説明

基地局制御装置および通信制御方法

【課題】HSUPAによるデータ伝送が他の通信に対する干渉となることを防ぐための制御を行う基地局制御装置を得ること。
【解決手段】本発明にかかる基地局制御装置は、移動局および基地局とともに無線通信システムを構成し、基地局と移動局との間のデータ伝送を制御する基地局制御装置(3)であって、たとえば、品質信号判定部(31)が、特定の基地局とデータ伝送中の移動局が測定する、通信可能な他の基地局との間の電波の受信品質を受信し、この受信品質に基づいて、HSUPAによるデータ伝送とDPCHによるデータ伝送とを切り替える制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局および基地局とともに無線通信システムを構成する基地局制御装置に関するものであり、特に、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)によるデータ伝送を制御する基地局制御装置および通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HSUPAは、パケット通信を利用した上り方向の高速データ伝送方法であり、現在3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)において規格の標準化が進められている。また、HSUPAは、下り方向の高速パケット通信の規格であるHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の送信方向が異なるもの(HSDPAを上り方向に適用したもの)と考えることができ、HSDPAによるデータ伝送の場合と同様に基地局がスケジューリング、変調方式などの制御を行う。
【0003】
ここで、HSDPAによるデータ伝送について説明する。HSDPAでは、伝搬路の状況に応じて変調方式、符号化率を変更してデータ伝送を行う適応変調方式が使われている。具体的には、移動局から報告を受けた下りチャネルの受信品質に基づいて基地局が変調方式、符号化率などを決定し、ここで決定した結果を移動局に指示する。そして、基地局は、移動局に対して、上記変調方式、符号化率などを使用してデータ伝送を行う。なお、HSDPAによるデータ伝送とDPCH(Dedicated Physical CHannel)によるデータ伝送とを切り替えるデータ伝送制御方法が下記特許文献1に記載されており、具体的には、移動局から報告を受けた受信信号(下りチャネル)の受信品質が所定のしきい値より低い場合に、基地局が、HSDPAによるデータ伝送からDPCHによるデータ伝送への切り替え処理を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−328521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術である下りチャネルの受信品質に基づいて伝送方法を切り替える制御を、HSUPAによるデータ伝送とDPCHによるデータ伝送とを切り替える制御に適用した場合、HSUPAによるデータ伝送を行っている基地局は、自局以外の他の基地局に与える影響(HSUPA送信による通信対象以外の基地局への干渉量)を認識できない。そのため、HSUPAによるデータ伝送により、他の通信に対する干渉が大きくなる可能性がある、という問題があった。また、HSUPAの場合もHSDPAの場合と同様に基地局がスケジューリングを行うため、たとえば、HSUPAによるデータ伝送中にソフトハンドオーバを行う場合には、スケジューリングを行う基地局を調停する必要があり処理が複雑になる、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、HSUPAによるデータ伝送が他の通信に対する干渉となることを防ぐことが可能な基地局制御装置を得ることを目的とする。
【0007】
また、本発明は、HSUPAによるデータ伝送中にソフトハンドオーバを行う場合の処理を単純にする基地局制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる基地局制御装置は、移動局および基地局とともに無線通信システムを構成し、基地局と移動局との間のデータ伝送を制御する基地局制御装置であって、特定の基地局とデータ伝送中の移動局が測定する、通信可能な他の基地局との間の電波の受信品質を受信する受信手段と、前記受信品質に基づいて、HSUPAによるデータ伝送とDPCHによるデータ伝送とを切り替える制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、たとえば、HSUPAによるデータ伝送が他の基地局の通信を妨害すると判断した場合、DPCHによるデータ伝送に切り替えることとした。これにより、データ伝送による他の基地局への干渉量を抑えることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる基地局制御装置を備える無線通信システムおよび通信制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる基地局制御装置を備える無線通信システムの構成例を示す図である。この無線通信システムは、たとえば、移動局1と基地局2と基地局制御装置3により構成されている。また、移動局1は、基地局2から送信されるパイロットシンボルに基づいて下りチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部11と、受信品質測定部11により測定された受信品質を示す品質信号を基地局制御装置3宛てに送信する品質信号送信部12と、を備えている。また、基地局2は、パイロットシンボルを送信するパイロット送信部21と、HSUPAにより伝送される上り方向のデータを受信するHSUPA伝送部22と、DPCHにより伝送される上り方向のデータを受信するDPCH伝送部23と、基地局制御装置3からの指示に従い上記パイロット送信部21,HSUPA伝送部22,PCH伝送部23を制御する制御部24と、を備えている。また、基地局制御装置3は、上記品質信号に基づいてHSUPAによるデータ伝送とDPCHによるデータ伝送とのどちらを実行するかの判断処理およびソフトハンドオーバを行うか否かの判断処理を行い、基地局2の制御部24に対して当該判断結果を通知する品質信号判定部31を備えている。
【0012】
