから、光源より上下方向に発せられた光を、反射体により容器本体内に向けて反射させることができるので、光エネルギーの損失を極力抑えることが可能となる。
【0021】
また、前記光源を、その中心軸方向にも光線を発する電球型として、前記中空部内に、光源の中心軸が中空部の軸心と一致する状態に配置させ、前記反射体を、光源よりその中心軸方向に発せられた光線を、全周方向かつ広角に容器本体の中空部に面した内側外周面に向けて反射させる略円錐状であって、その外周を反射面とすれば、光源の中心軸方向へ発せられた光を、無駄にすることなく容器本体内へ有効に照射させることができる。
【0022】
さらにまた、前記容器本体の中空部内を上下方向に通気可能とし、該中空部内を強制的に通気させる送風手段を備えさせることにより、容器本体の中空筒状(ドーナツ状)という元々の形状をうまく利用して、中空部の上下開口を他部材により塞ぐことなく通気性を確保したままで、後は小型ファン等の送風手段で風を送るだけという簡易な構成により、コストアップを招くことなく光源からの放熱による培養液の温度上昇を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明を代表する一実施の形態を説明する。
図1〜図5は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る培養装置10は、藻類等の光合成生物を培養液中で人工的に培養するための装置であり、以下に、屋内施設として、微細藻類の培養に用いる場合を例に説明する。ここで微細藻類は具体的には例えば、クロレラ、クラミドモナス、ボツリオコッカス等の緑藻類や、スピルリナ、アナベナ等のラン藻類が該当する。
【0024】
図1に示すように培養装置10は、容器本体20と、光源30と、これら容器本体20や光源30等を設置する架台11と、そのほかの関連機器群から構成されている。架台11は、容器本体20等を所定の向きや位置に設置できるフレーム材から組み立てられており、その下段部には、後述する各種の関連機器等を収納できるようになっている。
【0025】
容器本体20は、微細藻類を混ぜた培養液を収容するものであり、中心側が上下に開口した中空部25となる中空筒状(言い換えればドーナツ状)に形成されている。もちろん、容器本体20の直径や高さの比、それに中空部25の占める相対的な大きさは、図示した形状に限定されるものではない。容器本体20全体は、基本的には次述する光源30の光を透過させることができるように、無色透明のガラスやアクリル樹脂等の透光性素材より形成されている。
【0026】
容器本体20の上部開口は、中空部25の上側開口25aを除いて円板状の蓋体21で覆われており、容器本体20は全体的に閉鎖系とすることができるようになっている。蓋体21には、中空部25の上側開口25aに合致する開口部21a(図2参照)のほか、関連機器群のコードないし配管類を気密な状態で貫通させる挿入口(図示せず)が随所に設けられている。また、容器本体20の底部23には、容器本体20内の培養液を外部に排出する排水口24が設けられ、この排水口24には、開閉可能な排水管24aが接続されている。
【0027】
培養装置10の光源30は、容器本体20の中空部25内に配置され、該容器本体20の中心側より放射方向に向けて容器本体20内に光を照射するものである。本実施の形態では、光源30として、HIDランプのうちメタルハライドランプを採用している。メタルハライドランプは、高圧水銀ランプの一種であり、外球内に石英発光管が支持され、この石英発光管内には水銀の他に金属ハロゲン化物(メタルハライド)が添加されており、これら金属蒸気中の放電による発光を主に利用したランプである。
【0028】
このような光源30であるメタルハライドランプは、その中心軸方向にも光線を発する電球型のタイプであり、図1に示すように中空部25内に、光源30の中心軸が中空部25の軸心と一致する状態に配置される。また、中空部25内に配置された光源30の上側および下側には、光源30より照射された光を容器本体20内に向けて反射する反射体40,50が設けられている。
【0029】
図2に示すように、光源30であるメタルハライドランプのソケット31は、反射体40を成す光源取付板の下面側となる反射面41に取り付けられている。反射体40は、前記蓋体21上に開口部21aを塞ぐように着脱自在に取り付けられるが、反射体40には、中空部25の上側開口25aが外気に連通するように、ソケット31の周囲に並ぶ複数の通気孔42,42…が連設されている。
【0030】
反射体40の反射面41は平面状であり、反射体40自体の素材がステンレス等の金属であれば、その表面を精密研磨すれば良く、あるいは鏡面加工された金属箔で覆ったり、光反射性コーティング材や、光の反射率が高い白色塗料等を塗布すること等が考えられる。また、反射体40の上面側には、各通気孔42に連通する排熱パイプ60の下側フランジが接続され、排熱パイプ60の上側フランジ上には、取付板71を介して送風手段70が配設されている。
