説明

基地局システム及び無線通信ユニット

【課題】基地局システム及びこれに用いられる無線通信ユニットにおいて、消費電力を低減する。
【解決手段】無線通信の基地局本体ユニットと、基地局本体ユニットからスプリッタを介して複数に分岐したPON方式の光ファイバ群と、光ファイバ群の各端部に接続された無線通信ユニットとを備えた基地局システムの構成とすることにより、光ファイバ群の各端部に接続された無線通信ユニットは、信号を中継する必要が無いので、光入出力部の機能に関して、消費電力を低減することができ、回路構成を簡素化することも可能である。また、信号を中継しない各無線通信ユニットは、単独で停止させることも可能であり、これによる消費電力の低減を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動体通信の基地側に設けられる基地局システム及び、これに用いられる無線通信ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信に用いられる無線基地は、その通信機能を司る基地局装置と、電波の送受信用のアンテナとを備えた構成となっている。基本的には、アンテナは、基地局装置からなるべく離れないように、基地局装置が設置される局舎の屋上等に設置することが望まれる。しかしながら、アンテナ設置や基地局装置設置に係わる種々の制約により、基地局装置から遠く離れた場所にアンテナを設けざるを得ない場合もある。この場合、基地局装置とアンテナとを互いに接続するメタリックケーブルによる信号減衰が問題となる。
【0003】
そこで、基地局装置から無線通信の機能部分を取り出して、無線通信ユニットとして分離独立させたRRH(Remote Radio Head)とするとともに、このRRHと、それ以外の機能を備える基地局本体ユニットとの間を、光ファイバによって互いに接続するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図5は、基地局本体ユニット101と、複数(4台図示している。)の無線通信ユニット102〜105とを、光ファイバ106でカスケード接続した状態の概略を示す図である。各ユニット101〜105は、2つの光入出力部(101a/101b,102a/102b,103a/103b,104a/104b,105a/105b)を備えており、信号の中継が可能となっている。無線通信ユニット102,103,104,105はそれぞれ、アンテナ112,113,114,115と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−180220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5の構成では、全ての無線通信ユニット102〜105に、2つの光入出力部が必要であり、それに関連する専用の回路も必要である。従って、その分の電力を消費する。また、例えば無線通信ユニット104自身が無線通信を行わないので本当は運用停止したいときでも、下位の無線通信ユニット105のために、電源をオンにして、信号の中継を行うことができる状態としていなければならない。すなわち、信号を中継するためだけに、電力を消費する場合がある。
【0007】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、基地局システム及びこれに用いられる無線通信ユニットにおいて、消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の基地局システムは、無線通信の基地局本体ユニットと、前記基地局本体ユニットからスプリッタを介して複数に分岐したPON方式の光ファイバ群と、前記光ファイバ群の各端部に接続された無線通信ユニットとを備えている。
【0009】
上記のように構成された基地局システムにおいては、PON方式の光ファイバ群の各端部に接続された無線通信ユニットは、信号を中継する必要が無い。そのため、光入出力部の機能は1つあればよく、2つは不要である。従って、その分、消費電力を低減することができ、回路構成を簡素化することも可能である。また、信号を中継しない各無線通信ユニットは、単独で停止させることも可能であり、これによる消費電力の低減を実現することができる。さらに、信号を中継しないことにより、光ファイバの各端部に接続されたいずれの無線通信ユニットにおいても、信号の遅延を抑制することができる。
【0010】
(2)また、本発明は、無線通信の基地局本体ユニットからスプリッタを介して複数に分岐したPON方式の光ファイバ群の各端部に接続される無線通信ユニットであって、
光ファイバを介して他の装置と接続可能な2つの光入出力部と、アンテナと接続される無線通信部と、前記光入出力部と前記無線通信部との間で、信号の相互変換を行う変換部と、前記光入出力部の一方に他の装置が接続されていないときは、当該光入出力部の機能を低下させることにより消費電力を低減する制御を実行可能な制御部とを備えているものである。
【0011】
上記のように構成された無線通信ユニットは、PON方式の光ファイバ群の各端部に接続された場合に、2つある光入出力部の一方に他の装置が接続されていない状態になる。そこで、制御部は、他の装置が接続されていない光入出力部の機能を低下(典型的には停止)させることにより、その分の消費電力を低減することができる。また、信号を中継しない無線通信ユニットは、単独で停止させることも可能であり、これによる消費電力の低減を実現することができる。
【0012】
(3)また、上記(2)の無線通信ユニットにおいて、制御部はさらに、無線通信部及び変換部について、その機能を低下させることにより消費電力を低減する制御を実行可能であってもよい。
この場合、さらに、消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基地局システムによれば、無線通信ユニットの消費電力を低減することができ、回路構成を簡素化することも可能である。また、信号を中継しない各無線通信ユニットは、単独で停止させることも可能であり、これによる消費電力の低減を実現することができる。
【0014】
一方、本発明の無線通信ユニットによれば、PON方式の光ファイバ群の各端部に接続された場合に、他の装置が接続されていない光入出力部の機能を低下(典型的には停止)させることにより、その分の消費電力を低減することができる。また、信号を中継しない無線通信ユニットは、単独で停止させることも可能であり、これによる消費電力の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る基地局システムの構成を示す図である。