つづいて、図面にしたがってデータ伝送の制御動作を説明する。図2は、本実施の形態のネットワーク構成例を示す図であり、移動局1、基地局2aおよび2b、基地局制御装置3により構成される。また、20a、20bは、それぞれ基地局2a、2bの送受信範囲であるセルを示す。なお、基地局2aおよび2bの内部構成は、上述した基地局2の内部構成と同一である。
【0013】
たとえば、移動局1が基地局2aとHSUPAによるデータ伝送を行い、かつ、セル20aと20bのオーバラップする領域に存在している場合、移動局1の受信品質測定部11は、HSUPAによるデータ伝送を行っていない基地局2bからのパイロットチャネルの受信処理および受信品質の測定処理を行い、品質信号送信部12が、当該測定結果である品質信号を基地局制御装置3宛てに送信する。
【0014】
基地局制御装置3の品質信号判定部31は、移動局1から基地局2aを介して通知された基地局2bのパイロットチャネルの受信品質(以下、受信品質と呼ぶ)が所定のしきい値以上かどうかを判定する。判定の結果、当該受信品質が所定のしきい値以上の場合、品質信号判定部31は、移動局1と基地局2aとの間のHSUPAによるデータ伝送により、基地局2bに対する干渉の影響が大きいと判断し、基地局2aの制御部24に対してHSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替えるように指示する。
【0015】
具体的には、基地局制御装置3の品質信号判定部31から上記切り替え指示を受けた基地局2aの制御部24は、HSUPA伝送部22に対してデータ伝送を終了するように指示し、当該指示を受けたHSUPA伝送部22は、HSUPAによるデータ伝送を終了する。その後、基地局2aの制御部24は、DPCH伝送部23に対してデータ伝送を開始するように指示し、当該指示を受けたDPCH伝送部23は、DPCHによるデータ伝送を開始する。なお、上記受信品質が所定のしきい値を下回っている場合、品質信号判定部31は、データ伝送に関する制御処理を行わない(移動局1と基地局2aのHSUPAによるデータ伝送が継続される)。
【0016】
また、基地局制御装置3の品質信号判定部31は、移動局1が基地局2aとDPCHによるデータ伝送中(1つの基地局との通信中)に、移動局1から基地局2aを介して通知される基地局2bのパイロットチャネルの受信品質が所定のしきい値以上かどうかを判定する。判定の結果、当該受信品質が所定のしきい値未満であると判定した場合、品質信号判定部31は、基地局2bに対する干渉の影響が小さいと判断し、基地局2aの制御部24に対してDPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替えるように指示する。なお、上記受信品質が所定のしきい値以上の場合、品質信号判定部31は、データ伝送に関する制御処理を行わない。
【0017】
なお、基地局制御装置3の品質信号判定部31は、上記DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替える判断を行うにあたり、移動局1から基地局制御装置3宛てに送信される「通信中以外の基地局との間の受信品質」および「DPCHの受信品質」に基づいて、データ伝送の切り替え指示を出すかどうかを判断することとしてもよい。
【0018】
以上のデータ伝送方式の切り替え制御の様子を模式化すると図3のように表すことができる。41は、DPCHによるデータ伝送を行っている状態を示し、42は、HSUPAによるデータ伝送を行っている状態を示す。上述したように、品質信号判定部31は、特定の基地局がHSUPAによるデータ伝送を行っている場合、かつ他の基地局に対する干渉量が大きくなったと判断した場合、HSUPAにて通信中の基地局および移動局に対して、DPCHによるデータ伝送に切り替える(41の状態へ遷移する)ように指示する。
【0019】
これに対して、特定の基地局がDPCHによるデータ伝送を行っている場合に、他の基地局に対する干渉量(移動局1aにおける他の基地局からのパイロットチャネルの受信品質)がしきい値未満の場合、品質信号判定部31aは、DPCHにて通信中の基地局および移動局に対して、HSUPAによるデータ伝送に切り替える(42の状態へと遷移する)ように指示する。
【0020】
このように、本実施の形態においては、HSUPAによるデータ伝送が他の基地局の通信を妨害する(他の基地局への干渉量が大きくなる)と判断した場合、DPCHによるデータ伝送に切り替えることとした。これにより、データ伝送を行った場合における他の基地局への干渉量を抑えることができる。
【0021】
つづいて、上記図1および図2の無線通信システムにおいて、HSUPAによるデータ伝送中にソフトハンドオーバを行う場合の動作について説明する。たとえば、基地局制御装置3の品質信号判定部31は、移動局1が基地局2aとHSUPAによるデータ伝送中に、移動局1と基地局2bとを通信状態にした方が通信品質の向上が見込めると判断した場合、基地局2aの制御部24および基地局2bの制御部24に対してソフトハンドオーバを実行するように指示し、さらに、基地局2aの制御部24に対してHSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替えるよう指示し、基地局2bの制御部24に対してDPCHによるデータ伝送開始を指示する。
【0022】
その後、品質信号判定部31は、上記ソフトハンドオーバが完了し、移動局1と基地局2bがDPCHによるデータ伝送中の状態となった時点で、基地局2bの制御部24に対してDPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替えるように指示する。
【0023】
以上のソフトハンドオーバの様子を、上記図3を用いて説明する。上述したように、品質信号判定部31は、特定の基地局がHSUPAによるデータ伝送を行っている場合、かつ、移動局と他の基地局とを通信中(ソフトハンドオーバ)の状態にした方が通信品質の向上が見込めると判断した場合、HSUPAにて通信中の基地局および移動局に対してDPCHによるデータ伝送に切り替える(41の状態へ遷移する)ように指示する。また、品質信号判定部31は、ソフトハンドオーバ完了後、DPCHによるデータ伝送中の移動局とハンドオーバ先の基地局に対してHSUPAによるデータ伝送に切り替える(42の状態へと遷移する)ように指示する。
【0024】