【0031】
送風手段70は、容器本体20の中空部25内を強制的に通気させるものであり、具体的には例えば、ファンを軸支した状態で駆動するモータユニットから成り、モータユニットの出力軸と同軸上に一体に固結される回転円板の外周縁側に沿って多数の翼片を列設して成るもの等が適している。中空部25内は、上下方向に通気可能となっている。なお、送風手段70の剥き出しとなる排気側には、指等の巻き込みを防止するための網目等のガード部材72を装着すると良い。
【0032】
一方、容器本体20の中空部25における下側開口25b側の構造に関しては、図3に示すように、容器本体20の底部23を載置する架台11の上面部12には、下側開口25bに合致する開口部13が形成されている。また、上面部12には、下敷反射板80が装着され、この上に容器本体20の底部23が載置される。下敷反射板80の上面側は、光源30より照射された光を容器本体20内に向けて反射する反射面として形成されている。下敷反射板80における反射面は、具体的には例えば前記反射体40の反射面41と同様に構成すれば良い。
【0033】
また、下敷反射板80の略中央には、中空部25の下側開口25bと上面部12の開口部13とを連通させる複数の通気孔81,81…が周方向に連設されており、さらに、光源30から照射された光を容器本体20内に向けて反射する反射体50が設けられている。ここでの反射体50は、前記反射体40とは異なり、前記光源30の先端よりその中心軸方向に発せられた光線を、全周方向かつ広角に容器本体20の中空部25に面した内側外周面26に向けて反射させる略円錐状であって、その外周が反射面51を成している。
【0034】
詳しく言えば、反射体50は、円錐形の頂部を切り欠いて平らな面とした形状に作られており、通気孔81を塞がないように、取付金具52を介して下敷反射板80の略中央に上向きに支持されている。反射体50の外周である反射面51の態様としては、具体的には例えば、反射体50自体の素材がステンレス等の金属であれば、その表面を精密研磨すれば良く、あるいは鏡面加工された金属箔で覆ったり、光反射性コーティング材や、光の反射率が高い白色塗料等を塗布すること等が考えられる。もちろん、反射体50の具体的な形状は、図4(a)に示すような円錐形の頂部を切り欠いた形状のみならず、同図(b)に示すように、純粋な円錐形としても良い。
【0035】
また、図5に示すように、容器本体20内には、培養液中に空気を放出して対流現象を生じさせる散気管110と、培養液中で光合成により固定される二酸化炭素を補給するための補給管120の各先端口がそれぞれ配されている。散気管110の基端側は、フィルター111や流量計112を介して、エアーブロアー113に接続されている。補給管120の基端側は、レギュレータ121や流量計122を介して、COボンベ123に接続されている。
【0036】
さらに、培養装置10に対して、培養液を光合成生物の適した温度に維持するための温度制御システム130、培養液のpHを計測するpH計141に接続されたpHセンサ140、培養装置10に関する各種計測データ等を表示出力するための表示盤150等が関連機器として付設されている。図示しないが、培養液中のCO濃度を検出して所望濃度に調整できるCO濃度の制御システム、光源30を調光点灯させて容器本体20に対する照射光量を調整できる調光点灯装置等を設けるようにしても良い。
【0037】
温度制御システム130は、容器本体20内に配置した冷却コイル131aに冷却媒体を循環させる冷却装置131と、容器本体20内に配され培養液を必要に応じて加温するヒータ132と、容器本体20内に配され培養液の温度を測定する温度センサ134と、この温度センサ134で検出した培養液温度の実測値を予め定めた微細藻類の最適温度に調整すべく、前記冷却装置131および前記ヒータ132の稼働を調整する温度コントローラ135とから成る。また、冷却コイル131aと冷却装置131の中の冷凍機を接続して、冷却コイル131aに直接冷媒を流して冷却しても良い。なお、培養装置10の関連設備として屋外には、培養液に用いる海水を供給するための海水貯留水槽160や、真水を供給するための井戸170等も設けられている。
【0038】
次に、前記培養装置10の作用を説明する。
図5に示すように、先ず培養装置10に対して各種の関連機器をセットしてから、容器本体20内に上端付近の位置まで、微細藻類(光合成生物)を混ぜた培養液を収容する。微細藻類は後から培養液に混入しても良い。
【0039】