【図2】図1における無線通信ユニットの内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2における機能低下部位を点線で示すブロック図である。
【図4】図2からさらに、信号処理部、変復調部及び周波数変換部も機能低下(電源オフ等)により、消費電力を低減する状態を示す図である。
【図5】基地局本体ユニットと、複数の無線通信ユニットとを、光ファイバでカスケード接続した状態の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局システムの構成を示す図である。図において、基地局システムは、基地局本体ユニット1と、複数(4台図示している。)の無線通信ユニット(RRH)2〜5とを、光ファイバ6〜8,93〜95で接続して構成される。基地局本体ユニット1は、2つの光入出力部1a,1bを備えており、光入出力部1aは光ファイバ6を介して図示しない上位の装置と接続されている。無線通信ユニット2は、2つの光入出力部2a,2bを備えており、光入出力部2aは光ファイバ7を介して、基地局本体ユニット1の光入出力部1bと接続されている。
【0017】
無線通信ユニット2の光入出力部2bには、光ファイバ8が接続されている。光ファイバ8はスプリッタ10を介して複数(本例では3)に分岐し、PON(Passive Optical Network)方式の光ファイバ群9(光ファイバ93〜95)が構成されている。光ファイバ93,94,95はそれぞれ、無線通信ユニット3,4,5の光入出力部3a,4a,5aに接続されている。このPONにおける親機的な存在である無線通信ユニット2は、子機的な存在である無線通信ユニット3,4,5との間で、例えば時分割多重によるIQ信号の送受信を行う。この場合、通信速度は、光ファイバ両端間での最大速度(例えば3Gbps)を子機台数でシェアすることになる。なお、波長多重等、その他の通信方式を採用することも可能である。
【0018】
上記のように構成された基地局システムにおいては、PON方式の光ファイバ群9(光ファイバ93,94,95)の各端部に接続された無線通信ユニット3,4,5は、信号を下位に中継する必要が無い。そのため、光入出力部の機能は1つあればよく、2つは不要である。すなわち、光入出力部3b,4b,5bの機能は不要である。従って、例えば、光入出力部3b,4b,5bそのものを省略して回路構成を簡素化してもよい。また、光入出力部3b,4b,5bを備えている場合でも、それらの機能を低下(典型的には電源オフによる停止)させることで、消費電力を低減することができる。
【0019】
また、信号を中継しない各無線通信ユニット3,4,5は、自身が、無線通信を行わない場合には、単独で停止させることも可能である。これにより、消費電力の低減を実現することができる。さらに、信号を中継しないことにより、光ファイバ93,94,95の各端部に接続されたいずれの無線通信ユニット3,4,5においても、信号の遅延を抑制することができる。
【0020】
なお、図1では、親機的な存在としての無線通信ユニット2を基地局本体ユニット1とは別個独立に設けているが、この無線通信ユニット2の機能を基地局本体ユニット1に合体させることも可能である。
【0021】
図2は、無線通信ユニット3の内部構成を示すブロック図である。なお、他の無線通信ユニット2,4,5についても同様の内部構成であるので、代表例として無線通信ユニット3についてのみ説明する。
【0022】
図2において、前述の2つの光入出力部3a,3bとしては、具体的には例えば、SFP(Small Form-Factor Pluggable)モジュールが使用される。光入出力部3a,3bの他には、アンテナと接続される無線通信部3Rと、光入出力部3a,3bと無線通信部3Rとの間で、信号の相互変換を行う変換部3Tと、各デバイスの制御を行うCPUによって構成される制御部3hとが設けられている。
【0023】
無線通信部3Rは、変復調部(DAC/ADC)3fと、周波数変換部(RF)3gとを備えている。変換部3Tは、2つの光入出力部3a,3bにそれぞれ対応した光インターフェース部3c,3dと、光/無線の変換用の信号処理部3eとを備えている。制御部3hは、光入出力部3bに下位の他の装置が接続されていないときは、当該光入出力部3b及び光インターフェース部3dの機能を低下させることにより消費電力を低減する制御を実行可能である。機能を低下させるとは、典型的には電源オフにより機能を停止させることであるが、スリープ等の省電力状態でもよい。図3は、この機能低下部位を点線で示すブロック図である。
【0024】
また、無線通信ユニットが無線通信を行わない場合には、図4に示すように、さらに、信号処理部3e、変復調部3f及び周波数変換部3gも機能低下(電源オフ等)により、消費電力を低減することができる。
【0025】
なお、図2では、光入出力部3b及び光インターフェース部3dを設けた構成を示しているが、図1の無線通信ユニット3の場合には、これらを搭載しない回路構成とすることも可能である。図1の無線通信ユニット4,5についても同様である。
【0026】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0027】
1:基地局本体ユニット
3〜5:無線通信ユニット
3a,3b:光入出力部
3R:無線通信部
3T:変換部
3h:制御部
9:光ファイバ群
10:スプリッタ
91〜93:光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信の基地局本体ユニットと、
前記基地局本体ユニットからスプリッタを介して複数に分岐したPON方式の光ファイバ群と、
前記光ファイバ群の各端部に接続された無線通信ユニットと
を備えていることを特徴とする基地局システム。
【請求項2】
無線通信の基地局本体ユニットからスプリッタを介して複数に分岐したPON方式の光ファイバ群の各端部に接続される無線通信ユニットであって、
光ファイバを介して他の装置と接続可能な2つの光入出力部と、
アンテナと接続される無線通信部と、
前記光入出力部と前記無線通信部との間で、信号の相互変換を行う変換部と、
前記光入出力部の一方に他の装置が接続されていないときは、当該光入出力部の機能を低下させることにより消費電力を低減する制御を実行可能な制御部と
を備えていることを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項3】
前記制御部はさらに、前記無線通信部及び前記変換部について、その機能を低下させることにより消費電力を低減する制御を実行可能である請求項2記載の無線通信ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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