このように、本実施の形態においては、HSUPAによるデータ伝送中にソフトハンドオーバを行う必要がある場合、HSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替えた後にソフトハンドオーバを行い、さらに、ソフトハンドオーバ完了後、DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替えることとした。これにより、HSUPAに関するスケジューリングを行う基地局を調停する煩雑さを解消することができ、さらに、ハンドオーバ後も高速なデータ伝送を継続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる基地局制御装置および通信制御方法は、無線通信システムに有用であり、特に、HSUPAによるデータ伝送とDPCHによるデータ伝送とを切り替えながら通信を行う無線通信システムに適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる基地局制御装置を備える無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】ネットワーク構成例を示す図である。
【図3】データ伝送方式の切り替え制御の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 移動局
2,2a,2b 基地局
3 基地局制御装置
11 受信品質測定部
12 品質信号送信部
20a,20b セル
21 パイロット送信部
22 HSUPA伝送部
23 DPCH伝送部
24 制御部
31 品質信号判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局および基地局とともに無線通信システムを構成し、基地局と移動局との間のデータ伝送を制御する基地局制御装置において、
特定の基地局とデータ伝送中の移動局が測定する、通信可能な他の基地局との間の電波の受信品質を受信する受信手段と、
前記受信品質に基づいて、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)によるデータ伝送とDPCH(Dedicated Physical CHannel)によるデータ伝送とを切り替える制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする基地局制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動局が前記特定の基地局とHSUPAによるデータ伝送を行い、かつ前記受信品質が所定のしきい値以上の場合に、他の基地局に対する干渉の影響が大きいと判断し、HSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の基地局制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動局が前記特定の基地局とDPCHによるデータ伝送を行い、かつ前記受信品質が所定のしきい値未満の場合に、他の基地局に対する干渉の影響が小さいと判断し、DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、HSUPAによるデータ伝送を行っている移動局がハンドオーバを実行することにより通信品質の向上が見込めると判断した場合、ハンドオーバ元の基地局およびハンドオーバ先の基地局に対してソフトハンドオーバを実行するように指示し、さらに、HSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1、2または3に記載の基地局制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ソフトハンドオーバ完了後、DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の基地局制御装置。
【請求項6】
移動局、基地局および基地局制御装置を含む無線通信システムにおいて、基地局制御装置が基地局と移動局との間のデータ伝送を制御する場合の通信制御方法であって、
特定の基地局とデータ伝送を行っている移動局が、通信可能な他の基地局から送られてくる電波の受信品質を測定し、その測定結果を、前記特定の基地局を介して基地局制御装置に対して送信する受信品質測定ステップと、
前記基地局制御装置が、前記受信品質に基づいて、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)によるデータ伝送とDPCH(Dedicated Physical CHannel)によるデータ伝送とを切り替える制御を行う切り替え制御ステップと、
前記データ伝送中の移動局および基地局が、前記基地局制御装置の指示により伝送方式を切り替える切り替えステップと、
を含むことを特徴とする通信制御方法。
【請求項7】
前記切り替え制御ステップでは、前記移動局が前記特定の基地局とHSUPAによるデータ伝送を行い、かつ前記受信品質が所定のしきい値以上の場合、他の基地局に対する干渉の影響が大きいと判断し、HSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の通信制御方法。
【請求項8】
前記切り替え制御ステップでは、前記移動局が前記特定の基地局とDPCHによるデータ伝送を行い、かつ前記受信品質が所定のしきい値未満の場合、他の基地局に対する干渉の影響が小さいと判断し、DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の通信制御方法。
【請求項9】
HSUPAによるデータ伝送を行っている移動局がハンドオーバを実行することにより通信品質の向上が見込めると判断した場合に、ハンドオーバ元の基地局およびハンドオーバ先の基地局に対してソフトハンドオーバを実行するように指示し、さらに、HSUPAによるデータ伝送をDPCHによるデータ伝送に切り替える制御を行うハンドオーバ制御ステップ、
を含むことを特徴とする請求項6、7または8に記載の通信制御方法。
【請求項10】
前記ハンドオーバ制御ステップでは、ソフトハンドオーバ完了後、DPCHによるデータ伝送をHSUPAによるデータ伝送に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項9に記載の通信制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−345401(P2006−345401A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171120(P2005−171120)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】