光源30を点灯させると、容器本体20内の培養液に対して、光源30の発する光は容器本体20の中心側より放射状に照射される。これにより、光源30から発せられた光が、容器本体20の内側外周面26に対して小さな入射角で直接入射する割合が非常に高くなり、照射効率が高まるばかりでなく、内側外周面26の表面で反射した光も再度容器本体20内に入射する割合も高くなる。
【0040】
光源30より上下(中心軸)方向に発せられた光は、光源30の上側と下側に設けてある反射体40,50の反射面41,51に反射して、容器本体20側へ照射される。これにより、光源30における光エネルギーの損失を極力抑えることができ、より少ない光源30の出力でも、微細藻類が利用するのに十分な光照射を得ることが可能となる。
【0041】
特に、光源30の先端と同軸上に対向する反射体50は略円錐状であるので、光源30の先端より中心軸方向へ発せられた光は、反射体50の反射面51によって中心軸より全周方向へ広角に屈折反射し、内側外周面26に対して小さな入射角にて入射し、無駄に反射することなく培養液中に到達することができる。
【0042】
ここで、容器本体20の外側外周面22も、光源30より培養液中を透過して届いた光を再び培養液に向けて反射する反射面にすると良い。ここでの反射面は、具体的には例えば前記反射体40の反射面41と同様に構成すれば良い。これにより、光源30から放射状に照射された光が、培養液中を通過して容器本体20の外側外周面22に到達すると、この外側外周面22である反射面に反射されて再び培養液中に戻される。従って、培養液中における光の通過滞在時間が長くなり、培養液の全域に亘り微細藻類の光合成が促進される。
【0043】
また、光源30を配置している中空部25内は、上下方向ともに通気可能であり、中空部25の上側開口25aに排熱パイプ60を介して連通接続してある送風手段70の駆動によって、中空部25内を強制的に通気させることができる。これにより、容器本体20の中空筒状(ドーナツ状)という元々の形状をうまく利用して、中空部25の上下開口を他部材により塞ぐことなく通気性を確保したままで、後は小型ファン等の送風手段70で風を送るだけという簡易な構成により、中空部25内に光源30により熱せられた高温空気がこもることがなく、光源30からの放熱による培養液の温度上昇を防ぐことができる。
【0044】
ここで、送風手段70による送風のタイミングは、所定時間連続して行ってもよく、あるいは一定時間ごとに間欠的に行うように制御しても良い。さらには、培養液中の温度に応じて、後述する冷却装置131やヒータ132の稼働に連動させるように設定し、加温に利用しても良い。なお、光源30の保守・点検を行う際には、図2において、光源30等を組み付けた反射体40を容器本体20の蓋体21から取り外せば良い。
【0045】
さらに、容器本体20の内側外周面26に沿って、透光性を有し熱線(赤外線)を遮断する熱反射シートを貼り付けるようにすれば、微細藻類に必要な光を遮ることなく、中空部25での送風と相俟って、なおさら光源30からの放熱による培養液の不必要な温度上昇を低減させることが可能となる。
【0046】
微細藻類の光合成には、光のほか二酸化炭素が必要となるが、補給管120を通じてCOボンベ123から供給される二酸化炭素を容器本体20内に導入する。二酸化炭素の流入量の調整は、補給管120の途中にある流量計122で監視しながらレギュレータ121で行うことができる。また、pH計141に出力をもたせ、pHコントローラにより、二酸化炭素の補給管120の途中に設ける電磁弁の開閉を制御し、二酸化炭素の流入量を調整しても良い。また、培養液を撹拌するための散気管110からの散気も相俟って、容器本体20内の培養液は適度に循環し、二酸化炭素は培養液中に溶解しやすくなる。
【0047】
溶解した二酸化炭素は、光源30からの光を受けた微細藻類による光合成作用によって固定化される。さらにまた、二酸化炭素や空気の散気によって、容器本体20の内部は適度な陽圧に保たれるので、容器本体20内部に対する外部からの空気流入を防止でき、コンタミネーションを防ぐことができる。
【0048】
培養液の温度に関しては、温度制御システム130によって微細藻類の最適温度に維持することができる。すなわち、冷却装置131により、容器本体20内の培養液を間接的に冷却したり、ヒータ132により、容器本体20内の培養液を直接加温することができ、温度センサ134で検出した実測値を元にして、温度コントローラ135で冷却装置131やヒータ132の稼働が調整される。容器本体20内の培養水は前述したように循環しており、水温は偏りなく均一化する。なお、培養水のpHも、pHセンサ140からの実測値に基づき適宜調整すると良い。
【0049】
以上、本発明の実施の形態に係る培養装置10を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記実施の形態では、光源30としてメタルハライドランプを採用したが、光源の種類はこれに限られるものではなく、他に、水銀ランプや高圧ナトリウムランプ等を採用しても良い。また、光源の数も1つに限定されるものではない。
【0050】
また、前記実施の形態では、光源30の上側に配した反射体40と、光源30の下側に配した反射体50とを両方とも備えるように構成したが、他の実施の形態として、例えば、反射体40のみ備えるもの、あるいは反射体50のみ備えるもの、として構成しても良い。また、反射体40は平板状に形成し、反射体50を略円錐状に形成したが、これらを逆の態様にしたり、あるいは両方とも平板状にしたり、両方とも略円錐状に形成しても良い。
【0051】
さらにまた、前記実施の形態では、送風手段70の設置場所として中空部25の上側開口25aを選んだが、中空部25内における光源30の光照射を遮らない位置であれば特に限定されるものではなく、中空部25の下側開口25bより下側等に設けるようにしても良い。また、図5に示すシステムに関しては、1つの関連機器に対して本培養装置10を複数並列に接続するように構成しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る培養装置を概略的に示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る培養装置の架台等を分解して示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る培養装置の容器本体等を分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る培養装置の反射体の一例を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る培養装置を含むシステム構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10…培養装置
11…架台
12…上面部
13…開口部
20…容器本体
21…蓋体
21a…開口部
22…外側外周面
23…底部
24…排水口
24a…排水管
25…中空部
25a…上側開口
25b…下側開口
26…内側外周面
30…光源
31…ソケット
40…反射体
41…反射面
42…通気孔
50…反射体
51…反射面
52…取付金具
60…排熱パイプ
70…送風手段
71…取付板
72…ガード部材
80…下敷反射板
81…通気孔
110…散気管
111…フィルター
112…流量計
113…エアーブロアー
120…補給管
121…レギュレータ
122…流量計
123…COボンベ
130…温度制御システム
131…冷却装置
131a…冷却コイル
132…ヒータ
134…温度センサ
135…温度コントローラ
140…pHセンサ
141…pH計
150…表示盤
160…海水貯留水槽
170…井戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類等の光合成生物を培養液中で人工的に培養するための培養装置において、
中心側が上下に開口した中空部となる中空筒状に透光性素材より形成され、光合成生物を混ぜた培養液を収容する容器本体と、該容器本体の中空部内に配置され、容器本体内に向けて光を照射する光源と、を備え、
前記中空部内に配置された前記光源の上側および下側の少なくとも一方に、前記光源より照射された光を容器本体内に向けて反射する反射面を有する反射体を設けたことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記光源は、その中心軸方向にも光線を発する電球型であり、前記中空部内に、光源の中心軸が中空部の軸心と一致する状態に配置され、
前記反射体は、前記光源よりその中心軸方向に発せられた光線を、全周方向かつ広角に前記容器本体の中空部に面した内側外周面に向けて反射させる略円錐状であって、その外周が前記反射面を成すことを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記容器本体の中空部内を上下方向に通気可能とし、該中空部内を強制的に通気させる送風手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記容器本体の外側外周面を、前記光源より培養液中を透過して届いた光を再び培養液に向けて反射する反射面としたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の培養装置。
【請求項5】
前記容器本体の中空部に面した内側外周面に沿って、透光性を有し熱線を遮断する熱反射シートを貼り付けたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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